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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】振動評価装置、及び振動評価システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20240613BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20240613BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G01N29/24
G01H9/00 B
G01H17/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020005833
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021113714
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】512098186
【氏名又は名称】株式会社ペガソス・エレクトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 恵三
(72)【発明者】
【氏名】内田 成明
(72)【発明者】
【氏名】村松 正康
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 康夫
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157360(JP,A)
【文献】特開2002-228642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0074145(US,A1)
【文献】特開2019-157361(JP,A)
【文献】特開2019-157359(JP,A)
【文献】特開2019-086487(JP,A)
【文献】特開2004-069301(JP,A)
【文献】日本原子力研究開発機構 公益財団法人レーザー技術総合研究所 理化学研究所 科学技術振興機構(JST),レーザーでトンネルコンクリートの健全性を高速で検査する,共同発表(インターネット),2016年01月11日,https://www.jst.go.jp/pr/announce/20160111/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01H 1/00 - G01H 17/00
G01M 7/00 - G01M 7/08
A61B 8/00 - A61B 8/15
E01D 1/00 - E01D 24/00
E04B 1/00 - E04B 9/36
E02D 1/00 - E02D 37/00
G06N 20/00 - G06N 20/20
G06F 16/00 - G06F 16/958
G06T 7/00 - G06T 7/90
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の振動に基づき、前記建造物の状態を評価する振動評価装置であって、
レーザーを用いて前記振動を計測するレーザー検出器と、
前記レーザー検出器により計測された振動データに基づく第1データを含む評価対象情報を取得する取得部と、
予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶された参照データベースと、
前記参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する生成部と、
前記評価データに基づく評価結果を出力する出力部と、
を備え、
前記参照情報は、前記過去の評価対象情報に対する健全性の評価に関する健全性情報を含み、
前記評価結果は、前記健全性情報のうち、前記評価対象情報に紐づく第1健全性情報を含むこと
更に、前記参照情報は、前記建造物の内部に発生するひびの形状に関する形状情報を含み、
前記評価結果は、前記形状情報のうち、前記評価対象情報に紐づく第1形状情報を含むこと
を特徴とする振動評価装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記振動データに含まれる第1信号パターンをフーリエ変換した結果から、前記第1データを取得すること
を特徴とする請求項1記載の振動評価装置。
【請求項3】
前記レーザー検出器は、前記建造物の一部に対して一時的に与えた衝撃を、前記レーザーを用いて計測することを含み、
前記取得部は、
前記第1データと、
前記レーザー検出器により計測された衝撃データに基づく第2データと、
を含む前記評価対象情報を取得すること
を特徴とする請求項1記載の振動評価装置。
【請求項4】
前記評価対象情報及び前記過去の評価対象情報は、前記衝撃データを計測するために、前記建造物の一部に対して前記衝撃を与えた方法に関する打音情報を含むこと
を特徴とする請求項3記載の振動評価装置。
【請求項5】
建造物の振動に基づき、前記建造物の状態を評価する振動評価システムであって、
レーザーを用いて前記振動を計測するレーザー検出器と、
前記レーザー検出器により計測された振動データに基づく第1データを含む評価対象情報を取得する取得手段と、
予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶された参照データベースと、
前記参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する生成手段と、
前記評価データに基づく評価結果を出力する出力手段と、
を備え、
前記参照情報は、前記過去の評価対象情報に対する健全性の評価に関する健全性情報を含み、
前記評価結果は、前記健全性情報のうち、前記評価対象情報に紐づく第1健全性情報を含むこと
更に、前記参照情報は、前記建造物の内部に発生するひびの形状に関する形状情報を含み、
前記評価結果は、前記形状情報のうち、前記評価対象情報に紐づく第1形状情報を含むこと
を特徴とする振動評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動評価装置、及び振動評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物等の建造物における健全性を評価する手段として、例えば特許文献1の建物評価システム等が提案されている。
【0003】
特許文献1の建物評価システムは、建物に設置され、地震に伴って建物に生じる加速度を得る加速度センサと、加速度センサに接続され、加速度センサから出力される加速度データを利用して建物の健全性を評価する処理部と、を備える。特許文献1では、処理部は、加速度データを利用して変位データを得る本震変位取得部と、建物の構造特性示す第1剛性マトリクスと変位データとを利用して建物に生じる応力に関する応力データを得る本震応力取得部と、応力データを利用して建物の損傷に関する評価を行う本震損傷評価部と、を有する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-144031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の開示技術では、階ごとの水平変位に関する変位データを用いた健全性の評価を前提としている。そのため、建物の階数増加に伴い、予め設置するセンサ(加速度センサ)の数が増加するため、センサのメンテナンス不足や、地震等によるセンサの破損等に伴う評価結果の精度低下が懸念として挙げられる。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、高精度な評価結果を得ることができる振動評価装置、及び振動評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る振動評価装置は、建造物の振動に基づき、前記建造物の状態を評価する振動評価装置であって、レーザーを用いて前記振動を計測するレーザー検出器と、前記レーザー検出器により計測された振動データに基づく第1データを含む評価対象情報を取得する取得部と、予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶された参照データベースと、前記参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する生成部と、前記評価データに基づく評価結果を出力する出力部と、を備え、前記参照情報は、前記過去の評価対象情報に対する健全性の評価に関する健全性情報を含み、前記評価結果は、前記健全性情報のうち、前記評価対象情報に紐づく第1健全性情報を含むことを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る振動評価装置は、第1発明において、前記取得部は、前記振動データに含まれる第1信号パターンをフーリエ変換した結果から、前記第1データを取得すること を特徴とする。
【0009】
第3発明に係る振動評価装置は、第1発明において、前記レーザー検出器は、前記建造物の一部に対して一時的に与えた衝撃を、前記レーザーを用いて計測することを含み、前記取得部は、前記第1データと、前記レーザー検出器により計測された衝撃データに基づく第2データと、を含む前記評価対象情報を取得することを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る振動評価装置は、第3発明において、前記評価対象情報及び前記過去の評価対象情報は、前記衝撃データを計測するために、前記建造物の一部に対して前記衝撃を与えた方法に関する打音情報を含むことを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る振動評価装置は、第3発明において、前記参照情報は、前記建造物の内部に発生するひびの形状に関する形状情報を含み、前記評価結果は、前記形状情報のうち、前記評価対象情報に紐づく第1形状情報を含むことを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る振動評価システムは、建造物の振動に基づき、前記建造物の状態を評価する振動評価システムであって、レーザーを用いて前記振動を計測するレーザー検出器と、前記レーザー検出器により計測された振動データに基づく第1データを含む評価対象情報を取得する取得手段と、予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶された参照データベースと、前記参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する生成手段と、前記評価データに基づく評価結果を出力する出力手段と、を備え、前記参照情報は、前記過去の評価対象情報に対する健全性の評価に関する健全性情報を含み、前記評価結果は、前記健全性情報のうち、前記評価対象情報に紐づく第1健全性情報を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明~第5発明によれば、レーザー検出器は、レーザーを用いて建造物の振動を計測する。このため、建造物の階数に比例してレーザー検出器を増加させる必要が無く、予め建造物に設置する必要が無い。このため、予め設置する必要があるセンサに比べて、メンテナンス不足や、地震等による破損に伴う評価結果の精度低下が発生する可能性が極めて低い。これにより、高精度な評価結果を得ることが可能となる。また、建造物に対して非接触で振動データを取得することができる。これにより、接触式の計測方法に比べて、接触状態に起因する計測結果のバラつきを考慮する必要がなく、計測者等に起因する評価精度の低下を抑制することが可能となる。また、地震による建造物の振動を計測する場合に比べて、任意のタイミングで計測することができる。これにより、定期的な評価を実施することが可能となる。
【0014】
また、第1発明~第5発明によれば、生成部は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。評価結果は、健全性情報のうち、評価対象情報に紐づく第1健全性情報を含む。このため、過去の結果を踏まえた評価データを生成でき、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、評価対象情報に対して最適な第1健全性情報を含む評価結果を出力することができる。これにより、評価結果の精度を高めることが可能となる。
【0015】
特に、第2発明によれば、取得部は、第1信号パターンをフーリエ変換した結果から、第1データを取得する。このため、建造物における状態の差異に伴う僅かな信号パターンの違いに対しても、評価結果を出力することができる。これにより、建造物の複雑な状態を示す評価対象情報に対しても、最適な評価データを容易に生成することが可能となる。
【0016】
特に第3発明によれば、取得部は、第1データと、レーザー検出器により計測された衝撃データに基づく第2データと、を含む評価対象情報を取得する。このため、建造物全体の健全性と、建造物の一部における状態との組合せを含む評価結果を得ることができる。これにより、建造物の健全性に影響を与える一部分を容易に特定することが可能となる。
【0017】
特に、第4発明によれば、評価対象情報及び過去の評価対象情報は、衝撃データを計測するために、建造物の一部に対して衝撃を与えた方法に関する打音情報を含む。このため、建造物の一部に対して衝撃を与える様々な打音方法毎に、最適な評価データを生成することができる。これにより、得られる評価結果の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0018】
特に、第5発明によれば、評価結果は、評価対象情報に紐づく第1形状情報を含む。このため、建造物の内部状態を定量的に評価することができる。これにより、計測者毎の主観を排除した評価結果を得ることが可能となる。
【0019】
第6発明によれば、レーザー検出器は、レーザーを用いて建造物の振動を計測する。このため、建造物の階数に比例してレーザー検出器を増加させる必要が無く、予め建造物に設置する必要が無い。このため、予め設置する必要があるセンサに比べて、メンテナンス不足や、地震等による破損に伴う評価結果の精度低下が発生する可能性が極めて低い。これにより、高精度な評価結果を得ることが可能となる。また、建造物に対して非接触で振動データを取得することができる。これにより、接触式の計測方法に比べて、接触状態に起因する計測結果のバラつきを考慮する必要がなく、計測者等に起因する評価精度の低下を抑制することが可能となる。また、地震による建造物の振動を計測する場合に比べて、任意のタイミングで計測することができる。これにより、定期的な評価を実施することが可能となる。
【0020】
また、第6発明によれば、生成手段は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。評価結果は、健全性情報のうち、評価対象情報に紐づく第1健全性情報を含む。このため、過去の結果を踏まえた評価データを生成でき、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、評価対象情報に対して最適な第1健全性情報を含む評価結果を出力することができる。これにより、評価結果の精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1実施形態における振動評価システム、及び振動評価装置の概要の一例を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態における振動評価システム、及び振動評価装置の動作の一例を示す模式図である。
図3図3(a)は、振動データの一例を示すグラフであり、図3(b)は、第1信号パターンをフーリエ変換した結果の一例を示すグラフである。
図4図4は、参照データベースの一例を示す模式図である。
図5図5は、参照データベースの他の例を示す模式図である。
図6図6(a)は、第1実施形態における振動評価装置における構成の一例を示す模式図であり、図6(b)は、第1実施形態における振動評価装置における機能の一例を示す模式図である。
図7図7は、第1実施形態における振動評価システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第2実施形態における振動評価システム、及び振動評価装置の動作の一例を示す模式図である。
図9図9(a)は、衝撃データの一例を示すグラフであり、図9(b)は、第2信号パターンをフーリエ変換した結果の一例を示すグラフである。
図10図10は、参照データベースのさらに他の例を示す模式図である。
図11図11(a)は、評価データと、基準評価データとを比較した結果の一例を示す模式図であり、図11(b)は、画像情報の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した実施形態における振動評価装置、及び振動評価システムの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1、2を参照して、第1実施形態における振動評価システム100、及び振動評価装置1の一例について説明する。図1は、本実施形態における振動評価システム100、及び振動評価装置1の概要の一例を示す模式図である。図2は、本実施形態における振動評価システム100、及び振動評価装置1の動作の一例を示す模式図である。
【0024】
(振動評価システム100)
振動評価システム100は、建造物9の振動に基づき、建造物9の状態を評価するために用いられる。振動評価システム100を用いることで、例えば建造物9における健全性を含む評価を実施することができる。
【0025】
建造物9は、例えば木造や鉄筋コンクリート造等の建築物を含むほか、堤防や橋梁等の構造物も含む。振動評価システム100では、建造物9全体に亘って発生する振動(例えば固有振動)に基づき、建造物9の状態を評価する。建造物9の振動は、例えば風のほか、車両の通過等の周辺環境により発生する。
【0026】
振動評価システム100は、レーザーを用いて建造物9の振動を計測する。また、振動評価システム100では、過去に評価された情報を利用する。このため、例えば超音波法のような建造物9に接触して計測する方法に比べ、非接触で振動データを取得することができ、計測条件に伴うバラつきの少ない振動データを取得することができる。
【0027】
振動評価システム100は、例えば図1に示すように、振動評価装置1を備える。振動評価装置1は、レーザー検出器2を備える。振動評価装置1は、例えば撮像装置7等と接続されてもよく、通信網4を介して端末5やサーバ6等と接続されてもよい。なお、振動評価装置1は、例えばレーザー検出器2を制御するほか、撮像装置7を制御してもよく、レーザー検出器2や撮像装置7の機能を備えてもよい。
【0028】
振動評価システム100は、例えば図2に示すように、建造物9の外壁を対象とするほか、内壁等を対象としてもよい。例えば振動評価システム100は、レーザー検出器2を用いて、建造物9の振動を計測する。このとき、レーザー検出器2は、レーザーを出射し、建造物9に反射したレーザーを受光することで、振動を計測する。
【0029】
その後、振動評価装置1は、評価対象情報を取得する。評価対象情報は、レーザー検出器2により計測された振動データに基づく第1データを含む。そして、振動評価装置1は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成し、評価データに基づく評価結果を出力する。これにより、例えば健全性のような建造物9の状態を示す指標を、評価結果として出力することができる。なお、評価結果は、「[健全性]要点検」のような建造物9の状態に関する内容を1つ表示するほか、例えば「安全:30%、要点検:60%、危険:10%」のように複数の候補及び確率等を表示してもよい。
【0030】
以下、振動評価システム100に用いられる振動データ、評価対象情報、及び参照データベースについて説明する。
【0031】
<振動データ>
振動データは、例えば図3(a)に示すように、時間(Time(s))に対する速度(Velocity(m/s))で表される時間波形の信号パターン(第1信号パターン)を含む。振動データは、公知の振動計測結果を用いることができる。振動データは、例えば任意のタイミングから1秒~300秒程度後までの信号パターンを含み、状況に応じて任意に設定することができる。
【0032】
信号パターンは、建造物9の状態(例えばひび割れの発生有無、ひび割れの形状、負荷が作用するバランス等)によって得られる内容が異なる。この点、振動評価システム100では、信号パターンに基づく評価を行うことができる。このため、経時劣化や地震によって建造物9におけるひび割れや空洞が内部のみに発生し、建造物9の表面に達していない場合や、全体に作用する負荷のバランスが悪化した場合においても、高精度な評価結果を得ることが可能となる。
【0033】
振動データは、例えばレーザー検出器2から出射されたレーザーの照射面に対し、奥行き方向の振動を計測した結果を示す。このため、建造物9の健全性の評価に重要となる建造物9内部の状態を反映した振動データを得ることができる。これにより、評価結果の精度向上を図ることが可能となる。
【0034】
振動データは、例えばレーザー検出器2から出射されたレーザーの照射面に対し、奥行き方向の振動に加え、幅方向、高さ方向、及びねじれ方向の少なくとも何れかの振動を計測した結果を示す。このため、建造物9全体の構造を踏まえた振動データを得ることができる。これにより、建造物9における構造の特徴を反映した評価結果を出力することができ、更なる精度向上を図ることが可能となる。
【0035】
<評価対象情報>
評価対象情報は、振動データに基づく第1データを含む。第1データは、例えば振動データに含まれる信号パターンをフーリエ変換した結果(例えば図3(b))から取得される。フーリエ変換したデータは、例えば周波数(Frequency(Hz))に対する強度(Magnitude)で示すことができる。この場合、フーリエ変換した結果から、例えば特徴的な値を複数抽出し、評価対象情報として取得する。このため、時間波形の信号パターンを直接評価する場合に比べて、重ね合わさった振動全体の特徴を評価対象とすることができる。これにより、建造物9における状態の差異に伴う僅かな振動データの違いに対しても、評価結果を出力することができる。
【0036】
上記のほか、例えば時間波形の信号パターンから特徴的な値を複数抽出し、評価対象情報に含まれる第1データとして取得してもよい。この場合、フーリエ変換等の処理を実行する必要がなく、データ処理工程の増加を抑制することができる。なお、上述した「特徴的な値」を抽出する方法として、例えば主成分分析等の公知技術を用いることができる。これにより、計測者等の主観を含めることなく評価に必要なデータ量を削減できる。また、不要なデータ(ノイズ)を削除することで、精度向上を図ることができる。
【0037】
評価対象情報に含まれる第1データは、例えば信号パターンからメル周波数スペクトルに変換したデータ、又はメル周波数ケプストラム係数(MFCC:Mel Frequency Cepstrum Coefficients)から取得してもよい。第1データとして、行列(例えばベクトル)形式のデータが取得されるほか、例えばスペクトログラム等のような画像形式のデータが取得されてもよい。
【0038】
評価対象情報は、例えば建造物9の特徴に関する属性情報を含んでもよい。属性情報は、例えば建造物9における構造の種類(例えば木造、鉄筋コンクリート造、堤防、橋梁、高さ、階数、面積、体積、資材の占有率等)を有するほか、例えば築年数、施工業者、計測箇所、及び計測条件の少なくとも何れかを有してもよい。評価対象情報が属性情報を含むことで、例えば異なる属性情報に対して類似する第1データがそれぞれ取得された場合に、それぞれ適切な評価結果を得ることが可能となる。
【0039】
評価対象情報は、例えば励振情報を含んでもよい。励振情報は、建造物9に振動を発生(励振)させた要因に関する情報を示す。励振情報は、例えば風、車両等の要因に関する識別情報を含むほか、例えば風向き、風速、車両の通行量、車両の騒音量等の詳細な情報を含んでもよい。評価対象情報が励振情報を含むことで、励振させた要因の違いに起因する僅かな信号パターンの差異についても、評価結果に反映させることができるほか、例えば励振情報毎に異なる評価を行うこともできる。
【0040】
<参照データベース>
参照データベースには、予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶される。連関性は、例えば過去の評価対象情報、及び参照情報を一組の学習データとして、複数の学習データを用いた公知の機械学習により構築される。機械学習として、畳み込みニューラルネットワーク等の深層学習が用いられるほか、例えばランダムフォレストや、SVM(Support Vector Machine)等のような公知の技術が用いられてもよい。
【0041】
この場合、例えば連関性は、多対多の情報(複数の過去の評価対象情報、対、複数の参照情報)の間における繋がりの度合いにより構築される。連関性は、機械学習の過程で適宜更新され、例えば過去の評価対象情報、及び参照情報に基づいて最適化された関数(分類器)を示す。このため、過去に建造物9の状態を評価した結果を全て踏まえた連関性を用いて、評価対象情報に対する評価データが生成される。これにより、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、最適な評価データを生成することができる。また、評価対象情報が、過去の評価対象情報と同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、最適な評価データを定量的に生成することができる。なお、機械学習を行う際に汎化能力を高めることで、未知の信号パターンに対する評価精度の向上を図ることができる。
【0042】
参照データベースには、例えば機械学習の学習データに用いられた過去の評価対象情報、及び参照情報が記憶されてもよい。なお、連関性は、例えば各情報の間における繋がりの度合いを示す複数の連関度を有してもよい。連関度は、例えば参照データベースがニューラルネットワークで構築される場合、重み変数に対応させることができる。
【0043】
過去の評価対象情報は、上述した評価対象情報と同種の情報を示す。過去の評価対象情報が属性情報を含む場合、振動データに基づく第1データと、属性情報とを一組の入力データとして、機械学習に用いることができる。上記のほか、例えば属性情報毎に分別した第1データを入力データとして機械学習を行ってもよい。この場合、例えば属性情報毎に分別した複数の学習済みモデルが、参照データベースに記憶されてもよい。なお、過去の評価対象情報は、属性情報の代わりに励振情報を含む場合、及び属性情報及び励振情報を含む場合においても、上記と同様に、一組の入力データとして機械学習に用いることができるほか、励振情報毎に分別した複数の学習済みモデルが、参照データベースに記憶されてもよい。
【0044】
参照情報は、過去の評価対象情報に紐づき、建造物9の状態に関する情報を示す。参照情報は、例えば過去の評価対象情報に対する健全性の評価に関する健全性情報を含む。健全性情報は、例えば「安全」、「要点検」、「危険」のような3段階の度合いを示す情報を含むほか、例えば3段階以上の健全性の度合いを示す情報を含んでもよい(例えば最も安全な状態を「10」、最も危険な状態を「1」とした10段階評価等)。
【0045】
参照情報は、例えば健全性に対応する属性情報を含んでもよい。また、参照情報は、属性情報毎に異なる段階の度合いを示す情報を含んでもよい。これらの場合、属性情報毎に適した健全性を、参照情報に含めることができる。
【0046】
連関性は、例えば図4に示すように、複数の過去の評価対象情報と、複数の参照情報との間における繋がりの度合いを示してもよい。この場合、連関性を用いることで、複数の過去の評価対象情報(図4では「対象A」~「対象C」)のそれぞれに対し、複数の参照情報(図4では「参照A」~「参照C」)の関係の度合いを紐づけて記憶させることができる。このため、例えば連関性を介して、1つの過去の評価対象情報に対して、複数の参照情報を紐づけることができ、多角的な評価データの生成を実現することができる。
【0047】
連関性は、各過去の評価対象情報と、各参照情報とをそれぞれ紐づける複数の連関度を有する。連関度は、例えば百分率、10段階、又は5段階等の3段階以上で示され、例えば線の特徴(例えば太さ等)で示される。例えば、過去の評価対象情報に含まれる「対象A」は、参照情報に含まれる「参照A」との間の連関度AA「62%」を示し、参照情報に含まれる「参照B」との間の連関度AB「26%」を示す。すなわち、「連関度」は、各データ間における繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど、各データの繋がりが強いことを示す。なお、上述した機械学習により連関性を構築する際、連関性が3段階以上の連関度を有するように設定してもよい。
【0048】
連関度は、例えば図5に示すように、過去の評価対象情報の2以上の組み合わせ(図5の破線)を1つの対象データとして、複数の参照情報とを紐づけてもよい。例えば、過去の評価対象情報に含まれる「対象A」、及び「対象D」の組み合わせは、「参照A」との間の連関度ADA「25%」を示し、「参照B」との間の連関度ADB「17%」を示す。この場合、参照データベースを参照して評価する評価対象情報が、「対象A」及び「対象D」の何れにも類似する場合等においても、定量的な評価を実施することができる。図4図5に示した連関性は、例えば上述した機械学習により構築されてもよい。
【0049】
上述した連関度を用いることで、それぞれ複数のデータを有する過去の評価対象情報と、参照情報との間における複雑な関係性を、高精度に表現することができる。このため、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、最適な評価データを生成することができる。また、振動データに含まれる未知の信号パターンに対しても、高精度な評価を実現することができる。
【0050】
参照データベースには、例えば基準評価データが記憶されてもよい。基準評価データは、評価データを評価するための基準として予め取得され、参照データベースに記憶される。基準評価データとして、例えば建造物9の健全な状態に対応するデータが用いられる。
【0051】
参照データベースには、例えば画像情報が記憶されてもよい。画像情報は、建造物9の表面を撮像した画像を示し、例えば測定位置がプロットされてもよい。画像情報は、例えば撮像装置7により予め撮像され、参照データベースに記憶される。
【0052】
(振動評価装置1)
次に、図6を参照して、本実施形態における振動評価装置1の一例を説明する。図6(a)は、本実施形態における振動評価装置1の構成の一例を示す模式図であり、図6(b)は、本実施形態における振動評価装置1の機能の一例を示す模式図である。
【0053】
振動評価装置1として、ラップトップ(ノート)PC又はデスクトップPC等の電子機器が用いられる。振動評価装置1は、例えば図6(a)に示すように、筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~107とを備える。各構成101~107は、内部バス110により接続される。
【0054】
CPU101は、振動評価装置1全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、参照データベースや評価対象情報等の各種情報が記憶される。保存部104として、例えばHDD(Hard Disk Drive)のほか、SSD(Solid State Drive)等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば振動評価装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。
【0055】
I/F105は、データ通信手段を介して、必要に応じてレーザー検出器2等との各種情報の送受信を行うためのインターフェースであり、例えば通信網4を介して端末5等との各種情報の送受信を行うために用いられてもよい。I/F106は、入力部分108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部分108として、例えばキーボードが用いられ、振動評価装置1の計測者等は、入力部分108を介して、各種情報、又は振動評価装置1若しくはレーザー検出器2等の制御コマンド等を入力する。I/F107は、出力部分109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。出力部分109は、保存部104に保存された各種情報、又は振動評価装置1若しくはレーザー検出器2等の処理状況等を出力する。出力部分109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。
【0056】
図6(b)は、振動評価装置1の機能の一例を示す模式図である。振動評価装置1は、取得部11と、生成部12と、出力部13と、記憶部14と、制御部15を備え、例えば更新部16を有してもよい。なお、図6(b)に示した各機能は、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に記憶されたプログラムを実行することにより実現され、例えば人工知能等により制御されてもよい。
【0057】
<取得部11>
取得部11は、振動データに基づく第1データを含む評価対象情報を取得する。取得部11は、レーザー検出器2により計測された振動データを取得し、振動データに含まれる信号パターンをフーリエ変換等の処理を行い、処理結果を第1データとして取得する。取得部11は、例えば予め計測者等によって入力された属性情報及び励振情報の少なくとも何れかを、評価対象情報の一部として取得してもよい。
【0058】
取得部11は、例えば建造物9の表面を撮像した画像情報を取得してもよい。画像情報は、例えば計測者等によって予め入力されるほか、端末5等から受信してもよい。また、取得部11は、例えば撮像機能を有する撮像装置7によって撮像された画像情報を取得してもよい。取得部11は、例えば画像情報に含まれるレーザー検出器2から出射したレーザーの照射位置(計測位置)を取得してもよい。
【0059】
計測位置は、振動データを取得するためにレーザー検出器2から出射されたレーザーのスポットによって特定することができる。このため、計測位置は、レーザー検出器2から取得するほか、例えば撮像装置7によって取得してもよく、例えば計測者等により直接入力されてもよい。なお、取得部11は、例えば計測位置を、評価対象情報の一部として取得してもよい。この場合、計測位置の情報を補助パラメータとした評価を実施することができ、さらなる精度向上を図ることが可能となる。
【0060】
<生成部12>
生成部12は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。生成部12は、例えば連関性(分類器)を介して、評価対象情報に紐づく1以上の参照情報を選択し、選択した参照情報を反映した評価データを生成する。
【0061】
生成部12は、例えば選択した複数の参照情報のうち、評価対象情報と紐づく連関度が最も高い参照情報を抽出し、評価データとして生成する。なお、抽出される参照情報は複数でもよく、その場合、例えば予め設定された閾値以上の連関度に紐づく参照情報を抽出するようにしてもよい。
【0062】
生成部12は、例えば図4に示したような参照データベースを参照した場合、評価対象情報と同一又は類似する過去の評価対象情報(例えば「対象A」:第1対象データとする)を選択する。過去の評価対象情報として、評価対象情報と一部一致又は完全一致する対象データが選択されるほか、例えば類似する対象データが選択される。なお、選択される類似度の度合いについては、任意に設定できる。また、第1対象データとして、複数の対象データ(例えば「対象A」及び「対象C」等)が選択されてもよい。
【0063】
生成部12は、選択した第1対象データに紐づく参照情報(第1参照データとする)、及び第1対象データと第1参照データとの間における連関度(例えば連関度AA:第1連関度とする)を選択する。例えば生成部12は、第1対象データ「対象A」に紐づく第1参照データ「参照A」、及び「対象A」と「参照A」との間における第1連関度「62%」を選択し、選択した各データを含む評価データとして生成する。
【0064】
また、参照データ及び連関度を複数選択する場合、上述した「参照A」及び「62%」に加えて、第1対象データ「対象A」に紐づく第1参照データ「参照B」、及び「対象A」と「参照B」との間における第1連関度「26%」、等を、第1参照データ及び第1連関度として選択してもよい。このように、生成部12は、選択された第1参照データ及び第1連関度を含む評価データを生成する。
【0065】
<出力部13>
出力部13は、評価データに基づく評価結果を出力する。出力部13は、例えば保存部104に予め記憶された表示用のフォーマットを用いて、評価データを計測者等が理解できる文字列等に変換した評価結果を生成し、出力する。出力部13は、I/F107を介して出力部分109に評価結果を送信するほか、例えばI/F105を介して、端末5等に評価結果を送信する。
【0066】
出力部13は、例えば健全性情報のうち、評価対象情報に紐づく健全性情報(第1健全性情報)を含む評価結果を出力する。この場合、出力部13は、生成部12によって選択された第1参照データに含まれる第1健全性情報を、評価結果に含ませて出力する。
【0067】
<記憶部14>
記憶部14は、保存部104に保存された参照データベース等の各種データを必要に応じて取出す。記憶部14は、各構成11~13、15、16により取得又は生成された各種データを、必要に応じて保存部104に保存する。
【0068】
<制御部15>
制御部15は、レーザー検出器2を制御する。制御部15は、例えば計測者等により入力された内容に基づき、レーザー検出器2から出射するレーザーの条件や、計測の条件を制御する。制御部15は、例えば公知の技術を用いてレーザー検出器2を制御するほか、例えば撮像装置7等を制御してもよい。
【0069】
<更新部16>
更新部16は、例えば参照データベースを更新する。更新部16は、過去の評価対象情報と、参照情報との間の関係を新たに取得した場合には、関係を連関性に反映させる。例えば出力部13により出力された評価結果を踏まえて、計測者等が評価結果の精度を検討し、検討結果を振動評価装置1が取得した場合、更新部16は、検討結果に基づき参照データベースに含まれる連関性を更新する。連関性の更新は、例えば機械学習を用いる。
【0070】
<レーザー検出器2>
レーザー検出器2は、レーザーを用いて、建造物9に発生した振動を計測するために用いられる。レーザー検出器2は、例えば干渉レーザー光を用いて、建造物9に発生した振動から振動データを生成する。レーザー検出器2は、生成した振動データを振動評価装置1に送信する。レーザー検出器2は、例えば生成した振動データに含まれる信号パターンをフーリエ変換する機能を有してもよい。
【0071】
レーザー検出器2は、振動評価装置1と直接接続されるほか、例えば通信網4を介して接続されてもよい。レーザー検出器2として、例えば公知のレーザー干渉計等が用いられる。レーザー検出器2は、例えば制御部15によって制御される。
【0072】
<通信網4>
通信網4は、例えば振動評価装置1が通信回路を介して接続されるインターネット網等である。通信網4は、いわゆる光ファイバ通信網で構成されてもよい。また、通信網4は、有線通信網のほか、無線通信網等の公知の通信網で実現してもよい。
【0073】
<端末5>
端末5は、例えば計測場所から離れた場所に設けられ、通信網4を介して振動評価装置1と接続される。端末5は、例えばパーソナルコンピュータや、タブレット端末等の電子機器が用いられる。端末5は、例えば振動評価装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよい。
【0074】
<サーバ6>
サーバ6は、例えば計測場所から離れた場所に設けられ、通信網4を介して振動評価装置1と接続される。サーバ6は、過去の計測された各種データ等が記憶され、必要に応じて振動評価装置1から各種データが送信される。
【0075】
<撮像装置7>
撮像装置7は、建造物9の表面を撮像するために用いられる。撮像装置7は、撮像した画像を振動評価装置1に送信する。撮像装置7は、例えば振動評価装置1と直接接続されるほか、例えば通信網4を介して接続されてもよい。撮像装置7として、例えばデジタルカメラ等の公知の撮像装置が用いられる。
【0076】
(振動評価システム100の動作の一例)
次に、本実施形態における振動評価システム100の動作の一例について説明する。図7は、本実施形態における振動評価システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0077】
振動評価システム100は、例えば図7に示すように、取得手段S110と、生成手段S120と、出力手段S130とを備え、例えば更新手段S140を備えてもよい。
【0078】
<取得手段S110>
取得手段S110は、振動データに基づく第1データを含む評価対象情報を取得する。取得部11は、例えばレーザー検出器2により計測された振動データを取得し、振動データに含まれる信号パターンに基づき、第1データを取得する。取得部11は、例えば1つの信号パターンに基づく1つの評価対象情報を取得するほか、例えば複数の信号パターンに基づく1つの評価対象情報を取得してもよい。取得部11は、例えば記憶部14を介して、取得した評価対象情報等を保存部104に保存する。
【0079】
振動データは、例えば建造物9における奥行き方向の振動、幅方向の振動、高さ方向の振動、及びねじれ方向の振動の少なくとも何れかに基づき計測される。上記各方向の振動のうち、2以上の振動に基づき振動データが計測された場合、取得部11は、例えば方向毎の成分に分割された第1データを取得するほか、例えば複数の方向の成分が含まれた第1データを取得してもよい。
【0080】
なお、例えば振動データは、異なる方向の振動に基づき複数計測されたデータを含んでもよい。この場合、それぞれ異なるタイミングで計測されたデータを、1つの振動データとして取得部11が認識し、振動データに基づく第1データを取得してもよい。
【0081】
例えば制御部15は、レーザー検出器2を制御してもよい。この場合、制御部15は、レーザー検出器2からレーザーを出射させ、建造物9に反射したレーザーをレーザー検出器2に受光させるための制御を行うことで、レーザー検出器2に振動データを計測させてもよい。
【0082】
<生成手段S120>
生成手段S120は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。生成部12は、例えば参照データベースに記憶された連関性に基づき、評価対象情報との関係の度合いが高い参照情報(第1参照データ)を抽出する。生成部12は、抽出した第1参照データを含む評価データを生成する。生成部12は、例えば記憶部14を介して、生成した評価データを保存部104に保存する。
【0083】
上記のほか、例えば生成部12は、参照データベースに記憶された過去の評価対象情報のうち、評価対象情報と同一又は類似する情報を含む第1対象データを選択する。生成部12は、参照データベースに記憶された参照情報のうち、選択した第1対象データに紐づく第1参照データを選択し、第1対象データと第1参照データとの間における第1連関度を選択する。
【0084】
例えば評価対象情報が、建造物9における2以上の方向の振動に対応する振動データに基づき取得された場合、生成部12は、各方向の振動のそれぞれに対応する評価データを生成するほか、各方向の振動を踏まえた建造物9全体の振動に対応する評価データを生成してもよい。
【0085】
<出力手段S130>
出力手段S130は、評価データに基づく評価結果を出力する。出力部13は、例えば評価データを計測者等が理解できる文字列等に変換した評価結果を生成し、出力する。出力部13は、例えば第1参照データに含まれる第1健全性情報を、評価結果に含ませて生成する。
【0086】
これにより、本実施形態における振動評価システム100の動作が終了する。
【0087】
<更新手段S140>
なお、例えば過去の評価対象情報と、参照情報との間の関係を新たに取得した場合には、関係を連関性に反映させてもよい(更新手段S140)。更新部16は、評価結果に対する計測者等の検討結果に基づき、参照データベースに含まれる連関性を更新する。なお、更新部16を実施するタイミングや頻度は、任意である。
【0088】
本実施形態によれば、レーザー検出器2は、レーザーを用いて建造物9の振動を計測する。このため、建造物9の階数に比例してレーザー検出器2を増加させる必要が無く、予め建造物9に設置する必要が無い。このため、予め設置する必要があるセンサに比べて、メンテナンス不足や、地震等による破損に伴う評価結果の精度低下が発生する可能性が極めて低い。これにより、高精度な評価結果を得ることが可能となる。また、建造物9に対して非接触で振動データを取得することができる。これにより、接触式の計測方法に比べて、接触状態に起因する計測結果のバラつきを考慮する必要がなく、計測者等に起因する評価精度の低下を抑制することが可能となる。また、地震による建造物9の振動を計測する場合に比べて、任意のタイミングで計測することができる。これにより、定期的な評価を実施することが可能となる。
【0089】
また、本実施形態によれば、生成部12は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。評価結果は、健全性情報のうち、評価対象情報に紐づく第1健全性情報を含む。このため、過去の結果を踏まえた評価データを生成でき、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、評価対象情報に対して最適な第1健全性情報を含む評価結果を出力することができる。これにより、評価結果の精度を高めることが可能となる。
【0090】
また、本実施形態によれば、取得部11は、第1信号パターンをフーリエ変換した結果から、第1データを取得する。このため、建造物9における状態の差異に伴う僅かな信号パターンの違いに対しても、評価結果を出力することができる。これにより、建造物9の複雑な状態を示す評価対象情報に対しても、最適な評価データを容易に生成することが可能となる。
【0091】
本実施形態によれば、生成手段S120は、参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。評価結果は、健全性情報のうち、評価対象情報に紐づく第1健全性情報を含む。このため、過去の結果を踏まえた評価データを生成でき、複雑な信号パターンが振動データに含まれる場合においても、評価対象情報に対して最適な第1健全性情報を含む評価結果を出力することができる。これにより、評価結果の精度を高めることが可能となる。
【0092】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における振動評価システム100、及び振動評価装置1について説明する。上述した実施形態と、第2実施形態との違いは、評価対象情報が第2データを含む点である。なお、上述した実施形態と同様の内容に関しては、説明を省略する。
【0093】
本実施形態における振動評価システム100では、例えば図8に示すように、レーザー検出器2は、建造物9の一部に対して一時的に与えた衝撃を、レーザーを用いて計測する。このため、取得部11は、第1データと、レーザー検出器2により計測された衝撃データに基づく第2データとを含む評価対象情報を取得する。この場合、例えば評価結果には、建造物9に発生するひび割れ91の形状に関する情報が含まれてもよい。
【0094】
なお、レーザー検出器2は、例えば振動と、衝撃とを一度に計測してもよい。この場合、取得部11は、例えば振動データと衝撃データとを含む計測データから、第1データと、第2データとを抽出し、評価対象情報として取得する。
【0095】
上記のほか、レーザー検出器2は、例えば振動と、衝撃とを別々に計測してもよい。この場合、取得部11は、例えば振動データに基づく第1データと、衝撃データに基づく第2データとを異なる時間に取得してもよい。
【0096】
振動評価システム100では、衝撃データを取得する際、例えばレーザーリモートセンシング法を用いる。レーザーリモートセンシング法は、パルスレーザー等を用いた打音方法により、建造物9に衝撃を発生させる。その後、建造物9に発生した衝撃を、レーザー検出器2を用いて衝撃データとして計測する。すなわち、建造物9に対して非接触を維持した状態で、衝撃データを計測することができる。このため、例えば建造物9に対して接触して衝撃データを計測する方法に比べ、接触に伴う衝撃データのバラつきを抑制することができる。
【0097】
なお、建造物9に対して衝撃を発生させる方法として、非接触式の方法が用いられるほか、例えば接触式の方法が用いられてもよい。例えば建造物9に衝撃を発生させる打音方法として、上述したパルスレーザーを用いるほか、ハンマー、スピーカ、ガス、ウォータージェット等のような、公知のものを用いた方法が行われてもよい。
【0098】
振動評価システム100は、例えば衝撃発生装置3を備えてもよい。衝撃発生装置3は、建造物9に衝撃を発生させる。衝撃発生装置3として、例えばパルスレーザー発生装置が用いられるほか、ハンマリング装置、スピーカ、ガス発生装置、ウォータージェット機器等のような、公知の衝撃発生機器が用いられる。衝撃発生装置3は、例えば振動評価装置1と接続され、振動評価装置1によって制御されてもよい。この場合、例えば制御部15が、衝撃発生装置3を制御する。
【0099】
衝撃データは、例えば図9(a)に示すように、時間(Time(s))に対する速度(Velocity(m/s))で表される時間波形の信号パターン(第2信号パターン)を含む。衝撃データは、公知の衝撃(振動)計測結果を用いることができる。衝撃データは、例えば衝撃発生のタイミングから10~50ミリ秒程度後までの第2信号パターンを含み、状況に応じて任意に設定することができる。
【0100】
第2信号パターンは、主に建造物9の表面を経由する表面波、及び建造物9の内部を経由する内部弾性波の重ね合わせによる複雑な形状を示す。このため、第2信号パターンは、建造物9の状態(例えばひび割れの発生有無やひび割れの形状)によって得られる内容が異なる。この点、振動評価システム100では、第2信号パターンに基づく評価を行うことができる。このため、建造物9におけるひび割れや空洞が内部のみに発生し、建造物9の表面に達していない場合においても、高精度な評価結果を得ることが可能となる。
【0101】
評価対象情報は、上述した第1データと、第2データとを含む。第2データは、例えば衝撃データに含まれる第2信号パターンをフーリエ変換した結果(例えば図9(b))から取得される。フーリエ変換したデータは、例えば周波数(Frequency(Hz))に対する強度(Magnitude)で示すことができる。この場合、フーリエ変換した結果から、例えば特徴的な値を複数抽出し、評価対象情報として取得する。このため、時間波形の信号パターンを直接評価する場合に比べて、重ね合わさった衝撃全体の特徴を評価対象とすることができる。これにより、建造物9における状態の差異に伴う僅かな衝撃データの違いに対しても、評価結果を出力することができる。
【0102】
上記のほか、例えば第2信号パターンから特徴的な値を複数抽出し、評価対象情報に含まれる第2データとして取得してもよい。この場合、フーリエ変換等の処理を実行する必要がなく、データ処理工程の増加を抑制することができる。
【0103】
評価対象情報に含まれる第2データは、例えば第2信号パターンからメル周波数スペクトルに変換したデータ、又はメル周波数ケプストラム係数から取得してもよい。第2データとして、行列(例えばベクトル)形式のデータが取得されるほか、例えばスペクトログラム等のような画像形式のデータが取得されてもよい。
【0104】
評価対象情報及び過去の評価対象情報は、例えば打音情報を含む。打音情報は、衝撃データを計測するために、建造物9に衝撃を与えた方法(即ち打音方法)に関する情報を示す。打音情報は、例えば建造物9に衝撃を与えるパルスレーザー、ハンマー、スピーカ、ガス、又はウォータージェット等の打音方法毎に異なる識別情報を含むほか、例えばパルスレーザーの発振条件や照射角度のほか、ハンマーの種類や衝撃を与える時間等の打音条件に関する情報を含んでもよい。評価対象情報が打音情報を含むことで、打音方法の違いに起因する僅かな第2信号パターンの差異についても、評価をすることができるほか、例えば打音方法別に異なる評価を行うこともできる。
【0105】
過去の評価対象情報が打音情報を含む場合、第2信号パターンに基づく第2データと、打音情報とを一組の入力データとして、機械学習に用いることができる。上記のほか、例えば打音情報毎に分別した評価対象情報を入力データとして機械学習を行ってもよいほか、打音情報毎にアンサンブル学習を行ってもよい。
【0106】
参照情報は、例えば建造物9に発生するひび割れ91の形状に関する形状情報を含む。形状情報は、建造物9内におけるひび割れ91の深さ、建造物9の厚さ方向に対する角度、幅、テーパー角、空隙率、含水率、及び枝分かれ数の少なくとも何れかを含み、建造物9の表面画像のみでは判断できない状態を示す。形状情報は、「深さ15mm」、「幅13mm」等の一定値を示す値を含むほか、例えば「深さ10~20mm」、「幅5~10mm」等の範囲を示す値を含んでもよく、値の表示方法については任意である。
【0107】
参照情報は、例えば建造物9の状態を分類する分類情報を含んでもよい。分類情報は、例えば「健全(正常)」、「欠陥(異常)」等の断定的な分類を含むほか、例えば「ひび割れの深さが××mm以上」、「影響の範囲が広い可能性あり」等のひび割れ91の特徴や判断の指標を分類した内容を含んでもよい。なお、参照情報は、例えば過去の評価結果の具体例を含んでもよく、例えば「2015年3月3日 ○○ビル評価時と類似」、「2015年9月5日 ○○ビルではひび割れが××mmに拡大」、「2015年12月1日 補修」等の経年変化や処置履歴等を含んでもよく、内容の組み合わせ等は任意に設定できる。
【0108】
参照データベースは、例えば図10に示すように、過去の評価対象情報に含まれる各信号パターンに基づく情報(図10では「特徴A」~「特徴C」)と、打音情報(図10では「打音A」~「打音C」)とを組み合わせたデータに対して、参照情報が紐づけられてもよい。
【0109】
参照データベースは、例えば過去の第1データと、過去の第2データとを組合わせたデータに対して、参照情報を紐づけてもよい。この場合、例えば図10の「特徴A」~「特徴C」で示される各データが過去の第1データに対応し、「打音A」~「打音C」で示される各データが過去の第2データに対応する。これにより、参照データべースを構築する際に用いられる学習データ(入力データ)を減少させることが可能となる。
【0110】
取得部11は、例えば画像情報における衝撃データの計測位置、及び画像情報における建造物9に衝撃を与えた衝撃位置、の少なくとも何れかを取得してもよい。
【0111】
衝撃位置は、建造物9に衝撃を与えるパルスレーザーを用いた場合、衝撃発生装置3から出力されたレーザーのスポットによって特定することができる。このため、衝撃位置は、衝撃発生装置3から取得するほか、例えば撮像装置7によって取得してもよい。なお、ハンマー等を用いて建造物9に衝撃を与える場合、例えば計測者等が直接衝撃位置を入力してもよい。なお、取得部11は、例えば計測位置及び衝撃位置の少なくとも何れかを、評価対象情報の一部として取得してもよい。この場合、各位置の情報を補助パラメータとした評価を実施することができ、さらなる精度向上を図ることが可能となる。
【0112】
例えば参照情報が形状情報を含む場合、出力部13は、形状情報のうち、評価対象情報に紐づく形状情報(例えば第1形状情報)を含ませた評価結果を生成する。このため、建造物9の内部状態を定量的に評価することができる。
【0113】
出力部13は、例えば評価データと、基準評価データとを比較した結果を含む評価結果を出力する。出力部13は、例えば図11(a)に示すように、ピアソンの積率相関係数を用いて、基準評価データに対する各対象評価データ(図11(a)では第1評価データ~第5評価データ)の比較結果を算出し、評価結果に含ませて出力する。出力部13は、例えば比較結果に基づき、色分け、「健全」、「欠陥の可能性大」等の分類結果を評価結果に含ませて出力してもよい。
【0114】
出力部13は、例えば画像情報における衝撃データの計測位置、及び画像情報における建造物9に衝撃を与えた衝撃位置の少なくとも何れかの位置に紐づけられた評価結果を出力する。出力部13は、例えば図11(b)に示すように、衝撃位置(例えば位置ref、位置s1~s5)や、衝撃位置(例えば位置int)をプロットした画像情報を、評価結果に含ませて出力する。出力部13は、例えば画像における各位置(位置ref、位置s1~s5、位置int)に対応するX-Y座標等の数値を、評価結果に含ませて出力してもよい。
【0115】
本実施形態によれば、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0116】
また、本実施形態によれば、取得部11は、衝撃データに基づく第2データを含む評価対象情報を取得する。このため、評価に最低限必要なパラメータとして、計測位置等を含める必要がない。これにより、計測者毎の測定バラつきに伴う精度低下を防ぐことが可能となる。
【0117】
また、本実施形態によれば、取得部11は、第1データと、レーザー検出器2により計測された衝撃データに基づく第2データと、を含む評価対象情報を取得する。このため、建造物9全体の健全性と、建造物9の一部における状態との組合せを含む評価結果を得ることができる。これにより、建造物9の健全性に影響を与える一部分を容易に特定することが可能となる。
【0118】
また、本実施形態によれば、評価対象情報及び過去の評価対象情報は、衝撃データを計測するために、建造物9の一部に対して衝撃を与えた方法に関する打音情報を含む。このため、建造物9の一部に対して衝撃を与える様々な打音方法毎に、最適な評価データを生成することができる。これにより、得られる評価結果の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0119】
また、本実施形態によれば、評価結果は、評価対象情報に紐づく第1形状情報を含む。このため、建造物9の内部状態を定量的に評価することができる。これにより、計測者毎の主観を排除した評価結果を得ることが可能となる。
【0120】
また、本実施形態によれば、例えば出力部13は、評価データと、基準評価データとを比較した結果を含む評価結果を出力してもよい。この場合、建造物9の設置環境や計測環境等の各種条件を踏まえた評価結果を出力することができる。これにより、各種条件に伴う信号パターンのバラつきを抑制することが可能となる。
【0121】
また、本実施形態によれば、例えば出力部13は、計測位置及び衝撃位置の少なくとも何れかに紐づけられた評価結果を出力してもよい。このため、経時変化を評価する場合等において、以前の計測条件等を容易に把握することができる。これにより、評価結果を踏まえた計測や分析等を容易に実施することが可能となる。
【0122】
なお、上述した振動評価装置1、及び振動評価システム100は、例えば計装配管、ガスタンク、飛行機、船、塀、壁、水道管、及びガス管等を対象(建造物9)として、建造物9の状態を評価することができる。このため、従来では評価が難しい、又は精度の向上が難しい等の事情がある建造物9においても、高精度な評価結果を得ることが可能となる。
【0123】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1 :振動評価装置
10 :筐体
11 :取得部
12 :生成部
13 :出力部
14 :記憶部
15 :制御部
16 :更新部
101 :CPU
102 :ROM
103 :RAM
104 :保存部
105 :I/F
106 :I/F
107 :I/F
108 :入力部分
109 :出力部分
110 :内部バス
2 :レーザー検出器
3 :衝撃発生装置
4 :通信網
5 :端末
6 :サーバ
7 :撮像装置
9 :建造物
100 :振動評価システム
S110 :取得手段
S120 :生成手段
S130 :出力手段
S140 :更新手段
図1
図2
図3
図4
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図11