(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】振動評価装置、及び振動評価システム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20240613BHJP
G01H 9/00 20060101ALI20240613BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G01N29/24
G01H9/00 B
G01H17/00 Z
(21)【出願番号】P 2020005832
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】512098186
【氏名又は名称】株式会社ペガソス・エレクトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【氏名又は名称】松下 恵三
(72)【発明者】
【氏名】内田 成明
(72)【発明者】
【氏名】村松 正康
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 康夫
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157361(JP,A)
【文献】特開2002-228642(JP,A)
【文献】特開2019-157360(JP,A)
【文献】特開2019-157359(JP,A)
【文献】特開2019-086487(JP,A)
【文献】特開2004-069301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0074145(US,A1)
【文献】日本原子力研究開発機構 公益財団法人レーザー技術総合研究所 理化学研究所 科学技術振興機構(JST),レーザーでトンネルコンクリートの健全性を高速で検査する,共同発表(インターネット),2016年01月11日,https://www.jst.go.jp/pr/announce/20160111/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01H 1/00 - G01H 17/00
G01M 7/00 - G01M 7/08
A61B 8/00 - A61B 8/15
E01D 1/00 - E01D 24/00
E04B 1/00 - E04B 9/36
E02D 1/00 - E02D 37/00
G06N 20/00 - G06N 20/20
G06F 16/00 - G06F 16/958
G06T 7/00 - G06T 7/90
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体に振動を発生させる振動発生装置と、
前記構造体に発生した振動を、レーザーを用いて検出する計測装置と、
前記計測装置を用いて計測された振動データに基づき、前記構造体の状態を評価する評価装置と、
前記計測装置を搭載する搭載部と、
を備え、
前記評価装置は、
前記振動データに含まれる信号パターンに基づく評価対象情報を取得する取得部と、
予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶された参照データベースと、
前記参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する生成部と、
前記評価データに基づく評価結果を出力する出力部と、
を有すること
更に、前記参照情報は、前記構造体の内部に発生するひびの形状に関する形状情報を含み、
前記評価結果は、前記形状情報のうち、前記評価対象情報に紐づく第1形状情報を含むこと
を特徴とする振動評価装置。
【請求項2】
前記計測装置の計測に影響する外部環境情報を検出するセンサを更に備え、
前記取得部は、前記評価対象情報に前記外部環境情報を含ませて取得すること
を特徴とする請求項1記載の振動評価装置。
【請求項3】
前記計測装置から出射される前記レーザーの角度を制御する角度制御部を更に備え、
前記取得部は、前記評価対象情報に前記角度に関する角度情報を含ませて取得すること
を特徴とする請求項1記載の振動評価装置。
【請求項4】
前記計測装置から出射される前記レーザーの照射位置を含む前記構造体を撮像する撮像部を更に備え、
前記取得部は、前記評価対象情報に前記撮像された画像情報を含ませて取得すること
を特徴とする請求項1記載の振動評価装置。
【請求項5】
前記搭載部を有する移動体を更に備えること
を特徴とする請求項1~4の何れか1項記載の振動評価装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記信号パターンをフーリエ変換したデータから、前記評価対象情報を取得すること
を特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の振動評価装置。
【請求項7】
前記参照データベースには、前記評価データを評価するための基準として取得された基準評価データが予め記憶され、
前記出力部は、前記評価データと、前記基準評価データとを比較した結果を含む前記評価結果を出力すること
を特徴とする請求項1~6の何れか1項記載の振動評価装置。
【請求項8】
構造体に振動を発生させる振動発生装置と、
前記構造体に発生した振動を、レーザーを用いて検出する計測装置と、
前記計測装置を用いて計測された振動データに基づき、前記構造体の状態を評価する評価手段と、
前記計測装置を搭載する搭載部と、
を備え、
前記評価手段は、
前記振動データに含まれる信号パターンに基づく評価対象情報を取得する取得手段と、
予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶された参照データベースと、
前記参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する生成手段と、
前記評価データに基づく評価結果を出力する出力手段と、
を有すること
更に、前記参照情報は、前記構造体の内部に発生するひびの形状に関する形状情報を含み、
前記評価結果は、前記形状情報のうち、前記評価対象情報に紐づく第1形状情報を含むこと
を特徴とする振動評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動評価装置、及び振動評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート等の構造体の状態を評価する手段として、例えば特許文献1、2の評価装置等が提案されている。
【0003】
特許文献1では、構造体の表面を照射加熱する加熱用レーザー装置と、前記照射加熱に伴って、構造体に発生した弾性波を前記照射加熱の位置から所定距離だけ離れた検出位置で検出する第一検出用レーザー装置と、前記照射加熱の位置から前記所定距離だけ離れた位置まで、ひび割れの無い部分を通って弾性波が伝播する際の基準信号の信号強度を測定する第二検出用レーザー装置と、両検出用レーザー装置での検出結果から、ひび割れ深さを導出する演算装置とで構成されるひび割れ深さ測定装置が開示されている。この演算装置において、両検出用レーザー装置で検出された測定信号及び基準信号の時間差又は信号減衰からひび割れ深さを導出する。
【0004】
特許文献2では、鉄筋コンクリート部材に対する過去の検査データと、当該検査データに対する鉄筋コンクリート部材の劣化状況の判別結果との3段階以上の第1連関度を予め取得する第1連関度取得ステップと、新たに劣化状況を判別する鉄筋コンクリート部材に対して検査を行うことにより得られた検査データを入力する第1入力ステップと、上記第1連関度取得ステップにおいて取得した第1連関度を参照し、上記第1入力ステップにおいて入力した検査データに基づいて、鉄筋コンクリート部材の劣化状況を判別する第1判別ステップとをコンピューターに実行させる判別プログラム等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-230053号公報
【文献】特許第6371027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、構造体の内部に発生したひび割れの形状のような、構造体の内部における状態を評価する方法として、レーザーリモートセンシング法が注目を集めている。レーザーリモートセンシング法は、他の評価方法と比べて、構造体に対して非接触で計測を行うことができる。このため、高所等の計測者等が近づき難い場所に対しても容易に計測ができる点や、接触に伴う計測データのバラつきを防ぐことができる点等が、利点として挙げられる。
【0007】
レーザーリモートセンシング法において計測される振動データは、構造体の内部に発生したひび割れの深さ、厚さ方向に対する角度、幅、枝分かれ数等のような、ひび割れの形状に起因する複雑な信号パターンを含み得る。しかしながら、現状では複雑な信号パターンに基づき、構造体の状態を評価できる高精度な評価手段が確立されていない。このため、構造体の状態を高精度に評価することが課題として挙げられている。
【0008】
この点、特許文献1では、振動データが発生するタイミングや信号強度に基づく評価が開示されている。このため、特許文献1の開示技術では、振動データに含まれる複雑な信号パターンを評価対象としていない。これにより、構造体の状態に対する高精度な評価結果を得ることが難しい。また、特許文献1の開示技術では、測定位置が評価結果に大きく依存する。このため、計測位置を厳密に測定する必要があり、計測者毎の測定バラつきに伴う精度低下が懸念として挙げられる。
【0009】
また、特許文献2では、鉄筋コンクリートの状態を評価した結果に基づき、鉄筋コンクリートの劣化状況を判別する技術が開示されているに過ぎない。このため、特許文献2の開示技術では、振動データに基づき、鉄筋コンクリート等の構造体の状態を評価することができず、上記課題の解決に結びつけることができない。
【0010】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、高精度な評価結果を得ることができる振動評価装置、及び振動評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る振動評価装置は、構造体に振動を発生させる振動発生装置と、前記構造体に発生した振動を、レーザーを用いて検出する計測装置と、前記計測装置を用いて計測された振動データに基づき、前記構造体の状態を評価する評価装置と、前記計測装置を搭載する搭載部と、を備え、前記評価装置は、前記振動データに含まれる信号パターンに基づく評価対象情報を取得する取得部と、予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶された参照データベースと、前記参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する生成部と、前記評価データに基づく評価結果を出力する出力部と、を有することを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る振動評価装置は、第1発明において、前記計測装置の計測に影響する外部環境情報を検出するセンサを更に備え、前記取得部は、前記評価対象情報に前記外部環境情報を含ませて取得することを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る振動評価装置は、第1発明において、前記計測装置から出射される前記レーザーの角度を制御する角度制御部を更に備え、前記取得部は、前記評価対象情報に前記角度に関する角度情報を含ませて取得することを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る振動評価装置は、第1発明において、前記計測装置から出射される前記レーザーの照射位置を含む前記構造体を撮像する撮像部を更に備え、前記取得部は、前記評価対象情報に前記撮像された画像情報を含ませて取得することを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る振動評価装置は、第1発明~第4発明において、前記搭載部を有する移動体を更に備えることを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る振動評価装置は、第1発明~第5発明の何れかにおいて、前記取得部は、前記信号パターンをフーリエ変換したデータから、前記評価対象情報を取得することを特徴とする。
【0017】
第7発明に係る振動評価装置は、第1発明~第6発明の何れかにおいて、前記参照情報は、前記構造体の内部に発生するひびの形状に関する形状情報を含み、前記評価結果は、前記形状情報のうち、前記評価対象情報に紐づく第1形状情報を含むことを特徴とする。
【0018】
第8発明に係る振動評価装置は、第1発明~第7発明の何れかにおいて、前記参照データベースには、前記評価データを評価するための基準として取得された基準評価データが予め記憶され、前記出力部は、前記評価データと、前記基準評価データとを比較した結果を含む前記評価結果を出力することを特徴とする。
【0019】
第9発明に係る振動評価システムは、構造体に振動を発生させる振動発生装置と、前記構造体に発生した振動を、レーザーを用いて検出する計測装置と、前記計測装置を用いて計測された振動データに基づき、前記構造体の状態を評価する評価手段と、前記計測装置を搭載する搭載部と、を備え、前記評価手段は、前記振動データに含まれる信号パターンに基づく評価対象情報を取得する取得手段と、予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶された参照データベースと、前記参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する生成手段と、前記評価データに基づく評価結果を出力する出力手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1発明~第8発明によれば、生成部は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。このため、過去の結果を踏まえた評価データを生成でき、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、最適な評価データを生成することができる。これにより、高精度な評価結果を得ることが可能となる。
【0021】
また、第1発明~第8発明によれば、取得部は、振動データに含まれる信号パターンに基づく評価対象情報を取得する。このため、評価に最低限必要なパラメータとして、計測位置等を含める必要がない。これにより、計測者毎の測定バラつきに伴う精度低下を防ぐことが可能となる。
【0022】
また、第1発明~第8発明によれば、搭載部は、計測装置を搭載する。このため、計測装置を用いた計測環境の安定化を図ることが可能となる。
【0023】
特に、第2発明によれば、取得部は、評価対象情報に外部環境情報を含ませて取得する。このため、計測装置に作用する外部振動等のような外部環境の影響を考慮した評価を行うことができる。これにより、外部環境の影響に伴う評価精度の低下を抑制することが可能となる。
【0024】
特に、第3発明によれば、取得部は、評価対象情報に角度情報を含ませて取得する。このため、レーザーが構造体に到達する角度によって計測される振動データが変化する場合においても、定量的な評価を行うことができる。これにより、評価結果の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0025】
特に、第4発明によれば、取得部は、評価対象情報に画像情報を含ませて取得する。このため、構造体の表面状態を考慮した評価を行うことができる。これにより、評価結果の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0026】
特に、第5発明によれば、移動体は、搭載部を有する。このため、構造体の評価可能範囲を拡大させることが可能となる。
【0027】
特に、第6発明によれば、取得部は、信号パターンをフーリエ変換したデータから、評価対象情報を取得する。このため、構造体における状態の差異に伴う僅かな信号パターンの違いに対しても、評価結果を出力することができる。これにより、構造体の複雑な状態を示す評価対象情報に対しても、最適な評価データを容易に生成することが可能となる。
【0028】
特に、第7発明によれば、評価結果は、評価対象情報に対する第1形状情報を含む。このため、構造体の内部状態を定量的に評価することができる。これにより、計測者毎の主観を排除した評価結果を得ることが可能となる。
【0029】
特に、第8発明によれば、出力部は、評価データと、基準評価データとを比較した結果を含む評価結果を出力する。このため、構造体の設置環境や計測環境等の各種条件を踏まえた評価結果を出力することができる。これにより、各種条件に伴う信号パターンのバラつきを抑制することが可能となる。
【0030】
第9発明によれば、生成手段は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。このため、過去の結果を踏まえた評価データを生成でき、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、最適な評価データを生成することができる。これにより、高精度な評価結果を得ることが可能となる。
【0031】
また、第9発明によれば、取得手段は、振動データに含まれる信号パターンに基づく評価対象情報を取得する。このため、評価に最低限必要なパラメータとして、計測位置等を含める必要がない。これにより、計測者毎の測定バラつきに伴う精度低下を防ぐことが可能となる。
【0032】
また、第9発明によれば、搭載部は、計測装置を搭載する。このため、計測装置を用いた計測環境の安定化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本実施形態における振動評価システム、及び振動評価装置の概要の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における振動評価システム、及び振動評価装置の動作の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3(a)は、振動データの一例を示すグラフであり、
図3(b)は、信号パターンをフーリエ変換したデータの一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、参照データベースの一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、参照データベースの他の例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、参照データベースのさらに他の例を示す模式図である。
【
図7】
図7(a)は、本実施形態における評価装置における構成の一例を示す模式図であり、
図7(b)は、本実施形態における評価装置における機能の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8(a)は、評価データと、基準評価データとを比較した結果の一例を示す模式図であり、
図8(b)は、画像情報の一例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、本実施形態における移動体の一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本実施形態における移動体の第1変形例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、本実施形態における振動評価システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を適用した実施形態における振動評価装置、及び振動評価システムの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1、2を参照して、本実施形態における振動評価システム100s、及び振動評価装置100の一例について説明する。
図1は、本実施形態における振動評価システム100s、及び振動評価装置100の概要の一例を示す模式図である。
図2は、本実施形態における振動評価システム100s、及び振動評価装置100の動作の一例を示す模式図である。
【0036】
(振動評価システム100s)
振動評価システム100sは、構造体9を対象としたレーザーリモートセンシング法により計測された振動データに基づき、構造体9の状態を評価するために用いられる。振動評価システム100sを用いることで、構造体9におけるひび割れ91の深さや形状等の内部状態を評価することができる。
【0037】
構造体9は、例えばコンクリートを用いて設けられたトンネルや橋等のほか、金属配管や建築物等のような、打音により振動が発生する構造物を示す。特に、振動評価システム100sでは、トンネル等のような計測者の手が届き難い場所に用いられることが好ましい。
【0038】
レーザーリモートセンシング法は、パルスレーザー発生装置等の振動発生装置3により、構造体9に振動を発生させる。その後、構造体9に発生した振動を、レーザー干渉計等の計測装置2が、自ら出射したレーザーを用いて検出し、振動データとして計測する。すなわち、構造体9に対して非接触を維持した状態で、振動データを計測することができる。このため、例えば構造体9に対して接触して振動データを計測する方法に比べ、接触に伴う振動データのバラつきを抑制することができる。なお、構造体9に対して振動を発生させる方法として、非接触式の方法が用いられるほか、接触式の方法が用いられてもよい。例えば構造体9に振動を発生させる振動発生装置3として、上述したパルスレーザー発生装置が用いられるほか、ハンマリング装置、スピーカ、ガス発生装置、ウォータージェット機器等のような、公知の振動発生装置が用いられてもよい。
【0039】
振動評価システム100sでは、過去に評価された情報を利用する。このため、例えば超音波法のような構造体9に接触して計測する方法に比べ、計測条件に伴うバラつきの少ないレーザーリモートセンシング法を用いることで、高精度な評価を実現できることを発明者らは見出した。
【0040】
振動評価システム100sは、例えば
図1に示すように、振動評価装置100を備える。振動評価装置100は、評価装置1と、計測装置2と、振動発生装置3と、搭載部41とを備え、例えば
図9等に示すセンサ5、角度制御部6、及び撮像部7の少なくとも何れかを備えてもよい。振動評価装置100は、例えば通信網400を介して端末500やサーバ600等と接続されてもよい。
【0041】
振動評価システム100sは、例えば
図2に示すように、表面にひび割れ91が確認された構造体9を対象とする。例えば振動発生装置3を用いて構造体9に振動を発生させる。その後、計測装置2を用いて、ひび割れ91の近辺における振動(振動データ)を計測する。そして、振動評価装置100は、計測された振動データに含まれる信号パターンに基づく評価対象情報を取得する。その後、振動評価装置100は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成し、評価データに基づく評価結果を出力する。これにより、例えばひび割れ91の深さ等のような構造体9の状態を、評価結果として出力することができる。なお、評価結果は、構造体9の状態に関する内容を1つ表示するほか、例えば「[深さ]30mm:50%、20mm:20%」等のように複数の候補を表示してもよい。
【0042】
以下、振動評価システム100sに用いられる振動データ、評価対象情報、及び参照データベースについて説明する。
【0043】
<振動データ>
振動データは、例えば
図3(a)に示すように、時間(Time(s))に対する速度(Velocity(m/s))で表される時間波形の信号パターンを含む。振動データは、公知の振動計測結果を用いることができる。振動データは、例えば振動発生のタイミングから10~50msec程度後までの信号パターンを含み、状況に応じて任意に設定することができる。
【0044】
信号パターンは、主に構造体9の表面を経由する表面波、及び構造体9の内部を経由する内部弾性波の重ね合わせによる複雑な形状を示す。このため、信号パターンは、振動を発生させる打音方法、計測位置、構造体9の状態(例えばひび割れ91の形状)によって得られる内容が異なる。この点、振動評価システム100sでは、信号パターンに基づく評価を行うことができる。このため、厳密な測定位置を必須のパラメータとする必要が無い。また、測定位置を必須のパラメータとしないため、測定位置と、構造体9におけるひび割れ91の位置との距離を算出しなくてもよい。このため、構造体9におけるひび割れ91や空洞が内部のみに発生し、構造体9の表面に達していない場合においても、高精度な評価結果を得ることが可能となる。
【0045】
<評価対象情報>
評価対象情報は、例えば時間波形の信号パターンをフーリエ変換したデータ(例えば
図3(b))から取得する。フーリエ変換したデータは、例えば周波数(Frequency(Hz))に対する強度(Magnitude)で示すことができる。この場合、フーリエ変換したデータから、例えば特徴的な値を複数抽出し、評価対象情報として取得する。このため、時間波形の信号パターンを直接評価する場合に比べて、重ね合わさった振動全体の特徴を評価対象とすることができる。これにより、構造体9における状態の差異に伴う僅かな振動データの違いに対しても、評価結果を出力することができる。
【0046】
上記のほか、例えば時間波形の信号パターンから特徴的な値を複数抽出し、評価対象情報として取得してもよい。この場合、フーリエ変換等の処理を実行する必要がなく、データ処理工程の増加を抑制することができる。なお、上述した「特徴的な値」を抽出する方法として、例えば主成分分析等の公知技術を用いることができる。これにより、計測者等の主観を含めることなく評価に必要なデータ量を削減できる。また、不要なデータ(ノイズ)を削除することで、精度向上を図ることができる。
【0047】
評価対象情報は、例えば信号パターンからメル周波数スペクトルに変換したデータ、又はメル周波数ケプストラム係数(MFCC:Mel Frequency Cepstrum Coefficients)から取得してもよい。評価対象情報として、行列(例えばベクトル)形式のデータが取得されるほか、例えばスペクトログラム等のような画像形式のデータが取得されてもよい。
【0048】
評価対象情報は、例えば打音情報を含む。打音情報は、振動データを計測するために、構造体9に振動を発生させた方法(即ち打音方法)に関する情報を示し、例えば振動発生装置3の種類に関する情報を示す。打音情報は、例えば構造体9に振動を与えるパルスレーザー、ハンマー、スピーカ、ガス、ウォータージェット等の打音方法毎に異なる識別情報を含むほか、例えばパルスレーザーの発振条件や照射角度のほか、ハンマーの種類や振動を与える時間等の打音条件に関する情報を含んでもよい。評価対象情報が打音情報を含むことで、打音方法の違いに起因する僅かな信号パターンの差異についても、評価をすることができるほか、例えば打音方法別に異なる評価を行うこともできる。
【0049】
<参照データベース>
参照データベースには、予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶される。連関性は、例えば過去の評価対象情報、及び参照情報を一組の学習データとして、複数の学習データを用いた公知の機械学習により構築される。機械学習として、畳み込みニューラルネットワーク等の深層学習が用いられるほか、例えばランダムフォレストや、SVM(Support Vector Machine)等のような公知の技術が用いられてもよい。
【0050】
この場合、例えば連関性は、多対多の情報(複数の過去の評価対象情報、対、複数の参照情報)の間における繋がりの度合いにより構築される。連関性は、機械学習の過程で適宜更新され、例えば過去の評価対象情報、及び参照情報に基づいて最適化された関数(分類器)を示す。このため、過去に構造体9の状態を評価した複数の結果を踏まえた連関性を用いて、評価対象情報に対する評価データが生成される。これにより、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、最適な評価データを生成することができる。また、評価対象情報が、過去の評価対象情報と同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、最適な評価データを定量的に生成することができる。なお、機械学習を行う際に汎化能力を高めることで、未知の信号パターンに対する評価精度の向上を図ることができる。
【0051】
参照データベースには、例えば機械学習の学習データに用いられた過去の評価対象情報、及び参照情報が記憶されてもよい。なお、連関性は、例えば各情報の間における繋がりの度合いを示す複数の連関度を有してもよい。連関度は、例えば参照データベースがニューラルネットワークで構築される場合、重み変数に対応させることができる。
【0052】
過去の評価対象情報は、上述した評価対象情報と同種の情報を示す。過去の評価対象情報が打音情報を含む場合、信号パターンに基づくデータと、打音情報とを一組の入力データとして、機械学習に用いることができる。上記のほか、例えば打音情報毎に分別した評価対象情報を入力データとして機械学習を行ってもよいほか、打音情報毎にアンサンブル学習を行ってもよい。
【0053】
参照情報は、過去の評価対象情報に紐づき、構造体9の状態に関する情報を示す。参照情報は、例えば構造体9に発生するひび割れ91の形状に関する形状情報を含む。形状情報は、構造体9内におけるひび割れ91の深さ、構造体9の厚さ方向に対する角度、幅、テーパー角、空隙率、含水率、及び枝分かれ数の少なくとも何れかを含み、構造体9の表面画像のみでは判断できない状態を示す。形状情報は、「深さ15mm」、「幅13mm」等の一定値を示す値を含むほか、例えば「深さ10~20mm」、「幅5~10mm」等の範囲を示す値を含んでもよく、値の表示方法については任意である。
【0054】
参照情報は、例えば構造体9の状態を分類する分類情報を含んでもよい。分類情報は、例えば「健全(正常)」、「欠陥(異常)」等の断定的な分類を含むほか、例えば「ひび割れの深さが××mm以上」、「影響の範囲が広い可能性あり」等のひび割れ91の特徴や判断の指標を分類した内容を含んでもよい。なお、参照情報は、例えば過去の評価結果の具体例を含んでもよく、例えば「2015年3月3日 ○○トンネル評価時と類似」、「2015年9月5日 ○○トンネルではひび割れが××mmに拡大」、「2015年12月1日 補修」等の経年変化や処置履歴等を含んでもよく、内容の組み合わせ等は任意に設定できる。
【0055】
連関性は、例えば
図4に示すように、複数の過去の評価対象情報と、複数の参照情報との間における繋がりの度合いを示してもよい。この場合、連関性を用いることで、複数の過去の評価対象情報(
図4では「対象A」~「対象C」)のそれぞれに対し、複数の参照情報(
図4では「参照A」~「参照C」)の関係の度合いを紐づけて記憶させることができる。このため、例えば連関性を介して、1つの過去の評価対象情報に対して、複数の参照情報を紐づけることができ、多角的な評価データの生成を実現することができる。
【0056】
連関性は、各過去の評価対象情報と、各参照情報とをそれぞれ紐づける複数の連関度を有する。連関度は、例えば百分率、10段階、又は5段階等の3段階以上で示され、例えば線の特徴(例えば太さ等)で示される。例えば、過去の評価対象情報に含まれる「対象A」は、参照情報に含まれる「参照A」との間の連関度AA「62%」を示し、参照情報に含まれる「参照B」との間の連関度AB「26%」を示す。すなわち、「連関度」は、各データ間における繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど、各データの繋がりが強いことを示す。なお、上述した機械学習により連関性を構築する際、連関性が3段階以上の連関度を有するように設定してもよい。
【0057】
連関度は、例えば
図5に示すように、過去の評価対象情報の2以上の組み合わせ(
図5の破線)を1つの対象データとして、複数の参照情報とを紐づけてもよい。例えば、過去の評価対象情報に含まれる「対象A」、及び「対象D」の組み合わせは、「参照A」との間の連関度ADA「25%」を示し、「参照B」との間の連関度ADB「17%」を示す。この場合、参照データベースを参照して評価する評価対象情報が、「対象A」及び「対象D」の何れにも類似する場合等においても、定量的な評価を実施することができる。
【0058】
なお、例えば
図6に示すように、過去の評価対象情報に含まれる信号パターンに基づく情報(
図6では「特徴A」~「特徴C」)と、打音情報(
図6では「打音A」~「打音C」)とを組み合わせたデータに対して、参照情報が紐づけられてもよい。なお、打音情報の代わりに、後述する外部環境情報、角度情報、及び画像情報の少なくとも何れかが用いられてもよい。また、
図4~
図6に示した連関性は、例えば上述した機械学習により構築されてもよい。
【0059】
上述した連関度を用いることで、それぞれ複数のデータを有する過去の評価対象情報と、参照情報との間における複雑な関係性を、高精度に表現することができる。このため、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、最適な評価データを生成することができる。また、振動データに含まれる未知の信号パターンに対しても、高精度な評価を実現することができる。
【0060】
参照データベースには、例えば基準評価データが記憶されてもよい。基準評価データは、評価データを評価するための基準として予め取得され、参照データベースに記憶される。基準評価データとして、例えば構造体9の健全な状態に対応するデータが用いられる。
【0061】
参照データベースには、例えば画像情報が記憶されてもよい。画像情報は、構造体9の表面を撮像した画像を示し、例えば測定位置や振動位置がプロットされてもよい。画像情報は、例えば撮像部7により予め撮像され、参照データベースに記憶される。
【0062】
なお、参照データベースは、例えば打音情報、外部環境情報、角度情報、及び画像情報の少なくとも何れかの内容毎に、複数構築されてもよい。
【0063】
(評価装置1)
次に、
図7を参照して、本実施形態における評価装置1の一例を説明する。
図7(a)は、本実施形態における評価装置1の構成の一例を示す模式図であり、
図7(b)は、本実施形態における評価装置1の機能の一例を示す模式図である。
【0064】
評価装置1として、ラップトップ(ノート)PC又はデスクトップPC等の電子機器が用いられる。評価装置1は、例えば
図7(a)に示すように、筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~107とを備える。各構成101~107は、内部バス110により接続される。
【0065】
CPU101は、評価装置1全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、参照データベースや評価対象情報等の各種情報が記憶される。保存部104として、例えばHDD(Hard Disk Drive)のほか、SSD(solid state drive)等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば評価装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。
【0066】
I/F105は、データ通信手段を介して、必要に応じて計測装置2、振動発生装置3等との各種情報の送受信を行うためのインターフェースであり、例えば通信網400を介して端末500等との各種情報の送受信を行うために用いられてもよい。I/F106は、入力部分108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部分108として、例えばキーボードが用いられ、評価装置1の計測者等は、入力部分108を介して、各種情報、又は評価装置1若しくは計測装置2等の制御コマンド等を入力する。I/F107は、出力部分109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。出力部分109は、保存部104に保存された各種情報、又は評価装置1若しくは計測装置2等の処理状況等を出力する。出力部分109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。
【0067】
図7(b)は、評価装置1の機能の一例を示す模式図である。評価装置1は、取得部11と、生成部12と、出力部13と、記憶部14とを備え、例えば更新部15、及び制御部16の少なくとも何れかを有してもよい。なお、
図7(b)に示した各機能は、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に記憶されたプログラムを実行することにより実現され、例えば人工知能等により制御されてもよい。
【0068】
<取得部11>
取得部11は、振動データに含まれる信号パターンに基づく評価対象情報を取得する。取得部11は、例えば計測装置2を用いて計測された振動データを取得し、振動データに含まれる信号パターンをフーリエ変換等の処理を行い、評価対象情報を取得する。取得部11は、例えば予め計測者等によって入力された打音情報を、評価対象情報の一部として取得してもよい。また、取得部11は、例えば振動発生装置3から送信された打音条件等を含む打音情報を、評価対象情報に含ませて取得してもよい。
【0069】
取得部11は、例えば構造体9の表面を撮像した画像情報を取得してもよい。画像情報は、例えば計測装置2から出射されるレーザーの照射位置を含む構造体9の表面を撮像した画像を含むほか、例えば振動発生装置3を用いて構造体9に振動を発生させた位置(例えばレーザーの照射位置や、ハンマリング位置等)を含む構造体9の表面を撮像した画像を含む。
【0070】
画像情報は、例えば計測者等によって予め入力されるほか、端末500等から受信してもよい。また、取得部11は、例えば撮像機能を有する撮像部7によって撮像された画像情報を取得してもよい。
【0071】
取得部11は、例えば画像情報における振動データの計測位置、及び画像情報における振動データを計測するために構造体9に振動を与えた振動位置、の少なくとも何れかを数値データとして取得してもよい。
【0072】
計測位置は、振動データを取得するために計測装置2から出力されたレーザーのスポットによって特定することができる。このため、計測位置は、計測装置2から取得するほか、例えば撮像部7によって取得してもよく、例えば計測者等により直接入力されてもよい。
【0073】
振動位置は、構造体9に振動を与えるパルスレーザーを用いた場合、振動発生装置3から出力されたレーザーのスポットによって特定することができる。このため、振動位置は、振動発生装置3から取得するほか、例えば撮像部7によって取得してもよい。なお、例えば計測者等が撮像部7を用いて撮像された画像情報に基づき、直接振動位置を入力してもよい。なお、取得部11は、例えば計測位置及び振動位置の少なくとも何れかを、評価対象情報の一部として取得してもよい。この場合、各位置の情報を補助パラメータとした評価を実施することができ、さらなる精度向上を図ることが可能となる。
【0074】
<生成部12>
生成部12は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。生成部12は、例えば連関性(分類器)を介して、評価対象情報に紐づく1以上の参照情報を選択し、選択した参照情報を反映した評価データを生成する。
【0075】
生成部12は、例えば選択した複数の参照情報のうち、評価対象情報と紐づく連関度が最も高い参照情報を抽出し、評価データとして生成する。なお、抽出される参照情報は複数でもよく、その場合、例えば予め設定された閾値以上の連関度に紐づく参照情報を抽出するほか、相対的に連関度が高い複数の参照情報を抽出してもよい。
【0076】
生成部12は、例えば
図4に示したような参照データベースを参照した場合、評価対象情報と同一又は類似する過去の評価対象情報(例えば「対象A」:第1対象データとする)を選択する。過去の評価対象情報として、評価対象情報と一部一致又は完全一致する対象データが選択されるほか、例えば類似する対象データが選択される。なお、選択される類似度の度合いについては、任意に設定できる。また、第1対象データとして、複数の対象データが選択されてもよい。
【0077】
生成部12は、選択した第1対象データに紐づく参照情報(第1参照データとする)、及び第1対象データと第1参照データとの間における連関度(例えば連関度AA:第1連関度とする)を選択する。例えば生成部12は、第1対象データ「対象A」に紐づく第1参照データ「参照A」、及び「対象A」と「参照A」との間における第1連関度「62%」を選択し、選択した各データを含む評価データとして生成する。
【0078】
また、参照データ及び連関度を複数選択する場合、上述した「参照A」及び「62%」に加えて、第1対象データ「対象A」に紐づく第1参照データ「参照B」、及び「対象A」と「参照B」との間における第1連関度「26%」、等を、第1参照データ及び第1連関度として選択してもよい。このように、生成部12は、選択された第1参照データ及び第1連関度を含む評価データを生成する。
【0079】
<出力部13>
出力部13は、評価データに基づく評価結果を出力する。出力部13は、例えば保存部104に予め記憶された表示用のフォーマットを用いて、評価データを計測者等が理解できる文字列等に変換した評価結果を生成し、出力する。出力部13は、I/F107を介して出力部分109に評価結果を送信するほか、例えばI/F105を介して、端末500等に評価結果を送信する。
【0080】
例えば参照情報が形状情報を含む場合、出力部13は、形状情報のうち、評価対象情報に紐づく形状情報(例えば第1形状情報)を含ませた評価結果を生成する。このため、構造体9の内部状態を定量的に評価することができる。
【0081】
出力部13は、例えば評価データと、基準評価データとを比較した結果を含む評価結果を出力する。出力部13は、例えば
図8(a)に示すように、ピアソンの積率相関係数を用いて、基準評価データに対する各対象評価データ(
図8(a)では第1評価データ~第5評価データ)の比較結果を算出し、評価結果に含ませて出力する。出力部13は、例えば比較結果に基づき、色分け、「健全」、「欠陥の可能性大」等の分類結果を評価結果に含ませて出力してもよい。
【0082】
出力部13は、例えば画像情報における振動データの計測位置、及び画像情報における振動データを計測するために構造体9に振動を与えた振動位置の少なくとも何れかの位置に紐づけられた評価結果を出力する。出力部13は、例えば
図8(b)に示すように、計測位置(例えば位置ref、位置s1~s5)や、振動位置(例えば位置int)をプロットした画像情報を、評価結果に含ませて出力する。出力部13は、例えば画像における各位置(位置ref、位置s1~s5、位置int)に対応するX-Y座標等の数値を、評価結果に含ませて出力してもよい。
【0083】
<記憶部14>
記憶部14は、保存部104に保存された参照データベース等の各種データを必要に応じて取出す。記憶部14は、各構成11~13、15により取得又は生成された各種データを、必要に応じて保存部104に保存する。
【0084】
<更新部15>
更新部15は、例えば参照データベースを更新する。更新部15は、過去の評価対象情報と、参照情報との間の関係を新たに取得した場合には、関係を連関性に反映させる。例えば出力部13により出力された評価結果を踏まえて、計測者等が評価結果の精度を検討し、検討結果を評価装置1が取得した場合、更新部15は、検討結果に基づき参照データベースに含まれる連関性を更新する。連関性の更新は、例えば機械学習を用いる。
【0085】
<制御部16>
制御部16は、例えば計測装置2におけるレーザーの出射条件や、検出条件等の各種条件を制御する。制御部16は、例えば振動発生装置3、センサ5、角度制御部6、及び撮像部7の少なくとも何れかにおける各種条件を制御してもよい。
【0086】
<計測装置2>
計測装置2は、構造体9に発生した振動を計測するために用いられる。計測装置2は、例えばレーザーを構造体9に対して出射する。計測装置2は、構造体9から反射したレーザーを受光することで、構造体9に発生した振動を検出し、振動データを生成する。計測装置2は、生成した振動データを評価装置1に送信する。計測装置2は、例えば生成した振動データに含まれる信号パターンをフーリエ変換する機能を有してもよい。
【0087】
計測装置2は、搭載部41に搭載される。これにより、計測装置2を固定することができ、計測精度を向上させることが可能となる。計測装置2は、評価装置1と直接接続されるほか、例えば通信網400を介して接続されてもよい。計測装置2は、例えば評価装置1によって制御される。計測装置2として、例えば公知のレーザー干渉計等が用いられる。
【0088】
<振動発生装置3>
振動発生装置3は、構造体9に振動を発生させる。振動発生装置3は、例えばパルスレーザー光を出射して、構造体9の表面に衝撃を与えるほか、例えばハンマー等を駆動して、構造体9の表面に衝撃を与えることで、構造体9に振動を発生させる。振動発生装置3は、評価装置1と直接接続されるほか、例えば通信網400を介して接続されてもよい。振動発生装置3は、例えば評価装置1によって制御される。振動発生装置3として、パルスレーザー発生装置、ハンマリング装置、スピーカ、ガス発生装置、ウォータージェット機器等の公知の装置が用いられる。
【0089】
<搭載部41>
搭載部41は、計測装置2を搭載し、例えば振動発生装置3及び評価装置1の少なくとも何れかを搭載してもよい。搭載部41は、計測装置2等を固定し、計測時における周辺環境の影響を抑制する。搭載部41として、筐体状の構造が用いられるほか、例えば平面状の構造が用いられてもよく、計測装置2等を固定できる構造であれば任意である。
【0090】
<移動体4>
振動評価システム100sでは、例えば振動評価装置100は移動体4を備え、移動体4が搭載部41を有してもよい。これにより、振動評価装置100を用いて評価できる範囲を拡大させることが可能となる。また、移動体4を備えることで、移動体4の停止中のほか、移動中にも評価を実施することができ、評価時間の大幅な短縮に繋げることが可能となる。
【0091】
移動体4として、例えば
図9に示すような車両が用いられる。この場合、移動体4は、筐体状の搭載部41を有するほか、例えば第1支持台42と、第2支持台43と、アウトリガー44と、エアサスペンション45と、タイヤ46とを有する。移動体4として、例えば公知の乗用車やトラック等が用いられる。
【0092】
搭載部41は、計測装置2に加え、例えば振動発生装置3、及び評価装置1を搭載する。第1支持台42は、計測装置2を支持する。第1支持台42として、例えば除振台が用いられる。第2支持台43は、振動発生装置3を支持する。第2支持台43として、例えば光学定盤が用いられる。アウトリガー44、エアサスペンション
45、及びタイヤ46として、公知のものがそれぞれ用いられる。
【0093】
振動評価システム100sでは、例えばアライメントレーザー装置31と、第1ミラー3mと、第2ミラー31mと、第1ガイド2gと、第2ガイド3gとを有してもよい。アライメントレーザー装置31、第1ミラー3m、第2ミラー31m、第1ガイド2g、及び第2ガイド3gは、例えば搭載部41に搭載される。
【0094】
アライメントレーザー装置31は、振動発生装置3から出射するパルスレーザーの出射位置の調整に用いられるレーザーを出射する。第1ミラー3mは、振動発生装置3、及びアライメントレーザー装置31から出射された各レーザーの出射方向を制御する。第2ミラー31mは、アライメントレーザー装置31から出射されたレーザーの出射方向を制御する。
【0095】
第1ガイド2gは、計測装置2から出射されたレーザーの出射方向を制御する。第2ガイド3gは、振動発生装置3、及びアライメントレーザー装置31から出射された各レーザーの出射方向を制御する。各ガイド2g、3gは、例えば第1支持台42に支持され、角度制御部6に接続される。
【0096】
移動体4として、上述した車両のほか、例えば列車やドローン等が用いられてもよい。上記のほか、例えば
図10に示すように、移動体4として台車付きガイド機構が用いられてもよい。この場合、移動体4は、ガイドレール41aと、2つ以上の台車47とを有する。
【0097】
ガイドレール41aは、台車47に支持され、構造体9の形状に沿って形成される。例えば構造体9がトンネルの場合、ガイドレール41aは、トンネルの内径に沿って形成される。ガイドレール41aには、搭載部41が取り付けられ、搭載部41は、ガイドレール41a上をスライドさせることができる。台車47は、例えばガイドレール41aの両端部に設けられる。これにより、例えばトンネル内等の道路に沿って形成された構造体9を評価する際、車両の通行に与える影響を抑制することができる。また、例えばトンネル内にジェットファン95や照明96が設けられる場合においても、ジェットファン95や照明96近辺の構造体9に対して容易に評価することができる。
【0098】
<センサ5>
センサ5は、計測装置2の検出や計測に影響する外部環境情報を検出する。センサ5は、例えば搭載部41に搭載される。センサ5は、例えば
図9に示すように、計測装置2に近設され、第1支持台42に支持される。センサ5は、評価装置1と直接接続されるほか、例えば通信網400を介して評価装置1と接続される。センサ5は、例えば評価装置1によって制御される。
【0099】
外部環境情報として、例えば振動、加速度、温度、湿度、騒音等の計測に影響し得る情報が検出され、例えば複数種類検出されてもよい。評価装置1は、例えば評価対象情報に外部環境情報を含ませて取得する。このため、計測装置2を用いて計測された振動データに対し、外部環境の影響を考慮した評価を行うことができる。
【0100】
例えばセンサ5として振動計測器が用いられる場合、外部環境情報として、計測装置2に作用する振動が検出される。例えばセンサ5として加速度計が用いられる場合、外部環境情報として、計測装置2に作用する加速度の大きさ、及び加速する向きの少なくとも何れかが検出される。
【0101】
例えばセンサ5として温湿度計が用いられる場合、外部環境情報として、計測装置2周辺における温度及び湿度の少なくとも何れかが検出される。例えばセンサ5として騒音計が用いられる場合、外部環境情報として、計測装置2の周辺における騒音が検出される。
【0102】
<角度制御部6>
角度制御部6は、計測装置2から出射されるレーザーの角度を制御する。これにより、レーザーの光路を任意に設定し、任意の角度でレーザーを構造体9に到達させることができる。角度制御部6は、例えば搭載部41に搭載され、計測装置2から出射されるレーザーの通過する位置に配置される。角度制御部6は、例えば
図9に示すように、各ガイド2g、3gに接続される。角度制御部6は、例えば振動発生装置3から出射されるレーザーの通過する位置に配置され、レーザーの角度を制御してもよい。角度制御部6は、評価装置1と直接接続されるほか、例えば通信網400を介して評価装置1と接続される。角度制御部6は、例えば評価装置1によって制御される。
【0103】
角度制御部6は、制御した角度に関する角度情報を生成する。上記のほか、例えば評価装置1は、角度制御部6を制御した結果に基づき、角度情報を生成してもよい。角度情報として、例えば角度制御部6を通過する前後におけるレーザーの極角θ及び方位角φの差分が検出される。評価装置1は、例えば評価対象情報に角度情報を含ませて取得する。このため、計測装置2を用いて計測された振動データに対し、角度情報を踏まえた評価を行うことができる。
【0104】
<通信網400>
通信網400は、例えば評価装置1が通信回路を介して接続されるインターネット網等である。通信網400は、いわゆる光ファイバ通信網で構成されてもよい。また、通信網400は、有線通信網のほか、無線通信網等の公知の通信網で実現してもよい。
【0105】
<端末500>
端末500は、例えば計測場所から離れた場所に設けられ、通信網400を介して評価装置1と接続される。端末500は、例えばパーソナルコンピュータや、タブレット端末等の電子機器が用いられる。端末500は、例えば評価装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよい。
【0106】
<サーバ600>
サーバ600は、例えば計測場所から離れた場所に設けられ、通信網400を介して振動評価装置100と接続される。サーバ600は、過去の計測された各種データ等が記憶され、必要に応じて振動評価装置100から各種データが送信される。
【0107】
<撮像部7>
撮像部7は、計測装置2から出射されるレーザーの照射位置を含む構造体9を撮像する。撮像部7は、例えば振動発生装置3を用いて構造体9を振動させた位置を含んで撮像してもよい。撮像部7は、例えば
図9に示すように、角度制御部6に近設され、搭載部41に搭載される。撮像部7は、撮像した画像を評価装置1に送信する。撮像部7は、評価装置1と直接接続されるほか、例えば通信網400を介して評価装置1と接続されてもよい。撮像部7として、例えばデジタルカメラ等の公知の撮像装置が用いられる。
【0108】
(振動評価システム100sの動作の一例)
次に、本実施形態における振動評価システム100sの動作の一例について説明する。
図11は、本実施形態における振動評価システム100sの動作の一例を示すフローチャートである。
【0109】
振動評価システム100sは、評価手段を備える。評価手段は、例えば
図11に示すように、取得手段S110と、生成手段S120と、出力手段S130とを有し、例えば更新手段S140を有してもよい。振動評価システム100sの評価手段は、例えば振動評価装置100を用いて行われるほか、例えば一部の手段について端末500やサーバ600等を用いて行われてもよい。
【0110】
<取得手段S110>
取得手段S110は、信号パターンに基づく評価対象情報を取得する。例えば、振動発生装置3は、予め設定された打音方法を用いて、構造体9に振動を発生させる。その後、計測装置2は、構造体9に対してレーザーを出射し、構造体9により反射したレーザーを取得する。これにより、計測装置2は、構造体9に発生した振動を、レーザーを用いて検出することができる。
【0111】
そして、取得部11は、計測装置2等により計測された振動データを取得し、振動データに含まれる信号パターンに基づき評価対象情報を取得する。取得部11は、例えば1つの信号パターンに基づく1つの評価対象情報を取得するほか、例えば複数の信号パターンに基づく1つの評価対象情報を取得してもよい。取得部11は、例えば記憶部14を介して、取得した評価対象情報等を保存部104に保存する。
【0112】
取得部11は、例えば振動発生装置3が構造体9に振動を発生させた打音方法に関する打音情報を、評価対象情報に含ませて取得してもよい。この場合、例えば取得部11は、振動発生装置3又は制御部16を介して打音情報を取得するほか、例えば計測者等が入力部分108を介して入力した打音情報を取得してもよい。
【0113】
取得部11は、例えばセンサ5によって検出された外部環境情報を、評価対象情報に含ませて取得してもよい。この場合、例えば取得部11は、計測装置2が振動を検出したタイミングと同時又は前後において、センサ5によって検出された外部環境情報を取得する。
【0114】
取得部11は、例えば角度制御部6によって制御された角度に関する角度情報を、評価対象情報に含ませて取得してもよい。この場合、例えば取得部11は、角度制御部6又は制御部16を介して角度情報を取得するほか、例えば計測者が入力部分108を介して入力した角度情報を取得してもよい。
【0115】
取得部11は、例えば撮像部7によって撮像された画像情報を、評価対象情報に含ませて取得してもよい。この場合、例えば取得部11は、計測装置2が振動を検出したタイミングと同時又は前後において、撮像部7によって検出された画像情報を取得する。
【0116】
<生成手段S120>
生成手段S120は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。生成部12は、例えば参照データベースに記憶された連関性を介し、評価対象情報との関係の度合いが高い参照情報(第1参照データ)を抽出する。生成部12は、抽出した第1参照データを含む評価データを生成する。生成部12は、例えば記憶部14を介して、生成した評価データを保存部104に保存する。
【0117】
上記のほか、例えば生成部12は、参照データベースに記憶された過去の評価対象情報のうち、評価対象情報と同一又は類似する情報を含む第1対象データを選択する。生成部12は、参照データベースに記憶された参照情報のうち、選択した第1対象データに紐づく第1参照データを選択し、第1対象データと第1参照データとの間における第1連関度を選択する。
【0118】
なお、評価対象情報が信号パターンに基づくデータに加え、外部環境情報、角度情報、画像情報、及び打音情報の少なくとも何れかを有する場合、生成部12は、信号パターンに基づくデータと、外部環境情報等との組合せに対する第1参照データを抽出する。この場合、例えば外部環境情報等の内容に応じて、同一の信号パターンに基づくデータに対して異なる第1参照データを抽出することができる。これにより、外部環境の影響に伴う評価精度の低下抑制することが可能となる。また、打音情報等の違いに伴う僅かな計測データの差異を踏まえた第1参照データを抽出できるため、評価精度の向上を図ることが可能となる。
【0119】
上記のほか、生成部12は、例えば信号パターンに基づくデータに対する第1参照データを抽出したあと、外部環境情報、角度情報、画像情報の少なくとも何れかに基づく評価データを生成してもよい。この場合、上記の第1参照データを抽出する方法に比べて、参照データベースのデータ容量を少なくすることができる。
【0120】
<出力手段S130>
出力手段S130は、評価データに基づく評価結果を出力する。出力部13は、評価データを計測者等が理解できる文字列等に変換した評価結果を生成し、出力する。
【0121】
これにより、本実施形態における振動評価システム100sの動作が終了する。
【0122】
<更新手段S140>
なお、例えば過去の評価対象情報と、参照情報との間の関係を新たに取得した場合には、関係を連関性に反映させてもよい(更新手段S140)。更新部15は、評価結果に対する計測者等の検討結果に基づき、参照データベースに含まれる連関性を更新する。なお、更新部15を実施するタイミングや頻度は、任意である。
【0123】
本実施形態によれば、生成部12は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。このため、過去の結果を踏まえた評価データを生成でき、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、最適な評価データを生成することができる。これにより、高精度な評価結果を得ることが可能となる。
【0124】
また、本実施形態によれば、取得部11は、振動データに含まれる信号パターンに基づく評価対象情報を取得する。このため、評価に最低限必要なパラメータとして、計測位置等を含める必要がない。これにより、計測者毎の測定バラつきに伴う精度低下を防ぐことが可能となる。
【0125】
また、本実施形態によれば、搭載部41は、計測装置2を搭載する。このため、計測装置2を用いた計測環境の安定化を図ることが可能となる。
【0126】
また、本実施形態によれば、取得部11は、評価対象情報に外部環境情報を含ませて取得する。このため、計測装置2に作用する外部振動等のような外部環境の影響を考慮した評価を行うことができる。これにより、外部環境の影響に伴う評価精度の低下を抑制することが可能となる。
【0127】
また、本実施形態によれば、取得部11は、評価対象情報に角度情報を含ませて取得する。このため、レーザーが構造体9に到達する角度によって計測される振動データが変化する場合においても、定量的な評価を行うことができる。これにより、評価結果の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0128】
また、本実施形態によれば、取得部11は、評価対象情報に画像情報を含ませて取得する。このため、構造体9の表面状態を考慮した評価を行うことができる。これにより、評価結果の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0129】
また、本実施形態によれば、移動体4は、搭載部41を有する。このため、構造体9の評価可能範囲を拡大させることが可能となる。
【0130】
また、本実施形態によれば、取得部11は、信号パターンをフーリエ変換したデータから、評価対象情報を取得する。このため、構造体9における状態の差異に伴う僅かな信号パターンの違いに対しても、評価結果を出力することができる。これにより、構造体9の複雑な状態を示す評価対象情報に対しても、最適な評価データを容易に生成することが可能となる。
【0131】
また、本実施形態によれば、評価対象情報及び過去の評価対象情報は、例えば振動データを計測するために、構造体9に振動を与えた方法に関する打音情報を含んでもよい。この場合、振動発生装置3に用いられる様々な打音方法毎に、最適な評価データを生成することができる。これにより、得られる評価結果の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0132】
また、本実施形態によれば、評価結果は、評価対象情報に対する第1形状情報を含む。このため、構造体9の内部状態を定量的に評価することができる。これにより、計測者毎の主観を排除した評価結果を得ることが可能となる。
【0133】
また、本実施形態によれば、出力部13は、評価データと、基準評価データとを比較した結果を含む評価結果を出力する。このため、構造体9の設置環境や計測環境等の各種条件を踏まえた評価結果を出力することができる。これにより、各種条件に伴う信号パターンのバラつきを抑制することが可能となる。
【0134】
また、本実施形態によれば、出力部13は、例えば計測位置及び振動位置の少なくとも何れかに紐づけられた評価結果を出力してもよい。この場合、経時変化を評価する場合等において、以前の計測条件等を容易に把握することができる。これにより、評価結果を踏まえた計測や分析等を容易に実施することが可能となる。
【0135】
本実施形態によれば、生成手段S120は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。このため、過去の結果を踏まえた評価データを生成でき、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、最適な評価データを生成することができる。これにより、高精度な評価結果を得ることが可能となる。
【0136】
また、本実施形態によれば、取得手段S110は、振動データに含まれる信号パターンに基づく評価対象情報を取得する。このため、評価に最低限必要なパラメータとして、計測位置等を含める必要がない。これにより、計測者毎の測定バラつきに伴う精度低下を防ぐことが可能となる。
【0137】
なお、上述した振動評価装置100、及び振動評価システム100sは、例えばビル等の建築物、堤防、計装配管、ガスタンク、飛行機、船、塀、壁、水道管、ガス管、建造物に設けられる看板、鉄道のほか、硬質材料、セラミック、又は分散剤を含む製品等を対象(構造体9)として、構造体9の状態を評価することができる。このため、従来では評価が難しい、又は精度の向上が難しい等の事情がある構造体9においても、構造体9に対する高精度な評価結果を得ることが可能となる。
【0138】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0139】
1 :評価装置
10 :筐体
11 :取得部
12 :生成部
13 :出力部
14 :記憶部
15 :更新部
16 :制御部
101 :CPU
102 :ROM
103 :RAM
104 :保存部
105 :I/F
106 :I/F
107 :I/F
108 :入力部分
109 :出力部分
110 :内部バス
2 :計測装置
2g :第1ガイド
3 :振動発生装置
3g :第2ガイド
3m :第1ミラー
31 :アライメントレーザー装置
31m :第2ミラー
4 :移動体
41 :搭載部
41a :ガイドレール
42 :第1支持台
43 :第2支持台
44 :アウトリガー
45 :エアサスペンション
46 :タイヤ
47 :台車
5 :センサ
6 :角度制御部
7 :撮像部
9 :構造体
95 :ジェットファン
96 :照明
100 :振動評価装置
100s :振動評価システム
400 :通信網
500 :端末
600 :サーバ
S110 :取得手段
S120 :生成手段
S130 :出力手段
S140 :更新手段