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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/14 20060101AFI20240613BHJP
   G06F 3/06 20060101ALI20240613BHJP
   G06F 13/10 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G06F11/14 658
G06F3/06 304F
G06F3/06 301W
G06F13/10 330B
G06F13/10 340A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020056926
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157488
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】592007601
【氏名又は名称】株式会社コンテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 智史
(72)【発明者】
【氏名】野田 正樹
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特許第5077726(JP,B1)
【文献】特開2001-075830(JP,A)
【文献】特開平05-300228(JP,A)
【文献】特開2003-308179(JP,A)
【文献】特開2000-227868(JP,A)
【文献】特開2009-076154(JP,A)
【文献】特開2008-052318(JP,A)
【文献】特開2006-079160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/14
G06F 3/06
G06F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUと、BIOSを格納する基本メモリと、OSを含む現用データを格納する補助記憶装置と、を備える情報処理装置であって、
前記基本メモリは、前記CPUがリセットされた後で前記CPUによって最初に読み込まれるものであり、
前記BIOSは、記憶装置複製機能を有しており、
前記CPUは、
予備データを格納することが可能な外部記憶装置と接続又は通信可能であり、
前記OSを実行することなく、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記補助記憶装置に格納されている前記現用データを、前記外部記憶装置へ前記予備データとして複製可能であり、且つ前記外部記憶装置に格納されている前記予備データを、前記補助記憶装置へ前記現用データとして複製可能であり、
前記補助記憶装置に格納されている前記現用データを前記外部記憶装置へ前記予備データとして複製するか、又は前記外部記憶装置に格納されている前記予備データを前記補助記憶装置へ前記現用データとして複製するかについての選択情報を、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して受信可能に構成され、
前記現用データを前記予備データとして複製することが選択された場合には、前記現用データの複製元である前記補助記憶装置と、前記現用データの複製先である前記外部記憶装置と、前記外部記憶装置への前記現用データの保存形式と、を指定して前記現用データを複製し、
前記予備データを前記現用データとして複製することが選択された場合には、前記予備データの複製元である前記外部記憶装置と、前記予備データの複製先である前記補助記憶装置と、前記補助記憶装置への前記予備データの保存形式と、を指定して前記予備データを複製し、
前記選択情報と、前記現用データまたは前記予備データの複製元と、前記現用データまたは前記予備データの複製先と、前記現用データまたは前記予備データの保存形式と、の指定は、前記情報処理装置の起動時に選択可能であること
を特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記CPUは、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記補助記憶装置に格納されている前記現用データをデータ構造ごと複製した前記予備データとして前記外部記憶装置へと格納すること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記CPUは、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記補助記憶装置に格納されている前記現用データを、ひとまとまりのアーカイブデータとして複製した上で前記予備データとして前記外部記憶装置へと格納すること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記外部記憶装置は、複数の前記アーカイブデータを格納可能であり、
前記CPUは、前記外部記憶装置に格納された複数の前記アーカイブデータから選択された1つのアーカイブデータを、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記補助記憶装置へ前記現用データとして複製可能であること
を特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記CPUは、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記補助記憶装置の前記現用データを基とする前記アーカイブデータを、データ圧縮が施された圧縮データとして前記外部記憶装置へ格納すること
を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記CPUは、前記外部記憶装置に圧縮データとして格納されている前記アーカイブデータを、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記外部記憶装置から呼び出して解凍した上で、前記補助記憶装置へ前記現用データとして複製可能であること
を特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CPUと、BIOSを格納する基本メモリと、現用データを格納する補助記憶装置と、を備える情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、PCや産業用機器等の情報処理装置において、補助記憶装置内に保存されたデータの一部を、情報処理装置に接続された外部記憶装置等へバックアップする場合には、当該補助記憶装置内に格納されたOSを起動し、当該OSの提供するデータ転送機能を用いて、補助記憶装置内に保存されたデータの一部を外部記憶装置へ転送して保存することがあった。
【0003】
しかしながら、上記OS自身を含む上記データの全体を、上記OSを用いてバックアップする場合には、上記OS自身の動作によってそのデータの内容(例えばOSの動作履歴記録や仮想記憶のページファイルの内容)が動的に変わるため、補助記憶装置内のデータを正しくバックアップできないという問題がある。また、上記OSが起動されていない状態ではデータ転送機能を利用できないため、不具合等によって上記OSが起動できない状況ではデータのバックアップができないという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1に示すバックアップシステムにおいては、バックアップ対象の情報処理装置に搭載されているOSとは別に、外部記憶装置又はネットワークから情報処理装置を立ち上げるための起動用OSを作成し、作成した当該起動用OSによって上記データのバックアップがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-358245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のバックアップシステムでは、バックアップのたびに、情報処理装置を立ち上げるための起動用OSを別途作成し、それを用いて情報処理装置を立ち上げるという手順を経由する必要があるため、上記データのバックアップが煩雑であるという問題があった。特に、複数の情報処理装置について上記データのバックアップを行う場合には、それぞれの情報処理装置に対して起動用OSを作成する必要があるため、バックアップ作業が非常に煩雑となる。
【0007】
なお、データのバックアップを行う方法としてはこの他に、情報処理装置とは独立した機器であるデュプリケータを用いる方法がある。デュプリケータは補助記憶装置と直接に接続することで別の補助記憶装置へとデータを複製する機器であり、上記データのバックアップをこのデュプリケータを用いて行うことで、情報処理装置を立ち上げるための起動用OSの作成が不要となる。しかしながら、デュプリケータは補助記憶装置と直接に接続する必要があるため、上記データのバックアップに際して、情報処理装置から補助記憶装置(ハードディスク等のストレージ機器)を取り外す必要がある。また、バックアップの終了後には補助記憶装置を情報処理装置へ組み入れ直す必要がある。したがって、デュプリケータを用いる場合には、補助記憶装置の取り外し、組み入れの作業が必要となるため、やはり上記データのバックアップが煩雑となる。
【0008】
そこで、本発明は、補助記憶装置内のデータを正確且つ容易にバックアップ及びリストア可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る情報処理装置は、CPUと、BIOSを格納する基本メモリと、現用データを格納する補助記憶装置と、を備える情報処理装置であって、前記BIOSは、記憶装置複製機能を有しており、前記CPUは、予備データを格納することが可能な外部記憶装置と接続又は通信可能であり、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記補助記憶装置に格納されている前記現用データを、前記外部記憶装置へ前記予備データとして複製可能であり、且つ前記外部記憶装置に格納されている前記予備データを、前記補助記憶装置へ前記現用データとして複製可能であることを特徴とする。
【0010】
また好ましくは、前記CPUは、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記補助記憶装置に格納されている前記現用データをデータ構造ごと複製した前記予備データとして前記外部記憶装置へと格納するとよい。
【0011】
また好ましくは、前記CPUは、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記補助記憶装置に格納されている前記現用データを、ひとまとまりのアーカイブデータとして複製した上で前記予備データとして前記外部記憶装置へと格納するとよい。
【0012】
また好ましくは、前記外部記憶装置は、複数の前記アーカイブデータを格納可能であり、前記CPUは、前記外部記憶装置に格納された複数の前記アーカイブデータから選択された1つのアーカイブデータを、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記補助記憶装置へ前記現用データとして複製可能であるとよい。
【0013】
また好ましくは、前記CPUは、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記補助記憶装置の前記現用データを基とする前記アーカイブデータを、データ圧縮が施された圧縮データとして前記外部記憶装置へ格納するとよい。
【0014】
また好ましくは、前記CPUは、前記外部記憶装置に前記圧縮データとして格納されている前記アーカイブデータを、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して、前記外部記憶装置から呼び出して解凍した上で、前記補助記憶装置へ前記現用データとして複製可能であるとよい。
【0015】
また好ましくは、前記CPUは、前記補助記憶装置に格納されている前記現用データを前記外部記憶装置へ前記予備データとして複製するか、又は前記外部記憶装置に格納されている前記予備データを前記補助記憶装置へ前記現用データとして複製するかについての選択情報を、前記BIOSの前記記憶装置複製機能を介して受信可能に構成され、前記現用データを前記予備データとして複製することが選択された場合には、前記現用データの複製元である前記補助記憶装置と、前記現用データの複製先である前記外部記憶装置と、前記外部記憶装置への前記現用データの保存形式と、を指定して前記現用データを前複製し、前記予備データを前記現用データとして複製することが選択された場合には、前記予備データの複製元である前記外部記憶装置と、前記予備データの複製先である前記補助記憶装置と、前記補助記憶装置への前記予備データの保存形式と、を指定して前記予備データを複製するとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る情報処理装置によれば、基本メモリに格納されているBIOSが有する記憶装置複製機能によって、補助記憶装置に格納されている現用データを外部記憶装置に書き込み(複製し)、又は、外部記憶装置に格納されている予備データを外部記憶装置から呼び出して補助記憶装置に書き込む(複製する)ことができる。これらの作業はOSを起動することなく行えるため、補助記憶装置内のデータをバックアップ及びリストアするに際し、補助記憶装置内のデータが動的に変わる恐れがなく、また、起動用OSを別途作成する必要も情報処理装置から補助記憶装置を取り外す必要もない。そのため、補助記憶装置内のデータを正確かつ容易にバックアップ及びリストアできる。特に、補助記憶装置に格納されているOSの動作が不安定な場合や正常に動作しない場合に、その原因を解析することが、情報処理装置の用途、使用状況、使用環境によっては重要な場合がある。このような場合でも、OSが起動する前に、補助記憶装置内のデータを正確かつ容易にバックアップすることができるため有効である。
【0017】
また、補助記憶装置内のデータのバックアップの方法は、情報処理装置の用途、使用状況、使用環境によって、好ましい方法が異なる。本発明は、バックアップ先、リストア元等の外部記憶装置(USBメモリやサーバコンピュータのストレージ機器)や、補助記憶装置内のデータのコピー形式(外部記憶装置へのデータの保存形式)を、情報処理装置の用途、使用状況、使用環境に応じて選択できるので、ユーザにとって最適なバックアップ及びリストアが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る産業用コンピュータ及び当該産業用コンピュータと接続又は通信する外部記憶装置の構成を示すブロック図。
図2】同実施形態においてストレージ機器内に格納されている現用データ等を外部記憶装置にコピー(バックアップ)する場合のフローチャート。
図3】本発明の別実施の形態に係る産業用コンピュータ及び当該産業用コンピュータと接続又は通信する外部記憶装置の構成を示すブロック図。
図4】同実施形態において外部記憶装置内に格納されている予備データ等をストレージ機器にリストアする場合のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明における実施の形態の一例を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る情報処理装置の一例である産業用コンピュータ10は、CPU11と、BIOSメモリ12(「基本メモリ」の一例)と、ストレージ機器13(「補助記憶装置」の一例)と、USBコネクタ14と、LANポート15と、メインメモリ16(主記憶装置)と、を主に備える。CPU11、BIOSメモリ12、ストレージ機器13、USBコネクタ14、LANポート15、及びメインメモリ16は、CPU基板17に設けられ、SPI等のバス18を介して接続されている。
【0020】
CPU11は、プログラム制御によって種々の演算処理を実行し、産業用コンピュータ10全体を制御する。
【0021】
BIOSメモリ12は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である(例えば、フラッシュROM)。BIOSメモリ12には、産業用コンピュータ10の起動時に実行されるBIOS19等の基本プログラム及び当該基本プログラムが利用するデータが格納されている。
【0022】
本実施形態においては、このBIOS19は後述のディスクコピー機能(「記憶装置複製機能」の一例)を備えており、OS21を起動することなくストレージ機器13のユーザデータ22をストレージ機器13とは別のストレージ機器へコピーすることができる。
【0023】
ストレージ機器13は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる記憶装置である(例えば、ハードディスクやソリッドステートドライブ)。ストレージ機器13には、産業用コンピュータ10を管理するためのOS21等のプログラムといったシステムデータやユーザが作成したユーザデータ22等が格納されている。以下においては、注目している産業用コンピュータ10のストレージ機器13に格納されており、産業用コンピュータ10の稼働時に利用されるOS21等のシステムデータやユーザデータ22を、現用データ20A(現在使用されているデータ)とも称する。
【0024】
USBコネクタ14は、外部のUSBメモリ31(「外部記憶装置」の一例)等が着脱自在に接続されるものである。LANポート15は、外部の複数の産業用コンピュータ32A、32B、サーバコンピュータ33、製造元のコンピュータ34等の外部記憶装置と産業用コンピュータ10とをLAN50を介して接続するためのものである。すなわち、産業用コンピュータ10は、LAN50を介して、複数の産業用コンピュータ32A、32Bやサーバコンピュータ33等に接続されている。なお、LAN50は、有線、無線を問わない。
【0025】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態としての産業用コンピュータ10では、ストレージ機器13内に格納されているOS21やユーザデータ22含む現用データ20A等が、産業用コンピュータ10とは別のコンピュータ、例えば、複数の産業用コンピュータ32A、32B、サーバコンピュータ33、製造元のコンピュータ34(正確には、これらのコンピュータが備えるストレージ機器)、又はUSBメモリ31等の外部記憶装置に対してコピー(バックアップ)される。このようにして外部記憶装置にバックアップされたOS21やユーザデータ22含む現用データ20Aを、以下においては予備データ20Bとも称する。
【0026】
図2に示すフローチャートに沿って、本実施形態においてストレージ機器13内に格納されている現用データ20Aを外部記憶装置にコピー(バックアップ)する場合の手順を説明する。
【0027】
まず、ユーザが産業用コンピュータ10の電源を投入することで、産業用コンピュータ10が起動される(S1)。産業用コンピュータ10が起動中、ユーザが特定の操作を行う(例えば「Delete」等の特定のキーを特定のタイミングで押す)ことで、BIOSメニューが立ち上がる(S2)。BIOSメニューが立ち上がると、ユーザはBIOSメニューからディスクコピーの項目を選択する(S3)。すなわち、ユーザは、ストレージ機器13に格納されている現用データ20Aを外部記憶装置へ予備データ20Bとして複製することを選択する。ここで、BIOSメニューのディスクコピーの項目とは、BIOS19のディスクコピー機能を利用するための項目である。このディスクコピー機能は、BIOS19の提供するハードウェア制御機能を用いて、ストレージ機器13内に格納されている現用データ20A等を、外部の外部記憶装置にコピー(バックアップ)することができる。また、ディスクコピー機能は、外部の外部記憶装置からストレージ機器13内に書き込むべき予備データ20B等をストレージ機器13内に書き込む(リストアする)こともできる。ディスクコピーの項目においては、ユーザがコピー(バックアップ)を行うのか、リストアを行うのかを選択できるようになっている。CPU11は、ディスクコピー機能を介してその選択に関する情報(選択情報)を受信する。ここで、選択情報とは、ストレージ機器13に格納されている現用データ20Aを外部記憶装置へ予備データ20Bとして複製(コピー)するか、又は外部記憶装置に格納されている予備データ20Bをストレージ機器13へ現用データ20Aとして複製(リストア)するかをユーザが選択した結果に関する情報である。
【0028】
ユーザは、ディスクコピーの項目においてコピーとリストアのうちコピーを行うことを選択した場合、続いてコピー形式(現用データ20Aの保存形式)を選択する(S4)。ここで、コピー形式とは、ストレージ機器13内に格納されている現用データ20Aをコピー先の外部記憶装置にコピーする場合に、コピー先の外部記憶装置へ現用データ20Aをどのようにコピーして保存するかの形式(外部記憶装置への現用データ20Aの保存形式、或いは予備データ20Bとしての保存形式)をいう。本実施形態において具体的には、以下の3つの形式が選択できる。
【0029】
1.「クローニング形式」:ストレージ機器13内に格納されている現用データ20Aをメタデータやデータ配置等も含めデータ構造ごとそのままの状態で予備データ20Bとしてコピー先の外部記憶装置へコピーする形式。
2.「アーカイブ形式」:ストレージ機器13内に格納されている現用データ20A全体を1つのデータとしてまとめて、ひとまとまりのアーカイブデータ(例えば、第1から第3アーカイブデータ23A、23B、23C)としたものを予備データ20Bとしてコピー先の外部記憶装置へコピーする形式。
3.「圧縮形式」:ストレージ機器13内に格納されている現用データ20Aをひとまとまりのアーカイブデータ(例えば、第1から第3アーカイブデータ23A、23B、23C)としたものをさら圧縮して圧縮データとしたものを予備データ20Bとしてコピー先の外部記憶装置へコピーする形式。
【0030】
ユーザは、コピー形式を選択すると、続いてコピー元(複製元)を選択する(S5)。ここで、コピー元とは、産業用コンピュータ10から外部記憶装置へ現用データ20Aをコピー(バックアップ)する場合には、産業用コンピュータ10のストレージ機器13をいい、外部記憶装置から産業用コンピュータ10へ予備データ20Bをコピー(リストア)する場合には、外部記憶装置をいう。すなわち、コピー元とは、複製されるOS21やユーザデータ22等が格納されている媒体をいう。
【0031】
ユーザは、コピー元を選択すると、続いてコピー先(複製先)を選択する(S6)。ここで、コピー先とは、ストレージ機器13内に格納されている現用データ20A等をコピー(バックアップ)する媒体のことである。ユーザが、LAN50を介して産業用コンピュータ10と接続されている複数の産業用コンピュータ32A、32B、サーバコンピュータ33、製造元のコンピュータ34等に現用データ20A等をコピー(バックアップ)することを望む場合には、コピー先となる産業用コンピュータ32A、32B、サーバコンピュータ33、製造元のコンピュータ34等のネットワーク上の位置を特定する情報(例えばIPアドレス)を入力する。一方で、ユーザが、LAN50を介さずにローカル機器(USBメモリ31等)に現用データ20Aをコピー(バックアップ)することを望む場合には、USBコネクタ14に接続されているローカル機器(USBメモリ31等)をコピー先として選択する。
【0032】
ユーザは、コピー先を選択すると、続いてディスクコピーを実行する(S7)。これにより、ストレージ機器13内に格納されている現用データ20A等が、選択されたコピー先にコピー(バックアップ)される。
【0033】
このように、本実施形態の産業用コンピュータ10においては、ストレージ機器13内に格納されている現用データ20A等のコピー(バックアップ)がBIOS19上で行われる。すなわち、ストレージ機器13内に格納されているOS21等のプログラムを実行させることなく、ストレージ機器13内に格納されていた状態のままで、現用データ20A等を産業用コンピュータ10以外の外部記憶装置にコピー(バックアップ)できる。
【0034】
特に、LAN50を介して産業用コンピュータ10と接続されている産業用コンピュータ32A、32Bがコピー先となっている場合には、コピー元である産業用コンピュータ10の現用データ20A(OS21やユーザデータ22等)を、メタデータやデータ配置等も含めデータ構造ごとそのままコピー先の産業用コンピュータ32A、32Bの外部記憶装置へコピーする(上記のクローニング形式を使用する)ことで、コピー元の産業用コンピュータ10の環境を、OS21が起動可能な状態で産業用コンピュータ32A、32Bの外部記憶装置へコピーすることができる。
【0035】
また、例えば、ユーザが使用する産業用コンピュータ10にて現用データ20Aの不具合が発生した場合に、産業用コンピュータ10の製造元に当該不具合の診断及び修正を依頼する際には、産業用コンピュータ10の現用データ20Aを、不具合が生じた状態のまま、LAN50を介して上記製造元のコンピュータ34へコピーすることができるため、より的確に現用データ20Aの不具合を診断でき、確実に現用データ20Aの不具合を修正できる。さらに、正常な(不具合のない)状態の現用データ20Aを別の外部記憶装置へ予備データ20Bとして保存しておくと、後に現用データ20Aに不具合が生じた場合には、後述のリストア作業によって現用データ20Aを正常な状態に戻すことが可能となる。
【0036】
また、上記のアーカイブ形式のコピーによってストレージ機器13内に格納されている現用データ20Aをひとまとまりのアーカイブデータ(例えば、第1から第3アーカイブデータ23A、23B、23C)として外部記憶装置(例えば、USBメモリ31やサーバコンピュータ33)に対してコピー(バックアップ)することで、複数の異なる予備データ20B(第1から第3アーカイブデータ23A、23B、23C)を同一の外部記憶装置にコピー(バックアップ)することができ、予備データ20Bの管理が容易となる。さらに、このようにすれば、後述のリストア作業により、複数の予備データ20B(第1から第3アーカイブデータ23A、23B、23C)のうち、必要な予備データ20B(例えば、第1アーカイブデータ23A)を1つ選択して、産業用コンピュータ10のストレージ機器13等にリストアして復元することで、産業用コンピュータ10の現用データ20Aの状態(環境)を、保存しておいた複数の環境の中から適切な任意の環境に戻すことができる。
【0037】
また、ストレージ機器13内に格納されている現用データ20Aをひとまとまりのアーカイブデータ(例えば、第1から第3アーカイブデータ23A、23B、23C)とし、さらに当該アーカイブデータを圧縮した圧縮データを外部記憶装置(例えば、USBメモリ31やサーバコンピュータ33)に対してコピー(バックアップ)する(上記の圧縮形式を使用する)ことで、外部記憶装置にコピー(バックアップ)される予備データ20B(第1から第3アーカイブデータ23A、23B、23C)のサイズを削減することができる。そのため、外部記憶装置におけるファイルの保管が容易になる。さらには、ストレージ機器13より小さいサイズの外部記憶装置に対して、現用データ20Aをコピー(バックアップ)することができる。
【0038】
次に、図3に示すように、本発明の第2の実施の形態としての産業用コンピュータ10では、ストレージ機器13内に格納されている現用データ20A等が、外部記憶装置に対して予備データ20B等として予めコピー(バックアップ)されている。そして、この第2の実施の形態においては、コピー(バックアップ)された予備データ20B等が、外部記憶装置から産業用コンピュータ10に、又は、外部記憶装置からさらに別の外部記憶装置(例えば、USBメモリ31から産業用コンピュータ32Cや製造元のコンピュータ34)にリストアされることもある。
【0039】
産業用コンピュータ10のストレージ機器13内に格納されている現用データ20A等を、外部記憶装置に対して予備データ20B等としてコピー(バックアップ)しておく手順は、第1の実施の形態と同様のため、説明を省略する。
【0040】
図4に示すフローチャートに沿って、本実施形態において外部記憶装置に格納されている予備データ20Bを、ストレージ機器13の現用データ20Aとして複製(リストア)する場合の手順を説明する。
【0041】
予めコピー(バックアップ)された予備データ20B等を、外部記憶装置から産業用コンピュータ10にリストアすることが必要な場合には、ユーザが産業用コンピュータ10の電源を投入することで、産業用コンピュータ10が起動される(S11)。産業用コンピュータ10が起動中、ユーザが特定の操作を行う(例えば、「Deleteキー」等の特定のキーを特定のタイミングで押す)ことで、BIOSメニューが立ち上がる(S12)。BIOSメニューが立ち上がると、ユーザはBIOSメニューからディスクコピーの項目を選択する(S13)。前述の通り、ディスクコピーの項目においては、ユーザがコピー(バックアップ)を行うのか、リストアを行うのかを選択できるようになっている。ユーザが、ディスクコピーの項目においてコピーとリストアのうちリストアを行うことを選択した場合、CPU11は、ディスクコピー機能を介してその選択に関する情報(選択情報)を受信する。
【0042】
ディスクコピーの項目においてリストアを行うことを選択したユーザは、続いて、リストア元(複製元)を選択する(S14)。ここで、リストア元とは、予めコピー(バックアップ)された予備データ20B等を格納している外部記憶装置であり、産業用コンピュータ10においては、産業用コンピュータ32A、32B、サーバコンピュータ33、製造元のコンピュータ34、又はUSBメモリ31である。
【0043】
ユーザは、リストア元を選択すると、続いて、リストア元となる予備データ20Bのデータ形式(ストレージ機器13への予備データ20Bの保存形式、現用データ20Aとしての保存形式)を選択する(S15)。すなわち、ユーザは、リストア元となる予備データ20Bが、データ構造も含めてコピー(クローニング)されたデータ(上記のクローニング形式によってコピーされたデータ)なのか、アーカイブデータ(上記のアーカイブ形式によってコピーされたデータ)なのか、圧縮データ(上記の圧縮形式によってコピーされたデータ)なのかを選択する。
【0044】
ユーザは、予備データ20Bのデータ形式を選択すると、続いてリストア先(複製先)を選択する(S16)。ここで、リストア先とは、コピー(バックアップ)された予備データ20B等を書き込む(リストアする)場所のことをいい、産業用コンピュータ10において予備データ20B等をリストアする場合には、ストレージ機器13である。
【0045】
ユーザは、リストア先を選択すると、続いてディスクコピーを実行する(S17)。これにより、外部記憶装置に格納されている予備データ20B等が、ストレージ機器13内にリストアされる。ここで、予備データ20Bがクローニング(上記のクローニング形式)によって作成されたものであれば、クローニング時の現用データ20Aの状態が再現される。
【0046】
このように、産業用コンピュータ10においては、外部記憶装置からストレージ機器13内への予備データ20B等のリストアがBIOS19上で行われる。すなわち、外部記憶装置からリストアされるOS21等のプログラムを実行させることなく、外部記憶装置に格納されていた状態のままで、予備データ20B等を産業用コンピュータ10のストレージ機器13内にリストアできる。
【0047】
また、図3に示すように、同一の外部記憶装置(例えば、USBメモリ31やサーバコンピュータ33)に複数の予備データ20B(第1から第3アーカイブデータ23A、23B、23C)がコピーされている場合には、ユーザはリストア先の現用データ20Aとして適切な予備データ20B(例えば、第1アーカイブデータ23A)を1つ選択して、産業用コンピュータ10のストレージ機器13等にリストアして復元することができる。ここで、アーカイブデータからの復元時には、アーカイブデータ作成時の現用データ20Aの状態がデータ構造も含めて再現されるようにアーカイブデータの展開が行われることが好ましい。また、リストア元の予備データ20Bが圧縮データである場合には、呼び出した圧縮データを解凍した上でストレージ機器13へ複製することによってリストアを行う。
【0048】
また、リストア先を、予備データ20B作成時のコピー元であった産業用コンピュータ10ではなく、リストア元とは別の外部記憶装置とすることも可能である。例えば、図3に示すように、USBメモリ31に格納された予備データ20B(第1から第3アーカイブデータ23A、23B、23Cのいずれか)を、製造元のコンピュータ34や別の産業用コンピュータ32Cへとリストアすることもできる。
【0049】
以上に説明した実施形態における産業用コンピュータ10によれば、BIOSメモリ12に格納されているBIOS19が有する記憶装置複製機能によって、ストレージ機器13に格納されている現用データ20Aを外部記憶装置に書き込み(複製し)、又は、外部記憶装置に格納されている予備データ20Bを外部記憶装置から呼び出してストレージ機器13に書き込む(複製する)ことができる。これらの作業はOS21を起動することなく行えるため、ストレージ機器13内の現用データ20A等をバックアップ及びリストアするに際し、ストレージ機器13内の現用データ20A等が動的に変わる恐れがなく、また、起動用OSを別途作成する必要も産業用コンピュータ10からストレージ機器13を取り外す必要もない。そのため、ストレージ機器13内の現用データ20Aを正確かつ容易にバックアップ及びリストアできる。
【0050】
なお、本明細書においては、情報処理装置のCPUがリセットされた後で最初に読み込む基本メモリに格納された命令及びそれに引き続いて実行される、ハードウェアの基本的な制御を担うソフトウェア群をBIOSと称している。従って、本明細書におけるBIOS19とは、いわゆるレガシーなシステムBIOSだけでなく、UEFI仕様に則ったインタフェース用のソフトウェア等、情報処理装置の起動初期に実行されるソフトウェア群の全般を指す。これには産業用コンピュータ10が備える各種構成要素を動作させるためのファームウェア等も含まれる。
【0051】
上記の実施形態においては、外部記憶装置の一例となるバックアップ用のローカル機器としてUSBメモリ31を用いているが、これに限定されるものではなく、OS21等のプログラムをはじめとするユーザデータ22等を記憶可能な媒体であれば、SDカード、USBハードディスク等であっても構わない。
【0052】
上記の実施形態においては、ストレージ機器13内に格納されている現用データ20Aを外部記憶装置にコピー(バックアップ)する場合、コピー形式の選択(S4)、コピー元の選択(S5)、コピー先の選択(S6)の順で現用データ20Aのコピー(バックアップ)を行っているが、この順番に限定されるものではなく、これらの選択は順不同であり、ディスクコピー実行時(S7)にコピー形式、コピー元、コピー先が決定済みとなっていればよい。また同様に、外部記憶装置内に格納されている予備データ20Bをストレージ機器13にコピー(リストア)する場合、リストア元の選択(S14)、データ形式の選択(S15)、リストア先の選択(S16)の順で予備データ20Bのコピー(リストア)を行っているが、この順番に限定されるものではなく、これらの選択は順不同であり、ディスクコピー実行時(S17)にリストア元、データ形式、リストア先が決定済みとなっていればよい。
【0053】
上記の実施形態においては、ユーザが産業用コンピュータ10におけるBIOSメニューからディスクコピーの項目を選択することによって、現用データ20Aのコピー(バックアップ)又は予備データ20Bのコピー(リストア)が実行されるが、ディスクコピー機能(記憶装置複製機能)を利用するための形態はこれに限定されるものではない。例えば、ディスクコピー機能(記憶装置複製機能)を備えた複製プログラムがサーバコンピュータ33内に格納されており、この複製プログラムを産業用コンピュータ10がネットワークブート(PXEブート、HTTPブート等)の機能を介して呼び出して実行することによって、現用データ20Aのコピー(バックアップ)又は予備データ20Bのコピー(リストア)が行われる形態であっても構わない。ここで、サーバコンピュータ33内に格納される上記複製プログラムは、予め現用データ20Aのコピー(バックアップ)を行うか又は予備データ20Bのコピー(リストア)を行うかが指定されていてもよい。現用データ20Aのコピー(バックアップ)を行うことが指定されている場合には、コピー元、コピー先、コピー形式についても指定されているとよい。予備データ20Bのコピー(リストア)を行うことが指定されている場合には、リストア元、リストア先、データ形式についても指定されているとよい。ただし、上記のようなバックアップかリストアかの指定、コピー/リストア元、コピー/リストア先、コピー/リストア形式の指定は、産業用コンピュータ10の起動時に選択可能となるように構成しても構わない。
【符号の説明】
【0054】
10 産業用コンピュータ(情報処理装置)
11 CPU
12 BIOSメモリ(基本メモリ)
13 ストレージ機器(補助記憶装置)
19 BIOS
20A 現用データ
20B 予備データ
図1
図2
図3
図4