(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】スピンドル圧入式ロアアジャスター、及びそれを用いたダンパユニットの改造方法
(51)【国際特許分類】
B60G 3/28 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
B60G3/28
(21)【出願番号】P 2020103217
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520214547
【氏名又は名称】合同会社ニューフィールド
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 周一
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-143886(JP,A)
【文献】特開2001-280397(JP,A)
【文献】特開平11-257410(JP,A)
【文献】実開昭56-084409(JP,U)
【文献】米国特許第06827184(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第109654155(CN,A)
【文献】特開2019-206273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が取付けられるスピンドルを設けた既存のダンパユニットのストラットパイプにフルタップ車高調整器を装着するためのスピンドル圧入式ロアアジャスターであって、
上下に伸延する円筒の上部にフルタップ車高調整器を上下調整可能に螺着するためのネジ部を形成するとともに、円筒の下部に既存のストラットパイプを切断したスピンドル側を圧入するためのテーパー部を形成したことを特徴とするスピンドル圧入式ロアアジャスター。
【請求項2】
前記テーパー部に螺旋状のローレットを形成したことを特徴とする請求項1に記載のスピンドル圧入式ロアアジャスター。
【請求項3】
車輪が取付けられるスピンドルを設けた既存のダンパユニットのストラットパイプを切断し、スピンドル側のストラットパイプを、上下に伸延する円筒状のスピンドル圧入式ロアアジャスターの下部に形成したテーパー部
に圧入し、スピンドル側とは反対側のストラットパイプに替えてフルタップ車高調整器を、スピンドル圧入式ロアアジャスターの上部に形成したネジ部に上下調整して螺着することを特徴とするダンパユニットの改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪が取付けられるスピンドルを設けた既存のダンパユニットのストラットパイプにフルタップ車高調整器を装着するためのスピンドル圧入式ロアアジャスター、及びそれを用いた既存のダンパユニットの改造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のストラット式のダンパユニットは、ストラットパイプの下部に車輪が取付けられるスピンドルを設けるとともに、ストラットパイプの上部にスプリングが設けられている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来のストラット式のダンパユニットでは、スプリングのバネ長を調整することで、車高の調整をする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来のストラット式のダンパユニットでは、車高調整のためにスプリングのバネ長を調整してしまうと、スプリングのバネ係数が変わってしまい、車両の乗り心地を損ねてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1に係る本発明では、車輪が取付けられるスピンドルを設けた既存のダンパユニットのストラットパイプにフルタップ車高調整器を装着するためのスピンドル圧入式ロアアジャスターにおいて、上下に伸延する円筒の上部にフルタップ車高調整器を上下調整可能に螺着するためのネジ部を形成するとともに、円筒の下部に既存のストラットパイプを切断したスピンドル側を圧入するためのテーパー部を形成することにした。
【0007】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記テーパー部に螺旋状のローレットを形成することにした。
【0008】
また、請求項3に係る本発明では、ダンパユニットの改造方法において、車輪が取付けられるスピンドルを設けた既存のダンパユニットのストラットパイプを切断し、スピンドル側のストラットパイプを、上下に伸延する円筒状のスピンドル圧入式ロアアジャスターの下部に形成したテーパー部に圧入し、スピンドル側とは反対側のストラットパイプに替えてフルタップ車高調整器を、スピンドル圧入式ロアアジャスターの上部に形成したネジ部に上下調整して螺着することにした。
【発明の効果】
【0009】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0010】
すなわち、本発明では、車輪が取付けられるスピンドルを設けた既存のダンパユニットのストラットパイプにフルタップ車高調整器を装着するためのスピンドル圧入式ロアアジャスターにおいて、上下に伸延する円筒の上部にフルタップ車高調整器を上下調整可能に螺着するためのネジ部を形成するとともに、円筒の下部に既存のストラットパイプを切断したスピンドル側を圧入するためのテーパー部を形成しているために、既存のダンパユニットのスプリングのバネ長を調整することなく車高調整することができるので、車両の乗り心地を損なうことなく既存のダンパユニットを車高調整可能に容易に改造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】スピンドル圧入式ロアアジャスターを取付けたダンパユニットを示す正面図。
【
図2】スピンドル圧入式ロアアジャスターの正面断面図(a)、平面図(b)、底面図(c)。
【
図3】スピンドル圧入式ロアアジャスターを用いた既存のダンパユニットの改造方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るスピンドル圧入式ロアアジャスター及びそれを用いたダンパユニットの改造方法の具体的な構成について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1に示すように、スピンドル圧入式ロアアジャスター1は、車輪が取付けられるスピンドルを設けた既存のダンパユニット2の下部とフルタップ車高調整器3との間に取付けられるものである。
【0014】
スピンドル圧入式ロアアジャスター1は、
図2に示すように、上下に伸延する中空状の円筒4の上部内周にネジ部5を形成し、円筒4の下部内周にテーパー部6を形成している。
【0015】
ネジ部5には、既成のフルタップ車高調整器3の下部外周に形成された雄ネジが螺着される雌ネジが形成されている。
【0016】
テーパー部6には、下端開口から上方へ向けて内径を漸次縮径させたテーパーが形成されている。また、テーパー部6には、表面に螺旋状の凹凸からなるローレットが形成されている。なお、テーパー部6は、一つのテーパを形成した場合に限られず、上下に複数段のテーパーを形成してもよい。また、テーパー部6の上端の内径(最小内径)をネジ部5のネジ山の内径(最小内径)よりも小さくした場合には、フルタップ車高調整器3をネジ部5に螺着する際のストッパとして機能させることができる。
【0017】
スピンドル圧入式ロアアジャスター1は、以上のように構成しており、これを用いて既存のダンパユニット2を車高調整可能に改造するには、次のような作業を行う。
【0018】
まず、
図3(a)に示す既存のダンパユニット2のストラットパイプ7を下端から所定長さの位置で水平に切断する(
図3(b))。
【0019】
次に、切断した既存のダンパユニット2のストラットパイプ7(スピンドル側)をプレス機を用いてスピンドル圧入式ロアアジャスター1のテーパー部6に所定の圧力で圧入する(
図3(c))。
【0020】
これにより、既存のダンパユニット2のストラットパイプ7にスピンドル圧入式ロアアジャスター1が強固に固定される(
図3(d))。
【0021】
次に、切断した既存のダンパユニット2(スピンドル側とは反対側)に替えて既成のフルタップ車高調整器3の下部(タップ)をスピンドル圧入式ロアアジャスター1のネジ部5に螺着する(
図3(e))。
【0022】
その際に、フルタップ車高調整器3のネジ部5への螺着量(上下挿入量)を調整することで車高を調整することができる。
【0023】
最後に、フルタップ車高調整器3のロックナット8を締め付けて、スピンドル圧入式ロアアジャスター1のネジ部5にフルタップ車高調整器3を強固に固定する(
図3(f))。
【0024】
これにより、フルタップ車高調整器3のスプリング9のバネ長を変更することなく、スピンドル圧入式ロアアジャスター1へのフルタップ車高調整器3の取付状態だけで、車高の調整を行うことができる。
【0025】
以上に説明したように、本発明では、車輪が取付けられるスピンドルを設けた既存のダンパユニット2のストラットパイプ7にフルタップ車高調整器3を装着するためのスピンドル圧入式ロアアジャスター1において、上下に伸延する円筒4の上部にフルタップ車高調整器3を上下調整可能に螺着するためのネジ部5を形成するとともに、円筒4の下部に既存のストラットパイプ7を切断したスピンドル側を圧入するためのテーパー部6を形成している。
【0026】
そのため、本発明では、溶接等の専門性の高い作業をすることなくフルタップ車高調整器3を装着することができるとともに、既存のダンパユニット2のスプリングのバネ長を調整することなく車高調整することができるようになるので、車両の乗り心地を損なうことなく既存のダンパユニット2を車高調整可能に容易に改造することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 スピンドル圧入式ロアアジャスター 2 ダンパユニット
3 フルタップ車高調整器 4 円筒
5 ネジ部 6 テーパー部
7 ストラットパイプ 8 ロックナット
9 スプリング