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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/48 20200101AFI20240613BHJP
【FI】
D06F33/48
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020111517
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010785
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】川口 智也
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-136792(JP,A)
【文献】特開2017-113232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0294839(US,A1)
【文献】特開2004-222760(JP,A)
【文献】特開2008-061856(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0003517(KR,A)
【文献】特開2006-006700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルセータが底部に配置された脱水槽と、
前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置される3つ以上のバッフルと、
各バッフルに個別に調整水を注水可能な注水装置と、
前記脱水槽の振動を検出する加速度検出手段と、
前記脱水槽の回転に応じてパルス信号を発信する脱水槽位置検出装置と、
前記脱水槽内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段と、
脱水工程において偏芯量が所定の注水用偏芯量閾値に達したとき、偏芯位置に対応する前記バッフルに注水するように前記注水装置を制御する注水制御手段と、
前記3つ以上のバッフルに対する注水状態に基づいて、脱水工程において前記脱水槽のアンバランスが解消された状態における最高回転数を決定する最高回転数決定手段と、
脱水工程において前記脱水槽を回転駆動するモータを制御するモータ制御手段とを備えることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記最高回転数決定手段は、前記バッフルに対して注水された注水量に基づいて脱水工程における最高回転数を決定することを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記最高回転数決定手段は、注水された前記バッフルの分布に基づいて脱水工程における最高回転数を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記脱水槽が内部に配置された外槽を有しており、
前記最高回転数決定手段は、前記外槽の振幅に基づいて脱水工程における最高回転数を決定することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の洗濯機。
【請求項5】
前記脱水槽の変形強度は、周方向に均一でない場合において、
前記最高回転数決定手段は、注水された前記バッフルの位置と前記脱水槽の変形強度との関係に基づいて脱水工程における最高回転数を決定することを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水槽の回転を継続したまま脱水槽のアンバランスを解消して、脱水時における脱水槽の偏心による振動や騒音を抑制可能な洗濯機に関する。
【0002】
一般家庭あるいはコインランドリーなどに設置される一般的な洗濯機は、多数の通水孔が内周面に形成された脱水槽を有している。そのため、脱水時に脱水槽内の洗濯物から脱水された水は、多数の通水孔を介して脱水槽の外部へ排水される。また、脱水時に洗濯物の偏りが大きい場合、回転時の脱水槽の偏心が大きくなり、回転に大きなトルクが必要となるので脱水運転を開始することができない。
【0003】
そこで、特許文献1には、脱水時に洗濯槽内の衣類のアンバランス量およびアンバランス位置を検出し、アンバランスがある場合には、脱水槽の周方向に均等に複数設けられたバッフルへの注水を行うことにより脱水槽のアンバランス状態を積極的に解消しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-56025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の洗濯機では、脱水槽のアンバランス状態を解消するために、洗濯槽内の衣類のアンバランス位置と反対側にあるバッフルに対して、アンバランス量に応じた量の調整水が注水される。そのため、調整水を注水した後、脱水槽を回転させると、衣類の偏りとバッフルに注水された調整水が、互いに脱水時の遠心力により脱水槽を引っ張ることにより、脱水槽を楕円形に変形させようとする。脱水槽が楕円形になった場合、外槽と脱水槽と接触することにより騒音が発生するとともに脱水槽が塑性変形してしまうことから、脱水槽を高速で回転させて脱水率を向上させるのが困難である。
【0006】
そこで、本発明は、脱水時において脱水槽を高速で回転させて脱水率を向上させることができる洗濯機を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る洗濯機は、パルセータが底部に配置された脱水槽と、前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置される3つ以上のバッフルと、各バッフルに個別に調整水を注水可能な注水装置と、前記脱水槽の振動を検出する加速度検出手段と、前記脱水槽の回転に応じてパルス信号を発信する脱水槽位置検出装置と、前記脱水槽内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段と、脱水工程において偏芯量が所定の注水用偏芯量閾値に達したとき、偏芯位置に対応する前記バッフルに注水するように前記注水装置を制御する注水制御手段と、前記3つ以上のバッフルに対する注水状態に基づいて、脱水工程において前記脱水槽のアンバランスが解消された状態における最高回転数を決定する最高回転数決定手段と、脱水工程において前記脱水槽を回転駆動するモータを制御するモータ制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る洗濯機において、前記最高回転数決定手段は、前記バッフルに対して注水された注水量に基づいて脱水工程における最高回転数を決定することが好適である。
【0009】
本発明に係る洗濯機において、前記最高回転数決定手段は、注水された前記バッフルの分布に基づいて脱水工程における最高回転数を決定することが好適である。
【0010】
本発明に係る洗濯機において、前記脱水槽が内部に配置された外槽を有しており、前記最高回転数決定手段は、前記外槽の振幅に基づいて脱水工程における最高回転数を決定することが好適である。
【0011】
本発明に係る洗濯機において、前記脱水槽の変形強度は、周方向に均一でない場合において、
前記最高回転数決定手段は、注水された前記バッフルの位置と前記脱水槽の変形強度との関係に基づいて脱水工程における最高回転数を決定することが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、脱水工程において脱水槽のアンバランス状態を解消するためにバッフルに調整水が注水されるが、調整水を注水した後の脱水工程における最高回転数がバッフルの注水状態に基づいて決定される。そのため、脱水槽が楕円形に変形するのを抑制しつつ、脱水工程における最高回転数を可能な限り大きくすることができる。
【0013】
本発明によれば、衣類の偏りとバッフルに注水された調整水が、互いに脱水時の遠心力により脱水槽を引っ張る力の大きさを考慮することにより、脱水槽が楕円形に変形するのを抑制できる。これにより、外槽と脱水槽の接触や脱水槽の塑性変形を防止しつつ、高速脱水回転による脱水率の向上を行うことができる。
【0014】
本発明によれば、注水されたバッフルの分布を考慮することにより、より高速脱水化が可能となる。
【0015】
本発明によれば、外槽の振幅を考慮することにより、騒音の発生を抑制しつつ、高速脱水化が可能となる。
【0016】
本発明によれば、脱水槽の変形強度を考慮することにより、適切な脱水回転数を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る洗濯機1の外観を示す斜視図である。
図2図1の洗濯機1の構成を示す模式図である。
図3図1の洗濯機1の一部を上方から見た平面図である。
図4図1の洗濯機1が有する脱水槽2の横断面図である。
図5図5(a)は、脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、図5(b)は、図5(a)のa-a線における断面図である。
図6図1の洗濯機1の電気系ブロック図である。
図7】脱水槽2が変形する形態を説明する図である。
図8】脱水槽2が変形する形態を説明する図である。
図9】最高回転数決定部63aが、脱水工程における最高回転数を決定する際に使用する対応表を示している。
図10図1の洗濯機1の脱水工程での制御の流れを示すフローチャートである。
図11図10の第1バッフル注水処理の制御を示すフローチャートである。
図12図10の第2バッフル注水処理の制御を示すフローチャートである。
図13図13(a)は、本発明の第2実施形態に係る洗濯機の脱水槽2の製造方法を説明する図であり、図13(b)及び図13(c)は、脱水槽2が変形する形態を説明する図である。
図14図14(a)は、本発明の第2実施形態に係る洗濯機の脱水槽2の模式図であり、図14(b)は、最高回転数決定部63aが、脱水工程における最高回転数を決定する際に使用する対応表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の洗濯機1について、図に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る縦型の洗濯機(以下、「洗濯機」と称す。)1の外観を示す斜視図である。図2は、本実施形態の洗濯機1の構成を示す模式図である。図3は、本実施形態の洗濯機1の一部を上方から見た平面図である。図4は、洗濯機1が有する脱水槽2の横断面図である。
【0020】
本実施形態の洗濯機1は、洗濯機本体1aと、脱水槽2と、外槽3と、受水リングユニット5と、注水装置30(ノズルユニット)と、駆動部50と、制御手段60(図6参照)とを備える。
【0021】
図1に示す洗濯機本体1aは、略直方体形状である。洗濯機本体1aの上面には、脱水槽2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が形成されるとともに、この開口11を開閉可能な開閉蓋11aが取り付けられる。
【0022】
外槽3は、洗濯機本体1aの内部に配置された有底筒状の部材であり、内部に洗濯水を貯留可能である。外槽3の底面には、排水口10が形成され、排水口10には、排水配管10aが接続される。図2に示すように、外槽3の外周面3aの上端部には、水平と垂直の2方向の加速度を検出可能な加速度センサ56が取り付けられる。本実施形態では、加速度センサ56により外槽3の加速度が検出されるが、脱水槽2の加速度は、外槽3の加速度と略同一であるとする。
【0023】
脱水槽2は、外槽3内において外槽3と同軸に配置されるとともに、回転自在に支持される有底筒状の部材である。脱水槽2は、内部に洗濯物を収容可能で、その壁面2aに多数の通水孔2t(図5(a)参照)を有する。
【0024】
このような脱水槽2の底部2c中央には、パルセータ(撹拌翼)4が回転自在に配置される。図2に示すように、パルセータ4は、略円盤形状のパルセータ本体4aと、パルセータ本体4aの上面に形成される複数の上羽根部4bと、パルセータ本体4aの下面に形成される複数の下羽根部4cとを有する。このようなパルセータ4は、外槽3内に貯留された洗濯水を撹拌して水流を発生させる。
【0025】
図4に示すように、脱水槽2の内周面2a1には、周方向に等間隔(等角度)で通水管部としてのバッフル(注水管)8が3つ設けられる。各バッフル8は、脱水槽2の底部2cから上端部に亘って上下方向に延び、脱水槽2の内周面2a1から軸線S1に向けて突出して形成される。また、各バッフル8は、中空状であり、横断面形状が円弧状に形成される。このように、バッフル8の形状が、脱水槽2の軸線S1への突出が小さく、脱水槽2の周方向に沿って広がる形状であることで、脱水槽2の収容空間が狭くなることを抑制できる。
【0026】
図2に示すように、このようなバッフル8の上端部には、横長の循環水口80が形成される。また、バッフル8の下端部には、脱水槽2の底部2c近傍、より具体的にはパルセータ本体4aよりも下方で開口する開口部81が形成される。
【0027】
そのため、排水バルブ10a図2参照)が閉じられて外槽3内に洗濯水が貯められた状態にある洗い工程では、図2において矢印で示すように、パルセータ4の下羽根部4cで撹拌された洗濯水が開口部81より浸入してバッフル8内をかけあがり、循環水口80より吐出され、衣類がシャワー洗いされる。またこの動作が繰り返されることで、洗濯水が脱水槽2内で循環する。すなわち、バッフル8は、洗濯水の循環機能を有する。
【0028】
バッフル8内の上端近傍には、循環水口80から脱水槽2の内周面2a1の近接位置まで延びる仕切片8aが設けられる。仕切片8aは、循環水口80の上端縁から半径方向外側に向かって延びて、その後、下方に湾曲する。このような仕切片8aと脱水槽2の内周面2a1との間には隙間8b(図2参照)が形成されており、受水リングユニット5から供給される調整水は隙間8bを介して下方に流れ込む。
【0029】
受水リングユニット5は、図3に示すように、上方に向けて開放された環状の導水樋5a,5b,5cが脱水槽2の軸線S1に向けて径方向に三層重層されて構成されるもので、図2に示すように脱水槽2の内周面2a1の上端部に固定される。導水樋5a,5b,5cは、バッフル8と同数だけ設けられ、単独で何れかのバッフル8に調整水を流せるように形成される。
【0030】
導水樋5aの下端部には、図3に示すように、径方向外側に向かって開口する開口5Aが形成されており、導水樋5aとバッフル8の内部とは連通している。導水樋5bの下端部には、径方向外側に向かって開口する開口5Bが形成されており、導水樋5aの下方を通過する通水経路5Baを介して、導水樋5bとバッフル8の内部とは連通している。導水樋5cの下端部には、径方向外側に向かって開口する開口5Cが形成されており、導水樋5a及び導水樋5bの下方を通過する通水経路5Caを介して、導水樋5cとバッフル8の内部とは連通している。
【0031】
受水リングユニット5の外周側には、環状の流体バランサ12が取り付けられている。流体バランサ12は、既知の流体バランサと同様のものである。
【0032】
注水装置30は、このような導水樋5a,5b,5cに個別に調整水を注水するものである。注水装置30は、導水樋5a,5b,5cの上方に配置された3本の注水ノズル30a,30b,30cと、これらの注水ノズル30a,30b,30cにそれぞれ接続される給水バルブ31a,31b,31cとを有する。注水ノズル30a,30b,30cは、導水樋5a,5b,5cと同数だけ設けられ、それぞれ別々の導水樋5a,5b,5cに注水可能な位置に、外槽3の上端部に取り付けられる。なお、本実施形態では調整水として水道水が用いられる。また、給水バルブ31a,31b,31cとしては、方向切換給水バルブを採用することも可能である。
【0033】
図2に示す駆動部50は、モータ51によりプーリー52およびベルト53を回転させるとともに、脱水槽2の底部2cに向けて延出する駆動軸54を回転させて、脱水槽2やパルセータ4に駆動力を与え、脱水槽2やパルセータ4を回転させる。洗濯機1は、洗い工程では主としてパルセータ4のみを回転させ、脱水工程では脱水槽2とパルセータ4とを一体的に高速で回転させる。また、一方のプーリー53の近傍には、プーリー52に形成されたマーク52aの通過を検出できる近接スイッチ55が設けられる。
【0034】
図5(a)は、脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、図5(b)は、図5(a)のa-a線における断面図である。
【0035】
バッフル8の内周側壁の下端近傍には、図5(b)に示すように、径方向内側に突出した突出壁部82を有している。すなわち、バッフル8の内周側壁の一部が径方向内側に向かって突出している。バッフル8の内部には、図5(a)に示すように、その外周側壁から径方向内側に向かって突出する水受け板85が形成されている。
【0036】
水受け板85は、突出壁部82と同一高さに配置されており、水受け板85の径方向内側端部85aは、突出壁部82の内部に配置される。水受け板85の径方向内側端部85aと突出壁部82の先端内周面との間には、空隙が形成されており、貯水空間8Taに供給された調整水は、その空隙を介して排水空間8Tbに流れ込む。
【0037】
バッフル8の内部空間は、水受け板85が配置された突出壁部82より上方に配置される貯水空間8Taと、突出壁部82より下方に配置される排水空間8Tbとを有している。貯水空間8Taは、導水樋5a,5b,5cからの調整水を貯水する空間であり、排水空間8Tbは、貯水空間8Taから流れ出た調整水を排水する空間である。
【0038】
図5(a)及び図5(b)に示すように、貯水空間8Taの径方向厚さと排水空間8Tbの径方向厚さとは略同一であるのに対し、排水空間8Tbの上下方向長さは貯水空間8Taの上下方向長さより短い。貯水空間8Taの周方向長さは、排水空間8Tbの周方向長さより長くなるように形成される。そのため、貯水空間8Taの体積は、排水空間8Tbの体積より大きい。
【0039】
バッフル8の貯水空間8Taに注水された調整水は、突出壁部82内に配置された水受け板85により下方に流れないように保持され、水受け板85の上面に沿って突出壁部82内を径方向内側に向かって流れる。脱水槽2が回転した状態でバッフル8の貯水空間8Taに調整水が注水されると、調整水は遠心力により導水樋5a,5b,5cの外周壁に貼りつくため、調整水は貯水空間8Ta内に保持される。
【0040】
図6は、本実施形態の洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。この洗濯機1の動作は、マイクロコンピュータを含む制御手段60によって制御される。制御手段60は、システム全体の制御を司る中央制御部(CPU)61を備え、この制御手段60に脱水槽2の回転制御に必要な低速脱水運転時の低速回転設定値(N1)、高速脱水運転時の高速回転設定値(N2)、低速脱水運転時の第1偏芯量閾値(偏芯量閾値)(ma)、高速脱水運転時の第2偏芯量閾値(偏芯量閾値)(ma)、低速脱水運転時の第1加速閾値(mc)、高速脱水運転時の第2加速閾値(mc)を記憶させたメモリ62を接続する。また、制御手段60により、メモリ62に記憶されたプログラムをマイクロコンピュータが実行することにより、予め定められた運転動作が行われるとともに、メモリ62には、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶される。
【0041】
中央制御部61は、回転速度制御部63へ制御信号を出力し、さらにその制御信号をモータ制御部(モータ制御回路)64へ出力してモータ51の回転制御を行う。回転速度制御部63は、最高回転数決定部63aに接続されており、脱水工程における最高回転数が最高回転数決定部63aにより決定された最高回転数になるように、モータ51の回転制御を行う。なお、回転速度制御部63は、モータ制御部64からモータ51の回転速度を示す信号を実時間で入力し、制御要素となるようにしている。アンバランス量検出部65には、加速度センサ56を接続するとともに、アンバランス位置検出部66には、加速度センサ56および近接スイッチ55を接続する。
【0042】
これにより、近接スイッチ55がマーカー52a(図2参照)を検知すると、加速度センサ56からの水平方向と垂直方向の加速度の大きさから、アンバランス量検出部65においてアンバランス量(M)が算出され、このアンバランス量がアンバランス量判定部67へ出力される。アンバランス位置検出部66は、近接スイッチ55から入力されたマーカー52aの位置を示す信号からアンバランス方向の角度を算出し、アンバランス位置信号を注水制御部68へ出力する。
【0043】
注水制御部68は、アンバランス量判定部67およびアンバランス位置検出部66からのアンバランス量とアンバランス位置を示す信号が入力されると、脱水槽2内の何れのバッフル8に給水を行うか及びその給水量を予め格納される制御プログラムに基づいて判断する。そして選定した給水バルブ31a,31b,31cを開き、調整水の注水を開始する。脱水槽2にアンバランスが生じたときは、このアンバランス量の算出に基づいて選定された注水ノズル30a,30b,30cから受水リングユニット5の導水樋5a,5b,5cに調整水の注水を開始し、バッフル8によりアンバランスが解消されたとき、調整水の注水を停止する。
【0044】
注水制御部68は、例えば図4に示すように、偏芯の要因となっている洗濯物の塊D(X)が脱水槽2のバッフル8(B)とバッフル8(C)の間にある場合は、バッフル8(A)に調整水を供給するように注水装置30を制御する。また、洗濯物の塊D(Y)がバッフル8(A)の近傍にある場合は、バッフル8(B)とバッフル8(C)の両方に調整水を供給するように注水装置30を制御する。
【0045】
最高回転数決定部63aは、バッフル8に対して注水された注水量、注水されたバッフル8の分布及び外槽3の振幅に基づいて、脱水工程における最高回転数を決定する。
【0046】
従来技術の課題で説明したように、脱水工程において脱水槽2のアンバランス状態を解消するためにバッフル8に調整水が注水された後、脱水槽2が回転すると、偏芯荷重(衣類の偏り)とバッフル8に注水された調整水が、互いに脱水時の遠心力により脱水槽2を引っ張ることにより、脱水槽2を楕円形に変形させようとする。脱水槽2が楕円形に変形すると、外槽3と脱水槽2との間の隙間が小さくなり、外槽3と脱水槽2とが接触して騒音が発生する問題がある。また、脱水槽2が塑性変形してしまう問題がある。
【0047】
(注水量について)
図7(a)は、脱水工程において脱水槽2の比較的大きいアンバランス状態を解消するために1つのバッフル8に調整水が注水された状態を示し、図7(b)は、脱水工程において脱水槽2の比較的小さいアンバランス状態を解消するために1つのバッフル8に調整水が注水された状態を示している。
【0048】
脱水槽2のアンバランス状態が大きいほど、そのアンバランス状態を解消するために必要となるバッフル8に注水される注水量が多くなり、脱水槽2のアンバランス状態が小さいほど、そのアンバランス状態を解消するために必要となるバッフル8に注水される注水量が少なくなる。
【0049】
脱水槽2の比較的大きいアンバランス状態を解消する場合、図7(a)に示すように、脱水時の遠心力により、偏芯荷重(衣類の偏り)とバッフル8に注水された調整水との力が、脱水槽2の周方向に略180°離れた部分に作用するが、偏芯荷重及びバッフル8に注水された注水量の何れも大きいため、脱水槽2に反対方向に作用する2つの力が比較的大きく、脱水槽2が楕円形に変形しやすい。
【0050】
これに対して、脱水槽2の比較的小さいアンバランス状態を解消する場合、図7(b)に示すように、脱水時の遠心力により、偏芯荷重(衣類の偏り)とバッフル8に注水された調整水との力が、脱水槽2の周方向に略180°離れた部分に作用するが、偏芯荷重及びバッフル8に注水された注水量の何れも小さいため、脱水槽2に反対方向に作用する2つの力が比較的小さく、図10(a)のように脱水槽2に反対方向に作用する2つの力が比較的大きい場合と比べて、脱水槽2が楕円形に変形し難い。
【0051】
よって、最高回転数決定部63aは、バッフル8に対して注水された注水量が少ないほど、脱水槽2が楕円形に変形し難いため、脱水工程における最高回転数を大きい回転数に決定し、バッフル8に対して注水された注水量が多いほど、脱水槽2が楕円形に変形しやすいため、脱水工程における最高回転数を小さい回転数に決定する。
【0052】
(注水されたバッフル8の分布について)
図8(a)は、脱水工程において脱水槽2のアンバランス状態を解消するために1つのバッフル8に調整水が注水された状態を示し、図8(b)は、脱水工程において脱水槽2のアンバランス状態を解消するために2つのバッフル8に調整水が注水された状態を示している。
【0053】
1つのバッフル8に調整水が注水された場合、図8(a)に示すように、脱水時の遠心力により、偏芯荷重(衣類の偏り)とバッフル8に注水された調整水との力が、脱水槽2の周方向に略180°離れた部分に作用する。このとき、脱水槽2に反対方向に2つの力が作用するため、脱水槽2が楕円形に変形しやすい。
【0054】
これに対して、2つのバッフル8に調整水が注水された場合、図8(b)に示すように、脱水時の遠心力により、偏芯荷重(衣類の偏り)とバッフル8に注水された調整水との力が、脱水槽2の略120°離れた部分に作用する。このとき、脱水槽2に略120°おきに略均等に3つの力が作用するため、図8(a)のように脱水槽2に反対方向に作用する2つの力が作用する場合と比べて、脱水槽2が楕円形に変形し難い。
【0055】
よって、最高回転数決定部63aは、2つのバッフル8に調整水が注水された場合に、脱水槽2が楕円形に変形し難いため、脱水工程における最高回転数を比較的大きい回転数に決定し、1つのバッフル8に調整水が注水された場合に、脱水槽2が楕円形に変形しやすいため、脱水工程における最高回転数を比較的小さい回転数に決定する。
【0056】
(外槽3の振幅について)
外槽3の振幅が大きいほど、洗濯機本体1aと外槽3との間の隙間が小さくなり、洗濯機本体1aと外槽3とが接触しやすくなるとともに、外槽3と脱水槽2との間の隙間が小さくなり、外槽3と脱水槽2とが接触しやすくなり、騒音が発生する。
【0057】
よって、最高回転数決定部63aは、外槽3の振幅が小さいほど、脱水工程における最高回転数を大きい回転数に決定し、外槽3の振幅が小さいほど、脱水工程における最高回転数を比較的小さい回転数に決定する。
【0058】
図9は、最高回転数決定部63aが、脱水工程における最高回転数を決定する際に使用する対応表を示している。図9(a)は、1つのバッフル8に調整水が注水された場合の対応表であり、図9(b)は、2つのバッフル8に調整水が注水された場合の対応表である。
【0059】
最高回転数決定部63aは、図9(a)に示すように、バッフルAへの注水量が300g以下であり、バッフルB,Cへの注水量が0であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1200rpmに決定するのに対して、バッフルAへの注水量が600g以下であり、バッフルB,Cへの注水量が0であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1100rpmに決定する。
【0060】
上述したように、最高回転数決定部63aは、バッフル8に対して注水された注水量が多いほど、脱水工程における最高回転数を小さい回転数に決定している。
【0061】
また、最高回転数決定部63aは、図9(a)に示すように、バッフルAへの注水量が300g以下であり、バッフルB,Cへの注水量が0であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1200rpmに決定するのに対して、バッフルAへの注水量が300g以下であり、バッフルB,Cへの注水量が0であり、外槽3の振幅が3mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1100rpmに決定する。
【0062】
上述したように、最高回転数決定部63aは、外槽3の振幅が大きいほど、脱水工程における最高回転数を小さい回転数に決定している。
【0063】
なお、図9(a)は、バッフルAに注水され且つバッフルB,Cに注水されない場合の対応表を示しているが、バッフルBに注水され且つバッフルA,Cに注水されない場合、及び、バッフルCに注水され且つバッフルA,Bに注水されない場合の対応表も同様である。
【0064】
最高回転数決定部63aは、図9(b)に示すように、バッフルAへの注水量が300g以下であり、バッフルBへの注水量が300g以下であり、バッフルCへの注水量が0であり、バッフル間の注水差(バッフルAへの注水量とバッフルBへの注水量との差)が50g以下であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1400rpmに決定するのに対して、バッフルAへの注水量が600g以下であり、バッフルBへの注水量が600g以下であり、バッフルCへの注水量が0であり、バッフル間の注水差(バッフルAへの注水量とバッフルBへの注水量との差)が50g以下であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1400rpmに決定する。
【0065】
上述したように、最高回転数決定部63aは、基本的に、バッフル8に対して注水された注水量が多いほど、脱水工程における最高回転数を小さい回転数に決定するが、2つのバッフル8に調整水が注水された場合、バッフル8に対して注水された注水量が異なっても、脱水工程における最高回転数を同一の回転数に決定している。すなわち、2つのバッフル8に調整水が注水された場合、脱水槽2が楕円形に変形し難く、脱水槽2が楕円形に変形するか否かに対しては、注水されたバッフル8の分布の影響が大きく、バッフル8への注水量の影響が小さい。
【0066】
また、最高回転数決定部63aは、図9(b)に示すように、バッフルAへの注水量が300g以下であり、バッフルBへの注水量が300g以下であり、バッフルCへの注水量が0であり、バッフル間の注水差(バッフルAへの注水量とバッフルBへの注水量との差)が50g以下であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1400rpmに決定するのに対して、バッフルAへの注水量が300g以下であり、バッフルBへの注水量が300g以下であり、バッフルCへの注水量が0であり、バッフル間の注水差(バッフルAへの注水量とバッフルBへの注水量との差)が50g以下であり、外槽3の振幅が3mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1200rpmに決定する。
【0067】
上述したように、最高回転数決定部63aは、外槽3の振幅が大きいほど、脱水工程における最高回転数を小さい回転数に決定している。
【0068】
なお、図9(b)は、バッフルA,Bに注水され且つバッフルCに注水されない場合の対応表を示しているが、バッフルA,Cに注水され且つバッフルBに注水されない場合、及び、バッフルB,Cに注水され且つバッフルAに注水されない場合の対応表も同様である。
【0069】
また、最高回転数決定部63aは、図9(a)に示すように、バッフルAへの注水量が600g以下であり、バッフルB,Cへの注水量が0であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1100rpmに決定するのに対して、図9(b)に示すように、バッフルAへの注水量が300g以下であり、バッフルBへの注水量が300g以下であり、バッフルCへの注水量が0であり、バッフル間の注水差(バッフルAへの注水量とバッフルBへの注水量との差)が50g以下であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1400rpmに決定する。
【0070】
上述したように、最高回転数決定部63aは、バッフル8への注水量が略同一であるとすると、2つのバッフル8に調整水が注水された場合に、1つのバッフル8に調整水が注水された場合と比べて、脱水工程における最高回転数を、比較的大きい回転数に決定している。
【0071】
図10は、本実施形態の洗濯機1の制御を示すフローチャートである。本実施形態では、中央制御部61が、図示しない脱水ボタンからの入力信号あるいは洗濯コース運転中に脱水工程を開始すべき旨の信号を受信すると、ステップSP1に進み、脱水工程を開始する。
【0072】
<ステップSP1>
ステップSP1では、中央制御部61は、脱水槽2をほぐし反転させた後、低速回転設定値(N1)に基づいて脱水槽2の回転を加速させる。
【0073】
<ステップSP2>
ステップSP2では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度値(加速度センサのx成分)に基づいてアンバランス量(M)を検出し、アンバランス量(M)と、メモリ62に格納された第1偏芯量閾値(ma)とを比較し、M<maが成り立つか否か判断する。M<maが成り立つと判断すると、ステップSP3に進む。一方、M<maが成り立たないと判断すると、ステップSP4に進む。ここで、第1偏芯量閾値(ma)は、バッフル8への調整水の供給がなくても騒音が発生しない程度に洗濯物の偏りが小さいことを示す閾値である。すなわち、偏荷重が小さいあるいは存在せず、バッフル8へ給水しなくても騒音が発生しないと判断した場合、ステップSP3に進む。
【0074】
<ステップSP3>
ステップSP3では、中央制御部61は、高速回転設定値(N2)に基づいて脱水槽2の回転を加速させる。
【0075】
<ステップSP4>
ステップSP4では、中央制御部61は、洗濯物の偏りを解消するために、第1バッフル注水処理を行う。第1バッフル注水処理の手順については、後で説明する。
【0076】
<ステップSP5>
ステップSP5では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が所定回転数(例えば500rpm)に到達したか否かを判断する。所定回転数は、衣類からほぼ全ての水が脱水される回転数であり、脱水槽2の直径により変化する。中央制御部61は、脱水槽2の回転数が所定回転数に到達したと判断すると、ステップSP6に進む。これに対して、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が所定回転数に到達してないと判断すると、ステップSP2に戻り、ステップSP2~SP4を繰り返す。
【0077】
<ステップSP6>
ステップSP6では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度値(加速度センサのx成分)に基づいてアンバランス量(M)を検出し、アンバランス量(M)と、メモリ62に格納された第2偏芯量閾値(ma)とを比較し、M<maが成り立つか否か判断する。M<maが成り立つと判断すると、ステップSP7に進む。一方、M<maが成り立たないと判断すると、ステップSP8に進む。ここで、第2偏芯量閾値(ma)は、第1偏芯量閾値(ma)よりも小さい値であり、バッフル8への調整水の供給がなくても騒音が発生しない程度に洗濯物の偏りが小さいことを示す閾値である。すなわち、偏荷重が小さいあるいは存在せず、バッフル8へ給水しなくても騒音が発生しないと判断した場合、ステップSP3に進む。
【0078】
<ステップSP7>
ステップSP7では、中央制御部61は、高速回転設定値(N2)に基づいて脱水槽2の回転を加速させる。
【0079】
<ステップSP8>
ステップSP8では、中央制御部61は、洗濯物の偏りを解消するために、第2バッフル注水処理を行う。第2バッフル注水処理の手順については、後で説明する。
【0080】
<ステップSP9>
ステップSP9では、中央制御部61は、外槽3の振幅量データと、アンバランス位置(N)のデータとを取得する。
【0081】
<ステップSP10>
ステップSP10では、中央制御部61は、脱水槽2における注水されたバッフル8の分布を取得する。その後、ステップSP7に進む。
【0082】
<ステップSP11>
ステップSP11では、中央制御部61は、バッフル8に対して注水された注水量と、注水されたバッフル8の分布と、外槽3の振幅量とに基づいて、脱水工程における最高回転数を決定する。バッフル8に対して注水された注水量、及び、注水されたバッフル8の分布は、脱水槽2の回転数が最高回転数まで加速されるときの注水量及び分布である。外槽3の振幅量は、脱水槽2の回転数が所定回転数(例えば500rpm)時に注水が完了し、M<maが成り立ったときの振幅量である。
【0083】
ステップSP11において、中央制御部61は、バッフル8に対して注水された注水量を、第1バッフル注水処理及び第2バッフル注水処理における3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta,tb,tcに基づいて算出する。すなわち、中央制御部61は、バッフル8に対して注水する場合、注水装置30を制御して、3本の注水ノズル30a,30b,30cから所定流量の調整水をそれぞれ注水する。そのため、中央制御部61は、所定流量と3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta,tb,tcとに基づいて、バッフル8に対して注水された注水量を算出する。
【0084】
<ステップSP12>
ステップSP12では、中央制御部61は、脱水槽2を最高回転数で所定時間回転させ、脱水処理を行う。その後、脱水処理を終了する。
【0085】
図11は、図10のSP4に示した第1バッフル注水処理の制御を示すフローチャートである。
【0086】
<ステップSP101>
ステップSP101では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度値に基づいて、外槽3の振幅量データと、アンバランス量(M)およびアンバランス位置(N)のデータとを取得する。
【0087】
<ステップSP102>
ステップSP102では、中央制御部61は、アンバランス位置(N)と対向するバッフル8に注水処理を行う。
【0088】
<ステップSP103>
ステップSP103では、中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta、tb、tcをそれぞれ計測する。
【0089】
<ステップSP104>
ステップSP104では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度値(加速度センサのx成分)に基づいてアンバランス量(M)を検出し、アンバランス量(M)と、メモリ62に格納された第1加速閾値(mc)とを比較し、M<mcが成り立つか否か判断する。M<mcが成り立つと判断すると、ステップSP105に進む。一方、M<mcが成り立たないと判断すると、ステップSP102に戻る。ここで、第1加速閾値(mc)は、バッフル8への調整水の注水を停止しても騒音が発生しない程度に洗濯物の偏りが小さいことを示す閾値である。すなわち、偏荷重が小さくなった場合、ステップSP105に進む。
【0090】
<ステップSP105>
ステップSP105では、中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta,tb,tcのデータがあるか否かを判断する。中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta,tb,tcのデータがあると判断すると、ステップSP106に進む。これに対して、中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta,tb,tcのデータがないと判断すると、ステップSP107に進む。
【0091】
<ステップSP106>
ステップSP106では、中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta,tb,tcを、これまでの注水時間ta,tb,tcに加算する。
【0092】
<ステップSP107>
ステップSP107では、中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間を、ta,tb,tcとして、処理を終了する。
【0093】
図12は、図10のSP8に示した第2バッフル注水処理の制御を示すフローチャートである。
【0094】
<ステップSP201>
ステップSP201では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度値に基づいて、外槽3の振幅量データと、アンバランス量(M)およびアンバランス位置(N)のデータとを取得する。
【0095】
<ステップSP202>
ステップSP202では、中央制御部61は、アンバランス位置(N)と対向するバッフル8に注水処理を行う。
【0096】
<ステップSP203>
ステップSP203では、中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta,tb,tcをそれぞれ計測する。
【0097】
<ステップSP204>
ステップSP204では、中央制御部61は、加速度センサ56から与えられた加速度値(加速度センサのx成分)に基づいてアンバランス量(M)を検出し、アンバランス量(M)と、メモリ62に格納された第2加速閾値(mc)とを比較し、M<mcが成り立つか否か判断する。M<mcが成り立つと判断すると、ステップSP205に進む。一方、M<mcが成り立たないと判断すると、ステップSP202に戻る。ここで、第2加速閾値(mc)は、第1加速閾値(mc)より小さい値であり、バッフル8への調整水の注水を停止しても騒音が発生しない程度に洗濯物の偏りが小さいことを示す閾値である。すなわち、偏荷重が小さくなった場合、ステップSP205に進む。
【0098】
<ステップSP205>
ステップSP205では、中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta,tb,tcのデータがあるか否かを判断する。中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta、tb、tcのデータがあると判断すると、ステップSP206に進む。これに対して、中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta,tb,tcのデータがないと判断すると、ステップSP207に進む。
【0099】
<ステップSP206>
ステップSP206では、中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間ta,tb,tcを、これまでの注水時間ta,tb,tcに加算する。
【0100】
<ステップSP207>
ステップSP207では、中央制御部61は、3つのバッフル8に対して注水した注水時間を、ta,tb,tcとして、処理を終了する。
【0101】
このように本実施形態の洗濯機1は、パルセータ4が底部2cに配置された脱水槽2と、脱水槽2の内周面2a1に対して周方向に等間隔で配置される3つ以上のバッフル8と、各バッフル8に個別に調整水を注水可能な注水装置30と、脱水槽2の振動を検出する加速度検出手段としての加速度センサ56と、脱水槽2の回転に応じてパルス信号を発信する脱水槽位置検出装置としての近接スイッチ55と、脱水槽2内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段としてのアンバランス量検出部65及びアンバランス位置検出部66と、脱水工程において偏芯量が所定の注水用偏芯量閾値に達したとき、偏芯位置に対応するバッフル8に注水するように注水装置30を制御する注水制御手段としての注水制御部68と、3つ以上のバッフル8に対する注水状態に基づいて、脱水工程における最高回転数を決定する最高回転数決定手段としての最高回転数決定部63aと、脱水工程において脱水槽2を回転駆動するモータ51を制御するモータ制御手段としてのモータ制御部64とを備える。
【0102】
このような構成であると、脱水工程において脱水槽2のアンバランス状態を解消するためにバッフル8に調整水が注水されるが、脱水工程における最高回転数がバッフル8の注水状態に基づいて決定される。そのため、脱水槽2が楕円形に変形するのを抑制しつつ、脱水工程における最高回転数を可能な限り大きくすることができる。
【0103】
本実施形態の洗濯機1において、最高回転数決定部63aは、バッフル8に対して注水された注水量に基づいて脱水工程における最高回転数を決定する。
【0104】
このような構成であると、衣類の偏りとバッフル8に注水された調整水が、互いに脱水時の遠心力により脱水槽2を引っ張る力を考慮することにより、脱水槽2が楕円形に変形するのを抑制できる。これにより、外槽3と脱水槽2の接触や脱水槽2の塑性変形を防止しつつ、高速脱水回転による脱水率の向上を行うことができる。
【0105】
本実施形態の洗濯機1において、最高回転数決定部63aは、注水されたバッフル8の分布に基づいて脱水工程における最高回転数を決定する。
【0106】
このような構成であると、注水されたバッフル8の分布を考慮することにより、より高速脱水化が可能となる。
【0107】
本実施形態の洗濯機1において、脱水槽2が内部に配置された外槽3を有しており、最高回転数決定部63aは、外槽3の振幅に基づいて脱水工程における最高回転数を決定する。
【0108】
このような構成であると、外槽3の振幅を考慮することにより、騒音の発生を抑制しつつ、高速脱水化が可能となる。
【0109】
(第2実施形態)
本実施形態に係る洗濯機が、第1実施形態に係る洗濯機と異なる点は、最高回転数決定部63aが、脱水槽2の変形強度を考慮して脱水工程における最高回転数を決定する点である。本実施形態に係る洗濯機の構成において、第1実施形態に係る洗濯機と同様である部分については、その詳細説明を省略する。
【0110】
本実施形態に係る縦型の洗濯機において、脱水槽2の筒状部分は、図13(a)に示すように、金属製の平板状部材を円筒形状にし、例えば溶接により平板状部材の両端部を接続して形成される。脱水槽2は、周方向について、その接続部で強度が大きくなるため、脱水槽2の変形強度は、周方向に均一でない。
【0111】
バッフル8に注水された後において、偏芯荷重(衣類の偏り)とバッフル8に注水された調整水が、互いに脱水時の遠心力により脱水槽2を引っ張る力が作用した場合を考える。
【0112】
図13(b)に示すように、脱水槽2の接続部でない部分Tと、その部分Tと対向した部分Tに互いに反対方向の力が作用した場合、脱水槽2の変形強度は比較的小さいため、脱水槽2が楕円形に変形しやすい。
【0113】
これに対して、図13(c)に示すように、脱水槽2の接続部である部分Tと、その部分Tと対向した部分Tに互いに反対方向の力が作用した場合、脱水槽2の変形強度は比較的大きいため、脱水槽2が楕円形に変形し難い。
【0114】
本実施形態の洗濯機では、図14(a)に示すように、脱水槽2の接続部に、バッフル8(A)が配置され、脱水槽2の接続部でない部分に、バッフル8(B)及びバッフル8(C)が配置される。
【0115】
第1実施形態では、1つのバッフル8に調整水が注水された場合において、バッフル8(A)に注水された場合と、バッフル8(B)に注水された場合と、バッフル8(C)に注水された場合とで、脱水工程における最高回転数を略同一の回転数に決定した。
【0116】
これに対して、本実施形態において、最高回転数決定部63aは、注水されたバッフル8の位置と脱水槽2の変形強度との関係に基づいて脱水工程における最高回転数を決定する。
【0117】
すなわち、偏芯荷重とバッフル8に注水された調整水が、互いに脱水時の遠心力により脱水槽2を引っ張る力の大きさが同一である場合、脱水槽2の接続部に配置されたバッフル8(A)に注水された場合、脱水槽2が楕円形に変形し難いため、脱水槽2の接続部と異なる位置に配置されたバッフル8(B)またはバッフル8(C)に注水された場合と比べて、脱水工程における最高回転数を大きい回転数に決定する。
【0118】
図14(b)は、最高回転数決定部63aが、脱水工程における最高回転数を決定する際に使用する対応表であり、1つのバッフル8に調整水が注水された場合の対応表の一部を示している。
【0119】
最高回転数決定部63aは、図14(b)に示すように、バッフルBへの注水量が300g以下であり、バッフルA,Cへの注水量が0であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1200rpmに決定し、同様に、バッフルCへの注水量が300g以下であり、バッフルA,Bへの注水量が0であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1200rpmに決定する。
【0120】
これに対して、バッフルAへの注水量が300g以下であり、バッフルB,Cへの注水量が0であり、外槽3の振幅が1mm以下である場合、脱水工程における最高回転数を1250rpmに決定する。
【0121】
上述したように、最高回転数決定部63aは、脱水槽2の変形強度を考慮して、脱水槽2が楕円形に変形し難い方向に力が作用した場合、脱水槽2が楕円形に変形しやすい方向に力が作用した場合と比べて、脱水工程における最高回転数を大きい回転数に決定している。
【0122】
よって、本実施形態では、1つのバッフル8に調整水が注水された場合について、バッフルAに注水された場合と、バッフルBに注水された場合またはバッフルCに注水された場合とで、異なる対応表を使用して、脱水工程における最高回転数を決定する。
【0123】
このように本実施形態の洗濯機1において、脱水槽2の変形強度は、周方向に均一でない場合において、最高回転数決定部63aは、注水されたバッフル8の位置と脱水槽2の変形強度との関係に基づいて脱水工程における最高回転数を決定する。
【0124】
このような構成であると、脱水槽2の変形強度を考慮することにより、適切な脱水回転数を選択することができる。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本実施形態の構成は上述したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0126】
例えば、上記第1実施形態では、1つのバッフル8に調整水が注水された場合について、最高回転数決定部63aが、バッフル8に対して注水された注水量と、注水されたバッフル8の分布と、外槽3(脱水槽2)の振幅とを考慮して脱水工程における最高回転数を決定したが、それに限られない。
【0127】
また、2つのバッフル8に調整水が注水された場合について、最高回転数決定部63aが、バッフル8に対して注水された注水量と、注水されたバッフル8の分布と、バッフル間の注水差と、外槽3(脱水槽2)の振幅とを考慮して脱水工程における最高回転数を決定したが、それに限られない。
【0128】
例えば、最高回転数決定部63aは、バッフル8に対して注水された注水量と、注水されたバッフル8の分布と、外槽3(脱水槽2)の振幅との少なくとも1つを考慮して脱水工程における最高回転数を決定してよい。
【0129】
上記第2実施形態では、最高回転数決定部63aが、バッフル8に対して注水された注水量と、注水されたバッフル8の分布と、外槽3(脱水槽2)の振幅と、脱水槽2の変形強度とを考慮して脱水工程における最高回転数を決定したが、それに限られない。
【0130】
例えば、最高回転数決定部63aは、バッフル8に対して注水された注水量と、注水されたバッフル8の分布と、外槽3(脱水槽2)の振幅と、脱水槽2の変形強度との少なくとも1つを使用して脱水工程における最高回転数を決定してよい。
【0131】
上記第2実施形態では、1つのバッフル8に調整水が注水された場合について、最高回転数決定部63aが、バッフルAに注水された場合と、バッフルBに注水された場合及びバッフルCに注水された場合とで異なる対応表を使用して脱水工程における最高回転数を決定するが、2つのバッフル8に調整水が注水された場合も同様である。すなわち、2つのバッフル8に調整水が注水された場合について、最高回転数決定部63aが、バッフルA,Bに注水された場合と、バッフルA,Cに注水された場合と、バッフルB,Cに注水された場合とで、異なる対応表を使用して脱水工程における最高回転数を決定してよい。
【0132】
上記第1~第2実施形態では、3つのバッフル8が設けられ、3つのバッフル8に対して注水するための3つの導水樋5a,5b,5cを有する受水リングユニット5を備えるが、これに限らず、バッフル8が3個以上設けられ、各バッフル8に個別に調整水を注水可能な注水装置を備える構成であればよい。
【0133】
上記第1~第2実施形態では、バッフル8の内周側壁が径方向内側に突出した突出壁部82を有しており、水受け板85の径方向内側端部は突出壁部82の内部に配置されるが、それに限られない。例えば、バッフル8の内周側壁が径方向内側に突出した突出壁部82を有しなくてよい。
【0134】
上記第1~第2実施形態において、バッフル8の形状の例を示したが、それに限られない。バッフル8の形状、貯水空間8Ta及び排水空間8Tbの形状は、任意であり、例えば上広がり、或いは下広がりの形状であってもよい。
【0135】
上記第1~第2実施形態では、水受け板85の形状の例を示したが、それに限られない。水受け板85の位置(上下方向高さ)及び径方向長さは、任意である。
【0136】
上記第1~第2実施形態において、脱水槽2の加速度は、加速度センサ56により検出される外槽3の加速度と略同一であるとしているが、加速度センサを脱水槽2に配置して、加速度センサにより脱水槽2の加速度を検出してよい。
【0137】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0138】
1 洗濯機
2 脱水槽
2c 脱水槽の底部
3 外槽
4 パルセータ
8 バッフル
30 注水装置
55 近接スイッチ(脱水槽位置検出装置)
56 加速度センサ(加速度検出手段)
63a 最高回転数決定部(最高回転数決定手段)
64 モータ制御部(モータ制御手段)
65 アンバランス量検出部(偏芯検出手段)
66 アンバランス位置検出部(偏芯検出手段)
68 注水制御部(注水制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14