(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ラミネート用印刷インキ組成物及び易引き裂き性積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20240613BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240613BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240613BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20240613BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240613BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20240613BHJP
C09D 11/033 20140101ALI20240613BHJP
C09D 11/106 20140101ALI20240613BHJP
【FI】
C09D11/102 ZAB
B32B27/30 A
B32B27/30 Z
B32B27/30 101
B32B27/40
B41M1/30 D
B65D65/40 D
B65D65/46
C09D11/033
C09D11/106
(21)【出願番号】P 2020024710
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】神藤 佑斗
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-020818(JP,A)
【文献】特開2017-031298(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186383(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/116905(WO,A1)
【文献】特開2018-131624(JP,A)
【文献】特開平08-225629(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0247876(US,A1)
【文献】特開2019-196455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/102
B32B 27/30
B32B 27/40
B41M 1/30
B65D 65/40
B65D 65/46
C09D 11/033
C09D 11/106
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、バインダー樹脂、硬化剤として多官能イソシアネート化合物、有機溶剤を含有す るラミネート用印刷インキ組成物であって、
該多官能イソシアネート化合物が、植物油由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートをヌレート化したイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物を含有し、
該バインダー樹脂が下記(1)又は(2)であるラミネート用印刷インキ組成物: (1)該イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するポリウレ タン樹脂であり、且つ
a.該ポリウレタン樹脂と硬化剤の固形分比率が、質量比でポリウレタン樹脂:硬化剤 =1:0.1~0.5である;
(2)ポリウレタン樹脂及び、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は塩化ビニル・ア クリル系共重合体であって、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び塩化 ビニル・アクリル系共重合体の少なくとも一つが、該イソシアネート化合物のイソシアネ ート基と反応しうる反応基を有しており、
b.該ポリウレタン樹脂と該塩化ビニル酢酸ビニル共重合体と塩化ビニル・アクリル系 共重合体の合計と硬化剤の固形分比率が、質量比で(ポリウレタン樹脂+塩化ビニル酢酸 ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体):硬化剤=1:0.1~0.5である。
【請求項2】
該バインダー樹脂が上記(2)のとき、ポリウレタン樹脂と、塩化ビニル酢酸ビニル共 重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体、の固形分比率が質量比で、ポリウレタン樹脂 /(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体)=9/1~1/9である請求項1に記載のラミネート用印刷インキ組成物。
【請求項3】
上記(1)の場合において、前記ポリウレタン樹脂の多官能イソシアネート化合物のイ ソシアネート基と反応しうる反応基は、アミノ基及び/又は水酸基であり、
上記(2)の場合において、前記ポリウレタン樹脂が多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するときには、その反応基がアミノ基及び/ 又 は水酸基であり、
上記(2)の場合において、前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・アクル 系共重合体がイソシアネート基と反応しうる反応基を有するときは、その反応基が水酸基である請求項1または2に記載のラミネート用印刷インキ組成物。
【請求項4】
上記(1)及び(2)において、前記ポリウレタン樹脂は、バイオポリエステルポリオ ール成分と、有機ジイソシアネート成分とを反応させたバイオマスポリウレタン樹脂を含み、かつ、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を有し、
前記バイオポリエステルポリオール成分はジカルボン酸とジオールとの反応生成物であ り、分子量300以下の活性水素基を1分子中に3個以上有する有機酸を含まないか、又は、前記ジカルボン酸に対して3000ppm以下となるよう含み、前記ジカルボン酸および前記ジオールの少なくともいずれか一方が植物由来のものである請求項1~3のいずれかに記載のラミネート用印刷インキ組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤は、エステル系溶剤、及び、アルコール系溶剤の混合物であることを特徴 とする請求項1~4のいずれかに記載のラミネート用印刷インキ組成物。
【請求項6】
顔料、バインダー樹脂、硬化剤として多官能イソシアネート化合物、有機溶剤を含有す るラミネート用印刷インキ組成物であって、
該多官能イソシアネート化合物が、イソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物を含有し、
該バインダー樹脂が下記(1)又は(2)であるラミネート用印刷インキ組成物:(1)該イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するポリウレタン樹脂であり、当該ポリウレタン樹脂は、バイオポリオール成分とイソシアネート成分との反応物であり;当該バイオポリオール成分は、炭素数2~4の短鎖ジオールとセバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、アゼライン酸、ダイマー酸から選ばれるカルボン酸成分との反応物であり、且つ
a.該ポリウレタン樹脂と硬化剤の固形分比率が、質量比でポリウレタン樹脂:硬化剤 =1:0.1~0.5である;
(2)ポリウレタン樹脂及び、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は塩化ビニル・ア クリル系共重合体であって、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び塩化ビニル・アクリル系共重合体の少なくとも一つが、該イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有しており、
当該ポリウレタン樹脂は、バイオポリオール成分とイソシアネート成分との反応物であり;当該バイオポリオール成分は、炭素数2~4の短鎖ジオール成分とセバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、アゼライン酸、ダイマー酸から選ばれるカルボン酸成分との反応物であり、且つ
b.該ポリウレタン樹脂と該塩化ビニル酢酸ビニル共重合体と塩化ビニル・アクリル系 共重合体の合計と硬化剤の固形分比率が、質量比で(ポリウレタン樹脂+塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体):硬化剤=1:0.1~0.5である。
【請求項7】
基材フィルムに
、請求項1~6のいずれか一項に記載のラミネート用印刷インキ組成物からなる層、接着剤層、シーラントフィルムが順に積層されてなる易引き裂き性積層
体。
【請求項8】
接着剤層が、ポリオール化合物と多官能イソシアネート化合物の反応物を含有する請求 項
7に記載の易引き裂き性積層体。
【請求項9】
接着剤層におけるポリオール化合物が、酸成分及び/又はグリコール成分がバイオマス成分であるバイオマスポリエステルポリオールを原料とする、バイオマスポリウレタンポリオールを含有するポリオール化合物であり、多官
能イソシアネート化合物がイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物である請求項
8に記載の易引き裂き性積層体。
【請求項10】
基材フィルム及びシーラントフィルムがバイオマス由来のフィルムである請求項
7~9のいずれかに記載の易引き裂き性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用印刷インキ組成物、及び基材フィルムにラミネート用印刷インキを印刷後、接着剤を塗布し、シーラントフィルムを積層して得られる易引き裂き性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、菓子、生活雑貨、ペットフード等には意匠性、経済性、内容物保護性、輸送性などの機能から、各種プラスチックフィルムを用いた包装材料が使用されている。また、多くの包装材料には消費者へアピールする意匠性、メッセージ性の付与を意図してグラビア印刷やフレキソ印刷が施されている。
これらの包装材料を得るために、包装材料の基材フィルムの表面に印刷される表刷り印刷、あるいは包装材料の基材フィルムの印刷面に必要に応じて接着剤やアンカー剤を塗布し、フィルムにラミネート加工を施す裏刷り印刷が行われる。
【0003】
裏刷り印刷としては、ポリエステル、ナイロン、アルミニウム箔等の各種フィルム上に色インキ、白インキを順次印刷を行なう。その後、該白インキの印刷層上に、接着剤を用いたドライラミネート加工や、アンカーコート剤を用いたエクストルージョンラミネート加工等により、ヒートシールを目的としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等が積層されている(例えば、特許文献1参照)。
得られた積層体は、菓子、スープ、味噌汁等の食品の積層袋として利用される。これらの積層袋は、使用時に内容物を取り出すために、人間の手によって開封される。ここで、引き裂き性が悪いと開封時に過度に力を入れる必要がある結果、意図しない方向に切れてしまい、結果的に内容物がこぼれるといった問題が生じるので、良好な引き裂き性が求められる。
特に、インキが印刷されている箇所は、インキ層と接着剤層との結合力が無地部より劣るため引き裂き性が劣る傾向がある。
【0004】
引き裂き性を向上させるための手段として、ラミネート接着剤層を硬くすることが知られている(例えば、特許文献2参照)が、このとき、インキ部とインキが印刷されていない無地部が混在して、接着剤層をインキ部で引き裂ける硬さにすると、無地部が硬くなりすぎ、逆に無地部に合わせるとインキ部で引き裂き性が劣るという問題が生じる。
これを解決するために、インキ層と接着剤層の同じ官能基と反応しうる官能基を2つ以上有する硬化剤を、インキ層に含有させて、該インキ層は、分子内に官能基として水酸基2つ以上を有する化合物(a1)と、その水酸基と反応する硬化剤からなる組成物から得た層とすることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、この場合には、インキ層に含まれるポリウレタン樹脂に対する多官能イソシアネート硬化剤の固形分比率が、ポリウレタン樹脂:多官能イソシアネート硬化剤=1:0.25と非常に低いため、引き裂き性は少し向上するが、引き裂き時に抵抗を感じる等、いまだ十分ではない問題を有している。
【0005】
そこで、本出願人は、インキ層に含まれるポリウレタン樹脂に対する多官能イソシアネート硬化剤の固形分比率が、ポリウレタン樹脂:多官能イソシアネート硬化剤=1:0.35~0.9(例えば、特許文献4参照)、インキ層に含まれる(ポリウレタン樹脂+塩化ビニル酢酸ビニル共重合体)に対する多官能イソシアネート硬化剤の固形分比率が、(ポリウレタン樹脂+塩化ビニル酢酸ビニル共重合体):多官能イソシアネート硬化剤=1:0.2~0.9(例えば、特許文献5参照)とすることにより、引き裂き性が向上することを提案した。
しかし、さらなる引き裂き性の向上が要求される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平05-097959号公報
【文献】特開2008-274061号公報
【文献】特開2012-125978号公報
【文献】特開2017-025143号公報
【文献】特開2017-031298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、良好な発色性及び易引き裂き性を発揮でき、地球温暖防止や環境負荷の低減に寄与できるラミネート用印刷インキ組成物、及び基材フィルムに該ラミネート用印刷インキ組成物を印刷後、接着剤を塗布し、シーラントフィルムを積層してなる、優れた易引き裂き性積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、下記のラミネート用印刷インキ組成物及び積層体を発明した。
本発明は、
1.顔料、バインダー樹脂、硬化剤として多官能イソシアネート化合物、有機溶剤を含有するラミネート用印刷インキ組成物であって、該多官能イソシアネート化合物がイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物を含有し、該バインダー樹脂が下記(1)又は(2)であるラミネート用印刷インキ組成物。
(1)該イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するポリウレタン樹脂であり、且つa.該ポリウレタン樹脂と硬化剤の固形分比率が、質量比でポリウレタン樹脂:硬化剤=1:0.1~0.5である。
(2)ポリウレタン樹脂及び、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体であって、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び塩化ビニル・アクリル系共重合体の少なくとも一つが、該イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有しており、b.該ポリウレタン樹脂と該塩化ビニル酢酸ビニル樹脂と塩化ビニル・アクリル系共重合体の合計と硬化剤の固形分比率が、質量比で(ポリウレタン樹脂+塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体):硬化剤=1:0.1~0.5である。
2.硬化剤が、植物油由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートをヌレート化したイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物である1に記載のラミネート用印刷インキ組成物。
3.該バインダー樹脂が上記(2)のとき、ポリウレタン樹脂と、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体、の固形分比率が質量比で、ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体)=9/1~1/9である1又は2に記載のラミネート用印刷インキ組成物。
4.上記(1)の場合において、前記ポリウレタン樹脂の多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基は、アミノ基及び/又は水酸基であり、上記(2)の場合において、前記ポリウレタン樹脂が多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するときには、その反応基がアミノ基及び/又は水酸基であり、上記(2)の場合において、前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・アクリル系共重合体がイソシアネート基と反応しうる反応基を有するときは、その反応基が水酸基である1~3のいずれかに記載のラミネート用印刷インキ組成物。
5.上記(1)及び(2)において、前記ポリウレタン樹脂は、バイオポリエステルポリオール成分と、有機ジイソシアネート成分とを反応させたバイオマスポリウレタン樹脂を含み、かつ、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基の少なくともいずれか一方を有し、前記バイオポリエステルポリオール成分はジカルボン酸とジオールとの反応生成物であり、分子量300以下の活性水素基を1分子中に3個以上有する有機酸を含まないか、又は、前記ジカルボン酸に対して3000ppm以下となるよう含み、前記ジカルボン酸および前記ジオールの少なくともいずれか一方が植物由来のものである1~4のいずれかに記載のラミネート用印刷インキ組成物。
6.前記有機溶剤は、エステル系溶剤、及び、アルコール系溶剤の混合物であることを特徴とする1~5のいずれかに記載のラミネート用印刷インキ組成物。
7.基材フィルムに、1~6のいずれかに記載のラミネート用印刷インキ組成物からなる層、接着剤層、シーラントフィルムが順に積層されてなる易引き裂き性積層体。
8.接着剤層が、ポリオール化合物と多官能イソシアネート化合物の反応物を含有する7に記載の易引き裂き性積層体。
9.ポリオール化合物が、酸成分及び/又はグリコール成分がバイオマス成分であるバイオマスポリエステルポリオールを原料とする、バイオマスポリウレタンポリオールを含有するポリオール化合物であり、多官能ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物である8に記載の易引き裂き性積層体。
10.基材フィルム及びシーラントフィルムがバイオマス由来のフィルムである7~9のいずれかに記載の易引き裂き性積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によればインキ層が硬くなり引き裂き性が良好となる効果を発揮でき、さらに、ラミネート用印刷インキ組成物中の硬化剤と接着剤層のイソシアネート基が反応して、印刷層と接着剤層との結合力を高くすることができる。
特に、バインダー樹脂として、(1)の場合の、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有し、且つ水酸基を有するポリウレタン樹脂、(2)の場合の、(末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有し、且つ水酸基を有するポリウレタン樹脂)、及び/又は(末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有するポリウレタン樹脂と、水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は水酸基を有する塩化ビニル・アクリル系共重合体)を使用することにより、さらに引き裂き性が良好となる。
また、ポリウレタン樹脂が末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有しているために、印刷インキとして適切な粘度範囲に調整できるポリウレタン樹脂となり、且つ顔料分散性も良好となるのでラミネート用印刷インキ組成中の樹脂含有量を高くすることができる。
また、顔料分散性が良好となるので発色性も良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のラミネート用印刷インキ組成物及び易引き裂き性積層体についてより詳しく説明する。
<ラミネート用印刷インキ組成物>
(顔料)
本発明において使用できる顔料としては、印刷インキにおいて一般的に用いられている各種無機顔料及び/又は有機顔料等である。
無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。
有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。
本発明のラミネート用印刷インキ組成物における顔料の含有量は、インキ組成物中に、5~60質量%の範囲であることが好ましい。
ラミネート用印刷インキ組成物中の顔料の含有量が上記の範囲より少なくなると、インキ組成物としての着色力が低下し、上記の範囲より多くなると、インキ組成物の粘度が高くなり、印刷物が汚れやすくなる。
【0011】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、下記(1)又は(2)を使用できる。
(1)イソシアヌレート環を有する3官能のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するポリウレタン樹脂であり、且つa.該ポリウレタン樹脂と硬化剤の固形分比率が、質量比でポリウレタン樹脂:硬化剤=1:0.1~0.5である。
(2)ポリウレタン樹脂及び、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体であって、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び塩化ビニル・アクリル系共重合体の少なくとも一つが、イソシアヌレート環を有する3官能のイソシアネート基と反応しうる反応基を有しており、b.該ポリウレタン樹脂と該塩化ビニル酢酸ビニル共重合体と塩化ビニル・アクリル系共重合体の合計と硬化剤の固形分比率が、質量比で(ポリウレタン樹脂+塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体):硬化剤=1:0.1~0.5である。
ここで、前記ポリウレタン樹脂のイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基としては、アミノ基及び/又は水酸基であり、前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体のイソシアネート基と反応しうる反応基としては、水酸基であることが好ましい。
【0012】
また、引裂き性の点からは、バインダー樹脂としては、
(1)ポリウレタン樹脂を使用する場合は、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有し、且つ水酸基を有するポリウレタン樹脂、
(2)ポリウレタン樹脂及び、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体を併用する場合は、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有し、且つ水酸基を有するポリウレタン樹脂及び/又は末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有するポリウレタン樹脂と、水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体であることが好ましい。
(2)ポリウレタン樹脂と塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体を併用する場合は、ポリウレタン樹脂と(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体)の固形分比率は、ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体)=9/1~1/9の範囲で使用することが好ましい。このポリウレタン樹脂の使用比率が9/1より大きいと引き裂き性が低下する傾向があり、1/9より小さいと耐ボイル性、レトルト適性が低下する傾向がある。
【0013】
また、ラミネート適性、ボイル、レトルト適性の点からは、ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体)=9/1~4/6の範囲で使用することが好ましい。
ラミネート用印刷インキ組成物中のバインダー樹脂の含有量は、(1)のポリウレタン樹脂を使用する場合は、固形分で5~15質量%が好ましい。(2)のポリウレタン樹脂と塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体とを併用する場合は、ポリウレタン樹脂と(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体)を合計して、固形分で5~15質量%が好ましい。
【0014】
[ポリウレタン樹脂]
ポリウレタン樹脂としては、従来からラミネート用グラビア印刷インキ組成物に使用されているポリウレタン樹脂を使用できる。
なかでも、本発明の課題に係る性能を向上させるために有利であるという面から、イソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するポリウレタン樹脂を使用するのが好ましい。
このようなポリウレタン樹脂としては、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上及び/又は水酸基を有するポリウレタン樹脂を使用することができる。特に、(ア)末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有し、且つ水酸基を有するポリウレタン樹脂及び/又は(イ)末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有するポリウレタン樹脂が好ましい。
このようなポリウレタン樹脂は、有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、得られたウレタンプレポリマーに対して、(ア)両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物、及び水酸基を有するアミン化合物とを反応させることにより、及び/又は(イ)両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物を反応させることにより得られる。
これらの(ア)と(イ)の方法において、両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物を反応させる手段としては、ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長させた後に、反応停止剤により反応停止させる手段、及びウレタンプレポリマーに鎖伸長剤による鎖伸長と、反応停止剤による反応停止を同時に反応させる手段等が挙げられる。
【0015】
[有機ジイソシアネート化合物]
バインダー樹脂を得るための有機ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物が、単独又は2種以上混合して使用できる。中でも脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び芳香脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。
【0016】
[高分子ジオール化合物]
該有機ジイソシアネート化合物と反応してバインダー樹脂を得るための高分子ジオール化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上を縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等の各種高分子ジオール化合物を単独又は2種以上混合して使用できる。
さらに上記高分子ジオール化合物に加えて、1,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の低分子ジオール化合物を単独又は2種以上混合して併用することができる。
なお、エステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合物系では、高分子ジオール化合物としてポリエーテルジオール化合物を利用する方が、得られるポリウレタン樹脂の溶解性が高くなる傾向があり、必要性能に合わせて幅広くインキの設計が可能となる点で好ましい。
また、上記有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物の使用比率は、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、通常、1.2:1~3.0:1、より好ましくは1.3:1~2.0:1となる範囲である。上記のイソシアネートインデックスが1.2より小さくなると、柔軟なポリウレタン樹脂となる傾向があり、インキを印刷して耐ブロッキング性等が低いとき等は、他の硬質の樹脂と併用することが好ましい場合がある。
【0017】
[鎖伸長剤]
バインダー樹脂を得るために使用することができる鎖伸長剤としては、インキ用バインダーとしてのポリウレタン樹脂で利用される既知の鎖伸長剤が利用可能であり、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物が例示できる。
【0018】
[反応停止剤]
バインダー樹脂を得るために使用することができる反応停止剤としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等の両末端が1級アミノ基であるポリアミン化合物、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン等のモノアルキルアミン類、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エタノール等のモノアルコール類等を例示することができる。
両端に1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂を得るには、反応停止剤として、両末端に1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有するポリアミンを使用する。このような両末端に1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有するポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等で、この中でも、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等の1級アミノ基を有するポリアミンが好ましい。
【0019】
水酸基を有するポリウレタン樹脂を得るには、鎖伸長剤及び/又は反応停止剤に水酸基を有する化合物を使用する。好ましくは、鎖伸長剤と反応停止剤の両方に水酸基を有する化合物を使用することが好ましい。鎖伸長剤としては、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等が例示できる。反応停止剤としては、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の水酸基を有するアルカノールアミン類等を例示することができる。
【0020】
本発明では、上記材料を用いて、公知のポリウレタン樹脂の製造方法を採用して有機ジイソシアネートを得ることができる。また、それぞれの成分の分子量や化学構造、また当量比が異なると、得られるポリウレタン樹脂の硬さも異なることから、これら成分を適宜選択し、組み合わせることによって、印刷適性やラミネート適性を調整することが可能である。
バインダー樹脂の含有量は、印刷時のラミネート用印刷インキ組成物中に、固形分で5~15質量%が好ましい。バインダー樹脂の含有量が範囲外であると、引き裂き性が低下する傾向がある。
そして、本発明のラミネート用印刷インキ組成物におけるポリウレタン樹脂は、質量平均分子量が10000~70000であることが好ましく、さらに20000~40000であることがより好ましい。
ポリウレタン樹脂は、環境面からバイオマスポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。バイオマスポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂中、固形分換算で、10質量%以上含まれることが好ましく、40質量%以上含まれることがより好ましい。
【0021】
(バイオマスポリウレタン樹脂)
本発明の課題に係る性能を向上させるのに有利であるという面から、イソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するバイオマスポリウレタン樹脂を使用するのが好ましい。イソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するバイオマスポリウレタン樹脂としては、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上及び/又は水酸基を有するバイオマスポリウレタン樹脂を使用することができる。特に、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有し、且つ水酸基を有するバイオマスポリウレタン樹脂及び/又は末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上を有するバイオマスポリウレタン樹脂が好ましい。
このようなバイオマスポリウレタン樹脂は、有機ジイソシアネート化合物(好ましくはバイオマス有機ジイソシアネート)とバイオマス高分子ジオール化合物との反応によりバイオマスウレタンプレポリマーを合成し、得られたバイオマスウレタンプレポリマーに対して、両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物、及び水酸基を有するアミン化合物とを反応させることにより、両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物を反応させることにより得られる。
このとき、該バイオマスウレタンプレポリマーと両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物、及び水酸基を有するアミン化合物とを反応させる方法、両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物を反応させる方法としては、バイオマスウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長させた後に、反応停止剤により反応停止させる方法、及びバイオマスウレタンプレポリマーに鎖伸長剤による鎖伸長と、反応停止剤による反応停止を同時に反応させる方法等が挙げられる。
【0022】
バイオマスポリウレタン樹脂は、バイオマス由来(植物由来)の成分を含むポリウレタン樹脂である。バイオマスポリウレタン樹脂は、他の枯渇性資源を用いる場合と比較して地球温暖化防止や環境負荷低減により貢献できる点から、バイオポリオール成分とイソシアネート成分との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、これに必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させて得られるバイオマスポリウレタン樹脂であることが好ましく、イソシアネート成分が植物由来のバイオイソシアネートであることがより好ましい。
上記バイオポリオール成分は、炭素数が2~4の短鎖ジオール成分と、カルボン酸成分とを反応させたバイオポリエステルポリオールであることが好ましい。バイオポリオール成分は、短鎖ジオール成分およびカルボン酸成分のうち、少なくともいずれか一方が植物由来であることがより好ましく、両方が植物由来であることがさらに好ましい。
【0023】
植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール成分は特に限定されない。一例を挙げると、短鎖ジオール成分は、以下の方法により植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等であってもよい。これらは併用されてもよい。1,3-プロパンジオールは、植物資源(たとえばトウモロコシ等)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造され得る。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3-プロパンジオール化合物は、EO製造法の1,3-プロパンジオール化合物と比較して、安全性の面から乳酸など有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能である。1,4-ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することによって得られたコハク酸を得て、これを水添することにより製造され得る。
また、エチレングリコールは、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造され得る。
【0024】
植物由来のカルボン酸成分は特に限定されない。一例を挙げると、カルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、アゼライン酸、ダイマー酸等である。これらは併用されてもよい。これらの中でも、カルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸およびダイマー酸からなる群から選択される少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。
また、積層体の接着性の観点から、活性水素基を1分子中に3個以上有する、分子量300以下の有機酸を含んでいることが好ましい。一例を挙げるとリンゴ酸、コハク酸、酒石酸等であり、これらは併用されてもよい。活性水素基を1分子中に3個以上有する分子量300以下の有機酸成分の含有量は、ジカルボン酸に対して3000ppm以下であることが好ましい。さらにセバシン酸とコハク酸の合計量に対して3000ppm以下がより好ましく、100~2000ppmがさらに好ましい。
バイオポリオール成分は、植物由来の短鎖ジオール成分と植物由来のカルボン酸成分とを、適宜縮合反応させることにより、100%植物由来のバイオポリエステルポリオールとして生成され得る。
具体的には、植物由来のセバシン酸及び植物油由来のコハク酸、ジカルボン酸に対して3000ppm以下のリンゴ酸と、植物由来の1,3-プロパンジオールとを直接脱水縮合することにより、バイオマスポリエステルポリオールが得られる。
【0025】
上記有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物が挙げられる。これらの有機ジイソシアネート化合物は、単独又は2種以上混合して使用できる。中でも脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び芳香脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。
また、上記有機ジイソシアネート化合物とバイオポリオールの使用比率は、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、通常、1.2:1~3.0:1、より好ましくは1.3:1~2.0:1となる範囲である。上記のイソシアネートインデックスが1.2より小さくなると、柔軟なポリウレタン樹脂となる傾向があり、本発明のインキ組成物を印刷した時に耐ブロッキング性等が低いことがあり、この場合、他の硬質の樹脂と併用することが必要となる場合がある。
【0026】
上記鎖伸長剤としては、インキ用バインダーとしてのポリウレタン樹脂で利用される既知の鎖伸長剤が利用可能であり、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物が挙げられる。更に、バイオマスポリウレタン樹脂がゲル化しない範囲で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類を併用することができる。
【0027】
バイオマスポリウレタン樹脂の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基を導入する反応停止剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等を例示できる。この中でも、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等の第1級アミノ基を有するポリアミンが好ましい。バイオマスポリウレタン樹脂に水酸基を導入する反応停止剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類が例示できる。また、既知の反応停止剤であるモノアミン化合物、モノアルコール化合物が利用可能であり、具体的には、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン等のモノアルキルアミン類、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、エタノール等のモノアルコール類を例示することができる。
【0028】
好ましいバイオマスポリウレタン樹脂は、イソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するバイオマスポリウレタン樹脂である。そして、分子の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上を有することが望ましく、更に水酸基を有することが好ましい。
また、上記ポリウレタン樹脂がアミノ基を有するときには、アミン価が1~10mgKOH/gであることが好ましい。上記アミン価が1mgKOH/g未満であると、本発明の積層体のフィルムに対する接着性が低下し、更に、ラミネート適性が低下する可能性があり、上記アミン価が10mgKOH/gを超えると、印刷時の耐ブロッキング性が低下する可能性がある。
なお、本発明において、上記アミン価は固形分1gあたりのアミン価を意味し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法(例えば、COMTITE(AUTO TITRATOR COM-900、BURET B-900、TITSTATION K-900)、平沼産業社製)によって測定した後、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
上記バイオマスポリウレタン樹脂の製造方法としては、上記材料を用いて、公知のポリウレタン樹脂の製造方法がそのまま使用できる。また、それぞれの成分の分子量や化学構造、また当量比が異なると、得られるバイオマスポリウレタン樹脂の硬さも異なることから、これら成分を適宜組み合わせることによって、積層体のラミネート適性を調節することが可能である。上記バイオマスポリウレタン樹脂の質量平均分子量としては、1万~7万であることが好ましく、さらに2万~6万であることがより好ましい。
【0029】
(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体としては、従来からラミネート用印刷インキ組成物に使用されている塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーの共重合体を使用できる。
具体的には、SOLBIN C、SOLBIN CL、SOLBIN CH、SOLBIN CN、SOLBIN C5R、SOLBIN A、SOLBIN AL、SOLBIN TA2、SOLBIN TA3、SOLBIN TAO、SOLBIN TA5R、SOLBIN M、SOLBIN ME、SOLBIN MFK(いずれも、日信化学工業社製)、VINNOL E15/48A、VINNOL E22/48A、VINNOL E14/45、VINNOL H14/36、VINNOL H40/55、VINNOL E15/45M(いずれも、WACKER社製)等が挙げられる。
なかでも、本発明のラミネート用印刷インキ組成物において、引き裂き性等の性能を向上させるため、及び環境に配慮した有機溶剤を採用するために、3官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基である、水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体がさらに好適である。このような水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体は、例えば、酢酸エステル部分の一部をケン化することにより得ることができる。
酢酸エステル部分の一部をケン化することにより得られた水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体の場合では、分子中の塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式1)、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式2)、および酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位(下記式3)の比率により樹脂の皮膜物性や溶解挙動が決定される。
即ち、塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位は樹脂皮膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位は接着性や柔軟性を付与し、酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位は環境に配慮したインキの有機溶剤系への良好な溶解性を付与する。
式1 -CH2-CHCl-
式2 -CH2-CH(OCOCH3)-
式3 -CH2-CH(OH)-
さらに、その他のバインダー樹脂としてさらにセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂や粘着性樹脂等を補助的に添加することができる。
【0030】
(塩化ビニル・アクリル系共重合体)
塩化ビニル・アクリル系共重合体は、塩化ビニルとアクリルモノマーの共重合体を主成分とするものであり、共重合体の形態は特に限定されない。なかでも、本発明のラミネート用印刷インキ組成物において、引き裂き性等の性能を向上させるため、及び環境に配慮した有機溶剤を採用するために、3官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基である、水酸基を有するアクリル系共重合体がさらに好適である。例えば、アクリルモノマーはポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト共重合されていても良い。アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を有するアクリルモノマー等を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。
水酸基を有するアクリルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
また、アクリルモノマーとして、水酸基以外の官能基を有するアクリルモノマーを用いることもできる。水酸基以外の官能基の例としてはカルボキシル基、アミド結合基、アミノ基、アルキレンオキサイド基等が挙げられる。
上記塩化ビニル・アクリル系共重合体は、質量平均分子量が1万~7万であることが好ましい。
また、本発明の課題に係る性能を向上させるため及び上記有機溶剤として環境に配慮した溶剤への溶解性、基材に対する接着性の点から、上記塩化ビニル・アクリル系共重合体は、50~200mgKOH/gとなるように水酸基を有していることが好ましい。
【0031】
(硬化剤)
硬化剤として使用する多官能イソシアネート化合物としては、イソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物が使用できる。イソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物としては、分子内に2個のイソシアネート基を有するイソシアネートをヌレート化したイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物が使用できる。
なかでも、植物油由来のイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物が環境面から好ましい。具体的には、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート等をヌレート化したものが例示できる。
その中でも、植物油由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートをヌレート化したイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物が好ましい。
この硬化剤の使用量は、引き裂き性の点からa.バインダー樹脂がポリウレタン樹脂の場合は、ポリウレタン樹脂:硬化剤の含有量の質量比率が、ポリウレタン樹脂:硬化剤=1:0.1~0.5の範囲であり、1:0.1~0.3がより好ましく、b.バインダー樹脂として、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体とを併用使用する場合は、(ポリウレタン樹脂+塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体):硬化剤の含有量の質量比率が、(ポリウレタン樹脂+塩化ビニル酢酸ビニル共重合体+塩化ビニル・アクリル系共重合体):硬化剤=1:1:0.1~0.5の範囲であり、1:0.1~0.3がより好ましい。
【0032】
(有機溶剤)
ラミネート用印刷インキ組成物に使用される有機溶剤としては、トルエン、ケトン系有機溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル系溶剤(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルなど)、アルコール系溶剤(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、炭化水素系溶剤(トルエン、メチルシクロヘキサンなど)が利用できる。
なお、最近の環境問題への対応と、インキの印刷適性や乾燥性などを考慮すると、印刷時のラミネート用印刷インキ組成物の有機溶剤として、上記の中でも、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との混合有機溶剤を、エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=50/50~95/5の範囲、好ましくはエステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=60/40~85/15の範囲となるように使用する。
さらに、インキの印刷適性の点から、印刷時のラミネート用印刷インキ組成物中に酢酸プロピルを5質量%以上、15質量%以下含有させることが好ましい。
【0033】
(水)
本発明のインキ組成物には、積層体を作成するための印刷時の静電気による印刷不良の緩和、及び、版かぶりの防止やセル再現性の点より水を含有させることが好ましい。水の使用量は、インキ組成物中に10質量%以下が好ましく、更に好ましくは、0.1~5.0質量%の範囲である。
【0034】
(密着性向上剤)
密着性向上剤としては、ロジン及びその誘導体、塩素化ポリプロピレン、ダンマル樹脂等が例示でき、ロジン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上、より好ましくは2種以上を含有させることが望ましい。
【0035】
(ロジン及びその誘導体)
ロジンとしては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等が挙げられる。一般的にロジンは松から得られる琥珀色、無定形の樹脂であり、天然から得られるため混合物であるが、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸という構成成分ごとに単離して用いても良く、本発明ではこれらもロジンと定義する。
ロジン誘導体は、上記のロジンを変性してなる化合物であり、具体的に以下に列挙する。
(1)水素化ロジン:共役二重結合に水素を付加(水素添加)させて、耐候性を向上させたロジンである。
(2)不均化ロジン:不均化とは、二分子のロジンが反応し、共役二重結合を持った二分子のアビエチン酸が、一方は芳香族へ、もう一方は単独二重結合の分子となる変性である。一般に水添ロジンよりは耐候性が劣るが、未処理のものよりは耐候性が向上する。
(3)ロジン変性フェノール樹脂:オフセット印刷のインキには、メインバインダーとしてロジン変性フェノール樹脂が使われることが多い。ロジン変性フェノール樹脂は公知の製造法で得ることができる。
(4)ロジンエステル:ロジンから誘導されるエステル樹脂であり、古くから粘着・接着剤の粘着付与剤(タッキファイヤー)として用いられる。
(5)ロジン変性マレイン酸樹脂:ロジンに無水マレイン酸を付加反応させたもので、必要に応じてグリセリンなどの水酸基含有化合物を、無水酸基とエステル化させグラフトさせたものも含まれる。
(6)重合ロジン:天然樹脂のロジンから誘導される二量化された樹脂酸を含む誘導体である。
その他、公知のロジン、ロジン誘導体も用いることが可能であり、これらは単独だけでなく併用することができる。
更に、ロジン及びそのロジン誘導体の酸価は120mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が120mgKOH/g以上であると、積層体のラミネート強度が向上する。更に好ましくは酸価が160mgKOH/g以上である。また、ロジン及びその誘導体を配合する際の合計使用量は、インキ組成物の固形分中、0.1~3.0質量%が好ましい。
【0036】
(塩素化ポリプロピレン)
塩素化ポリプロピレンとしては、塩素化度が20~50のものが使用できる。塩素化度が20未満の塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤との相溶性が低下する傾向がある。一方、塩素化度が50を超える場合、塩素化ポリプロピレンは、フィルムに対する接着性が低下する傾向がある。なお、本発明において、塩素化度は、塩素化ポリプロピレン樹脂中の塩素原子の質量%で定義される。また、塩素化ポリプロピレンは、質量平均分子量が5000~200000の変性された又は未変性の塩素化ポリプロピレンであることが好ましい。質量平均分子量が5000未満の場合、塩素化ポリプロピレンは、接着性が低下する傾向がある。一方、質量平均分子量が200000を超える場合、塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤への溶解性が低下する傾向がある。また、塩素化ポリプロピレンを配合する際の使用量は、インキ組成物の固形分中、0.1~3.0質量%が好ましい。
【0037】
(ダンマル樹脂)
ダンマル樹脂は、ダマール、ダンマーとも表記され、植物由来の天然樹脂の一種である。詳細には、マレーシア、インドネシアなど東南アジアに生育するフタバガキ科又はカンラン科植物から得られる天然樹脂の一種である。使用する際には適当な有機溶剤に溶解させてワニスとする。ダンマル樹脂は塩素を含有しないため、印刷インキ組成物に塩素化ポリプロピレンを使用する場合に比べ、塩素を排除・低減することができる。また、ダンマル樹脂を配合する際の使用量は、インキ組成物の固形分中、3.0質量%以下が好ましい。
【0038】
(ブロッキング防止剤)
ブロッキング防止剤としては、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、硝化綿等が例示でき、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドの1種以上、好ましくは2種以上を含有させることが好ましく、顔料の種類によって、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、綿化綿を更に含有させることが好ましい。
【0039】
(シリカ粒子)
シリカ粒子は天然産、合成品、あるいは結晶性、非結晶性、あるいは疎水性、親水性のものなどが挙げられる。シリカ粒子は、平均粒子径が1.0~5.0μmのものが好ましい(なおシリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる)。シリカ粒子は、表面に親水性官能基を有する親水性シリカでも良いし、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカでも良いが、親水性のものが好ましく、親水性シリカ粒子を含むインキは重ね印刷時のインキの濡れ・広がりを促し、重ね印刷効果(以下「トラッピング性」と記載する場合がある)を向上させる効果も有する。シリカ粒子使用量は、インキ組成物中に0.0~3.0質量%が好ましく、更に好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0040】
(ポリエチレンワックス)
ポリエチレンワックスとしては平均粒子径が1.0~20μmの範囲のもの(なお、平均粒子径は、#1:Honeywell社製 Microtrac UPAにて測定した粒径を意味する)を使用する。ポリエチレンワックスの粒子径が1.0μmより小さいと、積層体作成時のすべり性、ブロッキング性が低下し、粒子径が20μmより大きいとトラッピング性が低下する。また、ポリエチレンワックスのインキ組成物中の含有量は、0.1~1.5質量%の範囲が好ましい。含有量が0.1質量%より少ないと目的とする効果が得られず、含有量が1.5質量%より多いと、光沢が低下する傾向にある。
【0041】
(硝化綿)
硝化綿としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている硝化綿が使用できる。硝化綿としては、天然セルロースと硝酸を反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものである。本発明に使用される硝化綿としては、窒素量10~13%、平均重合度35~90のものが好ましく用いられる。具体例としては、SS1/2、SS1/4、SS1/8、TR1/16、NCRS-2、(KOREA CNC社製)等を挙げることができる。硝化綿の使用量は、顔料の種類により、インキ組成物中に、0.1~2.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0042】
(セルロースアセテートプロピオネート樹脂)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている樹脂が使用できる。
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、セルロースを酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後に加水分解して得られる。一般的にはアセチル化が0.6~2.5重量%、プロピオニル化が42~46重量%、水酸基が1.8~5重量%である樹脂が市販されている。セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、顔料の種類により、インキ組成物中に、0.1~3.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0043】
(セルロースアセテートブチレート樹脂)
セルロースアセテートブチレート樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている樹脂が使用できる。
セルロースアセテートブチレート樹脂は、セルロースを酢酸及び酪酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。一般的にはアセチル化の程度が2~30重量%、ブチリル化の程度が17~53重量%、水酸基の程度が1~5重量%の樹脂が市販されている。セルロースアセテートブチレート樹脂の使用量は、顔料の種類により、インキ組成物中に、0.1~3.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0044】
(脂肪酸アミド)
脂肪酸アミドとしては、脂肪酸から酸基を除いた残基とアミド基を有するものであれば特に限定されない。脂肪酸アミドとしては、例えば、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、及びエステルアミド等が挙げられ、積層体作成時の印刷時の耐ブロッキング性が向上するため、モノアミド、置換アミド、及びビスアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。脂肪酸アミドの使用量は、インキ組成物中に、0.01~1質量%の範囲であることが好ましい。
・モノアミド:モノアミドは下記一般式(1)で表される。
一般式(1) R1-CONH2
(式中、R1は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
モノアミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
・置換アミド:置換アミドは下記一般式(2)で表される。
一般式(2) R2-CONH-R3
(式中、R2及びR3は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良い。)
置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
・ビスアミド:ビスアミドは下記一般式(3)あるいは一般式(4)で表される。
一般式(3) R4-CONH-R5-HNCO-R6
一般式(4) R7-NHCO-R8-CONH-R9
(式中、R4、R6、R7、及びR9は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R5及びR8は炭素数1~10のアルキレン基又はアリーレン基を表す。)
ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
・メチロールアミド:メチロールアミドは下記一般式(5)で表される。
一般式(5) R10-CONHCH2OH
(式中、R10は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
メチロールアミドの具体例としては、メチロールパルミチン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールオレイン酸アミド、メチロールエルカ酸アミド等が挙げられる。
・エステルアミド:エステルアミドは、下記一般式(6)で表される。
一般式(6) R11-CONH-R12-OCO-R13
(式中、R11及びR13は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R12は炭素数1~10のアルキレン基又はアリーレン基を表す。)
エステルアミドの具体例としては、ステアリルアミドエチルステアレート、オレイルアミドエチルステアレート等が挙げられる。
脂肪酸アミドの融点は、50℃~150℃であることが好ましい。
また、脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、炭素数12~22の飽和脂肪酸及び/又は炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び/又は炭素数18~22の不飽和脂肪酸がより好ましい。飽和脂肪酸として特に好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、不飽和脂肪酸として特に好ましくはオレイン酸、エルカ酸である。
【0045】
(添加剤)
上記ラミネート用印刷インキ組成物は、更に粘着付与剤、滑剤、耐ブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0046】
<本発明のラミネート用印刷インキ組成物の製造方法>
本発明のラミネート用印刷インキ組成物は、上述の硬化剤以外の各種材料を従来一般的に使用されている各種の分散・混練装置を使用して製造し、粘度を10~1000mPa・sとし、その後、経時安定性の点から、印刷時に硬化剤を加え、印刷時の雰囲気温度において、印刷条件に応じて適切な粘度となるように、具体的にはザーンカップ3号の流出秒数が12~23秒、好ましくは、高速印刷では14~16秒程度となるまで有機溶剤を加え撹拌することにより得ることができる。
【0047】
<易引き裂き性積層体>
次に、基材フィルムに、上記のラミネート用印刷インキを印刷後、接着剤を塗布し、シーラントフィルムを積層して得られる易引き裂き性積層体について説明する。
【0048】
(基材フィルム層、シーラント層)
上記のラミネート用印刷インキ組成物と共に、本発明の易引き裂き性積層体を構成する基材フィルム層及びシーラント層の基材としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネ-ト、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂フィルム若しくはシート及びポリ塩化ビニリデンまたは、ポリ塩化ビニルをコーティングしたポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、セロファン等のフィルム及びアルミニュウム箔、銅箔等が挙げられる。さらに、必要であれば、第一のフィルム基材、及び第二のフィルム基材の表面に、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の前処理を施すことができる。
基材フィルム層の基材としては、耐水性、耐熱性、耐衝撃性があり、防湿性やガス遮断性の観点から、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエステル、延伸ナイロン等が好ましい。
環境面からは、バイオマス樹脂、特にバイオマスポリエステルフィルム等が特に好ましい。
シーラント層の基材としては、熱によって溶融し相互に融着し得る基材であれば特に限定されないが、耐寒性、耐衝撃性、低温シール性の観点から、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等が好ましい。環境面からは、バイオマスポリオレフィンを含む低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等が特に好ましい。
【0049】
(接着剤)
本発明の易引き裂き性積層体の接着剤層を得るための接着剤としては、ポリオール化合物を含有する主剤及び多官能イソシアネート化合物を含有する硬化剤からなる接着剤を使用できる。以下接着剤層を形成するための多官能イソシアネート化合物、ポリオール化合物について説明する。
(硬化剤として使用される多官能イソシアネート化合物)
本発明において、接着剤層の硬化剤として使用される多官能イソシアネート化合物としては、特に限定されない。多官能イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、および、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等の植物由来のバイオマスジイソシアネート及び、これらをビューレット化、イソシアヌレート化したものを採用できる。これは、これらの中でもバイオマス多官能イソシアネート化合物が好ましく、中でも、バイオマスジイソシアネートをヌレート化したイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物が好ましい。
バイオマスイソシアネートは、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のイソシアネート化合物を得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また末端がイソシアネート基になるように、上記のイソシアネート化合物とジオール化合物を重合してなるポリマー又はオリゴマーも使用できる。
イソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物としては、分子内に2個のイソシアネート基を有するイソシアネートをヌレート化したイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物が使用できる。
なかでも、植物油由来のイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物が環境面から好ましい。具体的には、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート等をヌレート化したものが例示できる。
その中でも、植物油由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートをヌレート化したイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0050】
(主剤に使用されるポリオール化合物)
主剤に使用されるポリオール化合物は、分子内に少なくとも2個以上の水酸基を有するポリオール化合物である。
このようなポリオール化合物としては、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等が挙げられ、このようなポリオール化合物を2種以上混合して用いても構わない。中でも、ガラス転移温度と貯蔵弾性率の制御が容易なポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールが好ましい。中でも、バイオマス由来のポリエステルポリオールがより好ましい。バイオマスポリエステルポリオールは、ラミネート接着剤におけるバイオマス成分が増加することにより地球温暖化防止や環境負荷低減に貢献できるものである。
さらに、バイオマスポリエステルポリオールは特に限定されず、ジカルボン酸とジオールを反応して得られる。バイオマスポリエステルポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類とを縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等の各種高分子ジオール化合物である。そしてこれらの化合物のうちの1種以上が植物由来の化合物及び/又は植物由来の化合物から得たものである。
【0051】
植物由来の短鎖ジオール成分は特に限定されない。一例を挙げると、短鎖ジオール成分は、以下の方法により植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等であってもよく、これらを複数種併用できる。
1,3-プロパンジオールは、植物資源(たとえばトウモロコシ等)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造され得る。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3-プロパンジオール化合物は、EO製造法の1,3-プロパンジオール化合物と比較して、安全性の面から乳酸など有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能である。
1,4-ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することによって得られたコハク酸を得て、これを水添することにより製造され得る。
エチレングリコールは、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造され得る。
【0052】
植物由来のジカルボン酸成分は特に限定されない。一例を挙げると、ジカルボン酸成分は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、アゼライン酸、ダイマー酸等から選ばれる1種又は2種以上である。
これらの中でも、ジカルボン酸成分は、得られる接着剤組成物が軟包装にプリント又は塗布された際に、プリント物の耐ブロッキング性、ラミネート適性がさらに優れる観点から、セバシン酸、コハク酸、ダイマー酸からなる群から選択される少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。
バイオポリエステルポリオールは、活性水素基を1分子中に3個以上有する分子量300以下の有機酸を含んでもよい。なお、この有機酸成分は特に限定されない。一例を挙げると、活性水素基を1分子中に3個以上有する分子量300以下の有機酸成分は、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸等である。これらは併用されてもよい。活性水素基を1分子中に3個以上有する分子量300以下の有機酸成分は、コハク酸等の中に不純物として含まれているものでもよいし、新たに加えてもよい。このような有機酸成分を含有することにより、より高い耐性が要求された場合、ブロッキング性、レトルト性が良好に発現しやすい。なおリンゴ酸を含有させる際には、ジカルボン酸成分の合計質量に対して100~10000ppm含有させることが好ましく、300~2000ppm含有させることがより好ましい。
バイオマスポリオール成分は、植物由来の短鎖ジオール成分と植物由来のカルボン酸成分と、必要に応じて活性水素基を1分子中に3個以上有する分子量300以下の有機酸成分とを、適宜縮合反応させることにより、植物由来のバイオマスポリエステルポリオールとして生成されることが好ましい。これらのポリエステルポリオールには、原料であるポリオール化合物として、トリメチロールプロパン、1,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の低分子ジオール化合物が併用されてもよい。
【0053】
<易引き裂き性積層体の製造及び易引き裂き性積層袋の製造>
本発明の易引き裂き性積層体の製造及び易引き裂き性積層袋の製造について説明する。
まず、上記の印刷基材に、一般的なグラビア印刷方式又はフレキソ印刷方式等を用いて、本発明のラミネート用印刷インキ組成物により所望の模様や文字等を印刷する。
得られた印刷物に熱融着性ポリマー(シーラント)を積層するラミネート加工を行う。このラミネート加工には、主として2つの方法が利用されている。
一つ目は、ラミネート用印刷インキ組成物により印刷を行い、この印刷部を硬化剤により硬化を行った後、もしくは行う前に、その印刷面の表面に接着剤(アンカーコート剤ともいう)を塗布した後、熱融着性ポリマーを溶融樹脂として、これを積層させる押出ラミネート加工方法である。押出ラミネート加工方法は、印刷物の表面に、接着剤(例えば、水酸基を有するポリエステル系接着剤及びイソシアネート基を含有するイソシアネート系接着剤を含有する接着剤等)を塗布した後、既知の押出ラミネート機によって、溶融樹脂を積層させてなるものである。さらにその溶融樹脂を中間層として、他の材料を積層することによりサンドイッチ状に積層することもできる。なお、接着剤としてイミン系アンカーコート剤を使用するよりイソシアネート系アンカーコート剤を使用する方が接着力に優れる点において好ましい。
【0054】
二つ目は、ラミネート用印刷インキ組成物により印刷を行い、この印刷部を硬化剤により硬化を行った後、もしくは行う前に、その印刷層の表面に接着剤(例えば、水酸基を有するポリエステル系接着剤及びイソシアネート基を含有するイソシアネート系接着剤を含有する接着剤等)を塗布して、無延伸プラスチックフィルムを積層させるドライラミネート加工である。特に、レトルト用途で使用される金属箔を予めはさんでなる複層からなるフィルムを用いてラミネートすることもできる。
これらの方法により得られた易引き裂き性積層体は、その後、最終的にシーラント面同士がヒートシーラーなどで溶封されて易引き裂き性積層袋となる。
【0055】
この2つの方法に共通する事項として、ラミネート用印刷インキ組成物により印刷を行い、この印刷部を硬化剤により硬化を行った後に、接着剤を塗布する場合には、ラミネート用印刷インキ組成物と接着剤とは、互いに異なる官能基による硬化、つまり異なる硬化機構により硬化しても良い。また同じ官能基が作用する硬化剤を使用することもできる。
この結果、より適切な、ラミネート用印刷インキ組成物及び接着剤の組み合わせを選択することが可能になる。
一方、ラミネート用印刷インキ組成物により印刷を行い、この印刷部を硬化剤による硬化を行なう前に、接着剤を塗布する場合には、ラミネート用印刷インキ組成物と接着剤とは、互いに同じ官能基が作用する硬化剤を使用することもできる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
<ポリウレタン樹脂ワニスA(バイオマスポリウレタンでないもの、アミン価及び水酸基有)の製造例>
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、平均分子量2000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール200質量部、イソホロンジイソシアネート17.6質量部、水添MDI21.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル400質量部、イソプロピルアルコール171質量部を加えた後、イソホロンジアミン8.2質量部を加えて鎖伸長させ、さらにモノエタノールアミン0.35質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン1.3質量部、ジエチレントリアミン0.6質量部を加えて反応停止させて、ポリウレタン樹脂ワニスA(固形分30質量%)を得た。
【0057】
<ポリウレタン樹脂ワニスB(バイオマスポリウレタン、アミン価及び水酸基有)の製造例>
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=70/30(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量2000のポリエステルジオール200質量部、イソホロンジイソシアネート17.6質量部、水添MDI21.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル400質量部、イソプロピルアルコール171質量部を加えた後、イソホロンジアミン8.2質量部を加えて鎖伸長させ、さらにモノエタノールアミン0.35質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン1.3質量部、ジエチレントリアミン0.6質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスB(固形分30質量%)を得た。
【0058】
<ポリウレタン樹脂ワニスC(バイオマスポリウレタン、アミン価及び水酸基有)の製造例>
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)/アゼライン酸=60/30/10(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量2000のポリエステルジオール200質量部、イソホロンジイソシアネート17.6質量部、水添MDI21.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル400質量部、イソプロピルアルコール171質量部を加えた後、イソホロンジアミン8.2質量部を加えて鎖伸長させ、さらにモノエタノールアミン0.35質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン1.3質量部、ジエチレントリアミン0.6質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスC(固形分30質量%)を得た。
【0059】
<ポリウレタン樹脂ワニスD(バイオマスポリウレタン、アミン価及び水酸基有)の製造例>
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=70/30(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量2000のポリエステルジオール140質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール55質量部、平均分子量2000のポリエチレングリコール5質量部、イソホロンジイソシアネート17.6質量部、水添MDI21.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル400質量部、イソプロピルアルコール171質量部を加えた後、イソホロンジアミン8.2質量部を加えて鎖伸長させ、さらにモノエタノールアミン0.35質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン1.3質量部、ジエチレントリアミン0.6質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスD(固形分30質量%)を得た。
【0060】
<ポリウレタン樹脂ワニスE(バイオマスポリウレタン、アミン価有、水酸基無)の製造例>
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=70/30(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量2000のポリエステルジオール200質量部,イソホロンジイソシアネート17.6質量部、水添MDI21.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル429質量部、イソプロピルアルコール184質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、その後、イソホロンジアミン2.54質量部、ジエチレントリアミン0.17質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスE(固形分30質量%)を得た。
【0061】
(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体ワニスの製造)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体ワニス1(水酸基含有)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(商品名:ソルバインTA3、日信化学工業社製)20部を、メチルエチルケトン40部、酢酸エチル20部、酢酸プロピル20部からなる混合有機溶剤中に溶解させて固形分20%の塩化ビニル酢酸ビニル共重合体ワニス1を得た。
【0062】
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体ワニス2(水酸基含有)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(商品名:VINNOL E15/48A、WACKER社製)20部を、メチルエチルケトン40部、酢酸エチル20部、酢酸プロピル20部からなる混合有機溶剤中に溶解させて固形分20%の塩化ビニル酢酸ビニル共重合体ワニス2を得た。
【0063】
(塩化ビニル・アクリル系共重合体ワニスの製造方法)
塩化ビニル・アクリル系共重合体(塩化ビニル・アクリル酸2-ヒドロキシプロピル=84/16、重量平均分子量45000)を酢酸プロピルに溶解させ、固形分30質量%のワニスとした。
【0064】
(混合溶剤1及び2)
酢酸エチル/酢酸プロピル/イソプロピルアルコール=50/30/20の混合溶媒
【0065】
(塩素化PP)
塩素化度40%、数平均分子量100000の塩素化ポリプロピレン(固形分50%)40質量部とメチルシクロヘキサン60質量部を混合撹拌し、固形分20%の塩素化ポリプロピレンワニス1を得た
【0066】
(ロジン及びその誘導体)
重合ロジン:酸価160mgKOH/g
【0067】
(シリカ粒子)
平均粒子径:4.5μm
【0068】
(ポリエチレンワックス)
平均粒子径:12μm
【0069】
(硬化剤)
硬化剤1:植物油由来の1,5-ペンタメチレンジイソシアネートをヌレート化したイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物(固形分100%)
硬化剤2:イソホロンジイソアネートアダクト化合物(固形分100%)
【0070】
(ラミネート用印刷インキ組成物の製造)
顔料(酸化チタン)35質量部、ポリウレタン樹脂ワニスA~E、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体ワニス1~2、混合溶剤10質量部を表1の配合にしたがって配合した後にペイントコンデショナーを用いて混練し、さらに表1の配合に基づき残余の混合溶剤A又はBを添加混合した各混合物の100質量部に、印刷時に表1の配合に従って、硬化剤及び混合溶剤を加え攪拌混合し、粘度を離合社製ザーンカップ#3で15秒に調整した、実施例1~17、比較例1~6のラミネート用印刷インキ組成物を調製した。
【0071】
<性能評価>
実施例1~17、比較例1~6のラミネート用印刷インキ組成物については、版としてダイレクト版175線を備えたグラビア印刷機にて、東洋紡績社製、N-1102、厚さ15μm(以後基材フィルムと記載)の処理面に印刷速度100m/分で印刷を行った。
【0072】
(ドライラミネート)
上記実施例1~17、比較例1~6の各印刷物に、固形分で2.0g/m2となる量の下記バイオマス接着剤、水酸基を有するポリエステル系接着剤及びイソシアネート基を含有するイソシアネート系接着剤を含有する接着剤(タケラックA-616/タケネートA-65酢酸エチル溶液)を塗布し、ドライラミネート機にてシーラントフィルムであるLLDPE#50(東洋紡社製、L-4104)を積層し、積層体を得た。
【0073】
バイオマス接着剤
(主剤)
撹拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=70/30(質量比)とリンゴ酸(セバシン酸+コハク酸に対して700ppm含有)、と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる平均分子量2000のポリエステルジオール300質量部、トリメチロールプロパン5.7質量部と、酢酸エチル28.5質量部を入れ、50℃で30分加熱した。滴下ロートにトリレンジイソシアネート26.3部と酢酸エチル28.5部の混合液を入れ、これを5分間かけて四つ口フラスコに滴下し、その後70℃で1.5時間反応させた。その後、0.101部のチタンテトラブトキシドを加え、90℃に昇温し、5時間反応させた。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、固形分70%、質量平均分子量23,000のバイオマスポリオールの主剤を得た。
【0074】
(バイオマス接着剤組成物)
上記主剤を31.6質量部(固形分70%)、硬化剤タケネートA5(MDI/TMP、固形分80%、三井化学SKCポリウレタン社製)10.5質量部、酢酸エチル57.9質量部を撹拌混合し、バイオマス接着剤組成物を製造した。
【0075】
(押出ラミネート)
上記実施例1~17、比較例1~6の各印刷物に、固形分で0.2g/m2となる量の接着剤(A-3210/A-3070(三井化学社製))を塗布し押出ラミネート機にて溶融ポリエチレンを積層して積層体を得た。
【0076】
(発色性評価)
上記基材フィルムに実施例1~16、比較例1~6のラミネート用印刷インキ組成物を、175線の印刷版を用いたグラビア印刷機にて、印刷した各印刷物の発色性を、実施例7のラミネート用印刷インキ組成物の発色性を〇として、発色性のレベルを目視にて観察し、下記の評価基準にて評価した。
○:発色性が鮮明と認められるもの
×:発色性が鮮明と認められないもの
【0077】
(引き裂き性評価)
ドライラミネート、押出ラミネートで得られた実施例1~17、比較例1~6の各積層体を40℃で2日間経時した後、カッターで切れ目を入れ、手で引き裂いた際の引き裂き易さで評価した。
○:抵抗なく引き裂ける
△:抵抗はあるが引き裂ける
×:シーラントに伸びが生じて引き裂けない
なお、ドライラミネート積層体は、上記バイオマス接着剤と、水酸基を有するポリエステル系接着剤及びイソシアネート基を含有するイソシアネート系接着剤を含有する接着剤の2種の接着剤をそれぞれ使用して得た。いずれの接着剤によっても、各実施例及び各比較例にわたり同じ評価であった。
【0078】
(ラミネート適性)
ラミネート適性については、各PETフィルム印刷物のレトルト適性から、ラミネート適性を評価した。
【0079】
<レトルト適性>
実施例1~17、比較例1~6のラミネート用印刷インキ組成物については、版としてダイレクト版175線を備えたグラビア印刷機にて、片面にコロナ放電処理を施したPETフィルム(東洋紡社製、E-5101、厚さ12μm)の処理面に印刷速度100m/分で印刷を行った。
印刷後1日経過した各PETフィルム印刷物に、固形分で2.0g/m2となる量の上記バイオマス接着剤、ウレタン系接着剤(タケラックA-616/タケネートA-65、三井化学SKCポリウレタン社製)を塗布した後、ドライラミネート機で無延伸ポリプロピレンフィルム(RXC-22、厚さ60μm、三井化学東セロ社製)を貼り合わせ、40℃で3日間放置してドライラミネート物を得た。
このドライラミネート物を製袋し、中に水90重量%、サラダ油10重量%の混合物を詰めて溶封後、120℃の加圧熱水中に60分間浸漬した時のラミ浮きの有無からレトルト適性を評価した。
〇:ラミ浮きが見られないもの
×:ラミ浮きが見られるもの
【0080】
【0081】
本発明に沿った例である実施例によれば、いずれも発色性、引き裂き性及び耐レトルト性に優れていた。
これに対してイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物を含有しない比較例1及び4、イソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物を少量含有させたに留まる比較例2及び5によれば、引き裂き性が不十分であった。さらに、イソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート化合物を過剰に含有させた比較例3及び6によれば、耐レトルト性に劣っていた。