(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】地図変換システム、及び地図変換プログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20240613BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20240613BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240613BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2020102656
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】三舩 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 正人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 康如
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 貴文
(72)【発明者】
【氏名】松尾 享
【審査官】宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-291540(JP,A)
【文献】特表2018-522297(JP,A)
【文献】特開2017-129413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0164521(US,A1)
【文献】特開2020-020206(JP,A)
【文献】特開2015-144013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00-29/14
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元BIMデータは建物の内部構造及び構造物の属性情報が定義済みの空間を表す三次元の立体モデルの図面データであり、
前記三次元BIMデータと、移動体の種類に応じた所定の個体情報とに基づいて、
SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を利用した自己位置推定を用いたシミュレーション
を行い、
当該シミュレーションにおいて、前記移動体の種類及び前記個体情報に応じたエージェントを作成し、
当該シミュレーションにおいて、前記三次元BIMデータの空間全体を前記エージェントで走査し、前記移動体に対応する環境地図を作成することにより、前記移動体の移動可能経路を規定した二次元地図又は三次元地図
の何れかである作成された環境地図を取得する、
地図変換システム
であって、
前記シミュレーションの走査において前記エージェントと前記三次元BIMデータの構造物との高さ方向の衝突であって前記移動体の種類及び前記個体情報によって異なる衝突を反映することを含む、
地図変換システム。
【請求項2】
前記個体情報は、前記移動体の種類に対応する、センサの位置、体格、及び移動形態の何れかの情報を少なくとも一つ含む請求項1に記載の地図変換システム。
【請求項3】
三次元BIMデータは建物の内部構造及び構造物の属性情報が定義済みの空間を表す三次元の立体モデルの図面データであり、
前記三次元BIMデータと、移動体の種類に応じた所定の個体情報とに基づいて、
SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を利用した自己位置推定を用いたシミュレーション
を行い、
当該シミュレーションにおいて、前記移動体の種類及び前記個体情報に応じたエージェントを作成し、
当該シミュレーションにおいて、前記三次元BIMデータの空間全体を前記エージェントで走査し、前記移動体に対応する環境地図を作成することにより、前記移動体の移動可能経路を規定した二次元地図または三次元地図
の何れかである作成された環境地図を取得する、
処理をコンピュータに実行させる地図変換プログラム
であって、
前記シミュレーションの走査において前記エージェントと前記三次元BIMデータの構造物との高さ方向の衝突であって前記移動体の種類及び前記個体情報によって異なる衝突を反映することを含む、
地図変換プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の経路を規定するための地図の取得に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場において、移動体であるロボットの位置推定を精緻に行い、ロボットの作業により施工作業を自動化する技術が進展している。例えば、建設現場であっても自己の位置を推定するロボットの位置推定に係る技術が知られている(例えば、特許文献1)。この技術では、計測可能な施工対象物の施工データから抽出してマッピング情報を得て、計測データと、マッピング情報とに基づいて、空間内における自己位置を算出している。
【0003】
また、移動空間内のレイアウトを変更しても容易に適用でき、導入コストが小さく、さらに、高速且つ正確に自己位置認識に係る技術が知られている(例えば、特許文献2)。移動体は自分の位置を推定し、指定された目的地まで自律的に移動制御可能として、移動体の位置を安定的に得る技術が知られている(例えば、特許文献3)。
【0004】
また、視覚的情報を用いた移動体装置のローカリゼーションに関する技術が知られている(例えば、特許文献4)。この技術では、コンピューティングシステムにおいて、各エリア記述ファイルは、エリアにある第1の移動体装置が検出する空間的特徴の点群を表わしている。また、フィードバックデータは、エリア中にある間に、ローカリゼーションエリア記述ファイルが表わす空間的特徴のうち1つ以上が第2の移動体装置によって検出されたか否かを同定している。
【0005】
また、経路生成に係る技術として、作業を情報に含んだ自律移動経路を自動的に生成して経路移動を実行する経路生成に係る技術が知られている(例えば、特許文献5)。この技術では、ノード要素とコネクタの探索から、ロボットの通過するコネクタのリストを生成することにより経路生成を行っている。また、Graph-based SLAM技術を改良することで比較的に誤差の小さい経路データを生成する技術が知られている(例えば、特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-164966号公報
【文献】特開2010-66934号公報
【文献】特開2019-125354号公報
【文献】特表2018-519558号公報
【文献】特開2006-259963号公報
【文献】特開2018-84995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1~6に記載の技術によれば、実空間におけるロボットの自己位置を推定し、また、ロボットが作業するための経路を生成できる。しかし、ロボットによっては、自己位置を推定したとしても、予め想定した経路を通過できない等、不具合が生じる。これは、ロボットの種類によっては三次元地図上の移動可能範囲が異なるため、一律に移動可能範囲を規定した三次元地図を元に経路を生成しても、全てのロボットに一律に同様の自己位置推定、及び経路を適用できないからである。また、個々のロボットによっても効率的な経路は異なる。
【0008】
本発明は上記事実を考慮して、建物内における移動体の精緻な制御を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の地図変換システムは、予め内部構造及び構造物の属性情報が処理された空間を表す三次元BIMデータと、移動体の種類に応じた所定の個体情報とに基づいて、自己位置推定を用いたシミュレーションにより、前記移動体の移動可能経路を規定した二次元地図または三次元地図を取得する。これにより、建物内における移動体の精緻な制御を可能とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建物内における移動体の精緻な制御を可能とする、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】環境地図を取得する過程のイメージ図である。
【
図2】ロボット管理プラットフォームのイメージ図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る地図変換システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】記憶部に格納されるロボットの種類ごとの個体情報の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る地図変換装置における図面変換処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る地図変換装置における動作制御処理を示すフローチャートである。
【
図7】ある空間に各種障害物が配置された環境地図の一例を示す図である。
【
図8】人型歩行ロボットの移動の経路シミュレーションを行った場合の一例を示す図である。
【
図9】四輪駆動ロボットの移動の経路シミュレーションを行った場合の一例を示す図である。
【
図10】ドローンの移動の経路シミュレーションを行った場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の地図変換システムについて説明する。
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明は、三次元BIM(Building Information Modeling)データ(以下、単にBIMデータと記載する)とロボットの自己位置推定とによって、ロボットの体躯又は姿勢に応じて移動可能な経路を規定した地図を取得する。これにより、建物内におけるロボットの精緻な制御を可能とする。ここで本実施形態におけるロボットは、作業用ロボット、監視用ドローン等を含む移動体を指す。BIMデータとは、建物の内部構造及び構造物の属性情報が処理された空間を表す三次元の立体モデルの図面データである。建築設計の分野では、BIMデータの活用が進んでおり、建築設計を行う際、設計対象の建物の3次元モデルとしてBIMデータが作成される。ここで、BIMデータにおいて、ロボットがどのように移動可能であるかは未知であり、ロボットの種類ごとに移動可能範囲は異なる。
【0014】
そこで、本発明の実施形態では、ロボットの種類ごとに、自己位置推定を用いたシミュレーションにより、ロボットの移動可能経路を規定した環境地図を取得する。環境地図は、二次元地図又は三次元地図の何れかとして取得する。二次元地図であってもX軸Y軸の移動可能範囲は規定されるため制御は可能である。つまり、本実施形態ではBIMデータをロボットの移動可能経路を規定するように変換した環境地図を取得して、ロボットの制御に活用する。
【0015】
図1は、環境地図を取得する過程のイメージ図である。本実施形態では
図1に示すように、BIMデータを元に、ロボットの種類ごとにシミュレーションを行って、ロボットの種類ごとの環境地図を取得する。
【0016】
シミュレーションにおける自己位置推定には、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を利用する。SLAMとは、ロボットのセンサで周辺の環境を認識すると同時に、自己の位置及び姿勢を精度よく推定する技術であり、自己の位置を推定すると同時に環境地図を生成する。SLAMにおいては、ロボットは複数のセンサを組み合わせて環境認識を行う。センサはロボットによって様々であるが、測距センサ、カメラ、ジャイロセンサ、磁気センサ、加速度センサ、レーダーセンサ等を用いる。本実施形態では、SLAMによる自己位置推定をシミュレーション環境上で行う。シミュレーション環境にBIMデータとロボットの個体情報とを与えてシミュレーション上を行うことで、実際に建設現場でロボットを走行させた場合と同様の自己位置推定の結果、及び環境地図が生成できる。本実施形態で実環境でなくシミュレーション環境でSLAMを利用するのは動作エミュレートの高速化が可能だからである。
【0017】
このようにロボットの種類ごとに環境地図を作成する必要性について説明する。例えば、BIMデータから単純に構造物の存在する箇所を移動不可能な空間と規定した平面的な二次元の地図を取得したとする。このようにして取得した二次元の地図は、ロボットの移動可能範囲を正しく反映した地図とはいえない。なぜならば、構造物の高さ方向、突起等と、ロボットとの衝突が考慮されていないからである。このような二次元の地図を元に経路を生成しても実際のロボットの移動可能範囲と異なってしまう。また、BIMデータを三次元地図として捉える場合でも、空間の中の構造データだけが与えられている一義的な構造を示すデータであり、これだけでは、単に構造物の配置されていない空間に経路を生成することしかできない。
【0018】
一方、ロボットの種類ごとに地図上の移動可能範囲、つまり移動可能な経路は異なってくる。なぜならば、ロボットの種類ごとに、センサ位置及び範囲、体躯(走行型の車輪付きロボットであれば車幅、車高、アームなど)、姿勢、及び移動形態(路面走行、飛行など)といった個体情報が異なるからである。例えば、単純な例では、路面走行するロボットは路面に構造物又は資材が配置されている場所は通行できないが、飛行型のロボットであれば通行可能である。また数センチ程度の段差であれば通行可能であっても、10センチ以上の高さがある場合は通行できない、など様々な状況が想定され得る。よって、ロボットの種類ごとに構造物の検知、衝突等を考慮してシミュレーションを行い、移動可能範囲を与える必要がある。
【0019】
ここでシミュレーションに活用するロボット管理プラットフォームについて説明する。
図2はロボット管理プラットフォームのイメージ図である。
図2に示すように、ロボット管理プラットフォームは、クラウド環境でロボットの管理を行うためのプラットフォームである。ロボット管理プラットフォームにはロボットを管理するための機能を実行するプログラムが各種モジュールとして実装されており、モジュールを適宜連携させて必要な処理を行う。これによりロボット管理プラットフォームは、ロボットによる施工作業のオートメーション化を実現する。
図2に示したモジュールの一覧はあくまで機能的な手段の一例を示しており、これらの例に限定されない。このようなロボット管理プラットフォームを活用することにより、煩わしいロボット操作のための設定作業などを極力なくすことに繋がる。また、施工対象のBIMデータをもとにロボットの自己位置を推定することで、現場担当者はBIMデータを参照してロボットの指示ができるようになるため、直感的な操作を現場担当者に提供できる。また、遠隔操作におけるロボットの状態監視など、施工時に必要な機能をプラットフォームのサービスとして展開できる。
図2において、本実施形態の手法に関連するモジュールとしては、「SLAM・BIMデータ連携」、「シミュレーション環境」、及び「経路シミュレーション」等が挙げられる。本実施形態では、「シミュレーション環境」で「SLAM・BIMデータ連携」を行うことにより環境地図を生成する。また、生成した環境地図を用いてロボットの実際の「経路シミュレーション」を行うようにする。
【0020】
以上のように本実施形態では、一義的な空間情報のみが規定されたBIMデータを元にシミュレーション環境を構築し、シミュレーションを行う。シミュレーションでは、ロボットの種類ごとの平面方向及び高さ方向の空間認識を行い、ロボットの種類に応じて移動可能範囲を既定した環境地図を取得する。移動可能範囲を既定した環境地図は、ロボットの種類に係る属性情報に対応した移動可能範囲が既定される。つまり本実施形態によればロボットの種類に応じた多義的な環境地図を獲得できる。
【0021】
シミュレーションにおいて考慮する事項について、ロボットの特定の種類を例に説明する。例えば、ごみ収集を目的とする四輪駆動ロボットの場合、シミュレーション環境において、かき集めたごみを集積する場所、及び作業終了後に停止する位置を設定する必要がある。また搬送を目的とした四輪駆動ロボットの場合、材料に取り付けられたQRコード(登録商標)を読み込み自動で搬送先(エリア)を取得する作業が必要である。また、材料ヤードに決められた列に材料パレットを整列する作業が必要である。シミュレーションでは、これらの必要な作業及び作業に係る制御を、ロボットの種類ごとに個体情報として考慮する必要がある。また、歩行又は走行可能な傾斜路の斜度、通過可能な段差、飛行体の場合に飛行可能高さ等も個体情報として考慮される必要がある。
【0022】
図3は、本発明の実施形態に係る地図変換システムの構成を示すブロック図である。
図3に示すように、地図変換システム100は、地図変換装置110と、端末140と、複数のロボット150の各々(150A~150C)とが、ネットワークNを介して接続されている。ネットワークNは、例えば、インターネット回線、又は公衆無線LAN等である。以下、制御対象のロボット全般について指す場合には、単にロボット150と記載する。
【0023】
端末140は、各種担当が操作する端末であり、地図変換装置110の処理に必要な入出力を行う。ここでの各種担当は上述のロボット管理プラットフォームに当てはめられる。例えば、環境地図の取得に係る担当であれば「機材管理担当者」、ロボット150の個別の動作制御に係る担当であれば「現場担当者」である。端末140のログイン時に各種担当に応じた権限が振り分けられているが、地図変換システム100の主たる処理でないためここでは説明は省略する。本実施形態では、端末140により、BIMデータの入力、各種ロボットの個体情報の入力、BIMデータの対象とするロボット150の種類の入力、環境地図の確認、及びロボットの制御入力データの入力等を行う。ロボットの制御入力データとは、例えば目的地、運搬対象等を含む情報である。
【0024】
ロボット150は、環境地図の取得の対象とするロボットである。ロボット150は、上述したシミュレーション環境にエージェントとして種類ごとに実装されており動作エミュレートが可能であるとする。また、施工現場の実環境においては、生成された制御情報に従って動作する。
【0025】
地図変換装置110は、通信部112と、変換部114と、動作制御部116と、記憶部120とを含んで構成されている。また、地図変換装置110は、CPUと、RAMと、各処理部を実行するためのプログラム及び各種データを記憶したROMと、を含むコンピュータで構成することができる(図示省略)。本実施形態の地図変換装置110は、上述した
図2のロボット管理プラットフォームの一部の機能をモジュール化して構築したサーバであり、各機能部は機能の一例である。
【0026】
通信部112は、端末140及びロボット150との通信により各種データの送受信を行う。例えば、端末140からBIMデータ、及びロボットの種類ごとの個体情報を受け付け記憶部120に格納する。また、BIMデータの対象とするロボット150の種類を受け付ける。また、取得した環境地図を端末140に送信する。また、制御対象のロボット150について生成した制御情報を端末140及び当該ロボット150に送信する。
【0027】
記憶部120には、BIMデータ、ロボット150の種類ごとの個体情報が格納される。また、変換部114により取得された、ロボット150の種類ごとの環境地図が格納される。また、動作制御部116により生成された、制御対象のロボット150の制御情報が格納される。
図4は、記憶部120に格納されるロボット150の種類ごとの個体情報の一例を示す図である。
図4に示すように、個体情報は、ロボットの種類を示す種別、縦幅(h)及び横幅(w)のサイズ、備えられたセンサ情報等である。また、個体情報には、ロボットの種類に応じた必要な作業、作業に係る必要な制御の情報も含まれる。移動形態が路面であれば路面を走行して作業する四輪駆動ロボット等であり、移動形態が飛行であれば所定の高さの空間を飛行する飛行タイプのロボット(ドローン)である。センサ情報は、ロボットが備えるセンサの数だけ情報を持つ。センサ情報の一例としては、センサの種類(測距センサ、カメラ等)、センサ位置、センサ範囲等であるが、これ以外の情報を含んでもよい。センサ情報の一例として、掃除を目的とする四輪駆動ロボット(以下、掃除用ロボット)の例を説明する。例えば、掃除用ロボットはセンサ情報として、レーザースキャナ、及びバンパーセンサを有する。レーザースキャナは周囲の壁及び障害物を検出するセンサであり、レーザースキャナを用いることで、掃除する領域の四隅に置かれた反射マーカーを検出することにより掃除領域を判断できる。また、掃除用ロボットは反射マーカーで囲われた掃除領域内のゴミが全て掃除できるような経路で掃除領域内を移動するため、移動経路は掃除領域内に自動生成できる。バンパーセンサは、障害物に接触したことを検出するセンサであり、掃除領域内の障害物を検知して回避する。以上のようなロボットの種類ごとに与えられる個体情報を組み合わせてシミュレーションは行われる。
【0028】
変換部114は、記憶部120のBIMデータと個体情報とに基づいて、自己位置推定を用いたシミュレーションにより、環境地図を取得する。
【0029】
変換部114において環境地図を取得するまでの変換部114の処理工程について説明する。変換部114では、まず対象とするBIMデータを記憶部120から取得し、BIMデータによるシミュレーション環境を構築する。対象とするBIMデータは環境地図が必要な施工現場のデータである。次に取得したBIMデータについて、端末140から当該BIMデータの対象とするロボット150の種類を受け付け、取得対象(N種)とする。ここでの取得対象とは、ロボット150の全ての種類のうち、取得したBIMデータについて環境地図の取得する必要があるロボット150の種類を指す。このようにBIMデータに応じて対象のロボット150の種類を定めるのは、施工現場において必要なロボット150の種類が異なる場合が想定されるからである。次に、N種の取得対象について、取得対象ごとにシミュレーション環境におけるエージェントを作成する。エージェントの作成には記憶部120の個体情報を用いる。作成したエージェントをシミュレーション環境の任意の初期位置に配置し、空間全体を走査するように自己位置推定を行いながら環境地図を更新することを、空間全体の走査が完了するまで繰り返す。シミュレーションにおいては、個体情報に応じたエージェントとBIMデータの構造物の高さ方向の衝突を反映する。高さ方向の衝突について、一例として走行タイプの場合と飛行タイプの場合とを例に説明する。走行タイプのロボットの場合、空間に所定の高さ以上の構造物が存在する場合には構造物と衝突し、移動できない領域として環境地図が更新される。一方、飛行タイプのロボットの場合、所定の高さ以上の構造物があったとしても当該構造物の上方の空間にサイズよりも大きい空間があれば、構造物との衝突を回避し、移動できる領域として環境地図が更新される。最終的な環境地図を取得し、記憶部120に格納する。格納と共に該当の端末140(機材管理担当者が操作する端末)に出力するようにしてもよい。変換部114は以上の処理工程により環境地図を取得する。
【0030】
動作制御部116は、動作制御に係る端末140(現場担当者が操作する端末)から受け付けた制御対象のロボット150の制御入力データと、当該ロボット150の種類に対応した環境地図とに基づいて、ロボット150の制御情報を生成する。制御入力データにおける目的地までの経路に複数の環境地図が含まれている場合には、複数の環境地図を用いて制御情報を生成する。生成した制御情報は端末140及び当該ロボット150に送信する。ロボット150は制御情報に従って動作する。制御情報は、当該ロボット150の種類に対応した環境地図を用いて、制御入力データに含まれる目的地までの経路シミュレーション及び必要作業工程を含む情報として生成される。経路シミュレーションの事例の具体例については後述する。
【0031】
ここで動作制御に係る端末140では表示インターフェースにおいて、ロボット150の制御情報における環境地図上の経路の確認、及びリアルタイムな状態監視が可能である。表示インターフェースには様々な態様が想定され得る。例えば、環境地図上の経路について二次元的な表示又は三次元的な表示を切り替えられる表示インターフェースとしてもよい。また、表示インターフェースに目的地までの推定到達時間の表示、状態監視に応じた進行状況の表示等をしてもよい。
【0032】
次に、本発明の実施形態の地図変換装置110の作用について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る地図変換装置110における図面変換処理を示すフローチャートである。CPUがROMからプログラム及び各種データを読み出して実行することにより、図面変換処理が行なわれる。CPUが、地図変換装置110の各部として機能する。なお、BIMデータ、及びロボットの種類ごとの個体情報は記憶部120に予め格納されているとする。
【0033】
ステップS100では、変換部114が、対象とするBIMデータを記憶部120から取得し、BIMデータによるシミュレーション環境を構築する。
【0034】
ステップS102では、変換部114が、取得したBIMデータについて、端末140から当該BIMデータの対象とするロボット150の種類(N種)を受け付ける。
【0035】
ステップS104では、変換部114が、取得対象nのロボットの種類を設定する(取得対象nの初期値はn=1)。
【0036】
ステップS106では、変換部114が、取得対象nについて、記憶部120の個体情報を用いてシミュレーション環境におけるエージェントを作成する。
【0037】
ステップS108では、変換部114が、作成したエージェントをシミュレーション環境の任意の初期位置に配置する。
【0038】
ステップS110では、変換部114が、空間全体を走査するようにエージェントの自己位置推定を行いながら環境地図を更新することを、空間全体の走査が完了するまで繰り返す。シミュレーションにおいては、一例として、個体情報に応じたエージェントとBIMデータの構造物との高さ方向の衝突を反映する。
【0039】
ステップS112では、変換部114が、最終的な環境地図を取得し、記憶部120に格納する。
【0040】
ステップS114では、変換部114が、取得対象n≧Nであるか否かを判定する。条件を満たす場合は処理を終了し、条件を満たさない場合はステップS104に戻りn=n+1とカウントアップして取得対象nを更新し処理を繰り返す。
【0041】
次に実環境においてロボット150の動作を制御する場合の作用について説明する。
図6は本発明の実施形態に係る地図変換装置110における動作制御処理を示すフローチャートである。
【0042】
ステップS200では、通信部112が、動作制御に係る端末140から送信された制御対象のロボット150の制御入力データを受け付ける。
【0043】
ステップS202では、動作制御部116が、制御入力データと、当該ロボット150の種類とに対応した環境地図を記憶部120から取得する。なお、制御入力データにおける目的地までの経路に複数の環境地図が含まれている場合には複数の環境地図を取得する。
【0044】
ステップS204では、動作制御部116が、制御入力データと、取得した環境地図とに基づいて、制御情報を生成する。
【0045】
ステップS206では、動作制御部116が、生成した制御情報を端末140及び当該ロボット150に送信する。ロボット150は受信した制御情報に従って動作する。
【0046】
ここで、ロボットの種類ごとの経路シミュレーションの事例について
図7~
図10を参照して説明する。なお、経路シミュレーションの場合を例に説明するが、環境地図の生成のためのシミュレーションにおいても同様に考慮される。
【0047】
図7は、ある空間に各種障害物が配置された環境地図の一例を示す図である。
図8~
図10は、ロボットの種類として、人型歩行ロボット、四輪駆動ロボット、及びドローンについて、
図7の三次元BIMデータの空間を移動する経路シミュレーションを行った場合の一例である。空間には始発地点及び目的地点が設定されており、障害物が配置されている。配置される障害物としては、例えば、高さ(h)が定められた障害物、下部の空間のみ通行可能な障害物、通行不可の障害物がある。各障害物には移動における制約が設けられている。例えば、高さが定められた障害物は、3.0m、0.5mがあるが、これ以上の高さを飛行可能なドローンのみが移動できる。また、下部の空間のみ通行可能な障害物とは、四輪駆動ロボットが通行可能であることを示す。また、通行不可の障害物の間は狭く配置されており、当該配置の間隔であれば人型歩行ロボットが移動可能である。また、目的地点の手前には段差があり、人型歩行ロボットはまたいで移動が可能であるが、四輪駆動ロボットはスロープからの移動が必要である。
【0048】
図8は、人型歩行ロボットの移動の経路シミュレーションを行った場合の一例を示す図である。
図8に示すように、人型歩行ロボットの場合は始発地点から通行不可の障害物の間を通りながら目的地点まで移動する経路が経路シミュレーションにおいて求められる。経路シミュレーションでは、人型歩行ロボットの個体情報としては、例えば、サイズ、及び移動形態が組み合わせて用いられる。経路シミュレーションにおいてこれらの個体情報の組み合わせは、人型歩行ロボットの横幅のサイズであれば通行不可の障害物の間を通行可能である点、及び移動形態が歩行であるため段差をまたぐことが可能であるという点として反映される。障害物との衝突という観点では、経路シミュレーションには、通行不可の障害物の間を通る際の衝突、下部の空間のみ通行可能な障害物との衝突、及び段差をまたぐ際の衝突等が反映される。
【0049】
図9は、四輪駆動ロボットの移動の経路シミュレーションを行った場合の一例を示す図である。
図9に示すように、四輪駆動ロボットの場合は始発地点から通行不可の障害物の間を避け、下部の空間のみ通行可能な障害物を通り、スロープを経由して目的地点まで移動する経路が経路シミュレーションにおいて求められる。経路シミュレーションでは、四輪駆動ロボットの個体情報としては、例えば、サイズ、及び移動形態が組み合わせて用いられる。経路シミュレーションにおいてこれらの個体情報の組み合わせは、四輪駆動ロボットのサイズの高さであれば下部のみ通行可能な障害物は経由可能である点、横幅のサイズでは通行不可の障害物の間を通行できない点として反映される。また、移動形態が路面走行であるため段差をまたぐことができずスロープを経由する必要があるという点として反映される。
【0050】
図10は、ドローンの移動の経路シミュレーションを行った場合の一例を示す図である。
図10に示すように、ドローンの場合は始発地点から通行不可の障害物の間を避け、高さが定められている障害物の上空を通り目的地点まで移動する経路が経路シミュレーションにおいて求められる。経路シミュレーションでは、ドローンの個体情報としては、例えば、サイズ、センサ、及び移動形態が組み合わせて用いられる。経路シミュレーションにおいて、サイズ及びセンサの組み合わせは、狭い範囲での制御が困難である点等が反映される。また、移動形態が飛行であるため所定の高さ以下の障害物の上空の飛行が可能である点が反映される。
【0051】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る地図変換システム100によれば、建物内における移動体の精緻な制御を可能とする。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、地図変換システムに動作制御部を含む態様について説明したが、これに限定されるものではなく、他の動作制御用のシステムを別途構築し、他のシステムによって動作制御を行うようにしてもよい。
【0054】
また、地図変換システムが対象とする環境は建設現場に限らず、例えば供用中の建物内など、BIMデータが付随した空間であれば同様に適用可能である。
【0055】
また、対象とするロボットは上述した例に限らず、例えば搭乗型の自動搬送機であってもよい。一例としてパーソナルモビリティ、及び電動車いすなど、を上述したロボットとして本実施形態に係る手法を適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
100 地図変換システム
110 地図変換装置
112 通信部
114 変換部
116 動作制御部
120 記憶部
140 端末
150 ロボット