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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】冷間鍛造接合方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/03 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
B21D39/03 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020086240
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021178357
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年度塑性加工春季講演会予稿集、第141、142頁、(一社)日本塑性加工学会
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 孝司
(72)【発明者】
【氏名】西井 清明
(72)【発明者】
【氏名】大坪 秀正
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健司
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03771216(US,A)
【文献】特開2009-066616(JP,A)
【文献】特開平05-208221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属板材(31、32)が重ね合わされた被接合部材(30)を冷間鍛造によって接合する冷間鍛造接合方法であって、
前記被接合部材(30)の圧力作動面(30a)を押圧するパンチ(12)、前記被接合部材が設置されるとともに、前記パンチに対向する部位にダイス開口部(14a)が形成されているダイス(14)、前記ダイス開口部に対して移動可能に配置され、前記被接合部材のうち前記圧力作動面の反対側の背面(30b)に背圧を付与する背圧パンチ(18)、および、前記背圧を調整する背圧調整部(20、22、24)を備える接合装置(10)に対して、前記被接合部材を設置することと、
前記被接合部材の前記背面に対して前記背圧パンチによって前記背圧を付与しながら、前記被接合部材の前記圧力作動面を前記パンチによって押圧することと、を含み、
前記押圧することにおいては、
前記被接合部材のうち前記パンチに押圧された部分が塑性変形することによって、前記圧力作動面に凹部(311)が形成されるとともに、前記背面に凸部(312)が形成され、
前記背圧調整部によって、前記パンチの押圧開始時から前記パンチの押圧終了時までの加工期間の後半での前記背圧の最大値は、前記加工期間の前半での前記背圧の最大値よりも大きくされ、
該塑性変形による複数の前記金属板材の表面の面積拡大によって該表面に出現した活性新生面同士が、前記パンチによる押圧力と前記背圧パンチによる背圧とによって、押し付けられて密着することにより、複数の前記金属板材が固相接合される、冷間鍛造接合方法。
【請求項2】
複数の金属板材(31、32)が重ね合わされた被接合部材(30)を冷間鍛造によって接合する冷間鍛造接合方法であって、
前記被接合部材(30)の圧力作動面(30a)を押圧するパンチ(12)、前記被接合部材が設置されるとともに、前記パンチに対向する部位にダイス開口部(14a)が形成されているダイス(14)、前記ダイス開口部に対して移動可能に配置され、前記被接合部材のうち前記圧力作動面の反対側の背面(30b)に背圧を付与する背圧パンチ(18)、および、前記背圧を調整する背圧調整部(20、22、24)を備える接合装置(10)に対して、前記被接合部材を設置することと、
前記被接合部材の前記背面に対して前記背圧パンチによって前記背圧を付与しながら、前記被接合部材の前記圧力作動面を前記パンチによって押圧することと、を含み、
前記押圧することにおいては、
前記被接合部材のうち前記パンチに押圧された部分が塑性変形することによって、前記圧力作動面に凹部(311)が形成されるとともに、前記背面に凸部(312)が形成され、
前記背圧調整部によって、前記パンチの押圧開始時から前記パンチの押圧終了時までの加工期間の後半での前記背圧の平均値は、前記加工期間の前半での前記背圧の平均値よりも大きくされ、
該塑性変形による複数の前記金属板材の表面の面積拡大によって該表面に出現した活性新生面同士が、前記パンチによる押圧力と前記背圧パンチによる背圧とによって、押し付けられて密着することにより、複数の前記金属板材が固相接合される、冷間鍛造接合方法。
【請求項3】
前記背圧パンチとして、前記背圧パンチの先端面(18a)のうち前記パンチの先端面(12a)に対して前記パンチの軸線方向で対向する部位の少なくとも一部が、丸みを帯びた凸形状であるものが用いられる、請求項1または2に記載の冷間鍛造接合方法。
【請求項4】
複数の金属板材(31、32)が重ね合わされた被接合部材(30)を冷間鍛造によって接合する冷間鍛造接合方法であって、
前記被接合部材(30)の圧力作動面(30a)を押圧するパンチ(12)、前記被接合部材が設置されるとともに、前記パンチに対向する部位にダイス開口部(14a)が形成されているダイス(14)、前記ダイス開口部に対して移動可能に配置され、前記被接合部材のうち前記圧力作動面の反対側の背面(30b)に背圧を付与する背圧パンチ(18)、および、前記背圧を調整する背圧調整部(20、22、24)を備える接合装置(10)に対して、前記被接合部材を設置することと、
前記被接合部材の前記背面に対して前記背圧パンチによって前記背圧を付与しながら、前記被接合部材の前記圧力作動面を前記パンチによって押圧することと、を含み、
前記押圧することにおいては、
前記被接合部材のうち前記パンチに押圧された部分が塑性変形することによって、前記圧力作動面に凹部(311)が形成されるとともに、前記背面に凸部(312)が形成され、
前記背圧パンチとして、前記背圧パンチの先端面(18a)のうち前記パンチの先端面(12a)に対して前記パンチの軸線方向で対向する部位の少なくとも一部が、丸みを帯びた凸形状であるものが用いられ、
該塑性変形による複数の前記金属板材の表面の面積拡大によって該表面に出現した活性新生面同士が、前記パンチによる押圧力と前記背圧パンチによる背圧とによって、押し付けられて密着することにより、複数の前記金属板材が固相接合される、冷間鍛造接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間鍛造による接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、冷間鍛造による接合方法が開示されている。この接合方法では、複数の金属板材が重ね合わされた被接合部材をパンチで押圧する冷間鍛造が行われる。被接合部材のうちパンチに押圧された部分が塑性変形することによって、被接合部材のうちパンチによって押圧される圧力作動面に凹部が形成されるとともに、被接合部材のうち圧力作動面の反対側の背面に凸部が形成される。被接合部材の塑性変形によって、複数の金属板材の表面に、酸化膜および汚染膜に覆われていない活性新生面が出現する。出現した活性新生面同士が押し付けられて密着することで、複数の金属板材が固相接合により接合される。
【0003】
この接合方法では、接合強度を高めるために、被接合部材の背面に背当部材が当てられた状態で、被接合部材の圧力作動面がパンチによって押圧される。パンチによる押圧によって、被接合部材とともに、背当部材が塑性変形する。被接合部材の背面に背当部材から背圧が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6117411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術の接合方法では、背当部材が塑性変形する。このため、加工のたびに背当部材を交換する必要がある。これが、生産性向上の妨げになる。
【0006】
そこで、本発明者は、この課題を解決するために、背圧パンチで背圧を付与する冷間鍛造による接合方法を検討した。この背圧パンチは、被接合部材が設置されるダイスのダイス開口部に対して移動可能に配置される。この背圧パンチは、被接合部材の圧力作動面がパンチによって押圧されたときに、パンチの押圧方向と同じ方向に移動する。このため、背圧パンチは、パンチの押圧力で変形しない。よって、加工のたびに背圧パンチを交換する必要が無い。そして、背圧パンチで一定の背圧を付与しながら、接合したところ、良好な接合が得られた。
【0007】
しかし、本発明者が検討した接合方法の実用化のためには、接合強度を増加させることが求められる。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、背圧パンチで背圧を付与しつつ、パンチで押圧力を付与する冷間鍛造によって、被接合部材を接合する方法であって、接合強度を増加させることができる冷間鍛造接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、
複数の金属板材(31、32)が重ね合わされた被接合部材(30)を冷間鍛造によって接合する冷間鍛造接合方法は、
被接合部材(30)の圧力作動面(30a)を押圧するパンチ(12)、被接合部材が設置されるとともに、パンチに対向する部位にダイス開口部(14a)が形成されているダイス(14)、ダイス開口部に対して移動可能に配置され、被接合部材のうち圧力作動面の反対側の背面(30b)に背圧を付与する背圧パンチ(18)、および、背圧を調整する背圧調整部(20、22、24)を備える接合装置(10)に対して、被接合部材を設置することと、
被接合部材の背面に対して背圧パンチによって背圧を付与しながら、被接合部材の圧力作動面をパンチによって押圧することと、を含み、
押圧することにおいては、
被接合部材のうちパンチに押圧された部分が塑性変形することによって、圧力作動面に凹部(311)が形成されるとともに、背面に凸部(312)が形成され、
背圧調整部によって、パンチの押圧開始時からパンチの押圧終了時までの加工期間の後半での背圧の最大値は、加工期間の前半での背圧の最大値よりも大きくされ、
該塑性変形による複数の前記金属板材の表面の面積拡大によって該表面に出現した活性新生面同士が、パンチによる押圧力と背圧パンチによる背圧とによって、押し付けられて密着することにより、複数の金属板材が固相接合される。
【0010】
これによれば、背圧調整部によって、加工期間の後半での背圧の最大値は、加工期間の前半での背圧の最大値よりも大きくされる。このため、加工期間の全期間での背圧の大きさを、本発明の加工期間の前半での背圧の最大値以下の小さな背圧で一定とする場合と比較して、活性新生面同士を押しつけ合う力を増加させることができる。このため、接合強度を増加させることができる。また、加工期間の全期間での背圧の大きさを、本発明の加工期間の後半での背圧の最大値と同じ大きな背圧で一定とする場合と比較して、塑性変形量を増加させることでき、活性新生面の面積を増加させることができる。このため、接合強度を増加させることができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によれば、
複数の金属板材(31、32)が重ね合わされた被接合部材(30)を冷間鍛造によって接合する冷間鍛造接合方法は、
被接合部材(30)の圧力作動面(30a)を押圧するパンチ(12)、被接合部材が設置されるとともに、パンチに対向する部位にダイス開口部(14a)が形成されているダイス(14)、ダイス開口部に対して移動可能に配置され、被接合部材のうち圧力作動面の反対側の背面(30b)に背圧を付与する背圧パンチ(18)、および、背圧を調整する背圧調整部(20、22、24)を備える接合装置(10)に対して、被接合部材を設置することと、
被接合部材の背面に対して背圧パンチによって背圧を付与しながら、被接合部材の圧力作動面をパンチによって押圧することと、を含み、
押圧することにおいては、
被接合部材のうちパンチに押圧された部分が塑性変形することによって、圧力作動面に凹部(311)が形成されるとともに、背面に凸部(312)が形成され、
背圧調整部によって、パンチの押圧開始時からパンチの押圧終了時までの加工期間の後半での背圧の平均値は、加工期間の前半での背圧の平均値よりも大きくされ、
該塑性変形による複数の前記金属板材の表面の面積拡大によって該表面に出現した活性新生面同士が、パンチによる押圧力と背圧パンチによる背圧とによって、押し付けられて密着することにより、複数の金属板材が固相接合される。
【0012】
これによれば、背圧調整部によって、加工期間の後半での背圧の平均値は、加工期間の前半での背圧の平均値よりも大きくされる。このため、加工期間の全期間での背圧の大きさを、本発明の加工期間の前半のいずれかのときの背圧と同じ小さな背圧で一定とする場合と比較して、活性新生面同士を押しつけ合う力を増加させることができる。このため、接合強度を増加させることができる。また、加工期間の全期間での背圧の大きさを、本発明の加工期間の後半のいずれかのときの背圧と同じ大きな背圧で一定とする場合と比較して、塑性変形量を増加させることでき、活性新生面の面積を増加させることができる。このため、接合強度を増加させることができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明によれば、
複数の金属板材(31、32)が重ね合わされた被接合部材(30)を冷間鍛造によって接合する冷間鍛造接合方法は、
被接合部材(30)の圧力作動面(30a)を押圧するパンチ(12)、被接合部材が設置されるとともに、パンチに対向する部位にダイス開口部(14a)が形成されているダイス(14)、ダイス開口部に対して移動可能に配置され、被接合部材のうち圧力作動面の反対側の背面(30b)に背圧を付与する背圧パンチ(18)、および、背圧を調整する背圧調整部(20、22、24)を備える接合装置(10)に対して、被接合部材を設置することと、
被接合部材の背面に対して背圧パンチによって背圧を付与しながら、被接合部材の圧力作動面をパンチによって押圧することと、を含み、
押圧することにおいては、
被接合部材のうちパンチに押圧された部分が塑性変形することによって、圧力作動面に凹部(311)が形成されるとともに、背面に凸部(312)が形成され、
背圧パンチとして、背圧パンチの先端面(18a)のうちパンチの先端面(12a)に対してパンチの軸線方向で対向する部位の少なくとも一部が、丸みを帯びた凸形状であるものが用いられ、
該塑性変形による複数の前記金属板材の表面の面積拡大によって該表面に出現した活性新生面同士が、パンチによる押圧力と背圧パンチによる背圧とによって、押し付けられて密着することにより、複数の金属板材が固相接合される。
【0014】
これによれば、背圧パンチの先端面の全体が平坦である場合と比較して、被接合部材のうちパンチの軸線方向でパンチと対向する部分における表面拡大比を増加でき、活性新生面を増加させることができる。また、背圧パンチの先端面の全体が平坦である場合と比較して、被接合部材のうち当該部分における接合界面の面圧を増加でき、活性新生面同士の結合を促進させることができる。これらの結果、接合強度を増加させることができる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態における接合装置の模式的断面図である。
図2図1の接合装置の上面図である。
図3図1の接合装置を用いて被接合部材を接合するときの接合装置の拡大断面図である。
図4図1の接合装置を用いて被接合部材を接合するときの背圧の変化を示すグラフである。
図5】第2実施形態における接合装置の模式的断面図である。
図6】第3実施形態における接合装置の模式的断面図である。
図7】第3実施形態における背圧の変化を示すグラフである。
図8】第4実施形態における背圧パンチの断面図である。
図9】第4実施形態における接合装置の拡大断面図である。
図10】第4実施形態の接合装置を用いて金属板材同士を接合したときの接合界面の面圧の分布を示すグラフである。
図11】第4実施形態の接合装置を用いて金属板材同士を接合したときの表面拡大比の分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
本実施形態の接合方法は、被接合部材である複数の金属板材を冷間鍛造によって接合する方法である。冷間鍛造は、常温環境下で金属部材に圧力を加えて、金属板材を塑性変形させる加工方法である。
【0019】
まず、本実施形態の接合方法に用いる接合装置について説明する。図1に示すように、接合装置10は、パンチ12と、ダイス14と、押さえ治具16と、背圧パンチ18と、ばね20と、を備える。図1は、接合装置10に対して被接合部材30が設置された状態を示している。
【0020】
パンチ12は、図示しない駆動装置から押される力によって、被接合部材30のパンチ12側の面である圧力作動面30aを押圧する雄型である。パンチ12は、図1、2に示すように、円柱状のピンである。パンチ12の被接合部材30側の先端面12aは、平坦である。駆動装置として、一般的なプレス加工に用いられるプレス機、例えば、サーボプレス機、他の機械式プレス機、液圧式プレス機を用いることができる。
【0021】
ダイス14は、パンチ12に対応する雌型である。ダイス14の表面に被接合部材30が設置される。すなわち、ダイス14は、被接合部材30に対してパンチ12側の反対側に配置される。ダイス14のうちパンチ12の軸線方向でパンチ12に対向する部位には、ダイス開口部14aが形成されている。ダイス開口部14aは、加工時に被接合部材30に形成される凸部が侵入する部分である。ダイス開口部14aの開口形状は、円である。ダイス開口部14aの直径は、パンチ12の直径よりも大きい。すなわち、ダイス開口部14aの最大開口幅は、パンチ12の最大幅よりも大きい。
【0022】
押さえ治具16は、ばね17から付与される力によって被接合部材30を押さえる。押さえ治具16は、被接合部材30をダイス14に固定するとともに、加工時の被接合部材30のパンチ12側の表面の変形を抑制する。図1、2に示すように、押さえ治具16は、円柱状のブロックである。押さえ治具16の中央部には、パンチ12が移動する治具開口部16aが形成されている。押さえ治具16として、一般的なプレス加工に用いられるものと同じ治具を用いることができる。
【0023】
背圧パンチ18は、被接合部材30に対してパンチ12側の反対側に配置される。背圧パンチ18は、ばね20から押される力によって、被接合部材30に背圧を付与する。背圧は、被接合部材30のパンチ12側とは反対側の面である背面30bに作用する圧力である。すなわち、背圧パンチ18は、被接合部材30の背面30bを押圧する。背圧パンチ18は、パンチ12の駆動装置に、直接駆動されない。
【0024】
背圧パンチ18は、円柱状のピンである。背圧パンチ18は、ダイス開口部14aに対して移動可能に配置される。背圧パンチ18は、ダイス開口部14aを背圧パンチ18の軸方向に移動する。背圧パンチ18は、背圧パンチ18の軸心とパンチ12の軸心とが一致するように配置される。背圧パンチ18の直径は、パンチ12の直径よりも大きい。すなわち、図1に示すように、背圧パンチ18の軸心とパンチ12の軸心とを含む平面で切断した接合装置10の断面において、背圧パンチ18の幅は、パンチ12の幅よりも大きい。また、背圧パンチ18の被接合部材30側の先端面18aは、平坦である。
【0025】
ばね20は、背圧パンチ18から被接合部材30に付与する背圧を調整する背圧調整部である。ばね20の一端側は、背圧パンチ18に接続されている。ばね20の他端側は、図示しない固定部に固定されている。後述の通り、パンチ12からの押圧によって被接合部材30が変形することで、背圧パンチ18がばね20を収縮させる方向に移動する。背圧パンチ18の移動によって、ばね20が収縮すると、ばね20を収縮させる荷重に対する反力が生じる。この反力が、背圧として背圧パンチ18から被接合部材30に付与される。このとき、背圧パンチ18の移動量が増加するにつれて、ばね20の収縮量が増加し、反力が増加する。このように、ばね20は、背圧パンチ18の移動量の増加に伴って、背圧を増加させる。
【0026】
被接合部材30は、重ね合わされた第1金属板材31と第2金属板材32である。第1金属板材31と第2金属板材32とのそれぞれは、少なくとも接合箇所が板状である。すなわち、第1金属板材31と第2金属板材32とのそれぞれは、接合箇所のみが板状であっても、全体が板状であってもよい。
【0027】
また、第1金属板材31の硬度は、第2金属板材32の硬度よりも高い。なお、第1金属板材31の硬度と、第2金属板材32の硬度とが同じであってもよい。
【0028】
第1金属板材31と第2金属板材32とは、種類が異なる金属材料である異種金属材料で構成される。異種金属材料は、金属材料の成分として含まれる元素の少なくとも一部が異なる材料、金属材料の成分として含まれる元素のすべてが同じ場合でも、それらの組成が異なる材料である。主要成分として含まれる元素が同じ合金であっても、組成が異なる合金同士は、異種金属材料である。金属材料としては、Al系金属、鉄系金属、Cu系金属、Ti系金属、Mg系金属等が挙げられる。異種金属材料の組み合わせとしては、例えば、Al系金属と鉄系金属との組み合わせ、Cu系金属とAl系金属との組み合わせ等が挙げられる。なお、Al系金属には、純アルミニウム、アルミニウム合金が含まれる。鉄系金属には、純鉄、鋼に代表される鉄合金が含まれる。Cu系金属には、純銅、銅合金が含まれる。Ti系金属には、純チタン、チタン合金が含まれる。Mg系金属には、マグネシウム合金が含まれる。また、第1金属板材31と第2金属板材32とは、同種金属材料で構成されてもよい。
【0029】
次に、接合装置10を用いた被接合部材30の接合方法および接合メカニズムについて説明する。まず、図1に示すように、接合装置10に対して被接合部材30が設置される。このとき、硬度が高い第1金属板材31側がパンチ12側となるように、被接合部材30がダイス14の上に設置される。
【0030】
続いて、被接合部材30の上側から押さえ治具16によって被接合部材30が押さえられる。これにより、ダイス14と押さえ治具16との間に被接合部材30が固定される。このとき、背圧パンチ18は、被接合部材30に当たっており、ばね20から加えられる力によって、被接合部材30を押している状態である。すなわち、背圧パンチ18は、被接合部材30の背面30bに対して背圧を付与している状態である。なお、被接合部材30の設置と、押さえ治具16による被接合部材30の押さえとが、同時に行われてもよい。
【0031】
続いて、この状態で、治具開口部16aを被接合部材30に向かってパンチ12が移動する。さらに、図3に示すように、押圧開始時の位置から押圧終了時の位置まで、パンチ12が移動する。図3の左側部分は、パンチ12の押圧開始時の被接合部材30の状態を示している。図3の右側部分は、パンチ12の押圧終了時の被接合部材30の状態を示している。押圧開始時の位置は、パンチ12による被接合部材30の押圧が開始されるときのパンチ12の位置であり、パンチ12が被接合部材30に接する位置である。押圧終了時の位置は、パンチ12による被接合部材30の押圧が終了されるときのパンチ12の位置である。これにより、背圧パンチ18が被接合部材30の背面30bに対して背圧を付与しながら、パンチ12が被接合部材30の圧力作動面30aを押圧する。
【0032】
パンチ12によって被接合部材30が押圧されると、図3の右側部分に示すように、被接合部材30のうちパンチ12に押された部分が塑性変形する。具体的には、第1金属板材31のうちパンチ12に対向する部分が、パンチ12によって第2金属板材32側に押されることで、第1金属板材31のパンチ12側に凹部311が形成される。第1金属板材31の第2金属板材32側に凸部312が形成される。この凸部312によって第2金属板材32が押されることで、第2金属板材32の第1金属板材31側に凹部321が形成される。第2金属板材32のパンチ12側とは反対側に凸部322が形成される。
【0033】
このように、塑性変形によって、被接合部材30のパンチ側に凹部311が形成され、被接合部材30のパンチ12側の反対側に凸部322が形成される。被接合部材30の凸部322は、ダイス開口部14a内に位置する。
【0034】
被接合部材30の凸部322が形成される過程において、背圧パンチ18が凸部322に押されることで、背圧パンチ18は、ダイス開口部14aをパンチ12の移動方向(すなわち、パンチ12の押圧方向)と同じ方向に移動する。すなわち、背圧パンチ18は、ダイス開口部14aを、ばね20を収縮させる方向に移動する。このとき、背圧パンチ18の移動量の増加に伴って、ばね20の収縮量が増加し、ばね20を収縮させる荷重に対する反力が増加する。このため、被接合部材30に対するパンチ12による押圧開始時から被接合部材30に対するパンチ12による押圧終了時までの加工期間の全期間において、図4に示すように、背圧パンチ18の移動量が増加するにつれて、背圧パンチ18が被接合部材30に付与する背圧が増加する。
【0035】
このように、本実施形態の接合方法は、背圧パンチ18で背圧を付与しつつ、パンチ12で押圧力を付与する冷間鍛造によって、被接合部材30を接合する。この冷間鍛造によって被接合部材30が塑性変形する過程で、第1金属板材31と第2金属板材32とのそれぞれの表面の面積が拡大する。これにより、第1金属板材31と第2金属板材32とのそれぞれの表面に存在する酸化膜および汚染膜が破壊される。第1金属板材31と第2金属板材32とのそれぞれの表面に、酸化膜および汚染膜に覆われていない活性新生面が出現する。さらに、パンチ12による押圧力と背圧パンチ18による背圧とによって、活性新生面同士が押し付けられて密着する。これにより、固相結合が生じ、金属的結合が実現される。すなわち、第1金属板材31と第2金属板材32とが固相接合される。
【0036】
加工期間の前半では、図3の左側部分に示される矢印P1のように、小さな背圧が付与される。加工期間の前半は、加工期間のうち加工期間の中間時点よりも前の期間である。加工期間の前半には、押圧開始時が含まれる。パンチ12の押圧が開始すると、被接合部材30の変形が開始する。したがって、押圧開始時は、被接合部材30の変形開始時に対応する。パンチ12の押圧時に被接合部材30に背圧が付与されない場合、被接合部材30が破断する。そこで、加工期間の前半の背圧は、パンチ12の押圧によって被接合部材30が破断せず、被接合部材30の塑性変形が可能な程度の背圧とされる。これにより、塑性変形による接合箇所の表面の面積の拡大が促進される。
【0037】
また、加工期間の後半では、図3の右側部分に示される矢印P2のように、加工期間の前半での背圧よりも大きな背圧が付与される。加工期間の後半は、加工期間のうち加工期間の中間時点よりも後の期間である。加工期間の後半には、押圧終了時が含まれる。パンチ12の押圧が終了すると、被接合部材30の変形が終了する。したがって、押圧終了時は、被接合部材30の変形終了時に対応する。
【0038】
図4に示すように、加工期間の後半での背圧は、加工期間の後半内のいずれの時点においても、加工期間の前半内のいずれの時点における背圧よりも大きな背圧とされる。このようにして、加工期間の後半での背圧の最大値は、加工期間の前半での背圧の最大値よりも大きくされる。また、加工期間の後半での背圧の平均値は、加工期間の前半での背圧の平均値よりも大きくされる。このため、加工期間の後半では、加工期間の前半よりも接合界面の面圧が増加し、活性新生面同士を押し付け合う力が増加する。
【0039】
なお、本実施形態では、加工期間の前半での背圧の最大値と加工期間の後半での背圧の最大値とのそれぞれが、所望の大きさとなるように、所定のばね定数を持つばね20が選択される。換言すると、加工期間の前半での背圧の平均値と加工期間の後半での背圧の平均値とのそれぞれが、所望の大きさとなるように、所定のばね定数を持つばね20が選択される。
【0040】
以上の説明の通り、本実施形態によれば、被接合部材30の圧力作動面30aへのパンチ12の押圧時に、背圧パンチ18によって被接合部材30の背面30bに背圧が付与される。背圧パンチ18は、パンチ12の押圧力によってダイス開口部14aを移動する。このため、背圧パンチ18は、パンチ12の押圧力で変形しない。よって、加工のたびに、背圧パンチ18を交換する必要が無く、生産性が高い。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、ばね20によって、加工期間の後半での背圧の最大値は、加工期間の前半での背圧の最大値よりも大きくされる。これにより、加工期間の全期間での背圧の大きさを、本実施形態の加工期間の前半での背圧の最大値以下の小さな背圧で一定とする場合と比較して、活性新生面同士を押しつけ合う力を増加させることができる。このため、接合強度を増加させることができる。また、加工期間の全期間での背圧の大きさを、本実施形態の加工期間の後半での背圧の最大値と同じ大きな背圧で一定とする場合と比較して、塑性変形量を増加させることでき、活性新生面の面積を増加させることができる。このため、接合強度を増加させることができる。
【0042】
換言すると、本実施形態によれば、ばね20によって、加工期間の後半での背圧の平均値は、加工期間の前半での背圧の平均値よりも大きくされる。これにより、加工期間の全期間での背圧の大きさを、本実施形態の加工期間の前半のいずれかのときの背圧と同じ小さな背圧で一定とする場合と比較して、活性新生面同士を押しつけ合う力を増加させることができる。このため、接合強度を増加させることができる。また、加工期間の全期間での背圧の大きさを、本実施形態の加工期間の後半のいずれかのときの背圧と同じ大きな背圧で一定とする場合と比較して、塑性変形量を増加させることでき、活性新生面の面積を増加させることができる。このため、接合強度を増加させることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、加工期間の後半での背圧は、加工期間の後半内のいずれの時点においても、加工期間の前半内のいずれの時点における背圧よりも大きな背圧とされる。しかしながら、加工期間の後半での背圧の最大値が、加工期間の前半での背圧の最大値よりも大きくなっていれば、加工期間の後半での背圧が一時的に、加工期間の前半内のいずれかの時点における背圧よりも小さくなってもよい。また、加工期間の後半での背圧の平均値が、加工期間の前半での背圧の平均値よりも大きくなっていれば、加工期間の後半での背圧が一時的に、加工期間の前半内のいずれかの時点における背圧よりも小さくなってもよい。
【0044】
(第2実施形態)
図5に示すように、本実施形態は、接合装置10が背圧調整部としてエアシリンダ22を備える点で、第1実施形態と異なる。エアシリンダ22は、内部に空気が充填された容器221と、容器221の内部に配置されたピストン222とを有する。ピストン222は、容器221の内部の容積を変更する。ピストン222は、背圧パンチ18と連動する。
【0045】
パンチ12の押圧によって被接合部材30を介して背圧パンチ18が移動する。この背圧パンチ18の移動によって、エアシリンダ22に充填されている空気が圧縮される。空気が圧縮されることで、空気を圧縮する荷重に対する反力が発生する。背圧パンチ18の移動量が増加するにつれて、エアシリンダ22に充填されている空気の圧縮量が増加し、反力が増加する。この反力が、背圧として背圧パンチ18から被接合部材30に付与される。このように、エアシリンダ22は、背圧パンチ18の移動量の増加に伴って、背圧を増加させる。
【0046】
接合装置10の他の構成および接合方法は、第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同じ効果が得られる。なお、本実施形態では、背圧調整部として、空気が容器221の内部に充填されたエアシリンダ22が用いられている。しかし、背圧調整部として、空気以外の気体が容器221の内部に充填されたガスシリンダが用いられてもよい。
【0047】
(第3実施形態)
図6に示すように、本実施形態は、接合装置10が背圧調整部としてサーボモータ24を備える点で、第1実施形態と異なる。サーボモータ24は、背圧パンチ18を駆動する電動モータである。サーボモータ24は、背圧パンチ18から被接合部材30の背面30bに付与する背圧を段階的および連続的に増加させることができる。接合装置10の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0048】
本実施形態の接合方法では、パンチ12による押圧開始時から押圧終了時までの期間において、サーボモータ24によって、図7に示すように、背圧を制御する。具体的には、
押圧開始時では、第1実施形態と同様に、背圧は小さな値とされる。押圧開始時からある時点まで、塑性変形を促進させるために、背圧は徐々に上昇する。その後、ある時点で、背圧は急上昇し、ある時点から押圧終了時まで、背圧が大きな値で一定とされる。
【0049】
このように、本実施形態の接合方法では、サーボモータ24によって、背圧が段階的に上昇されることで、図7に示すように、加工期間の後半での背圧の最大値が、加工期間の前半での背圧の最大値よりも大きくされる。換言すると、加工期間の後半での背圧の平均値が、加工期間の前半での背圧の平均値よりも大きくされる。接合方法のうち背圧の調整以外の部分については、第1実施形態と同じである。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0050】
なお、本実施形態では、加工期間の中間時点よりも後の時点で、背圧が急上昇される。しかしながら、加工期間の後半での背圧の最大値が、加工期間の前半での背圧の最大値よりも大きくなっていれば、中間時点よりも前の時点で、背圧が急上昇されてもよい。また、加工期間の後半での背圧の平均値が、加工期間の前半での背圧の平均値よりも大きくなっていれば、中間時点よりも前の時点で、背圧が急上昇されてもよい。
【0051】
(第4実施形態)
図8に示すように、本実施形態は、背圧パンチ18の先端面18aの形状が、第1実施形態と異なる。先端面18aは、パンチ12に対向する領域が盛り上がる凸形状である。より具体的には、先端面18aは、凸部18bと、凸部18bの周囲に位置する平坦部18cとを有する。凸部18bは、凸球面である。平坦部18cは、平坦面である。
【0052】
図9に示すように、凸部18bは、先端面18aのうちパンチ12の軸線方向でパンチ12の先端面12aに対向する部位の全部に位置する。先端面18aのうちパンチ12の軸線方向でパンチ12の先端面12aに対向する部位とは、パンチ12の先端面12aをパンチ12の軸線方向で背圧パンチ18の先端面18aに投影したときに、投影したパンチ12の先端面12aの全部と一致する部位である。このように、本実施形態では、先端面18aのうちパンチ12の軸線方向でパンチ12の先端面12aに対向する部位の全部が凸形状である。
【0053】
この背圧パンチ18を用いて、図9に示すように、第1実施形態と同様に、冷間鍛造による接合が行われる。先端面18aの形状以外の接合装置10の構成および接合方法については、第1実施形態と同じである。図9の左側部分は、押圧開始時の接合部位の断面図を示している。図9の右側部分は、押圧終了時の接合部位の断面図を示している。
【0054】
本実施形態によれば、被接合部材30のうちパンチ12と背圧パンチ18の凸部18bとの間に挟まれる部分に、パンチ12からの押圧力が集中する。このため、図9の右側部分に示されるように、背圧パンチ18の先端面18aが平坦である場合と比較して、当該部分での材料流動が大きくなり、当該部分が薄くなる。
【0055】
また、図10中の実線で示すように、図10中の破線で示す、背圧パンチ18の先端面18aが平坦である場合と比較して、当該部分での接合界面の面圧が増加する。図10の縦軸は、押圧終了時の接合界面の面圧を示している。図10の横軸は、図9中の矢印で示すように、背圧パンチ18の径方向における中心位置からの距離rを示している。
【0056】
また、図11中の実線で示すように、図11中の破線で示す、背圧パンチ18の先端面18aが平坦である場合と比較して、当該部分での第1金属板材31と第2金属板材32のそれぞれの表面拡大比が増加する。図11の縦軸は、押圧終了時の第1金属板材31と第2金属板材32の一方の表面拡大比を示している。図11の横軸は、図9中の矢印で示すように、背圧パンチ18の径方向における中心位置からの距離rを示している。
【0057】
以上の説明のように、本実施形態によれば、背圧パンチ18の先端面18aのうちパンチ12の先端面12aと対向する部位が凸形状である背圧パンチ18が用いられる。このため、背圧パンチ18の先端面18aの全体が平坦である場合と比較して、被接合部材30のうちパンチ12の軸線方向でパンチ12と対向する部分における表面拡大比を増加でき、活性新生面を増加させることができる。また、背圧パンチ18の先端面18aの全体が平坦である場合と比較して、被接合部材30のうち当該部分における接合界面の面圧を増加でき、活性新生面同士の結合を促進させることができる。これらの結果、接合強度を増加させることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、背圧パンチ18の先端面18aのうちパンチ12の先端面12aと対向する部位の全部が凸形状である。しかしながら、背圧パンチ18の先端面18aのうちパンチ12の先端面12aと対向する部位の一部が凸形状であってもよい。
【0059】
また、本実施形態では、背圧パンチ18の先端面18aのうちパンチ12の先端面12aと対向する部位のみが凸形状である。しかしながら、背圧パンチ18の先端面18aの全部が凸形状であってもよい。
【0060】
また、本実施形態では、凸部18bは、凸球面である。しかしながら、凸部18bは、球面以外の曲面である凸曲面であってもよい。すなわち、背圧パンチ18の先端面18aのうちパンチ12の先端面12aと対向する部位の少なくとも一部は、丸みを帯びた凸形状であればよい。
【0061】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、加工期間の後半での背圧の最大値は、加工期間の前半での背圧の最大値よりも大きくされる。換言すると、加工期間の後半での背圧の平均値は、加工期間の前半での背圧の平均値よりも大きくされる。しかしながら、加工期間の全期間で、背圧が一定の大きさにされてもよい。この場合であっても、本実施形態の効果が得られる。
【0062】
(他の実施形態)
(1)背圧調整部として、上記した各実施形態とは異なるものを用いることができる。例えば、背圧パンチ18がパンチ12の押圧方向と同じ方向に移動するとき、背圧パンチ18の位置を固定する固定部材に背圧パンチ18が到達するまでは、油圧式の背圧付与部によって、背圧パンチ18から被接合部材30に対して一定の背圧が付与される。そして、固定部材に背圧パンチ18が到達した後は、パンチ12の押圧力に対する反力によって、背圧が付与される。これにより、加工期間の後半の背圧の最大値が、加工期間の前半の背圧の最大値よりも大きくされてもよい。換言すると、加工期間の後半の背圧の平均値が、加工期間の前半の背圧の平均値よりも大きくされてもよい。この場合、油圧式の背圧付与部と、固定部材とが、背圧調整部を構成する。
【0063】
(2)上記した各実施形態では、パンチ12と背圧パンチ18とのそれぞれは、柱状のピンであり、被接合部材30を点状に押す形状である。しかしながら、パンチ12と背圧パンチ18とのそれぞれは、他の形状であってもよい。例えば、パンチ12と背圧パンチ18とのそれぞれは、被接合部材30を線状に押す形状であってもよい。また、パンチ12と背圧パンチ18とのそれぞれは、被接合部材30を周方向に連続する環状に押す形状であってもよい。
【0064】
(3)上記した各実施形態では、被接合部材30は、2つの金属板材である。しかしながら、被接合部材30は、3つ以上の金属板材であってもよい。
【0065】
(4)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0066】
10 接合装置
12 パンチ
14 ダイス
18 背圧パンチ
20 ばね
22 エアシリンダ
24 サーボモータ
30 被接合部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11