(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】光硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 265/04 20060101AFI20240613BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240613BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C08F265/04
C08L33/04
C08F2/44 C
(21)【出願番号】P 2020073755
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野依 慎太郎
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-503802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0048463(US,A1)
【文献】特開2019-081837(JP,A)
【文献】特開2012-140497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/00-265/00
C08L 33/04
C08F 2/00ー 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾフェノン骨格を有する光架橋性アクリル系ポリマー(A)と、炭素数12~24の分岐したアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)と、光重合開始剤(C)と、を含み、前記(A)が炭素数2~10のアルキルアクリレートからなる重合骨格を有し、前記(A)の固形分全量に対する配合量が10~60重量%であり、硬化物の周波数1MHzにおける比誘電率が
2.8~3.5であることを特徴とする光硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
更に水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b2)又は/及び前記(b1)以外のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b3)を含むことを特徴とする請求項1記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)の炭素数2~10のアルキルアクリレートがブチルアクリレート及び/又は2-エチルヘキシルアクリレートを含むことを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の光硬化型樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶等の画像表示部材とカバー部材との貼り合わせ等に適した光硬化型の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂はその特徴である透明性や速硬化性を活かし様々な用途で使用されている。例えばスマートフォンやタッチパネルに代表される画像表示ディスプレイにおいて、画像を表示する液晶表示パネルや有機EL表示パネル等の画像表示部材とそれを保護するカバーパネルとの間に、こうしたアクリル系の透明樹脂を充填して接着することで、画像表示部材とカバーパネル間の空気層をなくしコントラストや輝度の低下を防ぐ技術が開発されてきた。(特許文献1)。
【0003】
こうした用途は光学接着(オプティカルボンディング)とも呼ばれており、液状の樹脂を使用するOCR(Optical Clear Resin)と、シート形状に予め加工したOCA(Optical Clear Adhesive)に大別できる。特にOCAはシート状に加工済みであるため、膜厚の精密制御が可能で、特別な塗布~硬化装置が不要であり、又リワーク(貼り直し)も可能という特徴を生かして広く用いられている。
【0004】
こうしたOCAに用いることが可能な樹脂組成物として、過去に出願人はポリプロピレングリコール骨格を持つアクリル化合物を配合した粘着剤組成物を発明している(特許文献2)。しかしながら、薄型化や高精細化に代表されるタッチパネルの高性能化に伴い、誤作動の防下や、応答速度、感度の向上には光学接着層の低誘電率化が不可欠となっている。また異種材料の貼り合せに伴う熱膨張率差を吸収することに加え、リワーク性を向上させるには、更なる伸び率の向上が求められており、低誘電率且つ伸び率が大きいという2つの特性を両立させるには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-55641号
【文献】特開2020-45416号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、光学接着用途であるテープ状の粘着剤(OCA)に用いることが可能な、比誘電率が低く、伸び率が高い光硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、 ベンゾフェノン骨格を有する光架橋性アクリル系ポリマー(A)と、炭素数12~24の分岐したアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)と、光重合開始剤(C)と、を含み、前記(A)が炭素数2~10のアルキルアクリレートからなる重合骨格を有し、前記(A)の固形分全量に対する配合量が10~60重量%であり、硬化物の周波数1MHzにおける比誘電率が2.8~3.5であることを特徴とする光硬化型樹脂組成物を提供する。
【0008】
請求項2記載の発明は、更に水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b2)又は/及び前記(b1)以外のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b3)を含むことを特徴とする請求項1記載の光硬化型樹脂組成物を提供する。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記(A)の炭素数2~10のアルキルアクリレートがブチルアクリレート及び/又は2-エチルヘキシルアクリレートを含むことを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の光硬化型樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、良好な光学特性を有する粘着テープに用いることが可能な、比誘電率が低く、伸び率に優れた光硬化型樹脂組成物であり、光学接着用途であるOCAの材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の組成物の構成は、光架橋性ポリマー(A)と、炭素数12~24の分岐したアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)と、光重合開始剤(C)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0015】
本発明で使用する光架橋性ポリマー(A)は、ポリマー成分中に、光照射により励起され水素ラジカルを引き抜くことが可能な、ベンゾフェノン骨格を有している。そのため、光照射されるとポリマー分子から水素ラジカルを引き抜き、生成したラジカル同士の結合による架橋構造が形成され、高分子量且つ高架橋密度である強固な皮膜を形成することが可能となり、高い伸び率を得ることができる。光架橋性でないポリマーと比較した場合、硬化後に未反応の架橋成分がブリードしたり、巨視的な相分離が発生にくく、透明性の低下が起こりにくいという特徴も有している。
【0016】
前記(A)はアクリル系の光架橋性ポリマーであることが好ましい。アクリル系共重合体を形成するモノマーとしては、粘着シートに好適な粘弾性を与え、また被着体に対する濡れ性を良好にする目的で、アルキル基の炭素数が2~10であることが好ましく、例えばエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、ガラス転移点(以下Tg)が低く被着体との濡れ性に優れる点でブチルアクリレート(以下BA)、2-エチルヘキシルアクリレート(以下2-EHA)が好ましい。特に2-EHAは、分岐した構造でモル体積が大きいため好ましい。
【0017】
前記(A)の固形分全量に対する配合量は10~60重量%であり、15~55重量%が好ましく、18~50重量%が更に好ましい。10重量%未満では十分な凝集力と伸び率を確保できず、60重量%超では誘電率を十分に低くすることができない。市販品としては、acResinシリーズ(商品名:BASFジャパン社製、アクリル系)等がある。
【0018】
本発明で使用する炭素数12~24の分岐したアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)は、高粘度である(A)の反応性希釈剤であると同時に、硬化皮膜の比誘電率を低くするために配合する。誘電率を低くするためには、分子の双極子モーメントを小さくし、モル体積を大きくすれば良いと考えられるが、長鎖分岐アルキル基は極性が低く嵩高い構造であるため好適である。
【0019】
前記(b1)としては、例えばイソミスチリアル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-プロピルへプチル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、t-ブチル基を有しモル体積が大きいイソステアリルアクリレート(以下ISTA)が好ましい。
【0020】
前記(b1)の固形分全量に対する配合量は15~75重量%が好ましく、18~70重量%が更に好ましい。15重量%以上とすることで充分に誘電率を低くすることができ、また75重量%以下とすることで充分な凝集力と皮膜伸び率を確保できる。また全(メタ)アクリレートモノマー(以下(B))における(b1)の配合量は30~90重量%が好ましく、35~85重量%が更に好ましい。
【0021】
前記(b1)の他、被着材との接着性向上と白化抑制を目的に水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b2)を含むことが好ましい。親水性モノマーで水蒸気を吸収できるため、特にガラスのような透湿性の低い材料との接着では、白化抑制に非常に有効である。例えばヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、他成分との相溶性の点で4-ヒドロキシブチルアクリレート(以下4-HBA)が好ましい。
【0022】
前記(b2)の固形分全量に対する配合量は2~10重量%が好ましく、4~8重量%が更に好ましい。2重量%以上とすることで十分な被着材との接着性を確保と白化抑制が期待でき、10重量%以下とすることで充分に誘電率を低くすることができる。また(B)における(b2)の配合量は3~15重量%が好ましく、5~12重量%が更に好ましい。
【0023】
前記(b2)に加え、更に(b1)以外のアルキル基を有する(メタ)アクリレート(b3)を含むことが好ましい。(b2)は(A)の反応性希釈剤として配合するが、脂環式骨格や分岐骨格のようなモル体積が大きい骨格を有することが好ましい。例えば脂環式骨格ではイソボルニルアクリレート(以下IB-XA)、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが、分岐骨格では2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(b3)の固形分全量に対する配合量は、2~30重量%以下が好ましく、3~28重量%が更に好ましく、5~15重量%が特に好ましい。また(B)における(b3)の配合量は3~60重量%が好ましく、5~55重量%が更に好ましい。
【0024】
本発明で使用される光重合開始剤(C)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
これらの中では、黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系、及び内部硬化性に優れるアシルフォスフィンオキサイド系を含むことが好ましい。特にアシルフォスフィンオキサイド系は、ベンゾフェノン構造では励起しない可視光帯域でもラジカルを生成するため好ましい。また硬化皮膜を100μm以上に厚膜化する場合は、α-ヒドロキシアセトフェノン系とアシルフォスフィンオキサイド系の併用が有効である。
【0026】
前記(C)の光重合性成分100重量部に対する配合量は、0.1~5重量部配合することが好ましく、0.3~3重量部が更に好ましい。0.1重量部とすることで十分な硬化性を確保することができ、5重量部以下とすることで過剰添加とならず硬化後も十分な分子量を確保することができる。α-ヒドロキシアセトフェノン系とアシルフォスフィンオキサイド系を併用する場合は、前者1部に対し後者0.1~0.8部が好ましい。市販品としてはα-ヒドロキシアセトフェノン系でOmnirad184及び同2959が、フォスフィンオキサイド系でOmniradTPO H及び同819(商品名:IGM Resins社製)などがある。
【0027】
本発明では上記に加え更に粘着付与剤(D)を配合しても良い。非反応成分であることから硬化収縮を生じることなく、剥離強度を向上させる目的で配合する。例えばロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂等があり、単独または2種類以上を組み合わせて使用できるが、耐候性に優れる点で水素添加物(以下水添)であることが好ましい。これらの中では、(A)及び(b1)との相溶性に優れ無色透明である水添石油樹脂及び水添ロジンエステル系樹脂が好ましい。
【0028】
前記(D)の固形分全量に対する配合量は20重量%以下が好ましく、15重量%以下が更に好ましい。この範囲とすることで充分な剥離強度を確保することができる。水添石油樹脂の市販品としてはアルコンシリーズ(商品名:荒川化学工業社製)が、水添ロジンエステル系樹脂の市販品としてはパインクリスタルシリーズ(商品名:荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0029】
更に加えて本発明の光硬化性樹脂組成物は、性能を損なわない範囲で、必要に応じ光増感剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、シランカップリング剤、着色剤、重合禁止剤、有機微粒子などの添加剤を添加することができる。
【0030】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、タッチパネルもしくはフラットパネルディスプレイ等の画像表示体、例えば携帯機器端末と、これを保護するカバー部材とを貼り合わせるOCAの材料として使用できる。本発明の光硬化型樹脂組成物をOCAに用いた場合、誘電率が低いため誤作動を起こしにくく、応答速度や感度も高い。また伸び率が高いため、貼り合わせミスにより再貼合する際に糊残りがないというリワーク性にも優れている。以下に、テープ製造及び使用方法の具体例を説明するが、これに限定されるものではなく、粘着剤の塗工順序やフィルムの貼り合せ順序は随時選択できる。
【0031】
剥離PETフィルムに本樹脂組成物を塗布後、紫外線照射により硬化させ粘着フィルムを作成する。塗布方法は特に限定されず公知のロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート等が利用できる。塗布する厚みは任意であり、例えば50~400μmが例示できるが、曲面加工されたガラス製カバーパネルには、200~350μmの厚膜化が好ましい。
【0032】
次に剥離力の異なる剥離PETフィルムをラミネートし、その後紫外線を照射して硬化させ3層構造の粘着シートを作成する。硬化に用いる紫外線は、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、無電極ランプ等の公知の光源を使用し、積算光量として例えば50~10,000mJ/cm2を照射して光硬化性組成物を硬化させる。
【0033】
本発明の光硬化型樹脂組成物硬化物は、周波数1MHzにおける比誘電率が3.5以下であることが好ましく、3.2以下であることが更に好ましい。比誘電率が3.5以下であれば、タッチパネルのOCAとして使用した時でも、誤動作や応答速度、感度の点での不具合を防止することができる。
【0034】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。また表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。なお配合量は重量部を示す。
【0035】
実施例1
(A)としてacResin A204 UV(商品名:BASFジャパン社製、BA/2-EHA系共重合体)を、(b1)としてISTA(商品名:大阪有機化学工業社製、イソステアリルアクリレート)を、(b2)として4-HBA(商品名:大阪有機化学工業社製、4-ヒドロキシブチルアクリレート)を、(b3)として2-EHA(商品名:三菱ケミカル社製、2-エチルヘキシルアクリレート)を、(C)としてOmnirad184及びOmniradTPO H(商品名:IGM Resins社製)を、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、実施例1の光硬化型樹脂組成物を調製した。
【0036】
実施例2~7
実施例1で用いた材料の他、(A)としてacResin 3532 UV(商品名:2-EHA系共重合体)及びacResin A260 UV(商品名:BASFジャパン社製、BA系共重合体)を、(b3)としてIB-XA(商品名:共栄社化学社製、イソボルニルアクリレート)を、(D)としてアルコンP-90(商品名:荒川化学工業社製、水添石油樹脂)及びKE-311(商品名:荒川化学工業社製、水添ロジンエステル系樹脂)を、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、実施例2~7の光硬化型樹脂組成物を調製した。
【0037】
比較例1~2
実施例で用いた材料の他、アクリル系ポリマーとしてRC110C(商品名:カネカ社製、非ベンゾフェノン骨格の官能基有り)を、(b3)としてLA(商品名:共栄社化学社製、ラウリルアクリレート)を、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、比較例1~2の光硬化型樹脂組成物を調整した。
【0038】
評価用シートの調製
重剥離PETフィルムE7002(商品名:東洋紡社製、厚さ50μm)の剥離処理面に、光硬化型樹脂組成物を膜厚200μmで塗布し、その上に軽剥離PETフィルムE7006(東洋紡社製、75μm)をラミネートした。次にエルベール社製のブラックライト照射装置スーパーレジンUVクリスタルランプを用い、出力5mW/cm2、積算光量300mJ/cm2の条件で照射した後、フュージョンUVシステムジャパン社製の無電極UV照射装置F300S/LC-6Bを用い、Dバルブで出力300mW/cm2、積算光量3,000mJ/cm2の条件で照射して評価用シートを調製した。
【0039】
【0040】
評価方法は以下の通りとした。
【0041】
粘度:東機産業製のコーンプレート型粘度計RE-215Rを用い、コーン角3°×R17.65で25±1℃、回転数10rpmで測定した。
【0042】
剥離強度:評価用シートの軽剥離PETフィルムをはがし、易接着PET A4300(商品名:東洋紡社製、50μm)に貼り合わせ、その後残った剥離フィルムを剥がして白板ガラスに貼り付け、幅25mmにカットしたものを試験片とした。Techno Graph社製の引張り試験機TGI-1kNを用い、クロスヘッドスピード300mm/minで、白板ガラス面に対し180°の剥離強度を測定し、10N/25mm以上を○、未満を×とした。
【0043】
比誘電率:上記評価用シートの粘着層を重ね合わせて厚み1mmとし、Wayne Kerr社製のLCRメーター6440Bを用い、周波数1MHzにおける比誘電率を測定し、3.2以下を◎、3.2超~3.5を○、3.5超を×とした。
【0044】
全光線透過率:上記評価用シートの剥離PETフィルムをはがし、シートの両面に厚さ1mmの白板ガラスを貼り合わせ、東洋精機製作所製のヘイズメーターHaze-GARD2を用いJISK7361-1に準拠して測定し、評価は90%以上を○、90%未満を×とした。
【0045】
ヘーズ:全光線透過率と同じサンプルを用い、東洋精機製作所社製のヘイズメーターHaze-GARD2を用いJIS K7361-1に準拠して測定し、1%未満を○、1%以上を×とした。
【0046】
伸び率:上記評価用シートの粘着層を重ね合わせて厚み1mmとし、8号ダンベル型で型抜きしたサンプルを用いた。チャック間距離を20mmにセットし、Techno Graph社製の引張り試験機TGI-1kNを用い、クロスヘッドスピード300mm/minで引っ張り試験を行い、破断するまでの変位から伸び率を測定した。チャック間距離20mmを100%とし、伸び率が1000%超を◎、500~1000%を○、500%未満を×とした。
例)100mm変位の場合、伸び率は500%
【0047】
【0048】
実施例の各樹脂組成物は、剥離力、比誘電率、全光線透過率、ヘーズ、伸び率いずれの評価においても良好な結果を得た。
【0049】
一方、(A)を含まない比較例1は剥離力及び伸び率が劣り、(b1)を含まない比較例2は剥離力が劣ると共に比誘電率が高く、いずれも本願発明に適さないものであった。