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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】組み立て構造材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240613BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20240613BHJP
   E04C 5/01 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
E04B1/58 507S
E04B1/58 505S
E04B1/24 G
E04C5/01
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023219871
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517138982
【氏名又は名称】有限会社鉄骨屋
(73)【特許権者】
【識別番号】523290403
【氏名又は名称】株式会社リコネクト
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 正人
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-220818(JP,A)
【文献】特開2002-327495(JP,A)
【文献】実開昭62-175107(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第109057036(CN,A)
【文献】特開2003-301512(JP,A)
【文献】実開昭60-102307(JP,U)
【文献】実開昭51-101018(JP,U)
【文献】特開2019-210697(JP,A)
【文献】特開2013-087846(JP,A)
【文献】特開2006-312836(JP,A)
【文献】実公平07-009925(JP,Y2)
【文献】特許第7416389(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/24
E04C 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面H型をなすとともに第一の方向に延びる第一構造材と、
前記第一の方向に交差する第二の方向に延びるとともに該第二の方向を向く端面に端部開口が形成されて筒状をなす第二構造材と、
前記第二構造材の前記端面に設けられた構造材用ジョイント部材と、
前記第一構造材における一対のフランジ間に配置された構造材用補強部材と、
前記構造材用補強部材に挿通されて、前記構造材用補強部材を前記構造材用ジョイント部材に締結することで前記第二構造材を前記第一構造材における少なくとも一方の前記フランジに接続する第一ボルトと、
を備え、
前記構造材用補強部材は、
各々の前記フランジに対して自身の表面が接触するようにそれぞれが対向配置され、かつ、前記第二の方向から見て少なくとも一部が前記第二構造材に重なる位置に配置された一対のフランジ対向板部と、
一対の前記フランジ対向板部同士を接続し、かつ、前記第一構造材のウェブに対して自身の表面が接触するように対向配置されたウェブ対向板部と、
を有し、
前記ウェブ対向板部の板厚寸法は、一対の前記フランジ対向板部の各々の板厚寸法にくらべて小さくなっており、
一対の前記フランジ対向板部の少なくとも一方には、該フランジ対向板部の板厚方向に貫通して前記第一ボルトが挿通される第一ボルト孔が形成され、
前記構造材用ジョイント部材は、
板状をなし、前記第二構造材の前記端面および前記端部開口を覆うベース体と、
前記ベース体に形成され、前記第二の方向に一致する自身の板厚方向(以下、ベース体板厚方向)の一方側を向いて前記第二構造材の前記端面に対向して該端面に接合される環状の端面対向面と、
前記ベース体に形成され、該端面対向面の内側に配置されて該端面対向面が前記端面に対向した状態で前記端部開口を覆うカバー面と、
前記ベース体に形成され、前記カバー面において前記ベース体を前記ベース体板厚方向に貫通する貫通孔と、
前記ベース体において前記ベース体板厚方向の前記一方側に配置されて該ベース体と前記第構造材とで囲まれる構造材内部空間に位置する角ナットと、
前記ベース体において前記ベース体板厚方向の前記一方側に設けられ、前記構造材内部空間に位置し、前記角ナットの側面に対して前記カバー面の面方向(以下、ベース体面方向)に隙間をあけて対向し、該角ナットの自転時に係合して該自転を規制する自転規制面と、
前記ベース体において前記ベース体板厚方向の前記一方側に設けられ、前記構造材内部空間に位置し、前記ベース体板厚方向に前記ベース体とは反対側から前記角ナットに対向して前記角ナットを前記カバー面と自身とで挟み込み、前記角ナットの前記ベース体板厚方向への移動を規制する板厚方向規制面と、
を有し、
前記自転規制面の前記ベース体板厚方向の高さ寸法は、前記ベース体における前記ベース体板厚方向の最大寸法よりも小さくなっており、
前記構造材用補強部材における前記フランジ対向板部の前記第一ボルト孔に挿通された前記第一ボルトが、前記ベース体の前記貫通孔を通じて前記角ナットと螺合することにより、前記第一構造材における前記フランジが、前記構造材用補強部材と前記構造材用ジョイント部材とによって前記第二の方向に挟持された状態で前記第一構造材と前記第二構造材とが接続された組み立て構造材。
【請求項2】
前記構造材用補強部材は、前記ウェブ対向板部から前記第一の方向および前記第二の方向に交差する第三の方向に立設され、かつ一対の前記フランジ対向板部同士を接続する接続板部をさらに備え、
前記接続板部の板厚寸法は、一対の前記フランジ対向板部の各々の板厚寸法にくらべて小さくなっている請求項1に記載の組み立て構造材
【請求項3】
前記構造材用補強部材における前記ウェブ対向板部は、該ウェブ対向板部の板厚方向に貫通する第二ボルト孔が形成され、
前記第二ボルト孔に挿通され、前記ウェブ対向板部を前記ウェブに固定する第二ボルトをさらに備える請求項2に記載の組み立て構造材
【請求項4】
前記構造材用補強部材における一対の前記フランジ対向板部、前記ウェブ対向板部、および前記接続板部は、鋳造によって一体で成形されている請求項2または3に記載の組み立て構造材
【請求項5】
断面H型をなすとともに前記第三の方向に延びる第三構造材をさらに備え、
前記構造材用補強部材における前記接続板部は、一対の前記フランジ対向板部よりも、前記ウェブ対向板部からの前記第三の方向への突出寸法が大きくなっており、かつ、一対の前記フランジ対向板部および前記ウェブ対向板部における前記第一の方向の中央位置に対して、該第一の方向の一方側にオフセットした位置に設けられており、
前記接続板部は、前記第三構造材のウェブにおける前記第一の方向の前記一方側を向く面に対向配置される請求項2または3に記載の組み立て構造材
【請求項6】
前記構造材用ジョイント部材は、前記自転規制面が設けられており、板状をなして前記カバー面に対して前記ベース体板厚方向の前記一方側に接合されたナット自転規制体をさらに有し、
前記ナット自転規制体の板厚寸法は、前記ベース体の板厚寸法よりも小さくなっている請求項1から3のいずれか一項に記載の組み立て構造材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造材同士を接続する構造材用補強部材を備えた組み立て構造材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造において第一構造材としての梁に対して、当該梁に直交する方向に第二構造材(柱や梁)が接続される場合がある。このような構造では例えば特許文献1に記載されたような補強部材(補強金具)が第一構造材のフランジ間に設けられる。このような補強金具は構造材の変形を防止することを目的として用いられるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3503601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの種の補強部材は、一般的には鋼板を板曲げ加工することで形成されるため補強部材における各部位の板厚は均一となっていることが多い。しかしながら、補強部材に要求される強度は部位によって異なり、この結果、スペックが過剰となって補強部材の重量増等につながってしまっている。
【0005】
そこで本発明は、要求される強度を確保しつつ、構造の最適化を図った組み立て構造材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る組み立て構造材は、断面H型をなすとともに第一の方向に延びる第一構造材と、前記第一の方向に交差する第二の方向に延びるとともに該第二の方向を向く端面に端部開口が形成されて筒状をなす第二構造材と、前記第二構造材の前記端面に設けられた構造材用ジョイント部材と、前記第一構造材における一対のフランジ間に配置された構造材用補強部材と、前記構造材用補強部材に挿通されて、前記構造材用補強部材を前記構造材用ジョイント部材に締結することで前記第二構造材を前記第一構造材における少なくとも一方の前記フランジに接続する第一ボルトと、を備え、前記構造材用補強部材は、各々の前記フランジに対して自身の表面が接触するようにそれぞれが対向配置され、かつ、前記第二の方向から見て少なくとも一部が前記第二構造材に重なる位置に配置された一対のフランジ対向板部と、一対の前記フランジ対向板部同士を接続し、かつ、前記第一構造材のウェブに対して自身の表面が接触するように対向配置されたウェブ対向板部と、を有し、前記ウェブ対向板部の板厚寸法は、一対の前記フランジ対向板部の各々の板厚寸法にくらべて小さくなっており、一対の前記フランジ対向板部の少なくとも一方には、該フランジ対向板部の板厚方向に貫通して前記第一ボルトが挿通される第一ボルト孔が形成され、前記構造材用ジョイント部材は、板状をなし、前記第二構造材の前記端面および前記端部開口を覆うベース体と、前記ベース体に形成され、前記第二の方向に一致する自身の板厚方向(以下、ベース体板厚方向)の一方側を向いて前記第二構造材の前記端面に対向して該端面に接合される環状の端面対向面と、前記ベース体に形成され、該端面対向面の内側に配置されて該端面対向面が前記端面に対向した状態で前記端部開口を覆うカバー面と、前記ベース体に形成され、前記カバー面において前記ベース体を前記ベース体板厚方向に貫通する貫通孔と、前記ベース体において前記ベース体板厚方向の前記一方側に配置されて該ベース体と前記第二構造材とで囲まれる構造材内部空間に位置する角ナットと、前記ベース体において前記ベース体板厚方向の前記一方側に設けられ、前記構造材内部空間に位置し、前記角ナットの側面に対して前記カバー面の面方向(以下、ベース体面方向)に隙間をあけて対向し、該角ナットの自転時に係合して該自転を規制する自転規制面と、前記ベース体において前記ベース体板厚方向の前記一方側に設けられ、前記構造材内部空間に位置し、前記ベース体板厚方向に前記ベース体とは反対側から前記角ナットに対向して前記角ナットを前記カバー面と自身とで挟み込み、前記角ナットの前記ベース体板厚方向への移動を規制する板厚方向規制面と、を有し、前記自転規制面の前記ベース体板厚方向の高さ寸法は、前記ベース体における前記ベース体板厚方向の最大寸法よりも小さくなっており、前記構造材用補強部材における前記フランジ対向板部の前記第一ボルト孔に挿通された前記第一ボルトが、前記ベース体の前記貫通孔を通じて前記角ナットと螺合することにより、前記第一構造材における前記フランジが、前記構造材用補強部材と前記構造材用ジョイント部材とによって前記第二の方向に挟持された状態で前記第一構造材と前記第二構造材とが接続されている。
【発明の効果】
【0014】
上記の組み立て構造材によれば、要求される強度を確保しつつ、構造の最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る組み立て構造材を示す斜視図である。
図2】上記組み立て構造材を水平方向となる第三の方向から見た正面図であって、柱の一部を破断して示す図である。
図3】上記組み立て構造材における補強部材を水平方向となる第一の方向から見た側面図である。
図4】上記補強部材を示す図であって、(a)は図3のA-A断面図を示し、(b)は図3のB矢視図を示す。
図5】上記組み立て構造材における構造材用ジョイント部材を角ナットの側から見た斜視図である。
図6】上記組み立て構造材における構造材用ジョイント部材を角ナットの側から見た平面図である。
図7】上記組み立て構造材における構造材用ジョイント部材を角ナットが設けられていない側から見た平面図である
図8】本発明の実施形態の変形例に係る組み立て構造材を示す斜視図である。
図9】上記変形例に係る組み立て構造材の補強部材を水平方向から見た側面図である。
図10】上記変形例の補強部材を示す図であって、(a)は図9のC-C断面図を示し、(b)は図9のD矢視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(全体構成)
組み立て構造材200は、例えば建築構造に採用される構造材であって、図1に示すように第一の方向(水平方向)D1に延びる第一構造材である梁201と、第二の方向(鉛直方向)D2に延びる第二構造材である柱202と、梁201に設けられた構造材用補強部材(以下、単に補強部材)100と、柱202に設けられた構造材用ジョイント部材(以下、単にジョイント部材)1と、梁201と柱202とを補強部材100およびジョイント部材1を介して接続する第一ボルト203とを備えている。
【0017】
(梁)
梁201は断面H型をなすH型鋼梁であって、一対のフランジ201aおよびウェブ201bを有している。
【0018】
(柱)
柱202は筒状をなし、自身の長手方向、すなわち第二の方向D2を向く端面202aに端部開口202xを形成している。また柱202は、自身の長手方向に直交する断面が四角形状(正方形状)をなす角型鋼管柱となっている。なお本実施形態では柱202の長手方向は鉛直方向に一致し、端部開口202xは柱202の上端面および下端面にそれぞれ形成されている。柱202の長手方向を向くように、梁201のフランジ201aの表面201cが配置されている。なお本実施形態では、一つの梁201を挟んで上下両側に柱202が接続されているが、この構造に限定されるものではなく、少なくとも梁201の一方側に柱202が接続されていればよい。
【0019】
(補強部材)
次に補強部材100について詳しく説明する。補強部材100は、梁201のウェブ201bを挟んで両側に一つずつ配置される。
【0020】
各々の補強部材100は本実施形態では鋼製であって、鋳造によって一体に成形された鋳物となっている。具体的に補強部材100は図2に示すように、梁201の各々のフランジ201aにそれぞれが対向配置されるフランジ対向板部101と、一対のフランジ対向板部101同士を接続して梁201のウェブ201bに対向配置されるウェブ対向板部102と、一対のフランジ対向板部101同士を接続する接続板部103とを備えている。なお本実施形態の補強部材100は、第二の方向D2から見て柱202に対して略全体が重なる位置に配置されているが、柱202に対して補強部材100の少なくとも一部が重なるように配置されていればよい。
【0021】
(フランジ対向板部)
各々のフランジ対向板部101は、梁201における対応する側のフランジ201aに対して内側から、自身の表面が接触するようにして配置されている。なお、ここでいうフランジ201aの「内側」とは、一対のフランジ201aによって挟まれた領域の側を意味する。また各々のフランジ対向板部101には自身を板厚方向、すなわち第二の方向D2に貫通する第一ボルト孔101aが形成されている。図3図4(a)、および図4(b)に示すように第一ボルト孔101aは、各々のフランジ対向板部101において第一の方向D1に間隔をあけて一対が形成されている。
【0022】
各々の第一ボルト孔101aには、詳しく後述する第一ボルト203(図2参照)が一つずつ挿通される。各々のフランジ対向板部101の板厚寸法t1は、例えば12mmとなっている。なおフランジ対向板部101はフランジ201aに対して第一ボルト203とともに溶接により固定されてもよい。
【0023】
(ウェブ対向板部)
ウェブ対向板部102は、梁201におけるウェブ201bに対して自身の表面が接触するようにして配置されている。またウェブ対向板部102は、第二の方向D2の両端においてそれぞれフランジ対向板部101に接続されており、第一の方向D1から見た側面視で、一対のフランジ対向板部101とともにU字状をなしている。すなわち、ウェブ対向板部102からは、一対のフランジ対向板部101が、第一の方向D1および第二の方向D2に交差(直交)する第三の方向D3の一方側に立設されている。
【0024】
また各々のウェブ対向板部102には、自身を板厚方向、すなわち第三の方向D3に貫通する第二ボルト孔102aが形成されている。第二ボルト孔102aは、第一の方向D1に間隔をあけて対をなして形成され、かつ第一の方向D1に対をなす第二ボルト孔102aは第二の方向D2にさらに対をなして形成されており、合計で四か所に設けられている。ウェブ対向板部102は、第二ボルト孔102aに挿通される第二ボルト204(図2参照)によってウェブ201bに固定される。本実施形態においては、ウェブ201bを挟んで両側に配置される二つの補強部材100におけるウェブ対向板部102同士が、第二ボルト204およびこれに螺合する不図示のナットによって、ウェブ201bを挟持した状態で互いに固定される。なお第二ボルト204による固定に加えて、ウェブ対向板部102はウェブ201bに対して溶接により固定されてもよい。
【0025】
またウェブ対向板部102は、一対のフランジ対向板部101にくらべて板厚寸法が小さくなっており、ウェブ対向板部102の板厚寸法t2は、例えば4.5mm以上6.0mm以下となっている。すなわちウェブ対向板部102の板厚寸法t2はフランジ対向板部101の板厚寸法t1の3/8倍以上1/2倍以下となっている。
【0026】
(接続板部)
接続板部103は、ウェブ対向板部102から、水平方向となる第三の方向D3に立設されており、自身の板厚方向が第一の方向D1に一致するように配置されている。また接続板部103は、一対のフランジ対向板部101よりも、ウェブ対向板部102からの第三の方向D3の一方側への突出寸法が大きくなっており、第三の方向D3にフランジ201aの外側まで延びている(図1参照)。さらに接続板部103には、自身を板厚方向、すなわち第一の方向D1に貫通する第三ボルト孔103aが形成されている。第三ボルト孔103aは、接続板部103において第二の方向D2に間隔をあけて一対が形成されている。各々の第三ボルト孔103aには詳しく後述する第三ボルト205(図1参照)が一つずつ挿通される。
【0027】
さらに接続板部103は、一対のフランジ対向板部101およびウェブ対向板部102における第一の方向D1の中央位置に対して、第一の方向D1の一方側にオフセットした位置に設けられている。そして第三の方向D3に延びかつ断面H型をなすH型鋼の梁(第三構造材)210のウェブ210bにおいて第一の方向D1の一方側を向く面に対して接続板部103が接触した状態で対向配置される(図1参照)。そして接続板部103の第三ボルト孔103aに挿通された第三ボルト205が、梁210のウェブ210bに形成された貫通孔210xに挿通され、不図示のナットに締結されることにより、接続板部103と梁210とが接続される。
【0028】
接続板部103の板厚寸法t3は、フランジ対向板部101の板厚寸法t1にくらべて小さくなっている。接続板部103の板厚寸法t3は、例えば4.5mm以上6.0mm以下となっている。すなわち接続板部103の板厚寸法t3はフランジ対向板部101の板厚寸法t1の3/8倍以上1/2倍以下となっており、本実施形態では接続板部103の板厚寸法t3はウェブ対向板部102の板厚寸法t2と同一となっている。
【0029】
(ジョイント部材)
次にジョイント部材1について詳しく説明する。
図2に戻ってジョイント部材1は、柱202に対して当該柱202の長手方向、すなわち第二の方向D2に突き合わせ溶接によって接合されるようになっている。ジョイント部材1は本実施形態では鋼製となっている。
【0030】
具体的には図5に示すように、ジョイント部材1は、柱202における端面202aおよび端部開口202xを覆うベース体2と、ベース体2上に設けられた角ナット3と、ベース体2上で角ナット3の自転を規制するナット自転規制体4と、角ナット3をベース体2上に保持するナット保持体5とを備えている。
【0031】
(ベース体)
ベース体2は板状をなしている。図6および図7に示すように、本実施形態ではベース体2は第二の方向D2に一致する自身の板厚方向(以下、ベース体板厚方向)から見た上面視において四角形状(正方形状)をなしている。そしてベース体2を上面視した際の外形寸法は、柱202を長手方向、すなわち第二の方向D2から見た際の外形寸法に略一致(もしくは完全一致)している(図1参照)。ベース体2には、自身の板厚方向の一方側を向く環状の端面対向面20、および端面対向面20の内側に配置されてベース体板厚方向の一方側を向くカバー面21が形成されている。
【0032】
(端面対向面およびカバー面)
図2に戻って端面対向面20は柱202の端面202aに対向し、端面202aにつき合わせ溶接によって接合される。カバー面21は、端面対向面20が端面202aに対向した状態で端部開口202xを覆う面である。これによりベース体2は柱202の端部開口202xを閉塞する蓋として機能する。
【0033】
そして端面対向面20は、第一の方向D1および第三の方向D3に沿うカバー面21の面方向(以下、ベース体面方向)にカバー面21から離れる側に向かうにしたがってベース体板厚方向(第二の方向D2)の他方側に向かって傾斜するテーパ面となっている。一方で端面対向面20が溶接接合される柱202の端面202aには開先加工がされず、柱202の長手方向に直交する水平面上に広がる平面となっている。よって端面対向面20と端面202aとの突き合わせ溶接の開先形状は、いわゆる「レ形」となる。
【0034】
また端面対向面20がカバー面21に対してベース体板厚方向D1の他方側に位置していることで、ベース体2には環状の段差面22が形成されている。段差面22は、ベース体面方向を向くとともに端面対向面20が端面202aに対向した状態(以下、設置状態)で、ベース体2と柱202とによって囲まれる空間である構造材内部空間Sに配置されており、柱202の内壁面202bに対向するようになっている。
【0035】
(貫通孔)
また図7に示すようにベース体2には、カバー面21においてベース体2自身をベース体板厚方向(第二の方向D2)に貫通する貫通孔23が形成されている。すなわち貫通孔23は、ベース体板厚方向(第二の方向D2)の他方側を向いて梁201のフランジ201aの表面201cが対向配置されるフランジ対向面24と、カバー面21との間にわたって形成されている(図2参照)。
【0036】
本実施形態では貫通孔23は詳しく後述する角ナット3の配置位置に対応して、ベース体2における四つの隅部2aの近傍にそれぞれ配置されている。よって貫通孔23はベース体2において四つ設けられている。
【0037】
(角ナット)
図5および図6に戻って角ナット3は、ベース体2においてベース体板厚方向(第二の方向D2)の一方側に、すなわちカバー面21上に配置されており、上記の設置状態で柱202における上記の構造材内部空間S(図2参照)に位置するようになっている。
【0038】
また角ナット3は、ベース体2における四つの隅部2aの近傍に、ベース体2の貫通孔23(図7参照)に対応する位置にそれぞれ配置されている。各々の角ナット3の雌ネジ孔3aはベース体2の貫通孔23よりも内径が小さくなっており、各々の角ナット3において雌ネジ孔3aの全体が貫通孔23の内側に配置されるように、角ナット3が設けられている。
なお詳しく後述する自転規制面40と角ナット3との間には隙間が設けられており、角ナット3はベース体面方向に若干の移動(遊び)が許容された状態となっているが、いずれの位置に角ナット3が移動した場合であっても雌ネジ孔3aの全体が貫通孔23の内側に配置されるような大きさに雌ネジ孔3aの内径を設定するとよい。すなわち、角ナット3と自転規制面40との最大隙間以上、貫通孔23の内径を雌ネジ孔3aの内径よりも大きくするとよい。また角ナット3が自転規制面40と非接触の状態では、雌ネジ孔3aが貫通孔23と同軸上に配置されるとよい。
【0039】
さらに本実施形態では各々の角ナット3はベース体板厚方向(第二の方向D2)の一方側から見た上面視で六角形状をなす六角ナットであり、図6に示すように角ナット3自身の周方向(以下、ナット周方向)に沿って、上記上面視で反時計回りに順番に第一側面31、第二側面32、第三側面33、第四側面34、第五側面35、および第六側面36を有している。そして角ナット3の第一側面31と第四側面34とは、上記上面視においてベース体2における隅部2aの頂点2pとベース体2の中心2oとを結ぶ対角線2x上に位置している。また第一側面31は、ベース体2を上面視した際のベース体2の中心2oを基準とした仮想円Cの径方向の最も内側に配置され、第四側面34は、仮想円Cの径方向の最も外側に配置されている。
【0040】
(ナット自転規制体)
ナット自転規制体4は、板状をなしてベース体2のカバー面21に対してベース体板厚方向(第二の方向D2)の一方側に接合されている。ナット自転規制体4には、各々の角ナット3毎に、当該角ナット3の自転を規制する自転規制面40が設けられている。よって各々の自転規制面40は、ベース体2においてベース体板厚方向(第二の方向D2)の一方側に設けられ、柱202における構造材内部空間Sに位置し(図2参照)、角ナット3の第一側面31、第二側面32、第三側面33、第五側面35、および第六側面36に対してベース体面方向に隙間をあけて対向し、角ナット3の自転時に係合して角ナット3の自転を規制するようになっている。この隙間は、角ナット3の各側面と自転規制面40との対向方向に、例えば最大で0.3mm以上1.2mm以下、好ましくは0.7mm以下となっており、角ナット3のベース体面方向への最大移動量は0.3mm以上1.2mm以下、好ましくは0.7mm以下となっているとよい。なお本実施形態において自転規制面40は、ナット自転規制体4において各々の角ナット3が収容される部分環状をなす切り欠き4xの内周面となっている。
【0041】
またナット自転規制体4にはナット間切り欠き4yが形成されている。ナット間切り欠き4yは、ベース体2をベース体板厚方向(第二の方向D2)から上面視した際のベース体2の中心2oを基準とした仮想円Cの周方向に隣接する角ナット3同士の間の中央位置においてナット自転規制体4の外周面からベース体2の中心2oに向かって仮想円Cの径方向内側に延びている。このナット間切り欠き4yには、詳しく後述するナット保持体5の突起5xが配置されるようになっている。なおナット間切り欠き4yに代えて、ナット保持体5の突起5xが配置可能な貫通孔をナット自転規制体4に形成してもよい。
【0042】
(自転規制面)
より具体的に、各々の自転規制面40は、上記仮想円Cの径方向外側を向いており角ナット3の第一側面31、第二側面32、および第六側面36と隙間をあけて対向可能な内側対向面41と、上記仮想円Cの径方向内側を向いており角ナット3の第三側面33および第五側面35と隙間をあけて対向可能な外側対向面42とを有している。
【0043】
内側対向面41は、角ナット3の第一側面31に対向する最内側対向面45と、第二側面32と対向する一方側内側対向面46と、第六側面36と対向する他方側内側対向面47とを有している。最内側対向面45、一方側内側対向面46、および他方側内側対向面47のそれぞれは平面状をなしている。最内側対向面45におけるナット周方向の一端縁に一方側内側対向面46が接続され、最内側対向面45におけるナット周方向の他端縁に他方側内側対向面47が接続されている。
【0044】
外側対向面42は、角ナット3の第三側面33に対向する平面状の一方側外側対向面48、および、第五側面35に対向する平面状の他方側外側対向面49を有している。一方側外側対向面48におけるナット周方向の一端縁は一方側内側対向面46に接続されている。他方側外側対向面49におけるナット周方向の一端縁は他方側内側対向面47に接続されている。
よって、一方側外側対向面48と最内側対向面45との間には一方側内側対向面46が配置され、他方側外側対向面49と最内側対向面45との間には他方側内側対向面47が配置されていることになる。
【0045】
また一方側外側対向面48は、一方側内側対向面46に接続される一端縁からナット周方向に第三側面33の中途位置まで延びており、第三側面33の一部の領域に対向している。同様に他方側外側対向面49は、他方側内側対向面47に接続される一端縁からナット周方向に第五側面35の中途位置まで延びており、第五側面35の一部の領域に対向している。そして本実施形態においては、一方側外側対向面48は、第三側面33におけるナット周方向の半分以下の領域に対向し、他方側外側対向面49は、第五側面35におけるナット周方向の半分以下の領域に対向している。
【0046】
このように一方側外側対向面48が第三側面33の一部の領域に対向し、および他方側外側対向面49が第五側面35の一部の領域に対向することで、第三側面33の残部の領域、第五側面35の残部の領域、および第四側面34は、ベース体面方向にベース体2の外側、すなわち仮想円Cの径方向外側に露出している。よってナット自転規制体4における切り欠き4xは、上記仮想円Cの径方向外側に向かって開口している。
【0047】
ここで図2に戻って、ナット自転規制体4の板厚寸法t40は、ベース体2の板厚寸法t20よりも小さくなっており、この結果、自転規制面40のベース体板厚方向(第二の方向D2)の高さ寸法(t40に一致)は、ベース体2におけるベース体板厚方向(第二方向D2)の最大寸法(t20に一致)よりも小さくなっている。またナット自転規制体4の板厚寸法t40(自転規制面40の高さ寸法)は、角ナット3の高さ寸法の半分以下となっている。
【0048】
(ナット保持体)
図5および図6に示すようにナット保持体5は、全ての角ナット3をベース体板厚方向(第二の方向D2)から覆う板状の部材である。ナット保持体5は、ベース体板厚方向(第二の方向D2)の他方側を向いて当該他方側から角ナット3に対向する板厚方向規制面50を形成しており、この板厚方向規制面50は、ベース体2においてベース体板厚方向(第二の方向D2)の一方側に設けられて柱202の構造材内部空間Sに位置している(図2参照)。そして板厚方向規制面50とベース体2のカバー面21とによって角ナット3を挟み込むことで、角ナット3のベース体板厚方向(第二の方向D2)への移動を規制している。なお板厚方向規制面50と角ナット3との間には、例えば最大で0.1mm以上1mm以下、好ましくは0.5mm以下の隙間が形成されるようになっており、この場合、角ナット3のベース体板厚方向D1への最大移動量も0.1mm以上1mm以下、好ましくは0.5mm以下となっている。
【0049】
また本実施形態においてナット保持体5は、ベース体板厚方向(第二の方向D2)から見た上面視で略四角形状(略正方形状)をなしている。そしてナット保持体5の四か所の隅部にはそれぞれ、角ナット3の雌ネジ孔の端縁の一部に沿って自身の内周面が延びる円弧状の切り欠き5yが形成されている。本実施形態において各々の切り欠き5yは、上記仮想円Cの径方向内側の位置で角ナット3の雌ネジ孔3aの端縁の約1/4の領域に沿っている。よってベース体板厚方向(第二の方向D2)の一方側から見た上面視で、角ナット3の雌ネジ孔3aはベース体板厚方向(第二の方向D2)の一方側に露出している。なお角ナット3がベース体面方向にいずれの位置に移動した際であっても、切り欠き5yの内面が雌ネジ孔3aの外側に位置するように切り欠き5yを形成するとよい。
【0050】
さらにナット保持体5は、上記仮想円Cの周方向に隣接する角ナット3同士の間においてベース体2に接合されている。具体的にナット保持体5には、仮想円Cの周方向に隣接する角ナット3同士の間において、細板状の突起5xがナット自転規制体4に向かってベース体板厚方向(第二の方向D2)に延びるように形成されており、この突起5xがナット自転規制体4におけるナット間切り欠き4yに嵌入されていることでナット保持体5がベース体2に固定されている。
【0051】
(第一ボルト)
図2に戻って第一ボルト203は、補強部材100のフランジ対向板部101の第一ボルト孔101aに挿通され、フランジ対向板部101から梁201のウェブ201bに向かって延びてウェブ201bを貫通し、ジョイント部材1におけるベース体2の貫通孔23を通じて角ナット3に螺合している。これによりジョイント部材1と補強部材100とによって梁201のフランジ201aが挟み込まれた状態でジョイント部材1と補強部材100とが締結され、梁201と柱202とがジョイント部材1および補強部材100を介して接続されている。
【0052】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の組み立て構造材200によれば、梁201に設けられた補強部材100において、フランジ対向板部101の板厚寸法t1にくらべてウェブ対向板部102の板厚寸法t2が小さくなっている。このため、第二の方向D2に柱202から梁201のフランジ201aに作用する荷重を受けるフランジ対向板部101については板厚を大きくして強度を確保できる一方、柱202から作用する荷重が比較的小さいウェブ対向板部102については板厚を小さくして補強部材100の重量を抑えることができる。よって補強部材100において、要求される強度を確保しつつも構造の最適化を図ることができる。
【0053】
さらに補強部材100では、フランジ対向板部101の板厚寸法t1にくらべて接続板部103の板厚寸法t3が小さくなっている。このため、柱202から作用する荷重が比較的小さい接続板部103については板厚を小さくして補強部材100の重量を抑えることができる。さらには、例えば第一ボルト203や第二ボルト204にハイテンションボルトを使用した場合には、通常のボルトにくらべてボルト頭の二面幅が大きくなるが、接続板部103の板厚を抑えることによって、このようなハイテンションボルトを採用したとしても、接続板部103へのボルト頭の干渉を防ぐことができる。また接続板部103の板厚を抑えることによって、フランジ対向板部101やウェブ対向板部102における第一の方向D1の寸法を小さく抑えたとしても、強度を十分に確保可能な程度に、第一ボルト孔101aや第二ボルト孔102aを形成する領域を十分に確保することができる。換言すると、強度を確保しつつも、補強部材100における第一の方向D1の寸法を小さく抑えることができ、補強部材100の小型化による重量低減が可能となる。
【0054】
また仮に複数の板を溶接によって接合して補強部材100を形成した場合には、溶接ビードが形成されてしまう。この場合、溶接ビードへの第一ボルト203や第二ボルト204の干渉を回避するために補強部材100の寸法を大きくしなければならない。しかし本実施形態では補強部材100が鋳物となっているため、溶接ビードは存在せず、補強部材100のコンパクト化が可能である。
【0055】
また本実施形態では補強部材100の接続板部103にH型鋼の梁210を接続するために接続板部103が第一の方向D1にオフセットした位置に設けられているが、このような場合であっても、接続板部103の板厚を抑えたり、補強部材100を鋳物としたりすることにより、補強部材100のサイズを小さくしたとしても、強度を十分に確保可能な程度に、第一ボルト孔101aや第二ボルト孔102aを形成する領域を確保でき、かつ、第一ボルト203や第二ボルト204の設置スペースを十分に確保することができる。
【0056】
また本実施形態の組み立て構造材200ではジョイント部材1が設けられている。そしてジョイント部材1と補強部材100とによって梁201のフランジ201aを挟み込むようにして梁201と柱202とを接続することにより、ジョイント部材1のベース体2と、補強部材100のフランジ対向板部101とが、梁201におけるフランジ201aの強度向上を図ることができる。よって第二の方向D2に荷重が作用した際のフランジ201aの変形を抑制することができる。
【0057】
そしてジョイント部材1のベース体2を柱202の端面202aおよび端部開口202xに対向配置し、端面202aにベース体2を接合することによってジョイント部材1を柱202に容易に設け、柱202とジョイント部材1とが一体となったジョイント付き構造材を容易に構成することができる。すなわち、ジョイント部材1を柱202に対して柱202の長手方向に当接させて溶接を行うことができ、接合時のジョイント部材1の位置決めが非常に容易となる。よってジョイント部材1を介して柱202と梁201とを接続する際に作業性の向上が可能となる。さらには柱202とジョイント部材1におけるベース体2とが一体となることで、ベース体2によって柱202の強度を向上することもできる。またベース体2の端面対向面20はテーパ面となっているので、柱202の端面202aの側に開先加工を施すことなく、端面202aへ端面対向面20を強固に溶接接合することができる。すなわち、端面対向面20を予めテーパ面にしておくことで、柱202にジョイント部材1を突き合わせ溶接する際の柱202への開先加工の手間を省くことができ、建設現場での作業工程を短縮することができる。
【0058】
またベース体2には、柱202の内壁面202bに対向する環状の段差面22が形成されている。このためベース体2の一部を構造材内部空間Sに挿入するようにしてベース体2における端面対向面20を柱202の端面202aに対向配置することができ、ジョイント部材1の位置決めがさらに容易となる。
【0059】
さらには、ジョイント部材1のベース体2を柱202に接合すると、角ナット3は柱202の内側の構造材内部空間Sに配置され、かつ、ベース体2によって柱202の端部開口202xを閉塞することができる、よってジョイント部材1を柱202に接合した後には、角ナット3が外部に露出せず、外気に晒されることがなくなり、角ナット3の腐食を抑制することができる。
【0060】
また、構造材用ジョイント部材1のベース体2が上面視で四角形状をなしており、ベース体2の隅部2aに角ナット3をそれぞれ配置しているので、角ナット3同士の距離を最大限確保することができ、柱202と梁201との間に生じる曲げモーメント等に対する強度を十分に確保することができる。
【0061】
また角ナット3の自転を規制する自転規制面40を形成したことによって、角ナット3が構造材内部空間Sに配置されることで作業者が角ナット3にアクセスすることができなくなっても、第一ボルト203を確実に角ナット3に螺合させることができる。
【0062】
また自転規制面40が角ナット3の側面と隙間をあけて対向していることで、角ナット3のベース体面方向への移動を若干許容することができる。よって柱202や梁201の寸法公差等を吸収することができ、角ナット3が構造材内部空間Sに配置されることで作業者が角ナット3にアクセスすることができなくなっても、第一ボルト203を確実に角ナット3に螺合させることができる。
【0063】
また本実施形態では、自転規制面40をナット自転規制体4に形成したことで、ベース体2に対して容易に自転規制面40を設けることができる。
【0064】
さらに自転規制面40は内側対向面41と外側対向面42とを有しているため、上記仮想円Cの径方向への角ナット3の移動を規制することができ、角ナット3のベース体2からの径方向への脱落を防止することができる。特に本実施形態では、内側対向面41が最内側対向面45と、一方側内側対向面46と、他方側内側対向面47とを有しているため径方向内側だけでなく、仮想円Cの周方向への角ナット3の移動も規制することができる。
【0065】
また外側対向面42が、一方側外側対向面48および他方側外側対向面49を有しており、かつ一方側外側対向面48が角ナット3の第三側面33の一部の領域で対向し、他方側外側対向面49が角ナット3の第五側面35の一部の領域で対向していることで、第三側面33の残部の領域、第五側面35の残部の領域、および第四側面34は、仮想円Cの径方向外側に露出している。したがって、角ナット3を最大限、ベース体2の隅部2aに寄せて配置することができ、角ナット3間の距離を取ることができ、上記曲げモーメント等に対する強度を十分に確保することができる。
【0066】
またナット自転規制体4の板厚寸法t40がベース体2の板厚寸法t20よりも小さくなっているため、ナット自転規制体4の重量、コストを抑えることができる。なお、このようにベース体2の板厚寸法t20を小さくしても、第一ボルト203の締結後にはナット自転規制体4へは大きな負荷が作用することはないため、強度の問題は生じない。
【0067】
また板厚方向規制面50を設けたことで角ナット3がベース体2の下側に配置されたとしても角ナット3が脱落することがない。また本実施形態では板厚方向規制面50をナット保持体5に形成したことで、容易に板厚方向規制面50をベース体2に設けることができる。
【0068】
またナット保持体5が、仮想円Cの周方向に隣接する角ナット3同士の間においてナット自転規制体4に嵌入されてベース体2に固定されているため、第一ボルト203が角ナット3に螺合する際にベース体板厚方向(第二の方向D2)の一方側へ角ナット3が押圧されたとしても、ナット保持体5が角ナット3に押されてナット保持体5がベース体板厚方向D1に撓み変形してしまうことを抑制できる。よって角ナット3の脱落を回避でき、角ナット3を確実にベース体2上に保持することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、上記実施形態おける各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0070】
補強部材2の形状は上述の場合に限定されず、例えば図8に示すような補強部材100Aを採用してもよい。図9図10(a)、および図10(b)に示すように補強部材100Aの接続板部103Aでは、ウェブ対向板部102からの第三の方向D3への突出寸法が一対のフランジ対向板部101と略同一となっていてもよい。すなわち接続板部103Aは、第三の方向D3にウェブ201bの外側へは突出せず、かつ、一対のフランジ対向板部101およびウェブ対向板部102における第一の方向D1の中央位置に設けられている。また接続板部103Aに対しては、上述の梁210(図1参照)は設けられない。補強部材100Aについての各寸法は、接続板部103Aのウェブ対向板部102からの第三の方向D3への突出寸法を除き上述した補強部材100と同一である。
【0071】
また補強部材100(100A)は必ずしも接続板部103(103A)を有していなくともよい。補強部材100(100A)におけるフランジ対向板部101は、第一ボルト203に代えて溶接によって梁201のフランジ201aに固定されてもよい。同様に補強部材100(100A)におけるウェブ対向板部102は、第二ボルト204に代えて溶接によって梁201のウェブ201bに固定されてもよい。
【0072】
また柱202やジョイント部材1の材質や形状は上記の場合に限定されない。例えば柱202に代えて木製の柱に対してジョイント部材1を適用してもよい。この場合、溶接ではなくボルト等によってジョイント部材1のベース体2を柱202に固定してもよい。またジョイント部材1のすべてが鋼製でなくともよく、鋼製の柱202を採用する場合には、少なくともベース体2が鋼製(または金属製)となっていればよいし、柱202にジョイント部材1を溶接しない場合には、ベース体2やジョイント部材1の全体が非金属であってもよい。
【0073】
また自転規制面40や板厚方向規制面50はベース体2に直接形成してもよい。またナット保持体5は角ナット3毎に設けられてもよいし、ナット保持体5のベース体2への固定位置は特に限定されない。
【0074】
また角ナット3の側面31~36のベース体2上の位置や自転規制面40の形状は特に限定されないが、少なくとも角ナット3が上記仮想円Cの径方向および周方向に移動してしまうことが規制されるように、角ナット3の側面31~36の位置や自転規制面40を設定するとよい。
【0075】
またベース体2やナット自転規制体4は鋳造によって製造してもよい。この際、ベース体2およびナット自転規制体4を一体の部材として製造してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の組み立て構造材によれば、要求される強度を確保しつつ、構造の最適化を図ることができる。



【符号の説明】
【0077】
1…構造材用ジョイント部材
2…ベース体
2a…隅部
2o…中心
2p…頂点
2x…対角線
3…角ナット
4…ナット自転規制体
4x…切り欠き
5…ナット保持体
20…端面対向面
21…カバー面
22…段差面
23…貫通孔
24…フランジ対向面
31…第一側面
32…第二側面
33…第三側面
34…第四側面
34…第五側面
35…第五側面
36…第六側面
40…自転規制面
41…内側対向面
42…外側対向面
45…最内側対向面
46…一方側内側対向面
47…他方側内側対向面
48…一方側外側対向面
49…他方側外側対向面
50…板厚方向規制面
100、100A…構造材用補強部材
101…フランジ対向板部
101a…第一ボルト孔
102…ウェブ対向板部
102a…第二ボルト孔
103、103A…接続板部
103a…第三ボルト孔
200…組み立て構造材
201…梁(第一構造材)
201a…フランジ
201b…ウェブ
202…柱(第二構造材)
202a…端面
202b…内壁面
202x…端部開口
203…第一ボルト
204…第二ボルト
205…第三ボルト
210…梁(第三構造材)
210b…ウェブ
S…構造材内部空間
C…仮想円
【要約】
【課題】要求される強度を確保しつつ、構造の最適化を図ることが可能な構造材用補強部材等を提供する。
【解決手段】
断面H型をなすとともに第一の方向D1に延びる梁201における一対のフランジ201a間に配置され、第一の方向D1に交差する第二の方向D2に延びる柱202を、少なくとも一方のフランジ201aに接続する際に用いられる構造材用補強部材100であって、各々のフランジ201aに対してそれぞれが対向配置され、かつ、第二の方向D2から見て少なくとも一部が柱202に重なる位置に配置された一対のフランジ対向板部101と、一対のフランジ対向板部101同士を接続し、かつ、梁201のウェブ201bに対向配置されたウェブ対向板部102と、を備え、ウェブ対向板部102の板厚寸法は、一対のフランジ対向板部101の各々にくらべて小さくなっている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10