(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】厚み変動を抑制したガラス物品、その製造方法、及びそのための装置
(51)【国際特許分類】
C03B 17/06 20060101AFI20240613BHJP
C03B 25/10 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C03B17/06
C03B25/10
(21)【出願番号】P 2019546208
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(86)【国際出願番号】 US2018019391
(87)【国際公開番号】W WO2018160452
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-29
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ブックバインダー,アンドレア ワイス
(72)【発明者】
【氏名】ボウデン,ブラッドリー フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】キンボール,ロナルド リー
(72)【発明者】
【氏名】タルツァ,スティーヴン ハワード
(72)【発明者】
【氏名】ウェドン,ウイリアム アンソニー
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】河本 充雄
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-246345(JP,A)
【文献】特公昭54-040566(JP,B1)
【文献】特開2013-133246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品であって、
880mm以上の長さと、
前記長さに直交する680mm以上の幅と、
第1の主面、前記第1の主面に対向する第2の主面、及びその間に画成される厚さTと、
を有し、
前記ガラス物品の前記幅全体にわたる全厚み変動TTVが、
1μm以下であることを特徴とする物品。
【請求項2】
前記第1及び第2の主面が無研磨であることを特徴とする、請求項1記載のガラス物品。
【請求項3】
前記第1及び第2の主面の平均表面粗さRaが、0.25nm以下であることを特徴とする、請求項2記載のガラス物品。
【請求項4】
前記ガラス物品の幅にわたり、5mm単位で移動させた、所定のスライド間隔から得られる最大スライド間隔範囲MSIRが、
1μm以下であることを特徴とする、請求項1~3いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項5】
前記所定のスライド間隔が、25mm~750mmであることを特徴とする、請求項4記載のガラス物品。
【請求項6】
ガラス物品であって、
880mm以上の長さと、
前記長さに直交する680mm以上の幅と、
第1の主面、前記第1の主面に対向する第2の主面、及びその間に画成される厚さTと、
を有し、
前記ガラス物品の幅にわたり、5mm単位で移動させた、所定のスライド間隔から得られる最大スライド間隔範囲MSIRが、
1μm以下であり、
前記所定のスライド間隔が、全幅未満であるとともに100mm以下であることを特徴とする物品。
【請求項7】
前記第1及び第2の主面が無研磨であることを特徴とする、請求項6記載のガラス物品。
【請求項8】
前記第1及び第2の主面の平均表面粗さRaが、0.25nm以下であることを特徴とする、請求項7記載のガラス物品。
【請求項9】
880mm以上の長さと、
前記長さに直交する680mm以上の幅と、
第1の主面、前記第1の主面に対向する第2の主面、及びその間に画成される厚さTと、
を有するガラス物品であって、
前記ガラス物品の前記幅全体にわたる全厚み変動TTVが、
1μm以下であり、前記ガラス物品の幅にわたり、5mm単位で移動させた、所定のスライド間隔から得られる最大スライド間隔範囲MSIRが、
1μm以下であることを特徴とするガラス物品。
【請求項10】
前記第1及び第2の主面が無研磨であることを特徴とする、請求項9記載のガラス物品。
【請求項11】
前記第1及び第2の主面の平均表面粗さRaが、0.25nm以下であることを特徴とする、請求項10記載のガラス物品。
【請求項12】
前記所定のスライド間隔が、25mm~750mmであることを特徴とする、請求項9~11いずれか1項記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【関連技術の相互参照】
【0001】
本願は、2017年2月28日出願の米国仮特許出願第62/464,722号の米国特許法第119条(e)項に基づく優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、ガラス板等のガラス物品を形成する装置に関し、特には、ガラス物品の幅全体にわたる厚み変動を最小限に抑制する装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
照明パネル、又は液晶若しくはその他の視覚ディスプレイ等、様々な用途に使用されるガラス板等の光学品質のガラス物品の製造には、通常、溶融ガラスをリボン形態に延伸することが含まれる。このリボンは単一のガラス板に分離されるか、又は場合によって、適切なスプールに長尺で巻設される。ディスプレイ技術の進歩によって、ディスプレイパネルの画素密度、ひいては解像度の向上が続いている。従って、かかるパネルに組み込まれるガラス板に対する要件が増加するものと予想される。例えば、TFT堆積プロセスの円滑な進行に必要な厚み偏差限界が更に縮小されると予想される。この課題に対処するためには、リボンが成形体から延伸されるときに、リボン全体に亘り正確な温度場を維持する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示によれば、約880ミリメートル以上の長さ、長さに直交する約680ミリメートル以上の幅、第1の主面、第1の主面に対向する第2の主面、第1の主面と第2の主面との間に画成される厚さTを有するガラス物品であって、ガラス物品の幅にわたる全厚み変動TTVが約4μm以下である、ガラス物品が記載されている。
【0005】
一部の実施形態において、TTVは約2μm以下である。更に別の実施形態において、TTVは約1μm以下である。更に別の実施形態において、TTVは約0.25μm以下である。様々な実施形態において、第1及び第2の表面は無研磨である。
【0006】
一部の実施形態において、第1及び第2の主面の平均表面粗さRaは、約0.25nm以下である。
【0007】
一部の実施形態において、ガラス物品の幅にわたり、5ミリメートル単位で移動させた所定の間隔から得られる、最大スライド間隔範囲MSIRが約4μm以下である。
【0008】
一部の実施形態において、所定の間隔は、約25mm~約750mm、例えば、約25mm~約75mm等、約25mm~約100mmである。
【0009】
一部の実施形態において、幅は約3100mm以上である。長さは約3600mm以上とすることができる。
【0010】
一部の実施形態において、ガラスは、モルパーセントで、
SiO2 60~80
Al2O3 5~20
B2O3 0~10
MgO 0~20
CaO 0~20
SrO 0~20
BaO 0~20
ZnO 0~20
を含む、実質的にアルカリを含まないガラスであってよい。
【0011】
一部の実施形態において、ガラスは、モルパーセントで、
SiO2 64.0~71.0
Al2O3 9.0~12.0
B2O3 7.0~12.0
MgO 1.0~3.0
CaO 6.0~11.5
SrO 0~2.0
BaO 0~0.1
を含む、実質的にアルカリを含まないガラスであってよい。ここで、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3] ≦1.25であり、[Al2O3]は、モルパーセントのAl2O3、Σ[RO]は、MgO、CaO、SrO、及びBaOのモルパーセントの合計である。
【0012】
別の実施形態において、約880ミリメートル以上の長さ、長さに直交する約680ミリメートル以上の幅、第1の主面、第1の主面に対向する第2の主面、第1の主面と第2の主面との間に画成される厚さTを有するガラス物品であって、ガラス物品の幅にわたり、5ミリメートル単位で移動させた、約750mm以下のスライド間隔から得られる最大スライド間隔範囲MSIRが、約8μm以下である、ガラス物品が記載されている。
【0013】
一部の実施形態において、約400mmのスライド間隔に対するMSIRは約6.5μm以下である。
【0014】
一部の実施形態において、約330mmのスライド間隔に対するMSIRは約6μm以下である。
【0015】
更に別の実施形態において、約150mmのスライド間隔に対するMSIRは約4.5μm以下である。
【0016】
別の実施形態において、約100mmのスライド間隔に対するMSIRは約4μm以下である。
【0017】
様々な実施形態において、約25mmのスライド間隔に対するMSIRは約2μm以下である。
【0018】
一部の実施形態において、第1及び第2の主面は無研磨である。
【0019】
様々な実施形態において、第1及び第2の主面の平均表面粗さRaは、約0.25nm以下である。
【0020】
様々な実施形態において、幅は約3100mm以上である。一部の実施形態において、長さは約3600mm以上である。
【0021】
更に別の実施形態において、約880ミリメートル以上の長さ、長さに直交する約680ミリメートル以上の幅、第1の主面、第1の主面に対向する第2の主面、第1の主面と第2の主面との間に画成される厚さTを有するガラス物品であって、ガラス物品の幅にわたる全厚み変動TTVが約4μm以下、ガラス物品の幅にわたり、5ミリメートル単位で移動させた、所定の間隔から得られる最大スライド間隔範囲MSIRが約4μm以下である、ガラス物品が記載されている。
【0022】
一部の実施形態において、TTVが、約2μm以下、例えば、約0.25μm等、約1μm以下である。
【0023】
一部の実施形態において、第1及び第2の主面は無研磨である。一部の実施形態において、無研磨の第1及び第2の主面の平均表面粗さRaは約0.25nm以下である。
【0024】
一部の実施形態において、所定の間隔は約25mm~約750mmである。
【0025】
一部の実施形態において、所定の間隔は約25mm~約100mm、例えば、約25mm~約75mmである。
【0026】
更に別の実施形態において、ガラスプラッターブランクであって、第1の主面、第1の主面に対向する第2の主面、及び第1の主面と第2の主面との間に画成される厚さTを有し、ガラスプラッターブランクの直径にわたる全厚み変動TTVが、約2μm以下、例えば、約1μm以下である、プラッターブランクが記載されている。
【0027】
一部の実施形態において、ガラスプラッターブランクのある直径にわたり、5mm単位で移動させた、25mmの間隔から得られる最大スライド間隔範囲MSIRが、約2μm以下である。
【0028】
ガラスプラッターブランクの第1及び第2の主面の一方又は両方の平均表面粗さRaは、約0.50nm以下、例えば、約0.25nm以下とすることができる。
【0029】
別の実施形態において、ガラス物品を製造する方法であって、ガラスリボンを成形体から延伸方向に延伸するステップであって、ガラスリボンが、対向する縁部部分、及び対向する縁部部分の間に配置された中央部分を有し、ガラスリボンが、粘性ゾーン及び弾性ゾーンを含む、ステップと、ガラスリボンの粘性ゾーンにおいて、中央部分に、延伸方向に直交するガラスリボンの幅方向に、約225mm以下の特性幅を有する厚み摂動を形成するステップとを備え、粘性ゾーンにおける中央部分の幅にわたり、5mm単位で移動させた、100mmのスライド間隔から得られる最大スライド間隔範囲が、約0.0025mm以下である方法が記載されている。
【0030】
一部の実施形態において、特性幅が約175mm以下であり、最大スライド間隔範囲が約0.0020mm以下である。
【0031】
一部の実施形態において、特性幅が約125mm以下であり、最大スライド間隔範囲が約0.0015mm以下である。
【0032】
一部の実施形態において、特性幅が約75mm以下であり、最大スライド間隔範囲が約0.0006mm以下である。
【0033】
更に別の実施形態において、特性幅が約65mm以下であり、最大スライド間隔範囲が約0.0003mm以下である。
【0034】
様々な実施形態において、ガラスリボンを冷却することによって摂動を形成することができるが、更なる実施形態では、例えば、ガラスリボンに作用する1つ以上のレーザービームを使用して、ガラスリボンを加熱することによって摂動を形成することができる。
【0035】
一部の実施形態において、成形体の底縁部と厚み摂動の最大厚との距離が、約8.5cm以下であり、別の実施形態では、成形体の底縁部と厚み摂動の最大厚との距離は約3.6cm以下とすることができる。
【0036】
様々な実施形態において、弾性ゾーンにおける、中央部分の延伸方向に直交する幅方向の全厚み変動が約4μm、例えば、約1μm以下等、約2μm以下である。
【0037】
更に別の実施形態において、ガラス物品を製造する方法であって、溶融ガラスを成形体のトラフに流すステップであって、溶融ガラスが、トラフから溢れ出て、成形体の底縁部において合流する別々の溶融ガラス流として、成形体の対向する成形面に沿って下降する、ステップと、溶融ガラスのリボンを底縁部から延伸方向に延伸するステップと、延伸方向に直交するガラスリボンの幅方向に延びる熱板を有する冷却装置を用いて、リボンを冷却するステップであって、冷却装置が、冷却装置内に配置された複数の冷却管を更に有し、複数の冷却管の各々が、熱板に隣接する閉端部を有する第1の管、及び第1の管の閉端部から離間した開放端部を有し、第1の管内に延びる第2の管を有し、冷却するステップが、複数の冷却管の第2の管に冷却流体を流すステップを含み、冷却するステップが、各々の冷却管の位置に対応するリボン上に、複数の厚み摂動を形成するステップを更に含み、各々の厚み摂動が、約225mm以下の特性幅を有するステップと、を備えた方法が開示されている。
【0038】
一部の実施形態において、特性幅が、約175mm以下、例えば、約125mm以下、約75mm以下、又は約65mm以下である。
【0039】
複数の冷却管の各々は、熱板に接触していてよい。
【0040】
更に別の実施形態において、ガラスリボンを製造する装置であって、成形体であって、溶融ガラス流を受け取るように構成されたトラフ、及び成形体の底縁部であって、そこから垂直延伸面に沿ってガラリボンが延伸される、底縁部に沿って接合する収束成形面を有する成形体と、冷却装置であって、溶融ガラス流の幅方向に延びる熱板、及び冷却装置内に配置された複数の冷却管を有し、複数の冷却管の各々が、熱板に隣接する閉端部を有する第1の管、及び記第1の管の閉端部に隣接する開放端部を有し、第1の管内に延びる第2の管を有する、冷却装置と、を備えた装置が開示されている。
【0041】
一部の実施形態において、複数の冷却管の各々の第1の管が、熱板に接触している。
【0042】
一部の実施形態において、各々の第1の管の長手方向軸が、底縁部から約8.5cm以下、例えば、約3.6cm以下の距離において、前記延伸平面と交差している。
【0043】
延伸面と熱板との距離が、約9cm以下、例えば、約1.5cm以下である。
【0044】
更に別の実施形態において、ガラスリボンを製造する装置であって、成形体であって、溶融ガラス流を受け取るように構成されたトラフ、及び前記成形体の底縁部であって、そこから垂直延伸面に沿ってガラリボンが延伸される、底縁部に沿って接合する収束成形面を有する成形体と、底縁部の下方に配置された冷却装置であって、溶融ガラス流の幅方向に延びる金属板であって、金属板内に形成された複数の通路を有し、複数の通路の各々が、閉鎖遠位端部及び開放近位端部を有する金属板、及び冷却管であって、冷却管の開放遠位端部が、通路の遠位端部に隣接かつ離間するように、開放近位端部を通して延びる冷却管を有する冷却装置と、を備えた装置が記載されている。
【0045】
一部の実施形態において、延伸面と金属板との距離が、約10cm以下、例えば、約3cm以下等、約5cm以下である。一部の実施形態において、延伸面と金属板との距離が、約1.5cm以下であるが、成形体底縁部の下方における冷却装置の位置に基づいて、他の距離も考えられている。
【0046】
本開示の更なる特徴及び効果は、これに続く詳細な説明に述べてあり、当業者はその記述から、一部は容易に明らかであり、これに続く詳細な説明、特許請求の範囲、及び添付図面を含め、本明細書に記載の方法を実施することによって認識できるであろう。
【0047】
前述の概要説明及び以下の詳細な説明は、いずれも本開示の様々な実施形態を示すものであって、特許請求の範囲の性質及び特徴を理解するための概要、及び枠組みの提供を意図したものであることを理解されたい。添付図面は、本開示について更なる理解が得られることを意図して添付したもので、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するものである。図面は本開示の様々な実施形態を示すもので、その説明と併せ、本開示の原理及び作用の説明に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本開示の実施形態によるガラス板の形態を成すガラス物品の斜視図。
【
図2】厚み偏差を示す例示的なガラス板及び全厚み変動(TTV)の測定を示す端視図。
【
図3】厚み偏差を示す例示的なガラス板及び最大スライド間隔範囲(MSIR)の測定を示す端視図。
【
図4】本開示の実施形態によるHDDのプラッターブランク
【
図7】本開示の様々な実施形態による
図6の装置の部分拡大図。
【
図8】本開示の別の実施形態による
図6の装置の部分拡大図。
【
図9A】
図6に示すスライドゲートの実施形態を上から見た断面図。
【
図9B】
図6に示すスライドゲートの実施形態を端部から見た断面図。
【
図10】スライドゲートの別の実施形態を上から見た断面図。
【
図11】スライドゲートの別の実施形態を上から見た部分断面図。
【
図12】スライドゲートの更に別の実施形態を上から見た部分断面図。
【
図13】スライドゲートの更に別の実施形態を上から見た部分断面図。
【
図14】能動的に冷却したスライドゲートでモデル化した厚さと比較した、能動的に冷却したスライドゲートを備えていない、
図5のガラス製造装置を使用して延伸したリボンの幅にわたる位置を関数とする実際の厚さをプロットした図。
【
図15】
図14の実際の厚さとモデル化した厚さとの差をプロットした図。
【
図16】能動的に冷却したスライドゲートでモデル化した厚さと比較した、能動的に冷却したスライドゲートを備えていない、
図5のガラス製造装置を使用して延伸したリボンの幅にわたる位置を関数とする実際の厚さをプロットした図であって、更に測定データとモデル化したデータの各々について、25mmのスライド間隔に対するΔTmaxを含む図。
【
図17】
図16の測定データ及びモデル化したデータの各々について、100mmのスライド間隔に対するΔT
maxをプロットした図。
【
図18】3つの異なるスライドゲート位置(リボンからの距離)について、例示的な成形体から延伸されたリボンの下端部(根底部)から下方の距離を関数とするモデル化した厚み摂動振幅をプロットした図。
【
図19】
図18の4つのスライドゲート位置について、例示的な成形体から延伸されたリボンの中心線に対するリボンの幅にわたる距離を関数とするモデル化した厚み変化をプロットした図。
【
図20】
図18の4つのスライドゲート位置のうちの1つについて、例示的な成形体から延伸されたリボンの中心線に対するリボンの幅にわたる距離を関数するモデル化した厚み変化をプロットした図であって、厚み変化に関連する温度変動を更に示す図。
【
図21】
図18の4つのスライドゲート位置のうちの別の1つについて例示的な成形体から引き出されたリボンの中心線に対するリボンの幅にわたる距離を関数するモデル化した厚み変化をプロットした図であって、厚み変化に関連する温度変動を更に示す図。
【
図22】例示的な成形体から延伸されたリボンの厚み摂動のFWHM(特性幅)を関数とするモデル化した100mmのMSIRをプロットした図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
添付図面に例を示す、本開示の実施形態を以下詳細に説明する。図面全体を通し、可能な限り、同じ又は同様の部品には同じ参照番号が付してある。しかし、本開示は多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきものではない。
【0050】
本明細書において、範囲は「約」1つの値から及び/又は「約」別の特定の値までと表現することができる。かかる範囲が示されたとき、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/又は別の特定の値までを含んでいる。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として示されて場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。更に、各範囲の端点は、別の端点に関連して、及び別の端点とは無関係に有意であることが更に理解されるであろう。
【0051】
本明細書において、例えば、上方、下方、右、左、前方、後方、上部、下部等の方向を示す用語は、図示のみを参照したものであって、絶対的な方向を暗示することを意図するものではない。
【0052】
特に断りのない限り、本明細書に記載の方法は、そのステップが特定の順序で実行される必要があること、及びすべての装置が特定の配向を必要とすることを意図するものでは決してない。従って、方法クレームが、そのステップが従うべき順序を実際に列挙していない場合、又は装置クレームが、個々の構成要素に対する順序若しくは向きを実際に列挙していない場合、あるいは、ステップが特定の順序に限定されるべきであること、又は装置の構成要素に対する特定の順序若しくは向きが、特許請求の範囲又は明細書に特に明記されていない場合、如何なる点においても、順序や方向が推測されることを意図したものでは決してない。これはステップの配列、動作フロー、構成要素の順序、又は構成要素の配向に関する論理的事項、文法体系又は句読法から派生した平易な意味、及び明細書に記載の実施形態の番号若しくは種類にも適用される。
【0053】
本明細書において、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別に解釈されない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「ある」構成要素と言った場合、文脈上明らかに別に解釈されない限り、2つ以上のかかる構成要素を有する実施形態を含む。
【0054】
本明細書において、全厚み変動(TTV)は、定義された間隔υ、一般的にはガラスシーの全幅にわたるガラス板の最大厚と最小厚との差を意味する。
【0055】
本明細書において、最大スライド間隔範囲(MSIR)は、複数の定義された区間にわたるガラス基板の最大厚と最小厚との差を意味する。MSIRは、ガラス板の所定の寸法にわたって、所定の長さ単位δで、n回移動した目標間隔κであって、各々の繰り返しによって最大厚み差ΔTmaxがもたらされる目標間隔から得られる、複数の最大厚み差のうちの最大厚み差として取得される。各々の目標間隔κnは、最大厚Tmaxn、最小厚Tminn、及びΔTmaxn=Tmaxn-Tminnで定義される最大厚み差を含んでいる。前述のプロセスにより、nΔTmaxnが得られ、nΔTmaxnのうちの最大厚み差が最大スライド間隔範囲MSIRである。間隔κが間隔υに等しくなると、MSIRはTTVに等しくなることに留意されたい。
【0056】
本明細書において、曲線の一部の半値全幅(FWHM)は、最大振幅の半分であるy軸上の点間で測定された部分の幅であり、同義的に曲線の特性幅と呼ばれている。FWHMは、例えば、曲線又は関数上の隆起幅の記述に使用することができる。
【0057】
ディスプレイの解像度が向上するにつれ、ディスプレイパネルを構成するガラス基板の厚さの均一性に対する要求も高まっている。代表的なLCDディスプレイパネルには、例えば、フォトリソグラフィーによって、薄膜トランジスタTFTのパターンが堆積されたバックプレーンガラス基板を含み、パターンによってバックプレーン基板とそれに封止されたカバー又は封止基板との間の容積に含まれる液晶材料の偏光状態が制御され、TFTがディスプレイの個々の画素の定義に役立っている。かかる薄膜の堆積プロセスは、フォトリソグラフィープロセスの限られた焦点深度に対応するために平坦な基板に依存している。
【0058】
別の例において、ハードディスクドライブ(HDD)プラッターとして、環状ガラスディスクを使用することができる。ピックアップアームの読み取り及び/又は書き込みヘッドが、プラッター表面からほんの数ナノメートル上方を移動するため、プラッターは非常に平坦でなければならない。これらの環状ガラスディスクは、大きいガラス板から多数に切断することができ、大きいガラス板の主面、又はそこから切断された個々の環状ディスクの研削及び/又は研磨の必要性を排除することができれば、有意な製造コストを実現することができる。従って、厚み変動を抑制したガラス板、及び成形後の表面研削及び/又は研磨を必要とせずに、かかる並外れた平坦性を有する大きいガラス板を製造することができる製造方法が有用であろう。
【0059】
図1は、ガラス物品、例えば、第1の主面12、対向する第2の主面14、並びに第1及び第2の主面に直交し、その間に画成される厚さTを有するガラス板10の概略図である。ガラスシート10は、特定の用途に適した任意の形状であってよいが、特に明記しない限り、説明を簡単にするために、以下、ガラス板10は、対向する第1の縁部対16a、16b及び第2の対向する縁部対16c、16dによって境界された方形を有し、縁部対16a、16bが縁部対16c、16dと直交しているものと仮定する。従って、本明細書に記載のガラス板は、幅W及び幅Wに直交する長さLを有することができ、幅及び長さは各々対向する縁部のそれぞれの対と平行で幅と長さの向きは任意に選択することができるが、便宜上、幅Wは2次元の短い方として示し、逆に長さLは2次元の長い方として示す。従って、本明細書に記載のガラス板は、約680mm以上の幅、例えば、約1000mm以上、約1300mm以上、約1500mm以上、約1870mm以上、約2120mm以上、約2300mm以上、約2600mm以上、又は約3100mm以上の幅を有し得る。それぞれの長さは、約880mm以上、約1200mm以上、約1500mm以上、約1800mm以上、約2200mm以上、約2320mm以上、約2600mm以上、又は約3600mm以上であってよい。例えば、本明細書に記載のガラス板は、W×Lで示す寸法で、約680mm×880mm以上、約1000mm×1200mm以上、約1300mm×1500mm以上、約1500mm×1800mm以上、約1870mm×2200mm以上、約2120mm×2320mm以上、約2300mm×2600mm以上、約2600mm×3000mm以上、又は約3100mm×3600mm以上を有することができる。
【0060】
第1及び/又は第2の主面は、約0.5nm以下、約0.4nm以下、約0.3nm以下、約0.2nm以下、約0.1nm以下、又は約0.1nm~0.6nmの平均粗さRaを有することができる。一部の実施形態において、第1及び第2の主面12、14の延伸したままの状態における表面粗さを約0.25nmとすることができる。延伸したままの状態とは、例えば、表面の研削又は研磨等の表面処理を施していない、ガラス物品成形時のガラス物品の表面粗さを意味する。表面粗さは、コヒーレンス走査干渉法、共焦点顕微鏡法、又はその他の適切な方法で測定される。
【0061】
厚さTは、4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1.5mm以下、約1mm以下、約0.7mm以下、約0.5mm以下、又は約0.3mm以下とすることができる。例えば、一部の実施形態において、厚さTは、約0.05mm~約0.1mm等、約0.1mm以下とすることができる。
【0062】
本明細書に記載のガラス物品は、約4μm以下、例えば、約3μm以下、約2μm以下、約1μm以下、約0.5μm以下、又は約0.25μm以下の全厚み変動TTVを示すことができる。
【0063】
本明細書に記載のガラス物品は、5mm単位δでの約25mm以下のスライド間隔κに対して約2μm以下、5mm単位δでの約100mm以下のスライド間隔κに対して約4μm以下、5mm単位δでの約150mm以下のスライド間隔κに対して約4.5μm以下、5mm単位δでの約330mm以下のスライド間隔κに対して約6μm以下、5mm単位δでの約400mm以下のスライド間隔κに対して約6.5μm以下、又は5mm単位δでの約750mm以下のスライド間隔κに対して約8.5μm以下の最大スライド間隔範囲を示すことができる。
【0064】
本明細書に記載のガラス物品は、一部の実施形態において、2つ以上のガラス層を有することができる。例えば、溶融プロセスによって様々なガラス板を成形することができ、従って、ガラス物品の縁部から見える融合線18(
図2、3を参照)を含んでいる。融合線は、製造プロセス中に融合したガラス層間の界面を示している。一部の実施形態において、少なくとも2つのガラス層は同じ化学組成である。しかし、別の実施形態において、層は別の化学組成を有することができる。
【0065】
ここで、
図4の一部の実施形態において、ガラス物品は、HDDプラッター用のプリフォーム(「ブランク」)等のガラスディスクであってよい。本明細書において、「プラッターブランク」は、その表面であって形成されたままの主面に、磁気媒体が堆積される前のガラスディスクを意味すると解釈されたい。
図4に示すように、プラッターブランク20は、第1の形成されたままの主面22、第2の形成されたままの主面24、及びその間に定義される厚さTを有している。プラッターブランクの縁部を仕上げる(例えば、研削及び/又は研磨する)ことができる。本明細書において、形成されたままという用語は、主面に研削及び/又は研磨が施されていないことを意味する、但し、一部の実施形態では、化学処理、例えば、イオン交換処理を主面に施すことができることを意味する。プラッターブランク20は、約100mm以下、例えば約98mm以下、例えば約96mm以下の直径Dを有することができる、但し、更なる実施形態では、プラッターブランクは、100mmより大きい直径を有することができる。一部の実施形態において、プラッターブランク20は、プラッターブランクの外周と同心の中央切り抜き26を有する環状ディスクであってよい。プラッターブランクの表面粗さRaは約0.5nm以下、例えば、約0.25nm以下である。プラッターブランクのTTVは、約4μm以下、例えば約3μm以下、例えば約2μm以下、又は約1μm以下である。プラッターブランクのMSIRは、プラッターブランクの主面、例えば、直径Dにわたり、5mm単位で移動させた25mmの間隔に対して約2μm以下である。プラッターブランクは、例えば、本明細書に記載のように、ガラス板から複数のプラッターブランクを切断することによって形成することができる。
【0066】
一部の実施形態において、本明細書に記載のガラス物品は、高いアニール点と高いヤング率を有する無アルカリガラスを含み、例えば、TFTの製造中に優れた寸法安定性(即ち、低圧縮性)を示すことができるため、TFTプロセス中のばらつきが抑制される。高いアニール点を有するガラスは、ガラス製造後の熱処理において、圧縮(収縮)によるパネルの歪みを防止するのに役立つ。加えて、本開示の一部の実施形態は、高いエッチング速度を有することができ、バックプレーンの経済的な薄層化、及び非常に高い液相粘度を可能にするため、比較的低温の成形体における失透の可能性が抑制又は排除される。
【0067】
一部の実施形態において、ガラスは約785℃、790℃、795℃、又は800℃を超えるアニール点を有することができる。特定の動作理論に束縛されるものではないが、かかる高いアニーリング点は、緩和率が低く、従って、圧縮量が比較的少ないと考えられている。
【0068】
一部の実施形態において、例示的なガラスは、約1340℃以下、約1335℃以下、約1330℃以下、約1325℃以下、約1320℃以下、約1315℃以下、約1310℃以下、約1300℃以下、又は約1290℃以下の温度において、約35,000ポアズの粘度(T35k)を有することができる。特定の実施形態において、ガラスは、約1310℃以下温度において、約35,000ポアズの粘度(T35k)を有することができる。別の実施形態において、約35,000ポアズの粘度(T35k)における、例示的なガラスの温度は、約1340℃以下、約1335℃以下、約1330℃以下、約1325℃以下、約1320℃以下、約1315℃以下、約1310℃以下、約1300℃以下、又は約1290℃以下である。様々な実施形態において、ガラスは、約1275℃~約1340℃、又は約1280℃~1315℃において、T35kを有することができる。
【0069】
ガラスの液相温度(Tliq)は、それ以上では結晶相がガラスと平衡状態で共存することができない温度である。様々な実施形態において、本明細書に記載のガラス板形成に使用されるガラスのTliqは、約1180℃~約1290℃、又は約1190℃~約1280℃である。別の実施形態において、ガラスの液相温度に対応する粘度は、約150,000ポアズ以上である。一部の実施形態において、ガラスの液相温度に対応する粘度は、約100,000ポアズ以上、約175,000ポアズ以上、約200,000ポアズ以上、約225,000ポアズ以上、又は約250,000ポアズ以上である。
【0070】
更に別の実施形態において、例示的なガラスは、T35k-Tliq>0.25T35k-225℃とすることができる。これによって、溶融プロセスの成形体において、溶融状態のガラスが失透する傾向が最小限に抑制される。
【0071】
本明細書に記載のガラスは、約650℃以上のひずみ点を有することができる。0~300℃の温度範囲にわたる、ガラスの様々な実施形態の熱膨張係数(CTE)は、28×10-7/℃≦CTE≦34×10-7/℃の関係を満たすことができる。
【0072】
1つ以上の実施形態において、ガラスは、酸化物ベースのモルパーセントで、
SiO2 60~80
Al2O3 5~20
B2O3 0~10
MgO 0~20
CaO 0~20
SrO 0~20
BaO 0~20
ZnO 0~20
を含む、実質的にアルカリを含まないガラスであってよい。ここで、Al2O3、MgO、CaO、SrO、BaOは、それぞれの酸化物成分のモルパーセントを示す。本明細書において「実質的にアルカリを含まないガラス」は、総アルカリ濃度が、約0.1モルパーセント以下のガラスであって、総アルカリ濃度は、Na2O、K2O、及びLi2Oの濃度の合計である。
【0073】
1つ以上の実施形態において、ガラスは、酸化物ベースのモルパーセントで、
SiO2 65~75
Al2O3 10~15
B2O3 0~3.5
MgO 0~7.5
CaO 4~10
SrO 0~5
BaO 1~5
ZnO 0~5
を含む、実質的にアルカリを含まないガラスであってよい。ここで、1.0≦(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3<2、及び0<MgO/(MgO+Ca+SrO+BaO)<0.5である。
【0074】
特定の実施形態において、ガラスは、酸化物ベースのモルパーセントで、
SiO2 67~72
Al2O3 11~14
B2O3 0~3
MgO 3~6
CaO 4~8
SrO 0~2
BaO 2~5
ZnO 0~1
を含む、実質的にアルカリを含まないガラスであってよい。ここで、1.0≦(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3<1.6、及び0.20<MgO/(MgO+Ca+SrO+BaO)<0.40である。
【0075】
一部の実施形態において、ガラスは、酸化物ベースのモルパーセントで、
SiO2 64.0~71.0
Al2O3 9.0~12.0
B2O3 7.0~12.0
MgO 1.0~3.0
CaO 6.0~11.5
SrO 0~2.0
BaO 0~0.1
を含む、実質的にアルカリを含まないガラスであってよい。ここで、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3] ≦1.25であり、[Al2O3]はモルパーセントのAl2O3、Σ[RO]はMgO、CaO、SrO、及びBaOのモルパーセントの合計である。
【0076】
別の実施形態において、ガラスは、酸化物ベースのモルパーセントで、
SiO2 64.0~71.0
Al2O3 9.0~12.0
B2O3 7.0~12.0
MgO 1.0~3.0
CaO 6.0~11.5
SrO 0~1.0
BaO 0~0.1
を含む、実質的にアルカリを含まないガラスであってよい。ここで、Σ[RO]/[Al2O3] ≧1.00であり、[Al2O3]はモルパーセントのAl2O3、Σ[RO]はMgO、CaO、SrO、及びBaOのモルパーセントの合計である。
【0077】
ダウンドローシート延伸プロセス、特にフュージョンプロセスを使用して、本明細書に記載のガラス物品を製造することができる。特定の理論に束縛されるものではないが、フュージョンプロセスは、その後の製造プロセスにおいて使用される前に、ガラス物品の主面の研削及び/又は研磨を必要としないガラス基板を製造することができると考えられている。例えば、最新のガラス基板研磨において、原子間力顕微鏡で測定した、平均表面粗さ(Ra)が約0.5nmを超えるガラス基板をもたらすことができる。フュージョンプロセスによって製造されたガラス物品、例えば、ガラス板は、原子間力顕微鏡で測定した場合、約0.5nm以下、例えば、約0.25nm以下の平均表面粗さを有することができる。勿論、本明細書に記載の実施形態は、スロットドロー、フロート、圧延、及び当業者周知の他のシート成形プロセスを含み、これに限定されない他の成形プロセスに適用可能であるため、添付の特許請求の範囲はフュージョンプロセスに限定されるものではない。
【0078】
ガラス板を製造するための前述の代替方法と比較して、フュージョンプロセスは、清浄無垢な表面を有する、非常に薄く、非常に平坦、かつ非常に均一な板を製造することができる。スロットドローも、清浄無垢な表面をもたらすことができるが、オリフィス形状の経時変化、オリフィスとガラスの界面での揮発性デブリの蓄積、及び真に平坦なガラス板をもたらすオリフィスの形成に課題があるため、スロットドローガラスの寸法の均一性及び表面品質は、概して、フュージョンドローガラスより劣る。フロートプロセスは非常に大きい均一なシートをもたらすことができるが、一方の表面がフロート浴に接触し、他方の表面がフロート浴からの凝縮物に暴露されるため、表面は実質的に損なわれる。このことは、高性能ディスプレイ用途において使用する前に、フロートガラスを研磨する必要があることを意味する。
【0079】
ガラス物品のフュージョン成形の前述の利点にもかかわらず、ガラスシートの新たな用途は、最新の製造技術の限界を押し広げ続けている。例えば、視覚ディスプレイ装置の解像度を向上させる傾向によって、ディスプレイを制御する電子部品、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)が堆積されるガラス基板に対し、厳しい仕様が要求されている。通常、これ等のTFT構成要素は、フォトリソグラフィーによって堆積され、TFTの密度を高めて、ディスプレイの解像度を向上させるためには、フォトイメージング装置の浅い焦点深度に対応するために、非常に平坦なガラスが必要である。
【0080】
他の技術も非常に平坦なガラス板を必要とし得る。例えば、HDDプラッターの面密度の増加に対する要求が、HDD業界にガラスの採用を推し進めている。実際、ガラスプラッターは、アルミニウムプラッターと比較して少なくとも幾つかの利点を有しているため、最新のHDD、特にラップトップコンピュータのHDD用途において、一般的になってきている。ガラスプラッターは、アルミニウムよりも滑らかな表面を有するように構成することができるため、高い面密度及び非常に小さい読み書きヘッドの飛行高さに対応することができる。ガラスは、同等の材料重量に対してより高い剛性を示し、同等の厚さに対してより強いため、ガラスプラッターは、アルミニウムプラッターより薄くすることができ、所与の装置空間に対してより多くのプラッターを収容することができる。加えて、ガラスはアルミニウムのように腐食することはなく、磁気媒体を堆積する前にニッケルメッキを必要とせずに使用することができる。アルミニウムと比較してガラスの熱膨張係数が比較的低いため、熱安定性が向上し、トラックの動きとドライブのサーボ機構に必要な補償量が減少し、熱アシスト磁気記録等の新しい記録技術が推進される。また、プラッターのガラス表面はアルミニウムプラッターの表面より硬いため、ヘッドクラッシュによる損傷を受け難い。
【0081】
HDD用のガラスプラッターの製造は、通常、ガラス板を小さいクーポン(例えば、正方形)に切断し、次いでクーポンから環状ディスクを切断することに依存している。しかし、ディスクドライブの動作中、読み書きヘッドが、プラッターの表面からほんの数ナノメートル上に配置されるため、プラッターは非常に平坦で、厚さが殆んど又は全く変化しないことが必要である。従って、これらの要件を満足しないプラッターは、必要な平坦度を達成するために研削及び/又は研磨する必要がある。しかし、研削及び/又は研磨によって、製造プロセスに工程とコストが追加される。別の製造方法において、溶融ガラス塊が2つのダイス間でプレス成形される。しかし、プレス成形法は、必要な寸法要件を満足することができず、前述のように、次の処理の前にプラッターブランクを研削及び/又は研磨する必要がある。
【0082】
前述の観点から、厚み変動を最小限に抑制したガラスの平坦な板を製造する能力は、将来の製品要件を満足することができるという保証を与えることができる。これを行うためには、フュージョンダウンドロープロセスにおいて、成形チャンバーに配置された成形体からリボンの形態で延伸され、特に延伸方向に直交する横方向(幅方向)の形状と厚さを制御するための様々な温度制御機器を含む冷却チャンバーを介した、ガラス板の正確な温度制御が必要である。過去において、かかる制御装置及び方法には、リボン又は成形体からリボンが延伸されるとき、成形体上を流れるガラスに冷却剤、即ち、清浄な乾燥空気等のガスを吹き付けることが含まれていた。別の方法には、高熱伝導性材料板の背後かかる管を配置することが含まれていた。いずれの手法もガスが作用した表面から外部に向けたガスの分散であるスプラッシュに悩まされている。第1の例において、溶融ガラス自体に噴射されるガスが、溶融ガラス上で全方向に広がり、それによって、1つ冷却管を隣接する冷却管に近接配置することが制限される。冷却管の間隔が狭過ぎると、1つの冷却管からの飛沫と隣接冷却管からの飛沫が干渉する可能性がある。この干渉によって、概して制御されない冷却領域が、ガス流が作用した点と点との間に設定される可能性がある。加えて、冷却及び/又は成形チャンバー対するガス流の導入によって、チャンバー内の制御環境を混乱させる可能性があって、それによってリボンの幅全体にわたる意図しない温度変動が生じる。かかる温度変動によって、厚み変動、形状変化、及び残留応力が生じる可能性がある。従って、ガスを直接チャンバーに排出するオープンエンドの冷却管を使用する場合、1つの冷却管からのガスが、隣接する冷却管と干渉しないように十分な距離を設ける必要があり、達成可能な厚さ制御が制限される。加えて、冷却剤が溶融ガラスに直接作用するため、液体冷却剤の使用は適さない。気体の熱容量は一般に液体よりも遥かに小さいため、かかるガスを直接作用させるシステムの冷却能力は損なわれる。最後に、壁を通して成形及び/又は冷却チャンバー内に延びる冷却管の並列配置は、チャンバー内への多くの別個のポータルの封止、及び冷却管とチャンバー壁との間の漏れが、チャンバー内の環境破壊に繋がる可能性があるため、かかる封止の保全が必要になる。
【0083】
第2の例において、冷却管を高熱伝導性板の背後に配置することによって、冷却剤が溶融ガラスに直接作用することが回避される。しかし、かかるシステムは、依然としてスプラッシュの影響を受ける可能性があり、高熱伝導性板上の1つの冷却管によるスプラッシュは、隣接冷却管によるスプラッシュと干渉する可能性があるため、この場合も、高熱伝導性板上に、温度があまり制御されない管間領域が生成される。従って、前述の場合と同様に、冷却管の間隔を狭くすることに制約がある。加えて、冷却管がリボンに面する高熱伝導性板を備えた容器内に含まれている場合でも、容器からチャンバーにガスが漏れる危険がある。
【0084】
図5に示すのは、本開示の実施形態による、例示的なフュージョンダウンドローガラス製造装置30である。一部の実施形態において、ガラス製造装置30は、溶融容器34を有することができるガラス溶融炉32を備えることができる。溶融容器34の他に、ガラス溶融炉32は、必要に応じ、原料を加熱して原料を溶融ガラスに変換するように構成された加熱要素(例えば、燃焼バーナー及び/又は電極)等の1つ以上の構成要素を更に有することができる。例えば、溶融容器34は、電気的に昇温される溶融容器であってよく、燃焼バーナーと直接加熱の両方によって、エネルギーが原料に加えられ、電流が原料を通して流れ、ジュール加熱によってエネルギーが原料に追加される。
【0085】
別の実施形態において、ガラス溶融炉32は、溶融容器からの熱損失を低減する熱管理装置(例えば、断熱要素)を有することができる。更に別の実施形態において、ガラス溶融炉32は、原料をガラス融液に融解するのを促進する電子装置及び/又は電気機械装置を有することができる。更に、ガラス溶融炉32は、支持構造体(例えば、支持シャーシ、支持部材等)又は他の構成要素を有することができる。
【0086】
ガラス溶融容器34は、一般に、耐火性セラミック材料、例えば、アルミナ又はジルコニアを含む、耐火性セラミック材料等の耐火性材料で形成される、但し、耐火性セラミック材料は、代替として又は任意の組み合わせで使用される、イットリウム(イットリア、イットリア安定化ジルコニア、リン酸イットリウム)、ジルコン(ZrSiO4)、又はアルミナジルコニアシリカ、あるいは酸化クロムを含むことができる。一部の実施例において、ガラス溶融容器34を耐火性セラミック煉瓦で構成することができる。
【0087】
一部の実施例において、例えば、不定長のガラスリボンである、ガラス物品を製造するように構成されたガラス製造装置の構成要素として、溶融炉32を組み込むことができるが、更なる実施形態では、ガラス製造装置は、ガラス棒、ガラス管、ガラス覆い(例えば、照明装置用のガラス覆い、例えば電球)及びガラスレンズ等を含み、これに限定されない他のガラス物品を形成するように構成することができ、また他の多くのガラス物品についても考えられている。一部の実施例において、スロットドロー装置、フロート浴装置、ダウンドロー装置(例えば、フュージョンダウンドロー装置)、アップドロー装置、プレス装置、圧延装置、管引き装置、又は本開示から利益を得ると思われる任意の他のガラス製造装置を備えたガラス製造装置の構成要素として、溶融炉を組み込むことができる。例として、
図5)は、その後、個別のガラス板に処理又はスプールに巻設されるガラスリボンを溶融延伸する、フュージョンダウンドローガラス製造装置30の構成要素としてのガラス溶融炉32の概略図である。
【0088】
ガラス製造装置30(例えば、フュージョンダウンドロー装置30)は、必要に応じ、ガラス溶融容器34の上流に配置された上流ガラス製造装置36を備えることができる。一部の実施例において、上流ガラス製造装置36の一部又は全部をガラス溶融炉32の一部として組み込むことができる。
【0089】
図5の実施形態に示すように、上流ガラス製造装置36は、原材料貯蔵槽38、原材料送出装置40、及び原材料送出装置に接続されたモーター42を有することができる。貯蔵槽38は、矢印46で示すように、1つ以上の送出ポートを介し、ガラス溶融炉32の溶融容器34に送出することができる、大量の原料44を貯蔵するように構成することができる。原料44は、通常、1つ以上のガラス形成金属酸化物及び1つ以上の改質剤を含んでいる。一部の実施例において、原材料送出装置40によって、貯蔵槽38から溶融容器34に所定量の原材料44が送出されるように、モーター42によって原材料送出装置40に動力を与えることができる。更なる実施例において、溶融ガラスの流動方向に関し、溶融容器34の下流で感知された溶融ガラスのレベルに基づいて、モーター42が原料送出装置40に動力を与え、制御された速度で原材料44を導入することができる。その後、溶融容器34内の原材料44を加熱して溶融ガラス48を形成することができる。通常、最初の溶融ステップにおいて、原材料は、粒子として、例えば様々な「砂」を含むものとして溶融容器に加えられる。原材料には、前の溶融及び/又は成形作業のくずガラス(即ち、カレット)も含み得る。通常、燃焼バーナーを使用して、燃焼プロセスが開始される。電気的に昇温される溶融プロセスにおいて、原材料の電気抵抗が十分に低下した(例えば、原材料の液化の開始時)後、原材料と接触して配置された電極間に電位が発生し、原材料を通して電流が確立され、電気昇温が開始され、原材料は、この時点において通常、溶融状態に入るか又は溶融状態になっている。
【0090】
ガラス製造装置30は、必要に応じ、溶融ガラス48の流動方向に関し、ガラス溶融炉32の下流に配置された下流ガラス製造装置50を備えることができる。一部の実施例において、下流ガラス製造装置50の一部をガラス溶融炉32の一部として組み込むことができる。しかし、一部の実施例において、以下で説明する第1の接続導管52、又は下流ガラス製造装置50の他の部分を、ガラス溶融炉32の一部として組み込むことができる。第1の接続導管52を含む下流ガラス製造装置の要素は貴金属で形成することができる。適切な貴金属には、白金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、及びパラジウムから成る金属群から選択される白金族金属、又はこれ等の合金が含まれる。例えば、ガラス製造装置の下流の構成要素は、約70質量%~約90質量%の白金及び約10質量%~約30質量%のロジウムを含む、白金-ロジウム合金で形成することができる。しかし、他の適切な金属には、モリブデン、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、及びこれ等の合金が含まれる。
【0091】
下流ガラス製造装置50は、溶融容器34の下流に位置し、前述の第1の接続導管52を介して溶融容器34に連結された清澄容器54等の第1の調整(即ち、処理)容器を含むことができる。一部の実施例において、第1の接続導管52を介し、溶融ガラス48を溶融容器34から清澄容器54に重力供給することができる。例えば、重力によって、第1の接続導管52の内部経路を介し、溶融ガラス34を溶融容器34から清澄容器54に排出することができる。しかし、溶融容器34下流、例えば、溶融容器34と清澄容器54との間に、他の調整容器を配置することができることを理解されたい。一部の実施形態において、溶融容器と清澄容器との間に調整容器を使用することができ、一次溶融容器からの溶融ガラスが、二次容器で更に加熱されて溶融プロセスが継続されるか、又は清澄容器に入る前に、一次溶融容器内の溶融ガラスの温度より低い温度に冷却される。
【0092】
清澄容器54内において、様々な技術によって、溶融ガラス48から気泡を除去することができる。例えば、原材料44は、加熱されると化学還元反応が生じ、酸素を放出する酸化スズ等の多価化合物(即ち、清澄剤)を含むことができる。他の適切な清澄剤は、ヒ素、アンチモン、鉄、及びセリウムを含み、これに限定されるものではないが、前述のように、一部の用途において、ヒ素及びアンチモンの使用は、環境上の理由から推奨されない。清澄容器54は、溶融容器の温度よりも高い温度に加熱され、それによって清澄剤が加熱される。融液に含まれている1つ以上の清澄剤の温度誘起化学還元によって生成された酸素泡は、清澄容器内の溶融ガラスを通して上昇し、溶融容器内で生成された溶融ガラス内のガスが、清澄剤によって生成された酸素泡内に融合又は拡散することができる。浮力が増加した拡大気泡は、清澄容器内の溶融ガラスの自由表面まで上昇し、その後清澄容器から排出される。酸素泡は、溶融ガラスを通して上昇するとき、更に、清澄容器内の溶融ガラスの機械的混合を誘発することができる。
【0093】
下流ガラス製造装置50は、清澄容器54から下流に流動する溶融ガラスを混合するための混合装置56等の別の調整容器を更に有することができる。混合装置56を使用して、均質なガラス融液組成をもたらすことができ、それによって、清澄容器を出る清澄溶融ガラス内に存在し得る化学的又は熱的不均一性を抑制することができる。図示のように、第2の接続導管58を介し、清澄容器54を混合装置56に連結することができる。一部の実施形態において、第2の接続導管58を介し、溶融ガラス48を清澄容器54から混合装置56に重力供給することができる。例えば、重力によって、第2の接続導管58の内部経路を介し、溶融ガラス34を清澄容器54から混合装置56に排出することができる。溶融ガラスの流動方向に関し、混合装置56が、清澄容器54の下流に示されているが、別の実施形態において、混合装置56を清澄容器54の上流に配置することができる。一部の実施形態において、下流ガラス製造装置50は、例えば、清澄容器54の上流の混合装置及び清澄容器54の下流の混合装置等、複数の混合装置を有することができる。これ等の複数の混合装置は、同じ構造のもの、又は互いに異なる構造のものでもよい。一部の実施形態において、1つ以上の容器及び/又は導管が、内部に配置された静的混合羽根を有し、溶融材料の混合及びその後の均質化を促進することができる。
【0094】
下流ガラス製造装置50は、混合装置56の下流に配置することができる送出容器60等の別の調整容器を更に有することができる。送出容器60は、溶融ガラス48を調整して下流の成形装置に送出することができる。例えば、送出容器60は、アキュムレーター及び/又は流量調整器として機能し、出口導管64を介し、成形体62に対する溶融ガラス48の一貫した流量を調整及び送出することができる。図示のように、第3の接続導管66を介し、混合装置56を送出容器60に連結することができる。一部の実施例において、第3の接続導管66を介し、溶融ガラス48を混合容器56から送出装置60に重力供給することができる。例えば、重力によって、第3の接続導管66の内部経路を介し、溶融ガラス48を混合容器56から送出容器60に排出することができる。
【0095】
下流ガラス製造装置50は、入口導管70を有する前述の成形体62を含む成形装置68を更に有することができる。出口導管64は、溶融ガラス48を送出容器60から成形装置68の入口導管70に送出するように配置することができる。フュージョンダウンドローガラス製造装置の成形体62は、成形体の上面に配置されたトラフ72、及び成形体の底縁部(根底部)76に沿って延伸方向に収束する収束成形面74(一方のみを示す)を有することができる。送出容器60、出口導管64、及び入口導管70を介して成形体のトラフに送出された溶融ガラスは、トラフの壁から溢れ出て、別々の溶融ガラス流として、収束成形面74に沿って降下する。別々の溶融ガラス流は、根底部の下方かつ根底部に沿って接合し、溶融ガラスの単一ガラスリボン78が生成される。重力及び様々なローラー84等によって、ガラスリボンに張力をかけて、延伸平面82(
図6参照)に沿って根底部76から延伸方向80延伸され、溶融ガラスが冷え材料の粘度が上昇するにつれ、ガラスリボンの寸法が制御される。従って、ガラスリボン78は、粘弾性転移を経て、ガラスリボン78に安定した寸法特性を与える機械的特性を得ることができる。一部の実施形態において、ガラスリボン78は、ガラスリボンの弾性領域内におけるガラス分離装置(図示せず)によって、個々のガラスシート10に分離することができるが、別の実施形態では、ガラスリボンをスプールに巻設し、更なる処理備えて保存することができる。加えて、ビーズと呼ばれる厚くなった縁部は、オンラインでガラスリボン78から又はガラスリボン78から分離後の個々のガラスシート10から除去することができる。
【0096】
ガラスリボン78及びその後のガラス板10が、2つの別々の溶融ガラス流の融合によって形成されるため、ガラスシート10は、別々の層間に、ガラス板の縁部から見える界面を含んでいる。界面は、ガラス板の縁部に沿った線(融合線)18として見える。更に、ガラス板の2つの層が、溶融ガラスの供給源が単一であるため、同じ化学組成を有している。しかし、不図示の別の実施形態において、複数の成形体を使用することができ、第2の成形体から延伸されるリボンが3つ以上の層を含むように、第1の成形体からの溶融ガラスが、第1の成形体の下方に位置する第2の成形体のトラフ内の溶融ガラス上に流れる。即ち、第1の成形体に供給される溶融ガラスは、第2の成形体を流れる溶融ガラスと同じ化学組成である必要はない。従って、3つ以上のガラス層と2つ以上の融合線(2つ以上の界面)を含むガラスシートを製造することができる。
【0097】
図6~8において、成形体62が成形チャンバー90内に配置され、成形体62及びそこから延伸されるガラスリボン周囲の制御環境が維持される。例えば、
図7及び8に示すように、成形チャンバー90は、第1の内側成形チャンバー92を有することができる。内側成形チャンバー92は、外側成形チャンバー94内に、外側成形チャンバー94から離間して更に収容されている。加熱要素96を、内側成形チャンバーと外側成形チャンバーとの間の空間に配置することができ、溶融ガラスが成形に適した粘度になるように、溶融ガラス48の温度、従って、粘度の制御に使用される。下部冷却チャンバー98は、ガラスリボンが根底部76から延伸されるとき、ガラスリボン78の周囲にチャネルを形成し、ガラスリボンが、設定された寸法で粘性液体から弾性固体に遷移する際のガラスリボンの制御環境の確立を支援する。従って、成形装置68は、例えば、リボンの幅方向に、延伸平面82に対し平行に延びる一対の冷却ドア100として構成された冷却装置を更に有することができる。冷却ドア100は、これもリボンの幅方向に、延伸平面82に対し平行に延びる、リボンに面するパネル102を有している。リボンに面するパネル102は、1100℃以上等、内側チャンバー92内の高温に耐え得る高熱伝導材料で形成することができる。適切な例示的な材料は、炭化ケイ素(SiC)である。冷却ドア100は、複数の冷却管106が配置された空洞104を備え、冷却管106は、冷却ガスの供給源(図示せず)と流体連通している。冷却管106は、リボンに面するパネル102の内面に隣接かつ離間配置された開口端部を有している。冷却ガス108が、冷却管に誘導され、冷却管からリボンに面するパネルの内面に向かって流れ、それによってリボンに面するパネルが冷却される。リボンに面する冷却されたパネル102は、ガラスリボン78に隣接するヒートシンクを形成しリボンの冷却に役立つ。各々の冷却管106に対する冷却ガス105の流れを個別に制御することができ、リボンの温度制御を局所的に行うことができる。
図6及び7に示すように、リボンに面するパネル102は、通常、端面が収束成形面74に略平行になるように傾斜し、それによって収束成形面上を流れるガラスに対する冷却ドアの効果が最大化される。矢印110で示すように、冷却ドア100は、延伸平面82に直交する方向に移動可能である。しかし、端面の傾斜の向きが増加すると、溶融ガラスが成形体から滴り落ちてリボンに面するパネル102の外面に接触して覆う可能性が高くなり、リボンに面するパネルの熱伝導率を低下させることによって、ガラスリボン78の温度と粘度の制御が妨げられるため、冷却ドアが溶融ガラスの流れの近傍に移動する能力が制限されることに留意されたい。従って、冷却ドア100は、通常、成形面の直接的な垂直範囲の外側に配置される。
【0098】
成形装置68は、ガラスリボン78の両側に配置されたスライドゲート112を更に有することができる。一部の実施形態において、例えば、
図6及び7の実施形態において、スライドゲート112は、冷却ドア100の下に配置されている。しかし、別の実施形態では、
図8に示すように、スライドゲート112を冷却ドア100の上に配置することができる。更に別の実施形態では、冷却ドアの上と下の両方にスライドドアを配置することができる。矢印114で示すように、スライドゲート112は、延伸平面82に直交する方向に移動可能である。
【0099】
図9A及び9Bは、例示的なスライドゲート112の上断面及び側断面をそれぞれ示す図である。スライドゲート112は、上壁120、下壁122、及びリボンに面するパネル(熱板)124を有している。スライドゲート112は、熱板124がガラスリボン78に隣接するように配置されている。熱板124とガラスリボン78の隣接主面との距離は「d」と定義される。熱板124は、SiC等の高熱伝導率材料で形成される。熱板124は、例えば、収束成形面74の角度に近い角度で傾斜しているか、又は熱板124は垂直で実質的に延伸平面82に平行であってよい。スライドゲート112は、上壁120と下壁122を接続する後壁126、及び端壁128、130を更に有することができる。
【0100】
スライドゲート112は、スライドゲート内に配置された複数の冷却管132更に有している。複数の冷却管の各々132は、外側管134及び内側管136を有している。一部の実施形態において、外側管134及び内側管136は、冷却管の長手方向軸に直交する断面が円形であるが、別に実施形態では、外側管及び内側管のいずれか一方又は両方が、矩形、楕円形、又は他の任意の適切な幾何学形状等、別の断面形状を有することができる。一部の実施形態において、内側管136は、冷却管の中心長手方向軸を中心に、外側管134と同心円であってよい。複数の外側管の各々の外側管134は、熱板124の内面に近接して配置された閉鎖遠位端部138有している。一部の実施形態において、遠位端部138が熱板124に接触している。複数の内側管の各々の内側管136は、外側管134の閉鎖遠位端138に近接する開放遠位端部140を有している。内側管136に供給された冷却流体142が、開放遠位端部140を通して排出され、外側管134の閉鎖遠位端部138に衝突する。開放遠位端部140から放出された冷却流体は、次に、外側管134と内側管136との間の空間を通して逆に流れることによって、冷却流体が冷却管から排出されるか、又は熱交換器(図示せず)内等で冷却され、冷却管に再び戻される。冷却流体142は、不活性ガス等の気体、更には空気、又は液体、例えば、水であってよい。
【0101】
冷却ガスを直接リボンに排出する冷却装置と異なり、冷却管132を通して循環する内部冷却流体流は、隣接する冷却管の冷却流体と相互作用しないため、冷却管のサイズが許す限り、冷却管132の間隔を密にすることができる。更に、冷却管を通した冷却流体の流量は、必要かつ可能な限り高くすることができる。加えて、スライドゲート内にある間、冷却流体を完全に冷却管内に収容することによって、冷却流体流がリボンを含む冷却チャンバー98内に入るのが防止される。比較すると、冷却管106から冷却ドア100に入る冷却ガスは、冷却チャンバーに漏れ、冷却チャンバー内の熱環境を乱す可能性があるため、リボン78の幅全体又は長さ全体にわたって制御されない温度変動が生じ、リボンの冷却時にリボンに残留応力が形成される可能性がある。一部の実施形態において、冷却管132内で使用される冷却流体142は、冷却チャンバーに注入される危険性のない、例えば、水であってよい。気体よりも熱容量が大きい液体を使用することによって、冷却管の冷却能力を高めることができる。
【0102】
一部の実施形態において、スライドゲート112は、高温に耐える金属で形成された中実板を備えることができ、金属板には、ドリルで穴を開ける等によって、通路が形成されている。各々の通路は外側管134として機能し、各々の通路の壁は「管」の内径を画成している。各々の通路には内側管136配置することができ、前述の方法で、冷却流体が通路に注入される。一部の実施形態において、各々の通路(例えば、外側管)の中心長手方向軸と隣接通路の長手方向軸との間隔は、約1cm~約1.5cmとすることができる。
【0103】
スライドゲート112は、様々な形状を有することができる。例えば、別の例示的なスライドゲート112を
図10に示す。
図10の実施形態において、スライドゲートの端部150は、延伸平面82に対し窪んでいる。
図11の実施形態において、スライドゲート112の端部150が、スライドゲート端部のスライドゲート前縁部が、延伸平面82から離間する方向に後方に傾斜するように、延伸平面82に対し傾斜している。更に別の実施形態において、スライドゲートは、複数の個別の構成要素を有することができる。例えば、
図12の実施形態において、例示的なスライドゲート212は、冷却管132を有する中央部分214、及び中央部分214の端部の近傍に配置された端部分216a、216bを有している。端部分216a、216bは、延伸平面82に平行な前縁部、又は
図13に示すように、端部分216a、216bは、延伸平面82から離間する方向に後方に傾斜した傾斜前縁部を有することができる。端部分216a、216bは、端部分及び中央部分をガラスリボン78から異なる距離に配置できるように、個別及び独立して移動可能とすることができる。
【0104】
図14は、3.3mm厚の溶融ガラスリボン対する、ガラスリボン78の横縁部から105mmの位置に配置された、単一の冷却管の効果を示す測定データのプロット図である。リボンの幅は約22cmであった。外側管の直径は約1.3cmであった。内側管の直径は約1cmであった。冷却管の内部空気流は1時間あたり標準の40立方フィート(約1.13立方メートル)であった。リボンの表面から約1.3cmの位置に管を配置した。曲線300は冷却管がない場合の厚さを示し、曲線302は冷却管がある場合の厚さを示している。曲線は、冷却管付近の厚さの大幅な変化を示している。
図15は、
図14の曲線間の差を示すプロットであり、曲線304は差を示し、曲線306は曲線304のガウス近似を示している。結果として生じた厚さの変化は、約150マイクロメートル、つまり公称3.3mm厚の約3.3%であることを示している。加えて、ガウス曲線306の半値全幅(FWHM)値は約65mmである。
【0105】
図16はフュージョンドローガラスリボンの厚さの均一性をどのように改善することができるかを示すプロット図である。曲線308は、従来の融合プロセスの実際の厚さのデータを示している。データは、リボンの横縁部からの距離に対してプロットしたものである。曲線310は、冷却ドアの上に配置された一対のスライドゲート112を実装した後の、ガラスリボン78の幅にわたる位置を関数とするモデル化したデータを示している。線312及び314はビーズの縁部を示し、2つのビーズ部分間のリボンの部分は、商業的に価値のあるリボンの「品質領域」である。データは、能動的に冷却されるスライドゲートの実装後、品質領域の厚み変動が、能動的に冷却されるスライドゲートなしの約0.0018mmのTTVから、スライドゲートありの約0.0007mmに低下したことを示している。加えて、曲線316は、リボンの幅にわたり、5mm単位で移動させた25mmのスライド間隔に対するΔTmaxを示し、曲線318は、能動的に冷却されるスライドゲートの存在下における、モデル化したリボンの幅にわたって、5mm単位で移動させた25mmのスライド間隔に対するΔTmaxを示している。図示のように、スライドゲートなしの実際のリボンの品質領域にもたらされるMSIRは、約0.0015mmのMSIRであるのに対し、冷却ドアの上にスライドゲートが存在するモデル化したリボンのMSIRは約0.0005mmである。
【0106】
図17は、ガラスリボンの幅にわたり、5mm単位で移動させた100mmのスライド間隔を使用し、リボンの横縁部からの位置の関数としてプロットしたΔTmaxを示す図である。線320及び322は品質領域の境界を示している。曲線324は、スライドゲートなしのリボン上で測定された実際のデータのΔTmaxを示し、曲線326は、能動的に冷却されるスライドゲートを備えたモデル化したデータを示している。データは、スライドゲートなしの約0.00285mmのMSIRと、能動的に冷却されるスライドゲートありの約0.00025mmのMSIRを示している。
【0107】
図18は、延伸平面から様々な距離かつ延伸平面に対し垂直、及び根底部76の下方の様々な距離(水平軸を横断してプロット)において、流動するガラスリボンに対し平行に配置した、モデル化した1.3cm角の「コールドスポット」を使用した研究結果を示すである。コールドスポットは、例えば、閉鎖冷却管132の端部であってよく、本例では冷却管は正方形の断面を有している。縦軸は厚み変化の振幅を示している。
図18において、曲線328はコールドスポット(冷却管の端部)とリボンとの距離が1.3cmを示し、曲線330はコールドスポットとリボンとの距離dが3.8cmを示し、曲線332はコールドスポットとリボンとの距離が6.4cmを示し、曲線334はコールドスポットとリボンとの距離が8.9cmを示している。データは、低温表面とリボンの流動表面との距離が最小かつ根底部の線に近い程、厚さがより大きい影響を受けることを示している。
【0108】
図19は、成形体の根底部から3.6cm下方の位置で、リボンの表面から様々な距離において、延伸平面に対し垂直に、流動するガラスリボンに対して平行に配置した、モデル化した1.3cm角の「コールドスポット」を使用した、4つの異なる温度(粘度)摂動に対する、リボンの中心線からメートル単位で示す位置を関数とする厚み変化を示す図である。コールドスポットが、ガラス表面から1.3cm離間したとき(曲線336)の一次厚み摂動のFWHMは約40mmである。曲線338は、ガラス表面からの距離が3.8cmの位置におけるコールドスポットを示し、曲線340は、ガラス表面からの距離が6.4cmの位置におけるコールドスポットを示し、曲線342は、ガラス表面からの距離が8.9cmの位置におけるコールドスポットを示している。コールドスポットが、ガラス表面から8.9cmの位置にあるとき、FWHMは約160mmである。図示のように、概して、FWHMは、コールドスポットからガラス表面までの距離に直線的に関連している。
【0109】
図20及び21は、
図19に見られるプロファイルの変化(1.3cm及び8.9cmの場合)が、同じ場所における温度場の変化によってどのように生じるかを示している。
図20は、
図19の1.3cmの場合を示し、
図21は、
図19の8.9cmの場合を示している。両方の図において、曲線ΔThickは、厚みの変化曲線を示し、曲線ΔTepmは、温度の変化曲線を示している。横軸はリボンの中心線からの距離を示している。データは、厚さプロファイルの変化の大きさが、ガラスの表面の温度変化の大きさに直線的に関連していることを示し、両方のFWHMが、ほぼ同じになることを示している。質量保存により、厚さプロファイルの場合、ゼロ線周囲の積分面積はゼロになる。更に、データは、ガラス表面の温度変化が、リボンの厚み変化に関連していることを示している。
【0110】
図22は、単一の制御点による厚み摂動の特性幅(FWHM)が65mmから220mmの範囲で変化する、別のモデル化の結果を示す図である。本例では、リボンの幅にわたり、5mm単位で移動させた100mmのスライド間隔に関し、データは、MSIRを低減する能力は、ガラスリボンの水平方向の幅に沿って分布する、個々の制御点のFWHMの強力な関数であることを示している。プロットは、例えば、0.00025のMSIRを達成するためには、FWHMが約65mmの厚み摂動を生じさせる必要があることを示している。FWHMが増加するにつれ、MSIRも増加する。概して、次に、100mmのスライド間隔、例えば5mm単位で移動させた間隔に関し、約0.0024以下のMSIRを取得するためには、約215mm以下の厚み摂動を誘導する必要がある。100mmのスライド間隔、例えば5mm単位で移動させた間隔に関し、約0.0020以下のMSIRを取得するためには、約165mm以下の厚み摂動を誘導する。100mmのスライド間隔、例えば5mm単位で移動させた間隔に関し、約0.0014以下のMSIRを取得するためには、約120mm以下の厚み摂動を誘導する。100mmのスライド間隔、例えば5mm単位で移動させた間隔に関し、約0.00055以下のMSIRを取得するためには、約60mm以下の厚み摂動を誘導する。厚み摂動を誘導する方法は、
図22の結果とは無関係であることに留意されたい。
【0111】
本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示の実施形態に対して様々な改良及び変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。従って、かかる改良及び変形が、添付の特許請求の範囲及びその均等物に属することを条件に、本開示は、かかる改良及び変形を包含するものである。
【0112】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0113】
実施形態1
ガラス物品であって、
約880mm以上の長さと、
前記長さに直交する約680mm以上の幅と、
第1の主面、前記第1の主面に対向する第2の主面、及び前記第1の主面と第2の主面と間に画成される厚さTと、
を有し、
前記ガラス物品の前記幅にわたる全厚み変動TTVが約4μm以下である物品。
【0114】
実施形態2
前記TTVが、約2μm以下である、実施形態1記載のガラス物品。
【0115】
実施形態3
前記TTVが、約1μm以下である、実施形態1記載のガラス物品。
【0116】
実施形態4
前記TTVが、約0.25μm以下である、実施形態1記載のガラス物品。
【0117】
実施形態5
前記第1及び第2の主面が無研磨である、実施形態1記載のガラス物品。
【0118】
実施形態6
前記第1及び第2の主面の平均表面粗さRaが、約0.25nm以下である、実施形態5記載のガラス物品。
【0119】
実施形態7
前記ガラス物品の幅わたり、5mm単位で移動させた所定の間隔から得られる最大スライド間隔範囲MSIRが、約4μm以下である、実施形態1記載のガラス物品。
【0120】
実施形態8
前記所定の間隔が、約25mm~約750mmである、実施形態7記載のガラス物品。
【0121】
実施形態9
前記所定の間隔が、約25mm~約100mmである、実施形態8記載のガラス物品。
【0122】
実施形態10
前記所定の間隔が、約25mm~約75mmである、実施形態8記載のガラス物品。
【0123】
実施形態11
前記幅が、約3100mm以上である、実施形態1記載のガラス物品。
【0124】
実施形態12
前記長さが、約3600mm以上である、実施形態11記載のガラス物品。
【0125】
実施形態13
前記ガラスが、モルパーセントで、
SiO2 60~80
Al2O3 5~20
B2O3 0~10
MgO 0~20
CaO 0~20
SrO 0~20
BaO 0~20
ZnO 0~20
を含む、実質的にアルカリを含まないガラスである、実施形態1記載のガラス物品。
【0126】
実施形態14
前記ガラスが、モルパーセントで、
SiO2 64.0~71.0
Al2O3 9.0~12.0
B2O3 7.0~12.0
MgO 1.0~3.0
CaO 6.0~11.5
SrO 0~2.0
BaO 0~0.1
を含み、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3] ≦1.25であり、[Al2O3]は、モルパーセントのAl2O3、Σ[RO]は、MgO、CaO、SrO、及びBaOのモルパーセントの合計である、実質的にアルカリを含まないガラスである、実施形態1記載のガラス物品。
【0127】
実施形態15
ガラス物品であって、
約880mm以上の長さと、
前記長さに直交する約680mm以上の幅と、
第1の主面、前記第1の主面に対向する第2の主面、及びその間に画成される厚さTと、
を有し、
前記ガラス物品の幅わたり、5mm単位で移動させた、約750mm以下の所定の間隔から得られる最大スライド間隔範囲MSIRが、約8μm以下である物品。
【0128】
実施形態16
前記MSIRが、約400mm以下のスライド間隔に対し、約6.5μm以下である、実施形態15記載のガラス物品。
【0129】
実施形態17
前記MSIRが、約330mm以下のスライド間隔に対し、約6μm以下である、実施形態15記載のガラス物品。
【0130】
実施形態18
前記MSIRが、約150mm以下のスライド間隔に対し、約4.5μm以下である、実施形態15記載のガラス物品。
【0131】
実施形態19
前記MSIRが、約100mm以下のスライド間隔に対し、約4μm以下である、実施形態15記載のガラス物品。
【0132】
実施形態20
前記MSIRが、約25mm以下のスライド間隔に対し、約2μm以下である、実施形態15記載のガラス物品。
【0133】
実施形態21
前記第1及び第2の主面が無研磨である、実施形態15記載のガラス物品。
【0134】
実施形態22
前記第1及び第2の主面の平均表面粗さRaが、約0.25nm以下である、実施形態21記載のガラス物品。
【0135】
実施形態23
前記幅が、約3100mm以上である、実施形態15記載のガラス物品。
【0136】
実施形態24
前記長さが、約3600mm以上である、実施形態23記載のガラス物品。
【0137】
実施形態25
ガラス物品であって、
約880mm以上の長さと、
前記長さに直交する約680mm以上の幅と、
第1の主面、前記第1の主面に対向する第2の主面、及びその間に画成される厚さTと、
を有し、
前記ガラス物品の前記幅にわたる全厚み変動TTVが、約4μm以下であり、前記ガラス物品の幅わたり、5mm単位で移動させた、所定の間隔から得られる最大スライド間隔範囲MSIRが、約4μm以下である物品。
【0138】
実施形態26
前記TTVが、約2μm以下である、実施形態25記載のガラス物品。
【0139】
実施形態27
前記TTVが、約1μm以下である、実施形態25記載のガラス物品。
【0140】
実施形態28
前記TTVが、約0.25μm以下である、実施形態25記載のガラス物品。
【0141】
実施形態29
前記第1及び第2の主面が無研磨である、実施形態25記載のガラス物品。
【0142】
実施形態30
前記第1及び第2の主面の平均表面粗さRaが、約0.25nm以下である、実施形態29記載のガラス物品。
【0143】
実施形態31
前記所定の間隔が、約25mm~約750mmである、実施形態25記載のガラス物品。
【0144】
実施形態32
前記所定の間隔が、約25mm~約100mmである、実施形態25記載のガラス物品。
【0145】
実施形態33
前記所定の間隔が、約25mm~約75mmである、実施形態25記載のガラス物品。
【0146】
実施形態34
ガラスプラッターブランクであって、
第1の主面、前記第1の主面に対向する第2の主面、及びその間に画成される厚さTを有し、
前記ガラスプラッターブランクの直径にわたる全厚み変動TTVが、約2μm以下であるプラッターブランク。
【0147】
実施形態35
前記TTVが、約1μm以下である、実施形態34記載のガラスプラッターブランク。
【0148】
実施形態36
前記ガラスプラッターブランクの直径にわたり、5mm単位で移動させた、25mmの間隔から得られる最大スライド間隔範囲MSIRが、約2μm以下である、実施形態34記載のガラスプラッターブランク。
【0149】
実施形態37
前記第1及び第2の主面の一方又は両方の平均表面粗さRaが、約0.50nm以下である、実施形態34記載のガラスプラッターブランク。
【0150】
実施形態38
前記Raが、約0.25nm以下である、実施形態37記載のガラスプラッターブランク。
【0151】
実施形態39
ガラス物品を製造する方法であって、
ガラスリボンを成形体から延伸方向に延伸するステップであって、前記ガラスリボンが、対向する縁部部分、及び前記対向する縁部部分の間に配置された中央部分を有し、前記ガラスリボンが、粘性ゾーン及び弾性ゾーンを含む、ステップと、
前記ガラスリボンの前記粘性ゾーンにおいて、前記中央部分に、前記延伸方向に直交する前記ガラスリボンの幅方向に、約225mm以下の特性幅を有する厚み摂動を形成するステップと、
を備え、
前記粘性ゾーンにおける前記中央部分の幅にわたり、5mm単位で移動させた、100mmのスライド間隔から得られる最大スライド間隔範囲が、約0.0025mm以下である方法。
【0152】
実施形態40
前記特性幅が、約175mm以下であり、前記最大スライド間隔範囲が、約0.0020mm以下である、実施形態39記載の方法。
【0153】
実施形態41
前記特性幅が、約125mm以下であり、前記最大スライド間隔範囲が、約0.0015mm以下である、実施形態40記載の方法。
【0154】
実施形態42
前記特性幅が、約75mm以下であり、前記最大スライド間隔範囲が、約0.0006mm以下である、実施形態41記載の方法。
【0155】
実施形態43
前記特性幅が、約65mm以下であり、前記最大スライド間隔範囲が、約0.0003mm以下である、実施形態42記載の方法。
【0156】
実施形態44
前記摂動が、前記ガラスリボンを冷却することによって形成される、実施形態39記載の方法。
【0157】
実施形態45
前記摂動が、前記ガラスリボンを加熱することによって形成される、実施形態39記載の方法。
【0158】
実施形態46
前記成形体の底縁部と前記厚み摂動の最大厚との距離が、約8.5cm以下である、実施形態39記載の方法。
【0159】
実施形態47
前記成形体の前記底縁部と前記厚み摂動の最大厚との距離が、約3.6cm以下である、実施形態46記載の方法。
【0160】
実施形態48
前記弾性ゾーンにおける、前記中央部分の前記延伸方向に直交する幅方向の全厚み変動が、約4μm以下である、実施形態39記載の方法。
【0161】
実施形態49
前記全厚み変動が、約2μm以下である、実施形態48記載の方法。
【0162】
実施形態50
前記全厚み変動が、約1μm以下である、実施形態49記載の方法。
【0163】
実施形態51
ガラス物品を製造する方法であって、
溶融ガラスを成形体のトラフに流すステップであって、前記溶融ガラスが、前記トラフから溢れ出て、前記成形体の底縁部において合流する別々の溶融ガラス流として、前記成形体の対向する成形面に沿って下降する、ステップと、
前記溶融ガラスのリボンを前記底縁部から延伸方向に延伸するステップと、
前記延伸方向に直交する前記ガラスリボンの幅方向に延びる熱板を有する冷却装置を用いて、前記リボンを冷却するステップであって、前記冷却装置が、該装置内に配置された複数の冷却管を更に有し、前記複数の冷却管の各々が、前記熱板に隣接する閉端部を有する第1の管、及び前記第1の管の前記閉端部から離間した開放端部を有し、前記第1の管内に延びる第2の管を有し、前記冷却するステップが、前記複数の冷却管の前記第2の管に冷却流体を流すステップを含み、前記冷却するステップが、各々の冷却管の位置に対応するリボン上に、複数の厚み摂動を形成するステップを更に含み、各々の厚み摂動が、約225mm以下の特性幅を有する、ステップと、
を備えた方法。
【0164】
実施形態52
前記特性幅が、約175mm以下である、実施形態51記載の方法。
【0165】
実施形態53
前記特性幅が、約125mm以下である、実施形態52記載の方法。
【0166】
実施形態54
前記特性幅が、約75mm以下である、実施形態53記載の方法。
【0167】
実施形態55
前記特性幅が、約65mm以下である、実施形態54記載の方法。
【0168】
実施形態56
前記複数の冷却管の各々が、前記熱板に接触している、実施形態51記載の方法。
【0169】
実施形態57
ガラスリボンを製造する装置であって、
成形体であって、溶融ガラス流を受け取るように構成されたトラフ、及び前記成形体の底縁部であって、そこから垂直延伸面に沿ってガラリボンが延伸される、底縁部に沿って接合する収束成形面を有する成形体と、
前記底縁部の下方に配置された冷却装置であって、溶融ガラス流の幅方向に延びる熱板、及び前記冷却装置内に配置された複数の冷却管を有し、前記複数の冷却管の各々が、前記熱板に隣接する閉端部を有する第1の管、及び前記第1の管の前記閉端部に隣接する開放端部を有し、前記第1の管内に延びる第2の管を有する、冷却装置と、
を備えた装置。
【0170】
実施形態58
前記複数の冷却管の各々の第1の管が、前記熱板に接触している、実施形態57記載の装置。
【0171】
実施形態59
前記各々の第1の管の長手方向軸が、前記底縁部から約8.5cm以下の距離において前記延伸平面と交差する、実施形態57記載の装置。
【0172】
実施形態60
前記交差点と前記底縁部との距離が、約3.6cm以下である、実施形態59記載の装置。
【0173】
実施形態61
前記延伸面と前記熱板との距離が、約9cm以下である、実施形態59記載の装置。
【0174】
実施形態62
前記延伸面と前記熱板との距離が、約1.5cm以下である、実施形態61記載の装置。
【0175】
実施形態63
ガラスリボンを製造する装置であって、
成形体であって、溶融ガラス流を受け取るように構成されたトラフ、及び前記成形体の底縁部であって、そこから垂直延伸面に沿ってガラリボンが延伸される、底縁部に沿って接合する収束成形面を有する成形体と、
前記底縁部の下方に配置された冷却装置であって、前記溶融ガラス流の幅方向に延びる金属板であって、該板内に形成された複数の通路を有し、前記複数の通路の各々が、閉鎖遠位端部及び開放近位端部を有する金属板、及び冷却管であって、該管の開放遠位端部が、前記通路の前記遠位端部に隣接かつ離間するように、前記開放近位端部を通して延びる冷却管を有する、冷却装置と、
を備えた装置。
【0176】
実施形態64
前記延伸面と前記金属板との距離が、約1.5cm以下である、実施形態63記載の装置。
【符号の説明】
【0177】
10 ガラス板
12、14 主面
18 融合線
30 ガラス製造装置
32 ガラス溶融炉
34 溶融容器
54 清澄容器
50 下流ガラス製造装置
56 混合装置
60 送出容器
62 成形体
68 成形装置
72 トラフ
74 収束成形面
76 底縁部(根底部)
78 ガラスリボン
82 延伸平面
90 成形チャンバー
96 加熱要素
98 冷却チャンバー
100 冷却ドア
102 パネル
112 スライドゲート
124 パネル(熱板)
132 冷却管
142 冷却流体