(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】パーティングロック装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/20 20060101AFI20240613BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20240613BHJP
B22D 17/26 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B29C33/20
B29C45/64
B22D17/26 A
(21)【出願番号】P 2024517473
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2022039277
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315014187
【氏名又は名称】有限会社アイユーキ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 勝利
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-114999(JP,A)
【文献】特許第6746828(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/20
B29C 45/64
B22D 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に延びるリリースバー挿入孔とロックバー挿入孔を有するベースホルダと、前記リリースバー挿入孔に対して挿脱自在に配置されるリリースバーと、前記ロックバー挿入孔に対して挿脱自在に配置されるロックバーと、前記ベースホルダに内蔵される係合子とを備え、
前記ベースホルダは、前記係合子の前記リリースバー挿入孔およびロックバー挿入孔の延伸方向と直交する方向での移動を案内するガイド穴が設けられ、
前記ガイド穴は、前記リリースバー挿入孔とロックバー挿入孔の間の隔壁を貫通する連通路と、前記ロックバー挿入孔を挟んで前記隔壁と対向する側壁の内側面に形成される収納凹部とを含むものであり、
前記係合子は、前記ガイド穴の連通路からリリースバー挿入孔に出没するストッパ部と、前記ガイド穴の連通路からロックバー挿入孔に出没する第1係合部と、前記ガイド穴の収納凹部からロックバー挿入孔に出没する第2係合部とを有し、
前記リリースバーは、前記リリースバー挿入孔への挿入先端部に、前記リリースバー挿入孔に突出したストッパ部に突き当たる当接部が設けられ、
前記ロックバーは、挿脱の際の移動方向に応じて前記係合子の第1係合部の受け入れとガイド穴の連通路への押し込みを選択的に行う凹状の第1カム部と、前記ロックバー挿入孔に突出した係合子の第2係合部をガイド穴の収納凹部に押し込む第2カム部とを有し、
前記ロックバーがロックバー挿入孔に挿入されていない状態では、前記係合子は、前記ストッパ部がリリースバー挿入孔に突出してリリースバーの挿入を阻止し、前記第1係合部がガイド穴の連通路に没入し、前記第2係合部がロックバー挿入孔に突出したアンロック位置にあり、
前記ロックバーがロックバー挿入孔に挿入されるときに、前記第2カム部で係合子の第2係合部を押すことにより、前記係合子は、前記第2係合部がガイド穴の収納凹部に没入し、前記第1係合部がロックバー挿入孔に突出してロックバーの第1カム部に入り込み、前記ストッパ部がガイド穴の連通路に没入するロック位置に移動し、
前記係合子がロック位置にあるときに、前記リリースバー挿入孔に挿入されたリリースバーが係合子のアンロック位置への移動を規制することにより、前記ロックバーのロックバー挿入孔からの抜け出しが阻止され、
前記係合子がロック位置にあり、前記リリースバー挿入孔にリリースバーが挿入されていない状態で、前記ロックバーがロックバー挿入孔から抜き出されるときに、前記第1カム部が係合子の第1係合部を押すことにより、前記係合子がアンロック位置に戻るようになっているパーティングロック装置。
【請求項2】
前記係合子を前記アンロック位置に向けて付勢するばねが前記ベースホルダに内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載のパーティングロック装置。
【請求項3】
前記係合子のストッパ部は、その厚み寸法が前記リリースバーの厚み寸法よりも小さく形成されており、
前記リリースバーは、前記挿入先端部の厚み方向の一部に、前記リリースバー挿入孔に突出したストッパ部に突き当たる当接部を含む凹部が設けられるとともに、前記挿入先端部の凹部を除く部位の先端面の少なくとも両側が凸円弧面に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のパーティングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリープレート型の射出成形機に用いられるパーティングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂や金属を成形する射出成形機には、成形用のキャビティを形成する固定側金型と可動側金型(以下、合わせて「両金型」とも称する。)のほかに、固定側金型と接離するストリッパプレートを備えたスリープレート型のものがある。
【0003】
スリープレート型の射出成形機では、下記のように製品の成形後、ストリッパプレートと固定側金型の間が開いてから両金型間が開くようにするためにパーティングロック装置が用いられる。
【0004】
すなわち、スリープレート型の射出成形機における通常の成形作業の手順は、まず、ストリッパプレートにスプールブッシュの先端を入り込ませ、この状態で樹脂や金属の溶融材料をスプールブッシュに供給する。スプールブッシュに供給された溶融材料は、ストリッパプレートと固定側金型の間の空間から固定側金型に設けられたゲートに誘導され、固定側金型と可動側金型の間のキャビティに注入されて固化する。その後、ストリッパプレートから固定側金型を引き離して(開離させて)、ストリッパプレートと固定側金型の間で固化したランナー部をキャビティ内で固化した製品から切り離す。最後に、固定側金型から可動側金型を引き離して(開離させて)、製品を取り出す。
【0005】
この成形手順では、ストリッパプレートと固定側金型の開離を両金型の開離に先行して行うことによって製品の変形等を防止しており、ストリッパプレートと固定側金型がある程度離れて製品からランナー部が切り離されるまでは、両金型が密着した状態を維持する(両金型の開離を阻止する)必要があり、その機能を果たすのがパーティングロック装置である。
【0006】
パーティングロック装置には、機械的機構によりストリッパプレートと両金型の開離順序を制御するようにしたものがある。例えば、特許文献1に記載されているパーティングロック装置は、
図23に示すように、ストリッパプレート(第1のプレート)51に固定されるリリースバー52と、固定側金型(第2のプレート)53に固定され、バー挿入孔54aを有するベースホルダ54と、可動側金型(第3のプレート)55に固定されるロックバー56と、ベースホルダ54のバー挿入孔54a内で転動自在に支持されるローラ57と、ローラ57をアンロック位置に向けて付勢するスプリング58とからなり、そのリリースバー52およびロックバー56はベースホルダ54のバー挿入孔54aに対して挿脱自在に配置され、ロックバー56にはローラ57が入り込む係合凹部56aが設けられている。そして、リリースバー52がベースホルダ54のバー挿入孔54aに挿入されていない状態(
図23のように挿入先端部のみがバー挿入孔54aに進入している状態を含む)では、スプリング58に付勢されたローラ57がアンロック位置にある。
【0007】
そして、型締めの際には、
図24に示すように、ロックバー56がバー挿入孔54aに挿入されている状態で、リリースバー52がバー挿入孔54aに挿入されるときに、その挿入先端部に形成された傾斜面52aでローラ57を押すことにより、ローラ57がスプリング58の弾性力に抗してロック位置に移動し、ロックバー56の係合凹部56aに入り込む。ロック位置に移動したローラ57は、リリースバー52(の挿入先端部を除く部位)によってアンロック位置への移動を阻止され、両金型53、55を開離不能な状態とする。
【0008】
したがって、型開きの際には、ストリッパプレート51から固定側金型53がある程度開離して、リリースバー52がベースホルダ54のバー挿入孔54aから抜き出されるまで、両金型53、55は開離することがない。リリースバー52がバー挿入孔54aから抜き出されると、ローラ57がスプリング58の弾性力によってアンロック位置に戻り、両金型53、55が開離可能な状態となって、可動側金型55が固定側金型53から引き離されていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1のパーティングロック装置では、型締めの際に、ロックバー56よりも先にリリースバー52がベースホルダ54のバー挿入孔54aに挿入されてローラ57がロック位置に移動し、ロックバー56がバー挿入孔54aに入らなくなって型締めができなくなくなることが懸念される。このため、リリースバー52がロックバー56よりも先にバー挿入孔54aに挿入されないように、リリースバー52の先端にローラ57の一部が入り込む凹部52bを設けている。
【0011】
しかしながら、リリースバー52がロックバー56の後でベースホルダ54のバー挿入孔54aに挿入されるときには、ローラ57がリリースバー52の先端の凹部52bに留まることなく、スプリング58の弾性力に抗してロック位置に移動する必要がある。このため、リリースバー52の凹部52bの形状設計やスプリング58の弾性力の調整が難しく、リリースバー52がロックバー56に先行してバー挿入孔54aに挿入されることにより型締め不能状態となる不具合を必ずしも確実に防止できないという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、簡単な構造で、型締め動作を安定して行うことができるパーティングロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明のパーティングロック装置は、互いに平行に延びるリリースバー挿入孔とロックバー挿入孔を有するベースホルダと、前記リリースバー挿入孔に対して挿脱自在に配置されるリリースバーと、前記ロックバー挿入孔に対して挿脱自在に配置されるロックバーと、前記ベースホルダに内蔵される係合子とを備え、前記ベースホルダは、前記係合子の前記リリースバー挿入孔およびロックバー挿入孔の延伸方向と直交する方向での移動を案内するガイド穴が設けられ、前記ガイド穴は、前記リリースバー挿入孔とロックバー挿入孔の間の隔壁を貫通する連通路と、前記ロックバー挿入孔を挟んで前記隔壁と対向する側壁の内側面に形成される収納凹部とを含むものであり、前記係合子は、前記ガイド穴の連通路からリリースバー挿入孔に出没するストッパ部と、前記ガイド穴の連通路からロックバー挿入孔に出没する第1係合部と、前記ガイド穴の収納凹部からロックバー挿入孔に出没する第2係合部とを有し、前記リリースバーは、前記リリースバー挿入孔への挿入先端部に、前記リリースバー挿入孔に突出したストッパ部に突き当たる当接部が設けられ、前記ロックバーは、挿脱の際の移動方向に応じて前記係合子の第1係合部の受け入れとガイド穴の連通路への押し込みを選択的に行う凹状の第1カム部と、前記ロックバー挿入孔に突出した係合子の第2係合部をガイド穴の収納凹部に押し込む第2カム部とを有し、
前記ロックバーがロックバー挿入孔に挿入されていない状態では、前記係合子は、前記ストッパ部がリリースバー挿入孔に突出してリリースバーの挿入を阻止し、前記第1係合部がガイド穴の連通路に没入し、前記第2係合部がロックバー挿入孔に突出したアンロック位置にあり、前記ロックバーがロックバー挿入孔に挿入されるときに、前記第2カム部で係合子の第2係合部を押すことにより、前記係合子は、前記第2係合部がガイド穴の収納凹部に没入し、前記第1係合部がロックバー挿入孔に突出してロックバーの第1カム部に入り込み、前記ストッパ部がガイド穴の連通路に没入するロック位置に移動し、前記係合子がロック位置にあるときに、前記リリースバー挿入孔に挿入されたリリースバーが係合子のアンロック位置への移動を規制することにより、前記ロックバーのロックバー挿入孔からの抜け出しが阻止され、前記係合子がロック位置にあり、前記リリースバー挿入孔にリリースバーが挿入されていない状態で、前記ロックバーがロックバー挿入孔から抜き出されるときに、前記第1カム部が係合子の第1係合部を押すことにより、前記係合子がアンロック位置に戻るようになっている構成を採用した。
【0014】
なお、上記の構成において、「リリースバー挿入孔にリリースバーが挿入されていない状態」とは、リリースバーの挿入先端部がリリースバー挿入孔内に入っていても、リリースバーが係合子のアンロック位置への移動を規制していない状態を含むものとする(以下同じ)。
【0015】
上記の構成によれば、ベースホルダ、リリースバー、ロックバーおよび係合子のみを必須とする簡単な構造で、ロックバーがロックバー挿入孔に挿入されていない状態では、アンロック位置にある係合子のストッパ部がリリースバーのリリースバー挿入孔への挿入を阻止し、ロックバーがロックバー挿入孔に挿入されるときに係合子をロック位置へ移動させるので、リリースバーの挿入がロックバーの挿入に先行して型締め不能となるおそれはなく、型締め動作を安定して行うことができる。
【0016】
ここで、前記係合子を前記アンロック位置に向けて付勢するばねが前記ベースホルダに内蔵されている構成とすれば、ロックバーがロックバー挿入孔に挿入されていないときに、より確実に係合子をアンロック位置に保持してリリースバーの誤挿入を防止できるようになる。
【0017】
また、前記係合子のストッパ部は、その厚み寸法が前記リリースバーの厚み寸法よりも小さく形成されており、前記リリースバーは、前記挿入先端部の厚み方向の一部に、前記リリースバー挿入孔に突出したストッパ部に突き当たる当接部を含む凹部が設けられるとともに、前記挿入先端部の凹部を除く部位の先端面の少なくとも両側が凸円弧面に形成されている構成とすることが望ましい。ここで、各部材の「厚み」の方向は、リリースバー挿入孔およびロックバー挿入孔の延伸方向と係合子の移動方向の両方に直交する方向をいう(以下同じ)。このようにすれば、ベースホルダから離れたリリースバーとリリースバー挿入孔とに多少の位置ずれが生じているときでも、リリースバーの挿入先端部をスムーズにリリースバー挿入孔内に進入させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパーティングロック装置は、上述したように、ベースホルダのロックバー挿入孔にロックバーを挿入して、ベースホルダに内蔵された係合子をロック位置に移動させることにより、ベースホルダのリリースバー挿入孔へのリリースバーの挿入が可能となり、その後のリリースバーの挿入によって係合子のアンロック位置への移動が規制されるようにしたものであるから、簡単な構造でリリースバーのロックバーに先行する誤挿入を防止でき、型締め動作を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態のパーティングロック装置を用いた射出成形機の要部の概略を示す正面図(型締め状態)
【
図2】
図1のパーティングロック装置の斜め上方から見た分解斜視図
【
図4】
図1のパーティングロック装置の型締め前の状態を示す正面図(蓋を除いた状態)
【
図6】
図4に対応して型締め動作の途中の状態を示す一部切欠き正面図
【
図7】
図4に対応して型締め動作の途中の
図6に続く状態を示す一部切欠き正面図
【
図9】
図1に対応して型開き動作の途中の状態を示す正面図
【
図12】リリースバーと係合子の変形例を斜め上方から見た分解斜視図
【
図13】
図12のリリースバーと係合子を斜め下方から見た分解斜視図
【
図14】
図12および
図13のリリースバーと係合子を用いた場合の型締め前の状態を示す一部切欠き正面図(蓋を除いた状態)
【
図15】ロックバーと係合子の変形例を示す分解斜視図
【
図16】
図15の変形例を用いた場合の型締め動作の途中の状態(
図6に対応する状態)を示す一部切欠き正面図
【
図17】
図16に続く型締め動作の途中の状態(
図7に対応する状態)を示す一部切欠き正面図
【
図18】ロックバーと係合子の別の変形例を示す分解斜視図
【
図19】
図18の変形例を用いた場合の型締め動作の途中の状態(
図6に対応する状態)を示す正面図
【
図21】ロックバーと係合子のさらに別の変形例を示す分解斜視図
【
図22】
図21の変形例を用いた場合の型締め動作の途中の状態(
図7に対応する状態)を示す正面図
【
図23】従来のパーティングロック装置の型開き状態を示す横断平面図
【
図24】
図23のパーティングロック装置の型締め状態を示す横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1乃至
図22に基づき本発明の実施形態を説明する。
図1は、実施形態のパーティングロック装置10を用いた横型の射出成形機を示す。この射出成形機は、図示省略した射出装置の先端のノズル1から溶融樹脂を供給されるスプールブッシュ2と、スプールブッシュ2が取り付けられたスプール板3と、スプールブッシュ2の先端部が入り込むストリッパプレート4と、ストリッパプレート4と接離する固定側金型5と、固定側金型5との間に成形用のキャビティ6を形成する可動側金型7と、可動側金型7を支持する可動プレート8と、可動プレート8を可動側金型7と一体に水平方向に進退させるシリンダ9とを備えたスリープレート型のものである。固定側金型5には、キャビティ6の入口となるゲート5aと、スプールブッシュ2を通って供給される溶融樹脂をゲート5aに案内する流路5bが設けられている。
【0021】
そして、この射出成形機の両側(
図1に示す正面側と図示省略した背面側)に実施形態のパーティングロック装置10が装着されている。各パーティングロック装置10は、ベースホルダ11が固定側金型5に、リリースバー12がストリッパプレート4に、ロックバー13が可動側金型7にそれぞれ固定されている。
【0022】
パーティングロック装置10は、
図2に示すように、前記ベースホルダ11がホルダ本体11aとホルダ本体11aにボルト止めされる蓋11bとに分割されており、そのホルダ本体11aに、係合子14と、係合子14を後述するアンロック位置に向けて付勢するばね15とが内蔵されている。
【0023】
ベースホルダ11のホルダ本体11aには、固定側金型5への固定状態での水平方向で互いに平行に延びるリリースバー挿入孔16とロックバー挿入孔17(以下、合わせて「バー挿入孔16、17」とも称する。)が設けられている。そのリリースバー挿入孔16に対してリリースバー12全体が、ロックバー挿入孔17に対してロックバー13の挿入先端部がそれぞれ挿脱自在となっている。
【0024】
また、ホルダ本体11aには、係合子14のバー挿入孔16、17の延伸方向と直交する方向(固定側金型5への固定状態での上下方向)での移動を案内するガイド穴18が設けられている。そのガイド穴18は、リリースバー挿入孔16とロックバー挿入孔17の間の隔壁19を貫通する連通路18aと、ロックバー挿入孔17を挟んで隔壁19と対向する側壁の内側面に形成される収納凹部18bとを含む。そして、ガイド穴18の上端に前記ばね15を収納するばね収納穴20が連通している。
【0025】
係合子14は、
図2乃至
図4に示すように、狭幅の厚板状に形成されたベース部14aと、それぞれベース部14aの一面に設けられるストッパ部14b、第1係合部14cおよび第2係合部14dを有している。
【0026】
この係合子14のベース部14aは、厚み寸法がバー挿入孔16、17の底からガイド穴18の底までの深さと等しく、バー挿入孔16、17に突出しないようになっている。また、その両端面は凸円弧面に形成され、上端面のうちでばね15の一端部と対向する部位のみに平坦なばね受け面14eが設けられている。
【0027】
そして、ベース部14aの一面の下端側にはガイド穴18の連通路18aに嵌まり込む凸部が設けられている。その凸部は下半部が直方体状に、上半部が正面視半円状にそれぞれ形成されており、そのうちの下端部が連通路18aからリリースバー挿入孔16に出没するストッパ部14b、上端部が連通路18aからロックバー挿入孔17に出没する第1係合部14cとなっている。
【0028】
また、ベース部14aの一面の上端部にもう一つの凸部が設けられており、その凸部の下半部がガイド穴18の収納凹部18bからロックバー挿入孔17に出没する第2係合部14dとなっている。第2係合部14dは、正面視弓形で、厚みがロックバー13の挿入先端部の厚みの半分程度に形成されている。
【0029】
リリースバー12は、挿入先端部の上面が厚み方向全体で切り欠かれて凹部が形成されており、その凹部のうちの挿入先端を向く面が、リリースバー挿入孔16に突出した係合子14のストッパ部14bに突き当たる当接部12aとなっている。また、その挿入先端部は、リリースバー挿入孔16への挿入がスムーズに行われるように、先端面が凸円弧面に形成されている。
【0030】
ロックバー13は、厚み寸法の小さい挿入先端部のみがロックバー挿入孔17に対して挿脱できるようになっている。その挿入先端部には、下面側に第1カム部13aが、上面側に第2カム部13bがそれぞれ形成されている。第1カム部13aは、挿入先端部の下面を厚み方向全体で凹円弧状に切り欠くことによって形成されており、後述するようにロックバー13の挿脱の際の移動方向に応じて係合子14の第1係合部14cの受け入れとガイド穴18の連通路18aへの押し込みを選択的に行うものである。一方、第2カム部13bは、挿入先端部の上面の背面側を先端から切り欠くことによって形成され、後述するようにロックバー挿入孔17に突出した係合子14の第2係合部14dをガイド穴18の収納凹部18bに押し込むものである。
【0031】
このパーティングロック装置10は上記の構成であり、
図4および
図5に示すように、ロックバー13の挿入先端部がロックバー挿入孔17に挿入されていない状態のとき、係合子14は、そのストッパ部14bがリリースバー挿入孔16に突出し、第1係合部14cがガイド穴18の連通路18aに没入し、第2係合部14dがロックバー挿入孔17に突出したアンロック位置にある。この状態では、リリースバー12は、その挿入先端部がリリースバー挿入孔16内に進入しても、挿入先端部に形成された当接部12aが係合子14のストッパ部14bに突き当たって挿入を阻止される。
【0032】
図4および
図5の状態からロックバー13の挿入先端部がロックバー挿入孔17に挿入されていくと、その途中で、
図6に示すように、ロックバー13が第2カム部13bで係合子14の第2係合部14dを押すことにより、係合子14は、ばね15の弾性力に抗して、第2係合部14dがガイド穴18の収納凹部18bに没入し、第1係合部14cがロックバー挿入孔17に突出してロックバー13の第1カム部13aに入り込み、ストッパ部14bがガイド穴18の連通路18aに没入するロック位置に移動していく。
【0033】
そして、
図7および
図8に示すように、ロックバー13のロックバー挿入孔17への挿入によって係合子14がロック位置に移動した状態で、リリースバー12をリリースバー挿入孔16に挿入すると、リリースバー12が係合子14のアンロック位置への移動を規制して、ロックバー13のロックバー挿入孔17からの抜け出しが阻止されるようになる。
【0034】
したがって、このパーティングロック装置10を用いた射出成形機では、型開き状態から、可動側金型7を固定側金型5に密着するまで近づけてロックバー13の挿入先端部をベースホルダ11のロックバー挿入孔17に挿入した後、両金型5、7を一体にストリッパプレート4に近づけてベースホルダ11のリリースバー挿入孔16にリリースバー12を挿入することにより、両金型5、7を開離不能な状態とする。さらに、固定側金型5をストリッパプレート4に密着させ、ストリッパプレート4をスプール板3に密着させて、
図1に示した型締め状態とし、この状態で射出装置のノズル1からスプールブッシュ2に溶融樹脂を供給して成形作業を行う。
【0035】
そして、成形作業完了後は、シリンダ9で可動プレート8と可動側金型7を一体に、射出装置のノズル1から離れる方向に移動させて型開き作業を行う。この型開き作業の際には、まず、
図9に示すように、ストリッパプレート4と固定側金型5も、図示省略したプルピンの作用により可動側金型7および可動プレート8と一体に移動し、スプール板3からストリッパプレート4が開離する。
【0036】
ストリッパプレート4は、スプール板3からある程度離れると、前記プルピンの作用により停止する。このとき、固定側金型5は、パーティングロック装置10により可動側金型7と開離不能とされているので、可動側金型7および可動プレート8とともに移動し続ける。これにより、
図10に示すように、ストリッパプレート4から固定側金型5が開離し、スプールブッシュ2および固定側金型5の流路5bとゲート5aに残された樹脂のランナー部Rが切り離されて除去される。
【0037】
また、同時に、ストリッパプレート4に固定されたリリースバー12が固定側金型5に固定されたベースホルダ11から抜け出していく。そして、リリースバー12が挿入先端部のみを残してベースホルダ11から抜け出し、係合子14のアンロック位置への移動を規制しなくなって、両金型5、7が開離可能な状態となったところで、固定側金型5が前記プルピンの作用により停止する。
【0038】
固定側金型5が停止すると、
図11に示すように、固定側金型5から可動側金型7が開離して型開き状態となり、キャビティ6内で成形された製品Pが取り出される。また、同時に、可動側金型7に固定されたロックバー13の挿入先端部がベースホルダ11から抜け出していき、その途中でロックバー13の第1カム部13aが係合子14の第1係合部14cを押すことにより、係合子14が自重とばね15の弾性力によってアンロック位置に戻る(
図6における矢印と逆の動作により
図4の状態に戻る)。
【0039】
このパーティングロック装置10は、上述したように、ストリッパプレート4と固定側金型5が開離するまでは両金型5、7の開離を阻止するという役割を果たすものである。しかも、型締めの際には、ベースホルダ11のロックバー挿入孔17にロックバー13を挿入して、ベースホルダ11に内蔵された係合子14をロック位置に移動させることにより、ベースホルダ11のリリースバー挿入孔16へのリリースバー12の挿入が可能となり、その後のリリースバー12の挿入によって係合子14のアンロック位置への移動が規制されるようにしたので、簡単な構造でリリースバー12のロックバー13に先行する誤挿入を防止でき、型締め動作を安定して行うことができる。
【0040】
図12乃至
図14はリリースバー12と係合子14の変形例を示す。この変形例では、係合子14のストッパ部14fを、その厚み寸法がリリースバー12の厚み寸法よりも小さくなるように形成し、リリースバー12には、その挿入先端部の厚み方向の一部に、リリースバー挿入孔16に突出したストッパ部14fに突き当たる当接部12bを含む凹部を設けている。これにより、ベースホルダ11から離れた(
図14の一点鎖線で示す状態の)リリースバー12とリリースバー挿入孔16とに多少の位置ずれが生じているときでも、
図1乃至
図11に示した例よりもスムーズに、リリースバー12の挿入先端部をリリースバー挿入孔16内に進入させることができる。
【0041】
図15乃至
図22はロックバー13と係合子14の変形例を示す。このうち、
図15乃至
図17に示す第1の変形例は、ロックバー13の第1カム部13aと係合子14の第1係合部14cを互いに嵌合する正面視三角形状の凹凸に形成している。また、
図18乃至
図20に示す第2の変形例では、係合子14の第1係合部14cおよび第2係合部14dのロックバー挿入孔17への突出面を一つの平坦な傾斜面とし、ロックバー13の第1カム部13aおよび第2カム部13bに第1係合部14cおよび第2係合部14dの傾斜面と摺動する平坦な傾斜面を形成している。そして、
図21および
図22に示す第3の変形例では、第2の変形例をベースとして、ロックバー13の第1カム部13aと係合子14の第1係合部14cの正面側部分を第1の変形例と同様に三角形状に形成している。
【0042】
これらの各変形例でも、
図16および
図19に示すように、ロックバー13の挿入先端部がロックバー挿入孔17に挿入されていくと、係合子14は、ロックバー13の第2カム部13bに押された第2係合部14dがガイド穴18の収納凹部18bに没入し、第1係合部14cがロックバー挿入孔17に突出してロックバー13の第1カム部13aに入り込み、ストッパ部14bがガイド穴18の連通路18aに没入するロック位置に移動していく(第3変形例については図示省略)。そして、
図17、
図20および
図22に示すように、係合子14がロック位置に移動した状態で、リリースバー12をリリースバー挿入孔16に挿入すると、リリースバー12が係合子14のアンロック位置への移動を規制して、ロックバー13のロックバー挿入孔17からの抜け出しを阻止することができる。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0044】
例えば、上述した実施形態では、係合子をアンロック位置に向けて付勢するばねをベースホルダに内蔵させているが、ロックバーがロックバー挿入孔に挿入されていないときは係合子が自重によってもアンロック位置に保持されるので、必ずしもばねを組み込んでおかなくてもよい。
【0045】
また、本発明のパーティングロック装置は、実施形態のような横型の射出成形機だけでなく、縦型の射出成形機にも装着することができる。ただし、その場合は、係合子の自重が係合子をアンロック位置に保持する方向に作用しないので、実施形態のようなばねを組み込んでおくことが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1 (射出装置の)ノズル
2 スプールブッシュ
3 スプール板
4 ストリッパプレート
5 固定側金型
6 キャビティ
7 可動側金型
8 可動プレート
9 シリンダ
10 パーティングロック装置
11 ベースホルダ
11a ホルダ本体
12 リリースバー
12a、12b 当接部
13 ロックバー
13a 第1カム部
13b 第2カム部
14 係合子
14b、14f ストッパ部
14c 第1係合部
14d 第2係合部
15 ばね
16 リリースバー挿入孔
17 ロックバー挿入孔
18 ガイド穴
18a 連通路
18b 収納凹部
19 隔壁
P 製品
R ランナー部
【要約】
簡単な構造で、型締め動作を安定して行うことができるパーティングロック装置(10)である。ベースホルダ(11)のロックバー挿入孔(17)にロックバー(13)を挿入して、ベースホルダ(11)に内蔵された係合子(14)をロック位置に移動させることにより、ベースホルダ(11)のリリースバー挿入孔(16)へのリリースバー(12)の挿入が可能となり、その後のリリースバー(12)の挿入によって係合子(14)のアンロック位置への移動が規制され、ロックバー(13)のロックバー挿入孔(17)からの抜け出しが阻止されるようにした。