(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】センサの検出条件設定方法、検出条件設定プログラムおよび前記プログラムを格納する記録媒体
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2020096453
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】栗山 龍起
(72)【発明者】
【氏名】高向 靖仁
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-524544(JP,A)
【文献】特開2004-243427(JP,A)
【文献】特開2000-108075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械に対する接近体の接近を検出するためのセンサの検出条件設定方法であって、
前記機械の動作データ
および機械位置データを読み込む機
械データ読込みステップと、
前記センサの作動データ
およびセンサ位置データを読み込むセン
サデータ読込みステップと、
前記機
械データ読込みステップで読み込まれた
前記機械の前記動作データ
および前記機械位置データ、ならびに、前記セン
サデータ読込みステップで読み込まれた
前記センサの前記作動データ
および前記センサ位置データに基づいて、
前記機械の位置に対する前記センサの位置のオフセット量を加味しつつ、前記センサの検出条件を作成するための検出条件作成ステップと、
前記検出条件作成ステップで作成された前記検出条件を前記センサに設定するための検出条件設定ステップと、
を備えたセンサの検出条件設定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記動作データが、前記機械の動作領域データを含んでいる、
ことを特徴とするセンサの検出条件設定方法。
【請求項3】
請求項
1において、
前記作動データが、前記センサの応答時間を含んでいる、
ことを特徴とするセンサの検出条件設定方法。
【請求項4】
請求項
1において、
前記検出条件作成ステップで前記センサの前記検出条件を作成する際には、前記機械の動作領域の外側に安全距離を追加して前記センサの検出領域を設定するようにした、
ことを特徴とするセンサの検出条件設定方法。
【請求項5】
請求項
1において、
前記機械の前記動作データを表示する表示ステップをさらに備えた、
ことを特徴とするセンサの検出条件設定方法。
【請求項6】
請求項
1において、
当該検出条件設定方法が、単一の操作端末により実行可能になっている、
ことを特徴とするセンサの検出条件設定方法。
【請求項7】
請求項
1において、
前記機械データ読込みステップで読み込まれた前記機械の前記動作データおよび前記機械位置データ、ならびに、前記センサデータ読込みステップで読み込まれた前記センサの前記作動データおよび前記センサ位置データに基づいて、前記センサの検出領域内に前記センサの非検出領域を生成するための非検出領域生成ステップをさらに備えた、
ことを特徴とするセンサの検出条件設定方法。
【請求項8】
請求項
7において、
前記センサの前記非検出領域を表示する表示ステップをさらに備えた、
ことを特徴とするセンサの検出条件設定方法。
【請求項9】
請求項1に記載のセンサの検出条件設定方法をコンピュータに実行させるための検出条件設定プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の検出条件設定プログラムを格納する記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械に対する接近体の接近を検出するためのセンサの検出条件設定方法、当該検出条件設定方法をコンピュータに実行させるための検出条件設定プログラム、および当該検出条件設定プログラムを格納する記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-205858号公報には、ロボット用システムにおいて、人の侵入を検知するセンサとしてレーザスキャナを用いたものが記載されている(同公報の段落[0023]~[0024]、[0048]および
図1参照)。また、特開2019-10704号公報には、レーザスキャナの周囲に防護領域(人が接近すると危険と判断される領域)や警告領域(防護領域の外側に配置される領域)といった検出領域が設定される点が記載されている(同公報の段落[0018]および
図1参照)。
【0003】
一般に、レーザスキャナを備えた従来のロボット用システムにおいて、レーザスキャナに検出領域を設定する際には、操作者がティーチングペンダントでロボットの動作データを作成した後、ロボットの複雑な動作に合わせて検出領域を計算しなければならず、高度な知識や技術が必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来のロボット用システムにおいては、レーザスキャナに対する検出条件の設定は、操作者が検出条件の設定について正しい知識を持つ必要があり、またロボットの複雑な動作領域に対しては計算を繰り返す必要があることから非常に煩雑なものであった。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、センサの検出条件設定方法において、センサの検出条件の設定を容易に行えるようにすることにある。また、本発明は、このような検出条件設定方法をコンピュータに実行させるための検出条件設定プログラム、および当該プログラムを格納する記録媒体を提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、機械に対する接近体の接近を検出するためのセンサの検出条件設定方法であって、以下の工程(ステップ)を備えている。すなわち
i) 機械の動作データおよび機械位置データを読み込む機械データ読込みステップ。
ii) センサの作動データおよびセンサ位置データを読み込むセンサデータ読込みステップ。
iii)機械データ読込みステップで読み込まれた機械の動作データおよび機械位置データ、ならびに、センサデータ読込みステップで読み込まれたセンサの作動データおよびセンサ位置データに基づいて、機械の位置に対するセンサの位置のオフセット量を加味しつつ、センサの検出条件を作成するための検出条件作成ステップ。
iv) 検出条件作成ステップで作成された検出条件をセンサに設定するための検出条件設定ステップ。
【0009】
本発明によれば、センサの検出条件設定方法が、機械データ読込みステップ→センサデータ読込みステップ→検出条件作成ステップ→検出条件設定ステップという一連のステップによって実行されるので、すべての作業を操作者の手入力に頼ることなく、円滑に作業を進めることができるようになり、センサの検出条件の設定を容易に行えるようになる。また、この場合、機械の位置に対するセンサの位置のオフセット量を加味しつつ、センサの検出条件が作成されるので、機械の動作領域に対するセンサの検出領域の設定をより円滑に行えるようになる。さらに、当該検出条件設定方法が上述した一連のステップから構成されることで、各ステップを単一の操作端末により実行することが可能になり、作業をより効率的に行うことができるようになる。
【0010】
本発明では、動作データが機械の動作領域データを含んでいる。
【0011】
本発明では、作動データがセンサの応答時間を含んでいる。
【0012】
本発明では、検出条件作成ステップでセンサの検出条件を作成する際には、機械の動作領域の外側に安全距離を追加してセンサの検出領域を設定するようにしている。
【0013】
本発明では、機械の動作データを表示する表示ステップをさらに備えている。
【0014】
本発明では、検出条件設定方法が、単一の操作端末により実行可能になっている。
【0015】
本発明では、機械データ読込みステップで読み込まれた機械の動作データおよび機械位置データ、ならびに、センサデータ読込みステップで読み込まれたセンサの作動データおよびセンサ位置データに基づいて、センサの検出領域内にセンサの非検出領域を生成するための非検出領域生成ステップをさらに備えている。
【0016】
これにより、センサに生じる死角に対して操作者の注意を喚起することができる。
【0017】
本発明では、センサの非検出領域を表示する表示ステップをさらに備えている。
【0018】
本発明に係る検出条件設定プログラムは、上記センサの検出条件設定方法をコンピュータに実行させるためのものである。
【0019】
本発明に係る記録媒体は、上記検出条件作成プログラムを格納するものである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、センサの検出条件設定方法が、機械データ読込みステップ→センサデータ読込みステップ→検出条件作成ステップ→検出条件設定ステップという一連のステップによって実行されるので、円滑に作業を進めることができるようになり、センサの検出条件の設定を容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明によるセンサの検出条件設定方法を実行するためのコンピュータの全体斜視図である。
【
図2】前記コンピュータ(
図1)のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】前記コンピュータ(
図1)の機能ブロック図である。
【
図4】レーザスキャナを備えたロボット制御システムにおいて、ロボットおよびレーザスキャナ、ならびにレーザスキャナの防護領域および第1、第2の警告領域を示す全体斜視図である。
【
図5】前記ロボット制御システム(
図4)において、ロボットコントローラ、ティーチングペンダント、コンピュータおよびレーザスキャナ間の通信シーケンスの一例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施例によるセンサの検出条件設定方法を実行するためのフローチャート(メインフロー)である。
【
図7】前記フローチャート(
図6)中の検出条件作成サブルーチンのフローチャートである。
【
図8】前記ロボット制御システム(
図4)において、前記ロボットの動作領域、前記レーザスキャナおよび前記防護領域の平面拡大図である。
【
図8A】前記ロボット制御システム(
図4)において、前記レーザスキャナのオフセット量および前記防護領域内の非検出領域を説明するための図である。
【
図8B】前記コンピュータ(
図1)の実際の操作画面の一例を示す図である。
【
図9】前記レーザスキャナ(
図4)の検出高さ位置について説明するための図である。
【
図10】本発明の第2の実施例によるセンサの検出条件設定方法を実行するためのフローチャート(メインフロー)である。
【
図11】前記フローチャート(
図10)中の検出条件作成サブルーチンのフローチャートである。
【
図12】本発明の検出条件設定方法により設定される検出領域がAGV(Automated Guided Vehicle: 無人搬送車)のレーザスキャナに設定された例を示す図であって、レーザスキャナの防護領域および第1、第2の警告領域を示している。
【
図13】前記レーザスキャナ(
図12)の検出高さ位置について説明するための図である。
【
図15】(a)ないし(c)は、前記レーザスキャナ(
図12)の前記防護領域および前記第1、第2の警告領域をAGVの車両速度に応じて切り替えた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし
図15は、本発明によるセンサの検出条件設定方法を説明するための図である。ここでは、機械として、本発明の第1、第2の実施例ではロボットを、第3の実施例ではAGV(Automated Guided Vehicle: 無人搬送車)を例にとって説明する。また、センサとして、本発明の第1ないし第3の実施例では、レーザスキャナを例にとって説明する。
【0023】
図1は、本発明によるセンサの検出条件設定方法を実行するためのコンピュータ(操作端末)を示している。コンピュータ1は、コンピュータ本体10と、キーボード11と、マウス12と、ディスプレイ13とを備えている。コンピュータ本体10には、SDカードスロット10aと、USBポート10bと、CD/DVDドライブ等の読込み/書込み装置10cとが設けられている。
【0024】
図2に示すように、コンピュータ1のCPU100には、上述したキーボード11、マウス12およびディスプレイ13が接続されるとともに、プリンタ14(
図1では図示省略)が接続されている。また、CPU100には、主記憶装置15、補助記憶装置16および通信装置17が接続されるとともに、上述した読込み・書込み装置10cが接続されている。主記憶装置(つまりメインメモリ)15には、ROMおよびRAM等が含まれ、補助記憶装置16には、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)の他、半導体ドライブ(SSD:Solid State Drive)等が含まれる。読込み/書込み装置10cによって読込み/書込みされる記録媒体10dには、上述したCD/DVD等が含まれる。
【0025】
本発明によるセンサの検出条件設定方法は、機械に対する接近体(人体または物体)の接近を検出するための方法であって、コンピュータ1のハードディスクやCD/DVD、SDカードまたはUSBメモリ等の記録媒体に格納されたプログラム、あるいはインターネット回線等のネットワーク回線から通信装置17を介してハードディスク等の記録媒体にインストールされたプログラムに従って処理される。
【0026】
図3は、コンピュータ1の機能ブロック図である。同図に示すように、コンピュータ1は、機械の動作データを読み込む機械動作データ読込み部101と、センサの作動データを読み込むセンサ作動データ読込み部102と、機械動作データ読込み部で読み込まれた動作データ、および、センサ作動データ読込み部で読み込まれた作動データに基づいて、センサの検出条件を作成するための検出条件作成部103と、検出条件作成部103で作成された検出条件をセンサに設定するための検出条件設定部104と、機械の動作領域やセンサの検出領域および非検出領域等をディスプレイ13(
図1)に表示するための表示部105とを備えている。なお、機械動作データ読込み部101、センサ作動データ読込み部102、検出条件作成部103、検出条件設定部104および表示部105は、後述する本発明の第1の実施例に対応している。
【0027】
また、コンピュータ1は、機械の動作データおよび機械位置データを読み込む機械データ読込み部106と、センサの作動データおよびセンサ位置データを読み込むセンサデータ読込み部107と、機械データ読込み部106で読み込まれた機械の動作データおよび機械位置データ、ならびに、センサデータ読込み部で読み込まれたセンサの作動データおよびセンサ位置データに基づいて、センサの検出領域内にセンサの非検出領域を生成するための非検出領域生成部108とを備えている。なお、機械データ読込み部106、センサデータ読込み部107、検出条件作成部103、検出条件設定部104、非検出領域生成部108および表示部105は、後述する本発明の第2の実施例に対応している。
【0028】
図3中の各部は、ハードディスク等からRAM上に展開されたプログラムを実行するCPU100からの命令によって動作することで実現される機能である。
【0029】
図4は、レーザスキャナを備えたロボット制御システムを示す全体斜視図である。同図に示すように、ロボット制御システムRSは、ロボットRと、ロボットRを制御するためのロボットコントローラCと、ロボットRに対する接近体を検出するセンサとしてのレーザスキャナLSとを備えている。レーザスキャナLSは、図示していないが、USBポートやSDカードスロットを有している。また、ロボットRは、平面視L字状に組み立てられたフェンスFによって2方向から囲まれている。
【0030】
ロボットRは、先端にエンドエフェクタを有する複数のロボットアームを有している。ここでは、ロボットRとして、垂直多関節ロボットを例にとる。ロボットRは、先端のエンドエフェクタにより、テーブルT上に配置された多数のワークに対して所定の動作手順にしたがって処理を行うよう、ロボットコントローラCによって駆動制御される。ロボットRの動作手順は、ティーチングペンダント等のティーチング機器を用いて予めロボットRに教示・設定されている。ロボットコントローラCは、ロボットRの基台の下部に配置されている。レーザスキャナLSは、この例では、テーブルTの角部の近傍位置に配置されている。なお、レーザスキャナLSは、ロボットRのレイアウトや動作領域等に応じて、適切な位置(たとえば、ロボットRの直近近傍位置またはロボットRから離れた位置)に適宜配置される。
【0031】
図5は、ロボット制御システムRSにおいて、ロボットコントローラC、ティーチングペンダントTp、コンピュータ1およびレーザスキャナLS間の通信シーケンスの一例を示している。
同図に示すように、まず、ティーチングペンダントTpによりロボットRに対してティーチングを行う(P1)。この場合には、操作者がティーチングペンダントTpを操作することにより、稼動時におけるロボットRの各ロボットアームやエンドエフェクタのそれぞれの位置や速度等の制御条件を設定する。
【0032】
ティーチングペンダントTpで設定された制御条件は、ロボットコントローラCに送信されて受信される。これにより、ロボットコントローラCには、ロボットRの各ロボットアームやエンドエフェクタの動作データが記憶される(R1)。
【0033】
コンピュータ1は、ロボットコントローラCに記憶された動作データを読み取って、安全距離データを設定するとともに(C1)、センサ作動データを読み込む(C2)。コンピュータ1は、ロボットRの動作領域データ、安全距離データおよびセンサ作動データに基づいて、レーザスキャナLSに対して設定すべき検出条件データを作成する(C3)。
【0034】
コンピュータ1で作成された検出条件データは、たとえばUSBケーブル等を介してレーザスキャナLSにインポートされる。これにより、検出条件がレーザスキャナLSに設定される(L1)。なお、検出条件データは、コンピュータ1からSDカード10A(またはマイクロSDカード/USBメモリ)等の外部記録媒体に一旦記録された後、これをレーザスキャナLSのSDカードスロット(またはUSBポート)に差し込んで読み取ることにより、レーザスキャナLSに対する検出条件の設定を行うようにしてもよい。
【0035】
<第1の実施例>
本発明の第1の実施例によるセンサ(レーザスキャナ)の検出条件設定方法を
図6および
図7のフローチャートを用いて説明する。
プログラムがスタートすると、まず、
図6のステップS1において、ロボットRの動作データを読み込む。この場合には、ロボットコントローラCに記憶されたロボットRの動作領域データ(たとえば動作領域の2次元/3次元座標データ)をロボットコントローラCから読み込む。ロボットRの動作領域データとして、3次元座標データを採用した場合には、ロボットRの高さ位置や、ロボットRの可動部の高さ方向の座標データが含まれる。
【0036】
次に、ステップS2では、レーザスキャナLSの作動データを読み込む。この作動データとしては、たとえばレーザスキャナLSの応答時間を読み込む。ここで、レーザスキャナLSの応答時間とは、人体や物体がレーザスキャナLSの検出エリアに侵入してレーザスキャナLSが検知する状態になってからセンサ検知信号がONする(すなわち、OSSD(Output Signal Switching Device)信号がON状態からOFF状態に切り替わる)までの時間のことをいう。この応答時間は、たとえば、機器固有の応答時間を考慮して設定されているデフォルト値を所定の標準値(例:数十ミリ秒)として読み込むか、あるいは、センサ検知信号の出力を所定条件で遅延させるオフディレイ制御を考慮して決定される。また、前記以外の作動データとしては、たとえばレーザスキャナLSの機種や使用条件(例:レーザスキャナの向き/標準使用/高感度使用/ロボット運転速度(高速/中速)/ロボットの停止制御から実際に停止するまでの応答時間)等に応じて設定された値を読み込む。
【0037】
次に、ステップS3では、ステップS1で読み込まれたロボットRの動作データ、および、ステップS2で読み込まれたレーザスキャナLSの作動データに基づいて、レーザスキャナLSの検出条件を作成する検出条件作成サブルーチンを実行する。
【0038】
この場合には、まず、
図7のステップT1において、ロボットRの動作領域を表示する。すなわち、ロボットRの動作領域をコンピュータ1のディスプレイ13に表示する。
図8はディスプレイ表示の一例を示しており、同図中、斜線領域RRがロボットRの動作領域つまり危険領域を示している。なお、
図8は
図4に対応している。
【0039】
次に、ステップT2では、動作領域RRの外側に設定すべき安全距離Sを設定する。安全距離Sは、次式によって算出される。すなわち
S=K×(Tm+Ts)+C+Zs … (1)
ただし
S: 安全距離(mm)
K: 人体の接近速度(mm/s)
Tm: 機械(ここではロボットR)またはシステム(ここではロボット制御システムRS)の最大停止時間(s)
Ts: レーザスキャナLSの応答時間(s)
C: C=1200-0.4×H(ただし、C≧850)
ここで H: 床面から検出面までの高さ(mm)
1000≧H≧15×(d-50)
d: 物体の最小検出幅(mm)
Zs: 追加安全距離(mm)
【0040】
Kの値としては、一般に、1600(mm/s)が採用される。Tmは、レーザスキャナLSのOSSD信号を受けてからロボットRが停止するまでにかかる最大停止時間(s)を指している。Tsは、メインフローのステップS2で読み込まれた値である。Cを求める式に登場するHは、
図9に示すように、床面からレーザスキャナLSの検出面(レーザ光の投光窓の位置)までの距離を指している。dに関しては、たとえば人の体の全身を検出する場合には、たとえば70(mm)が採用される。Zsに関しては、レーザスキャナLSがたとえば高反射率背景で用いられる場合やレーザスキャナLSの計測誤差を修正するために採用される値であり、たとえば所定のデフォルト値が採用される。
【0041】
次に、ステップT3では、ステップT2で求めた安全距離Sを用いて、レーザスキャナLSの検出領域を設定する。この場合には、ロボットRの動作領域RRの外側に安全距離Sを設定することにより、レーザスキャナLSの検出領域を設定する。なお、安全距離Sを設定する際にはロボットRのアームの位置だけでなく、アームが保持したワークの大きや長さなどを考慮することが好ましい。
【0042】
次に、ステップT4では、ステップT3で設定された検出領域をディスプレイ13に表示する。この場合には、
図8中、ロボットRの動作領域RRの外側(つまりフェンスFで囲まれていない側)において、X方向およびY方向にそれぞれ安全距離分の幅Sを有する平面視略L字状の帯状領域(濃いグレーの領域)が描画される。この濃いグレーの略L字状帯状領域がレーザスキャナLSの検出領域PRである。これによりレーザスキャナLSの防護領域、つまり動作領域RRと検出領域PRにより、人が接近すると危険と判断される領域が決定される。
【0043】
図8には、説明の便宜上、動作領域RRの角部の位置にレーザスキャナLSが併せて記載されるとともに、動作領域RRを2方向から囲む位置にL字状のフェンスFが併せて記載されており、これらの記載は
図4に対応している。なお、レーザスキャナLSの設置位置により動作領域RRと検出領域PRが重複する場合(たとえば、動作領域RR内にレーザスキャナLSが配置されている場合)もある。この場合、レーザスキャナは動作領域RRを含む領域を検出領域PRとなるように設定されるが、同様に安全距離Sを設定することに変わりない。
【0044】
また、ステップT3での検出領域の設定の際には、検出領域PRに加えて、第1の警告領域WR1および第2の警告領域WR2(
図4参照)を検出領域PRの外側において検出領域PRを取り囲むように設定するようにしてもよい。
【0045】
検出領域PRは、当該領域内に侵入した人体や物体をレーザスキャナLSが検知したときに、レーザスキャナLSのOSSD信号がON状態からOFF状態に切り替わることにより、ロボットRを停止させる、またはロボットRを安全な動作状態とするための領域である。第1、第2の警告領域WR1、WR2は、当該領域内に侵入した人体や物体をレーザスキャナLSが検知したときに、レーザスキャナLSのWARNING信号がON状態からOFF状態に切り替わることにより、侵入者や侵入物体に対して警告を行う(たとえば警告音の発報/警告灯の点灯処理を行う)ための領域である。
【0046】
次に、ステップT5では、コンピュータ1によるプログラム処理を手動つまり操作者による手入力に切り替える選択を行うか否かについて操作者の判断を待つ。因みに、ステップT1~T4の処理はコンピュータ1によって自動化された処理である。ステップT5を設けたのは、自動処理によって作成された検出領域(および警告領域)が、操作者の意図していた領域と異なっていたり、操作者の意図を十分に反映していなかったりした場合に、操作者が領域の位置や範囲を手動で修正できるようにするためである。
【0047】
ステップT5において、処理を手動に切り替えない場合には、ステップT6~T8をスキップして、プログラムはステップT9に移行し、これまでの処理を保存する保存ボタン/保存キーがクリックされる/押されるのを待つ。保存ボタン/保存キーがクリックされれば/押されれば、ステップT9での判断が「yes」となって、プログラムは
図6のメインフローに戻り、ステップS4に移行する。
【0048】
その一方、ステップT5において、手動切替えを選択した場合には、ステップT5での判断が「yes」となって、プログラムはステップT6に移行する。ステップT6では、操作者の手入力により、ステップT2で設定された安全距離が変更される。次に、ステップT7では、変更された安全距離を用いて、レーザスキャナLSの検出領域PRが変更される。
【0049】
次に、ステップT8では、ステップT7で変更された検出領域PRをディスプレイ13に表示する。このとき、ステップT4で表示されていた検出領域PRを表示/消去可能にしておくことにより、操作者は、新たに設定された検出領域PRの位置や範囲がどのように変更されたかを容易に確認できる。なお、ステップT6~T8の処理は繰り返し行えるようにしてもよい。
【0050】
ステップT8での処理後、ステップT9に移行する。ステップT9では、処理を保存する保存ボタン/保存キーがクリックされる/押されるのを待つ。保存ボタン/保存キーがクリックされれば/押されれば、ステップT9での判断が「yes」となって、プログラムは
図6のメインフローに戻り、ステップS4に移行する。
【0051】
ステップS4では、ステップS3で作成されて保存されたセンサ検出条件をレーザスキャナLSに設定する検出条件設定処理を行う。この場合には、コンピュータ1とレーザスキャナLSをUSBケーブルで接続することにより、コンピュータ1に保存されたレーザスキャナLSの検出条件をレーザスキャナLSにインポートして設定処理を行う。または、コンピュータ1にSDカード10Aを挿入して(
図5参照)、コンピュータ1に保存されたレーザスキャナLSの検出条件をSDカード10Aに書き込んだ後、SDカード10AをレーザスキャナLSに読み込ませることにより、レーザスキャナLSの検出条件をレーザスキャナLSに設定する。
【0052】
次に、ステップS5では、プログラムを終了するか否か、操作者の判断を待つ。終了ボタン/終了キーがクリックされれば/押されれば、プログラムは終了する。
【0053】
上述したプログラムによるセンサ検出条件が設定されたレーザスキャナLSの作動時には、
図4および
図8に示すように、レーザスキャナLSの周囲に防護領域(ロボットの動作領域RRとレーザースキャナLSの検出領域PRを合わせた領域)が設定されるとともに、その外側に第1、第2の警告領域WR1、WR2が設定されている。
【0054】
なお、この第1の実施例においては、レーザスキャナLSの位置データについては言及していないが、
図4および
図8に示すように、ロボットRの動作領域RRが矩形状領域であって、その角部の近傍位置にレーザスキャナLSを設置するようなアプリケーションの場合には、レーザスキャナLSの検出角度(スキャニング角)θを270°に設定することにより、ロボットRの矩形状の動作領域RRの外延に沿った検出領域PRを容易に設定することができる。
【0055】
<第2の実施例>
本発明の第2の実施例によるセンサ(レーザスキャナ)の検出条件設定方法を
図10および
図11のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
プログラムがスタートすると、まず、
図10のステップS1’において、機械データを読み込む。この場合には、前記第1の実施例と同様に、ロボットコントローラCに記憶されたロボットRの動作領域データ(たとえば動作領域の2次元/3次元座標データ)をロボットコントローラCから読み込むとともに、これに加えて、ロボットRの位置データをロボットコントローラCから読み込む。
【0057】
次に、ステップS2’では、センサデータを読み込む。このセンサデータとしては、前記第1の実施例と同様に、レーザスキャナLSの作動データである、たとえばレーザスキャナLSの応答時間を読み込む。ここで、レーザスキャナLSの応答時間とは、センサ検知信号がONするまでの時間のことをいう。この応答時間は、たとえば機器固有の応答時間を考慮してデフォルト値として設定されている所定の標準値(例:数十ミリ秒)を読み込むか、あるいは、センサ検知信号の出力を所定条件で遅延させるオフディレイ制御を考慮して決定される。また、前記以外の作動データとしては、たとえばレーザスキャナLSの機種や使用条件(例:レーザスキャナの向き/標準使用/高感度使用/ロボット運転速度(高速/中速)/ロボットの応答時間)等に応じて設定された値を読み込む。
【0058】
センサデータとしては、さらにレーザスキャナLSの位置データを読み込む。この位置データとしては、
図4および
図8に示すように、ロボットRの動作領域RRが矩形状領域であって、その角部の近傍位置にレーザスキャナLSを設置するようなアプリケーションの場合には、レーザスキャナLSの位置の座標データ(X
2、Y
2)は、動作領域RRの角部の座標データにレーザスキャナLSの寸法を加味することにより、容易に求められる。なお、レーザスキャナLSの位置の座標データ(X
2、Y
2)は、操作者が手入力で座標データを入力するようにしてもよいし、マウスポインタの位置でクリックすることで座標入力できるようにしてもよい。
【0059】
次に、ステップS3’では、ステップS1’で読み込まれたロボットRの動作領域データおよび位置データ、ならびに、ステップS2’で読み込まれたレーザスキャナLSの作動データおよび位置データに基づいて、レーザスキャナLSの検出条件を作成する検出条件作成サブルーチンを実行する。
【0060】
この場合には、まず、
図11のステップT1’において、ロボットRの動作領域およびその位置をコンピュータ1のディスプレイ13に表示する。
図8Aはディスプレイ表示の一例を示しており、同図中、斜線領域RRがロボットRの動作領域つまり人が立ち入ると危険な領域を示している。
【0061】
次に、ステップT2’では、ロボットRの中心O1の座標データ(X1、Y1)に対するレーザスキャナLSの中心O2の座標データ(X2、Y2)のオフセット量(X0、Y0)を算出する。オフセット量は次式により求まる。
X0=X2-X1 および Y0=Y2-Y1
【0062】
次に、ステップT3’では、動作領域RRの外側に設定すべき安全距離Sを設定する。安全距離Sは、第1の実施例と同様に、式(1)によって算出される。
【0063】
次に、ステップT4’では、ステップT2’で求めたオフセット量(X0、Y0)、および、ステップT3’で求めた安全距離Sを用いて、ロボットRの動作領域RRの外側にレーザスキャナLSの検出領域を設定する。
【0064】
ステップT5’では、ステップT4’で設定された検出領域をディスプレイ13に表示する。この場合には、
図8A中、ロボットRの動作領域RRの外側(つまりフェンスFで囲まれていない側)において、X方向およびY方向にそれぞれ安全距離分の幅Sを有する平面視略L字状の帯状領域(濃いグレーの領域)をその内側の外延がレーザスキャナLSの中心O
2を通るように描画する。この濃いグレーの略L字状帯状領域がレーザスキャナLSの検出領域PRである。これによりレーザスキャナLSの防護領域、つまり動作領域RRと検出領域PRによって、人が接近すると危険と判断される領域が決定される。
【0065】
図8Aには、説明の便宜上、動作領域RRの角部の位置にレーザスキャナLSが併せて記載されるとともに、動作領域RRを2方向から囲む位置にL字状のフェンスFが併せて記載されており、これらの記載は
図4に対応している。
【0066】
ここで、コンピュータ1の実際の操作画面の一例を
図8Bに示す。同図に示すように、操作画面の右側の領域には、動作領域RRが描画されるとともに、その外側に検出領域PRが描画されている。検出領域PRは、所定の座標位置に自動処理でプロットされた多数の点PLにより、その外延が設定されている。
【0067】
なお、ステップT5’での検出領域の設定の際には、検出領域PRに加えて、第1の警告領域WR1および第2の警告領域WR2(淡いグレーの領域(
図4参照))を検出領域PRの外側において検出領域PRを取り囲むように設定するようにしてもよい。
【0068】
検出領域PRは、当該領域内に侵入した人体や物体をレーザスキャナLSが検知したときに、レーザスキャナLSのOSSD信号がON状態からOFF状態に切り替わることにより、ロボットRを停止させるための領域である。第1、第2の警告領域WR1、WR2は、当該領域内に侵入した人体や物体をレーザスキャナLSが検知したときに、レーザスキャナLSのWARNING信号がON状態からOFF状態に切り替わることにより、侵入者や侵入物体に対して警告を行う(たとえば警告音の発報/警告灯の点灯処理を行う)ための領域である。
【0069】
次に、ステップT6’では、レーザスキャナLSの検出領域PR内に障害物等が存在するか、前述のオフセットによる検出領域PRの移動によって生じた空白の領域か、あるいは、センサが検出可能な距離の外となる領域にロボットRの動作領域RRがあるかによって、レーザスキャナLSによる検出ができない非検出領域があるか否か判断される。非検出領域があると判断されれば、ステップT6’での判断が「yes」となって、ステップT7’に移行する。なお、障害物等の座標データは、ティーチングペンダントによるティーチング時に予めロボットコントローラCに記憶させていたものを用いるようにしてもよいし、操作者が手入力で入力するようにしてもよい。
【0070】
ステップT7’では、レーザスキャナLSの検出領域PR内に非検出領域を生成するとともに、これをディスプレイ13に表示する。
図8A中、符号OSがレーザスキャナLSの検出領域内に置かれた障害物を示しており、その図示左方(一部上方も含む)の斜線領域が非検出領域VBである。非検出領域VBは、障害物OSの存在により、その主に背面側にレーザスキャナLSからの出射レーザ光が届かなくなる領域である。このような非検出領域VBが生成・表示されることにより、操作者に対する注意が喚起されることになる。この場合、非検出領域VBを検出できるように、別のレーザスキャナを配置するようにするか、あるいは、非検出領域VB内に作業者が立ち入ることができないように柵やパーテーションを設置することが考えられる。
【0071】
ステップT7’での処理後、ステップT8’に移行する。その一方、ステップT6’において、非検出領域がないと判断されれば、同様に、ステップT8’に移行する。
【0072】
次に、ステップT8’では、コンピュータ1による処理を手動つまり操作者による手入力に切り替える選択を行うか否か、操作者の判断を待つ。因みに、ステップT1’~T5’の処理はコンピュータ1によって自動化された処理である。ステップT8’を設けたのは、自動処理によって作成された検出領域(および警告領域)が、操作者の意図していた領域と異なっていたり、操作者の意図を十分に反映していなかったりした場合に、操作者が領域の位置や範囲を修正できるようにするためである。
【0073】
ステップT8’において、処理を手動に切り替えない場合には、ステップT9’~T10’をスキップして、プログラムはステップT11’に移行し、これまでの処理を保存する保存ボタン/保存キーがクリックされる/押されるのを待つ。保存ボタン/保存キーがクリックされれば/押されれば、ステップT11’での判断が「yes」となって、プログラムは
図10のメインフローに戻り、ステップS4’に移行する。
【0074】
その一方、ステップT8’において、手動切替えを選択した場合には(
図8B中、操作画面の左側の領域に設けられた手動ボタン参照)、ステップT8’での判断が「yes」となって、プログラムはステップT9’に移行する。ステップT9’では、操作者の手入力により、ステップT3’で設定された安全距離が変更される。
【0075】
次に、ステップT10’では、変更された安全距離を用いて、レーザスキャナLSの検出領域PRが変更されて、ディスプレイ13に表示される。このとき、ステップT5’で表示されていた検出領域PRを表示/消去可能にしておくことにより、操作者は、新たに設定された検出領域の位置や範囲がどのように変更されたかを容易に確認できる。なお、ステップT9’~T10’の処理は繰り返し行えるようにしてもよい。
【0076】
ステップT10’での処理後、ステップT11’に移行する。ステップT11’では、処理を保存する保存ボタン/保存キーがクリックされる/押されるのを待つ。保存ボタン/保存キーがクリックされれば/押されれば、ステップT11’での判断が「yes」となって、プログラムは
図10のメインフローに戻り、ステップS4’に移行する。
【0077】
ステップS4’では、ステップS3’で作成されて保存された検出条件をレーザスキャナLSに設定する検出条件設定処理を行う。この場合には、コンピュータ1とレーザスキャナLSをUSBケーブルで接続することにより、コンピュータ1に保存されたレーザスキャナLSの検出条件をレーザスキャナLSにインポートして設定処理を行う。または、コンピュータ1にSDカード10Aを挿入して(
図5参照)、コンピュータ1に保存されたレーザスキャナLSの検出条件をSDカード10Aに書き込んだ後、SDカード10AをレーザスキャナLSに読み込ませることにより、レーザスキャナLSの検出条件をレーザスキャナLSに設定する。
【0078】
次に、ステップS5’では、プログラムを終了するか否か、操作者の判断を待つ。終了ボタン/終了キーがクリックされれば/押されれば、プログラムは終了する。
【0079】
上述したプログラムによる検出条件が設定されたレーザスキャナLSの作動時には、
図4および
図8Aに示すように、レーザスキャナLSの周囲に検出領域PRが設定されるとともに、その外側に第1、第2の警告領域WR1、WR2が設定されている。
【0080】
<第3の実施例>
前記第1および第2の実施例では、ロボット制御システムを例にとって説明したが、本発明が実行処理されたセンサが用いられる機械としては、ロボット以外でもよく、本発明は、無人搬送車 (AGV:Automated Guided Vehicle)や自動車(自動牽引車含む)等の車両、自動フォークリフト等の特殊車両を含む自律移動体にも適用可能である。なお、これら車両においては、人体や物体が静止している場合でも、車両が移動することで人体や物体が車両に相対的に接近することになるので、この場合においても、人体や物体が本発明における「接近体」に相当する。
【0081】
図12は、本発明の第3の実施例のセンサ検出条件設定方法によるセンサ検出条件が設定されたレーザスキャナLSと、これを搭載するAGVと、レーザスキャナLSにより設定される検出領域PRおよび第1、第2の警告領域WR1、WR2とを示している。
【0082】
この第3の実施例によるセンサ検出条件設定方法は、前記第1の実施例の
図6、
図7のフローチャート、または前記第2の実施例の
図10、
図11のフローチャートにしたがって、同様に処理されるが、この場合、前記第1、第2の実施例中のロボットコントローラCに相当するのが、AGVに搭載された(またはAGVから離れた場所に設置された)コントローラである。AGVが床面上の固定ルートに沿って走行する場合、および床面上を自由走行する場合のいずれについても、AGVの走行パターン(たとえばルート、停止位置、加減速領域等)がAGVのコントローラに記憶されている。
【0083】
よって、上記フローチャートにおけるAGVの動作データは、AGVのコントローラから読み込まれることになる。この場合、AGVは、ロボットのような据置型ではなく可動型であるので、刻刻と位置を変えるAGVの占有領域がAGVの動作領域となる。なお、レーザスキャナLSの作動データの読込みについては、前記第1、第2の実施例と同様である。
【0084】
また、AGVの動作データおよびレーザスキャナLSの作動データに基づいて、レーザスキャナLSの検出条件を作成する際において、AGVの動作領域の外側に設定すべき安全距離Sに関しては、次式によって算出される。すなわち
S=V×(Tm+Ts)+Zb×L+Zs+Zg … (2)
ただし
S: 安全距離(mm)
V: AGVの最大接近速度(mm/s)
Tm: 機械(ここではAGV)またはシステム(ここではAGV制御システム)の最大停止時間(s)
Ts: レーザスキャナLSの応答時間(s)
Zb: AGVの停止に必要な距離(mm)
L: ブレーキの摩耗係数
Zs: 追加安全距離(mm)
Zg: 床面との隙間が十分に確保できない場合の追加距離(mm)
【0085】
Tmは、レーザスキャナLSのOSSD(Output Signal Switching Device)信号を受けてからAGVが停止するまでにかかる最大停止時間(s)を指している。Tsは、メインフローのステップS2、S2’(
図6、
図10)で読み込まれた値である。Zsに関しては、レーザスキャナLSがたとえば高反射率背景で用いられる場合に採用される値であり、たとえば所定のデフォルト値が採用される。Zgの説明文に記載された床面との隙間は、
図13に示すように、床面からAGVの底面までの距離を指している。
【0086】
式(2)で求めた安全距離Sを用いてレーザスキャナLSの検出領域を設定する際には、AGVの動作領域の外側つまりAGVの前方に安全距離Sを設定することにより、レーザスキャナLSの検出領域PRが設定される。設定された検出領域PRは、
図14のディスプレイ表示例に示すように、前後方向(同図上下方向)に安全距離分の長さSを有し、左右方向(同図左右方向)に、AGVの幅寸法よりも長い所定の長さを有する矩形状の帯状領域(濃いグレーの領域)PRである。なお、
図12では、検出領域PRに加えて、第1、第2の警告領域WR1、WR2が記載されている。AGVの移動にともない、これら検出領域PR、第1、第2の警告領域WR1、WR2もAGVの移動方向へ領域の位置を変えていく。
【0087】
なお、検出領域PRおよび第1、第2の警告領域WR1、WR2を設定する際には、AGVの車速に応じて各領域の大きさを切り替えるようにしてもよい。
図15は、車速に応じた切替えの例を示しており、同図中、(a)は高速時の場合、(b)は中速時の場合、(c)は低速時の場合にそれぞれ対応している。このように車速を3段階で切り替える場合には、式(2)中の速度Vの値として高速、中速および低速の3種類を用意し、それぞれについて算出された安全距離Sの値が用いられることになる。なお、この場合、AGVの駆動軸にはインクリメンタルエンコーダが取り付けられており、エンコーダ入力を用いてレーザスキャナLSのスキャンエリアの切替えが行われる。
【0088】
検出領域PRは、当該領域内に侵入した人体や物体をレーザスキャナLSが検知したときに、レーザスキャナLSのOSSD信号がON状態からOFF状態に切り替わることにより、AGVを停止させるための領域である。第1、第2の警告領域WR1、WR2は、当該領域内に侵入した人体や物体をレーザスキャナLSが検知したときに、レーザスキャナLSのWARNING信号がON状態からOFF状態に切り替わることにより、侵入者や侵入物体に対して警告を行うための領域である。
【0089】
この第3の実施例においても、前記第1、第2の実施例と同様に、コンピュータ1によるプログラム処理を手動つまり操作者による手入力に切り替える選択を行うか否かについて判断するステップが設けられており、コンピュータ1の自動処理により設定された安全距離を手入力で変更することにより、レーザスキャナLSの検出領域PRの変更が可能になっている。
【0090】
コンピュータ1の自動処理(および操作者の手入力処理)により作成されて保存されたレーザスキャナLSの検出条件は、前記第1、第2の実施例と同様にして、レーザスキャナLSに設定される。すなわち、コンピュータ1とレーザスキャナLSをUSBケーブルで接続することにより、コンピュータ1に保存されたレーザスキャナLSの検出条件をレーザスキャナLSにインポートして設定処理を行う、または、コンピュータ1にSDカード10Aを挿入して(
図5参照)、コンピュータ1に保存されたレーザスキャナLSの検出条件をSDカード10Aに書き込んだ後、SDカード10AをレーザスキャナLSに読み込ませることにより、レーザスキャナLSの検出条件をレーザスキャナLSに設定する。
【0091】
〔第1の変形例〕
前記第1および第2の実施例に示したフローチャートは、本発明によるセンサの検出条件設定方法を実行するためのフローチャートの一例を示しており、より細かな処理や円滑な処理のためのステップの追加や変更等は適宜可能である。たとえば、操作者による判断や修正のためのステップを追加する、ロボットが保持するワークの大きさや長さを条件として加えることによって、安全距離を変更するステップを追加する等である。
【0092】
〔第2の変形例〕
前記第1ないし第3の実施例では、センサの作動データ/センサデータとして、レーザスキャナLSの応答時間(および位置データ)を読み込むようにした例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。センサの作動データ/センサデータとしては、レーザスキャナLSの応答時間(および位置データ)に加えて、レーザスキャナLSの設置面に対する検出面の上下方向の傾き(すなわち、設置面に対して検出面が仰角/俯角を有している場合)、レーザスキャナLSのスキャニング角、またはレーザスキャナLSの設置面内での左右の傾き(つまり振れ)等を含むようにしてもよい。
【0093】
〔第3の変形例〕
前記第1および第2の実施例では、ロボットとして垂直多関節ロボットを例にとって説明したが、本発明は、スカラロボットやパラレルリンクロボット等のその他のロボットに適用するようにしてもよい。また、本発明は、人と協働して作業を行う協働ロボットにも適用可能である。
【0094】
〔第4の変形例〕
本発明が適用される機械としては、前記第1、第2の実施例および前記第3の変形例に示すようなロボットや、前記第3の実施例に示すようなAGV等の自律移動体には限定されず、本発明は、その他の機械全般に適用され得る。
【0095】
〔第5の変形例〕
前記第1ないし第3の実施例では、センサとしてレーザスキャナを例にとって説明したが、本発明が適用されるセンサは、レーザスキャナに限定されない。たとえば、3Dライダー(3D-LiDAR(light detection and ranging))、CMOSエリアセンサ等のエリアセンサ、イメージセンサ、ミューティング機能を付加したライトカーテン等でもよい。
【0096】
〔第6の変形例〕
前記第1ないし第3の実施例では、本発明によるセンサの検出条件設定方法が単一のコンピュータ1で実行される例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。ロボットRに対して動作条件を教示・設定するティーチングペンダント等のティーチング機器で実行されるようにしてもよい。
【0097】
〔その他の変形例〕
上述した各実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【0098】
〔他の適用例〕
前記各実施例および前記各変形例では、本発明が適用される分野として、製造業(つまりファクトリー・オートメーション(FA))の分野を例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、本発明は、建設業や土木業、運輸業、運送業、医療業、流通業、飲食業、食品業等の分野にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、機械に対する接近体の接近を検出するためのセンサの検出条件設定方法に有用である。
【符号の説明】
【0100】
1: コンピュータ(操作端末)
10A: SDカード(記録媒体)
R: ロボット(機械)
LS: レーザスキャナ(センサ)
S: 安全距離
Tp: 応答時間
PR: 検出領域
X0、Y0: オフセット量
S1: 動作データ読込みステップ(機械動作データ読込みステップ)
S1’: 機械データ読込みステップ
S2: 作動データ読込みステップ(センサ作動データ読込みステップ)
S2’: センサデータ読込みステップ
S3、S3’: 検出条件作成ステップ
S4、S4’: 検出条件設定ステップ
T1: 動作領域表示ステップ(表示ステップ)
T7’: 非検出領域生成・表示ステップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【文献】特開2017-205858号公報(段落[0023]~[0024]、[0048]および
図1参照)
【文献】特開2019-10704号公報(段落[0018]および
図1参照)