(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】油脂抽出蒸留設備
(51)【国際特許分類】
C11B 3/12 20060101AFI20240613BHJP
B01D 3/38 20060101ALI20240613BHJP
B01D 3/40 20060101ALI20240613BHJP
C11B 1/10 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C11B3/12
B01D3/38
B01D3/40
C11B1/10
(21)【出願番号】P 2023196317
(22)【出願日】2023-11-18
【審査請求日】2023-11-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315013836
【氏名又は名称】株式会社宮富士工業
(73)【特許権者】
【識別番号】523054023
【氏名又は名称】株式会社建
(74)【代理人】
【識別番号】100096910
【氏名又は名称】小原 肇
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 ▲昇▼
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-055396(JP,A)
【文献】特開昭51-089506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00- 15/00
C11C 1/00- 5/02
B01D 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂抽出液を受給しその抽出溶剤を蒸発させて上記油脂抽出液を濃縮する少なくとも一つの蒸発缶を備えた油脂抽出蒸発設備であって、上記少なくとも一つの蒸発缶は、外部から
管側へ流入する上記油脂抽出液を
シェル側へ流入するフラッシュ蒸気によって予熱する予熱部と、上記予熱部の下流側に接続され且つ上記予熱部から
管側へ流入する上記油脂抽出液を
シェル側へ流入する飽和水蒸気によって加熱する加熱部とを有し、上記予熱部内
の管側を流れる上記油脂抽出液から気化する
気泡状の気化溶剤を上記予熱部
の下流端部内から外部へ排出する第1ガス排出管を上記予熱部の下流端部に
接続すると共に、上記予熱部から
上記加熱部の上流端部内へ流入する上記油脂抽出液に含まれる
気泡状の気化溶剤を上記加熱部
の上流端部内から外部へ排出する第2ガス排出管を上記加熱部の上流端部に
接続し、上記第1、第2ガス排出管と上記加熱部の下流端部内とを連通させたことを特徴とする油脂抽出蒸留設備。
【請求項2】
上記少なくとも一つの蒸発缶は、上流側に配置された第1蒸発缶と、下流側に配置された第2蒸発缶と、を有し、上記第2蒸発缶が上記予熱部、上記加熱部及び上記
第1、第2ガス排出管を有することを特徴とする請求項1に記載の油脂抽出蒸留設備。
【請求項3】
上記予熱部の下流端の内部に上記
気泡状の気化溶剤を塞き止める第1堰板を
上記第1ガス排出管と上記予熱部との接続口に対向させて設け
、上記気泡状の気化溶剤を上記第1堰板から上記第1ガス排出管の接続口へ導くと共に、上記加熱部の上流端の内部に上記
気泡状の気化溶剤を塞き止める第2堰板を
上記第2ガス排出管と上記加熱部との接続口に対向させて設け
、上記気泡状の気化溶剤を上記第2堰板から上記第2ガス排出管の接続口へ導くことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油脂抽出蒸留設備。
【請求項4】
上記第1
、第2ガス排出管それぞれに上記油脂抽出液の漏れを防止する第1、第2漏れ防止部材を設けたことを特徴とする請求項3に記載の油脂抽出蒸留設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂原料を溶剤抽出した後の抽出溶液に含まれる溶剤を蒸発除去する蒸発缶を備えた油脂抽出蒸留設備に関し、更に詳しくは、蒸発缶でのエネルギー消費を削減することができる油脂抽出蒸留設備に関する。
【背景技術】
【0002】
植物油の製造では、菜種、とうもろこし胚芽あるいは大豆等の植物油原料から菜種油、とうもろこし油あるいは大豆油などの油脂を採油する。採油方法としては、圧搾法、溶剤抽出法及び圧油法がある。菜種、とうもろこし胚芽等のように油脂成分が多い植物油原料では、原料を圧搾して油脂成分を搾り出す圧搾法が採用されている。大豆等のように油脂成分が20%に満たない油脂成分の少ない植物油原料では、加熱などの前処理後押し潰してフレーク状にした植物油原料(以下、「フレーク」と称す。)から油脂成分を、例えばノルマルヘキサン等の溶剤を用いて抽出する溶剤抽出法が採用されている。また。菜種、とうもろこし胚芽等の圧搾後の搾り粕にも油脂成分が10数%程度残留しているため、ノルマルヘキサンを用いて搾り粕から油脂成分を抽出する、圧搾法と抽出法を組み合わせた圧抽法が採用されている。溶剤抽出法や圧抽法ではフレークや搾り粕(以下、「油粕」と称す。)から油脂成分を抽出した後、ミセラを例えば350~240torrほどの減圧下で加熱して抽出溶剤であるノルマルヘキサンを蒸発、除去して油脂を回収する油脂抽出蒸留設備が用いられる。
【0003】
例えば
図4に示す油脂抽出蒸留設備は、本出願人が特許文献1において提案したものである。この油脂抽出蒸留設備は、同図に示すように、種子内の油脂成分を溶剤抽出して油脂抽出液(以下、「ミセラ」と称す。)を生成する抽出部10と、抽出部10から供給されるミセラを蒸発、蒸留する蒸発蒸留部20と、を備えて構成されている。
【0004】
抽出部10は、
図4に示すように、ノルマルヘキサンを用いて種子内の油脂成分を抽出する抽出機11と、その上流側、下流側それぞれに付設された第1、第2搬送機11A、11Bと、抽出機11内で搬送される油粕にノルマルヘキサンを供給する溶剤ポンプ12と、抽出機11から排出されるミセラを一時的に貯留するミセラタンク13と、抽出機11からの油粕中に残存するノルマルヘキサンをノルマルヘキサンガスとして除去する脱溶剤機15と、を備えている。
【0005】
脱溶剤機15は、抽出後の油粕を収納する本体と、本体の上端中央に形成された筒状の上部空間と、本体の下側に本体より小径に形成されたトースト部と、を有している。脱溶剤機15の上部と下部にはそれぞれ第3、第4搬送機15A、15Bが付設されている。
【0006】
また、脱溶剤機15の上部空間内にはエリミネータ16が設置され、このエリミネータ16が本体内の油粕から上昇する水蒸気の一部を水滴として除去すると共に油粕の微粉の多くを遮って油粕に戻すようにしている。以下では油粕から吹き上がる水蒸気とノルマルヘキサンガスからなる混合ガスを複合ガスとして説明する。
【0007】
脱溶剤機15の上部空間には
図4に示すように噴霧ヘッド17が配置され、この噴霧ヘッド17にはフラッシュタンク17Aが接続されている。フラッシュタンク17A内では例えば100℃以上のフラッシュ蒸気が上部空間内に噴霧される。このフラッシュ蒸気は上部空間内で複合ガスに混入し、フラッシュ蒸気が露点に達しその一部が湯気になり、この湯気が上部空間内で浮遊する微粉を捕捉してエリミネータ16を介して元の油粕に戻すと共に油粕に適度の加湿を行う。大部分のフラッシュ蒸気は上部空間内で複合ガスに混入し、油粕から上昇する時の温度、例えば74℃を維持したまま蒸発蒸留部20の第1蒸発缶21へ供給される。
【0008】
第1蒸発缶21では脱溶剤機15からの複合ガスの潜熱によってミセラタンク13からのミセラを加熱して濃縮する。脱溶剤機15では複合ガスがフラッシュ蒸気の混入により本体部の油粕から上昇した時の温度(例えば74℃)を維持したまま第1蒸発缶21へ供給される。従って、第1蒸発缶21は予定通りミセラを加熱することができ、第1蒸発缶21の後工程では余分なエネルギーを消費することがない。第1蒸発缶21内でミセラから蒸発するノルマルヘキサンガスは第1コンデンサ24において冷却された後、溶剤セパレータ25で溶剤として回収される。
【0009】
また、第2蒸発缶22は、
図4に示すように、予熱部22Aと加熱部22Bからなり、予熱部22A、加熱部22Bによって第1蒸発缶21からのミセラを効率良く加熱し、省エネルギーを図るようにしてある。即ち、予熱部22Aが加熱部22Bの上流側に位置し、互いに配管で接続されている。そして、後述するように、予熱部22Aにおいてミセラを予熱して生成するノルマルヘキサンガスからなる気泡を予めガス排出管22Cから放出し、加熱部22Bではノルマルヘキサンガスの気泡を含まない濃度の高いミセラを効率良く加熱するようにしている。
【0010】
このような対策により、予熱部22A内で気化したノルマルヘキサンガスはガス排出管22Cから排出され、加熱部22Bへはミセラ濃度84%まで濃縮されたノルマルヘキサンガスを含まないミセラが流入する。加熱部22Bへ流入するミセラの気泡の様子は覗き窓22Dから確認することができる。加熱部22B内ではミセラが水蒸気配管から供給される飽和水蒸気を熱源として加熱されて例えば濃度96%のミセラを生成し、油脂塔23へ供給される。この時、加熱部22Bでは濃度の高いミセラを飽和水蒸気によって熱効率良く加熱することができる。
【0011】
また、油脂塔23は、
図4に示すように上下に分割され、下部23Aが上部23Bより高真空になっている。上下の分割部には、それぞれ複数の棚段が設けられ、濃縮ミセラが各棚段を流下する間に水蒸気で加熱されてノルマルヘキサンが蒸発して徐々に除去される。また、下部23A内の棚段の下方に蒸気配管23Cに接続された蒸気吹き込み部が配置され、高真空下で棚段から流下する油脂内に蒸気をバブリングさせ、バブリング時の気泡表面から油脂中の微量の残留ノルマルヘキサンがガス化して除去され、実質的にノルマルヘキサンを含まない高純度の油脂が得られる。油脂塔23において除去されたノルマルヘキサンが第2コンデンサ26で凝縮され溶剤セパレータ25で回収する。尚、27は溶剤セパレータ25に付帯する水回収部である。
【0012】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、
図4に示す従来の油脂抽出蒸留設備の場合には、第2蒸発缶22では予熱部22Aにおいて気化するノルマルヘキサンガスがガス排出管22Cから排出され、加熱部22Bではミセラがノルマルヘキサンガスを含まない形で効率良く加熱されるが、本発明者がその後も第2蒸発缶22のエネルギー消費について種々検討した結果、現在の予熱部22A及び加熱部22Bでは、省エネルギーを促進するためには依然として構造上改善する余地が残されていることが判った。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、蒸発缶の配管構造を改善するだけで蒸発缶での消費エネルギーを大幅に削減することができる油脂抽出蒸留設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1の油脂抽出蒸留設備は、上記知見に基づいてなされたもので、油脂抽出液を受給しその抽出溶剤を蒸発させて上記油脂抽出液を濃縮する少なくとも一つの蒸発缶を備えた油脂抽出蒸発設備であって、上記少なくとも一つの蒸発缶は、外部から管側へ流入する上記油脂抽出液をシェル側へ流入するフラッシュ蒸気によって予熱する予熱部と、上記予熱部の下流側に接続され且つ上記予熱部から管側へ流入する上記油脂抽出液をシェル側へ流入する飽和水蒸気によって加熱する加熱部とを有し、上記予熱部内の管側を流れる上記油脂抽出液から気化する気泡状の気化溶剤を上記予熱部の下流端部内から外部へ排出する第1ガス排出管を上記予熱部の下流端部に接続すると共に、上記予熱部から上記加熱部の上流端部内へ流入する上記油脂抽出液に含まれる気泡状の気化溶剤を上記加熱部の上流端部内から外部へ排出する第2ガス排出管を上記加熱部の上流端部に接続し、上記第1、第2ガス排出管と上記加熱部の下流端部内とを連通させたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項2に記載の油脂抽出蒸留設備は、請求項1に記載の発明において、上記少なくとも一つの蒸発缶は、上流側に配置された第1蒸発缶と、下流側に配置された第2蒸発缶と、を有し、上記第2蒸発缶が上記予熱部、上記加熱部及び上記第1、第2ガス排出管を有することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載の油脂抽出蒸留設備は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記予熱部の下流端の内部に上記気泡状の気化溶剤を塞き止める第1堰板を上記第1ガス排出管と上記予熱部との接続口に対向させて設け、上記気泡状の気化溶剤を上記第1堰板から上記第1ガス排出管の接続口へ導くと共に、上記加熱部の上流端の内部に上記気泡状の気化溶剤を塞き止める第2堰板を上記第2ガス排出管と上記加熱部との接続口に対向させて設け、上記気泡状の気化溶剤を上記第2堰板から上記第2ガス排出管の接続口へ導くことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の油脂抽出蒸留設備は、請求項3に記載の発明において、上記第1、第2ガス排出管それぞれに上記油脂抽出液の漏れを防止する第1、第2漏れ防止部材を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、管側を通る油脂抽出液をシェル側の熱媒体で加熱して油脂抽出液を濃縮する蒸発缶を予熱部と加熱部に分割して直列に配置し、予熱部の下流端部と加熱部の上流端部それぞれに第1、第2ガス排出管を接続し、第1、第2ガス排出管を加熱部の下流端の内部に連通させて予熱部の下流端内部の圧力を加熱部の下流端内部の圧力まで下げることができるため、従来に比べて予熱部内の油脂抽出液の沸点を上記加熱部内の沸点まで下げて油脂抽出液の気化を促進することができ、延いては加熱部の油脂抽出液が濃縮されて沸点が上がって気泡がなくなり加熱部での飽和蒸気の使用量を大幅に削減することができる油脂抽出蒸留設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の油脂抽出蒸留設備の一実施形態を示す構成図である。
【
図2】
図1に示す油脂抽出蒸留設備の要部を示す模式図である。
【
図3】
図2に示す漏れ防止部材を拡大して示す断面図である。
【
図4】従来の油脂抽出蒸留設備の一例を示す
図1に相当する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図3に示す本実施形態に基づいて従来と同一または相当部分には同一符号を付して本発明の油脂抽出蒸留設備について説明する。
本実施形態の油脂抽出蒸留設備は、例えば
図1に示すように、種子内の油脂成分を溶剤抽出してミセラを生成する抽出部10と、抽出部10から供給されるミセラを蒸発、蒸留する蒸発蒸留部20と、を備え、油粕に残存する油脂を回収するように構成されている。
【0022】
抽出部10は、
図1に示すように、ノルマルヘキサンを用いて種子内の油脂成分を抽出する抽出機11と、その上流側、下流側それぞれに付設された第1、第2搬送機11A、11Bと、抽出機11内で搬送される油粕にノルマルヘキサンを供給する溶剤ポンプ12と、抽出機11から排出されるミセラを一時的に貯留するミセラタンク13と、抽出機11からの油粕中に残存するノルマルヘキサンをノルマルヘキサンガスとして除去する脱溶剤機15と、を備えている。
【0023】
また、
図1に示すように、脱溶剤機15は、抽出後の油粕を収納する本体と、本体の下側に本体より小径に形成されたトースト部と、を有している。脱溶剤機15の上部と下部にはそれぞれ第3、第4搬送機15A、15Bが付設されている。
【0024】
また、
図1に示すように、脱溶剤機15の上部空間内にはエリミネータ16が設置され、このエリミネータ16が本体内の油粕から上昇する水蒸気の一部を水滴として除去すると共に油粕の微粉の多くを遮って油粕に戻すように構成されている。このエリミネータ16は、大きめの微粉を複数のジグザグ板で捕捉し、小さめの微粉が複数のジグザグ板の隙間をすり抜けて上部空間内の複合ガス中で浮遊する。
【0025】
また、脱溶剤機15の上部空間にはエリミネータ16の上方に噴霧ヘッド17が配置され、この噴霧ヘッド17にはフラッシュタンク17Aが配管17Bを介して接続されている。フラッシュタンク17Aには高温ドレン水が供給され、フラッシュタンク17A内で例えば100℃以上のフラッシュ蒸気になり、このフラッシュ蒸気が配管17B及び噴霧ヘッド17を介して常圧空間である上部空間内に噴霧される。このフラッシュ蒸気は上部空間内の複合ガスに混入する。この時フラッシュ蒸気の湯気が上部空間内の微粉を捕捉してエリミネータ16を介して元の油粕に戻すと共に油粕を適度に加湿する。大部分のフラッシュ蒸気は上部空間内で複合ガスに混入する。
【0026】
このように複合ガス中のノルマルヘキサンガスに対する水蒸気の分圧が高くなり、水蒸気が液化することなくそのまま配管15Eを介して蒸発蒸留部20側へ供給される。この複合ガスは、油粕から上昇する時の温度、例えば74℃を維持したまま蒸発部蒸留20の第1蒸発缶21へ供給される。また、温度を74℃にすることにより複合ガスの潜熱が増し第1蒸発缶21の蒸発が促進され、後段の第2蒸発缶22の熱負荷が軽減される。従って、第1蒸発缶21の後工程では余分なエネルギーを消費することがなく、省エネルギーを図ることができる。
【0027】
また、本実施形態では、第2蒸発缶22は第1蒸発缶21とは異なり、例えば
図1、
図2に示すように、予熱部22Aと加熱部22Bとに分割され、予熱部22Aが加熱部22Bの上流側に位置し、互いに配管で接続されている。予熱部22Aの上流端(予熱部22Aの下端)には第1蒸発缶21からのミセラが流入する配管が接続されている。加熱部22Bの下流端(加熱部22Bの上端)には減圧室が形成さ、この減圧室にノルマルヘキサンガス及び濃縮ミセラそれぞれの出口形成されている。濃縮ミセラの出口には配管を介して油脂塔23に接続され、ノルマルヘキサンガスの出口には配管を介して第1コンデンサ24が接続されている。
【0028】
予熱部22Aのシェル側下流端(上端)には
図1、
図2に示すようにフラッシュタンク28が接続されている。このフラッシュタンク28には高温ドレン水が供給されて、フラッシュタンク28内で高温ドレン水からフラッシュ蒸気が発生するようになっている。フラッシュタンク28内で生成するフラッシュ蒸気は、予熱部22Aのシェル側に供給され、そのシェル側のフラッシュ蒸気によって管側のミセラを加熱するようにしてある。予熱部22Aの加熱部分を以下では加熱帯として説明する。予熱部22Aの上下両端部の空間は加熱帯から区画されている。予熱部22Aの加熱帯の管内ではミセラから多くのノルマルヘキサンが蒸発し、予熱部22Aの上端部内には
図2、
図3に示すように気泡Bが一時的に滞留する。加熱部22Bも予熱部22Aと同様に加熱帯が形成され。その上下両端部が加熱帯から区画されている。
【0029】
また、
図2に示すように、予熱部22Aの上端部内にはミセラから生成するノルマルヘキサンガスの気泡Bを上端部内で塞き止める第1堰板22A
1が傾斜して設けられている。予熱部22Aの上端部には第1堰板22A
1で塞き止められた気泡Bを外部(第1コンデンサ24側)へ排出する第1ガス排出管22Cが設けられている。第1ガス排出管22Cは例えばL字状に形成され、予熱部22Aから水平に延びる水平部と、水平部から上方へ延びる立ち上がり部とからなり、立ち上がり部の基部にミセラの外部(第1コンデンサ24側)への漏れを防止する第1漏れ防止部材22Eが設けられている。ノルマルヘキサンガスの気泡Bは第1ガス排出管22Cから第1コンデンサ24側へ排出される際に予熱部22A内のミセラも気泡Bに随伴するが、このミセラは第1漏れ防止部材22Eによって第1ガス排出管22Cの水平部に押し止められ、気泡Bのみが排出されるようになっている。
【0030】
第1漏れ防止部材22Eは、
図3に示すように、ほぼ予熱部22Aの上端部とほぼ同じ高さに位置する第1ガス排出管22Cのフランジ接合部に介在している。第1漏れ防止部材22Eは、同図に示すように、円盤状のプレート22E
1と、プレート22E
1の中央に配置されたテーパ状の通気路22E
2と、プレート22E
1に通気路22E
2を囲んで形成された複数の孔22E
3とからなっている。第1ガス排気管22Cは、ノルマルヘキサンガスの気泡Bが
図3の矢印Xで示すように通気路22E
2を通って第1コンデンサ側へ排出される。この際、ミセラの一部が気泡Bに随伴して通気路22E
2から漏れることがあっても複数の孔22E
3から矢印Yで示すように自重で戻り、ノルマルヘキサンガスの気泡Bのみが第1コンデンサ24側へ排出されるようになっている。
【0031】
図1、
図2に示すように、加熱部22Bの下端部内には第2堰板22B
1が傾斜して設けられている。予熱部22Aから加熱部22B内へ流入するミセラ中にノルマルヘキサンガスの気泡Bが含まれていることがあっても第2堰板22B
1によって気泡Bを塞き止めることができる。また、加熱部22Bの下端部には第2堰板22B
1で塞き止められた気泡Bをノルマルヘキサンガスとして第1コンデンサ24側へ排出する第2ガス排出管22Fが設けられている。第2ガス排出管22Fは第1ガス排出管22Cと同様にL字状に形成され、立ち上がり部の基部にミセラの漏れを防止する第2漏れ防止部材22Gが設けられている。第2漏れ防止部材22Gは、
図3に示すように第1漏れ防止部材22Eと同一構造をしている。
【0032】
第2ガス排出管22Fは、
図1、
図2に示すように加熱部22Bの減圧室と連通しているため、加熱部22Bの下端部の圧力は第2ガス排出管22Fを介して減圧室内と同一の圧力になる。また、予熱部22Aの加熱帯上端の圧力は、第2ガス排出管22Fを介して形成された減圧室の圧力に、加熱部22B下端部と予熱部22Aの上端部の間にあるミセラの液柱分の圧力を加算した圧力になる。一方、加熱部22Bの加熱帯上端の圧力は、減圧室の圧力に、加熱部22Bの減圧空間内への突出部分のミセラの液柱分の圧力を加算した圧力になる。従って、予熱部22Aの加熱帯には加熱部22Bの加熱帯に準ずる減圧環境が形成されるため、予熱部22Aでも加熱部22Bに準じてミセラの沸点が下がり、予熱部22Aの加熱帯では従来よりも多くのノルマルヘキサンが蒸発する。その結果、予熱部22Aから加熱部22Bに流入するミセラの濃度が従来よりも高くなってミセラの沸点が上昇して気泡Bを生成し難く、加熱部22Bの加熱帯では気泡Bに費やされるエネルギーが不要で、従来より飽和水蒸気の使用量を削減することができる。予熱部22Aで生成するノルマルヘキサンガスの気泡Bは第1、第2ガス排出管22C、22Fを介して第1コンデンサ24側へ順次効率良く排出される。この際、第2ガス排出管22Fでも第2漏れ防止部材22Gを介して第1ガス排出管22Cに準じてミセラの漏れを防止することができる。
【0033】
このよう加熱部22Bでは、予熱部22A内でミセラからノルマルヘキサンガスの気泡Bを排出しきれなかった場合であっても加熱部22Bの下端部の第2堰板22B1によってその気泡Bが捕獲され第2ガス排出管22Fから第1コンデンサ24側へ確実に排出される。そのため、予熱部22Aにおいて生成したミセラが気泡Bを含まない状態で加熱部22Bを通過する。加熱部22Bでは気泡Bを含まないミセラが加熱されるため、従来よりも少ない飽和水蒸気量でミセラを効率良く濃縮することができる。第2蒸発缶22で得られた高濃度のミセラは後工程の油脂塔23へ供給される。
【0034】
また、
図1、
図2に示すように加熱部22Bの上部のシェル側には飽和水蒸気の蒸気配管28Aが接続されている。この蒸気配管28Aから加熱部22Bの加熱帯に飽和水蒸気を供給し、加熱帯においてミセラを加熱してノルマルヘキサンを蒸発させてミセラを濃縮する。加熱部22Bの加熱帯から減圧室内への突出部分の濃縮ミセラの液面からノルマルヘキサンガスを蒸発させてミセラを濃縮する。上述したように、濃縮ミセラが加熱部22Bの加熱帯を上昇する間に濃縮ミセラの沸点が徐々に上昇し、濃縮ミセラからノルマルヘキサンガスの気泡Bは生成し難い。その結果、飽和水蒸気は、気泡を含まない濃縮ミセラを加熱するため、加熱部22Bでの飽和水蒸気の使用量は従来よりも少なく済ませ、省エネルギーを促進することができる。
【0035】
油脂塔23は、
図1に示すように従来と同様に上下に分割され、下部23Aが上部23Bより高真空になっている。下部23Aは上部23Bより高い真空度に形成されている。上下の分割部23A、23Bには、高真空下でそれぞれの濃縮ミセラ内に水蒸気を蒸気配管23Cから吹き込んで水蒸気蒸留を行い、下部23Aでは濃縮ミセラの残留ノルマルヘキサンを除去するように構成されている。下部23Aでは濃縮ミセラの残留ノルマルヘキサンがガス化して除去され、実質的にノルマルヘキサンを含まない高純度の油脂が得られる。油脂塔23において除去されたノルマルヘキサンが第2コンデンサ26で凝縮され溶剤セパレータ25で回収する。尚、27は溶剤セパレータ25に付帯する水回収部である。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、第2蒸発缶22の予熱部22A、加熱部22Bそれぞれに第1、第2ガス排出管22C、22Fを設けたため、予熱部22Aにも加熱部22Bに準じた減圧環境を作ることができ、予熱部22Aの加熱帯を通るミセラの沸点を従来より下げてノルマルヘキサンの蒸発を促進し、加熱部22Bへはミセラ濃度の高いミセラを送ってノルマルヘキサンガスを殆ど含まない濃縮ミセラを効率良く加熱することができ、もって加熱部22Bでの飽和水蒸気の使用量を大幅に削減することができる。また、予熱部22Aの上端部、加熱部22Bの下端部それぞれに第1、第2堰板22A1、22B1を設けたため、予熱部22Aの上端部、加熱部22Bの下端部内のノルマルヘキサンガスの気泡Bを確実に第1、第2ガス排出管22C、22Fへ誘導することができる。
【0037】
尚、本発明は上記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の構成要素を必要に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0038】
22 第2蒸発缶(蒸発缶)
22A 予熱部
22B 加熱部
22A1 第1堰板
22B1 第2堰板
22C 第1ガス排出管
22E 第1漏れ防止部材
22F 第2ガス排出管
22G 第2漏れ防止部材
【要約】
【課題】蒸発缶の配管構造を改善するだけで蒸発缶での消費エネルギーを大幅に削減することができる油脂抽出蒸留設備を提供する。
【解決手段】本発明の油脂抽出蒸留設備は、ミセラを受給しノルマルヘキサンを蒸発させてミセラを濃縮する第2蒸発缶22を備え、第2蒸発缶22は、外部から流入するミセラをフラッシュ蒸気によって予熱する予熱部22Aと、予熱部22Aの下流側に接続され且つ予熱部22Aから流入するミセラを飽和水蒸気によって加熱する加熱部22Bとを有し、予熱部22A内でミセラから気化するノルマルヘキサンガスを予熱部22Aから外部へ排出する第1ガス排出管22Cを予熱部22Aの下流端部に設けると共に、予熱部22Aから流入するミセラに含まれるノルマルヘキサンガスを外部へ排出する第2ガス排出管22Fを加熱部22Bの上流端部に設けたことを特徴とする。
【選択図】
図2