(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】核酸に基づく検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240613BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240613BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20240613BHJP
C12Q 1/6834 20180101ALN20240613BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20240613BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALN20240613BHJP
C12Q 1/68 20180101ALN20240613BHJP
【FI】
G01N33/543 501A
G01N33/543 501D
G01N33/543 521
G01N33/53 D ZNA
G01N33/53 M
G01N33/53 Y
G01N33/53 Z
G01N33/569
G01N33/569 G
C12Q1/6834 Z
C12N15/115 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/68
(21)【出願番号】P 2021534832
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 GB2019052361
(87)【国際公開番号】W WO2020039201
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-06-07
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521077048
【氏名又は名称】アプタマー・ダイアグノスティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・クレイグ・トーリー
(72)【発明者】
【氏名】デイビット・ハリー・ジョン・バンカ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/147217(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/038696(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/109500(WO,A1)
【文献】特表2006-524993(JP,A)
【文献】Sheng Gong et al,Immunochromatographic strip biosensor for the rapid detection of N-glycolylneuraminic acid based on aptamer-conjugated nanoparticle,Analytical Biochemistry,2018年07月20日,vol.561-562,52-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
C12Q 1/00~ 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的分子の存在、非存在又はレベルを検出するための装置であって、
a)i)支持体;及び
ii)固定化オリゴヌクレオチド;及び
iii)標的分子と複合体を形成するように構成されている、標的分子に結合親和性を有する核酸分子
を含む第1の領域であって、
固定化オリゴヌクレオチドは、支持体に直接的又は間接的に付着し、更に、固定化オリゴヌクレオチドは、核酸分子の核酸配列に少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含み、核酸分子は、固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、更に標的分子が試料中に存在する場合、立体構造の変化を経ることにより、核酸分子を固定化オリゴヌクレオチドとの複合体から解離させることができる、第1の領域を含み、更に:
b)i)支持体;及び
ii)支持体に直接的又は間接的に付着した捕捉オリゴヌクレオチド
を含む更なる領域であって、
捕捉オリゴヌクレオチドが、核酸分子の核酸配列に少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含み、ここで、捕捉オリゴヌクレオチドは、標的分子との複合体にある場合での核酸分子の核酸配列にハイブリダイズして核酸分子-標的分子複合体を捕捉し、それによって標的分子の存在又はレベルを検出することができるように構成されている、更なる領域を含む、装置。
【請求項2】
装置が:
捕捉オリゴヌクレオチドとの複合体にある場合での核酸分子を検出するための検出手段;又は
ラテラルフローアッセイデバイス、酵素結合オリゴヌクレオチドアッセイ(ELONA)若しくはバイオレイヤー干渉法(BLI);又は
第1の領域と更なる領域との間の流路であって、ニトロセルロース、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、酢酸セルロース(CA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)の各膜又は酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化シリコン(SiO2)及び/若しくは酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む無機膜から選択される膜を含む、流路
を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
核酸分子が:
少なくとも1つの固定核酸配列の領域であって、捕捉オリゴヌクレオチドが、核酸分子の固定核酸配列の領域に相補的である核酸配列を含む、領域;又は
第1の固定核酸配列の領域及び第2の核酸配列の領域であって、第1の固定核酸配列の領域は、核酸分子の5'末端領域に位置し、第2の固定核酸配列の領域は、核酸分子の3'末端領域に位置する、領域
を含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
固定化オリゴヌクレオチドが、リンカー分子を介して支持体に間接的に付着しており、更に、固定化オリゴヌクレオチドは、核酸分子にハイブリダイズするように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
標的分子-核酸分子複合体の再捕獲が検出されて定量化される、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
第1の領域が更なる領域から上流に提供され、及び/又は
第1の領域が、以下:
試料受容領域;又は
試料塗布パッドを含む、試料塗布ゾーン;及び/又は
直接的又は間接的に付着した固定化オリゴヌクレオチドを含む固定化ゾーンを含む支持体であって、固定化ゾーンは、織合わせ繊維又は不織繊維を含み、不
織繊維は、セルロース繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、ポリマー繊維、動物繊維、炭素繊維、鉱物繊維、及び/又はマイクロ繊維から選択される、支持体
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
更なる領域が:
捕捉オリゴヌクレオチドが間接的又は直接的に支持体に付着している捕捉ゾーン
を含み、更なる領域が、複数の捕捉ゾーンを含み、それぞれの捕捉ゾーンは、支持体に直接的又は間接的に付着した捕捉オリゴヌクレオチドを含み、それぞれの捕捉オリゴヌクレオチドは、同一であっても異なっていてもよい、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
装置が:
第1の領域から下流に位置するコントロールゾーンであって、更なる捕捉オリゴヌクレオチドを含むコントロールゾーン;又は
複数のコントロールゾーンであって、それぞれのコントロールゾーンは、捕捉オリゴヌクレオチドを含み、それぞれの捕捉オリゴヌクレオチドは、同一か又は異なり;各コントロールゾーンのそれぞれの捕捉オリゴヌクレオチドが、異なる分子に結合するように構成されている、コントロールゾーン及び/又は
第1の領域及び更なる領域を囲むハウジングであって、試料導入ポートを更に含み、更に、検出ゾーン及びコントロールゾーンに隣接する窓を更に含む、ハウジング
を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
第1の領域及び/又は更なる領域の支持体が、ビーズ、マイクロタイター又は他のアッセイプレート、ストリップ、膜、フィルム、ゲル、チップ、微粒子、ナノ粒子、ナノファイバー、ナノチューブ、ミセル、マイクロポア、ナノポア、及びバイオセンサー表面から独立して選択され、
第1の領域は第1の容器に含まれ、更なる領域は更なる容器に含まれる、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
第1の領域及び更なる領域の固相がストリップ上に含まれ、
ストリップは、第1の領域と更なる領域との間に流路を更に含み、
a)吸光パッド、
b)ニトロセルロース膜;
c)1つ又は複数のコンペティター分子;及び
d)1つ又は複数のコントロール分子
のうちの1つ又は複数を更に含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
装置が:
ストリップの少なくとも1つの端部及び試料を収容するように構成された容器であって、試料導入領域を含む、容
器
を更に含む、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
装置が:
複数の固定化オリゴヌクレオチド、複数の捕捉オリゴヌクレオチド及び複数の核酸分子
を更に含む、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項13】
固定化オリゴヌクレオチド及び/又は捕捉オリゴヌクレオチドが、DNA分子、RNA分子、混合DNA/RNA分子、修飾DNA分子及び修飾RNA分子から選択される;
及び/又は
核酸分子が、アプタマーであり、二本鎖アプタマー、単鎖アプタマー、及びその長さの少なくとも一部にわたって二本鎖であるアプタマーから選択される、請求項9または10に記載の装置。
【請求項14】
核酸分子は検出可能な標識を含み、
検出可能な標識は、フルオロフォア、ナノ粒子、量子ドット、酵素、放射性同位体、予め定義された配列部分、ビオチン、デスチオビオチン、チオール基、アミン基、アジド、アミノアリル基、ジゴキシゲニン、抗体、触媒、コロイド状金属粒子、コロイド状非金属粒子、有機ポリマー、ラテックス粒子、ナノファイバー、ナノチューブ、デンドリマー、タンパク質、及びリポソームから選択され;
前記酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ウレアーゼ及びβ-ガラクトシダーゼから選択される、請求項1から
13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
試料が、全血、白血球、末梢血単核細胞、血漿、血清、痰、呼気、尿、精液、唾液、髄膜液、羊膜液、腺液、リンパ液、乳頭吸引物、気管支吸引物、滑液、関節吸引物、細胞、細胞抽出物、便、組織、組織生検、及び脳脊髄液から選択される生体試料である、又は
試料が、農業製品若しくは工業製品又は副産物、環境試料、水、食品、製造プロセスの試料、動物性産物、植物性産物及び細菌性産物に由来する、請求項1から
14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
試料中の標的分子の存在、非存在又は量を検出する方法であって、
a)試料を、複合体と相互作用させる工程であって、複合体は、
i)固定化オリゴヌクレオチド;及び
ii)核酸分子
を含み、固定化オリゴヌクレオチドは、支持体に直接的又は間接的に付着されており、固定化オリゴヌクレオチドは、核酸分子の核酸配列に少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含み、核酸分子は、固定化オリゴヌクレオチドの一部にハイブリダイズすることができ、
核酸分子は、標的分子への結合親和性を有し、更に、核酸分子は、標的分子と複合体を形成するように構成されている、工程と:
b)標的分子が試料中に存在する場合、核酸分子における立体構造の変化が、固定化オリゴヌクレオチドとの複合体から解離する核酸分子をもたらし、標的分子-核酸分子複合体を形成する工程と;
c)核酸分子の核酸配列に少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含む捕捉オリゴヌクレオチドを用意する工程であって、核酸分子は、捕捉オリゴヌクレオチドの一部にハイブリダイズすることができる、工程と;
d)標的分子の存在又は非存在を検出する工程と
を含む、方法。
【請求項17】
標的分子が試料中に存在する場合、標的分子-核酸分子-捕捉オリゴヌクレオチド複合体を形成する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
試料中の標的分子の量を定量化する工程を更に含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
標的分子の検出が、光子検出、電子検出、音響検出、電気化学検出、電気光学検出、酵素的検出、化学検出、生化学検出又は物理検出を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
工程(a)が、標的分子と核酸分子との間の結合を可能にするのに効果的な条件下で実施される、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
標的分子の存在又は非存在を検出する工程が、核酸分子の捕捉オリゴヌクレオチドへのハイブリッド形成を検出する工程を含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、核酸分子に基づく再捕捉事象の使用を含む、試料中の標的部分を検出及び/又は定量化する装置及び方法に関する。詳細には、限定するものではないが、本発明のある特定の実施形態は、標的-核酸分子を形成するための固定化核酸分子の変位と、標的-核酸分子複合体又はそれ自身上にある核酸分子のいずれかの続いて起こる再捕捉事象の検出とを含む、装置及びアッセイに関する。その他の態様及び実施形態が本明細書に記載されている。
【背景技術】
【0002】
アプタマーとは、単鎖のDNA、RNA、又はポリペプチド分子を含めて、小さい人工リガンドであり、これは、高度の親和性及び特異性を持って目的の特定の標的部分に結合することができる。アプタマーは、診断薬及び/又は治療薬としての使用向けの、抗体の代替とされている。更に、アプタマーは、環境研究及び食品研究、並びに臨床診断の分野での多くの分析応用において抗体に代わるものとしても期待できることが示されてきた。
【0003】
現在、アプタマーは、目的の標的部分に対する親和性ベースの分配によって、候補オリゴヌクレオチドの部分的にランダム化されたライブラリーをスクリーニングする反復プロセスによって得られる。アプタマーは、広範囲のpH及び温度にわたって高度の構造安定性を有し、その結果、このことによって、アプタマーが、薬効範囲の広いin vitro、in vivo、及びex vivoの適用向けの理想的な試薬となっている。
【0004】
1990年に、2つの独立したグループTuerk & Gold、1990(Science 249、505~510)とEllington & Szostak 1990(Nature 346、818~822)によって、高親和性アプタマーを特定するために、進化過程を模倣するin vitro法が開発された。この過程は、in vitro選択と呼ばれる。この過程は、進化の基本概念を活用し、変異、選択、及び複製を活用して、縮重核酸分子(すなわち、オリゴヌクレオチド)の出発プールから高度の標的親和性及び特異性を達成する。典型的には、核酸(DNA又はRNAのオリゴヌクレオチド)アプタマーの選択については、短いオリゴヌクレオチドの縮重ライブラリー(およそ1014程度の異なる配列)を合成することによって、変異が達成され、約20から約100ヌクレオチドのサイズの範囲である。それぞれのオリゴヌクレオチドは、一般に、適切な増幅反応による、例えば、DNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、又は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)と、それに続くRNAのin vitro転写反応による、その後の増幅向けのプライマー領域が隣接する内部ランダム領域を含む。
【0005】
アプタマー選択の現行方法は、核酸分子の標的分子への結合を可能にする条件下で、固定化標的分子とともに核酸プールをインキュベートする工程;それに続いて、広範に洗浄して非結合又は低親和性の配列を除去する工程を含む。結合した核酸分子は、PCR又は他の増幅方法を使用して溶出及び増幅される。次いで、増幅核酸分子は、インビトロ選択の次ラウンド向けの出発材料インプットを形成する。このプロセスは、1つ又は複数の核酸アプタマーが濃縮され、標的分子に強固且つ特異的に結合するまで複数回繰り返される。ランダムライブラリーの調製における及び親和性ベースの分配方法における最近の技術的進歩によって、抗体と同等の親和性を備えるアプタマーがもたらされた。
【0006】
アプタマーは、例えば、無機成分、小有機分子、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物及び細胞といった多様な標的分子に対して作製されてきた。したがって、アプタマーを使用して、所与の試料中の特定の生成物の量を検出し及び定量化することもできる。
【0007】
抗体に勝るアプタマーのいくつかの利点が存在する、これには、例えば、in vitro合成の容易さ、フレキシブルな修飾、広範な標的範囲、再利用性、高度の熱/化学的安定性がある。結果として、いくつのアッセイや検出方法において抗体の代わりにアプタマーが使用されている。一例では、現在、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)などのアッセイにおいて、抗体の代わりにアプタマーが使用されている。抗体の代わりにアプタマーを使用する場合、得られるアッセイは、多くの場合、「ELONA」(酵素結合オリゴヌクレオチドアッセイ)、「ELASA」(酵素結合アプタマー吸着アッセイ)、「ELAA」(酵素結合アプタマーアッセイ)又は同様のものと呼ばれる。これらのELISA系アッセイプラットフォームにアプタマーを組み込むことによって、感度の向上をもたらすことができ、利用可能な抗体がなくアウトプットの範囲がより広い分析物を含めて、より多くの分析物を検出できるようになるが、なぜなら、アプタマーはフルオロフォアやクエンチャー分子といった多重のレポーター分子にコンジュゲートすることができるからである。抗体を使用することに伴うその他の欠点として、例えば、抗体の標識化及び/又は産生に伴う不適切な凝集及び面倒が挙げられる。
【0008】
アプタマーは、ラテラルフローデバイス、バイオセンサー及び同様のアッセイフォーマットなどの、いくつかの他のアッセイフォーマットでも使用されてきた。しかし、良好な感度と精度を備えたアプタマーを一体化したアッセイを提供する必要性が依然としてある。
【0009】
本発明の実施形態は、先行技術に伴う問題を解決することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Tuerk & Gold、1990(Science 249、505~510)
【文献】Ellington & Szostak 1990(Nature 346、818~822)
【文献】Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual (2001) Cold Harbor-Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.
【文献】Ausubelら、Current protocols in molecular biology (1990) John Wiley and Sons、N.Y.
【文献】the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology、Juo, Pei-Show、第2版、2002年、CRC Press
【文献】The Dictionary of Cell and Molecular Biology、第3版、Academic Press;及びthe Oxford University Press
【文献】Chanら、Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology (2006) 33、533~540
【文献】Nucleic Acid(第2巻)1] Synthesis and Analysis of Nucleic Acid (編者:Yukio Sugiura、Hirokawa Publishing Company)
【文献】Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、3版(2001年) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY
【文献】Mary Katherine Johansson、Methods in Molecular Biol. 335:Fluorescent Energy Transfer Nucleic Acid Probes: Designs and Protocols、2006年、Didenko、編、Humana Press、Totowa、NJ
【文献】Marrasら、2002年、Nucl. Acids Res. 30、el22
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある特定の実施形態の概要
本発明は、支持体からの核酸分子(例えば、アプタマー)の変位と、相補的オリゴヌクレオチド(例えば、捕捉オリゴヌクレオチド)へのハイブリッド形成による前記核酸分子の続いて起こる再捕捉との組合わせを活用するアッセイに関する。
【0013】
有利には、標的分子の量がより高いと、支持体からより多い核酸分子が変位するという結果につながることができる。次いで、このことによって、再捕捉される核酸分子の量がより増えるという結果につながることができる。したがって、本発明のある特定の実施形態は、濃度依存性及び/又はシグナルフォーマットの利得を活用する高感度かつ高精度なアッセイを提供する。
【0014】
有利には、捕捉オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載の「汎用アプタマー選択ライブラリー」から得られる任意のアプタマーに共通の核酸配列にハイブリダイズするように構成することができる。したがって、本発明のある特定の実施形態は、再最適化なし又は最小限の再最適化で、異なる標的分子に対するアプタマーの置換を可能にする汎用アッセイを提供する。種々の態様及び実施形態が本明細書に記載されている。
【0015】
本発明の第1の態様では、試料中の標的分子の存在、非存在又はレベルを検出するための装置であって、
a)i)支持体;及び
ii)固定化オリゴヌクレオチド;及び
iii)標的分子と複合体を形成するように構成されている、標的分子に結合親和性を有する核酸分子
を含む第1の領域であって、
固定化オリゴヌクレオチド又は核酸分子は、支持体に直接的又は間接的に付着し、更に、固定化オリゴヌクレオチドは、核酸分子の核酸配列に少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含み、核酸分子は、固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、第1の領域を含み、更に:
b)i)支持体;及び
ii)支持体に直接的又は間接的に付着した捕捉オリゴヌクレオチド
を含む更なる領域であって、
捕捉オリゴヌクレオチドは:
(1)捕捉オリゴヌクレオチドが、標的分子との複合体にある場合での核酸分子の核酸配列にハイブリダイズして核酸-分子-標的分子複合体を捕捉するように構成されている、核酸分子の核酸配列;又は
(2)捕捉オリゴヌクレオチドが、固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズして固定化オリゴヌクレオチドを捕捉するように構成されている、固定化オリゴヌクレオチドの核酸配列
のいずれかに相補的である核酸配列を含む、更なる領域を含む、装置が提供される。
【0016】
したがって、ある特定の実施形態では、装置は、標的分子に結合するように構成されている核酸分子を活用する。適切には、核酸分子は、高度の親和性及び特異性を持って標的分子に結合する。
【0017】
適切には、標的分子が非存在の場合、核酸分子は、これを固定化する支持体に直接的又は間接的に確保されている。核酸分子は、固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることによって付着することができ、この固定化オリゴヌクレオチドは、次いで、支持体に直接的又は間接的に付着している。或いは、核酸分子自体が、支持体表面に直接的又は間接的に(例えば、リンカーを介して)付着することもできる。この実施形態では、固定化オリゴヌクレオチドは、核酸分子の一部にハイブリダイズするように構成されている。この実施形態では、標的分子の存在の間接的な測定値として測定されるのは、固定化オリゴヌクレオチドと標的結合核酸との間の相互作用の破壊である。
【0018】
本発明のある特定の実施形態は、核酸分子、例えばアプタマーがその標的分子に結合する際に立体構造を変化させるその能力を活用する。立体構造の変化により、核酸分子を固定化オリゴヌクレオチドから解離し、その結果、いずれが支持体に付着しているかによって、固定化オリゴヌクレオチド又は標的分子と複合体にある核酸分子のいずれかを放出する。標的分子が存在しない場合、核酸分子は立体構造の変化を受けず、したがって、固定化オリゴヌクレオチドに依然としてハイブリダイズしたままである。
【0019】
ある特定の実施形態では、装置は支持体に付着したリンカー分子を含み、ここで、リンカー分子は核酸分子にハイブリダイズするように構成されており、更に、核酸分子をリンカー分子にハイブリダイズさせる場合、固定化オリゴヌクレオチドは核酸分子にハイブリダイズするように構成されている。
【0020】
適切には、リンカー分子は支持体に付着しており、ここで、リンカー分子は固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするように構成されており、更に、固定化オリゴヌクレオチドをリンカー分子にハイブリダイズさせる場合、核酸分子は、固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするように構成されている。
【0021】
更に、本発明のある特定の実施形態は「再捕捉」事象も活用し、ここで、標的分子との複合体にある場合での核酸分子又は放出された固定化オリゴヌクレオチドのいずれかが捕捉オリゴヌクレオチドによって捕捉される。次いで、再捕捉事象によって、標的分子の存在及び任意選択で標的分子の量も、検出することが可能となる。
【0022】
ある特定の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、核酸分子の核酸配列に少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含み、ここで、捕捉オリゴヌクレオチドは、標的分子との複合体にある場合での核酸分子の核酸配列にハイブリダイズして核酸-分子-標的分子複合体を捕捉するように構成されている。代替の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、固定化オリゴヌクレオチドの核酸配列に少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含み、ここで、捕捉オリゴヌクレオチドは、固定化オリゴヌクレオチドの核酸配列にハイブリダイズするように構成されている。
【0023】
ある特定の実施形態では、核酸分子は、少なくとも1つの固定核酸配列の領域を含む。固定核酸配列の領域は、プライマー領域とすることができる。ある特定の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、核酸分子の固定核酸配列の領域に相補的である核酸配列を含む。
【0024】
ある特定の実施形態では、固定核酸配列の領域は、アプタマーライブラリーの設計において汎用的に使用される配列とすることができ、その結果、ライブラリーから選択されるあらゆるアプタマーが固定核酸配列を含む。したがって、装置は、複数のアプタマーにハイブリダイズすることができる捕捉オリゴヌクレオチドを備えて設計することができ、それぞれのアプタマーは所定の同じ核酸配列を有する1つ又は複数の領域を有し、一方、異なる標的分子に特異的でもある。
【0025】
ある特定の実施形態では、核酸分子は、第1の固定核酸配列の領域及び第2の核酸配列領域を含む。したがって、第1の核酸分子は順方向プライマーとすることができ、第2の核酸分子は逆方向プライマーとすることができる。ある特定の実施形態では、第1の固定核酸配列の領域は核酸分子の5'末端領域に位置し、第2の固定核酸配列の領域は核酸分子の3'末端領域に位置する。
【0026】
ある特定の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、第1の固定核酸配列の領域若しくはその一部、又は第2の固定核酸配列の領域若しくはその一部のいずれかにハイブリダイズすることができる。
【0027】
ある特定の実施形態では、装置は、捕捉オリゴヌクレオチド及び固定化オリゴヌクレオチド又は核酸分子を含む複合体の形成を検出するための検出手段を更に含む。ある特定の実施形態では、リンカー分子はDNA分子又はRNA分子又は混合DNA/RNA分子であり、任意選択で、リンカー分子は、1つ又は複数の修飾ヌクレオチドを含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、装置は、ラテラルフローアッセイデバイスを含む。適切には、第1の領域は、試料受容領域を含む。ある特定の実施形態では、装置は、第1の領域と更なる領域との間に流路を更に含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、流路は、膜、例えば、ニトロセルロース、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、酢酸セルロース(CA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)の各膜又は酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化シリコン(SiO2)及び/若しくは酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む無機膜を含む。
【0030】
ある特定の実施形態では、第1の領域は試料塗布ゾーンを含み、任意選択で、試料塗布ゾーンは、試料塗布パッドを含む。ある特定の実施形態では、第1の領域の支持体は、直接的又は間接的に付着した固定化オリゴヌクレオチド又は核酸分子を含む固定化ゾーンを含む。
【0031】
ある特定の実施形態では、固定化ゾーンは、不織繊維、例えば、セルロース繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、ポリマー繊維、動物繊維(例えば、羊毛、絹)、炭素繊維、鉱物繊維、及び/又はマイクロ繊維を含む。ある特定の実施形態では、固定化ゾーンは、織合わせ繊維を含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、第1の領域は、更なる領域から上流に提供される。ある特定の実施形態では、更なる領域は、捕捉オリゴヌクレオチドが間接的又は直接的に支持体に付着している捕捉ゾーンを含む。
【0033】
ある特定の実施形態では、更なる領域は、複数の捕捉ゾーンを含み、それぞれの捕捉ゾーンは、支持体に直接的又は間接的に付着した捕捉オリゴヌクレオチドを含み、それぞれの捕捉オリゴヌクレオチドは、同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
ある特定の実施形態では、装置は、第1の領域から下流に位置するコントロールゾーンを更に含み、コントロールゾーンは、更なる捕捉オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、装置は、複数のコントロールゾーンを含み、それぞれのコントロールゾーンは、捕捉オリゴヌクレオチドを含み、それぞれの捕捉オリゴヌクレオチドは、同一か又は異なる。
【0035】
適切には、各コントロールゾーンのそれぞれの捕捉オリゴヌクレオチドは、異なる分子に結合するように構成されている。
【0036】
ある特定の実施形態では、装置は複数の核酸分子を含むことができ、それぞれの核酸分子は異なる標的分子に特異的である。ある特定の実施形態では、それぞれの核酸分子は、2つ以上の核酸分子について同じである1つ又は複数の、例えば、2つの固定核酸配列の領域を含む。ある特定の実施形態では、それぞれの核酸分子は、固定核酸配列の同じ領域を含み、この領域によって、同じ捕捉オリゴヌクレオチドを使用して、標的分子の性質に関係なくあらゆる核酸分子を捕捉することが可能となる。それぞれの核酸分子は、個別の検出が可能となるように、且つ装置が多重アッセイフォーマットでの使用に適することができるように、異なる検出手段を含むことができる。
【0037】
ある特定の実施形態では、装置は、第1の領域及び更なる領域を囲むハウジングを更に含む。ハウジングは、試料導入ポートを更に含むことができる。
【0038】
ある特定の実施形態では、ハウジングは、検出ゾーン及び任意選択でコントロールゾーンに隣接する窓を更に含む。ある特定の実施形態では、第1の領域及び/又は更なる領域の支持体は、ビーズ、マイクロタイター又は他のアッセイプレート、ストリップ、膜、フィルム、ゲル、チップ、微粒子、ナノ粒子、ナノファイバー、ナノチューブ、ミセル、マイクロポア、ナノポア、及びバイオセンサー表面から独立して選択される。
【0039】
ある特定の実施形態では、第1の領域は第1の容器に含まれ、更なる領域は更なる容器に含まれる。適切には、第1の領域及び更なる領域の固相はストリップ上に含まれる。適切には、ストリップは、第1の領域と更なる領域との間に流路を更に含む。
【0040】
ある特定の実施形態では、装置は、以下のうちの1つ又は複数を更に含む:
a)吸光パッド、
b)膜、例えばニトロセルロース膜;
c)1つ又は複数のコンペティター分子(competitor molecule);及び
d)1つ又は複数のコントロール分子。
【0041】
ある特定の実施形態では、装置は、ストリップの少なくとも1つの端部及び試料を収容するように構成された容器を更に含む。容器は試料導入領域を含む。ある特定の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチド及び/又は捕捉オリゴヌクレオチドは、DNA分子、RNA分子、混合DNA/RNA分子、修飾DNA分子及び修飾RNA分子から選択される。
【0042】
ある特定の実施形態では、装置は、複数の固定化オリゴヌクレオチド、複数の捕捉オリゴヌクレオチド及び複数の核酸分子を含む。
【0043】
ある特定の実施形態では、核酸分子はアプタマーである。適切には、アプタマーは、二本鎖アプタマー、単鎖アプタマー、及びその長さの少なくとも一部にわたって二本鎖であるアプタマーから選択される。ある特定の実施形態では、核酸分子及び/又は固定化分子は検出可能な標識を含む。
【0044】
ある特定の実施形態では、検出可能な標識は、フルオロフォア、ナノ粒子、量子ドット、酵素、放射性同位体、予め定義された配列部分、ビオチン、デスチオビオチン、チオール基、アミン基、アジド、アミノアリル基、ジゴキシゲニン、抗体、触媒、コロイド状金属粒子、コロイド状非金属粒子、有機ポリマー、ラテックス粒子、ナノファイバー、ナノチューブ、デンドリマー、タンパク質、及びリポソームから選択される。
【0045】
ある特定の実施形態では、検出可能な標識は酵素であり、任意選択で、酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ウレアーゼ及びβ-ガラクトシダーゼから選択される。
【0046】
ある特定の実施形態では、試料は、全血、白血球、末梢血単核細胞、血漿、血清、痰、呼気、尿、精液、唾液、髄膜液、羊膜液、腺液、リンパ液、乳頭吸引物、気管支吸引物、滑液、関節吸引物、細胞、細胞抽出物、便、組織、組織生検、及び脳脊髄液から選択される生体試料である。
【0047】
ある特定の実施形態では、試料は、農業製品若しくは工業製品又は副産物、環境試料、水、食品、製造プロセスの試料、動物性産物、植物性産物及び細菌性産物に由来する。
【0048】
ある特定の実施形態では、標的分子は、有機又は無機の小分子、細胞、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、脂質、ウイルス、微生物、組織切片、イオン、ヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体及び核酸から選択される。
【0049】
本発明の更なる態様では、試料中の標的分子の存在、非存在又は量を検出する方法であって、
a)試料を、複合体と相互作用させる工程であって、複合体は、
i)固定化オリゴヌクレオチド;及び
ii)核酸分子
を含み、固定化オリゴヌクレオチド及び/又は核酸分子は、支持体に直接的又は間接的に付着されており、固定化オリゴヌクレオチドは、核酸分子の核酸配列に少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含み、核酸分子は、固定化オリゴヌクレオチドの一部にハイブリダイズすることができ、
核酸分子は、標的分子への結合親和性を有し、更に、核酸分子は、標的分子と複合体を形成するように構成されている、工程と:
b)標的分子が試料中に存在する場合、核酸分子を固定化オリゴヌクレオチドとの複合体から解離させて、標的分子-核酸分子複合体を形成する工程と;
c)核酸分子の核酸配列に相補的であるか、又は固定化オリゴヌクレオチドの核酸配列に少なくとも部分的に相補的である、核酸配列を含む捕捉オリゴヌクレオチドを用意する工程であって、核酸分子又は固定化オリゴヌクレオチドは。捕捉オリゴヌクレオチドの一部にハイブリダイズすることができる、工程と;
d)標的分子の存在又は非存在を検出する工程と
を含む、方法が提供される。
【0050】
ある特定の実施形態では、方法は、標的分子が試料中に存在する場合、標的分子-核酸分子-捕捉オリゴヌクレオチド複合体を形成する工程を更に含む。ある特定の実施形態では、方法は試料中の標的分子の量を定量化する工程を更に含む。
【0051】
ある特定の実施形態では、標的分子の検出は、光子検出、電子検出、音響検出、電気化学検出、電気光学検出、酵素的検出、化学検出、生化学検出又は物理検出を含む。
【0052】
ある特定の実施形態では、工程(a)は、標的分子と核酸分子との間の結合を可能にするのに効果的な条件下で実施される。ある特定の実施形態では、標的分子の存在又は非存在を検出する工程は、捕捉オリゴヌクレオチドへの核酸分子又は固定化オリゴヌクレオチドのハイブリッド形成を検出する工程を含む。
【0053】
ある特定の実施形態では、方法は、バイオレイヤー干渉法(BLI)を含む。ある特定の実施形態では、方法は、核酸分子-固定化オリゴヌクレオチド複合体からの核酸分子の変位を決定する工程を含む。ある特定の実施形態では、方法は、捕捉オリゴヌクレオチドへの核酸分子-標的分子複合体のハイブリッド形成を検出する工程を更に含む。ある特定の実施形態では、方法は、捕捉オリゴヌクレオチドへの核酸分子-標的分子複合体のハイブリッド形成を検出する工程の前に、核酸分子-標的分子複合体及び固定化捕捉オリゴヌクレオチドを少なくとも2分間、例えば3分、4分、5分又はそれより長い間インキュベートする工程を含む。ある特定の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、例えば、BLIプローブの表面に固定化される。
【0054】
ある特定の実施形態では、方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)を含む。本発明のある特定の実施形態は、通常は検出することができない小分子の検出に関する利点を提供することができる。具体的には、BLI(通常、検出するのに十分な感度ではない場合がある)などのシステムを使用して、本発明のある特定の実施形態は、固定化オリゴヌクレオチドからの核酸分子の変位を含むが、この変位は、小分子の結合によって発生するシグナルよりもはるかに大きなシグナルを与える。
本発明のある特定の実施形態の詳細な説明
本発明のある特定の実施形態を、添付の図を参照して下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明のある特定の実施形態による装置の第1の領域の略図である。
【
図2】本発明のある特定の実施形態による装置の略図である。
【
図3】本発明のある特定の実施形態による装置及び方法に使用するための核酸分子の略図である。具体的には、核酸分子は、固定化オリゴヌクレオチド及び/又は「捕捉オリゴヌクレオチド」の配列に相補的である少なくとも1つの固定「捕捉配列」(黒いバー)を含む。これらの配列を使用して、単独でのそれとも標的分子との複合体でのいずれにせよ、核酸分子を固定化し、及び/又は「再捕捉」事象において捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせる。 ある特定の実施形態では、「固定化オリゴヌクレオチド」は、第1の支持体及び/又は更なる支持体からの立体障害を低減するためのリンカー(点線)を有する。適切には、核酸分子はまた2つの固定「プライマー配列」(黒いバー)を含み、これらを使用してPCR等によってライブラリーを増幅する。これらのプライマー領域のうちの一方(又は両方)を、フルオロフォア(円)又はその他の官能基(ナノ粒子、量子ドット、酵素等)で修飾して、アッセイで必要とされる核酸分子の検出を行うことができる。プライマー領域を「捕捉領域」として使用して、「再捕捉」事象において捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることもできる。
【
図4】ELONAアッセイが実施される、本発明のある特定の実施形態による装置及び方法の略図である。
【
図5】本発明のある特定の実施形態による、アプタマー変位アッセイの様々な工程でのバイオレイヤー干渉法反応曲線を例示するグラフの図である。第1のアプタマーを、ビオチン化相補的固定化オリゴヌクレオチドを介して、ストレプトアビジンコーティングプローブ上へと固定化した。数回の洗浄工程の後、プローブを標的分子とともにインキュベートした。標的結合は、「解離」シグナルとしてみられるアプタマー変位を引き起こす。
【
図6】アプタマー再捕捉アッセイ法の様々な工程でのバイオレイヤー干渉法反応曲線を示すデータを提供する図である。まず、ビオチン化捕捉オリゴヌクレオチドrevFOR(緑)とREV(ピンク)をそれぞれストレプトアビジンコーティングプローブ上へと固定化した。数回の洗浄工程の後、プローブを
図5のアプタマー変位アッセイから得られたアプタマー-標的複合体とともにインキュベートした。アプタマー-標的複合体が固定化捕捉オリゴヌクレオチドに結合するにつれて、アプタマーの再捕捉はシグナルの増加としてみられる。
図6が指示するところは、いずれかの固定プライマーの領域を使用して、アプタマー-標的分子複合体を再捕捉できることである。
【
図7】
図7A~
図7Dは、濃度依存性の再捕捉を実証するELISA系アッセイを示す図である。パネルA~パネルDのそれぞれに、再捕捉された(FAM標識)アプタマーからの蛍光(y軸)を、「捕捉オリゴ」とともに事前固定化プレートとインキュベートされたインプットアプタマーの量(x軸)に対して示す。「捕捉オリゴ」が存在しない場合(「0」、点線)、アプタマーは再捕捉されない。「捕捉オリゴ」の量が増えるにつれて、より多くのアプタマーが再捕捉され、より多くの蛍光を与える。ELISAプレートをビオチン化「捕捉オリゴ」で事前に固定化することにより、濃度依存様式でアプタマーの再捕捉が可能となる。アプタマーを、5'又は3'のいずれかの端で再捕捉することができる(それぞれ、チャートAとC、及びBとDで順方向及び逆方向)。データがまた示すところは、変位アッセイで使用される一般的なバッファーpHのいずれかで;pH6.8(AとB)及びpH7.4(CとD)、アプタマーを再捕捉できることである。
【
図8】
図8A~
図8Dも、濃度依存性の再捕捉を実証するELISA系アッセイを示す図である。パネルA~パネルDのそれぞれに、再捕捉された(FAM標識)アプタマーからの蛍光(y軸)を、プレートとともにインキュベートされた「捕捉オリゴ」の量(x軸)に対して示す。各系列(円、ひし形、三角形、及び正方形)は、異なる量の蛍光標識アプタマー(それぞれ、アプタマー50、10、2、0pmol)である。最高のアプタマー量(50pmol、円)にて、バッファーのそれぞれにおいて、両方の「捕捉オリゴ」で明確な傾向が見られる。これが示すところは、アプタマーの「末端」(AとCでは5'又はBとDでは3')のいずれかを使用して再捕捉できること、及びバッファーのpHが結合に重大な影響を与えないこと、である。プレートに事前固定化されたビオチン化捕捉オリゴの量が増えるとともに、濃度依存性の再捕獲が見られる。アプタマーの量が、事前固定化ビオチン化捕捉オリゴと同じ量に達すると、飽和に達する。
【
図9】
図9A~
図9Dは、ELONA系アッセイの結果を示す図である。図に、異なる4つ濃度のテスト基質/マトリックス(ヒト血漿、牛乳、河川水及び模擬尿、それぞれ、0%、10%、25%、40%v/vの濃度)で、小分子標的に結合した際に表面から変位したアプタマーの量を表す測定蛍光シグナルを例示する。「標的分子0μM」のコントロールウェルからの蛍光を差し引くことによって補正した後、データをプロットした。濃度依存性の結合が、異なる4つの濃度のテスト基質/マトリックスで、標的分子とアプタマーの間に見られる。
【
図10】
図10A~
図10Dは、異なる4つの濃度のテスト基質/マトリックス(ヒト血漿、牛乳、河川水及び模擬尿、それぞれ、0%、10%、25%、40%v/vの濃度)で固定化「捕捉オリゴヌクレオチド」(forREV)によって再捕捉された蛍光アプタマーの量を表す測定蛍光シグナルを例示する図である。グラフは、蛍光測定の生データを示す;並びに
【
図11】
図11A及び
図11Bは、単一のアッセイでの組合せ変位及び再捕捉アッセイの結果を示す図である。アプタマーを第1のプレート(A)から変位させ、次いで、ビオチン化「捕捉オリゴ」で事前に固定化した第2のプレート(B)上で再捕捉した。同じアプタマーと標的を様々な一般的なマトリックス(血漿、河川水、牛乳及び尿)で試験し、このプラットフォームの多用途性を実証した。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明のある特定の実施形態の更なる特徴を下で説明する。
【0057】
本発明の実施形態の実施は、別段の指示がない限り、当業者の技能範囲内である、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術及び免疫学の従来の技法を用いる。
【0058】
最も一般的な分子生物学、微生物学組換えDNA技術、及び免疫学的技法は、Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual (2001) Cold Harbor-Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.又はAusubelら、Current protocols in molecular biology (1990) John Wiley and Sons、N.Y.、に見いだすことができる。特に定義されない限り、本明細書で使用のあらゆる技術的及び科学的用語は、本開示が属する当技術分野の通常の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology、Juo, Pei-Show、第2版、2002年、CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology、第3版、Academic Press;及びthe Oxford University Pressが、本開示で使用の多くの用語に関する一般的な辞書を当業者に提供する。
【0059】
単位、接頭辞、及び記号は、国際単位系(Systeme International de Unites: SI)で承認されたフォームで表示される。数値範囲は、その範囲を既定している数値を含む。別段の指示がない限り、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの方向で左から右で記載され、核酸は5'から3'の方向で左から右で記載される
【0060】
以下では、本発明を、特定の実施形態の非限定的な例によってより詳細に説明する。例である実験では、コンタミネーションのない標準的な試薬及びバッファーが使用されている。
【0061】
本発明の第1の態様では、試料中の標的分子の存在、非存在又はレベルを検出するための装置であって、
a)i)支持体;及び
ii)固定化オリゴヌクレオチド;及び
iii)標的分子と複合体を形成するように構成されている、標的分子に結合親和性を有する核酸分子
を含む第1の領域であって、
固定化オリゴヌクレオチド又は核酸分子は、支持体に直接的又は間接的に付着し、更に、固定化オリゴヌクレオチドは、核酸分子の核酸配列に少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含み、核酸分子は固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、第1の領域を含み、更に:
b)i)支持体;及び
ii)支持体に直接的又は間接的に付着した捕捉オリゴヌクレオチド
を含む更なる領域であって、
捕捉オリゴヌクレオチドは:
(1)捕捉オリゴヌクレオチドが、標的分子との複合体にある場合での核酸分子の核酸配列にハイブリダイズして核酸-分子-標的分子複合体を捕捉するように構成されている、核酸分子の核酸配列;又は
(2)捕捉オリゴヌクレオチドが、固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズして固定化オリゴヌクレオチドを捕捉するように構成されている、固定化オリゴヌクレオチドの核酸配列、
のいずれかに相補的である核酸配列を含む、更なる領域を含む、装置が提供される。
【0062】
本発明の更なる態様では、試料中の標的分子の存在、非存在又は量を検出する方法であって、
a)試料を、
i)固定化オリゴヌクレオチド;及び
ii)核酸分子であって、ここで、
固定化オリゴヌクレオチド及び/又は該核酸分子が支持体に直接的又は間接的に付着し、固定化オリゴヌクレオチドは、該核酸分子の核酸配列に少なくとも部分的に相補的である核酸配列を含み、
該核酸分子は固定化オリゴヌクレオチドの一部にハイブリダイズすることができ、
標的分子への結合親和性を有し、更に、
標的分子と複合体を形成するように構成されている、核酸分子
を含む複合体と、相互作用させる工程と:
b)標的分子が試料中に存在する場合、核酸分子を固定化オリゴヌクレオチドとの複合体から解離させて、標的分子-核酸分子複合体を形成する工程と;
c)核酸分子の核酸配列に相補的であるか、又は固定化オリゴヌクレオチドの核酸配列に少なくとも部分的に相補的である、核酸配列を含む捕捉オリゴヌクレオチドを用意する工程であって、
核酸分子又は固定化オリゴヌクレオチドは捕捉オリゴヌクレオチドの一部にハイブリダイズすることができる、
用意する工程と;
d)標的分子の存在又は非存在を検出する工程と、
を含む、方法が提供される。
【0063】
ある特定の実施形態では、方法は、ハイブリダイズした核酸分子を標的分子と接触させる工程を含む。ある特定の実施形態では、方法は、核酸分子及び固定化オリゴヌクレオチドを、標的分子を含む試料と接触させる工程を含む。
【0064】
核酸分子が標的分子と接触すると、核酸分子を標的分子に結合させることにより、核酸分子-標的複合体が形成される。結合事象は、上記のハイブリッド形成の不安定化及び破壊をもたらす。結果として、核酸分子は固定化オリゴヌクレオチドから変位される。
【0065】
ある特定の実施形態では、核酸分子は、固定化オリゴヌクレオチドとのハイブリッド形成を介して表面に固定化される。標的分子の結合は、核酸分子に立体構造の変化を引き起こし、この変化が、固定化オリゴヌクレオチドからの核酸分子の変位をもたらし、結果として、表面からの変位をもたらす。
【0066】
本発明の実施形態は、核酸分子を使用して試料中の標的分子の存在及び/又は非存在を検出するための装置及び方法に関する。本明細書で使用する場合、「核酸分子」及び「アプタマー」は交換可能に使用されて、標的分子に対して望ましい作用を有する天然に存在しない核酸分子を指す。核酸アプタマーの場合、例えば、単鎖DNA(ssDNA)から形成されるDNAアプタマーと単鎖RNA(ssRNA)から形成されるRNAアプタマーを区別する。アプタマーは、標的分子に対して高度の結合特性を示すことができ、それらの親和性は、多くの場合、同様の機能を有する抗体と比較して高い。アプタマーは、核酸配列に左右される特定の三次元構造の形成によって特徴づけられる。アプタマーの三次元構造は、ワトソンとクリックの分子内塩基対形成、フーグスティーン塩基対形成(四重鎖)、ゆらぎ(wobble)対形成又はその他の非標準の塩基相互作用から生じる。この構造により、抗原抗体結合に類似したアプタマーが正確に標的構造に結合することを可能にする。アプタマーの特定の核酸配列は、規定の条件下で、規定の標的構造に特異的である三次元構造を有することができる。
【0067】
本明細書に記載の核酸アプタマーは、天然又は非天然のヌクレオチド及び/又は塩基誘導体(又はそれらの組合わせ)を含むことができる。ある特定の実施形態では、核酸分子は1つ又は複数の修飾を含み、その結果、デオキシリボース、リボース、ホスフェート、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、又はウラシル(U)以外の化学構造を含む。核酸分子は、核酸塩基で、ペントースで又はリン酸骨格で修飾することができる。
【0068】
ある特定の実施形態では、核酸分子は、1つ又は複数の修飾ヌクレオチドを含む。例示的な修飾として、例えば、アルキル化、アリール化又はアセチル化、アルコキシル化、ハロゲン化、アミノ基、又は別の官能基を含むヌクレオチドが挙げられる。修飾ヌクレオチドの例として、RNAアプタマーに使用される、2'-フルオロリボヌクレオチド、2'-NH2-、2'-OCH3-、及び2'-O-メトキシエチルリボヌクレオチドが挙げられる。
【0069】
核酸分子は、全体的又は部分的にホスホロチオエート又はDNA、ホスホロジチオエート又はDNA、ホスホロセレノエート又はDNA、ホスホロジセレノエート又はDNA、ロック核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、N3'-P5'ホスホルアミデートRNA/DNA、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トリシクロDNA(tcDNA)又はspiegelmer、又はホスホルアミデートモルホリン(PMO)成分とすることができる(Chanら、Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology (2006) 33、533~540も参照されたい)。
【0070】
一部の修飾によって、核酸分子を核酸切断酵素に対して安定化させることが可能である。アプタマーの安定化では、一般に、アプタマーのその後の修飾と既に修飾されたRNA/DNAによる選択とを区別することができる。安定化は、修飾されたRNA/DNAアプタマーの親和性に影響を及ぼさないが、RNase/DNaseによる生物体液又は生体液中のアプタマーの急速な分解を防止する。アプタマーは、生体血清中の半減期が1分より大きく、好ましくは1時間より大きく、より好ましくは1日より大きい場合、本発明の文脈において安定化されていると呼ばれる。アプタマーはまた、標識アプタマーの検出に加えて、安定性を向上することに寄与することができるレポーター分子で修飾することもできる。
【0071】
望ましい作用には、例えば、標的分子の結合、標的分子を触媒的に変化させること、標的又は標的分子の機能的活性を改変又は変更するように標的分子と反応すること、標的分子に共有結合すること、並びに標的分子と別の分子の間の反応を促進すること、が含まれる。本発明の実施形態の文脈では、望ましい作用とは、高度の親和性を有する標的分子の結合である。
【0072】
一実施形態では、作用とは標的分子に対する特異的結合親和性であり、ここで、標的分子とは、ワトソン-クリック塩基対合又は三重らせん形成と無関係な機構によって核酸リガンドに結合する、ポリヌクレオチド以外の三次元化学構造体であり、ここで、アプタマーとは、標的分子が結合する既知の生理学的機能を有する核酸ではない。
【0073】
標的分子へのアプタマーは、既知のプロセスを使用して選択することができる。例えば、アプタマーは、SELEX法及びその改良方法を活用することによって調製することができる(例えば、Ellington & Szostak、(1990) Nature、346、818~822; Tuerk & Gold、(1990) Science、249、505~510)。SELEX法では、ラウンド数を増加することで又は競合物質を使用することで厳密な選択条件を設定することによって、標的分子に対してより強力な結合能を呈するアプタマーを濃縮及び選択する。したがって、SELEXのラウンド数を調整することによって及び/又は競合条件を変更することによって、様々な結合力を備えるアプタマー、様々な結合モードを備えるアプタマー、及び同じ結合力又は結合モードを備えるが異なる塩基配列を備えるアプタマーを、場合によっては、得ることができる。SELEX法は、PCRによる増幅のプロセスを含む;そのプロセスにおいてマンガンイオン等を使用することで突然変異を引き起こすことによって、より高度な多様性とともにSELEXを実施することができる。
【0074】
ライブラリーの変動は、例えば、約1015の様々な分子の範囲にある。単鎖のDNA又はRNA核酸分子ライブラリーから出発して、標的に最良に結合する核酸分子を、種々の選択工程及び増幅工程を介してサイクル毎に濃縮する。
それぞれのアプタマー選択サイクルは、以下のサブ工程を本質的に含む:
a)核酸分子ライブラリーの標的への結合工程;
b)標的結合核酸分子を標的未結合核酸分子から分離する工程;
c)標的結合核酸分子の回収;
d)回収核酸分子の増幅(例えば、DNA分子のPCR、RNA分子の逆転写PCR);及び
e)増幅産物からの関連する単鎖核酸の調製(例えば、ssDNA精製、in vitro RNA転写)。
【0075】
各サイクルの後、選択及び濃縮した核酸分子プールを次のサイクルへの出発材料として使用する。通常には、8~12サイクルを進行させるが、この数は標的タイプ、方法及び選択の効率によって異なる。
【0076】
ある特定の実施形態では、方法は、高度の結合親和性を持って標的分子に結合すると特定されたアプタマーの核酸配列を解析する工程を含む。配列を解析後、アプタマー(それらの変異体、突然変異体、断片及び誘導体を含めて)は、当業者であれば知られている化学的DNA合成及びRNA合成の従来技法によって調製することができる。更に、個々のアプタマーの標的分子への結合特性について調査することができる。
【0077】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つのランダム領域に、プライマー領域が5'及び3'末端で隣接している。プライマー領域は、ライブラリー及び選択されたアプタマーのPCR増幅用のプライマー結合部位として機能する。
【0078】
ある特定の実施形態では、装置及び方法で活用される核酸分子は、「汎用アプタマーセレクションライブラリー」から選択されるが、ライブラリーは、この選択プロセスに由来する任意のアプタマーが、列記のアッセイフォーマットのいずれかに変換するための適応をほとんど又はまったく必要としないように設計されている。ある特定の実施形態では、「汎用アプタマーセレクションライブラリー」は、以下の機能性部分からなる:5'プライマー配列、少なくとも1つのハイブリッド形成/捕捉領域(「固定化オリゴヌクレオチド」に相補的)、少なくとも1つのランダム領域及び3'プライマー配列。選択されると、核酸分子は更に修飾されて、例えば、使用される前に一方又は両方のプライマー配列を除去することができる。ある特定の実施形態ではそして上記のように、固定プライマー配列を捕捉配列として使用することができる。したがって、ある特定の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、核酸分子内のプライマー配列のうちの1つに相補的である核酸配列を含む。このことより、検出する標的分子にかかわらず、同じ核酸配列を含む捕捉オリゴヌクレオチドを活用する方法及び装置の開発が可能になる。
【0079】
アプタマーは化学合成が可能であるので、改変が容易である。アプタマーについては、MFOLDプログラムを使用して二次構造を予測することによって、X線分析やNMR分析により立体構造を予測することによって、どのヌクレオチドを置換又は欠損させることができるか、どこに新たなヌクレオチドを挿入することができるか等を、ある程度まで予測することができる。新規配列を備える予測アプタマーを容易に化学合成することができ、アプタマーが活性を保持しているかどうかは、既存のアッセイ系を使用して判定することができる。
【0080】
本発明のある特定の実施形態の装置及び方法に使用するためのアプタマーは、当技術分野でそれ自体知られている方法によって合成することができる。合成方法の一つはRNAポリメラーゼを使用する方法である。目的の配列とRNAポリメラーゼのプロモーター配列を持つDNAを化学合成し、これに続いて、テンプレートとしてこのDNAを使用して、既知の方法に従ってインビトロ転写によって、目的のRNAを得ることができる。
【0081】
アプタマーはDNAポリメラーゼを使用して合成することができる。目的の配列を有するDNAを化学合成し、テンプレートとしてこのDNAを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に関する知られている方法により増幅を実行する。これを、ポリアクリルアミド電気泳動法や酵素処理法に関する既知の方法により、単鎖に変換する。修飾アプタマーを合成する場合は、特定の部位に突然変異を導入したポリメラーゼを使用することによって伸長反応の効率を向上させることができる。このようにして得られたアプタマーは知られている方法により容易に精製することができる。
【0082】
アプタマーはアミダイト法、ホスホアミダイト法等などの化学合成法によって大量に合成することができる。合成方法はよく知られている方法であり、Nucleic Acid(第2巻)1] Synthesis and Analysis of Nucleic Acid (編者:Yukio Sugiura、Hirokawa Publishing Company)等に記載のとおりである。実際にはGE Healthcare Bioscience社製のOligoPilotl 100、OligoProcess等の合成機を使用する。精製はクロマトグラフィー等などのそれ自体知られている方法によって実施される。
【0083】
標的分子
本明細書に記載の装置及び方法は、試料中の標的分子の存在又は非存在を検出するのに及び/又は標的分子の量を定量化するのに使用するためのものである。本明細書で使用する場合「標的分子」という用語は、試験試料中に見いだすことができ、本明細書に記載の核酸分子に結合することができる分子を表す。
【0084】
一部の実施形態によれば、標的分子は有機分子である。一部の実施形態では、標的分子とは、可溶性抗原、細胞表面抗原、又はミセル、リポソーム若しくは粒子と会合した抗原である。一実施形態では、標的分子は抗原である。
【0085】
一部の実施形態では、標的分子は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ガングリオシド、脂質、リン脂質、炭水化物、小分子又は核酸分子とすることができる。
【0086】
ある特定の実施形態では、可溶性抗原は、タンパク質、ペプチド、酵素、サイトカイン、可溶性がんマーカー、炎症関連マーカー、ホルモン及び/又はウイルス、細菌若しくは真菌に由来する可溶性分子、例えば、毒素やアレルゲンとすることができる。
【0087】
一部の実施形態では、抗原は、微生物関連抗原である。本明細書で使用する場合、「微生物関連抗原」という用語は、ウイルス、細菌又は真菌のゲノムによってコードされるタンパク質又はその断片と理解されたい。
【0088】
ある特定の実施形態では、抗原はがん(又は腫瘍)マーカーである。一般に、腫瘍マーカーは、血中や尿中などの体液中に、又は体組織中に見いだすことができる。腫瘍マーカーは、がんで発現又は過剰発現する場合があり、一般に特定の疾患プロセスを示す。
【0089】
本発明による細胞表面抗原の非限定的な例は、受容体、細胞表面マーカー、微生物関連抗原、又は受容体リガンドである。
【0090】
ある特定の実施形態では、標的分子とは小分子である。ある特定の実施形態では、小分子とは、治療薬、例えば、がんの処置に使用するための化学療法剤である。
【0091】
試料
標的分子は試料中に含まれてもよい。試料は、全血、白血球、末梢血単核細胞、血漿、血清、痰、呼気、尿、精液、唾液、髄膜液、羊水、腺液、リンパ液、乳頭吸引物、気管支吸引物、滑液、関節吸引物、細胞、細胞抽出物、便、組織、組織生検、及び脳脊髄液を含むことができる。
【0092】
試料は、血液、血清、間質液、脊髄液、脳脊髄液、組織浸出液、浸軟組織試料、細胞溶液、細胞内区画、地下水、又は他の生体試料及び環境試料を含むことができる。試料は、もとのままであっても、分析前に前処理されていても、例えば、ろ過、希釈、濃縮、緩衝化、又はその他の方法で処理されていてもよい。
【0093】
試料は目的の1つ又は複数の標的分子、例えば、目的の小分子分析物を含有すると考えられ、標的の存在についてチェックする必要がある、提供又はサンプリングされた材料であるのが、適切である。
【0094】
試料は、例えば、臨床試料、食品試料、水試料、又はその他の環境のサンプリング材料の試料とすることができる。ある特定の実施形態では、試料は標的分子及び緩衝液を含む。ある特定の実施形態では、試料は、混合、酵素又はマーカーの添加によるなど前処理され、又は精製されている。
【0095】
ある特定の実施形態では、試料は更に、個体から分離した任意の生体材料、例えば、生体組織及び体液とすることができ、これらには、限定されないが、カウント血液、皮膚、血漿、血清、リンパ液、尿、脳脊髄液、涙、綿棒、組織試料、臓器及び腫瘍が含まれる。ある特定の実施形態では、細胞培養物の成分も試料に含まれる。
【0096】
その他の例示的な標的分子及び試料が本明細書に記載されている。
【0097】
固定化オリゴヌクレオチド
適切には、固定化オリゴヌクレオチドは、その長さの少なくとも一部にわたって核酸分子の核酸配列にハイブリダイズするように構成されている核酸配列を含む。
【0098】
ある特定の実施形態では、核酸分子の固定化領域は、その少なくとも一部にわたって、固定化オリゴヌクレオチドの領域にハイブリダイズする。本明細書で使用する場合「ハイブリダイズする」及び「ハイブリッド形成」という用語は、従来のハイブリッド形成条件下で、好ましくは、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、3版(2001年) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYに記載のストリンジェントな条件下で、アプタマーライブラリー内の固定領域と「固定化オリゴヌクレオチド」内の相補的配列との間のワトソンクリック塩基対形成に基づいた相互作用を形成することを意味する。
【0099】
固定化オリゴヌクレオチド又はその一部は、核酸分子の固定化領域又はその一部と二本鎖の二重鎖構造体を形成するように構成されている。ある特定の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチドは、長さがおよそ10ヌクレオチドから約20ヌクレオチドの間であり、例えば、長さが10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20ヌクレオチドである。固定化オリゴヌクレオチドは、核酸分子の固定配列に相補的である核酸配列を含むことができる。したがって、一部の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチドは、複数の核酸分子に含まれ得る配列にハイブリダイズするように構成することができるという点で、「汎用」オリゴヌクレオチドとすることができる。略図を
図3に提供する。
【0100】
ある特定の実施形態では、核酸分子及び固定化オリゴヌクレオチドは、核酸分子又はその一部が固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするのに十分な条件下でインキュベートされる。
【0101】
当業者であれば、ハイブリッド形成が起こるのに必要な条件が反応間で異なるであろうことを理解されよう。ある特定の実施形態では、方法は、核酸分子と固定化オリゴヌクレオチドの混合物を、例えば、少なくとも約80℃、例えば、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、又は90℃に少なくとも約1分間、例えば2分、3分、4分、5分又はそれより長い間、加熱する工程を含む。方法は、核酸分子及び固定化オリゴヌクレオチドを約10℃より低い温度に、例えば、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃、4℃又はそれより低い温度に、冷却する工程を更に含むことができる。
【0102】
ある特定の実施形態では、ハイブリッド形成は、固定化オリゴヌクレオチドを支持体に固定化する前に行われる。代替の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチドは、核酸分子の固定化オリゴヌクレオチドへのハイブリッド形成の前に、支持体に付着される。
【0103】
固定化オリゴヌクレオチド及び/又は核酸分子のいずれかを、第1の領域の支持体に付着させることができる。付着は、例えばリンカー又はその他の付着基を介して、直接的であっても間接的であってもよい。
【0104】
ある特定の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチドはリンカー部分を含む。リンカー部分はビオチン、チオール、及びアミンから選択することができる。固定化オリゴヌクレオチドは、スペーサー分子、例えば、ポリヌクレオチド分子、C6スペーサー分子、C12スペーサー分子、別の長さのCスペーサー分子、ヘキサエチレングリコール分子、ヘキサンジオール、及び/又はポリエチレングリコールから選択されるスペーサー分子を更に含むことができる。
【0105】
リンカーは、例えば、ビオチンリンカーとすることができる。ある特定の実施形態では、アプタマーはアビジンにコンジュゲートすることができる。リンカーに関する更なる詳細が本明細書で見られる。ある特定の実施形態では、リンカー及び/又はスペーサー分子は、光開裂性分子、例えば、5-ブロモウラシル及び/又は5-ヨードウラシルである。
【0106】
ある特定の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチド及び/又は核酸分子は、支持体表面への付着向けに修飾することができる。例えば、固定化オリゴヌクレオチドは、シラン結合を介して付着することができる。或いは又は加えて、固定化オリゴヌクレオチド/核酸分子をスクシニル化することもできる(例えば、固定化オリゴヌクレオチドをアミノフェニル又はアミノプロピルの誘導体化ガラスに付着するために)。適切には、支持体はアミノフェニル誘導体化又はアミノプロピル誘導体化されている。ある特定の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチド/核酸分子は、NH2修飾を含む(例えば、オリゴヌクレオチドをエポキシシラン又はイソチオシアネートでコーティングされたガラスに付着するため)。適切には、支持体表面はエポキシシラン又はイソチオシアネートでコーティングされている。ある特定の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチド及び/又は核酸分子は、アルデヒド分子又はエポキシド分子に付着するためにヒドラジド修飾されている。
【0107】
支持体
ある特定の実施形態の装置は、支持体を含む第1の領域を含む。支持体は、膜又はビーズなどの固体状態の支持体を含むことができる。支持体は、二次元支持体、例えばマイクロプレート、又は三次元支持体、例えばビーズとすることができる。したがって、ある特定の実施形態では、支持体は、少なくとも1つの磁気ビーズを含むことができる。代替の実施形態では、支持体は、少なくとも1つのナノ粒子、例えば金ナノ粒子等を含むことができる。更に別の実施形態では、第1の領域の支持体は、マイクロタイター又はその他のアッセイプレート、ストリップ、膜、フィルム、ゲル、チップ、微粒子、ナノファイバー、ナノチューブ、ミセル、ミクロポア、ナノポア、及びバイオセンサー表面を含む。ある特定の実施形態では、バイオセンサー表面は、プローブチップ表面、バイオセンサーフローチャネル又は同様のものとすることができる。ある特定の実施形態では、更なる領域は支持体を含む。第1の領域及び更なる領域の支持体は、連続性の要素とすることができる。或いは、第1の領域及び更なる領域の支持体は、別々の要素とすることができる。
【0108】
支持体を作製することができる特に適切な材料には、例えば、無機ポリマー、有機ポリマー、ガラス、有機及び無機結晶、鉱物、酸化物、セラミック、金属、特に貴金属、炭素及び半導体が含まれる。特に適切な有機ポリマーは、ポリスチレンベースのポリマーである。セルロース、デキストラン、寒天、アガロース及びセファデックスなどのバイオポリマーを、これらは特にニトロセルロース又は臭化シアンセファデックスとして官能化することができるが、固体支持体を提供するポリマーとして使用することができる。
【0109】
ある特定の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチドを、磁気ビーズに直接的又は間接的に付着させることができ、この磁気ビーズは、例えば、カルボキシ末端化、アビジン修飾化若しくはエポキシ活性化、又はそうでなければ相溶性のある反応基で修飾化することができる。ポリマーの例は限定的なものではなく、他の分子が考えられる。
【0110】
オリゴヌクレオチドの支持体、例えば固相支持体への固定化は固体上に、DNA又はRNAを固定化するための当業者に知られている様々な方法で及び任意の様式で行うことができる。ナノ粒子上へのアプタマーの固定化は、例えば、WO2005/13817に記載のとおりである。例えば、紙又は多孔質材料の固相を液相アプタマーで濡らし、続いて液相を揮発させて、紙又は多孔質材料にアプタマーを残すことができる。
【0111】
ある特定の実施形態では、第1の領域及び/又は更なる領域の支持体は、膜、例えば、ニトロセルロース、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、酢酸セルロース(CA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)の各膜又は酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化シリコン(SiO2)及び/若しくは酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む無機膜を含む。
【0112】
支持体を作製することができる特に適切な材料には、例えば、無機ポリマー、有機ポリマー、ガラス、有機及び無機結晶、鉱物、酸化物、セラミック、金属、特に貴金属、炭素及び半導体が含まれる。特に適切な有機ポリマーは、ポリスチレンベースのポリマーである。セルロース、デキストラン、寒天、アガロース及びセファデックスなどのバイオポリマーを、これらは特にニトロセルロース又は臭化シアンセファデックスとして官能化することができるが、固体支持体を提供するポリマーとして使用することができる。
【0113】
更なる領域
装置はまた、支持体を含む更なる領域を含む。更なる領域の支持体は、第1の領域の支持体と同一であっても異なっていてもよい。更なる領域は、第1の領域とは異なる容器又は装置に含まれてもよい。
【0114】
更なる領域はまた、更なる支持体に直接的又は間接的に付着した捕捉オリゴヌクレオチドを含む。捕捉オリゴヌクレオチドは、固定化オリゴヌクレオチドと同じ配列を含むことができる。或いは、捕捉オリゴヌクレオチドは、固定化オリゴヌクレオチドとは異なる配列を含むことができる。更なる領域は、その異なる配列にて核酸分子に結合する複数の捕捉オリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0115】
捕捉オリゴヌクレオチド又はその一部は、核酸分子又は固定化オリゴヌクレオチドの配列と二本鎖の二重鎖構造体を形成するように構成されている。ある特定の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、長さがおよそ10ヌクレオチドから約20ヌクレオチドの間であり、例えば、長さが10、11、12、13、14、15、16、1、18、19又は20ヌクレオチドである。捕捉オリゴヌクレオチドは、核酸分子の又は固定化オリゴヌクレオチドの固定配列に相補的である核酸配列を含むことができる。したがって、一部の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチドは、複数の核酸分子に含まれ得る配列にハイブリダイズするように構成することができるという点で、「汎用」オリゴヌクレオチドとすることができる。代替の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは、固定化オリゴヌクレオチドの配列に相補的である核酸配列を含むことができる。
【0116】
検出可能な標識
ある特定の実施形態では、核酸分子は検出可能な標識を含む。ある特定の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは検出可能な分子を含む。ある特定の実施形態では、検出可能な標識は、蛍光基、例えば、蛍光/消光剤化合物である。蛍光/消光剤化合物は当技術分野で知られており、例えば、Mary Katherine Johansson、Methods in Molecular Biol. 335:Fluorescent Energy Transfer Nucleic Acid Probes: Designs and Protocols、2006年、Didenko、編、Humana Press、Totowa、NJ及びMarrasら、2002年、Nucl. Acids Res. 30、el22を参照されたい(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。
【0117】
更に、互いに近接にある場合に検出可能なシグナルの増加をもたらす基は、例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(「FRET」)の結果として、本明細書に記載の装置及び方法における代替標識として使用することができる;適切なペアとして、限定されないが、いくつか例を挙げると、フルオロセインとテトラメチルローダミン、ローダミン6Gとマラカイトグリーン、及びFITCとチオセミカルバゾール、が挙げられる。
【0118】
ある特定の実施形態では、検出可能な標識は、フルオロフォア、ナノ粒子、量子ドット、酵素、放射性同位体、予め定義された配列部分、ビオチン、デスチオビオチン、チオール基、アミン基、アジド、アミノアリル基、ジゴキシゲニン、抗体、触媒、コロイド状金属粒子、コロイド状非金属粒子、有機ポリマー、ラテックス粒子、ナノファイバー、ナノチューブ、デンドリマー、タンパク質、及びリポソームから選択される。
【0119】
ある特定の実施形態では、検出可能な標識は酵素であり、任意選択で、酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ウレアーゼ及びβ-ガラクトシダーゼから選択される。
【0120】
ある特定の実施形態では、検出手段の性質は、使用される検出可能な標識によって異なることになる。例えば、ある特定の実施形態では、標識は、その色、例えば金ナノ粒子によって検出可能とすることができる。光学式リーダー又はカメラ、例えば画像化ソフトウェアを備えたカメラによって定量的に色を検出することができる。ある特定の実施形態では、検出可能な標識が蛍光標識、例えば量子ドットである場合、検出手段は、例えば、蛍光強度を記録するように構成されている蛍光ストリップリーダーを含むことができる。
【0121】
検出可能な標識が酵素標識である実施形態では、検出手段は電気化学的検出器とすることができる。検出標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(APP)又は類似のものなどの酵素を更に含んで、基質を触媒的に代謝回転して増幅シグナルを得ることができる。
【0122】
ある特定の実施形態では、方法は、核酸分子-標的分子複合体の形成を検出する工程を含む。本明細書で論議のように、アプタマーを標的と接触させると、アプタマーを標的に結合することによって、アプタマー-標的複合体が形成される。結合又は結合事象は、例えば、視覚的に、光学的に、光子的に、電子的に、音響的に、光音響的に、質量により、電気化学的に、電気光学的に、分光光度的に、酵素的に又はそうでなければ化学的に、生化学的に若しくは物理的に検出することができる。
【0123】
ある特定の実施形態では、核酸分子は、検出分子、例えば、標識を含むことができる。例示的な標識は、視覚的、光学的、光子的、電子的、音響的、光音響的、質量的、電気化学的、電気光学的、分光光度的、酵素的であるか又はそうでなければ物理的に、化学的に若しくは生化学的に検出可能である。方法の一実施形態では、標識は、発光、UV/VISの分光法によって、酵素的に、電気化学的に又は放射活性で検出される。発光とは光の放出を指す。本発明のある特定の実施形態による方法では、例えば、フォトルミネセンス、化学発光及び生物発光を標識の検出に使用する。フォトルミネッセンス又は蛍光では、光子の吸収により励起が生じる。例示的なフルオロフォアとしては、限定はないが、ビスベンズイミダゾール、フルオレセイン、アクリジンオレンジ、Cy5、Cy3又はヨウ化プロピジウム、これはアプタマーと共有結合することができるが、テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、Texas Red(TR)、ローダミン、Alexa Fluor色素(とりわけ様々な企業製の様々な波長の蛍光色素)が挙げられる。
【0124】
他のタグは、触媒、コロイド状金属粒子、例えば金ナノ粒子、コロイド状非金属粒子、量子ドット、有機ポリマー、ラテックス粒子、ナノファイバー、特にカーボン、ナノチューブ、特にカーボン(カーボンナノチューブ)、デンドリマー、タンパク質又はシグナル発生物質を含むリポソームである。コロイド粒子は熱量測定によって検出することができる。
【0125】
ある特定の実施形態では、検出可能な分子は酵素である。ある特定の実施形態では、酵素は、基質を呈色生成物に変換することができ、例えば、ペルオキシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ又はアルカリホスファターゼである。例えば、無色の基質X-galはβ-ガラクトシダーゼの活性によって青色の生成物に変換され、この生成物の着色を視覚的に検出する
【0126】
上記の酵素マーカー及び検出システムは、アルカリホスファターゼを使用する。アルカリホスファターゼ(APP)を使用すると、下に例示のように種々の検出が可能である:電気化学的検出:基質 フェニルホスフェート、APPの酵素反応はフェノールを形成し、フェノールセンサーに付着する(例えば、電気化学的に検出される):呈色反応の測定: 基質 p-ニトロフェニルホスフェート、APPの酵素反応はp-ニトロフェノールを形成し、黄色に呈色する:蛍光検出:基質 4-メチルウンベリフェロニルホスフェート: APPの酵素反応はメチルウンベリフェロニル残基を形成し、これは、励起後に化学発光検出向けに蛍光を放出する。
【0127】
更に、APPは5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP又はX-ホスフェート)及びニトロブルーテトラゾリウム塩(NBT)を選択的に変換する。色素はAP分子のすぐ近傍に沈殿し、結合した化合物の周囲を暗紫色に着色する。
【0128】
ペルオキシダーゼは、例えば、H2O2の存在下でABTSの酸化(2,2'-アジノ-ビス-[3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸])を触媒する。酵素が安定であること及び候補の基質が多数であることによって、西洋ワサビペルオキシダーゼが好ましい。検出可能な生成物の生成を触媒する他の酵素マーカーは、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)である。
【0129】
ある特定の実施形態では、検出可能な分子は放射性同位体である。検出はまた、アプタマーが標識されている放射性同位体、好ましくは、3H、14C、32P、33P、35S又は125I、より好ましくは32P、33P又は125Iの手段によっても、行うことができる。シンチレーション計数では、放射性標識アプタマー-標的複合体によって放出される放射線を間接的に測定する。シンチレーター物質は放射線によって励起する。基底状態への遷移過程で、励起エネルギーが再度閃光として放出され、これが光電子増倍管によって増幅され、計数される。
【0130】
ある特定の実施形態では、検出可能な分子はジゴキシゲニン及びビオチンから選択される。したがって、アプタマーはまたジゴキシゲニン又はビオチンで標識することができ、これを例えば抗体又はストレプトアビジンによって結合させ、この抗体又はストレプトアビジンは例えば酵素コンジュゲートなどの標識を次いで保有することができる。アプタマーと酵素との事前の共有結合(コンジュゲーション)は、いくつかの既知の方法で行うことができる。アプタマー結合の検出は、放射性同位元素による、好ましくは125IによるRIA(放射免疫測定法)での放射活性であっても、フルオロフォアによる、好ましくはフルオレセイン又はFITCによるFIA(蛍光免疫測定法)での蛍光によるものであってもよい。
【0131】
装置は、試料導入領域を更に含むことができる。試料導入領域は、ポートを含むことができ、第1の領域から上流に設けることができる。
【0132】
ある特定の実施形態では、装置は:
a)1つ又は複数のコンペティター分子;及び
b)1つ又は複数のコントロール分子、
を更に含むことができる。
【0133】
ある特定の実施形態では、コンペティター分子とは、試料との区別を可能にする、規定量の非特異的及び/又は負の標的分子である。
【0134】
ある特定の実施形態では、コントロール分子とは、試料との比較を可能にする規定量の標的分子である。
【0135】
別の実施形態では、コントロール分子は、コントロールゾーン(下に記載)に位置するコントロール捕捉分子に相補的である非機能的DNA/RNA配列(コントロールDNA/RNA配列)とすることができる。コントロールDNA/RNA配列のコントロール捕捉分子へのハイブリッド形成によって、アッセイの基準機能性が明らかとなるはずである。
【0136】
装置
本発明の第1の態様による装置は、いくつかの異なる形式で提供することができる。ある特定の実施形態では、装置はバイオセンサーとすることができる。バイオセンサーは多くの様々なフォーマットで見られる。更なる態様では、本発明は、本発明によるアプタマーを含むバイオセンサーに関する。
【0137】
ある特定の実施形態では、バイオセンサーは、以下の要素を含む:核酸分子及びトランスデューサーを含む第1の領域、このトランスデューサーは核酸分子と標的分子との間の結合事象を電気的に定量化可能なシグナルに変換する。第1の領域は、容器又はプローブ等に含めることができる。
【0138】
加えて、装置は、シグナル処理デバイス、出力電子機器、ディスプレイデバイス、データ処理デバイス、データメモリデバイス、及び他のデバイスへのインターフェースなどの他の要素も更に含むことができる。
【0139】
バイオセンサーと接触させる試料から、例えば、標的分子を含有する複合体混合物から、標的分子を、核酸分子の特異的結合を介して特定することができる。
【0140】
センサーの感度は、使用するトランスデューサーによって影響される場合がある。捕捉オリゴヌクレオチドに結合する核酸分子-標的分子複合体(又は他の実施形態では、固定化オリゴヌクレオチドの捕捉オリゴヌクレオチドへの結合)は、トランスデューサーによって電子的に使用可能なシグナルに変換することができる。トランスデューサーは、試料中の標的分子の濃度に比例している、結合事象からのシグナルを、電気的に定量化可能な測定シグナルに変換する。シグナル伝達は、核酸分子間の分子相互作用に起因して発生する。
【0141】
本発明のある特定の実施形態によるバイオセンサーを用いて、定性的、定量的及び/又は半定量的分析情報を得ることができる。ある特定の実施形態による装置は、食品、水及び環境の分析、並びに、特に飲料水及び廃水の水処理において、診断において使用するのに、並びに病院及び介護施設において使用するのに、特に適しているとすることができる。
【0142】
ある特定の実施形態では、第1の領域及び/又は更なる領域はトランスデューサー表面を含むことができ、本明細書に記載の放出事象及び再捕捉事象はトランスデューサーによって検出することができる。
【0143】
標的-分子-核酸分子複合体の再捕捉は、例えば、光学的、微量質量的、熱的又は音響的トランスデューサーを介して、例えば、光学的又は微量質量的トランスデューサーを介して測定することができる。光学的トランスデューサーでの測定は測光の原理に基づくことができ、それによって、例えば、色強度又は発光強度の変化が検出される。光学的方法には、蛍光、リン光、生物発光及び化学発光、赤外線遷移及び光散乱の測定が含まれる。光学的方法には、標的がアプタマーに結合する場合の層厚の変化の測定も含まれる。層厚の変化は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオレイヤー干渉法(BLI)又は反射型干渉分光法(RIfS)によって実行することができる。更に、薄層への干渉(反射型干渉分光法)及びエバネッセント場の変化を測定することができる。
【0144】
音響的トランスデューサーは圧電水晶振動子の周波数変化を使用し、これは、標的がアプタマーに結合する際に発生する高感度の質量変化を検出する。使用する水晶振動子を振動電場に置き、水晶振動子の共振周波数を測定する。例えば分析物と先に結晶表面受容体に固定化したものとの反応による、水晶振動子の表面の質量変化は、共振周波数の変化を引き起こし、この変化を定量化することができる。
【0145】
電気化学トランスデューサーは、例えば、電極表面上のレドックス活性マーカーの濃度の変化、又はレドックス活性の基質又は生成物の濃度の変化を測定することができるが、これらの基質又は生成物は例えば酵素マーカーの酵素反応で消費又は形成される。熱トランスデューサーはアプタマー-標的の結合反応の熱を測定する。
【0146】
ある特定の実施形態では、装置は、BLI(バイオレイヤー干渉法)装置又は同様の装置である。ある特定の実施形態では、第1の領域はバイオセンサープローブ上に含まれる。捕捉オリゴヌクレオチドを含有する更なる領域は、第2のバイオセンサープローブ上に含まれる。第1のプローブは試料とインキュベートされる。標的分子が試料中に存在する場合、核酸分子は、固定化オリゴヌクレオチドとの複合体から変位されて、標的分子-核酸分子複合体を形成する。結果として、核酸配列はプローブから変位し、試料中に存在する。核酸分子が変位すると、定量化可能なシグナルの減少が得られ、この変異はBLIによって測定することができる。次いで、第2のプローブを核酸分子-標的複合体を含有する試料とインキュベートする。核酸分子又は核酸分子-標的複合体が再捕捉されると、定量化可能な会合シグナルが得られ、この再捕捉はBLIによって測定することができる。
【0147】
設計に応じて、測定する標的について定性的、定量的及び/又は半定量的な分析情報を測定デバイスで得ることができる。検出手段は、ポケットサイズの軽量メーターなどの、現場で使用できる例えば、携帯型メーターとすることができる。
【0148】
ある特定の実施形態では、装置はラテラルフローデバイスを含む。例えば、バイオセンサーはラテラルフローデバイスとすることができる。ラテラルフローデバイスは、ラテラルフローテスト、ラテラルフローアッセイ及びラテラルフローイムノアッセイとも呼ばれる場合がある。
【0149】
図2は、ラテラルフローデバイス1の略図である。ラテラルフローデバイスは、固定化オリゴヌクレオチド5が付着している支持体7を含む第1の領域13を含む。固定化オリゴヌクレオチドは、その配列の一部にわたって核酸分子、例えばアプタマー3にハイブリダイズするように構成されている。
【0150】
試料が第1の領域に導入される。試料は液体であるのが適切である。試料が標的分子9を含む場合、アプタマーは標的分子に結合し、立体構造の変化を受け、この構造変化によって、アプタマーが固定化オリゴヌクレオチドから解離することになる。次いで、標的分子-アプタマー複合体11は溶液中で遊離である。適切には、ラテラルフローデバイスは、第1の領域から更なる領域15への流路を含む。標的分子-アプタマー複合体は、第1の領域から更なる領域へと流れる。
【0151】
更なる領域15は適切には、捕捉オリゴヌクレオチド13を含むテスト領域を含む。捕捉オリゴヌクレオチド13は、アプタマーが標的分子との複合体にある場合、アプタマーの配列に相補的である核酸配列を含む。次いで、標的分子との複合体にある場合、アプタマーは、テスト領域で再捕捉される。次いで、テスト領域におけるアプタマー-標的分子複合体の存在が検出され、任意選択で定量化され、したがって、試料中の標的分子の存在及び任意選択で量の測定を可能とすることができる。
【0152】
適切には、ラテラルフローデバイスは、コントロール領域、例えば、試験が正常に働いていることを確認するように構成されているコントロールラインを含む。更に、ラテラルフローデバイスは適切には、1つ又は複数の標的テストラインを含む。
【0153】
ラテラルフローデバイスはストリップの形態とすることができる。適切には、支持体は、膜、例えばニトロセルロース膜を含む。膜は、不織布で形成されても織布で形成されてもよい。支持体は、試料を塗布することができるパッド、例えば吸収性パッドを更に含むことができる。適切には、吸収性パッドは膜を通して試料を吸い出すように構成されている。ある特定の実施形態では、吸収性パッドはセルロース繊維を含む。
【0154】
ある特定の実施形態では、装置は、支持体に隣接するバッキング要素を更に含むことができる。
【0155】
ラテラルフローアッセイは以下のように機能することができる:
【0156】
選択されたアプタマーは、固定化オリゴヌクレオチドの相補的配列へのハイブリッド形成によって、支持体、例えば「コンジュゲーションパッド」上へと固定化される。アプタマー又は固定化オリゴヌクレオチドのいずれかが支持体に付着される。
【0157】
標的分子の結合によって、アプタマーの立体構造の変化が引き起こされ、この構造変化によって、ハイブリッド形成の破壊がもたらされ、次いで、固定化オリゴヌクレオチドからアプタマーが変位することになる。標的分子(又は代替の実施形態では固定化オリゴヌクレオチド)との複合体にある変位アプタマーは、試料マトリックスにおいて、LFDストリップに沿って運ばれる。変位アプタマー又は固定化オリゴヌクレオチドは、LFD上で「テストライン」を形成する第2の固定化相補的オリゴヌクレオチドへのハイブリッド形成によって再捕捉される。他の標的分子に対する更なるアプタマーを同じ試料中でランさせ、他の「テストライン」内の他の固定化相補的オリゴヌクレオチド配列上に捕捉させ、したがって、多重化LFDアッセイを作り出すこともできる。
【0158】
本発明のある特定の実施形態の方法を使用して特定されたアプタマーの標的を含有すると思われる液体試料を、一箇所にて第1の領域に適用するか、又はストリップを一部位にて上記試料で濡らす。この場所はストリップのいわゆる「試料塗布パッド/ゾーン」でもよい。ストリップはマトリックス材料を含有するが、これを通って、液体試料媒体及びこの中に懸濁又は溶解された標的分子が毛細管作用によって試料塗布パッド/ゾーンから検出ゾーンに流れることができ、このゾーンにて、検出可能なシグナル又はかかるシグナルの非存在が標的の存在又は非存在を指示する。
【0159】
本明細書に記載のように、標識アプタマーが使用され、ここで、既に上に記載の任意の標識を使用することができる。好ましくは、テストストリップの検出ゾーンで視覚的に検出可能なシグナルをもたらす標識が使用される。試料中の標的の存在又は非存在は、検出ゾーン内の標識アプタマーの存在又は非存在によって検出することができる。
【0160】
一実施形態では、支持体はテストストリップを含む。ある特定の実施形態では、酵素標識アプタマーが使用される。標的分子が試料に存在する場合、酵素標識アプタマーと複合体を形成し、この複合体は、酵素標識の存在下で呈色反応を生じることができる、酵素標識の基質を含有する検出ゾーンへとストリップに沿って流れる。ある特定の実施形態では、ストリップは別のゾーンを含有するが、このゾーンでは、試料中に十分な標的が存在しないことに起因して標的と合体しない標識アプタマーが検出されるように標的は固定化され、これによって、検出ゾーンに到達することから阻害される。
【0161】
支持体、例えばテストストリップは、試料で濡らすことができ、ある特定の実施形態によるアプタマーを導入することができる、あらゆる材料から生産することができる。特に好ましいのは、試料及びこれに含有される標的が毛細管作用によって流れることができる材料である。例としては、ニトロセルロース、ポリエステル又はセルロースとのニトロセルロースブレンド、非塗工紙、多孔質紙、ビスコースフィラメント、ガラス繊維、アクリロニトリルコポリマー又はナイロン、並びにラテラルフローアッセイで一般的な他の全ての材料、である。
【0162】
テストストリップは試料中の標的の存在を検出するようなものとして、既に使用することができる。使用については、ラテラルフローアッセイの場合、例えば、一端のみを用いて、ストリップを試料に浸漬することができ、この一端は、次いで、第1の領域、すなわち試料塗布ゾーンとして機能する。
【0163】
本発明のある特定の実施形態は、上記のテストストリップを含むラテラルフローアッセイデバイスに関する。テストストリップに加えて、デバイスは、例えば、テストストリップが埋め込まれ、テストストリップの試料塗布ゾーンへの好ましくは開閉可能な開口部を有するハウジングを含むことができる。ある特定の実施形態では、装置はコントロールゾーン(テストストリップの一般的な機能性が明らかとなる検出ゾーンとは別個のゾーンである)を含む。
【0164】
ある特定の実施形態では、コントロールゾーンは、非標的結合性のコントロールDNA/RNA配列に相補的であるコントロール捕捉配列を含むことができる。コントロールDNA/RNA配列のコントロール捕捉分子へのハイブリッド形成は、テストシグナルとは異なる陽性シグナルを与えることになり、アッセイの基準機能性が明らかとなる。
【0165】
ある特定の実施形態では、装置は少なくとも1つの容器を含む。第1の領域は第1の容器に含まれてもよく、更なる領域は更なる容器に含まれてもよい。ある特定の実施形態では、装置はELONAアッセイでの使用に適しているとすることができる。ELONA装置の略図を
図4に示す。装置100は、容器120に含まれる第1の領域110を含むことができる。更なる領域120は、更なる容器130に含まれる。標的分子170に特異的な核酸分子150は、第1の領域の固定化オリゴヌクレオチド160へのハイブリッド形成を介して固定化されて提供される。固定化オリゴヌクレオチドは、ある特定の実施形態では、容器120の表面に固定化される。標的分子を含有する可能性がある試料が容器に添加される。試料が標的分子を含有する場合、標的分子はアプタマーに結合し、立体構造の変化をもたらし、次いで、この変化が固定化オリゴヌクレオチドからのアプタマーの変位をもたらす。これについては、
図4、上の第2の画像に示す。変位が生じるのが可能となるのに十分な所定の期間に続いて、アッセイ試料は、ウェルの表面に固定化された捕捉オリゴヌクレオチドを含む更なる容器130に移される。捕捉オリゴヌクレオチドは、アプタマーの核酸配列に相補的である配列を含む。検出分子140、例えば、HRPなどのストレプトアビジンコンジュゲート酵素はアプタマー上で捕捉され、(アプタマーがビオチン化されている場合)、したがって、酵素基質(例えば、TMB)での検出が可能となる。
【0166】
図4の下のセクションに、標的分子が試料に存在しない場合のELONAアッセイを例示する。選択されたアプタマーは、固定化オリゴヌクレオチドの相補的配列へのハイブリッド形成によってアッセイウェル上へと固定化される(第1の容器の表面に固定化される)。試料への非標的分子の添加はアプタマーには影響を与えず、このアプタマーは固定化オリゴヌクレオチド上に依然として固定化されたままである。アッセイ試料は更なる容器に移され、アプタマーは捕捉オリゴヌクレオチド上に捕捉されない。ストレプトアビジンコンジュゲート酵素(例えば、HRP)は捕捉されず、したがって、酵素基質(例:TMB)によってシグナルは測定されない。
【0167】
別の特定の実施形態では、固体支持体及びアプタマーは、マイクロアレイ、又はいわゆる「DNAアプタマーチップ又はRNAアプタマーチップ」を形成するが、これは、シングルチャネルであってもマルチチャネルであってもよい。マイクロアレイでは、1つ又は複数のアプタマー並びに基本的なシグナル補正の参照材料をいくつかのアレイ形状の測定ポイント上に配置することができる。マルチチャネルチップでは、この配置は個別のチャネルで行われる。したがって、試料の並列多重測定、又は異なるアプタマーによる並列多重測定、試料中の様々な分析物の並列測定、が可能である。
【0168】
更なる態様では、本発明はまた、本発明のある特定の実施形態によるアプタマーを含むキットに関する。
【0169】
適切には、キットは、アプタマー、例えば、本発明のある特定の実施形態による標識アプタマー又はアプタマープローブ、及びキットによって企図される反応又は実行される方法向けの更なる成分、例えば、濃縮、選択及び/又は分離の各手順に関する企図された検出向けの成分を含む。例としては、バッファー液、呈色反応用の基質、色素又は酵素基質である。キットでは、アプタマーは、様々な形態で、例えば、凍結乾燥されて又は液体培地で提供することができる。
【実施例】
【0170】
以下では、本発明を、特定の実施形態の非限定的な例によってより詳細に説明する。例である実験では、コンタミネーションのない標準的な試薬及びバッファーが使用されている。
【0171】
(実施例1)
バイオセンサーアッセイ(バイオレイヤー干渉法- BLIを使用して小分子を検出するアプタマーベースのアッセイ)
オリゴヌクレオチド及びアプタマー
化学療法薬イマチニブに特異的な核酸分子(DNAアプタマー)を使用して、アッセイを実施した。アプタマーAは100ヌクレオチド長で、5'FAM(フルオレセイン)標識を含む。アプタマーAのヌクレオチド配列を下に示す:
【表1】
【0172】
下線の配列は、アプタマーの増幅に使用されるが、変位アプタマーの再捕捉にも使用される第1の及び第2のプライマー部位に関連し、イタリック配列は、アプタマーの固定化領域(すなわち、固定化配列の少なくとも一部に結合することができる、アプタマーの核酸配列)に関連する。
【0173】
アプタマーは、使用前にHPLCで精製され、IDT社(ベルギー)によって製造されたものである。アッセイに関して、アプタマーは、5'ビオチン標識と内部HEGLスペーサーISP18を含むビオチン化固定化オリゴヌクレオチドを介してストレプトアビジンコーティングセンサープローブ上へと固定化されている。固定化オリゴヌクレオチドは、使用前にHPLCで精製され、また、IDT社、ベルギー、によって製造されたものである。固定化オリゴヌクレオチドは12ヌクレオチドの規定領域(GATCGAGCCTCA、配列番号2)を含有し、この領域は、双方の分子間ハイブリッド形成を可能にするアプタマーの領域(イタリックで示す)に逆相補的である。加えて、固定化オリゴヌクレオチドは、ヘキサエチレングリコール(HEGL)残基を介して結合した5'ビオチンを保有し、これは、固定化オリゴヌクレオチドのストレプトアビジン修飾磁性ビーズへのカップリングを担う。
【0174】
アプタマー-標的複合体を再捕捉するために、異なる2つの捕捉オリゴヌクレオチド:オリゴヌクレオチドrevFOR及びREVを使用した。捕捉オリゴヌクレオチド両方とも19ヌクレオチドの規定領域を含有し、これらは、アプタマーの第1の領域及び最後の領域にそれぞれ相補的であるとともに、アプタマーと捕捉オリゴヌクレオチドとの間のハイブリッド形成を可能にする。revFORは19ヌクレオチド長で、5'ビオチン標識を含む。捕捉オリゴヌクレオチドは、使用前にHPLCで精製され、IDT社、ベルギー、によって製造されたものである。REVは19ヌクレオチド長で、3'ビオチン標識を含む。捕捉オリゴヌクレオチドは、使用前にHPLCで精製され、IDT社、ベルギー、によって製造されたものである。
捕捉オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を下に示す:
revFOR-5'-GGAGAAAAAGAGCGTGGAT-3'(配列番号3)
REV-5'-CCTATGTCACCCTCAATGC-3'(配列番号4)。
【0175】
バッファー、標的
バッファーBB(20mM Tris-HCl pH7.6、100mM NaCl、5mM KCl、2mM MgCl2、1mM CaCl2、0.01%Tween 20)をハイブリッド形成バッファーとして利用した。バッファーB&W(5mM Tris-HCl pH7.5、0.5mM EDTA、1M NaCl、0.01%Tween 20)を使用して、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンコーティング表面上へと固定化した。バッファーPBS6(10mM Na2HPO4/2mM KH2PO4、pH6.0、137mM NaCl、2.7mM KCl、2mM MgCl2、1mM CaCl2、0.01%Tween 20)をアッセイ中に結合バッファー及び洗浄バッファーとして利用した。標的分子は、がん処置に使用される化学療法剤(イマチニブ)である。ストック溶液1mg/mLをDMSOで調製し、-20℃で使用するまで保存した。
【0176】
バイオレイヤー干渉法(BLI)測定
BLIとは、生体分子の相互作用を測定するための標識フリーの技術である。これは、2つの面:バイオセンサーチップ上の固定化リガンドの層と内部参照層から反射された白色光の干渉パターンの変化を分析する、光学分析技法である。バイオセンサーチップに結合した分子の数の任意の変化によって、リアルタイムで測定することができる干渉パターンのシフトが生じる。バイオセンサーに結合する又はこれから解離する分子のみが干渉パターンをシフトし、BLIセンサー上で反応プロファイルを生じることができる。非結合分子、周囲の媒体の屈折率の変化、又は流速の変化は、干渉パターンに影響を与えない。変位選択基準は、選択されたアプタマーの固定化配列と固定化オリゴヌクレオチドとの間の二重鎖形成に基づいた検出アッセイを開発する可能性を提供している。標的依存性の立体構造の変化は、二重構造からのアプタマーの放出につながる。ハイブリダイズした二重鎖からアプタマーの変位段階へのこういったスイッチを使用して、記録可能なシグナルを生じることができる。本明細書に記載の実験は、BLItz又はOctet QK instruments(ForteBio社、Pall Life Sciences社、米国)のいずれかを使用して行われた。
【0177】
BLIによるアプタマー変位アッセイ
バイオセンサープローブ(Streptavidin-SA Dip&Read Biosensors、ForteBio社、Pall Life Sciences社、米国)上へのアプタマー固定化については、1.5μMアプタマーと1μM固定化オリゴヌクレオチドを、この混合物を95℃で10分間加熱し、即座に4℃に5分間冷却することによってバッファーBB中でプレハイブリダイズさせ、その後に、2×B&Wバッファーと1:1の比率で混合した。ストレプトアビジンコーティングプローブを、このプレハイブリッド形成混合物とともに5分間インキュベートした。バッファーPBS6で3回の洗浄工程(30秒、120秒、30秒)を実行して、緩く固定化したDNA物質を除去した。次いで、プローブを標的溶液(PBS6中20μM)とともに5分間インキュベートした。標的結合は、シグナルの減少として見られるアプタマー変位を引き起こす。溶出したアプタマー-標的複合体を、「再捕捉アッセイ」での後続の工程向けに回収した。
【0178】
BLIによってアッセイされたアプタマー-標的複合体の再捕捉
ビオチン化捕捉オリゴヌクレオチド「revFOR」及び「REV」を、ストレプトアビジンコーティングプローブを、それぞれ、オリゴヌクレオチドrevFOR及びREV(バッファーB&W中に1μM)と3分間インキュベートすることにより、別々のバイオセンサープローブ上へと固定化した。バッファーPBS6で3回の洗浄工程(30秒、60秒、30秒)を実行して、緩く固定化したオリゴヌクレオチド物質を除去した。次いで、プローブを、アプタマー変位アッセイ(上を参照)から得られた標的-溶出物質(アプタマー-標的複合体)とともに5分間インキュベートした。アプタマー-標的複合体が固定化捕捉オリゴヌクレオチド上で再捕捉される度に、陽性反応が記録される。
【0179】
(実施例2)
アプタマーを使用して様々なマトリックス/基質中の小分子を検出するマイクロタイタープレートベースの蛍光アッセイ(ELISA系アッセイ)
オリゴヌクレオチド及びアプタマー:
抗生物質モキシフロキサシンに特異的な核酸分子(DNAアプタマー)を使用して、アッセイを実施した。
【0180】
このアプタマーは、上記のイマチニブアプタマーと同じでアプタマーの増幅に使用されまた変位アプタマーの再捕捉にも使用される第1のプライマー部位及び第2のプライマー部位を含む。アプタマーはまた、固定化配列の少なくとも一部に結合することができる核酸配列も含む。
【0181】
固定化オリゴヌクレオチド(アプタマーの一部に相補的)は、5'ビオチン標識及び内部HEGLスペーサーISP18を含む。固定化オリゴヌクレオチドは、使用前にHPLCで精製され、また、IDT社、ベルギー、によって製造されたものである。アッセイでは、アプタマーは、固定化オリゴヌクレオチドを介してストレプトアビジンコーティングマイクロタイタープレート(MTP)上へと固定化されている。固定化オリゴヌクレオチドは12ヌクレオチドの規定領域(GATCGAGCCTCA、配列番号2)を含有し、この領域は、双方の分子間ハイブリッド形成を可能にするアプタマーの領域に相補的である。加えて、固定化オリゴヌクレオチドは、ヘキサエチレングリコール(HEGL)残基を介して結合した5'ビオチンを保有し、これは、固定化オリゴヌクレオチドのストレプトアビジン修飾MTPへのカップリングを担う。アプタマー-標的複合体を再捕捉するために、捕捉オリゴヌクレオチドrevFORを使用した。捕捉オリゴヌクレオチドは、19ヌクレオチドの規定領域を含み(配列番号3)、これは、アプタマーの第1の領域に相補的であるとともに、アプタマーと捕捉オリゴヌクレオチドとの間のハイブリッド形成を可能にする(revFOR:は19ヌクレオチド長であり、5'ビオチン標識を含む。捕捉オリゴヌクレオチドは、使用前にHPLCで精製され、IDT社、ベルギー、によって製造されたものである)。代替の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドは配列番号4に記載の配列を含む。
【0182】
バッファー、標的、マトリックス/基質
バッファーBB(20mM Tris-HCl pH7.6、100mM NaCl、2mM MgCl2、1mM CaCl2、0.01%Tween 20)を、アッセイ中の結合、洗浄、及びハイブリッド形成のバッファーとして利用した。バッファーB&W(5mM Tris-HCl pH7.5、0.5mM EDTA、1M NaCl、0.01%Tween 20)を使用して、ビオチン化オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンコーティング表面上へと固定化した。標的分子である抗生物質は、Sigma-Aldrich社、米国から入手した。5mM抗生物質のストック溶液をDMSOで調製し、-20℃で使用するまで保存した。試験は異なる4つの基質/マトリックスで実行した:ヒト血漿(HUMANPL32NCU2N、BiolVT社、英国);牛乳(有機全脂ミルク、Sainsbury's Supermarket)、河川水-フィルター滅菌済み、フィルター0.22μm、ESF-PV-25-022、CM Scientific社、英国);模擬尿(151.5mM尿素、64mM NaCl、30mM NaH2PO4、8.85mMクレアチニン、50mg/L BSA)。
【0183】
蛍光測定
アプタマーに一体化された蛍光マーカーを用いると、蛍光プレートリーダーアッセイによって、プロセスの様々な工程の後にアプタマーDNAの定量化が可能になる。
【0184】
フルオレセイン(FAM)標識DNAの蛍光測定を、BMG Fluorescence Plate Reader (FLUOstar OPTIMA、BMG社、英国)で、以下の測定条件:励起485nm/発光520nmを使用して実施した。
【0185】
アプタマー変位アッセイ(マイクロタイタープレートベースの蛍光アッセイ)
ストレプトアビジンコーティングMTP(Pierce Streptavidin Coated、HBC社、SuperBlock Blocking Bufferを含むBlack96-Wellプレート、Thermo Scientific社、米国)上へのアプタマー固定化については、0.75μMアプタマーと0.5μM固定化オリゴヌクレオチドを、この混合物を95℃で10分間加熱し、即座に4℃に5分間冷却することによってバッファーBB中でプレハイブリダイズさせ、その後に、2×B&Wバッファーと1:1の比率で混合した。MTPシェーカー(IKA SchuttlerMTS 4、IKA Werke GmbH & Co. KG社、ドイツ)で1000rpmで振とうしながら、室温で1時間、このプレハイブリッド形成混合物とともに、マイクロタイタープレートMTP 1をインキュベートした。固定化効率を、インキュベーション前後の入力蛍光及び出力蛍光をそれぞれ比較することによって決定した。これにより、ロードされたアプタマーのおおよその量を蛍光測定によって計算できる。
【0186】
アプタマーをロードしたプレート(MTP 1)をバッファーBBで広範囲に洗浄して、緩く固定化したDNAを除去し、その後、4つの濃度(バッファーBB中の0%、10%、25%及び40%v/vのマトリックス)での異なる4種のマトリックス(血漿、牛乳、河川水及び模擬尿)で調製した、標的抗生物質の勾配(200μM、40μM、8μM、1.6μM、0.32μM、0μM)とともに、室温で1時間(MTPシェーカーで1000rpm)インキュベートした。標的-溶出物質(MTP 1からの)を回収し、標的-結合アプタマーの量を蛍光測定によって決定した。
【0187】
結果
血漿と牛乳の両方の補正データが示すところは、良好な抗生物質濃度依存反応である。マトリックスのより高濃度の状態で潜在的に非特異的な結合の要素も観察された。このことは、アッセイ又はデータの正当性に影響しない:しかし、アッセイを使用して、これらのマトリックス中の残留物を正確に定量する場合は、正しい較正標準が必要となることを指示する。データはまた、河川水の異なる濃度についてシグナルの差がほとんどないことを示すが;アッセイにまったく影響がないことを示唆する。模擬尿の補正データは、抗生物質依存のシグナル上昇を示すが、試料の濃度が上昇するにつれてシグナルが減少することを示す。正しい較正標準が調製されている場合、これはアッセイの正当性に影響を与えない。
【0188】
アプタマー-標的複合体の再捕捉(マイクロプレートベースの蛍光アッセイ)
ビオチン化捕捉オリゴヌクレオチド「revFOR」を、固定化バッファー中、0.5μM捕捉オリゴヌクレオチドrevFORとともにMTPシェーカーで1000rpmで振とうしながら、室温で1時間インキュベートすることにより、MTP 2のストレプトアビジンコーティング表面上へと固定化した。捕捉オリゴヌクレオチドをロードしたプレート(MTP 2)をバッファーBBで広範囲に洗浄して、緩く固定化したDNAを除去した。MTP 1からの標的-溶出物質を、アプタマー変位アッセイ(上を参照)の後に、MTP 2(捕捉オリゴヌクレオチドで固定化)に移し、MTPシェーカーで1000rpmで振とうしながら室温で1時間インキュベートした。非捕捉物質をMTP 2から除去し、再捕捉アプタマーの量を蛍光測定によって決定した(洗浄して放出アプタマー及び任意の残留マトリックスを除去した後)。
【0189】
結果
データが示すところは、インプット物質と同じ標的濃度依存の傾向に従って、各マトリックスでアプタマーが再捕捉されたことである。血漿と牛乳では、明確なマトリックス濃度効果が見られる。アプタマーは、マトリックス濃度がより高い場合にはより少ない量において再捕捉された。このことは、アッセイ又はデータの正当性には影響しない;このことは、アッセイを使用して、これらのマトリックスの残留物を正確に定量する場合は、正しい較正標準曲線が必要となることを、単に示す。
【0190】
(実施例3)
上記のように、ビオチン標識モキシフロキサシンアプタマー(1500pmol)及び再捕捉オリゴヌクレオチド(revFOR又はREV、3400pmol)を使用して、アッセイを実施した。
【0191】
工程1では、最初に200μlの1×バッファーB&Wを各ウェルに添加することにより、再捕捉オリゴヌクレオチドを96ウェルプレート上に固定化した。次いで、ビオチン化オリゴ混合物の段階希釈(340μl 5×「B&W」バッファー、3400pmolビオチン標識オリゴ(順方向又は逆方向)、水 1700μlまで)をウェル全体にわたって添加し、プレートをオービタルシェーカー上でインキュベートした(1000rpm、室温、1時間)。
【0192】
第2の工程では、BBバッファー中のpH6.8又はpH7.4で96ウェルプレート全体にわたってアプタマー勾配を調製し、入力蛍光を決定した。工程(1)のプレートを、適切なpH(6.8又は7.4)で1×BB 3×200μlで洗浄した。工程(2)のプレートの各ウェルからの混合物100μlを、工程(3)の洗浄プレートの相応するウェルに添加し、このプレートをオービタルシェーカー上でインキュベートした(1000rpm、室温、1時間)。
【0193】
工程(4)のプレートを回収し非結合物質100μlを新しい96ウェルプレートに移し、BMGプレートリーダーを使用して「非結合」物質の蛍光を測定した。工程(4)のプレートを氷冷1×BBバッファー(pH6.8、2分のインキュベーション)3×200μlで洗浄し、プレート表面に残留している物質の蛍光を決定した。
【0194】
結果
データをプロットして、事前固定化ビオチン化オリゴの上昇がアプタマー結合の量(蛍光)へ及ぼす影響を実証した。
図8に、固定化したフォワードオリゴと逆方向オリゴの両方ともが、それぞれ、5'末端又は3'末端のいずれかによってFAM標識アプタマーを捕捉できることを示す。
図8に、ハイブリッド形成バッファーのpHがほとんど影響を与えないことも示す。各プロットは、プレートが「飽和点」に到達していることも示す。例えば、FAM標識アプタマー50pmolを添加すると、ビオチン化オリゴ50pmolまでローディングの増加が見られる。これ超では、更なるアプタマーは結合されない。インプットアプタマー2pmolは傾向を見るには不十分である。
【0195】
データをプロットして、アプタマーインプットの量の上昇がアプタマー結合の量(蛍光)へ及ぼす影響を実証した。ここでも、結果は、固定化したフォワードオリゴと逆方向オリゴの両方ともが、FAM標識アプタマーを捕捉できることを示す(
図7)。結果はまた、ハイブリッド形成バッファーのpHがほとんど影響を与えないことも示す。各プロットは、アプタマーインプットの増加がシグナルの増加(したがって結合)をもたらすことも示している。ここでも、データセット間の比較は、プレートが「飽和点」に到達していることも示す。このことは、固定化オリゴおよそ50pmolで明確な飽和が見られる各セット(50pmolインプット)の最高点で最も明確に見られる。
【0196】
結論
・アプタマーの再捕捉は、pH6.8とpH7.4の両方にて選択バッファー(小分子選択に使用される最も一般的なバッファー)において可能である。
・ウェルあたりビオチン化捕捉オリゴ50pmolを使用する場合、再捕捉は濃度依存で線形である。
・必要に応じて、更なる最適化を行って、ローディングを改善することができる。
【0197】
(実施例4)
変位及び再捕捉アッセイ
変位アッセイと再捕捉アッセイを組み合わせて、単一アッセイで両方の要素を実証した。この実験では、アプタマーを固定化オリゴにハイブリダイズさせ、マイクロタイタープレート表面(プレートA)上へと固定化した。次いで、アプタマーを、第1のプレート(A)から変位させ、次いで、ビオチン化「捕捉オリゴ」で事前固定化した第2のプレート(B)上で再捕捉した。同じアプタマーと標的を様々な一般的なマトリックス(血漿、河川水、牛乳及び尿)で試験して、このプラットフォームの多様性を実証した。
【0198】
結果
このアッセイでは、プレート上に保持された蛍光標識アプタマーの量(標的-誘導変位後)を定量化し、標的濃度に対してプロットする(
図11)。データは、第1のプレート(A)からの明確な標的濃度依存性の蛍光シグナルの損失を示し、アプタマーが標的によって変位されたことを示す(異なるマトリックスのそれぞれで)。
【0199】
次いで、変位アプタマーは、ビオチン化「捕捉オリゴ」(B)によって事前固定化された、第2のプレート上で再捕捉される。ここでも、マトリックスそれぞれでシグナルの濃度依存性の増加が見られ、マトリックスが再捕捉を妨害しないことを示唆する。
【0200】
結論
・アプタマー変位は、異なるいくつかのマトリックスにおいて濃度依存性の反応を示す。
・変位アプタマーを、ビオチン化「捕捉オリゴ」で事前固定化された第2のELISAプレート上で続いて再捕捉することができる。
・マトリックス(血漿等)又は標的分子の存在は、再捕捉を妨害しない。
【0201】
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」及び「含有する(contain)」という語並びにこれらの語の変形は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」という意味であり、他の部分、添加物、成分、整数又は工程を排除することを意図するものではない(且つ排除しない)。本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、文脈上別段の必要がない限り、単数形は複数形を包含する。具体的には、不定冠詞が使用されている場合、文脈上別段の必要がない限り、仕様は複数性並びに単一性を企図していると理解されたい。
【0202】
本発明の特定の態様、実施形態又は実施例に関連して記載されている特徴、整数、特性又は群は、それらと適合不能でない限り、本明細書に記載の他の任意の態様、実施形態又は実施例に適用できると理解されたい。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含めて)に開示の全ての特徴、及び/又はそのように開示された任意の方法又はプロセスの全ての工程は、特徴及び/又は工程の少なくとも一部が互いに排他的である組合わせを除いて、任意の組合わせで組み合わせることができる。本発明は上述の任意の実施形態のいかなる詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含めて)で開示の特徴の任意の新規の1つ、若しくは任意の新規の組合わせ、又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスの工程の任意の新規の1つ、又は任意の新規の組合わせにまで、及ぶ。
【0203】
読み手の注意は、本出願に関連する本明細書と同時に又は先に出願され、本明細書とともに公衆の縦覧に付された全ての書類及び文書に向けられ、かかる書類及び文書の全ての内容は参照することで本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0204】
1 ラテラルフローデバイス
3 アプタマー
5 固定化オリゴヌクレオチド
7 支持体
9 標的分子
11 標的分子-アプタマー複合体
13 第1の領域
15 更なる領域
100 装置
110 第1の領域
120 容器
120 更なる領域
130 更なる容器
140 検出分子
150 核酸分子
160 固定化オリゴヌクレオチド
170 標的分子
【配列表】