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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20240613BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K3/50 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019217449
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021087340
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友久
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175897(JP,A)
【文献】特開2013-207960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを有するステータと、
前記コイルから軸方向に引き出された引出線と、
前記引出線と電気的に接続される配線が設けられた基板と、
前記引出線と電気的に接続する第1接続部と、前記配線と電気的に接続する第2接続部と、を有するコネクタと、
を備え、
軸方向において、前記基板は前記ステータと前記コネクタとの間に位置し
軸方向に延在する前記第1接続部の面に、前記引出線の一部分が溶着又は溶接され、
前記コネクタは前記配線に対して位置決めされて、前記基板に設けられ
前記第2接続部は、前記配線の面に接触している、
モータ。
【請求項2】
前記コネクタは前記基板に係合している、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
コイルを有するステータと、
前記コイルから軸方向に引き出された引出線と、
前記引出線と電気的に接続される配線が設けられた基板と、
前記引出線と電気的に接続する第1接続部と、前記配線と電気的に接続する第2接続部と、を有するコネクタと、
を備え、
軸方向において、前記基板は前記ステータと前記コネクタとの間に位置し、
軸方向に延在する前記第1接続部の面に、前記引出線の一部分が溶着又は溶接され、
前記コネクタは前記配線に対して位置決めされて、前記基板に設けられ、
前記コネクタは、前記基板の一部と係合する爪部を備える
ータ。
【請求項4】
前記コネクタは、前記コネクタの少なくとも一部が前記基板に嵌合され、又はネジ止めされる、請求項2又は3に記載のモータ。
【請求項5】
前記コネクタは金属部材で形成されている、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項6】
前記引出線の一部は、抵抗溶接又は熱カシメ処理により、前記第1接続部に電気的に接続される、
請求項1乃至5のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項7】
前記コネクタは単一の部材で形成されている、請求項1乃至のいずれか1つに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータコアにコイルを巻き回させてステータを組む際に、コイルから引き出された導線を、基板等に設けられた接続部に電気的に接続する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-225572号公報
【文献】特開2019-161745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータ等において、コイルの導線を覆う絶縁用被覆に耐熱性樹脂が使われる場合がある。このような耐熱性樹脂で被覆された導線を端子に結線する際、一般的なはんだ付けでは処理温度が不足するため、絶縁用被覆を溶かすことができない。そこで、金属性の接続部に電流を流して発熱させることにより、導線を絶縁用被覆から露出させて端子との電気伝導を可能にさせるヒュージング処理(以下、「熱カシメ処理」と表記する場合がある。)や、接続部の金属部分と導線とを溶融して接着させる抵抗溶接等が用いられる場合がある。
【0005】
接続部は、例えば基板等に形成された配線に電気的に接続される。接続部に対して熱カシメ処理や抵抗溶接処理が行われると、接続部から配線に熱が伝播し、また接続部にも大きな応力が働く。例えば、接続部と配線とが半田で接合されている場合、伝導した熱により、半田が溶融することがある。この場合、接続部に働く応力により、接続部が導線の取り付け位置から移動することがあり、その結果、導線と配線との電気的な接続が切断される場合がある。
【0006】
一つの側面では、電気的な接続の切断を抑止できるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るモータは、コイルを有するステータと、前記コイルから軸方向に引き出された引出線と、前記引出線と電気的に接続される配線が設けられた基板と、前記引出線と電気的に接続する第1接続部と、前記配線と電気的に接続する第2接続部と、を有するコネクタと、を備える。軸方向において、前記基板は前記ステータと前記コネクタとの間に位置する。軸方向に延在する前記第1接続部の面に、前記引出線の一部分が溶着又は溶接される。前記コネクタは前記配線に対して位置決めされて、前記基板に設けられている。前記第2接続部は、前記配線の面に接触している。
【0008】
一つの態様によれば、電気的な接続の切断を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態におけるコネクタが配置される前のモータの一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態におけるコネクタの一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態におけるコネクタが配置された接続板の一例を示す斜視図である。
図4図4は、第1の変形例におけるコネクタの一例を示す斜視図である。
図5図5は、第1の変形例におけるコネクタが配置された接続板の一例を示す斜視図である。
図6図6は、第2の変形例におけるコネクタの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るモータについて図面を参照して説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。各図面において、説明を分かりやすくするために、ステータ2における軸方向、径方向及び周方向のうち、少なくともいずれかを含む座標系を図示する場合がある。
【0011】
図1は、実施形態におけるコネクタが配置される前のモータの一例を示す斜視図である。図1に示すように、実施形態におけるモータ1は、例えば、ステータ2と、フレーム3と、ロータ4と、回転軸(シャフト)5と、接続板20とを含む。ステータ2は、例えば、フレーム3の内部に収容される。なお、実施形態で説明するステータ2は、インナーロータ型のブラシレスモータにおけるステータであり、例えば、ステータ2の内周側には、マグネットを構成部品として持つロータ4が配置されており、さらにこのロータ4には回転軸(シャフト)5が結合している。また、ステータ2が実装されるモータ1は、例えば、車載用モータとして用いられる。
【0012】
ステータ2は、ステータコア2aと、インシュレータ2bと、コイル30とを含む。ステータコア2aは、例えば、ケイ素鋼板等の軟磁性材料からなる鋼板のコアが、所定枚数、軸方向に積み重ねられて構成されている。ステータコア2aは、径方向において環状部からロータ4に向かって延在する複数のティース2cを有する。本実施形態では、ステータコア2aは、例えば、12個のティース2cを有しているが、その数は特に限定されない。各ティース2cは、環状部の周方向において等角度間隔で配置されており、各ティース2cそれぞれの先端は、周方向に広がる先端部を有している。
【0013】
インシュレータ2bは、ステータ2を覆うように、後述するステータコア2aを軸方向の両側から覆っている。インシュレータ2bは、例えば、絶縁性樹脂を用いた射出成形によって形成される。インシュレータ2bには、接続板20が設けられる。
【0014】
図1に示すように、各ティース2cには、インシュレータ2bを介して、コイル30が巻き回される。また、コイル30から引き出された導線31は、上側(軸方向の正方向)に延在し、後に説明するように、接続板20に配置されるコネクタ10に電気的に接続される。本実施形態において、導線31を覆う絶縁用被覆として、例えばポリイミドなどの耐熱性樹脂が用いられる。本実施形態における導線31は、例えば太さが1mm以上の銅製の丸線である。なお、導線31は、コイルから引き出された引出線の一例である。
【0015】
接続板20は、例えば、コイル30から引き出された導線31を、相互に電気的に接続させるための基板である。接続板20には、配線21と、挿通孔22とが設けられる。配線21は、複数の導線31間を相互に電気的に接続する配線であり、例えば銅箔により形成される。挿通孔22は、コイル30から引き出された導線31が挿通する孔部である。なお、接続板20は、基板の一例である。
【0016】
本実施形態において、導線31と配線21とは、例えば、接続板20に配置されるコネクタ10を介して、電気的に接続される。図2は、実施形態におけるコネクタの一例を示す斜視図である。図2に示すように、本実施形態におけるコネクタ10は、第1接続部11と、第2接続部12と、爪部13a及び13bと、開口部14とを備える。コネクタ10は、例えば銅などの金属材料を用いた、単一の部材により形成される。
【0017】
第1接続部11は、導線31と電気的に接続される。コイル30から引き出された導線31は、例えば第1接続部11の凹部11aに挿入される。そして、導線31は、例えば、熱カシメ処理により、絶縁性被覆が剥がされ、第1接続部11に溶着する。図3は、実施形態におけるコネクタが配置された接続板の一例を示す斜視図である。なお、図3は、図1の枠Fに示す部分において、導線31が第1接続部11の凹部11aに挿入された状態であって、第1接続部11及び導線31に対する熱カシメ処理が行われる前の状態を示す。熱カシメ処理は、例えば、図3に示す状態において、第1接続部11の凹部11aに高電流を流して発熱させ、さらに凹部11aの径方向の両側から10~20Nほどの圧力をかけて、凹部11aに挿入された導線31を押し潰すことにより行われる。
【0018】
第2接続部12は、接続板20の配線21と電気的に接続される。第2接続部12は、図3に示すように、例えば、配線21に接した状態で、半田で接合される。これにより、第1接続部11に接続された導線31と、第2接続部12に接続された配線21とが、コネクタ10を介して電気的に接続される。
【0019】
爪部13a及び13bは、接続板20に係合される係合部である。図3に示すように、爪部13a及び13bは、例えば、接続板20に設けられた第1開口部23a及び23bに、それぞれ係合する。これにより、コネクタ10は、接続板20に設けられた配線21に対して位置決めされる。
【0020】
開口部14は、コネクタ10が接続板20にネジ止めされる際のネジ穴となる。図3に示すように、コネクタ10は、開口部14と、接続板20の第2開口部24とがネジ50により螺合されることにより、接続板20に係合される。
【0021】
熱カシメ処理において、第1接続部11が発熱すると、第2接続部12にも熱が伝導する。これにより、第2接続部12と配線21とを接合する半田が溶融する場合がある。この場合、熱カシメ処理において第1接続部11に対して応力が加わることにより、コネクタ10が移動してしまい、配線21との電気的な接続が切断される場合がある。一方、本実施形態においては、図3に示すように、コネクタ10は、爪部13a及び13b、並びに開口部14に螺合されるネジ50を介して、接続板20に係合される。これにより、第1接続部11に応力が加わった場合においても、コネクタ10が移動することを抑止できるので、第1接続部11に接続された導線31と第2接続部12に接続された配線21との電気的な接続の切断を抑止できる。
【0022】
次に、本実施形態のコネクタ10を備えるモータ1の変形例について説明する。図4は、第1の変形例におけるコネクタの一例を示す斜視図である。図5は、第1の変形例におけるコネクタが配置された接続板の一例を示す斜視図である。図4に示すように、第1の変形例におけるコネクタ70は、第1接続部71と、第2接続部12と、爪部13a及び13bとを備える。コネクタ70も、例えば銅などの金属材料を用いた、単一の部材により形成される。なお、以下の各変形例において、先に説明した図面に示す部位と同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
図4に示すように、第1の変形例におけるコネクタ70の第1接続部71の形状は、実施形態におけるコネクタ10の第1接続部11の形状と異なる。図5に示すように、第1の変形例において、コイル30から引き出された導線91は、コネクタ70の第1接続部71の背面部71aに、例えば抵抗溶接により固定される。なお、導線91は、例えば銅製の平角線である。
【0024】
また、図4に示すように、第1の変形例におけるコネクタ70は、開口部14を備えない点が、実施形態におけるコネクタ10と異なる。この場合において、コネクタ70は、爪部13a及び13bを介して、接続板20に係合される。
【0025】
抵抗溶接においても、コネクタ70の第1接続部71は高温となり、また第1接続部71に対して応力が加えられる。この場合においても、コネクタ70の第2接続部12に熱が伝導することにより、第2接続部12と配線21とを接合する半田が溶融する場合がある。この場合、抵抗溶接において第1接続部71に対して応力が加わることにより、コネクタ70が移動してしまい、配線21との電気的な接続が切断される場合がある。一方、第1の変形例においては、図5に示すように、コネクタ70は、爪部13a及び13bを介して、接続板20に係合される。これにより、第1接続部71に応力が加わった場合においても、コネクタ10が移動することを抑止できるので、第1接続部71に接続された導線91と第2接続部12に接続された配線21との電気的な接続の切断を抑止できる。
【0026】
図6は、第2の変形例におけるコネクタの一例を示す斜視図である。図6に示すように、第2の変形例におけるコネクタ80は、第1接続部11と、第2接続部12と、爪部13a及び13bと、凸部84とを備える。コネクタ80も、例えば銅などの金属材料を用いた、単一の部材により形成される。
【0027】
第2の変形例におけるコネクタ80は、開口部14の代わりに、凸部84を備える点が、実施形態におけるコネクタ10と異なる。コネクタ80の凸部84は、コネクタ80の第1接続部11と第2接続部12とに挟まれた部分から、下側(軸方向の負方向)に突出した部分である。凸部84は、例えば、接続板20に設けられた凹部(不図示)に嵌合される。すなわち、第2の変形例におけるコネクタ80は、爪部13a及び13b、並びに凸部84を介して、接続板20に係合される。これにより、第2の変形例においては、ネジ50を用いる必要が無いため、実施形態と比較して部品点数を削減することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、導線31がコネクタ10に溶着される構成、及び導線91がコネクタ70に溶接される構成について説明したが、引出線とコネクタとを接続する方法はこれに限られず、例えば導線91が半田でコネクタ70に接合されるような構成であってもよい。
【0029】
また、コネクタ70に、開口部14や、凸部84が設けられるような構成であってもよい。コネクタ70が、爪部13a及び13bに加えて、ネジ50や凸部84を介して接続板20に係合されることにより、コネクタ70と接続板20との係合部分における応力に対する耐性を強化することができる。
【0030】
また、コネクタ10が、爪部13a及び13bを備えないような構成であってもよい。この場合においても、コネクタ10は、開口部14を通じてネジ50により接続板20とネジ止めされることにより、接続板20に係合される。この場合、接続板20に爪部13a及び13bに対応する第1開口部23a及び23bに設ける必要がないため、接続板20の加工に要する工数を削減できる。
【0031】
このように、コネクタ10、70及び80の各形状、及び導線31又は91をコネクタ10、70又は80に接続する方法は、第1接続部11、71にかかる応力の大きさや、接続板20の加工コスト、必要な部品点数等を勘案して、適宜変更してもよい。例えば、接続板20がコネクタ10と係合する爪部を備えていてもよく、コネクタ10の爪部13a、13bと、接続板20に備えられた爪部とが相互に係合するような構成であってもよい。
【0032】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 モータ、2 ステータ、3 フレーム、4 ロータ、5 シャフト、10,70,80 コネクタ、11,71 第1接続部、12 第2接続部、13a,13b 爪部、14 開口部、84 凸部、20 接続板、21 配線、30 コイル、31,91 導線
図1
図2
図3
図4
図5
図6