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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】締付工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/144 20060101AFI20240613BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B25B23/144
B25B23/14 620J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020084001
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021178376
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】大河 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】フレンクラー フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】河邊 旬司
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3148985(JP,U)
【文献】特開2008-203264(JP,A)
【文献】特開2014-037033(JP,A)
【文献】特開2006-289535(JP,A)
【文献】特開2001-260044(JP,A)
【文献】特開平10-006234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B23/00-23/18
B25F1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に締付対象と係合されるヘッドが設けられ、手元側に設けられた手元側ケーシングに当該ヘッドに係合された締付対象の締付トルク値を表示するディスプレイが設置された締付工具であって、
前記ヘッドが先端に接続され、前記手元側ケーシングが手元側に固定された柄部と、
前記締付トルク値とその目標値との差に応じて発光態様が変化する発光部と、
前記手元側ケーシングと別体であって、前記柄部の前記ヘッドと前記手元側ケーシングとの間に固定されているヘッド側ケーシングとを備え、
前記手元側ケーシングと前記ヘッド側ケーシングとが、互いに離間させて設置されており、
前記発光部が、前記ヘッド側ケーシングに設置されていることを特徴とする締付工具。
【請求項2】
前記ヘッドに締付対象を係合させた状態で、前記発光部が、前記ディスプレイよりも前記締付対象の回転軸寄りに配置されている請求項1記載の締付工具。
【請求項3】
前記発光部が、前記ヘッド側ケーシングの先端部に設置されている請求項1又は2のいずれかに記載の締付工具。
【請求項4】
前記発光部が、前記ヘッドと同時に視認可能な位置に配置されている請求項1乃至3のいずれかに記載の締付工具。
【請求項5】
前記ヘッド側ケーシングが、筒状のものであり、
前記発光部が、前記ヘッド側ケーシングの外周面に互いに異なる方向を向く複数の発光面を備えている請求項1乃至4のいずれかに記載の締付工具。
【請求項6】
前記ヘッド側ケーシングが、筒状のものであり、
前記発光部が、前記ヘッド側ケーシングの外周面の全周に亘って設けられた環状の発光面を備えている請求項1乃至4のいずれかに記載の締付工具。
【請求項7】
前記ヘッド側ケーシングが、前記手元側ケーシングよりも細くなっている請求項1乃至6のいずれかに記載の締付工具。
【請求項8】
前記手元側ケーシングと前記ヘッド側ケーシングとが、互いの外周面が連続するように構成されている請求項1乃至7のいずれかに記載の締付工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
締付工具として、特許文献1には、手元側に設けられたケーシングに締付対象の締付トルク値を表示するディスプレイを設置した所謂デジタル式のトルクレンチであって、当該ケーシングに、さらに締付トルク値とその目標値との関係に応じて点灯間隔が変化するLEDを設置したものが開示されている。当該トルクレンチによれば、作業者は、LEDの点灯間隔の変化を確認することにより、直観的に締付作業を行うことができる。
【0003】
しかしながら、前記トルクレンチでは、LEDが手元側に設置されていることから、LEDと締付対象とが離れて配置され、作業者が、締付作業中に締付対象を注視していると、LEDの点灯間隔の変化を見落とし、締付ミスをするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-260044号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、締付作業中に作業者が発光部の発光態様の変化を見落とし難く、締付ミスを抑制できる締付工具を得ることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る締付工具は、先端側に締付対象と係合されるヘッドが設けられ、手元側に設けられた手元側ケーシングに当該ヘッドに係合された締付対象の締付トルク値を表示するディスプレイが設置された締付工具であって、前記締付トルク値とその目標値との差に応じて発光態様が変化する発光部と、前記ヘッドと前記手元側ケーシングとの間に設けられたヘッド側ケーシングとを備え、前記発光部が、前記ヘッド側ケーシングに設置されていることを特徴とするものである。
【0007】
このような構成であれば、発光部を手元側ケーシングよりもヘッド側に設けられたヘッド側ケーシングに設置したので、発光部が手元側ケーシングに設置した場合に比べてヘッドの近くに配置され、締付作業中に作業者がヘッドに係合された締付対象を注視していても、発光部やその発光部から射出される光を視界に捉え易くなり、発光部の発光態様の変化を見落とし難くなり、締付ミスを抑制できる。
【0008】
また、本発明の具体的な実施態様としては、前記ヘッドに締付対象を係合させた状態で、前記発光部が、前記ディスプレイよりも前記締付対象の回転軸寄りに配置されているものである。
【0009】
また、前記発光部が、前記ヘッド側ケーシングの先端部に設置されているものであってもよい。
【0010】
このような構成によれば、発光部がヘッドのより近くに配置され、発光部の発光態様の変化を見落とし難くなる。
【0011】
また、前記発光部が、前記ヘッドと同時に視認可能な位置に配置されているものであってもよい。
【0012】
このような構成であれば、締付作業中の作業者がヘッドと同時に発光部を視認できるので、発光部の発光態様の変化を見落とし難くなる。
【0013】
また、前記ヘッド側ケーシングが、筒状のものであり、前記発光部が、前記ヘッド側ケーシングの外周面に互いに異なる方向を向く複数の発光面を備えているものであってもよい。
【0014】
このような構成によれば、締付作業中の作業者がヘッド側ケーシングの外周面を見た場合に、いずれかの発光面を視界に捉え易くなり、発光部の発光態様の変化を見落とし難くなる。
【0015】
また、前記ヘッド側ケーシングが、筒状のものであり、前記発光部が、前記ヘッド側ケーシングの外周面の全周に亘って設けられた環状の発光面を備えているものであってもよい。
【0016】
このような構成によれば、締付作業中の作業者がヘッド側ケーシングの外周面をどの方向から見ても、発光面を視界に捉えることができ、発光部の発光態様の変化を見落とし難くなる。
【0017】
また、前記ヘッド側ケーシングが、前記手元側ケーシングよりも細くなっているものであってもよい。
【0018】
このような構成によれば、ヘッド側ケーシングを手元側ケーシングよりも細くしたので、締付工具のヘッド側が細くなり、例えば、スペースが狭い場所に配置された締付対象を締め付ける場合に、そのスペースにヘッドを挿し込んだとしても、ヘッド側の周囲に形成される隙間が大きくなり、その隙間を介して発光部を確認し易くなる。
【0019】
また、前記手元側ケーシングと前記ヘッド側ケーシングとが、互いに離間させて設置されているものであってもよい。
【0020】
このような構成によれば、発光部をヘッドのより近くに配置でき、発光部の発光態様の変化を見落とし難くなる。
【0021】
また、前記ヘッド側ケーシングと前記手元側ケーシングとが、互いの外周面が連続するように構成されているものであってもよい。
【0022】
このような構成によれば、ヘッド側ケーシングと手元側ケーシングとの互いの外周面が連続しているので、連続する外周面にヘッド側を向く段差が形成されなくなる。これにより、締付作業時の作業者が、手元側から発光部を見た場合に、発光部が当該段差の陰に隠れることがなくなり、発光部の発光態様の変化を見落とし難くなる。
【発明の効果】
【0023】
このように構成した締付工具によれば、発光部が手元側ケーシングに設置した場合に比べてヘッドの近くに配置されるので、締付作業中に作業者が発光部の発光態様の変化を見落とし難くなり、締付ミスが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態に係るトルクレンチを模式的に示す斜視図である。
図2】第1の実施形態に係るトルクレンチを模式的に示す斜視図である。
図3】第1の実施形態に係るトルクレンチを模式的に示す平面図である。
図4】第1の実施形態に係るトルクレンチを模式的に示す断面図である。
図5】第1の実施形態に係るトルクレンチの制御部の機能を示すブロック図である。
図6】他の実施形態に係るトルクレンチを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る締付工具を図面に基づいて説明する。
【0026】
本発明に係る締付工具は、締付対象(例えば、ネジ、ボルト、ナット等)の締付トルク値を表示するディスプレイを備えた所謂デジタル式のものである。締付工具は、具体的には、トルクレンチ、トルクドライバー等である。以下、トルクレンチを例示して説明する。
【0027】
<第1の実施形態> 本実施形態に係るトルクレンチ100は、図1乃至図4に示すように、締付対象と係合されるヘッド10と、ヘッド10から延伸する柄部20と、締付対象の締付トルク値を検出するトルクセンサ30と、柄部20に設けられた手元側ケーシング40及びヘッド側ケーシング50と、手元側ケーシング40に設置されたディスプレイD及び入力部Iと、ヘッド側ケーシング50に設けられた発光部Lと、ディスプレイDや発光部L等を制御する制御部Cと、を備えている。
【0028】
前記ヘッド10は、先端側に設けられたものである。ヘッド10は、締付対象と直接的又は間接的に係合されるものである。本実施形態のヘッド10は、締付対象とソケット(図示せず)を介して係合されるものである。具体的には、図4に示すように、ヘッド10は、ソケットが着脱可能に取り付けられる角ドライブ11と、角ドライブ11の回転方向を一方向へ制限するラチェット機構12と、ラチェット機構12を収容する筐体13と、を備えている。なお、ヘッド10は、このような構成に限定されず、例えば、締付対象と直接的に係合できるように、スパナやメガネレンチ等の先端形状に形成されたものであってもよい。
【0029】
前記柄部20は、長尺状のものであり、その先端にヘッド10が接続されている。具体的には、柄部20は、手元側に形成された把持部21と、把持部21とヘッド10との間に介在するシャフト部22と、を有している。なお、シャフト部22には、その先端部に接続機構23が設けられており、この接続機構23を介して柄部20にヘッド10が着脱可能に接続されている。
【0030】
前記トルクセンサ30は、ヘッド10に係合された締付対象Tの締付トルク値を検出するものである。本実施形態のトルクセンサ30は、所謂歪みゲージ式のものである。具体的には、トルクセンサ30は、柄部20のシャフト部22に貼り付けられた歪みゲージGを備え、締付作業中に生じる歪みゲージGの歪み量に基づき締付トルク値を検出するものである。
【0031】
前記手元側ケーシング40と前記ヘッド側ケーシング50とは、いずれも筒状のものである。そして、手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50とは、いずれも手元側からヘッド10側へ向かって細くなるテーパー状の外周面42,52を有し、断面円形状になっている。また、手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50とは、手元側の基端とその反対側の先端とに互いに対向する一対の端面41,51を有しており、その両端面41,51に形成された貫通孔41h,51hに通されたシャフト部22に固定されている。これにより、トルクレンチ100には、手元側ケーシング40の内周面とシャフト部22との間に第1収容空間S1が形成され、ヘッド側ケーシング50の内周面とシャフト部22との間に第2収容空間S2が形成される。なお、手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50とは、合成樹脂等で形成されている。
【0032】
前記手元側ケーシング40は、具体的には、柄部20の手元側に固定されている。より具体的には、手元側ケーシング40は、柄部20のシャフト部22に固定されている。
【0033】
前記ヘッド側ケーシング50は、具体的には、柄部20のヘッド10と手元側ケーシング40との間に固定されている。すなわち、ヘッド側ケーシング50は、柄部20の手元側ケーシング40よりもヘッド10側(先端側)に固定されている。
【0034】
より具体的には、前記手元側ケーシング40は、把持部21と隣接するように柄部20のシャフト部22に固定されており、前記ヘッド側ケーシング50は、手元側ケーシング40と隣接するように柄部20のシャフト部22に固定されている。よって、手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50は、把持部21からヘッド10側に向かって柄部20の軸方向に沿って直列に並んでいる。そして、手元側ケーシング40の先端面41aとヘッド側ケーシング50の基端面51bとは、互いに同径に形成されている。これにより、手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50とは、それぞれの外周面42,52が互いに連続するようになっている。すなわち、手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50とは、互いの外周面42,52が段差なく連続するように構成されている。
【0035】
また、前記手元側ケーシング40の外周面42と前記ヘッド側ケーシング50の外周面52とは、いずれも手元側からヘッド10側に向かって先細りになっており、柄部20の軸方向に対する傾斜角度が同じ角度になっている。よって、手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50は、全体で見ると手元側からヘッド10側へ向かって細くなった円錐台状になっている。
【0036】
前記ディスプレイDは、手元側ケーシング40の外周面42に沿って設置されている。具体的には、ディスプレイDは、トルクレンチ100で締付対象を締め付けた場合に、その締付対象が進む方向と反対方向を向くように設置されている。本実施形態では、ディスプレイDは、角ドライブ11の延伸方向と反対方向を向くように設置されている。なお、ディスプレイDに接続される基板や配線等の電子部品は、第1収容空間S1に収容されている。
【0037】
前記入力部Iは、具体的にはスイッチ(ボタン)である。そして、入力部Iは、手元側ケーシング40の外周面42に沿って設置されている。なお、入力部Iに接続される基板は、第1収容空間S1に収容されている。
【0038】
前記発光部Lは、ヘッド側ケーシング50に設置されている。具体的には、ヘッド側ケーシング50のヘッド10側の先端部53に設置されている。そして、発光部Lは、図3に示すように、ヘッド10に締付対象を係合させた状態で、柄部20におけるディスプレイDよりも当該締付対象の回転軸R寄りに配置されている。よって、発光部Lは、図3に示すように、ディスプレイDとの距離d2に比べて締付対象の回転軸Rとの距離d1が小さくなるように配置されている。具体的には、発光部Lは、ディスプレイDのヘッド側(先端側)の一端と発光部L(具体的には、発光部Lのヘッド10側の一端)との距離d2に比べて、締付対象の回転軸Rと発光部L(具体的には、発光部Lのヘッド10側の一端)との距離d1が小さくなるように配置されている。これにより、発光部Lは、締付対象の回転軸RとディスプレイDとの間の中間位置よりもヘッド10側に配置される。なお、発光部Lを構成する電子部品は、第2収容空間S2内に収容されている。
【0039】
前記発光部Lの具体的な構成を説明する。前記発光部Lは、ヘッド側ケーシング50の外周面52に設けられた発光面L1と、発光面L1を介してヘッド側ケーシング50の外方へ光を射出する発光体L2と、を備えている。
【0040】
前記発光面L1は、ヘッド側ケーシング50の外周面52の全周に亘って設けられた円環状(リング状)のものである。そして、発光面L1は、ヘッド側ケーシング50の外周面52と面一になるように設けられている。
【0041】
前記発光体L2は、例えばLEDであり、ヘッド側ケーシング50の第2収容空間S2に発光面L1と対向するように設置されており、発光面L1に沿って複数等間隔に設置されている。また、発光体L2は、複数のLEDによって構成されたものに限定されず、例えば、発光面L1に沿って配置される光ファイバー等の導光体と、その導光体に光を射出するLEDと、によって構成してもよい。
【0042】
前記制御部Cは、例えば、CPU、内部メモリ、AD変換器、入出力インバータ等を有する専用又は汎用のコンピュータから構成される。そして、制御部Cは、図5に示すように、内部メモリに記憶されたプログラムによって、表示制御部C1、目標関連値記憶部C2、発光制御部C3等としての機能を発揮するように構成されている。
【0043】
前記表示制御部C1は、トルクセンサ30で検出された締付トルク値をディスプレイDに表示するものである。具体的には、表示制御部C1は、例えば、締付作業中に変化する締付トルク値を随時更新してそのピーク値をディスプレイDに表示するものである。よって、ディスプレイDは、表示制御部C1から受信した締付トルク値を示す信号に基づき数値を表示するようになっている。
【0044】
前記目標関連値記憶部C2は、締付対象毎に設定されている締付トルク値の目標値及び締付トルク値の許容範囲を記憶するものである。ここで、締付トルク値の許容範囲とは、締付トルク値として許容可能な目標値を含む範囲であり、目標値よりも小さい下限値と目標値よりも大きい上限値とを有する範囲である。なお、目標値及び許容範囲は、入力部Iから入力できるようになっている。
【0045】
前記発光制御部C3は、トルクセンサ30で検出された締付トルク値と目標関連値記憶部C2に記憶された目標値とを比較して発光部Lの発光態様を変化させるものである。よって、前記発光部Lは、発光制御部C3から受信した発光態様を示す信号に基づき発光態様が変化するようになっている。
【0046】
前記発光制御部C3は、例えば、締付トルク値が目標値又は目標値範囲(締付対象の締付トルク値として許容可能な範囲)に近づくに従って発光体L2の発光色を段階的に変化させるようになっている。具体的には、発光制御部C3は、締付トルク値が目標値範囲の下限値未満であって当該下限値よりも小さい値に設定された予告開始値以上の範囲である予告範囲に達した場合と、締付トルク値が目標値範囲に達した場合とで、それぞれ発光体L2の発光色を変化させる。より具体的には、発光制御部C3は、締付トルク値が予告範囲に入ると、発光体L2を注視色なる黄色に発光させ、締付トルク値が目標値範囲に入ると、発光体L2を安全色となる緑色(青色)に発光させる。なお、発光制御部C3は、締付トルク値が目標値範囲を超えると、発光体L2を警告色となる赤色に発光させるようにしてもよい。
【0047】
本実施形態のトルクレンチ100を使用する場合には、作業者は、ヘッド10を締付対象に係合させた後、ヘッド10の近くに配置された発光部Lの発光色を確認しながら把持部21に力を加え、発光部Lの発光色が緑色に変化すると、把持部21に加える力を緩める。その後、作業者は、締付作業後にディスプレイDに表示された数値を確認し、その数値が目標値範囲に収まっているか否かを判定する。なお、作業者は、締付作業後のディスプレイDに表示された数値が目標値範囲に収まっていない場合には、締付ミスと判定して再度締め直す。
【0048】
このような構成によれば、発光部を手元側ケーシング40よりもヘッド10側に設けられたヘッド側ケーシング50に設置したので、発光部Lがヘッド10の近くに配置され、締付作業中に作業者がヘッド10に係合された締付対象を注視していても、発光部Lやその発光部Lから射出される光を視界に捉え易くなり、発光部Lの発光態様の変化を見落とし難くなり、締付ミスが抑制される。また、ヘッド側ケーシング50を手元側ケーシング40よりも細くしたので、スペースの狭い場所に配置された締付対象を締め付ける場合であっても、発光部Lが見易くなる。また、手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50とが、連続する外周面42,52を有するため、その外周面42,52にヘッド10側を向く段差が形成されなくなり、発光部Lの発光態様の変化を見落とし難くなる。また、手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50とを別部材にすることにより、例えば、シャフト部22の長さを変更してレンジ(メーカーが推奨するレンジ)の異なるトルクレンチ100を複数ラインナップしたい場合に、手元側ケーシング40を共通化でき、製造コストを低減できる。また、手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50とが、共に手元側からそのヘッド側へ向かって傾斜したテーパー状の外周面42,52を有しているため、平坦な面に載置した場合に、把持部21が終端側に向かって上方へ傾斜した状態となり、平坦な面と把持部21との間に隙間ができて把持部21を握り易くなる。
【0049】
<その他の実施形態> 前記発光部は、ヘッド側ケーシングに設置され、ヘッドと同時に視認可能な位置に配置されるものであってもよい。具体的には、発光部は、締付作業を行う作業者が、ヘッドと同時に視認可能な位置に配置されるものであってもよい。また、前記発光部は、ヘッド側ケーシングに設置され、ヘッド近傍に配置されるものであってもよい。また、発光部は、ヘッド側ケーシングの先端部に設置されるものに限定されず、例えば、ヘッド側ケーシングの中間部又は基端部(手元側)に設置されるものであってもよい。
【0050】
前記発光部は、ヘッド側ケーシングの外周面に、柄部の軸方向と直交する方向であって所定方向を向く1つの発光面L1を有するものであってもよい。この場合、一つの発光面は、例えば、締付作業時に作業者の目の届き易いようディスプレイと同様に、トルクレンチで締付対象を締め付けた場合に、その締付対象が進む方向と反対方向を向くように設置すればよい。
【0051】
前記発光部は、ヘッド側ケーシングの外周面に互いに異なる方向を向く複数の発光面を備えるものであってもよい。この場合、例えば、複数の発光面を、外周面の周方向に等間隔に配置すればよい。
【0052】
前記発光面は、ヘッド側ケーシングの外周面から僅かに突出するように設けてもよく、当該外周面から僅かに窪むように設けてもよい。
【0053】
前記発光制御部は、締付トルク値が目標値又は目標値範囲に近づくに従って発光体の点灯間隔を変化させるものであってもよい。具体的には、発光制御部は、締付トルク値が目標値又は目標値範囲に近づくに従って点灯間隔が短くなるように変化させるものであってもよい。より具体的には、発光制御部は、締付トルク値が予告範囲に達した場合と、締付トルク値が目標値範囲に達した場合とで、それぞれ発光体の点灯間隔を変化させるものであってもよい。例えば、発光制御部が、締付トルク値が予告範囲に入ると、発光体を点滅させ、締付トルク値が目標値範囲に入ると、発光体を連続点灯させるようにすればよい。また、発光制御部は、発光体の発光色と点灯間隔とを複合して変化させるものであってもよい。また、発光制御部は、締付トルク値が目標値又は目標値範囲に近づくに従って発光体の光量を変化させるものでもよい。また、発光制御部は、発光体や発光面を複数備えている場合、締付トルク値が目標値又は目標値範囲に近づくに従って発光体や発光面の点灯数を増やし、発光部の発光面積を変化させるものであってもよい。なお、発光制御部は、発光体のその他の発光態様を変化させるものであってもよい。また、発光制御部は、目標値範囲の下限値と締付トルク値との差や、目標値範囲の下限値に対する締付トルク値の割合や比率等によって予告範囲や目標値範囲を設定したものであってもよい。
【0054】
前記第1の実施形態に係るトルクレンチでは、締付対象の締付度合いを発光部の発光態様の変化によって作業者に報知しているが、さらに振動機構の振動によって作業者に報知してもよい。この場合、前記発光部の発光態様の変化による報知に加えて、振動機構が、さらに締付トルク値が目標値に到達する前に振動して報知するように構成すればよい。
【0055】
前記手元側ケーシングと前記ヘッド側ケーシングとのその他の実施形態としては、図6に示すような実施態様が挙げられる。図6(a)に示す手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50とは、いずれも円筒状をなすものである。そして、ヘッド側ケーシング50が、手元側ケーシング40よりも細くなっている。すなわち、ヘッド側ケーシング50の径が手元側ケーシング40の径よりも小さくなっている。
【0056】
また、図6(b)に示す手元側ケーシング40とヘッド側ケーシング50とは、いずれも筒状をなするものであり、テーパー状の外周面42,52を有している。そして、ヘッド側ケーシング50の外周面52の柄部20の軸方向に対する傾斜角度が、手元側ケーシング40の外周面42の柄部20の軸方向に対する傾斜角度よりも大きくなっている。
【0057】
前記手元側ケーシングと前記ヘッド側ケーシングは、外周面の形状が互いに異なる形状になっていてもよい。例えば、手元側ケーシングの外周面が筒状をなし、ヘッド側ケーシングの外周面がテーパー状をなすものであってもよい。また、その他の外周面形状を有するものであってもよい。
【0058】
前記手元側ケーシング又は前記ヘッド側ケーシングのいずれか一方又は双方が、断面非円形状のものであってもよく、例えば、断面多角形状、断面楕円形状等のものであってもよい。また、手元側ケーシングとヘッド側ケーシングとは、断面の形状が互いに異なるものであってもよい。この場合、締付工具を平坦な面に載置した場合に、転がり難くなり、例えば、作業台の載置面から落下し難くなる。
【0059】
前記手元側ケーシング40と前記ヘッド側ケーシング50とは、図6(c)に示すように、互いに離間して配置されているものであってもよい。この場合、ヘッド側ケーシング50は、柄部20の先端部に設置すればよい。また、手元側ケーシングとヘッド側ケーシングとの間に別のケーシングが介在するものであってもよい。
【0060】
前記手元側ケーシングと前記ヘッド側ケーシングとは、一体に形成された一つのケーシングであってもよい。このようなケーシングにおいては、手元側ケーシングを、一つのケーシングの手元側の部分によって構成し、ヘッド側ケーシングを、一つのケーシングのヘッド側(先端側)の部分によって構成すればよい。また、この場合、発光部は、ディスプレイよりもケーシングの先端側に設置すればよい。具体的には、発光部は、ディスプレイのヘッド側(先端側)の一端と発光部(具体的には、発光部のヘッド側の一端)との距離に比べて、ケーシングのヘッド側(先端側)の一端と発光部(具体的には、発光部のヘッド側の一端)との距離が小さくなるように設置すればよい。
【0061】
前記第1の実施形態では、前記手元側ケーシング及び前記ヘッド側ケーシングを柄部と別部材によって構成したが、前記手元側ケーシング又はヘッド側ケーシングのいずれか一方又は双方を、柄部の一部によって構成してもよい。この場合、例えば、手元側ケーシングを、柄部の手元側の部分によって構成し、ヘッド側ケーシングを、柄部のヘッド側の部分によって構成すればよい。
【0062】
前記第1の実施形態では、把持部と手元側ケーシングとを別部材によって構成したが、例えば、手元側ケーシングの手元側を把持部としてもよい。
【0063】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
100 トルクレンチ
10 ヘッド
20 柄部
21 把持部
22 シャフト部
30 トルクセンサ
40 手元側ケーシング
41 端面
42 外周面
50 ヘッド側ケーシング
51 端面
52 外周面
53 先端部
D ディスプレイ
L 発光部
L1 発光面

図1
図2
図3
図4
図5
図6