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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】伸縮ブームの接触防止装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240613BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20240613BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B66F9/24 H
B66F11/04
B66C23/88 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021005364
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109813
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505440631
【氏名又は名称】本州四国連絡高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592185585
【氏名又は名称】本四高速道路ブリッジエンジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521024260
【氏名又は名称】岡田エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】西山 貴偉
(72)【発明者】
【氏名】山本 光伸
(72)【発明者】
【氏名】田坂 佳三
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-020290(JP,U)
【文献】特開平10-095593(JP,A)
【文献】特開昭59-102799(JP,A)
【文献】特開2018-024500(JP,A)
【文献】特開2014-097867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに起伏、旋回及び伸縮可能に接続され、且つ先端に作業用部材が水平方向に回動可能に設けられた伸縮ブームと、
上記伸縮ブームの伸縮に伴って変化するブーム長を測定するブーム長測定装置と、
上記伸縮ブームに沿って設定された検知領域内に存在する障害物を検知する測域センサであるレーザースキャナと、
上記作業用部材が水平方向への回動によって上記検知領域と接触することを防止するために、上記伸縮ブームの伸縮に伴って変化する上記測域センサの検知領域の長さを、上記ブーム長測定装置によって測定されたブーム長に基づいて、上記ブーム長の全長よりも短くなるように、変更、設定する検知領域設定手段と、
上記測域センサからの障害物検知信号を受信して上記伸縮ブームの動作を抑制させる伸縮ブーム動作抑制手段とを備えていることを特徴とする伸縮ブームの接触防止装置。
【請求項2】
ベースマシンに起伏、旋回及び伸縮可能に接続された伸縮ブームと、
上記伸縮ブームのブーム長を測定するブーム長測定装置と、
上記伸縮ブームに沿って設定された検知領域内に存在する障害物を検知する測域センサと、
上記ブーム長測定装置によって測定されたブーム長に基づいて上記測域センサの検知領域を変更、設定する検知領域設定手段と、
上記測域センサからの障害物検知信号を受信して上記伸縮ブームの動作を抑制させる伸縮ブーム動作抑制手段とを備えており、
上記伸縮ブームの実測伸縮速度と、予め設定された伸縮ブームの基準伸縮速度とを比較し、実測伸縮速度が基準伸縮速度を超えた時点で速度超過信号を伸縮ブーム動作抑制手段に発信する速度比較手段を備え、
上記伸縮ブーム動作抑制手段は、上記速度比較手段からの上記速度超過信号を受信して上記伸縮ブームの動作を抑制させることを特徴とする伸縮ブームの接触防止装置。
【請求項3】
伸縮ブームの先端に、作業用部材が設けられており、
検知領域設定手段は、上記伸縮ブームの先端よりも上記伸縮ブームの基端側において上記伸縮ブームの先端の上記作業用部材を除いた上で、測域センサの検知領域を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伸縮ブームの接触防止装置。
【請求項4】
伸縮ブームの先端に作業用部材が設けられており、
上記作業用部材に対する障害物を検知する接触式センサを有し、
伸縮ブーム動作抑制手段は、上記接触式センサからの障害物検知信号を受信して上記伸縮ブームの動作を抑制させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伸縮ブームの接触防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮ブームを有するクレーン、高所作業車及び橋梁点検車、並びに、橋梁等の構造物を構成している構造部材を点検又は補修する際に用いられる作業車の伸縮ブームの接触防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁は、常時、風雨に晒されていることから定期的に点検及び補修がなされている。特に、橋梁は様々な桁部材が接続部材などを用いて一体的に組み合わされて構成されており、更に、橋梁がトラス構造を有している場合、桁部材が様々な方向に組み合わされた複雑な構造を有している。
【0003】
橋梁を構成している構造部材を点検又は補修するにあたっては、点検又は補修現場に、伸縮ブームを有するクレーン、高所作業車及び橋梁点検車、並びに、橋梁等の構造物を構成している構造部材を点検又は補修する際に用いられる常設の作業車など(以下、総称して「作業車」という)を配設し、この作業車に設けられた伸縮ブームを起伏・旋回させながら伸縮させ、必要に応じて作業車を移動(横行)させながら、桁部材及び接続部材などの構造部材を回避し、伸縮ブームの先端に設けたケージ、バケット、デッキなどの作業床や点検装置などの資機材(以下、併せて「作業用部材」という)を点検又は補修場所に到達させて点検又は補修作業を行なっている。
【0004】
一方、作業車の伸縮ブームや作業床を作動させる際に、桁部材及びこれら桁部材を接続する接続部材などの障害物が存在し、これら障害物に伸縮ブームや作業床が衝突すると危険であるため、伸縮ブームや作業床に傷害物が衝突しないように注意する必要がある。
【0005】
特許文献1には、クレーンのブームの近傍周辺に発信信号を出力し、前記ブームの近傍周辺の少なくとも一部に設定された受信範囲内にある障害物に発信信号が当たって反射した受信信号を受け、前記発信信号と前記受信信号との時間差を検知し、更に、検知した該時間差に基づいて前記障害物と前記ブームとの距離に関係する量を演算し、演算した該量が予め設定されている警報設定値以下のとき警報を発するクレーンブームの衝突警報方法が提案されている。
【0006】
特許文献2には、作業者を載せて作業位置へ移動する作業バケットに設置される作業者保護具であって、前記作業バケットに設置され、前記作業バケットが構造物に接近したことを検知する超音波センサと、前記作業者に警告を発する警告装置と、前記作業バケットが構造物に接近したことを前記超音波センサが検知したときに、前記警告装置が警告を発するように、前記警告装置を制御する制御装置とを有する作業者保護具が提案されている。
【0007】
特許文献3には、高所作業車の昇降及び水平方向への移動が可能な作業台に設置されるポールに装着する具であって、傾斜検出センサを備えた棒状体の本体が傾倒自在に装着部材と一直線状に連設されており、前記本体に発光手段及びブザーを備えると共に、当該発光手段及びブザーの各作動と前記傾斜検出センサとが関連付けられ構成であること、及び、前記装着部材から外方へ飛び出した位置に、走行車線を感知する路面照射レーザーが付設されており、前記発光手段及びブザーの各作動と前記路面照射レーザーとが関連付けられた構成である高所作業車用安全具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平7-112893号公報
【文献】特開2020-83483号公報
【文献】特開2018-70331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、発信信号として超音波パルスを用いている。超音波パルスを用いた障害物の検知方法は、検知精度が悪いと共に検知速度も低く、障害物を正確に且つ迅速に検知することができないという問題点を有する。
【0010】
特許文献1の超音波パルスを用いた障害物の検知方法は、長くて10m程度の距離にある障害物しか検知することができず、それ以上の距離が離れた位置にある障害物を検知することができない。そのため、大きな橋梁の構造部材の点検又は補修場所は、地上から10mを超えることが多く用いることができない。
【0011】
又、伸縮ブームの先端に取り付けられた作業用部材は、可能な限り、点検又は補修場所に接近させる必要があり、超音波パルスを用いた障害物の検知方法は、点検又は補修場所となる対象物を誤って検知することがあり、点検又は補修作業が中断し、効率的な作業を遂行することができないという問題点を有する。
【0012】
特許文献2の作業者保護具は、作業バケットへの構造物の接近を超音波センサによって検知しており、障害物の検知範囲はバケットの周囲近傍のみである。伸縮ブームは、複数のブームが入れ子式に収納されているため、伸縮ブームにセンサを取り付けることはできず、伸縮ブームに接近する障害物は検知することができない。又、特許文献1のクレーンブームの衝突警報方法と同様に、点検又は補修場所となる対象物を誤って検知する虞れがあり、更に、伸縮ブームが長くなると、多くの超音波センサ及び配線の取付が必要となり、コストが高くなると共に、超音波センサの配設も複雑になるという問題点を有する。
【0013】
特許文献3の高所作用車用安全具は、接触型の傾斜センサによって障害物の衝突を検知しており、障害物の検知範囲は、作業台の周囲近傍のみである。更に、特許文献2の作業車保護具と同様に、伸縮ブームにセンサを取り付けることはできず、伸縮ブームに接近する障害物は検知することができない。又、伸縮ブームが長くなると、多くの超音波センサ及び配線の取付が必要となり、コストが高くなると共に、超音波センサの配設も複雑になるという問題点を有する。
【0014】
特許文献1及び2で用いられている超音波パルスは、検知範囲を限定することが難しく、伸縮ブームから離れた位置にある障害物を誤って検知する可能性があり、その度に伸縮ブームの操作を中断して障害物の有無の確認をする必要があり、点検又は補修作業を円滑に行なうことができないという問題点を有する。
【0015】
本発明は、伸縮ブームの動きに対して障害となる障害物の検知を精度よく且つ正確に行なうことができる伸縮ブームの接触防止装置を提供する。更に、本発明は、ブーム先端に取り付けられた作業用部材の動きに対して障害となる障害物の検知も精度良く且つ正確に行うことができる伸縮ブームの接触防止装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
伸縮ブームの接触防止装置は、
ベースマシンに起伏、旋回及び伸縮可能に基端が接続された伸縮ブームと、
上記伸縮ブームのブーム長を測定するブーム長測定装置と、
上記伸縮ブームに沿って設定された検知領域内に存在する障害物を検知する測域センサと、
上記ブーム長測定装置によって測定されたブーム長に基づいて上記測域センサの検知領域を変更、設定する検知領域設定手段と、
上記測域センサからの障害物検知信号を受信して上記伸縮ブームを抑制させる伸縮ブーム動作抑制手段とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、伸縮ブームの伸縮に伴って変化するブーム長に応じて測域センサの検知領域を変更、設定し、設定された検知領域に存在する障害物を測域センサによって正確に且つ迅速に検知しているので、伸縮ブームの略全長に沿って障害物の有無を常時、検知することができ、伸縮ブームに障害物が衝突することを防止することができる。
【0018】
本発明は、障害物の検知に測域センサを用いており、伸縮ブームに沿って検知領域を設定することができ、伸縮ブームから離れた物体を障害物として誤認識することはなく、伸縮ブームに対して障害となり得る物体のみを障害物として正確に検知し、伸縮ブームへの障害物の衝突を回避することができる。
【0019】
更に、伸縮ブームの先端に作業用部材が設けられており、作業用部材に対する障害物の検知を接触式センサによって行っている場合には、伸縮ブームから作業用部材に至るまで障害物の検知を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】伸縮ブームの伸縮状態を示した模式図。
図2】伸縮ブームの伸縮状態を示した模式図。
図3】伸縮ブームの接触防止装置の機能構成を示した図。
図4】伸縮ブームの接触防止装置のハードウエア構成を示した図。
図5】伸縮ブームのブーム長に応じた測域センサの検知領域を示した図。
図6】伸縮ブームの接触防止装置の動作を示したフローチャート。
図7】伸縮ブームの接触防止装置の動作を示したフローチャート。
図8】伸縮ブームの接触防止装置の動作を示したフローチャート。
図9】伸縮ブームが多関節ブームを介してベースマシンに接続している態様を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の伸縮ブームの接触防止装置の一例について、図面を参照しながら説明する。図1に示したように、伸縮ブームの接触防止装置Aは、作業車などのベースマシン1と、このベースマシン1に基端が起伏及び/又は旋回可能に接続された伸縮ブーム2とを備えている。
【0022】
ベースマシン1は、伸縮ブーム2を配設するための配設面を有しており、この配設面に対して上下方向に起伏可能に且つ左右方向に旋回可能に伸縮ブーム2が設けられている。図1及び図2に示したように、伸縮ブーム2は、ベースマシン1の配設面に接続されたベースブーム21と、1個又は複数個の中間ブーム22、22・・・と、伸縮ブーム2の先端部を構成するトップブーム23とが入れ子式に収容されており、それぞれのブームが基端側のブームから突出し又は基端側のブームに没入することによって伸縮ブーム2が伸縮可能に構成されている。伸縮ブーム2は汎用の駆動装置(図示せず)によって起伏、旋回及び伸縮されるように構成されている。そして、伸縮ブーム2のトップブーム23の先端には、作業者が搭乗可能な作業用部材23aの一つであるバケットが一体的に設けられている。なお、図1及び図2では、伸縮ブーム2のトップブーム23の先端に、作業用部材23aの一例としてバケットを一体的に設けた場合を示したが、バケットに限定されず、トップブーム23の先端に、ケージ、デッキなどの作業者が搭乗可能な作業床や点検装置などの資機材が一体的に設けられてもよい。作業用部材23aとしては、例えば、ケージ、バケット、デッキなどの作業床や点検装置などの資機材などが挙げられる。
【0023】
なお、図1では、ベースマシン1に直接、伸縮ブーム2を接続した場合を示したが、図9に示したように、ベースマシン1に、1個のアームを介して、又は、複数個のアームM1、M1・・・が対向端部同士を回動自在に接続してなる多関節アームM(図9参照)を介して伸縮ブーム2が接続されていてもよい。
【0024】
図1(a)及び図2(a)は、最も収縮した状態の伸縮ブーム2を、図1(c)及び図2(c)は、最も伸長した状態又は最も伸長した状態に近い長さの伸縮ブーム2を、図1(b)及び図2(b)は、最も収縮した状態と最も伸長した状態の間にある伸縮ブーム2を示している。
【0025】
伸縮ブーム2には、伸縮ブーム2の長さを測定するブーム長測定装置3が設けられている。ブーム長測定装置3は、伸縮ブーム2における基端から先端までの全長を測定する必要はなく、後述する測域センサ4の検知領域Kを伸縮ブーム2のブーム長に応じて変更、設定可能なように、伸縮ブーム2の全長を概ね測定することができればよい。
【0026】
例えば、ブーム長測定装置3としては、ベースブーム21の基端部下面(起伏方向を上下方向とする)に設けられ且つレーザー光を発信する発信器31と、トップブーム23の先端近傍部に設けられ且つ作業用部材23aよりも所定長さだけ基端側に設けられて発信器31から発信されたレーザー光を反射する反射板32とを有しており、発信器31から発信されたレーザー光が反射板32にて反射されて発信器31が受信までの時間を測定し、発信器31と反射板32との間の距離をブーム長として測定するように構成されているブーム長測定装置が挙げられる。なお、発信器31をトップブーム23に、反射板32をベースブーム21に設けてもよい。
【0027】
発信器31は、伸縮ブーム2の伸縮によって変位しない場所、即ち、ベースブーム21の基端部に設けられている一方、反射板32は、伸縮ブーム2の伸縮によって伸縮ブーム2の伸縮方向に常時、変動するトップブーム23の先端近傍部、即ち、トップブーム23の先端に設けられた作業用部材23aよりも所定長さだけ下方に位置したトップブーム23部分に設けられている。なお、反射板32を、伸縮ブーム2の伸縮によって変位しない場所、即ち、ベースブーム21の基端部に設ける一方、発信器31を、伸縮ブーム2の伸縮によって伸縮ブーム2の伸縮方向に常時、変動するトップブーム23の先端近傍部、即ち、トップブーム23の先端に設けられた作業用部材23aよりも所定長さだけ下方に位置したトップブーム23部分に設けてもよい。ブーム長測定装置3は、伸縮ブーム2のうち、ベースブーム21の基端部とトップブーム23の先端から所定長さだけ下方にある部分との間の長さをブーム長として測定しており、伸縮ブーム2の伸縮による、伸縮ブームの伸縮方向の長さ変動を見逃さないように伸縮ブーム2のブーム長を測定している。ブーム長測定装置3は、伸縮による伸縮ブームの伸縮方向の長さ変動を常に検知できるように測定範囲が設定される。なお、ブーム長測定装置3は、測定された値に、ベースブーム21の基端と発信器31との間の距離などを加算するなどして測定値を補正し、補正値をブーム長として出力するようにしてもよい。
【0028】
又、反射板32は、上述の通り、作業用部材23aの下方に配設されており、作業床の首振り動作(水平方向への回動動作)、点検装置などの資機材、作業床内での作業者及び作業者が用いる作業器具などによって、ブーム長測定装置3による伸縮ブーム2のブーム長の測定が影響を受けないように構成されている。
【0029】
更に、伸縮ブーム2には、ベースブーム21の基端部における旋回方向(旋回方向を左右方向とする)の側面のそれぞれに測域センサ4が設けられている。なお、ベースブームの基端部における起伏方向(起伏方向を上下方向とする)の表面(上面、下面)のそれぞれに測域センサ4を設けてもよい。測域センサ4は、赤外線レーザーなどのレーザー光を発信し、障害物にて反射された反射光を測定することによって障害物の方向及び距離を測定することができ、レーザースキャナとも呼ばれる。測域センサ4は、障害物の検知領域を予め指定しておくことができ、検知領域K内に障害物が存在する場合に障害物が存在することを知らせる障害物検知信号を出力する。
【0030】
図1及び図2に示したように、測域センサ4の検知領域Kは、伸縮ブーム2の長さ方向に伸縮ブーム2の旋回方向の側面に沿って設定される。ベースブームの基端部における起伏方向(起伏方向を上下方向とする)の側面に測域センサを設けている場合、測域センサ4の検知領域Kは、伸縮ブーム2の長さ方向に伸縮ブーム2の起伏方向の側面に沿って設定される。測域センサの検知領域Kの長さ(伸縮ブーム2の伸縮方向の長さ)は後述する要領で伸縮ブームのブーム長に応じて設定される。測域センサ4の検知領域Kの幅(図1に示された帯状の検知領域Kの幅)は、伸縮ブーム2における最も広い幅(伸縮ブーム2の起伏方向又は旋回方向の最も広い幅)又はこの幅よりも若干広い幅に設定されることが好ましい。測域センサ4の検知領域Kは、測域センサ4による障害物の検知から伸縮ブーム2の動作の抑制までのタイムラグや、障害物の移動速度などを考慮して、伸縮ブーム2の側面から所定距離だけ離れた位置に設定される。
【0031】
又、測域センサ4は、レーザー光を用いていることから、伸縮ブーム2が起立するにしたがって測域センサ4は上方に指向した状態となるが、測域センサ4は太陽光の影響を受けることはなく、検知領域K内の障害物の検知を正確に且つ迅速に行うことができる。なお、ベースブーム21の基端部における起伏方向の側面に測域センサ4を設けてもよい。
【0032】
伸縮ブームの接触防止装置Aは、機能的には、図3に示したように、作業車などのベースマシン1と、伸縮ブーム2と、作業用部材23aと、接触式センサと、ブーム長測定装置3と、測域センサ4と、検知領域設定手段5と、伸縮ブーム動作抑制手段6と、速度比較手段7とを備えている。なお、図3において、物理的に接続している場合は実線とし、電気的に接続している場合は点線とした。
【0033】
伸縮ブームの接触防止装置Aは、物理的には、図4に示したように、作業車などのベースマシン1と、伸縮ブーム2と、作業用部材23aと、接触式センサと、ブーム長測定装置3と、測域センサ4と、CPU(Central Processing Unit)81と、ROM(Read Only Memory)82と、RAM(Random Access Memory)83と、補助記憶装置84と、出力モジュール85及び入力モジュール86とを有している。なお、図4において、物理的に接続している場合は実線とし、電気的に接続している場合は点線とした。
【0034】
CPU81に、伸縮ブーム2の駆動装置2a、接触式センサ、ブーム長測定装置3、測域センサ4、ROM82、RAM83、補助記憶装置84、出力モジュール85及び入力モジュール86が必要に応じてA/D変換素子を介して通信可能に電気的に接続されている。CPU81、接触式センサ、ブーム長測定装置3、測域センサ4、補助記憶装置84、出力モジュール85及び入力モジュール86に汎用の無線モジュールを付帯又は実装させて、相互に無線を通じて通信可能に電気的に接続してもよい。無線モジュールとは、無線データ通信を行なうためのモジュールであって、ワイファイ(Wi-Fi)(登録商標)やブルートゥース(登録商標)[Bluetooth(登録商標)]、W-CDMA規格、LTE規格、LPWA(Low Power Wide Area)規格などの通常の無線通信方式を実現するためのモジュールである。
【0035】
補助記憶装置84としては、例えば、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)などが挙げられる。出力モジュール85としては、例えば、ディスプレイ、スピーカー、携帯端末機器などが挙げられる。入力モジュール86としては、例えば、キーボード、タッチパネル、スイッチなどが挙げられる
【0036】
伸縮ブームの接触防止装置Aは、CPU81やRAM83上に所定のプログラムを読み込ませることにより、CPU81の制御のもとで、ブーム長測定装置3、測域センサ4及び接触式センサを作動させると共に、RAM83や補助記憶装置84におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0037】
検知領域設定手段5、伸縮ブーム動作抑制手段6及び速度比較手段7はそれぞれ、CPU81の制御のもとで、ROM82及び/又は補助記憶装置84などに記憶されている検知領域設定プログラム、伸縮ブーム動作抑制プログラム及び速度比較プログラムを実行することで所定の機能を発揮する。
【0038】
ブーム長測定装置3によって、伸縮ブーム2のブーム長が常時、測定され、測定されたブーム長は常時、CPU81に送信される。そして、CPU81は、検知領域設定プログラムにしたがって測域センサ4の検知領域Kを設定する。測域センサ4が複数ある場合は、全ての測域センサ4について同様に検知領域Kが設定される。なお、以下の動作において、複数の測域センサ4が設けられている場合、測域センサ4ごとに独立して下記の動作が行われる。
【0039】
ROM82及び/又は補助記憶装置84には、図5に示したように、伸縮ブーム2のブーム長に応じた測域センサ4の検知領域Kの長さ(伸縮ブーム2の伸縮方向に沿った長さ)が予め設定され記憶されている。
【0040】
伸縮ブーム2のブーム長に応じた、測域センサ4の検知領域Kの長さの設定例を図5に示す。図5において、グラフの横軸は、伸縮ブーム2のブーム長Dであり、横方向に延びる帯体は、測域センサ4の検知領域Kの長さを示している。縦方向に延びるラインのうち、左側のラインBは、最も縮んだ状態の伸縮ブーム2の全長である。
【0041】
伸縮ブーム2のブーム長を区画して判定範囲Jを設定し、判定範囲Jごとに測域センサ4の検知領域Kの長さが設定されている。例えば、伸縮ブーム2のブーム長Dが、D1以上で且つD2未満である判定範囲J1のときは、検知領域の長さは、エリア1の長さとなる[図1(a)及び図2(a)参照]。なお、ブーム長D1は、最も縮んだ状態の伸縮ブーム2のブーム長である。
【0042】
伸縮ブーム2が伸長して、伸縮ブーム2のブーム長Dが、D2以上で且つD3未満である判定範囲J2のときは、検知領域Kの長さは、エリア2の長さとなる[図1(b)及び図2(b)参照]。そして、伸縮ブーム2が更に伸長して、伸縮ブーム2のブーム長が、Dn-1以上で且つDn未満である判定範囲Jn-1のときは、検知領域Kの長さは、エリアn-1の長さとなる[図1(c)及び図2(c)参照]。
【0043】
なお、図5では、伸縮ブーム2のブーム長Dに基づいて定めた判定範囲の下限値に、測域センサ4の検知領域Kの長さ(エリアnの長さ)を合致させた場合を示したが、測域センサ4の検知領域の長さ(エリアnの長さ)を伸縮ブーム2のブーム長Dに基づいて定めた判定範囲の下限値に合致させる必要はなく、測域センサ4の検知領域Kの長さが、伸縮ブーム2の全長(伸縮ブーム2の基端から先端の長さ)よりも短くなるようにして作業用部材23a並びに作業床内に搭乗する作業者及び作業者の用いる作業器具による誤認識を排除できる範囲であればよく、このような範囲において、可能な限り長いことが好ましい。
【0044】
このように、伸縮ブーム2のブーム長に応じて、測域センサ4の検知領域Kの長さが予め設定されており、伸縮ブーム2のブーム長に基づいて定められた判定範囲が長くなるほど、測域センサ4の検知領域Kの長さが長くなるように設定されている。一方、測域センサ4の検知領域Kの長さは、常時、伸縮ブーム2の全長(伸縮ブーム2の基端から先端の長さ)よりも短くなるように設定されている。
【0045】
測域センサ4の検知領域Kの長さを常時、伸縮ブーム2の全長よりも若干短くなるように設定し、伸縮ブーム2の先端に設けられた作業用部材23aを測域センサ4の検知領域Kから常時、除外しているので、測域センサ4が、伸縮ブーム2の先端に設けられた作業用部材23a並びに作業床内に搭乗する作業者及び作業者の用いる作業器具を誤認識しないように構成している。
【0046】
更に、伸縮ブーム2の伸長に応じて、測域センサ4の検知領域Kの長さを段階的に長くしていることから、作業用部材23a並びに作業床内に搭乗する作業者及び作業者の用いる作業器具などに起因した測域センサ4の誤認識を回避しつつ、測域センサ4の検知領域Kを、伸縮ブーム2の全長の大部分をカバーできる範囲に設定することができ、伸縮ブーム2に接近する障害物を誤認識することなく確実に測域センサ4にて検知することができる。測域センサ4にて障害物が検知された時は、測域センサ4から障害物を検知したことを知らせる障害物検知信号が伸縮ブーム動作抑制手段6に発信され、伸縮ブーム動作抑制手段6によって、伸縮ブーム2の動作が全面的に停止されるか又は障害物の検知した場所に近接する方向への伸縮ブーム2の動作(動き)が抑制される(これらを併せて「伸縮ブームの動作が抑制される」ということがある)。障害物の検知した場所に近接する方向への動作(動き)が抑制される場合、障害物の検知した場所から離れる方向への伸縮ブーム2の動作は許容される。なお、必要に応じて、音声や表示などによって出力モジュール85に出力し、伸縮ブーム2の操縦者及び/又は作業床に搭乗している作業者に注意を喚起してもよい。
【0047】
図5では、伸縮ブーム2のブーム長を区画して判定範囲Jを設定し、伸縮ブーム2のブーム長が同一の判定範囲Jに属する場合、測域センサ4の検知領域Kの長さを同一とし、測域センサ4の検知領域Kの長さを段階的に(階段状に)長くなるように設定していたが、伸縮ブーム2のブーム長が長くなるにつれて、測域センサ4の検知領域も連続的に長くなるように設定してもよい。
【0048】
又、伸縮ブームの接触防止装置Aは、安全装置として速度比較手段を備えていることが好ましい。速度比較手段は、伸縮ブーム2の実測伸縮速度と基準伸縮速度とを比較し、実測伸縮速度が基準伸縮速度を超えた時点で速度超過信号を伸縮ブーム動作抑制手段に発信する。
【0049】
伸縮ブーム2のブーム長は、ブーム長測定装置3によって常時、測定され、CPU81に常時、送信される。ブーム長測定装置3から送信された伸縮ブーム2のブーム長に基づき、速度比較手段7によって、伸縮ブーム2のブーム長の実測伸縮速度が常時、算出される。伸縮ブーム2のブーム長の伸縮速度は、ブーム長測定装置3によって測定された伸縮ブーム2のブーム長から所定時間毎にブーム長が抽出され、所定時間の間に変化したブーム長の変化量の絶対値を算出し、ブーム長の変化量を単位時間当り(例えば、1秒間当りなど)の変化量に換算することによって算出される。
【0050】
ROM82及び/又は補助記憶装置84には、基準伸縮速度が予め設定され記憶されている。速度比較手段7は、上述の要領で算出された実測伸縮速度が基準伸縮速度を超えた時点で伸縮ブーム動作抑制手段6に速度超過信号を発信する。
【0051】
伸縮ブーム2のブーム長は、ブーム長測定装置3によって常時、測定されているが、ブーム長測定装置3の測定範囲内に障害物が侵入すると、ブーム長測定装置3によって測定される伸縮ブーム2のブーム長が突然、短くなる。
【0052】
即ち、ブーム長測定装置3は、発信器31と反射板32との間の距離を測定し、これに必要に応じて補正を加えることによって伸縮ブーム2のブーム長を測定しているが、発信器31と反射板32との間に飛来物などの障害物が侵入すると、発信器31から発信されたレーザー光が反射板32にて反射される前に障害物によって反射され、その結果、ブーム長測定装置3によって測定される伸縮ブーム2のブーム長が本来のブーム長よりも突然、短くなり、伸縮ブーム2の伸縮速度が突然、大きくなる。
【0053】
そこで、速度比較手段7によって実測伸縮速度が基準伸縮速度と比較され、実測伸縮速度が基準伸縮速度を超えた場合(実測伸縮速度が許容範囲を超えて大きくなった場合)に、ブーム長測定装置3の測定範囲内に障害物が進入した(伸縮ブーム2に障害物が接近した)と判断され、速度超過信号が伸縮ブーム動作抑制手段6に発信され、伸縮ブーム動作抑制手段6によって伸縮ブーム2の動きが抑制される。
【0054】
このように、測域センサ4以外に、速度比較手段によっても伸縮ブーム2に接近する障害物の検知を行うことによって伸縮ブーム2への障害物の衝突の回避を確実に行うことができる。
【0055】
次に、伸縮ブームの接触防止装置Aの動作要領を説明する。伸縮ブームの接触防止装置Aの入力モジュール86を用いて伸縮ブームの接触防止装置Aを作動させる(ステップ1)。なお、図6において、ステップは、「S」と表記する。
【0056】
伸縮ブームの接触防止装置Aを作動させると、ブーム長測定装置3が作動し、伸縮ブーム2のブーム長が常時、測定され、測定されたブーム長は、CPU81に送信される(S2)。
【0057】
ROM82及び/又は補助記憶装置84には、伸縮ブーム2のブーム長と、測域センサ4の検知領域Kの長さとの関係が、例えば、表、グラフ、計算式などを用いて予め設定されて記憶されており、この予め設定された条件にしたがって、検知領域設定手段5によって、受信した伸縮ブーム2のブーム長に基づき、測域センサ4の検知領域Kの長さが設定される。なお、測域センサ4の検知領域Kの幅は、所望幅に、例えば、伸縮ブーム2のベースブーム21の幅(伸縮ブーム2の伸縮方向に直交する方向の寸法)又はこれよりも若干広い幅に設定される。
【0058】
例えば、図5に示したように、伸縮ブーム2のブーム長と、測域センサ4の検知領域Kの長さとの関係が定められている場合、検知領域設定手段5によって、伸縮ブーム2のブーム長に基づいて判定範囲Jが特定される(S3)。
【0059】
例えば、伸縮ブーム2のブーム長が「D5以上で且つD6未満」である場合、検知領域設定手段5によって、判定範囲として「J5」が選択され、この判定範囲J5に基づいて、測域センサ4の検知領域Kの長さとして「エリア5」が選択され、測域センサ4の検知領域Kの長さが「D5」に設定される(S4)。
【0060】
このように、伸縮ブーム2のブーム長にしたがって測域センサ4の検知領域Kの長さが設定されるので、伸縮ブーム2のブーム長の略全長に亘って測域センサ4による障害物の検知が行われる(S5)。
【0061】
測域センサ4の検知領域Kから作業用部材23aは常時、除外され、測域センサ4が、伸縮ブーム2の先端に設けられた作業用部材23a並びに作業床内に搭乗する作業者及び作業者の用いる作業器具を障害物として誤認識しないように構成されているので、測域センサ4によって伸縮ブーム2に接近する障害物のみを正確に検知することができる。
【0062】
また、伸縮ブーム2が起立するにしたがって測域センサ4の発信器も上方を指向し、測域センサ4が太陽光を受光し易くなるが、測域センサ4は、レーザー光を用いており、太陽光による影響はなく、伸縮ブーム2の起伏状態の如何にかかわらず、障害物を正確に検知することができる。
【0063】
そして、伸縮ブーム2の検知領域Kに障害物が侵入すると、測域センサ4によって障害物が検知され、障害物検知信号が伸縮ブーム動作抑制手段6に発信される(S6)。障害物検知信号を受信した伸縮ブーム動作抑制手段6は、伸縮ブーム2の動作を全面的に停止又は障害物の検知された箇所に近接する方向に伸縮ブーム2が動作することを禁止し、伸縮ブーム2の動作を抑制させる(S7)。なお、必要に応じて、音声や表示などによって出力モジュール85に出力し、伸縮ブーム2の操縦者及び/又は作業床に搭乗している作業者に注意を喚起してもよい。
【0064】
伸縮ブーム動作抑制手段6によって伸縮ブーム2の動作が抑制された場合、伸縮ブーム2の操縦者が伸縮ブーム2の周囲を確認し、伸縮ブーム2に接近する障害物を除去した後、入力モジュール86を用いて、障害物除去信号を伸縮ブーム動作抑制手段に送信する。伸縮ブーム動作抑制手段6が障害物除去信号を受信すると、伸縮ブーム動作抑制手段6は、伸縮ブーム2の動作の抑制を解除し、障害物を検知する前の動作に復帰した後、ステップ2に戻り、伸縮ブームの接触防止装置は、障害物を検知する前の通常の動作に復帰する。
【0065】
橋梁の点検及び補修の作業時に、橋梁を構成している桁部材及び接続部材などの構成部材を回避しながら、伸縮ブーム2を起伏及び/又は旋回させつつ伸縮させ、必要に応じて作業車を移動(横行)させて(これらの伸縮ブーム2の動作を併せて「変動」ということがある)、伸縮ブーム2の先端に設けた作業用部材23aを目的とする作業地点に到達させる。
【0066】
橋梁の構成部材は、様々な方向に指向していることから、一の構成部材を回避するために伸縮ブーム2を変動させると、他の構成部材に不測に衝突する虞れがあるが、上記伸縮ブームの接触防止装置では、測域センサ4が、伸縮ブーム2のブーム長にかかわらず、伸縮ブーム2の略全長に亘って伸縮ブーム2に接近する障害物を常時、監視しており、伸縮ブーム2に障害物が衝突するのを未然に防止することができる。
【0067】
測域センサ4による障害物の検知と併せて、安全装置として、速度比較手段7によっても伸縮ブーム2に接近する障害物を検知している場合、ブーム長測定装置3によって測定された伸縮ブーム2のブーム長に基づいて、速度比較手段7によって伸縮ブーム2のブーム長の実測伸縮速度が常時、算出される(S8)。なお、図6のフローチャートと同様の動作については説明を省略する。
【0068】
そして、速度比較手段7によって、予め設定された基準伸縮速度と、実測伸縮速度とが常時、比較され(S9)、実測伸縮速度が基準伸縮速度を超えた時点で、速度比較手段7によって伸縮ブーム動作抑制手段6に速度超過信号が発信され(S10)、伸縮ブーム動作抑制手段6によって伸縮ブーム2の動作が抑制される(S7)。なお、出力モジュール85への出力及び伸縮ブーム動作抑制手段による伸縮ブームの動作の抑制の解除は、上述と同様であるので説明を省略する。
【0069】
上記伸縮ブームの接触防止装置によれば、作業用部材23aによる測域センサ4の誤認識を防止するために、伸縮ブーム2の先端に設けられた作業用部材23aを測域センサ4の検知領域Kから常時、除外している。
【0070】
そこで、作業用部材23aに近接する障害物を検知するための接触式センサを設け、作業用部材23a、特に作業床に障害物が接触しないようにすることが好ましい。なお、接触式センサとは、外部からの人又は物などの接触によって、人又は物などの障害物を検知することができるセンサをいう。接触式センサとしては、例えば、テープスイッチ、感圧スイッチなどが挙げられる。接触式センサは、常時、作業用部材23aに近接する障害物の検知を行っている。接触式センサの検知領域Lとしては、作業用部材23aに対する水平方向、下方及び上方から接近する障害物を検知できるように配置することが好ましいが、障害物の接近を認識し難い、作業用部材23aの水平方向及び/又は下方から接近する障害物を検知することができるように配置することがより好ましい。
【0071】
次に、接触式センサを用いた伸縮ブームの接触防止装置Aの動作要領について、図8を参照しつつ説明する。
【0072】
接触式センサは、伸縮ブームの接触防止装置Aの作動中、障害物の接触を常時、検知している(S11)。接触式センサに障害物が接触した場合は、接触式センサから障害物を検知した旨の障害物検知信号が伸縮ブーム動作抑制手段6に発信され(S12)、伸縮ブーム動作抑制手段6によって、伸縮ブーム2の動作が全面的に停止されるか又は障害物の検知した場所に近接する方向への動作(動き)が抑制される(S7)。障害物の検知した場所に近接する方向への動作(動き)が抑制される場合、障害物の検知した場所から離れる方向への伸縮ブーム2の動作は許容される。なお、必要に応じて、音声や表示などによって出力モジュール85に出力し、伸縮ブーム2の操縦者及び/又は作業床に搭乗している作業者に注意を喚起してもよい。
【0073】
伸縮ブーム動作抑制手段6によって伸縮ブーム2の動作が抑制された場合、伸縮ブーム2の操縦者が作業用部材23aの周囲を確認し、作業用部材23aに接近する障害物を除去した後、入力モジュール86を用いて、障害物除去信号を伸縮ブーム動作抑制手段に送信する。伸縮ブーム動作抑制手段6が障害物除去信号を受信すると、伸縮ブーム動作抑制手段6は、伸縮ブーム2の動作の抑制を解除し、障害物を検知する前の動作に復帰した後、ステップ11に戻り、伸縮ブームの接触防止装置は、障害物を検知する前の通常の動作に復帰する。
【0074】
上記動作では、入力モジュール86を用いて、障害物除去信号を入力することによって、伸縮ブームの動作の抑制を解除している。一方、伸縮ブーム動作抑制手段によって伸縮ブームの動作を抑制した状態では、障害物を除去できない事態がある。即ち、伸縮ブーム2を障害物に近接させる方向に動作させないと、障害物を除去することができない事態がある。
【0075】
上記事態が発生した場合は、入力モジュール86を用いて、抑制停止信号を入力する。伸縮ブーム動作抑制手段が抑制停止信号を受信すると、伸縮ブーム動作抑制手段が停止する(S13)。なお、抑制停止信号によって、測域センサ2、接触式センサ、ブーム長測定装置3、検知領域設定手段5及び速度比較手段7の全て及びその一部の動作を停止させてもよい。
【0076】
伸縮ブーム動作抑制手段を停止させることによって、伸縮ブーム動作抑制手段による伸縮ブーム2の動作の抑制が解除され、障害物に近接させる方向への伸縮ブーム2の動作が可能になる。この状態で、伸縮ブーム2の操縦者及び/又は作業床に搭乗している作業者が障害物などに注意しながら、伸縮ブームを起伏及び/又は旋回させながら、必要に応じて伸縮させ、更に必要に応じて作業車を移動(横行)させて、障害物を除去する。
【0077】
障害物を除去した後、入力モジュール86を用いて、障害物除去信号を入力する。障害物除去信号によって、伸縮ブーム動作抑制手段6は、動作を再開し、障害物を検知する前の状態に復帰する(S14)。しかる後、ステップ2又はステップ11に戻り、伸縮ブームの接触防止装置は、障害物を検知する前の通常の動作に復帰する。
【0078】
なお、抑制停止信号によって、測域センサ2、接触式センサ、ブーム長測定装置3、検知領域設定手段5及び速度比較手段7の全て及びその一部の動作が停止されている場合は、障害物除去信号によって、測域センサ2、接触式センサ、ブーム長測定装置3、検知領域設定手段5及び速度比較手段7において、停止された動作が全て開始され、障害物を検知する前の状態に復帰する。
【0079】
伸縮ブームの接触防止装置において、上記抑制停止信号の入力による動作は、必要に設けられればよい。なお、図6~8では、上記抑制停止信号の入力による動作が設けられた伸縮ブームの接触防止装置の動作を示した。
【符号の説明】
【0080】
1 ベースマシン
2 伸縮ブーム
21 ベースブーム
22 中間ブーム
23 トップブーム
23a 作業用部材
3 ブーム長測定装置
31 ブーム長測定装置の発信器
32 ブーム長測定装置の反射板
4 測域センサ
5 検知領域設定手段
6 伸縮ブーム動作抑制手段
7 速度比較手段
A 接触防止装置
D ブーム長
J 判定範囲
K 測域センサの検知領域
L 接触式センサの検知領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9