(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】コイル部品及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/32 20060101AFI20240613BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240613BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20240613BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240613BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01F27/32 103
H01F17/04 F
H01F27/06 103
H01F27/29 F
H01F27/29 123
H01F27/28 133
(21)【出願番号】P 2020049553
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池永 倫和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和吉
(72)【発明者】
【氏名】床波 誠
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-146918(JP,U)
【文献】特開2007-234763(JP,A)
【文献】特開2013-229423(JP,A)
【文献】特開平07-142264(JP,A)
【文献】特開昭62-125608(JP,A)
【文献】特開平02-123716(JP,A)
【文献】特開平11-241271(JP,A)
【文献】特開2000-286595(JP,A)
【文献】特開2009-016715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/42
H01F 38/42-41/12
H02M 3/00- 3/44
H02M 7/00- 7/40
H05K 3/28
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル導体と、
前記コイル導体が設けられる磁性基体部と、
前記磁性基体部の表面に設けられ、複数の金属粒子と樹脂とを含む導電性樹脂部と、
前記コイル導体に電気的に接続される第1外部電極と、
前記導電性樹脂部に電気的に接続される第2外部電極と、を備え、
前記導電性樹脂部は
、上面視して前記コイル導体のコイル軸の上端部を覆って
かつ側面視して前記磁性基体部の側面が露出した部分があるように前記磁性基体部の表面に設けられている、コイル部品。
【請求項2】
前記金属粒子は非磁性金属粒子である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記非磁性金属粒子は銀または銅を含む粒子である、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記金属粒子は磁性金属粒子である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記磁性金属粒子は鉄またはニッケルを含む粒子である、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記金属粒子の直径は10μm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記導電性樹脂部は前記磁性基体部の少なくとも第1の面を覆っている、請求項1から6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記導電性樹脂部は前記磁性基体部の前記第1の面から第2の面及び第3の面の2つの面に延在している、請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記導電性樹脂部は前記複数の金属粒子の80%以上が前記樹脂を介して結合し、
前記導電性樹脂部の比抵抗は1×10
-6Ω・m~1×10
-4Ω・mである、請求項1から8のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のコイル部品と、
前記コイル部品が実装されている回路基板と、を備える電子機器。
【請求項11】
前記コイル部品の前記第1外部電極は前記回路基板の信号電極に電気的に接続され、
前記コイル部品の前記第2外部電極は前記回路基板のグランド電極に電気的に接続されている、請求項10に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、降圧型のDC-DCコンバータの構成部品の一つにコイル部品が用いられている。降圧型のDC-DCコンバータでは、スイッチング素子がオン、オフすることによってコイル部品に高周波の電流が流れる。このため、コイル部品から電界及び磁界が漏洩し、他の機器を誤作動させる等の影響を及ぼすことがある。そこで、電界シールド効果を有するコイル部品(例えば、特許文献1)、及び、磁界シールド効果を有するコイル部品(例えば、特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-79942号公報
【文献】特開平11-195542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、コイル導体が設けられた磁性基体部の側面にグランドに接続される金属線を巻回することで、電界の漏れを低く抑えている。しかしながら、例えば高周波で使用されるような場合、コイル部品で生じる磁束の変化によって金属線に渦電流が発生し、Q値の低下を招くことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、電界の漏れを低く抑えつつ、Q値の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コイル導体と、前記コイル導体が設けられる磁性基体部と、前記磁性基体部の表面に設けられ、複数の金属粒子と樹脂とを含む導電性樹脂部と、前記コイル導体に電気的に接続される第1外部電極と、前記導電性樹脂部に電気的に接続される第2外部電極と、を備え、前記導電性樹脂部は、上面視して前記コイル導体のコイル軸の上端部を覆ってかつ側面視して前記磁性基体部の側面が露出した部分があるように前記磁性基体部の表面に設けられている、コイル部品である。
【0007】
上記構成において、前記金属粒子は非磁性金属粒子である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記非磁性金属粒子は銀または銅を含む粒子である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記金属粒子は磁性金属粒子である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記磁性金属粒子は鉄またはニッケルを含む粒子である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記金属粒子の直径は10μm以下である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記導電性樹脂部は前記磁性基体部の少なくとも第1の面を覆っている構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記導電性樹脂部は前記磁性基体部の前記第1の面から第2の面及び第3の面の2つの面に延在している構成とすることができる。また、上記構成において、前記導電性樹脂部は前記複数の金属粒子の80%以上が前記樹脂を介して結合し、前記導電性樹脂部の比抵抗は1×10
-6
Ω・m~1×10
-4
Ω・mである構成とすることができる。
【0014】
本発明は、上記に記載のコイル部品と、前記コイル部品が実装されている回路基板と、を備える電子機器である。
【0015】
上記構成において、前記コイル部品の前記第1外部電極は前記回路基板の信号電極に電気的に接続され、前記コイル部品の前記第2外部電極は前記回路基板のグランド電極に電気的に接続されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電界の漏れを低く抑えつつ、Q値の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、本願発明の第1の実施形態に係るコイル部品を示す平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A´断面図、
図1(c)は、
図1(a)のB-B´断面図である。
【
図2】
図2は、導電性樹脂部の一部を拡大した断面図である。
【
図3】
図3は、導電性樹脂部の他の例の一部を拡大した断面図である。
【
図4】
図4は、本願発明の第2の実施形態に係るコイル部品の断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本願発明の第3の実施形態に係るコイル部品の断面図、
図5(b)は、
図5(a)のA方向から見た場合の平面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、本願発明の第4の実施形態に係る電子機器の断面図である。
【
図7】
図7は、比較例2に係るコイル部品の断面図である。
【
図9】
図9(a)は、比較例1に係るコイル部品の電界強度の測定結果、
図9(b)は、実施例1に係るコイル部品の電界強度の測定結果である。
【
図10】
図10は、実施例1、実施例2、及び比較例1から比較例4に係るコイル部品のQ値の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を適宜参照しながら、本願発明の実施形態について説明する。但し、本願発明は図示された態様に限定される訳ではない。また、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0019】
[第1の実施形態]
図1(a)は、本願発明の第1の実施形態に係るコイル部品を示す平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A´断面図、
図1(c)は、
図1(a)のB-B´断面図である。
図1(a)から
図1(c)では、コイル部品として例えばDC-DCコンバータに用いられるパワーインダクタの場合を例に示すが、これとは異なる用途の場合でもよい。
【0020】
図1(a)から
図1(c)を参照して、コイル部品100は、磁性基体部10、コイル導体30、導電性樹脂部50、第1外部電極60及び62、並びに第2外部電極70を備える。コイル部品100の「長さ」方向、「幅」方向、「厚さ」方向をそれぞれ、「L」方向、「W」方向、「T」方向と図示している。コイル部品100は、例えば、長さ寸法(L軸方向の寸法)が2mm~10mm、幅寸法(W軸方向の寸法)が2mm~10mm、厚さ寸法(T軸方向の寸法)が2mm~5mmである。
【0021】
磁性基体部10は、例えば、巻芯部12と、巻芯部12の軸方向の一方の端部に設けられた第1鍔部14と、巻芯部12の他方の端部に設けられた第2鍔部16と、を備えるドラムコアである。第1鍔部14は巻芯部12と反対側に第1鍔部14の外側の面20を持ち、第2鍔部16は巻芯部12と反対側に第2鍔部16の外側の面21を持つ。面20、21はそれぞれ磁性基体部10の外側の面である。巻芯部12は、例えば断面形状が円形状であるが、略長方形状であってもよいし、六角形又は八角形等の多角形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。第1鍔部14及び第2鍔部16は、巻芯部12の軸方向に厚みを有する角板形状であるが、円板形状であってもよい。
【0022】
磁性基体部10は、例えばNi-Zn系又はMn-Zn系のフェライト材料で形成された焼結体である。磁性基体部10は、この場合に限られず、例えばFe-Si-Cr系、Fe-Si-Al系、又はFe-Si-Cr-Al系等の軟磁性合金材料、Fe又はNi等の磁性金属材料、アモルファス磁性金属材料、若しくはナノ結晶磁性金属材料等の金属磁性材料を含んで形成されてもよい。磁性基体部10は、これら金属磁性材料を熱硬化性又は熱可塑性の樹脂で固めた構成をしていてもよいし、金属磁性材料同士が無機材料を介して結合した構成をしていてもよい。
【0023】
コイル導体30は、被覆導線32が巻芯部12に巻回した周回部34と、周回部34から引き出された2つの引出部(不図示)と、を含む。被覆導線32は、例えば銅からなる芯線の周面がポリアミドイミドからなる絶縁被膜で覆われた構造をしている。芯線は、銅以外の金属で形成されてもよく、例えば銀、パラジウム、又は銀パラジウム合金で形成されてもよい。絶縁被膜は、ポリアミドイミド以外の絶縁材料で形成されてもよく、例えばポリエステルイミド又はポリウレタン等の樹脂材料で形成されてもよい。
【0024】
第1外部電極60及び62は第1鍔部14に設けられている。具体的には、第1外部電極60及び62は、第1鍔部14の外側の面20に設けられている。第1鍔部14の外側の面20は磁性基体部10の表面であることから、第1外部電極60及び62は磁性基体部10の表面に設けられている。第1外部電極60及び62は、2つの引出部それぞれと接続され、引出部を介して周回部34に電気的に接続されている。第1外部電極60及び62は、例えばニッケルと錫のめっきが施された銀又は銅等の金属材料で形成されている。このように、第1外部電極60及び62が設けられる第1鍔部14は、下面側又は実装面側の鍔部である。
【0025】
磁性樹脂膜80は、第1鍔部14と第2鍔部16に挟まれ、コイル導体30の周回部34の少なくとも一部を覆うように設けられている。磁性樹脂膜80は、磁性粒子を含有する絶縁樹脂、例えばフェライトを含有するエポキシ樹脂で形成されている。
【0026】
導電性樹脂部50は、磁性基体部10の表面のうち少なくとも1つの面、すなわち第1の面に少なくとも設けられている。第1の面は、ほぼ平面であるが、少しの湾曲や窪みがあってもよい。例えば導電性樹脂部50は第2鍔部16の外側の面21に設けられている。第2鍔部16の外側の面21は磁性基体部10の表面であることから、導電性樹脂部50は磁性基体部10の表面の外側に設けられている。更に、導電性樹脂部50は、第2鍔部16の面21と繋がる面22に延在している。このように、導電性樹脂部50は磁性基体部10の表面のうちの少なくとも第1の面に設けられている。導電性樹脂部50は、磁性基体部10の第1の面を覆っていてもよい。導電性樹脂部50は、磁性基体部10の第1の面において、第1の面と同じ面積であってもよいし、第1の面より面積は大きくてもよいし、第1の面の全体を覆っていてもよい。
【0027】
図2は、導電性樹脂部の一部を拡大した断面図である。
図2を参照して、導電性樹脂部50は、絶縁性の樹脂52と、樹脂52の中に分散した複数の金属粒子54と、を有する。導電性樹脂部50は樹脂52により複数の金属粒子54を結合し、複数の金属粒子54は部分的に接触している。樹脂52は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂のいずれの場合でもよく、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、又はポリウレタン樹脂を用いることができる。金属粒子54は、例えばアルミニウム、銅、又は銀等の非磁性金属粒子でもよいし、例えばニッケル又は鉄等の磁性金属粒子でもよい。複数の金属粒子54には異なる種類の金属粒子が含まれていてもよいし、異なる直径の金属粒子が含まれていてもよい。金属粒子54の大きさは、例えば平均粒径で0.1μm~10μmである。平均粒径は、例えばレーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径である。導電性樹脂部50において、金属粒子54の体積割合は40vol%~50vol%であり、残りは樹脂52と例えば抵抗調整及び/又は粘度調整のためのセラミック粒子等の無機フィラーとを含んでいてもよい。更に、導電性樹脂部50は、複数の金属粒子54が樹脂52を介して結合している部分で抵抗を高くし、複数の金属粒子54が接触している部分で導通を得ている。この導電性樹脂部50の比抵抗は、例えば1×10
-6Ω・m~1×10
-4Ω・mである。
【0028】
図1(a)から
図1(c)を参照して、第2外部電極70は導電性樹脂部50に電気的に接続されている。第2外部電極70は、例えば導電性樹脂部50と同じ材料で形成され、樹脂52と樹脂52中に分散した複数の金属粒子54とを有する。第2外部電極70の下面と第1外部電極60及び62の下面とは例えば同一面を構成している。第2外部電極70は、第1外部電極60及び62に対して電気的に絶縁されている。第2外部電極70は、1つ又は2つ等の複数であってもよく、いずれの場合でも導電性樹脂部50と電気的に接続され、第1外部電極60及び62とは絶縁されている。コイル部品100が回路基板に実装された場合に、第1外部電極60及び62は回路基板の信号電極に電気的に接続され、第2外部電極70は回路基板のグランド電極に電気的に接続される。
【0029】
[製造方法]
第1の実施形態に係るコイル部品の製造方法の一例を説明する。まず、磁性基体部10を形成する。磁性基体部10は、例えばフェライト粉末と樹脂を混合した顆粒を金型のキャビティ内に充填、プレス成形することでドラム型をした成形体を形成し、この成形体を熱処理して形成される。コイル導体30は、磁性基体部10の巻芯部12に被覆導線32を巻回して周回部34と、周回部34から引き出し被膜を剥離した引出部と、から形成される。磁性樹脂膜80は、周回部34を覆うように樹脂に磁性粒子を混ぜたペーストを塗布し、樹脂成分を硬化させることで形成される。導電性樹脂部50は、磁性基体部10の表面に樹脂に金属粒子を混ぜたペーストを塗布し、樹脂成分を硬化させることで形成される。第1外部電極60及び62は、印刷、めっき、又はスパッタリング等の薄膜プロセスで用いられる方法によって金属膜として形成され、ここにコイル導体30の引出部は接続される。第2外部電極70は、導電性樹脂部50と同様に形成され、導電性樹脂部50と接続される。
【0030】
第1の実施形態によれば、コイル導体30が設けられた磁性基体部10の表面に、複数の金属粒子54と樹脂52とを含む導電性樹脂部50が設けられている。コイル導体30は第1外部電極60及び62に電気的に接続され、導電性樹脂部50は第2外部電極70に電気的に接続されている。磁性基体部10の表面に金属粒子54を含む導電性樹脂部50が設けられることで、コイル導体30から発生した電界が第2外部電極70とグランドが接続された状態の導電性樹脂部50を通過する際に減衰されるため、コイル部品100の周囲に生じる電界強度を低く抑えることができる。また、コイル部品100で生じた磁束は導電性樹脂部50を通過することになるが、導電性樹脂部50が金属粒子54と樹脂52の混合物で構成され、また金属粒子54が分散した状態で導電性を持ち、所定の抵抗となるようにされていることで、金属粒子54各々で渦電流の発生は収まり、導電性樹脂部50として生じる渦電流の大きさを低く抑えることができる。これによって、Q値の低下を抑制することができる。第1の実施形態によれば、このようにして得られるコイル部品は、電界の漏れを低く抑えつつ、損失の悪化を抑制することができる。
【0031】
導電性樹脂部50に含まれる金属粒子54は非磁性金属粒子又は磁性金属粒子であってもよい。また、金属粒子54が非磁性金属粒子と磁性金属粒子の両方を含んでいてもよい。
【0032】
金属粒子54は、非磁性金属粒子である場合、銀又は銅を含む粒子であってもよい。金属粒子54が非磁性金属粒子である場合、金属粒子54で発生する渦電流が小さくなり、Q値の低下をより抑制することができる。金属粒子54は、銀粒子又は銅粒子であってもよいし、銀又は銅の合金粒子であってもよい。金属粒子54は、抵抗率の小さい金属材料で、粒径は小さいものが好ましい。これにより、金属粒子54で発生する渦電流を小さくできる。例えば、金属粒子54は、金属材料の抵抗率として3.0×10
-8Ω・m以下が好ましく、2.0×10
-8Ω・m以下がより好ましい。金属粒子54の粒径(最長部分の寸法)としては、10μm以下の場合が好ましく、8μm以下の場合がより好ましく、6μm以下の場合が更に好ましい。また、金属粒子54は、球形状の場合だけでなく、その他の形状を有していてもよい。
図3は、導電性樹脂部の他の例の一部を拡大した断面図である。
図3を参照して、導電性樹脂部50は、鱗片状又は針状等の楕円形状又は長方形状のような長さを有する形状の金属粒子54を含んでいてもよい。例えば、金属粒子54が鱗片状又は針状の場合は、金属粒子54各々の体積が小さいものであればよい。これにより、導電性樹脂部50は金属粒子54の大きさと金属粒子54の樹脂52中の分散とにより所望の抵抗を得ることができ、またQ値の低下をより抑制することができる。また、非磁性金属粒子とすることで、金属粒子54が磁束を発生させることなく、渦電流の発生原因とならない。
【0033】
金属粒子54は、磁性金属粒子である場合、鉄又はニッケルを含む粒子であってもよい。金属粒子54が磁性金属粒子である場合、電界の漏れを抑制する効果に加え、コイル部品100からの磁束の漏れを抑える磁気シールドの効果も得られる。この場合、導電性樹脂部50は磁束が漏れる方向に配置される場合が好ましい。例えば、導電性樹脂部50は、磁性基体部10の厚みが薄い部分に設けられることが好ましく、磁性基体部10がドラムコアである場合は第1鍔部14及び第2鍔部16の側面に設けられることが好ましい。金属粒子54は、鉄粒子又はニッケル粒子であってもよいし、鉄又はニッケルの合金粒子であってもよい。金属粒子54は、粒径は小さい場合が好ましい。これにより、金属粒子54で発生する渦電流を小さくできる。また、金属粒子54が鉄粒子である場合、自然発火を防ぐために粒径は1μm以上である場合が好ましい。金属粒子54がニッケル粒子である場合は、粒径を1μm以下にすることができる。
【0034】
導電性樹脂部50は磁性基体部10の第1の面(例えば第2鍔部16の外側の面21)に設けられ、第1の面を覆っていてもよい。これにより、導電性樹脂部50で覆われた磁性基体部10の第1の面に交差する方向における電界の漏れを低く抑えることができる。また、導電性樹脂部50は、磁性基体部10の第1の面に膜状に薄く設けられてもよい。これにより、導電性樹脂部50で生じる渦電流は低く抑えられる。よって、導電性樹脂部50は、面積を大きく、厚みの薄い膜とすることが好ましい。例えば、第1の実施形態のコイル部品では、面21はコイル部品の上面となる。また、磁性基体部10の第1の面に接着層または絶縁層が設けられ、導電性樹脂層50は接着層または絶縁層の一部を介して磁性基体部10の外側に設けられてもよい。接着層または絶縁層を存在させることで、導電性樹脂層50と磁性基体部10との間の絶縁をより高めることができる。
【0035】
導電性樹脂部50は、発生する渦電流を小さく抑えるために、金属粒子54の80%以上は樹脂52を介して結合している場合が好ましく、90%以上は樹脂52を介して結合している場合がより好ましく、95%以上は樹脂52を介して結合している場合が好ましい。
【0036】
導電性樹脂部50において、電界の漏れを低く抑えるために、金属粒子54の体積割合は30vol%以上が好ましく、35vol%以上がより好ましく、40vol%以上が更に好ましい。一方、発生する渦電流を低く抑えるために、金属粒子54の体積割合は60vol%以下が好ましく、55vol%以下がより好ましく、50vol%以下が更に好ましい。
【0037】
[第2の実施形態]
図4は、本願発明の第2の実施形態に係るコイル部品の断面図である。
図4を参照して、コイル部品200では、導電性樹脂部50aは、磁性基体部10の第1の面から第2の面及び第3の面に延在している。例えば、導電性樹脂部50aは、第2鍔部16の面21の外側に設けられるとともに面21と繋がる第2鍔部の外側の面23及び24の外側に設けられている。また、導電性樹脂部50aは、第1鍔部14の外側の面26及び27にまで延在している。導電性樹脂部50aは、面21、23、24、26、及び27各々の全体を覆っていてもよい。その他の構成は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0038】
第2の実施形態によれば、導電性樹脂部50aは磁性基体部10の第1の面(例えば第2鍔部16の外側の面21)から第2の面(例えば第2鍔部16の外側の面23)及び第3の面(例えば第2鍔部16の外側の面24)の2つの面に延在している。面23及び面24は、面21と異なる面を形成している。これにより、3つのそれぞれの面において、電界の漏れを低く抑えることができる。例えば、第2の実施形態のコイル部品では、面21はコイル部品の上面、面23、面24、面26、及び面27はコイル部品の側面となる。
【0039】
[第3の実施形態]
図5(a)は、本願発明の第3の実施形態に係るコイル部品の断面図、
図5(b)は、
図5(a)のA方向から見た場合の平面図である。
図5(a)及び
図5(b)を参照して、コイル部品300では、導電性樹脂部50bは、磁性基体部10の第1の面から第1外部電極60及び62が設けられた面に延在している。例えば、導電性樹脂部50bは、第2鍔部16の面21の外側に設けられるとともに、面21と繋がる第2鍔部16の外側の面25の外側に設けられ、第1鍔部14の外側の面28を経由して第1鍔部14の面20に延びている。導電性樹脂部50bは、面21、面25、及び面28の全体を覆うとともに面20の一部を覆っていてもよい。その他の構成は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。第3の実施形態においても、磁性基体部10の複数の面に交差する方向における電界の漏れを低く抑えることができる。
【0040】
第1の実施形態から第3の実施形態では、磁性基体部10の表面にコイル導体30が巻回されたコイル部品を例に示したが、磁性基体部10にコイル導体30が内蔵されたコイル部品等、巻線、積層、薄膜等のいずれのコイル部品であってもよい。
【0041】
[第4の実施形態]
図6(a)及び
図6(b)は、本願発明の第4の実施形態に係る電子機器の断面図である。
図6(a)及び
図6(b)を参照して、電子機器400は、回路基板90と、回路基板90に実装されたコイル部品100と、を備える。コイル部品100は、第1外部電極60及び62が半田98によって回路基板90の信号電極92及び94に電気的に接続され、第2外部電極70が半田98によって回路基板90のグランド電極96に電気的に接続されることで、回路基板90に実装されている。これにより、電界の漏れが低く抑えられ且つQ値の低下が抑制されたコイル部品100を備えた電子機器400が得られる。
【0042】
第4の実施形態では、第1の実施形態に係るコイル部品100が回路基板90に実装された場合を例に示したが、第2の実施形態に係るコイル部品200又は第3の実施形態に係るコイル部品300が回路基板90に実装された場合でもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本願発明を実施例及び比較例によってより具体的に説明するが、本願発明はこれらの実施例に記載された態様に限定される訳ではない。
【0044】
[実施例1]
図1(a)から
図1(c)に示した第1の実施形態のコイル部品を実施例1のコイル部品として作製した。コイル部品の外形寸法は、長さ寸法を6.0mm、幅寸法を6.0mm、厚さ寸法を4.5mmとした。磁性基体部10として、フェライト粉末と樹脂を混合、プレス成形、熱処理により焼結したドラムコアを形成した。コイル導体30は、銅からなる芯線の周面がポリアミドイミドからなる絶縁被膜で覆われた被覆導線を用いて形成した。導電性樹脂部50は、エポキシ樹脂に直径が1μmの銀粒子を混ぜたペーストを用い、厚さが0.5mmとなるように形成した。導電性樹脂部50において金属粒子54の体積割合は50vol%となるようにした。ペーストの比抵抗は2.0×10
-6Ω・mとなるように調製した。磁性樹脂膜80はフェライトを含有するエポキシ樹脂で形成した。インダクタンス値は22μHになるようにした。
【0045】
[実施例2]
導電性樹脂部50をエポキシ樹脂に直径が1μmのニッケル粒子を混ぜたペーストを用いて形成し、導電性樹脂部50において金属粒子54の体積割合が45vol%となるようにした。その他の構成は実施例1と同じにした。
【0046】
[比較例1]
導電性樹脂部50及び第2外部電極70を設けない点以外は実施例1の構成と同じにした。
【0047】
[比較例2]
図7は、比較例2に係るコイル部品500の断面図である。
図7を参照して、比較例2のコイル部品500では、導電性樹脂部50の代わりに厚みが0.5mmの銀板である金属プレート84を用いた。インダクタンス値は実施例1と同じく22μHになるようにした。その他の構成は実施例1と同じにした。
【0048】
[比較例3]
金属プレート84に厚みが0.5mmのアルミニウム板を用いた点以外は比較例2の構成と同じにした。
【0049】
[比較例4]
金属プレート84に厚みが0.5mmのニッケル板を用いた点以外は比較例2の構成と同じにした。
【0050】
実施例1、実施例2、比較例1から比較例4の差異点について表1にまとめた。
【表1】
【0051】
[電界強度の評価]
実施例1及び比較例1に対して電界強度を評価する実験を行った。
図8は、実験での構成を示す平面図である。
図8を参照して、実施例1及び比較例1のコイル部品100を評価用基板510の上面に実装し、コイル部品100の周囲の電界強度を測定した。評価用基板510には、長さ20mm、幅20mm、厚さ1.6mmのFR4基板を用いた。評価用基板510の上面から下面にかけて幅3mm、厚さ35μmの銅箔512を設け、実施例1における導電性樹脂部50は第2外部電極70を介して銅箔512に電気的に接続させることで測定機器のアースに接続した。また、比較例1は、第2外部電極を持たない為、評価用基板510に対して銅箔512への接続は行っていない。実施例1及び比較例1のコイル部品100の第1外部電極60及び62を信号線514に電気的に接続させ、コイル導体30にスイッチング周波数を200kHzとした1.5Ap-pの三角波の電流を流し、1MHzの測定周波数でコイル部品の上面から0.5mm上での電界強度を測定した。
【0052】
図9(a)は、比較例1に係るコイル部品の電界強度の測定結果、
図9(b)は、実施例1に係るコイル部品の電界強度の測定結果である。
図9(a)と
図9(b)を比較すると、磁性基体部10の表面に導電性樹脂部50を設けた実施例1は、導電性樹脂部50を設けていない比較例1に対して電界強度が低く抑えられた結果となった。比較例1に対し、実施例1で電界の漏れが低く抑えられたのは以下の理由によるものと考えられる。実施例1では、コイル導体30から発生した電界は磁性基体部10の表面に設けられた導電性樹脂部50を通過する。導電性樹脂部50は樹脂52中に金属粒子54が設けられているため、電界は導電性樹脂部50を通過することで減衰する。また、電界による電流は導電性樹脂部50から第2外部電極70に流れるが、第2外部電極70はグランドに接続されている。このため、実施例1では、コイル導体30から発生した電界は導電性樹脂部50によって遮蔽され、その結果、コイル部品の周囲の電界強度が低く抑えられたと考えられる。
図9の結果から、磁性基体部10の表面に金属粒子54と樹脂52を含む導電性樹脂部50を設け、導電性樹脂部50を第2外部電極70に電気的に接続することで、電界の漏れを低く抑えられることが確認された。
【0053】
[Q特性の評価]
実施例1、実施例2、及び比較例1から比較例4に対してQ特性の評価を行った。Q特性の評価は、キーサイト・テクノロジー社製のRFインピーダンス/マテリアル・アナライザE4991Aを用いてテスト・フィクスチャ上に設置し、Q値を測定することで行った。実施例1及び実施例2における導電性樹脂部50及び比較例2から比較例4における金属プレート84を、第2外部電極70を介してテスト・フィクスチャのグランドに電気的に接続させることで測定機器のアースに接続した。
【0054】
図10は、実施例1、実施例2、及び比較例1から比較例4に係るコイル部品のQ値の測定結果である。
図10を参照して、導電性樹脂部50を用いた実施例1及び実施例2は、導電性樹脂部50及び金属プレート84のいずれも用いていない比較例1とほぼ同じQ値が得られている。これに対し、金属プレート84を用いた比較例2、比較例3、及び比較例4では、比較例1より大きくQ値が低下する結果となった。例えば、4MHzの周波数でのQ値を比較した場合、比較例1を基準とすると、比較例2、比較例3、比較例4はそれぞれ-10.0、-11.7、-15.9と10%を超えているのに対し、実施例1、実施例2はそれぞれ-1.6、-2.3と5%以内の範囲に収まる結果となっている。
【0055】
実施例1及び実施例2では比較例2から比較例4に比べてQ値が高くなったのは以下の理由によるものと考えられる。コイル部品で生じる磁束は、比較例2から比較例4では金属プレート84を通過する。金属プレート84を通過する磁束が変化すると金属プレート84に渦電流が発生する。金属プレート84は金属材料のみで形成され、金属プレート84全体で電流が流れ易く、大きな渦電流が発生する。金属プレート84が磁性材料で形成される場合は、金属プレート84で生じた渦電流により磁束が発生し更なる渦電流が発生することがある。一方、実施例1及び実施例2では、コイル部品で生じる磁束は導電性樹脂部50を通過する。導電性樹脂部50は、金属粒子54と樹脂52の混合物で構成され、金属粒子54が分散した状態で樹脂52内に設けられていることで導電性を持ち且つ所定の抵抗となるようにされている。このため、金属粒子54各々で渦電流の発生は収まり、導電性樹脂部50として生じる渦電流の大きさが低く抑えられる。このため、実施例1及び実施例2ではQ値の低下が抑えられたと考えられる。
図10の結果から、磁性基体部10の表面に金属粒子54と樹脂52を含む導電性樹脂部50を設けることで、Q値の低下が抑えられ、損失の悪化を抑制できることが確認された。
【0056】
図10の結果から、導電性樹脂部50に含まれる金属粒子54は、実施例1のように非磁性粒子であっても、実施例2のように磁性粒子であっても、Q値の低下を同程度に抑えられたが、非磁性粒子を用いた実施例1は磁性粒子を用いた実施例2に比べてQ値が少し高くなることが確認された。実施例1と実施例2ではQ値の差は小さいが、比較例2から比較例4では金属プレート84が非磁性粒子である場合(比較例2、3)と磁性粒子である場合(比較例4)とでのQ値の差が大きいことから、金属粒子54に非磁性粒子を用いた場合は磁性粒子を用いた場合に比べてQ値が高くなることが分かる。これは、上述したような渦電流による磁束が発生して更なる渦電流の発生が抑えられるためと考えられる。
【0057】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 磁性基体部
12 巻芯部
14 第1鍔部
16 第2鍔部
20~28 面
30 コイル導体
32 被覆導線
34 周回部
50、50a、50b 導電性樹脂部
52 樹脂
54 金属粒子
60、62 第1外部電極
70 第2外部電極
80 磁性樹脂膜
84 金属プレート
90 回路基板
92、94 信号電極
96 グランド電極
98 半田
100、200、300 コイル部品
400 電子機器
500 コイル部品
510 評価用基板
512 銅箔
514 信号線