(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】扇子
(51)【国際特許分類】
A45B 27/00 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A45B27/00 A
(21)【出願番号】P 2023222548
(22)【出願日】2023-12-28
【審査請求日】2023-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520006735
【氏名又は名称】株式会社三鷹ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 学
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-157085(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104273816(CN,A)
【文献】特開2018-033934(JP,A)
【文献】特開2001-087021(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111345555(CN,A)
【文献】登録実用新案第3102065(JP,U)
【文献】特開2013-200323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の親骨と、
前記一対の親骨間に配置された複数の中骨と、
前記一対の親骨と前記複数の中骨の各基端部を貫通する要と、
前記一対の親骨と前記複数の中骨に折り畳み可能に固着された蛇腹状のシート体と、を備えた扇子であって、
前記シート体における前記中骨が存在しない各折り畳み部分にそれぞれ前記中骨の長手方向に間隔をおいて配置された複数の面状の発光素子と、
前記複数の発光素子に電力を供給する電源と、
前記複数の発光素子の点灯を表示データに基づいて制御する制御部と、
前記一対の親骨のうち前記電源や前記制御部が配置されていない方の親骨に該親骨の長手方向に間隔をおいて、かつ該親骨の外側に向けて発光するように配置された複数の第2発光素子と、
前記複数の第2発光素子に電力を供給する第2電源と、
角度センサと、
前記複数の第2発光素子の点灯を第2表示データと前記角度センサからの角度情報に基づいて制御する第2制御部と、
を有することを特徴とする扇子。
【請求項2】
前記一対の親骨と前記複数の中骨のうち、少なくとも前記複数の中骨がチタン又はチタン合金で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の扇子。
【請求項3】
前記電源と前記制御部とが前記親骨に埋設状態に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の扇子。
【請求項4】
前記表示データを外部から入力して更新するための通信手段を有することを特徴とする請求項1に記載の扇子。
【請求項5】
前記通信手段が前記親骨に埋設状態に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の扇子。
【請求項6】
前記発光素子がOLEDであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の扇子。
【請求項7】
前記第2電源、前記第2制御部及び前記角度センサが前記親骨に埋設状態に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の扇子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本来の扇子機能に加えて発光表示機能を有する扇子に関する。
【背景技術】
【0002】
扇子は本来、煽いで涼をとるための道具であるが、拡げたときの華やかさと畳んだときのコンパクトさを任意にとることができ、日本舞踊や落語等においては小道具として、また、日常生活における礼装用や装飾品等として幅広く使用されている。さらに、スポーツ観戦やコンサート会場における応援グッズとしても用いられている。しかしながら、夜間や薄暗い場所での使用では本来の煽ぐ目的以外の機能性の低下を否めなかった。
【0003】
この問題を解消すべく、特許文献1には、透明なプラスチック等の光透過性の材料で形成された親骨に発光ダイオードを組み込んで発光性を付与した扇子が開示されている。親骨の要側の端部には幅広の電池収納部が形成された構成となっている。特許文献2には、扇子の要側にケースを設けて発光ダイオードを収納し、発光ダイオードの光を親骨や中骨に埋設した光ファイバーに導いて発光させる多機能扇子が開示されている。ケースの下方には房飾りに模した電池ケースをぶら下げる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3102065号公報
【文献】特開2016-73565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来の扇子では夜間や薄暗い場所での使用性の向上を図れるものの、単に発光させるだけの構成となっており、例えば使用者の気持ちを代弁するような意味をなす表示機能は有しておらず、この点、室内や屋外コンサート等で使用されている発光スティック等の応援グッズと変わりがない。
【0006】
扇子は日本舞踊での使用が重んじられるなど、古式ゆかしい側面を持っており、それ故に使用する者に伝統的な趣きを与え続ける存在となっている。しかしながら、特許文献1や2に記載の扇子は、親骨を透明なプラスチックで形成したり、要側に電池収容部を設けるなど、発光機能に重点が置かれており、外観的にも格調的にも扇子本来の優雅さが減殺されていることを否めない。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、扇子本来の優雅さを保ちつつ、文字などの意味をなす表示が可能で多機能化の向上及び用途範囲の拡大を図ることができる扇子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の扇子(2)は、一対の親骨(4、6)と、一対の親骨(4、6)間に配置された複数の中骨(8)と、一対の親骨(4、6)と複数の中骨(8)の各基端部を貫通する要(10)と、一対の親骨(4、6)と複数の中骨(8)に折り畳み可能に固着された蛇腹状のシート体(12)と、を備えた扇子であって、シート体(12)における中骨(8)が存在しない各折り畳み部分(12b)にそれぞれ中骨(8)の長手方向に間隔をおいて配置された複数の面状の発光素子(16)と、複数の発光素子(16)に電力を供給する電源(18)と、複数の発光素子(16)の点灯を表示データに基づいて制御する制御部(20)と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る扇子によれば、暗い場所でも意味をなす表示が可能で多機能化の向上及び用途範囲の拡大に寄与する。
【0010】
また、上記の扇子(2)では、一対の親骨(4、6)と複数の中骨(8)のうち、少なくとも複数の中骨(8)がチタン又はチタン合金で形成されている構成としてもよい。これによれば、高級感を出すことができるとともに強度、耐久性を向上させることができる。
【0011】
また、上記の扇子(2)では、電源(18)と制御部(20)とが親骨(4、6)に埋設状態に配置されている構成としてもよい。これによれば、扇子の外観的優雅さを維持しながら多機能化の向上及び用途範囲の拡大を図ることができる。
【0012】
また、上記の扇子(2)では、表示データを外部から入力して更新するための通信手段(22)を有する構成としてもよい。これによれば、飽きのこない表示を行うことができる。
【0013】
また、上記の扇子(2)では、通信手段(22)が親骨(4、6)に埋設状態に配置されている構成としてもよい。これによれば、扇子の外観的優雅さを維持しながら多機能化の向上及び用途範囲の拡大を図ることができる。
【0014】
また、上記の扇子(2)では、発光素子(16)がOLEDである構成としてもよい。これによれば、扇子を折り畳んだときの嵩張りを回避でき、外観の見劣りを抑制できる。
【0015】
また、上記の扇子(34)では、一対の親骨(4、6)のうち電源(18)や制御部(20)が配置されていない方の親骨(6)に該親骨(6)の長手方向に間隔をおいて、かつ該親骨(6)の外側に向けて発光するように配置された複数の第2発光素子(L1~Ln)と、複数の第2発光素子(L1~Ln)に電力を供給する第2電源(38)と、角度センサ(40)と、複数の第2発光素子(L1~Ln)の点灯を第2表示データと角度センサ(40)からの角度情報に基づいて制御する第2制御部(42)と、を有する構成としてもよい。これによれば、折り畳んだ状態で振ることにより空中に残像文字を形成したり、誘導灯的な使用をすることができ、多機能化の向上及び用途範囲の更なる拡大を図ることができる。
【0016】
また、上記の扇子(34)では、第2電源(38)、第2制御部(42)及び角度センサ(4)が親骨(6)に埋設状態に配置されている構成としてもよい。これによれば、扇子の外観的優雅さを維持しながら多機能化及び用途範囲の一層の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の扇子によれば、扇子本来の優雅さを保ちつつ、暗い場所でも文字などの意味をなす表示ができ、多機能化の向上及び用途範囲の拡大に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る扇子の拡開した状態の正面図である。
【
図2】
図1で示した扇子を折り畳んだ状態の正面図である。
【
図3】
図1で示した扇子における発光素子の配線回路の一部を示す図である。
【
図5】
図1で示した扇子の文字表示の一例を示す正面図である。
【
図6】第2実施形態に係る扇子の折り畳んだ状態の正面図である。
【
図8】
図6で示した扇子の文字データ格納状態の説明図である。
【
図9】
図6で示した扇子における文字表示状態の説明図である。
【
図10】
図6で示した扇子の使用の一例の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1乃至
図5を参照して第1実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る発光表示機能を有する扇子2を拡げた状態を示し、
図2は折り畳んだ状態を示している。
図1に示すように、扇子2は、一対の親骨4、6と、一対の親骨4、6よりも薄肉で細幅に形成され、一対の親骨4、6間に配置された複数の中骨8と、一対の親骨4、6と複数の中骨8の各基端部を貫通して回動自在に一体化する要10と、一対の親骨4、6と複数の中骨8に折り畳み可能に固着された蛇腹状のシート体12と、を備えた扇子であって、シート体12における中骨8が存在しない各折り畳み部分12bの裏面にそれぞれ中骨8の長手方向(放射方向)に間隔をおいて配置された複数の面状の発光素子16と、複数の発光素子16に電力を供給する電源としてのボタン電池18と、複数の発光素子16の点灯を表示データに基づいて制御する制御部20と、表示データを外部から入力して更新するための通信手段としての通信機22と、を有する。
【0021】
一対の親骨4、6と複数の中骨8は、チタン又はチタン合金で形成されている。扇子は一般的に竹や木等で形成されるが、チタンは竹や木よりもしなりがよく、折れない。また金属特有の光沢や質感により高級感を出すことができる。さらに竹や木よりも煽ぐときの体感温度が低いという利点も有している。
【0022】
扇面(地紙)であるシート体12は光透過性の紙質系素材で形成されており、中骨8の先細り部分が固着される折り畳み部分12aと、発光素子16が固着される折り畳み部分12bとが交互に繰り返す蛇腹構造を有している。シート体12の一方の端部(図中右端部)はその表面が親骨4の折り畳んだときの内面に固着され、他方の端部(図中左端部)はその裏面が親骨6の折り畳んだときの内面に固着されている。
図2から明らかなように、ボタン電池18と制御部20及び通信機22は、親骨4の厚み内にその内面側から埋設状態に配置されている。本実施形態における発光素子16は、扇子2を畳んだときの嵩張り(厚み変化)を抑制する観点から、薄膜のOLED(Organic Light-Emitting Diode)で構成されている。OLEDは有機ELとも称される。
【0023】
図3に示すように、複数の発光素子16は導電性インクで印刷されたパッシブマトリクスの配線パターンで接続されている(
図1では省略)。行ライン(1・・・n)がボタン電池18の-極に接続されたXドライバ24で駆動され、列ライン(1・・・m)がボタン電池18の+極に接続されたYドライバ26で駆動される。パッシブマトリクス配線の各交差部は絶縁化されている。
図4に示すように、制御部20は、マイクロコンピュータ28と、表示データが格納されるフラッシュメモリ等のメモリ30と、Xドライバ24と、Yドライバ26と、を備えている。マイクロコンピュータ28は、CPU、ROM、RAM、インターフェース等を備えている。親骨4の外面側に埋設状態に設けられた不図示のスイッチによって電源のオン・オフがなされる。
【0024】
マイクロコンピュータ28のCPUはROMに記憶された点灯制御のプログラムを読み出し、メモリ30に格納されている表示データを読み込んでRAMに書き込む。書き込んだ表示データに基づき、読み込んだプログラムを実行してXドライバ24とYドライバ26を制御する。マイクロコンピュータ28は、外部からの表示データを通信機22を介して入力する入力手段、メモリ30に格納された表示データを外部から入力した表示データに更新する更新手段、更新された表示データに基づいてXドライバ24とYドライバ26を制御する制御手段として機能する。CPUの命令を実行する速度は、不図示のクロック発生部からのクロック信号によって決定される。
【0025】
任意の発光素子16を点灯制御する一例を説明する。例えば、
図3に示すように、Yドライバ26のライン3をボタン電池18の+極に接続する信号、Xドライバ24のライン2をボタン電池18の-極に接続する信号がマイクロコンピュータ28から出力されると、Yドライバ26のライン3が+、Xドライバ24のライン2が-となって、矢印で示すように電流が流れ、各指示ラインの交点に位置する発光素子16が点灯する(黒塗りで表示)。このようにして、表示データに基づいて複数の発光素子16が選択的に又は所定の数同時に点灯制御される。
図5は、応援メッセージの「ファイト」の文字を表示した例を示している。複数の発光素子16を間欠的に点灯、点滅させてイルミネーション機能を持たせることもできる。
【0026】
上記のように、本実施形態に係る扇子2では、ボタン電池18や発光素子16の点灯を制御する制御部20等の全てが親骨4の厚み内に収容され、外部からは見えないようになっているので、扇子本来の外観や優雅さを損なうことがなく意味のある文字や模様などからなる表示を暗い場所でも行うことができる。また、発光素子16として薄膜のOLEDを用いているので、折り畳んだときの嵩張りも殆ど生じない。制御部20等を埋設した親骨4の内面側の開口部はシート体12の端部が固着されることにより塞がれ、抜け落ちが防止されている。
【0027】
図4に示すように、通信機22を介した近距離通信でスマートフォン32から新たな表示データを入力してメモリ30に格納された表示データを更新し、更新された表示データに基づいてXドライバ24及びYドライバ26を制御すれば、表示のワンパターン化を回避でき、飽きのこない表示を行うことができる。スマートフォン32で親骨4に設けるスイッチを代替してもよい。
【0028】
チタン又はチタン合金で形成された一対の親骨4、6と複数の中骨8の表面を例えばリン酸チタニアを主成分とする無光触媒でコーティングしてもよい。このようにすれば、抗ウイルス、抗菌、消臭効果を長期に亘って得ることができ、新型コロナ等の感染症が蔓延する環境下での安心、安全性を向上させることができる。また、一対の親骨4、6と複数の中骨8の少なくとも人体と接触する領域に、金属アレルギーの発症を抑制する被膜を形成してもよい。例えばシリコンレジン及び/又はシリコンオリゴマーとアルコキシシランから重合反応によって生成した被膜である。このようにすれば、金属アレルギーがある人でも気にすることなく使用することができる。
【0029】
[第2実施形態]
図6乃至
図10を参照して第2実施形態を説明する。第1実施形態と同一部分又は同一と見做せる部分は同一符号で示し、既にした構成上及び機能上の説明は適宜省略する。
【0030】
図6に示すように、本実施形態に係る扇子34は、第1実施形態の構成に加え、一対の親骨4、6のうちボタン電池18や制御部20が配置されていない方の親骨6に該親骨6の長手方向に間隔をおいて、かつ該親骨6の外側に向けて発光するように配置された複数の第2発光素子としてのチップLED(L1~Ln)と、複数のチップLED(L1~Ln)に電力を供給する第2電源としてのボタン電池38と、角度センサ40と、複数のチップLED(L1~Ln)の点灯を第1実施形態の表示データとは異なる第2表示データと角度センサ40からの角度情報に基づいて制御する第2制御部42と、第2表示データを外部から入力して更新するための通信手段としての通信機44と、を有する。第2表示データはメモリ48に格納されている。
【0031】
複数のチップLED(L1~Ln)は親骨6の外面側から親骨6の厚み内に埋設状態に配置されている。チップLED(L1~Ln)の発光側(親骨6の外面側)は不図示の半透明の光透過性フィルムで覆われており、チップLED(L1~Ln)の存在を外から明確に視認できないようになっている。親骨6のシート体12より下方の部分には、角度センサ40、ボタン電池38、第2制御部42及び通信機44が親骨6の内面側から埋設状態に配置されており、開口部は不図示のシートで塞がれて抜け落ちを防止されている。
【0032】
図7に示すように、第2制御部42は、マイクロコンピュータ46と、第2表示データが格納されるフラッシュメモリ等のメモリ48と、点灯ドライバ50とを備えている。マイクロコンピュータ48は、CPU、ROM、RAM、インターフェース等を備えている。親骨6の下端部には、文字表示のスタート角度(0°;基準位置)を設定するためのスタートボタン52と、電源ON/OFF及び文字表示モードと全点灯モードとを切り替えるモード切替スイッチ54と、表示文字の種類を選択したり全点灯の発光色を選択するセレクトスイッチ56が、親骨6の外面から一部が突出した状態で埋設状態に設けられている。これらはインターフェースを介してマイクロコンピュータ48に接続されている。複数のチップLED(L1~Ln)と第2制御部42等との電気的な接続は、親骨6の内面に導電性インクで印刷された配線パターンによってなされている。
【0033】
図8は、メモリ48に格納される文字表示データの格納状態の一例を示す図である。ここでは、扇子34を扇形に0~60°振って文字を表示する場合を例示している。メモリ48のアドレス区分は、例えばX軸は角度を0°~60°までを2度ごとに、Y軸はチップLED(L1~Ln)に対応した座標区分とする。マイクロコンピュータ46は角度センサ40からの角度情報によりY座標のY1~Ynのデータを読み取って、例えば
図8の塗り潰し部に相当するチップLEDを点灯する。これらの文字表示データは
図7に示すスマートフォン32やパーソナルコンピュータに接続して更新することができる。以上の説明ではデータとして点灯するかしないかの場合を説明したが、メモリアドレスを多重とし、例えば点灯データ21-1および表示色データ21-2、21-3、・・・、21-nと構成しても良い。
【0034】
図9は、扇子34を、上記の説明のように振った場合の文字表示例を示す図である。
図9は文字を画面の横幅全体を使って表示した例であるが、文字の大きさを小さくして2段に表示したり、簡単な画像を表示することもできる。
【0035】
図10は、扇子34を用いて文字表示を行う場合の動作説明図である。なお、
図10では第2制御部42等の表示を省略している。まず、モード切替スイッチ54で電源をオンにする。そして、予め設定された文字表示角度(ここでは60°)の基準位置(図中の左端)に扇子34をかざし、基本角度(0°)を設定するためにスタートボタン52を押す。マイクロコンピュータ46は予め設定されて記憶されている振り角度(ここでは60°)に角度センサ40からの角度情報を対応付ける。扇子34を基準位置(角度0°)から、矢印で示すように見る者に右書き文字となるように、図中右方向に振っていくと、X軸の角度とY座標の表示データに対応するチップLEDが次々に発光し、眼には残像が残って空間に文字が表示されていく。扇子34が右に60°振られたところで表示文字が全部表示される。
図10では、例えば友人と別れるときの「バイバイ」の文字を表示した例を示している。扇子34が振り角度60°を超えて振られてもメモリ48には60°までのデータしか記憶されていないのでそれ以上のチップLED(L1~Ln)が発光することはない。
【0036】
60°以上の角度に振られた扇子34は、今度は左に振られて、60°から最初の設定角度0°の方向に、「バイバイ」の文字の図中右側の文字から逆に空間文字が表示されていき、裏文字を表示することはない。このように本実施形態に係る扇子34を用いれば、設定角度範囲かそれを超える角度振れば、振り角ごとに発光素子が発光するため、振り速度が一定でなくとも表示文字が縮んだり伸びたりすることなく、正常に視認し易く表示される。チップLED(L1~Ln)を全点灯させて振れば、例えば道路上で車が故障した場合の後続車への注意表示を行うことができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態では発光素子16の接続回路をパッシブマトリクス方式としたが、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス方式としてもよい。表示データの外部からの入力手段はスマートフォン32に限らず、パーソナルコンピュータでもよい。親骨4、6及び中骨8の材質はチタン又はチタン合金に限らず、高級感を醸し出す他の金属や、竹、木、プラスチックでもよい。複数の発光素子16は、発光色(R、G、B)が異なるものを混在させてもよい。
【0038】
また、発光素子16の存在が視認されることによる外観の見劣りを抑制するために、発光素子16の裏面側をシート体12と同一又は異なる紙材等で覆う構成としてもよい。発光素子16は曲げ変形が可能な有機ELに限定されず、薄肉であれば曲げ変形ができない発光素子でもよい。また、複数の発光素子16と、複数のチップLED(L1~Ln)の点灯制御を別々の制御構成で行う構成としたが、双方の点灯制御を制御部20が兼ねる構成としてもよい。すなわち、一方の親骨4に全ての電源や制御部等を集約した構成としてもよい。
【0039】
また、要10の下方に袋状の房飾りをぶら下げ、該房飾りに電源や制御部等を集約収容する構成としてもよい。このようにすれば、親骨4、6にはスイッチ類だけを設けて簡易な構成とすることができるとともに、親骨4、6に収容できないリチウムポリマー電池等の容量の大きい、すなわち発光素子16やチップLED(L1~Ln)の輝度を大きくできる電源を外部から視認できない状態に収容することができる。
【符号の説明】
【0040】
2、34 扇子
4、6 一対の親骨
8 中骨
10 要
12 シート体
16 OLED(発光素子)
18 ボタン電池(電源)
20 制御部
22、44 通信機(通信手段)
30、48 メモリ
38 ボタン電池(第2電源)
40 角度センサ
42 第2制御部
L1~Ln チップLED(第2発光素子)
【要約】
【課題】扇子本来の優雅さを保ちつつ、文字などの意味をなす表示が可能な発光表示機能を有する扇子を提供する。
【解決手段】扇子2は、一対の親骨4、6と、一対の親骨4、6間に配置された複数の中骨8と、要10と、一対の親骨4、6と複数の中骨8に折り畳み可能に固着された蛇腹状のシート体12と、を備え、シート体12における中骨8が存在しない各折り畳み部分12bにそれぞれ中骨8の長手方向に間隔をおいて配置され、パッシブマトリクス方式の配線で接続された複数のOLED16と、複数のOLED16に電力を供給するボタン電池18と、複数のOLED16の点灯を表示データに基づいて制御する制御部20と、を有する。点灯を制御する制御部20等の関係部材は全て親骨4の厚み内に埋設状態に配置されている。一対の親骨4、6と、中骨8はチタン又はチタン合金で形成されている。
【選択図】
図1