(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】塗材仕上げ工法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20240613BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240613BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240613BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20240613BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240613BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240613BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240613BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240613BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20240613BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20240613BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240613BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240613BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D1/36 Z
B05D3/00 F
B05D3/12 B
B05D5/06 104C
B05D7/24 302P
B05D7/24 303A
C09D5/00 D
C09D5/02
C09D7/43
C09D7/47
C09D7/61
C09D133/00
E04F13/02 A
(21)【出願番号】P 2020117592
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松崎 亮弥
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐司
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-111906(JP,A)
【文献】特開2009-263425(JP,A)
【文献】特開2001-106179(JP,A)
【文献】特開2015-181968(JP,A)
【文献】登録実用新案第3223728(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
E04F13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に必要によりシーラーを塗付して乾燥させ、この上に、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:2.8~15.0である水系塗材組成物を、
厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝にて、1m
2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上に前記水系塗材組成物を、前記金鏝にて1m
2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上にアクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:1.3~2.7である砂壁状塗料組成物を、
1m
2当り0.2kg~0.4kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝又はヘラにて、前記鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させ、
研磨材の粒度がP60~P150の研磨手段にて塗材表面を研磨し、
テトラエトキシシランとエチルポリシリケートを含むトップコート組成物を塗付して仕上げることを特徴とする塗材仕上げ工法。
【請求項2】
請求項1記載の塗材仕上げ工法にて使用した水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の各々に含まれる有機質分の合計重量部が、これらの組成物の合計重量部に対して7.0~8.5重量%であることを特徴とする請求項1記載の塗材仕上げ工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁に0.7~1.5mm厚に塗付し、外観上セメントモルタルを塗付してそのまま仕上げた様な無機質なテクスチュアに仕上げることが可能な塗材仕上げ工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁を左官工によるモルタル塗り仕上げ工法で仕上げるにあたって、良好な鏝塗り作業性と優れたモルタル仕上げ面の形成を両立出来る鏝塗り作業性が向上したセメント組成物が提供されている(特許文献1)。
【0003】
該セメント組成物は、セメント、細骨材、保水剤及び増粘剤を含み、保水剤がアミローゼとアミロペクチンとを含む天然多糖類を加工した化工澱粉であり、セメント100質量部に対して保水剤が0.02~0.18質量部であることを特徴としている。
【0004】
しかしながら、該セメント組成物にはセメントが多く含まれているため、降雨等により仕上げ表面より雨水等が浸透した際には、該表面部分に白華(エフロレッセンス)が生じる場合があるという課題があり、また該セメント組成物はセメントによる水和反応により硬化するため、該硬化層は脆さを有していて、建物の地震や風圧、車両の通過等による振動や該振動により生じた下地のひび割れに追従できない場合があり、仕上げ面にクラックが生じる場合があるという課題がある。
【0005】
これに対して、下地の経時変化による割れが生じることが無く、セメントを使用しない水系塗材組成物及びその施工方法並びにそれによる壁構造が提案されている(特許文献2)。
【0006】
該水系塗材組成物は、合成樹脂エマルジョン、粘土、シルト、砂、水からなる、2.0kg/m2の塗布でJISA6909の吸放湿量が70以上となる水系塗材組成物であり、揮発分を除いた重量を100重量%として、合成樹脂系エマルジョンの固形分6~10.14重量%、粘土およびシルト26~35重量%、砂55~65重量%であり、塗布乾燥後、ひび割れが生じることを特徴とする水系塗材組成物であり、また、その施工方法は、該水系塗材組成物を、JISA6909に規定される合成樹脂エマルジョン系仕上塗材で凹凸を有する塗膜形成後、塗布することを特徴とする壁面施工方法であるが、該水系塗材組成物とその施工方法によって得ることが出来る仕上がり状態は、あくまで土壁風のテクスチュアである、という課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-269501号公報
【文献】特許第5580509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、建物の外壁を左官工によるモルタル塗り仕上げと同様なテクスチュアに仕上げると共に、降雨等により仕上げ表面より雨水等が浸透した際にも、該表面部分に白華(エフロレッセンス)が生じることが無く、また建物の地震や風圧、車両の通過等による振動や該振動により生じた下地のひび割れに追従することが可能な塗材仕上げ工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、下地に必要によりシーラーを塗付して乾燥させ、この上に、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:2.8~15.0である水系塗材組成物を、
厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝にて、1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上に前記水系塗材組成物を、前記金鏝にて1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上にアクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:1.3~2.7である砂壁状塗料組成物を、
1m2当り0.2kg~0.4kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝又はヘラにて、前記鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させ、
研磨材の粒度がP60~P150の研磨手段にて塗材表面を研磨し、
テトラエトキシシランとエチルポリシリケートを含むトップコート組成物を塗付して仕上げることを特徴とする塗材仕上げ工法を提供する。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の塗材仕上げ工法にて使用した水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の各々に含まれる有機質分の合計重量部が、これらの組成物の合計重量部に対して7.0~8.5重量%であることを特徴とする請求項1記載の塗材仕上げ工法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗材仕上げ工法は、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの大き目の鏝波に沿って波間隔が1~10mmの細かな鏝ビビリ波が形成された仕上げ表面となる効果があり、また、塗材表面をやや粗めの研磨材粒度を有する研磨手段で研磨することで、砂壁状塗料組成物によって仕上げられた表面のざらつきを無くすと共に、一定量以上の樹脂をバインダーとして含有することによって生じる、所謂、樹脂艶特有の光沢、が消えた無機質なテクスチャとなり、またトップコート組成物はその塗付される下地塗膜である水系塗材組成物又は砂壁状塗料組成物の塗膜内に十分に含侵して硬化するため、その全体の仕上がりは従来のセメントモルタルを塗布してそのまま仕上げた様な無機質の質感を有する仕上げとなる効果がある。
【0012】
また、本発明の塗材仕上げ工法は、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成る水系塗材組成物と、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成る砂壁状塗料組成物及びテトラエトキシシランとエチルポリシリケートを含むトップコート組成物を使用するため、各組成物にはセメントを含んでおらず、このため降雨等が原因で、仕上がった塗膜表面より雨水等が浸透しても、該塗膜表面部分に白華が生じることが無いという効果がある。
【0013】
また、繰り返しになるが、トップコートにテトラエトキシシランとエチルポリシリケートを含むトップコート組成物を塗付して仕上げるため、該トップコート組成物が空気中の水分だけでなく、既に塗付された水系塗材組成物又は砂壁状塗料組成物の塗膜中の微細な水分が硬化剤として作用するであろう状態、つまりは該塗膜に十分に含侵した状態で硬化することで塗膜表面は表面からある程度の範囲で極めて硬くなる効果があり、これにより多くの、生活で使用する汚染物質に対して良好な耐汚染性を有するという効果がある。このため、建物の外壁面、内壁面だけでなく、家具などの天板等の塗装にも使用することが出来る効果がある。
【0014】
さらには、本発明の塗材仕上げ工法は、アクリル樹脂系エマルジョンがバインダーとして配合された水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を使用するため、硬化した塗膜は可とう性があり、建物の地震や風圧、車両の通過等による振動や該振動により生じた下地のひび割れに追従することが出来る、という効果がある。
【0015】
加えて、同様の理由で、塗膜表面が埃や排気ガス等で汚染されにくいという効果がある。
【0016】
さらに言えば、本発明の塗材仕上げ工法に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物には少なくとも増粘剤が配合されているため、下地への施工に当って良好な鏝塗り作業性を有し、熟練した職人でなくても、容易に外観上セメントモルタルを塗付してそのまま仕上げた様なテクスチュアに仕上げることが出来る効果がある。
【0017】
また、請求項2記載の塗材仕上げ工法で仕上げられた塗膜は、水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の各々に含まれる有機質分の合計重量部が、これらの組成物の合計重量部に対して7.0~8.5重量%であり少ないため、結果として内装用仕上げ塗材として要求される不燃性能を有するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の塗材仕上げ工法(後述の実施例1の水系塗材組成物Aと同砂壁状塗料組成物とトップコート組成物)によって仕上げられた塗膜表面(200×260mm)の平面写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明の塗材仕上げ工法は、下地に必要によりシーラーを塗付して乾燥させ、この上に、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:2.8~15.0である水系塗材組成物を、
厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝にて、1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上に前記水系塗材組成物を、前記金鏝にて1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上にアクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:1.3~2.7である砂壁状塗料組成物を、
1m2当り0.2kg~0.4kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝又はヘラにて、前記鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させ、
研磨材の粒度がP60~P150の研磨手段にて塗材表面を研磨し、
テトラエトキシシランとエチルポリシリケートを含むトップコート組成物を塗付して仕上げることを特徴とする塗材仕上げ工法であり、使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物及びトップコート組成物には、上記成分のほか必要に応じて消泡剤や分散剤等を配合することが出来る。
【0021】
まず、本発明である塗材仕上げ工法に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物について説明する。
【0022】
<アクリル樹脂エマルジョン>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を構成するアクリル樹脂系エマルジョンには、アクリル酸エステル系共重合樹脂、酢酸ビニル・アクリル酸エステル系共重合樹脂、シリコン変性アクリル樹脂等のアクリル樹脂系エマルジョンを使用することができる。アクリル樹脂とするアクリル系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、等を使用することが出来る。
【0023】
他の不飽和単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、及びクロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミドや、マレインアミド等のアミド基含有単量体;2-アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、及び3-(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体;その他、酢酸ビニル、塩化ビニル、更には、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート等を使用することが出来る。
【0024】
アクリル樹脂系エマルジョン中の樹脂のガラス転移温度は-30~40℃が好ましい。ガラス転移温度が-30℃未満の場合は仕上がり表面にタックが生じて汚れやすくなり、40℃超の場合は成膜不良となる。本発明の水系塗材組成物又は砂壁状塗料組成物の組成物全体中の樹脂固形分は5.0~20.0重量%が好ましく、5.0重量%未満では粘着性、塗付作業性が低下し、また20.0重量%超では粘度が低下し塗付作業性が低下する。市販のアクリル樹脂系エマルジョンとしては、アクロナールPS743(BASF社製、固形分55重量%)がある。
【0025】
<充填材>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を構成する充填材は、平均粒径D50(重量による積算50%の粒径)が100μm未満のものを言い、組成物の粘度や塗付性の調整を目的として配合し、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、硅砂粉等が使用でき、重質炭酸カルシウムが安価でコスト的負担を軽減させることが出来る。充填材の配合量は水系塗材組成物においては組成物全体に対して3~20重量%、好ましくは4~12重量%であり、3重量%未満では下地の色が透けるなどの隠蔽性が不足し、20重量%超では塗材粘度が高くなって塗付作業性が不良となる。4重量%未満では色調によっては隠蔽性が低下する場合があり、12重量%超では冬季等の低温度下では塗付作業性が低下する傾向にある。
【0026】
砂壁状塗料組成物における充填材の配合量は組成物全体に対して10~25重量%、好ましくは13~21重量%であり、10重量%未満では下地の色が透けるなどの隠蔽性が不足し、25重量%超では塗材粘度が高くなって塗付作業性が不良となる。13重量%未満では色調によっては隠蔽性が低下する場合があり、21重量%超では冬季等の低温度下では塗付作業性が低下する傾向にある。
【0027】
<骨材>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を構成する骨材は、平均粒径D50(重量による積算50%の粒径)が100μm以上のものを言い、仕上がり表面に凹凸を付与することを目的として配合されるが、平均粒径が100μm以上であればその粒子径は任意に選択することができ、例えば硅砂、ガラス、シリカ、タルク、重質炭酸カルシウムなどが使用可能である。市販の平均粒径が200μmの重質炭酸カルシウムとしてはK-250(商品名,旭鉱末(株)製)がある。骨材の配合量は水系塗材組成物においては組成物全体に対して40~60重量%であり40重量%未満では意匠性(塗材の凹凸感)が不足し、60重量%超では作業性が低下する。
【0028】
砂壁状塗料組成物における骨材の配合量は組成物全体に対して20~40重量%であり20重量%未満では意匠性(塗材の凹凸感)が不足し、40重量%超では作業性が低下する。
【0029】
<充填材と骨材の重量比>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物をそれぞれ構成する上記充填材と上記骨材の重量比は、水系塗材組成物においては充填材:骨材=1:2.8~15.0であり、1:2.8未満では塗材として凹凸感の無い仕上がりとなり、15.0超では塗付作業性が不十分となる。同様に砂壁状塗料組成物における充填材:骨材の重量比は、充填材:骨材=1:1.3~2.7であり、1.3未満では砂壁状塗料としての凹凸感が不足し、2.7超では隠ぺい性が低下する。ここでいう「塗材として」と「砂壁状塗料として」の違いであるが、具体的には「塗材として」とは1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量である際、と言い換えることができ、「砂壁状塗料として」とは1m2当り0.2kg~0.4kgの塗付量である際、と言い換えることが出来る。
【0030】
なお、砂壁状塗料組成物においては、充填材と骨材の重量比が、充填材:骨材=1:1.3~2.7となるような、好ましい充填材の平均粒径と骨材の平均粒径の組合わせは、充填材は平均粒径D50が10μmと同20μmとから成り、骨材は平均粒径D50が200μmから成る場合である。
【0031】
<顔料>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を構成する顔料には、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(弁柄)、クロム酸鉛、黄鉛、黄色酸化鉄等の無機系顔料等が使用できるが、中でも酸化チタンは下地の隠蔽性に優れ、白色であるため主たる顔料として使用することが出来る。
【0032】
<増粘剤>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を構成する増粘剤は、鏝塗り作業性や保水性の向上を目的として配合し、水溶性セルロースエーテル、ウレタン変性ポリエーテル、ポリカルボン酸等が使用できる。水溶性セルロースエーテルとしてはhiメトローズ90SH15000(信越化学株式会社製、商品名)がある。増粘剤の配合量は組成物全体に対して0.1~5.0重量%が好ましく、0.1重量%未満では十分な増粘効果が得られず塗材の凹凸模様が不十分となり、5.0重量%超では塗付作業性が低下する。
【0033】
<成膜助剤>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を構成する成膜助剤には、エマルジョンのポリマー粒子の融着を促進し、ポリマーによる均一な皮膜を形成させることを目的で配合し、エチレングリコールジエチルエーテル、ベンジルアルコール、ブチルセロソルブ、エステルアルコール等を使用することが出来る。成膜助剤の配合量は組成物全体に対して0.5~10重量%が好ましく、0.5重量%未満では低温での成膜が不十分となる場合があり、10重量%超では塗材の表面に汚れが付着し易くなる場合がある。
【0034】
次に、本発明である塗材仕上げ工法に使用するトップコート組成物について説明する。
【0035】
本発明に使用するトップコート組成物は、テトラエトキシシランとエチルポリシリケートを含み、エチルポリシリケートは、一般式 SinOn-1(OC2H5)2(n+1)(n=2~6)で表されるシラン化合物である。
【0036】
本発明に使用するテトラエトキシシランの含有量は、トップコート組成物100重量部中、1~10重量部が好ましく、より好ましくは2~8重量部である。1重量部未満又は10重量部超では、塗膜の硬度が不十分となる場合があり、2重量部未満又は8重量部超では塗膜の硬度が不十分となる傾向がある。
【0037】
本発明に使用するエチルポリシリケートは、GPCによる重量平均分子量として100~1000であることが好ましく、より好ましくは150~800である。重量平均分子量が100未満又は1000超では同様に塗膜の硬度が不十分となる場合があり、重量平均分子量が150未満又は800超では、塗膜の硬度が不十分となる傾向がある。
【0038】
エチルポリシリケートの含有量は、トップコート組成物100重量部中、5~30重量部であることが好ましく、より好ましくは10~25重量部である。5重量部未満及び30重量部超では塗膜の硬度が不十分となる場合があり、10重量部未満及び20重量部超では塗膜の硬度が不十分となる傾向がある場合がある。
【0039】
トップコート組成物には、上記テトラエトキシシランとエチルポリシリケートのほかにこれらと相溶性のよい有機溶媒を配合することが出来、さらには消泡剤やレベリング剤等の塗料添加剤を添加することが出来る。
【0040】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールの誘導体、及び、ジアセトンアルコール等が挙げられ、これらの1種、もしくは2種以上が用いられる。さらに、親水性の有機溶媒と併用してトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム等も用いることができる。なお、使用する有機溶媒についてはトップコート組成物を塗付する際に使用するコテバケ等の塗装具の部材等を溶解させないものを使用することが望ましい。
【0041】
トップコート組成物100重量部中の有機溶媒等以外の固形分の含有量は、塗膜硬度の発現及び塗付作業性を良好な状態とするために、6~40重量部が好ましく、より好ましくは8~33重量部である。
【0042】
本発明の塗材仕上げ工法は、モルタル下地、コンクリート下地、PCパネル、ALCパネル、窯業系サイディング下地等の下地に塗付することが出来、十分な付着性を保持するため、各下地に適したシーラーを塗付して乾燥させる。その上で、上記説明により構成される水系塗材組成物を、厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝にて、1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、次にこの上に同水系塗材組成物を、同金鏝にて1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。鏝ビビリ波とは、塗付量が1m2当り0.6kg~1.0kgであるため、実際の施工に当っては金鏝のエッジが立った状態で該金鏝を移動させる態様となり、その際金鏝が振動する状態となって、所謂ビビった状態で塗膜表面が凹凸状となる状態を表したものである。
【0043】
次に砂壁状塗料組成物を、1m2当り0.2kg~0.4kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、同金鏝又は厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成るヘラにて、前記鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させ、次に研磨材の粒度がP60~P150の研磨手段にて塗材表面を研磨する。ここで研磨手段とは、直接的にはJIS R 6251に規定する研磨布、JIS R 6252に規定する研磨紙、JIS R 6253に規定する耐水研磨紙、及びJIS R 6256に規定する研磨ベルトを指すが、研磨材の粒度がP60~P150であれば、どのような形態であっても良いという意義である。
【0044】
最後にトップコート組成物を塗付して仕上げるが、トップコート組成物を塗付する前に上記研磨手段で研磨した塗材表面に研磨粉が付着している場合は、布ウエス等に水を含ませて水拭きして乾燥させるか、高圧空気等にて塗膜表面の研磨粉を除去する。トップコート組成物の塗付する際の塗付量は1m2当り0.02kg~0.07kgで、コテバケ等で2回塗布することが好ましい。詳しくは、1回目は2回目と比較して下地塗膜にやや多く吸い込まれる傾向にあるため、0.04kg~0.07kg程度が好ましく、2回目は1回目と比較して下地塗膜に吸い込まれる量が少ないため、0.02kg~0.04kg程度が好ましい。トップコート組成物は、空気中の水分及び下地塗膜中の水分によって硬化し、塗膜表面の硬度を向上させると共に、例えば生活汚染物質によって塗膜が着色する等、汚染することを防止する。
【0045】
なお、コテバケとはコテバケットとスポンジが一つになった塗装具であり、均等に最後まで途切れず毛抜け等無く綺麗に塗ることができることに特徴があり、本発明ではトップコート組成物を少ない塗付量で均一に塗ることを目的として使用する。したがって、この目的を達することが出来るのであれば、他の塗装具等を使用してもよいのは勿論である。コテバケの市販品としては、ワンタッチコテバケ INNOVA 150mm(ハンディ・クラウン社製)やコテバケ JR-260(アイカ工業株式会社製)がある。
【0046】
以下、実施例にて具体的に説明する。
【実施例】
【0047】
<材料の作製>
表1の配合に従って、実施例の水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を作製した。表1において、アクリル樹脂系エマルジョンはアクロナールPS743(固形分:54~56%、樹脂のガラス転移温度:30℃、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの共重合体、BASF社製、商品名)を使用し、充填剤Aは硅砂粉#300(平均粒径D5025μm、株式会社トウチュウ製、商品名)を、充填材Bは平均粒径D50が10μmの重質炭酸カルシウムBF-200(備北粉化社製、商品名)を、充填材Cは平均粒径D50が20μmの重質炭酸カルシウムSFT-2000(三共製粉製、商品名)を使用し、骨材Aは、東北硅砂7号(比重1.5、平均粒径D50150μm、東北硅砂株式会社製、商品名)を、骨材Bは、平均粒径D50が200μmの重質炭酸カルシウムK-250(旭鉱末社製、商品名)を使用し、顔料には酸化チタンR-820(石原産業株式会社製、商品名)を使用し、増粘剤は水溶性セルロースエーテルhiメトローズ90SH-15000(信越化学株式会社製、商品名)を、成膜助剤はテキサノールCS-12(チッソ株式会社製、商品名)を、使用した。この他には消泡剤及び分散剤を添加したが、これらは水系塗材用の市販品より適宜選択されるものを使用することが出来る。
【0048】
これらの原料を均一に混合分散させ、実施例の水系塗材組成物A、水系塗材組成物B及び砂壁状塗料組成物とした。トップコート組成物としては、ジョリパット JC-35(テトラエトキシシラン5重量部、エチルポリシリケート(重量平均分子量約250)15重量部、有機溶媒80重量部)を用い、水系塗材組成物Aと砂壁状塗料組成物とトップコート組成物を使用して本発明の塗材仕上げ工法の工程により仕上げたものを実施例1、水系塗材組成物Bと砂壁状塗料組成物とトップコート組成物を使用して本発明の塗材仕上げ工法の工程により仕上げたものを実施例2とし、水系塗材組成物Aと砂壁状塗料組成物を使用し、トップコート組成物を塗付しないものを比較例とした。
【0049】
【0050】
実施例の水系塗材組成物A、水系塗材組成物B及び砂壁状塗料組成物及びトップコート組成物(比較例についてはトップコート組成物の塗付無し)を使用して、本発明の塗材仕上げ工法の工程に従い下地に塗付して仕上げ、以下に示す評価項目について具体的に評価した。
【0051】
<意匠性>
下地としてJISA5430規定のフレキシブルボード(150×210mm厚さ10mm)を使用し、シーラーとして固形分40重量%の水系アクリル樹脂シーラーJS-500(商品名,アイカ工業株式会社製)を0.075kg/m2塗布し,温度23℃湿度50%RHで12時間養生する。乾燥後表1の水系塗材組成物A、又はBを厚み0.5mmのステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。次に塗付した材料と同一水系塗材組成物A、又はBを、同ステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。
【0052】
次に、上記砂壁状塗料組成物を、1m
2当り0.3kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、同ステンレス製金鏝にて鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させる。次に研磨材の粒度がP80の研磨紙にて塗材表面を研磨し、その後トップコート組成物を1m
2当り0.05kgの塗付量で塗付し、乾燥後、さらに同トップコート組成物を1m
2当り0.03kgの塗付量で塗付して仕上げた。セメントモルタル塗り仕上げと同等の無機質のテクスチュアに仕上がっているものを○と評価し、そうでないものを×と評価した。
水系塗材組成物Aを使用して仕上げた実施例1の塗膜表面の状態を
図1に示す。
【0053】
<不燃性>
不燃材料認定番号NM-8619に該当するせっこうボード(厚さ12.5mm×縦100mm×横100mm)に下塗材として固形分40重量%の水系アクリル樹脂シーラーJS-500(商品名,アイカ工業株式会社製)を0.075kg/m2塗布し,温度23℃湿度50%RHで12時間養生する。乾燥後表1の水系塗材組成物A、又はBを厚み0.5mmのステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。次に塗付した材料と同一水系塗材組成物A、又はBを、同ステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。
【0054】
次に、上記砂壁状塗料組成物を、1m2当り0.3kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、同ステンレス製金鏝にて鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させる。次に研磨材の粒度がP80の研磨紙にて塗材表面を研磨し、その後トップコート組成物を1m2当り0.05kgの塗付量で塗付し、乾燥後、さらに同トップコート組成物を1m2当り0.03kgの塗付量で塗付して仕上げ、試験板とした。該試験板についてISO5660 Part1に準拠したコーンカロリーメーターを使用した発熱性試験を行った。試験時間は20分、輻射強度は50kW/m2、排気流量速度は24L/secとし、20分間の総発熱量(MJ/m2)を測定し、8MJ/m2以下を○と評価し、8MJ/m2超を×と評価した。
【0055】
<ゼロスパン引張伸び>
下地としてJISA5430規定のフレキシブルボード(100×100mm厚さ10mm)を使用し、当該下地2枚の木口同士を突き付け、その裏面を養生テープで仮止めする。下地のオモテ面にシーラーとして溶剤型塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、表1の水系塗材組成物A、又はBを厚み0.5mmのステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。次に塗付した材料と同一水系塗材組成物A、又はBを、同ステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。
【0056】
次に、上記砂壁状塗料組成物を、1m2当り0.3kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、同ステンレス製金鏝にて鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させる。次に研磨材の粒度がP80の研磨紙にて塗材表面を研磨し、その後トップコート組成物を1m2当り0.05kgの塗付量で塗付し、乾燥後、さらに同トップコート組成物を1m2当り0.03kgの塗付量で塗付して仕上げ、気温23℃湿度50%RHで14日間養生して試験体とした。その後裏面の仮止めの養生テープをはがし、インストロン万能試験機にて、試験体の両端を2mm/分で引張り、突きつけ部にピンホールが発生した距離が0.5mm以上を○、0.5mm未満を×と評価した。
【0057】
<生活物質に対する耐汚染性>
下地としてJISA5430規定のフレキシブルボード(80×265mm厚さ4mm)を使用し、シーラーとして溶剤型塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、表1の水系塗材組成物A、又はBを厚み0.5mmのステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。次に塗付した材料と同一水系塗材組成物A、又はBを、同ステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。
【0058】
次に、上記砂壁状塗料組成物を、1m2当り0.3kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、同ステンレス製金鏝にて鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させる。次に研磨材の粒度がP80の研磨紙にて塗材表面を研磨し、その後トップコート組成物を1m2当り0.05kgの塗付量で塗付し、乾燥後、さらに同トップコート組成物を1m2当り0.03kgの塗付量で塗付して仕上げ、温度23℃湿度50%RHで14日間養生して試験体とした。各試験体の塗膜面にJIS K 6902の耐汚染性試験に準拠し、各種の生活汚染物質を滴下し、滴下16時間後に該生活汚染物質をふき取り評価した。評価は以下の5段階で行い、1以外を良好と判断した。5:乾いた綿布で拭けば汚染物質が除去でき塗膜に変化なし、4:水拭きで汚染物質が除去でき塗膜に変化なし、3:中性洗剤水で汚染物質が除去でき塗膜に変化なし、2:エタノールで汚染物質が除去でき塗膜に変化なし、1:汚染が著しく塗膜につや及び色の変化あり。
【0059】
<引っかき硬度>
上記、ゼロスパン引張伸びを評価した際の試験体を使用し、JIS K 5600-5-4 塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に準拠し、塗膜に欠陥が生じない鉛筆硬度を引っかき硬度とした。
【0060】
<評価結果>
【0061】
評価結果を表2に示す。
【0062】