(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】モールドコイル
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240613BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2020015611
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍太
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-114577(JP,A)
【文献】特開2014-154564(JP,A)
【文献】特開2013-149943(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042692(WO,A1)
【文献】特開2011-100841(JP,A)
【文献】特開昭58-161312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角状の導電性部材が巻回されて成る筒状部と、
前記導電性部材の端部であり、前記筒状部から引き出された接続端子と、
前記接続端子を覆い、樹脂から成るカバーと、
前記筒状部、前記接続端子、前記カバーを被覆するモールド樹脂部と、
を備え、
前記カバーは、前記接続端子の上面及
び前記接続端子の側面を被覆し、
前記筒状部の巻軸方向から見た前記カバーの断面は、概略コの字形状であり、
前記モールド樹脂部は、前記カバーの先端を被覆せず、前記カバーの先端は露出していること、
を特徴とするモールドコイル。
【請求項2】
平角状の導電性部材が巻回されて成る筒状部と、
前記導電性部材の端部であり、前記筒状部から引き出された接続端子と、
前記接続端子を覆い、樹脂から成るカバーと、
前記筒状部、前記接続端子、前記カバーを被覆するモールド樹脂部と、
を備え、
前記筒状部の巻軸方向から見た前記カバーの断面は、
上下面が開口しており、
前記カバーは
、前記接続端子の
両側面
のみを被覆し、前記接続端子の上面及び下面を被覆せず、
前記モールド樹脂部は、前記カバーの先端を被覆せず、前記カバーの先端は露出していること、
を特徴とするモールドコイル。
【請求項3】
前記カバーは、前記筒状部の端面を覆う端面被覆部を有し、
前記端面被覆部の上面と前記カバーの上面は、概略同一平面となっていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のモールドコイル。
【請求項4】
前記端面被覆部は、前記筒状部が露出する開口部を有し、
前記モールド樹脂部は、前記開口部を被覆していないこと、
を特徴とする請求項3に記載のモールドコイル。
【請求項5】
前記接続端子は、前記平角状の導電性部材の断面形状において、長辺が高さ方向と平行となるように設けられていること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のモールドコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂によってモールド成型されたモールドコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂によってコイルの外周をモールド成型したモールドコイルが、種々の用途で使用されている。モールドコイルは、コイルの端部である接続端子が外部機器と電気的に接続される。そのため、モールド成型されても、接続端子は、樹脂によって被覆されず、露出している。モールド成型時に、接続端子が樹脂によって被覆させないために、露出させたい接続端子部分を金型で直接保持させ、樹脂の侵入を防ぐ手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、接続端子を金型で直接保持させると、接続端子を金型に収容させる際に、接続端子が金型と擦れて損傷する虞がある。また、コイルは、巻軸に沿って1ターンごとに巻き位置をずらしながら導電性部材を螺旋状に巻回して作成される。製造精度上の理由により、コイルの表面には凹凸が存在し、必ずしも平滑面となっていない。そのため、金型にコイルを収容しても、金型とコイルの間に隙間は発生し、金型とコイルを密着させることができない。そうすると、この隙間から樹脂が侵入し、露出させようとする境界部分にバリが発生することがある。
【0005】
バリの発生を抑制するため、金型をコイルに強く押し付けることが考えられる。金型をコイルに強く押し付けることで、金型とコイルの隙間をなくし、金型とコイルを密着させることができる。
【0006】
しかし、金型で接続端子を直接押さえて樹脂の侵入を防ぐ場合、金型をコイルに強く押し付けると、強く押し付けた際に、金型が接続端子と擦れて損傷する虞がある。接続端子が擦れると、導電線を被覆する絶縁性の被膜を損傷させて絶縁性を損なう虞や擦れた際に形成された異物がモールドコイル内に混入し、ショートを引き起こす虞がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされた発明であり、その目的は、モールド成型を行う際に、接続端子が損傷することを抑制するモールドコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモールドコイルは、平角状の導電性部材が巻回されて成る筒状部と、前記導電性部材の端部であり、前記筒状部から引き出された接続端子と、前記接続端子を覆い、樹脂から成るカバーと、前記筒状部、前記接続端子、前記カバーを被覆するモールド樹脂部と、を備え、前記カバーは、前記接続端子の上面及び前記接続端子の側面を被覆し、前記筒状部の巻軸方向から見た前記カバーの断面は、概略コの字形状であり、前記モールド樹脂部は、前記カバーの先端を被覆せず、前記カバーの先端は露出していること、を特徴とする。また、本発明のモールドコイルは、平角状の導電性部材が巻回されて成る筒状部と、前記導電性部材の端部であり、前記筒状部から引き出された接続端子と、前記接続端子を覆い、樹脂から成るカバーと、前記筒状部、前記接続端子、前記カバーを被覆するモールド樹脂部と、を備え、前記筒状部の巻軸方向から見た前記カバーの断面は、上下面が開口しており、前記カバーは、前記接続端子の両側面のみを被覆し、前記接続端子の上面及び下面を被覆せず、前記モールド樹脂部は、前記カバーの先端を被覆せず、前記カバーの先端は露出していること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モールド成型を行う際に、接続端子が損傷することを抑制するモールドコイルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態のモールドコイルの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】コイルに樹脂部材を装着した状態を示す斜視図である。
【
図4】金型に収容された接続端子及びカバーを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
本発明の実施形態に係るモールドコイルについて、図面を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態のモールドコイルの全体構成を示す斜視図である。
図2は、コイルに樹脂部材を装着させた状態を示す斜視図である。なお、本明細書において、巻軸方向は、筒状部11の巻軸方向であり、Y軸方向とも称する。Y軸方向と直交し、接続端子12a、12bが隣接している方向と平行な方向を幅方向又はX軸方向と称する。X軸方向及びY軸方向と直交する方向が高さ方向で、Z軸方向又は上下方向とも称する。上下は、モールド成型によってコイル1を樹脂で被覆する際に、コイル1を収容する上型、下型に倣ったものである。これらの方向は、モールドコイルの各構成の位置関係を示すための表現であり、モールドコイルが設置対象に設置された際の位置関係及び方向を限定するものではない。
【0012】
モールドコイル100は、モールド成型によりモールド樹脂3でコイル1を被覆して成る。モールドコイル100は、例えば、リアクトルの構成部品として用いられる。リアクトルは、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車及び燃料電池車の駆動システム等に組み込まれ、昇圧回路等に用いられる。リアクトルは、モールドコイル100の他、環状コアも備えており、この環状コアにモールドコイル100が装着されている。このようなリアクトルにおいて、コイル1に電流が導通すると、コア1は、コイル1が発生させた磁束の通り道となり、閉じた磁気回路を形成する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、モールドコイル100は、コイル1、樹脂部材2及びモールド樹脂部3を備える。コイル1は、エナメルなどで絶縁被覆した1本の平角状の導電性部材により構成される。コイル1は、巻き位置を巻軸方向にずらしながら線材を巻回して成る。本実施形態では、銅線によって構成された平角線のエッジワイズコイルである。もっとも、コイル1の線材の種類や巻き方はこれに限らず、他の形態のものであってもよい。
【0014】
コイル1は、筒状部11と接続端子12を有する。筒状部11は、巻き位置を巻軸方向にずらしながら線材が巻回している部分である。筒状部11は、4つの平坦面と4つの湾曲面を有し、平坦面と湾曲面を交互につなぎ合わせて成る。平坦面とは、湾曲面との相対的な比較において平坦な面であり、巻き膨らみ等による凹凸がある場合も含まれる。
【0015】
接続端子12は、筒状部11から引き出された平角状の導電性部材の端部である。接続端子12は、外部機器の端子等と接続される。接続端子12は、2つ設けられ、巻軸方向と直交する筒状部11の端面からそれぞれ引き出されている。
【0016】
2つの接続端子12a、12bは、
図2に示すように、隙間を介して横並びに配置される。即ち、接続端子12aは、筒状部11の一方端面から巻軸方向と平行に筒状部11の外側に向けて引き出されている。一方、接続端子12bは、筒状部11の他方端面から幅方向に引き出された後、90度湾曲し、巻軸方向と平行に延びている。接続端子12a、12bの上面は、筒状部11の上面と略同一の高さに配置されている。なお、接続端子12a、12bは、平角線の断面形状において、長辺が高さ方向と平行となるように引き出されている。
【0017】
樹脂部材2は、コイル1の一部を被覆する樹脂から成る部材である。樹脂部材2を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等が挙げられる。
【0018】
図3は、樹脂部材の斜視図である。樹脂部材2は、
図1~
図3に示すように、カバー21と端面被覆部22を有する。カバー21は、接続端子12a、12bを被覆する。もっとも、カバー21は、接続端子12a、12bの先端は被覆していない。即ち、接続端子12a、12bの先端は露出している。接続端子12a、12bの先端を外部機器の端子等と接続させるためである。
【0019】
筒状部11の巻軸方向から見たカバー21の断面は、概略コの字形状である。より詳細に説明すると、接続端子12a、12bの側面及び上面を被覆している。換言すると、接続端子12a、12bの下面は被覆していない。カバー21をこのような形状にすることで、上面からカバー21を接続端子12a、12bに装着させることができる。
【0020】
また、カバー21は、後述する端面被覆部22から突出して延びている。即ち、カバー21は、巻軸方向に一定の長さを有する。一定の長さとは、少なくともモールド成型時に、金型がカバー21を把持できる程度の長さを有していれば足りる。
【0021】
なお、本実施形態では、樹脂部材2には、端面被覆部から突出した2つの保持部24が設けられている。この保持部24は、接続端子12bを支持している。接続端子12bの引き回しは長くなっているが、保持部24によって接続端子12bを支持することで、モールド成型時の射出圧によって、接続端子12bが変形することを防止できる。
【0022】
端面被覆部22は、筒状部11の上面を被覆する。もっとも、端子被覆部22は、筒状部11の平坦面及び湾曲面の一部を露出させる概略矩形状の開口部23を有する。即ち、端面被覆部22は、筒状部11の上面の縁を覆う、概略矩形状の枠体となっている。
【0023】
端面被覆部22は、カバー21と一体に成形されており、端面被覆部22とカバー21は継ぎ目なく連続して形成されている。端面被覆部22の上面は、カバー21の上面とは概略同一平面となっている。なお、端面被覆部22の上面は、露出している筒状部11の上面よりも高い位置に配置され、段差が設けられている。この段差の高さは、後述するモールド成型を行う際に、上型によってコイル1を押圧したときに、上型がコイル1に当接しない程度の高さを有していればよい。
【0024】
なお、本実施形態では、端面被覆部22は、突出部25を有する。突出部25は、巻軸方向に延びた辺から筒状部11の側面に倣う形状となっている。端面被覆部22は、突出部25によって筒状部の上面に固定される。また、筒状部11の下面の縁は、開口部を有する下枠26によって被覆されている。
【0025】
モールド樹脂部3は、コイル1及び樹脂部材2を被覆する樹脂から成る部材である。モールド樹脂部3を構成する樹脂としては、樹脂部材2と同様のものを使用することができる。なお、モールド樹脂部3の樹脂と樹脂部材2の樹脂は、同種のものを使用してもよいし、異種のものを使用してもよい。
【0026】
モールド樹脂部3は、カバー21を被覆する。もっとも、モールド樹脂部3は、カバー21の先端は被覆せず、カバー21の先端は露出している。つまり、カバー21がモールド樹脂部3によって被覆されている境界部分には、段差が設けられている。
【0027】
モールド樹脂部3は、開口部31を有する。開口部31は、端面被覆部22の開口部23よりも大きい。開口部31は、端面被覆部22の開口部23と重なるように配置されている。即ち、モールド樹脂部3は、端面被覆部22の開口部23を被覆していない。よって、筒状部11は、開口部23、31によって露出している。
【0028】
(モールドコイルの製造方法)
次に、モールドコイル100の製造方法について図面を参照しつつ説明する。
図4は、金型に収容された接続端子12及びカバー21を示す模式図である。
図4の(a)は、側面拡大図であり、(b)は、正面拡大図である。なお、
図4において、上型Aは一点鎖線で示し、下型Bは破線で示している。
【0029】
まず、コイル1を用意する。樹脂部材2は、別途成形しておく。そして、樹脂部材2をコイル1に装着する。筒状部11の巻軸方向から見たカバー21の断面は、概略コの字形状である。そのため、コイル1の上面から樹脂部材2を嵌め込むだけで、容易にコイル1に樹脂部材2を装着することができる。なお、下枠25は、コイル1の下面に装着させる。
【0030】
そして、樹脂部材2が装着されたコイル1を下面から下型Bに収容し、上面から上型Aを被せる。なお、下型Bは、高さ方向に摺動することができる。ここでいう摺動には、下型B自体が移動する場合のみならず、下型Bに収容されたコイル1及び樹脂部材2の位置が下型Bに対して変更された場合も含まれる。
【0031】
具体的な収容方法については、まず、樹脂部材2が装着されたコイル1を下型Bに収容する。
図4(b)に示すように、接続端子12はカバー21で被覆されているため、下型Bはカバー21の先端と当接する。換言すれば、下型Bは、接続端子12に直接当接していない。そのため、接続端子12を下型Bに収容する際に、接続端子12が下型Bによって擦れて損傷することはない。
【0032】
その後、上型Aを上面から被せ、上型Aと下型Bが当接したときに、上型Aを下型Bに向けて押圧する。そうすると、コイル1は加圧され。下型Bの底面と下枠25が隙間なく密着する。また、上型Aは端面被覆部22と隙間なく密着する。そのため、筒状部11の露出面の境界部分でバリが発生することを抑制することができる。なお、上型Aと端面被覆部22が密着しても、筒状部11とは当接しない。また、下型Bの底面と下枠25が密着しても下型Bは、筒状部11とは当接しない。
【0033】
また、上型Aで押圧すると、コイル1が加圧されるので、接続端子12の位置も若干変わる。即ち、接続端子12が直接下型と接触していると、接続端子12が擦れて損傷する虞がある。しかし、下型Bは、接続端子12と直接接触していないので、上型Aで押圧しても接続端子12が損傷することを抑制することができる。
【0034】
なお、上述のとおり、カバー21は、接続端子12の上面及び側面を被覆しているが、下面は被覆していない。そのため、
図4(b)に示すように、下型Bは、接続端子12の下面とは当接している。しかし、上型Aによって押圧する方向は、下方向であるため、接続端子12は高さ方向に移動する。換言すれば、下型Bの摺動方向は、高さ方向である。そのため、移動によって接続端子12が擦れる虞がある箇所は、側面である。したがって、接続端子12の下面が下型Bと当接していても、接続端子12が下型Bによって擦れることはなく、影響を受けない。
【0035】
そして、モールド樹脂部3を構成する樹脂が金型内に充填され、樹脂部材2が装着されたコイル1にモールド樹脂部3が形成される。カバー21の先端は、下型Bによって当接しており、樹脂の侵入を阻む。そのため、
図4(a)の斜線で示す箇所のみ樹脂が充填され、モールド樹脂部3が形成される。よって、下型Bによって保持された箇所がモールド樹脂部3から露出したカバー21を有するモールドコイル100が作製される。
【0036】
(効果)
以上のように、本実施形態のモールドコイルは、平角状の導電性部材が巻回されて成る筒状部11と、導電性部材の端部であり、筒状部11から引き出された接続端子12と、接続端12子を覆い、樹脂から成るカバー21と、筒状部11、接続端子12、カバー21を被覆するモールド樹脂と、を備える。カバー21は、金型の摺動方向と平行な接続端子12の少なくとも2面を被覆し、モールド樹脂部3は、カバー21の先端を被覆せず、カバー21の先端は露出している。
【0037】
金型が摺動する方向における接続端子12には、カバー21が設けられているため、金型はこのカバー21と当接し、接続端子12とは当接しない。そのため、接続端子12を金型に収容する際、又は、収容後に金型が摺動しても、接続端子12が金型によって擦れて損傷することを防止できる。よって、絶縁性を損なったり、モールドコイル100内に異物が混入することを抑制でき、信頼性の高いモールドコイル100を得ることができる。また、モールド樹脂部3から露出しているカバー21の先端部分に金型を当接させてバリ切りを行うことができる。そのため、接続端子12を損傷させることなく、接続端子12部分でバリ切りを行うことができる。
【0038】
筒状部11の巻軸方向から見たカバー21の断面は、概略コの字形状である。例えば、カバー21が、接続端子12の上面及び側面のみならず、下面も被覆した断面が概略ロの字形状である場合、カバー2を接続端子12の上面から嵌め込むことはできず、接続端子12の先端から挿入し、所定の位置まで移動させる必要がある。しかし、本実施形態では、カバー21は、接続端子12の下面は被覆していない。そのため、カバー21を接続端子12の上面から嵌め込むだけで、容易に装着可能になり、作業性が向上する。
【0039】
筒状部11の端面を覆う端面被覆部22を有し、端面被覆部22の上面とカバー21の上面は、概略同一平面となっている。これにより、上型Aは、凹凸を設けることなく、平坦な構造にすればよく、上型Aの構造を簡易化することができる。また、端面被覆部22によって筒状部11の上面が被覆されているため、上型Aによってコイル1を押圧しても筒状部11の上面が損傷することを防止できる。
【0040】
端面被覆部22は、筒状部11が露出する開口部23を有し、モールド樹脂部3は、開口部23を被覆していない。つまり、コイル1の筒状部11は露出している。コイル1に電流が流れると発熱するため、この熱をモールドコイル100の外部に放出する必要がある。本実施形態のように、コイル1の筒状部11の上面を露出させることで、コイル1から発生した熱が樹脂部材2やモールド樹脂部3の内側に籠ることなく、効率良くモールドコイル100の外部に放出させることができる。よって、モールドコイル100の放熱性が向上する。
【0041】
また、接続端子12は、平角線の断面形状において、長辺が高さ方向と平行となるように設けられている。即ち、接続端子12は、金型の摺動方向の長さが長い。よって、金型によって直接当接させる場合、金型の摺動によって接続端子12が擦れる面積が大きい。そのため、接続端子12が損傷するリスクが増大する。
【0042】
しかし、本実施形態では、接続端子12をカバー21が被覆し、下型Bは接続端子12を直接押さえていないため、接続端子12が損傷することを抑制できる。このように、本実施形態においては、接続端子12の金型の摺動方向の長さが長い場合に、より効果を発揮する。
【0043】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0044】
本実施形態では、筒状部11の巻軸方向から見たカバー21の断面は、概略コの字形状であったが、これに限定されない。例えば、カバー21は、接続端子12の両側面のみを被覆し、上面及び下面を被覆してなくてもよい。即ち、筒状部11の巻軸方向から見たカバー21の断面は、上下面が開口している筒状であってもよい。カバー21がこのような形状であっても、接続端子12の金型の摺動方向の端面は、カバー21によって被覆されているので、接続端子12が金型と擦れて損傷することを抑制することができる。
【0045】
本実施形態では、樹脂部材2は、別途成形したものをコイル1に装着させたが、モールド成型によって、コイル1に樹脂部材2を被覆させてもよい。即ち、1次モールド成型によって、樹脂部材2をコイル1に被覆させ、2次モールド成型によってモールド樹脂部3を樹脂部材2に被覆されたコイル1に被覆させてもよい。
【0046】
本実施形態では、カバー21と端面被覆部22は一体に成形されていたが、これに限定されず、カバー21と端面被覆部22はそれぞれ別々に成形し、コイル1にそれぞれ装着させてもよい。また、接続端子12a、12bの先端は横並びに配置する必要はない。つまり、接続端子12bは、筒状部11の端面から巻軸方向に沿って延びていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
100 モールドコイル
1 コイル
11 筒状部
12 接続端子
2 樹脂部材
21 カバー
22 端面被覆部
23 開口部
24 保持部
25 突出部
26 下枠
3 モールド樹脂
31 開口部
A 上型
B 下型