(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ポリアミドイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240613BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20240613BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20240613BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/14
G02B1/04
G02B5/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020126743
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0090066
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒェ リ
(72)【発明者】
【氏名】パク ミン サン
(72)【発明者】
【氏名】パク サン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジ サン
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-069282(JP,A)
【文献】特開2008-112124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0110554(US,A1)
【文献】国際公開第2018/139392(WO,A1)
【文献】特開2019-105829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08G 73/14
G02B 1/04
G02B 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の光弾性係数が2.0×10
-8m
2/N未満であり、面内複屈折(△n
in)の値は、下記関係式1および2を満たす波長分散性を有する、ポリアミドイミドフィルム
であり、
前記ポリアミドイミドフィルムは、芳香族ジアミン、脂肪族二無水物および芳香族二無水物から選択されるいずれか一つ以上の二無水物、および芳香族二酸二塩化物を含むモノマー混合物から誘導されて重合されたポリアミドイミド樹脂を含み、
前記芳香族ジアミンはビストリフルオロメチルベンジジン(TFMB)であり、
前記二無水物は4,4´-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタリックアンハイドライド(6FDA)または1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(CBDA)であり、
前記芳香族二酸二塩化物はテレフタロイルジクロライド(TPC)またはイソフタロイルジクロライド(IPC)である、ポリアミドイミドフィルム。
[関係式1]
【数1】
[関係式2]
【数2】
前記関係式1および2中、
前記△n
in(450nm)、△n
in(550nm)および△n
in(650nm)は、それぞれ、波長450nm、550nmおよび650nmで測定した面内複屈折値である。
【請求項2】
厚さ方向の複屈折(△n
th)の値が、下記関係式3および4を満たす波長分散性を有する、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
[関係式3]
【数3】
[関係式4]
【数4】
前記関係式3および4中、
前記△n
th(450nm)、△n
th(550nm)および△n
th(650nm)は、それぞれ、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したフィルムの厚さ方向の複屈折値である。
【請求項3】
下記関係式5を満たす、請求項2に記載のポリアミドイミドフィルム。
[関係式5]
【数5】
前記関係式5中、
前記△n
th(450nm)および△n
th(550nm)は、それぞれ、波長450nmおよび550nmで測定したフィルムの厚さ方向の複屈折値である。
【請求項4】
下記関係式6を満たす、請求項2に記載のポリアミドイミドフィルム。
[関係式6]
【数6】
前記関係式6中、
前記△n
th(550nm)および△n
th(650nm)は、それぞれ、波長550nmおよび650nmで測定したフィルムの厚さ方向の複屈折値である。
【請求項5】
波長550nmでの前記面内複屈折値は、波長550nmでの厚さ方向の複屈折値の0.1倍以下である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項6】
面内位相差値は、フィルム15cm×15cm面積に対して、均一度が10%以内である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項7】
幅方向の光弾性係数が1.5×10
-8m
2/N以下である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項8】
下記関係式7を満たす、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
[関係式7]
【数7】
前記関係式7中、
前記△n
in(450nm)および△n
in(550nm)は、それぞれ、波長450nmおよび550nmで測定した面内複屈折値である。
【請求項9】
下記関係式8を満たす、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム。
[関係式8]
【数8】
前記関係式8中、
前記△n
in(550nm)および△n
in(650nm)は、それぞれ、波長550nmおよび650nmで測定した面内複屈折値である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドイミドフィルムに関する。より具体的には、本発明は、視認性などの光学特性に優れたポリアミドイミドフィルム、これを含む光学素材およびこれを含むディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、光学技術が急激に発達するに伴い、液晶ディスプレイおよび有機発光ディスプレイなどの様々なディスプレイ技術が提案されている。かかるディスプレイに使用される高分子素材は、その要求特性がさらに高度化している。例えば、液晶ディスプレイの場合、薄膜化、軽量化および画面面積の大型化が進むにつれて、広視野角化、高コントラスト化および視野角による画像色調の変化の抑制および画面表示の均一化が特に重要である。
【0003】
一般的には、液晶ディスプレイは、液晶セルの両側に偏光板が設置された構成を有しており、駆動回路の電界印加可否によって液晶セルの配向が変わる。また、それに伴い偏光板を通して出た透過光の特性が変わり、光の可視化が行われる。この際、入射光の入射角度によって光の経路および複屈折性が変わることになり、これは、相違する二つの屈折率を有する異方性物質である液晶のためである。
【0004】
かかる特性によって、液晶ディスプレイは、視野角(Viewing angle)によって相がどれ位明確に見えるかを定める尺度であるコントラスト比(contrast ratio)が変わることになり、階調の反転(Gray scale inversion)現象などが発生して、視認性が低減するという問題が生じる。これだけでなく、有機発光ディスプレイでも反射による視認性の改善のために偏光板が適用されており、これに伴い、有機発光ディスプレイに適用される高分子フィルムの複屈折性の重要性が高まっている。
【0005】
上記のような問題点を解消するために、ディスプレイ装置によって発生する光学位相差を補償する光学補償フィルム(Compensation film)が使用されており、これとともに様々な保護フィルムなどの光学フィルムが使用されている。
【0006】
この際、使用される光学補償フィルムの素材として、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、マレイミド系共重合体およびセルロース系重合体などの様々な高分子価物質が先行技術に開示されている。
【0007】
このうち、比較的低い結晶化度および非晶性構造を有する高分子として、透明性耐熱性、耐薬品性、機械的物性、電気的特性および寸法安定性などに優れたポリイミドを使用するための開発が行われている。
【0008】
しかし、ポリイミドは、分極率(Polarization)が高い含有量のベンゼン環を有しており、小さい配向効果によっても高い光学異方性(複屈折値)を有する。一般的には、フィルムの加工工程では、応力(stress)が発生するが、この際、伝達される応力によって高分子鎖の配向が行われる。そのため、フィルムの全面積に対して微細な応力の差が発生する場合、フィルムの全面積にわたり均一な複屈折値を実現することが難しい。
【0009】
このように、高い複屈折値および不均一な複屈折値を有する光学フィルムが偏光板(Polarizer)が適用されるディスプレイなどのデバイスに適用されると、ディスプレイの光学設計が変わる問題が発生するため、これを解決することができるポリアミドイミドフィルムの製造が必要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、低い面内複屈折値を有し、フィルムの全面積に対して面内複屈折値の均一度に優れたポリアミドイミドフィルムおよびこれを含む光学素材を提供することを目的とする。
【0011】
特に、前記ポリアミドイミドフィルムを含むことで、均一な画質および高いコントラスト比で視認性に優れた高品質のディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明によるポリアミドイミドフィルムは、幅方向の光弾性係数が2.0×10
-8m
2/N未満であり、面内複屈折(△n
in)の値は、下記関係式1および2を満たす波長分散性を有する。
[関係式1]
【数1】
[関係式2]
【数2】
前記関係式1および2中、
前記△n
in(450nm)、△n
in(550nm)および△n
in(650nm)は、それぞれ、波長450nm、550nmおよび650nmで測定した面内複屈折値である。
【0013】
本発明の一様態による前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さ方向の複屈折(△n
th)の値が、下記関係式3および4を満たす波長分散性を有することができる。
[関係式3]
【数3】
[関係式4]
【数4】
前記関係式3および4中、
前記△n
th(450nm)、△n
th(550nm)および△n
th(650nm)は、それぞれ、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したフィルムの厚さ方向の複屈折値である。
【0014】
本発明の一様態による前記ポリアミドイミドフィルムは、下記関係式5を満たすことができる。
[関係式5]
【数5】
前記関係式5中、
前記△n
th(450nm)および△n
th(550nm)は、それぞれ、波長450nmおよび550nmで測定したフィルムの厚さ方向の複屈折値である。
【0015】
本発明の一様態による前記ポリアミドイミドフィルムは、下記関係式6を満たすことができる。
[関係式6]
【数6】
前記関係式6中、
前記△n
th(550nm)および△n
th(650nm)は、それぞれ、波長550nmおよび650nmで測定したフィルムの厚さ方向の複屈折値である。
【0016】
本発明の一様態による波長550nmでの前記面内複屈折値は、波長550nmでの厚さ方向の複屈折値の0.1倍以下であってもよい。
【0017】
本発明の一様態による前記面内位相差値は、フィルム15cm×15cm面積に対して、均一度が10%以内であってもよい。
【0018】
本発明の一様態によるポリアミドイミドフィルムは、幅方向の光弾性係数が1.5×10-8m2/N以下であってもよい。
【0019】
本発明の一様態によるポリアミドイミドフィルムは、下記関係式7を満たすことができる。
[関係式7]
【数7】
前記関係式7中、
前記△n
in(450nm)および△n
in(550nm)は、それぞれ、波長450nmおよび550nmで測定した面内複屈折値である。
【0020】
本発明の一様態によるポリアミドイミドフィルムは、下記関係式8を満たすことができる。
[関係式8]
【数8】
前記関係式8中、
前記△n
in(550nm)および△n
in(650nm)は、それぞれ、波長550nmおよび650nmで測定した面内複屈折値である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるポリアミドイミドフィルムは、低い複屈折値を有し、且つフィルムの全面積にわたり均一な複屈折値を実現できるという利点がある。
【0022】
また、本発明によるポリアミドイミドフィルムは、高温高湿の環境でも優れた表示品質を提供できるという利点がある。
【0023】
また、本発明によるポリアミドイミドフィルムを含む光学素材は、外力による光学的特性の変化が著しく低減し、信頼性が高いという利点がある。
【0024】
また、本発明によるポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置は、広い視野角で優れた品質の画質を提供できるという利点がある。
【0025】
また、本発明によるポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置は、画面コントラスト比に優れ、表示画質が均一であるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を含む具体例または実施例により、本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の具体例または実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であって、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な形態に実現され得る。
【0027】
また他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0028】
本発明を記述する明細書の全般にわたり、ある部分がある構成要素を「含む」ということは、特別に逆の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0029】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むことを意図し得る。
【0030】
本明細書において、「面内複屈折(△nin)」は、インプレーン(in-plane)複屈折と同様の意味であり、フィルムの遅相軸方向(x軸)、進相軸方向(y軸)の屈折率をそれぞれnx、nyとしたとき、nx-nyの値を意味する。「厚さ方向の複屈折(△nth)」は、アウトプレーン(out-plane)複屈折と同様の意味であり、nzを厚さ方向(z軸)の屈折率としたとき、nz-(nx+ny)/2の値を意味する。
【0031】
この際、遅相軸(Slow axis)方向は、媒質の平面内での二つの屈折のうち大きい屈折率の方向を意味し、進相軸(Fast axis)方向は、媒質の平面内での二つの屈折のうち小さい屈折率の方向を意味する。
【0032】
本明細書において、「位相差(Ratardation)」は、媒質を進む電磁波で直交する二つの電場成分の媒質内での速度の差によって発生する二つの電場成分間の位相の差を意味する。
【0033】
本明細書において、「配向角(Orientation angle)」は、フィルムの長さ方向(MD方向)に対して遅相軸がなす角度を意味する。
【0034】
本明細書において、「光弾性(Photoelasticity)」は、固体が荷重を受けるときに、物体内部の分子が相対的位置に変化を示すが、かかる分子配列の変化が屈折率の差を生じさせ、これによる複屈折が生じるが、かかる現象を定義する。
【0035】
従来のポリアミドイミドフィルムは、優れた機械的および熱的特性を有しており、光学フィルムとして優れた耐久性および寸法安定性などを実現することができたが、微細な外力にも複屈折値に変化を有する光学的特性によってフィルムの全面積に対して、複屈折均一度を有することが困難であった。そのため、本発明者らは、均一な複屈折および位相差を有するだけでなく、広い視野角で優れた品質のポリアミドイミドフィルムおよびこれを含む光学素材を提供し、優れた光学的特性を有するディスプレイ装置を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0036】
前記目的を達成するために、本発明によるポリアミドイミドフィルムは、幅方向の光弾性係数が2.0×10-8m2/N未満であり、面内複屈折(△nin)の値は、下記関係式1および2を満たす波長分散性を有する。
【0037】
【0038】
【0039】
前記関係式1および2中、
前記△nin(450nm)、△nin(550nm)および△nin(650nm)は、それぞれ、波長450nm、550nmおよび650nmで測定した面内複屈折値である。
【0040】
本発明によるポリアミドイミドフィルムは、上述の光弾性係数、複屈折値および波長分散性をいずれも満たすことで、応力によって位相差ムラを防止し、均一な表示品質を実現することができる。また、前記ポリアミドイミドフィルムをディスプレイ装置として提供したときに、広い視野角を提供することができ、高いコンストラスト比を実現することができ、視認性の向上により、色彩ムラによる染みが発生するムラ現象が発生しない優れた画質を提供することができる。
【0041】
本発明によるポリアミドイミドフィルムは、2.0×10-8m2/N未満である幅方向の光弾性係数を有する。好ましくは、前記光弾性係数は、1.5×10-8m2/N以下であってもよい。具体的には、下限が1.0×10-12であってもよく、好ましくは、1.0×10-12~1.5×10-8m2/Nであってもよい。
【0042】
本発明によるポリアミドイミドフィルムは面内複屈折(△nin)の値は、下記関係式1および2を満たす波長分散性を有することができる。
【0043】
【0044】
【0045】
前記関係式1および2中、
前記△nin(450nm)、△nin(550nm)および△nin(650nm)は、それぞれ、波長450nm、550nmおよび650nmで測定した面内複屈折値である。前記のような光弾性係数および波長分散性を同時に満たすことで、外力による光学的変化が著しく低減し、信頼性に優れるだけでなく、フィルムの全面積にわたり均一な複屈折値を実現することができ、均一度に優れ、光学素材として卓越している。これとともに、広い視野角を提供することで、高品質の画質で優れた視認性を確保することができる。
【0046】
本発明によるポリアミドイミドフィルムは、上述の光弾性係数および波長分散性を同時に満たすことから、複屈折均一度および広い視野角による高品質の画質を同時に向上させることができる。
【0047】
本発明の一様態により、前記光弾性係数は、機械方向(MD、Machine Direction)および幅方向(TD、Transverse Direction)の光弾性係数が相違していてもよい。具体的には、機械方向の光弾性係数および幅方向の光弾性係数の比が1.05以上であってもよいが、これに制限されるものではない。前記のように、方向による相違する光弾性係数を有する場合、光反応性センサなどの素材に適用する際、敏感度の範囲を増大することができる。
【0048】
本発明の一様態により、より優れた表示品質の実現のために、好ましくは、前記ポリアミドイミドフィルムは、面内複屈折(△nin)の値が、下記関係式7を満たす波長分散性を有することができる。
【0049】
【0050】
前記関係式7中、
前記△nin(450nm)および△nin(550nm)は、それぞれ、波長450nmおよび550nmで測定した面内複屈折値である。
【0051】
本発明の一様態により、より優れた表示品質の実現のために、前記ポリアミドイミドフィルムは、面内複屈折(△nin)の値が、下記関係式8を満たす波長分散性を有することができる。
【0052】
【0053】
前記関係式8中、
前記△nin(550nm)および△nin(650nm)は、それぞれ、波長550nmおよび650nmで測定した面内複屈折値である。
【0054】
本発明の一様態により、前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さ方向の複屈折(△nth)の値が、下記関係式3および4を満たす波長分散性を有することができる。
【0055】
【0056】
【0057】
前記関係式3および4中、
前記△nth(450nm)、△nth(550nm)および△nth(650nm)は、それぞれ、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したフィルムの厚さ方向の複屈折値である。
【0058】
本発明の一様態により、全面積にわたりより均一な複屈折値を実現することができ、広い視野角の確保のために、好ましくは、ポリアミドイミドフィルムは、厚さ方向の複屈折(△nth)の値が、下記関係式5を満たす波長分散性を有することができる。
【0059】
【0060】
前記関係式5中、
前記△nth(450nm)および△nth(550nm)は、それぞれ、波長450nmおよび550nmで測定したフィルムの厚さ方向の複屈折値である。
【0061】
本発明の一様態により、全面積にわたりより均一な複屈折値を実現することができ、広い視野角の確保のために、好ましくは、前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さ方向の複屈折(△nth)の値が、下記関係式6を満たす波長分散性を有することができる。
【0062】
【0063】
前記関係式6中、
前記△nth(550nm)および△nth(650nm)は、それぞれ、波長550nmおよび650nmで測定したフィルムの厚さ方向の複屈折値である。
【0064】
前記のような波長分散性を満たす場合、厚さ方向への配向が可能で、これにより、面内複屈折値および位相差を制御することができ、フィルムの全面積に対する配向効果による複屈折値および位相差の均一度をより向上させることができる。
【0065】
本発明の一様態により、前記面内複屈折値は、厚さ方向の複屈折値の0.1倍以下であってもよい。好ましくは0.09倍以下、より好ましくは0.08倍以下であってもよい。具体的には、波長550nmでの前記面内複屈折値は、波長550nmでの厚さ方向の複屈折値の0.01~0.1倍あってもよく、好ましくは0.01~0.09倍あってもよい。前記のように波長550nmでの面内複屈折値が厚さ方向の複屈折値に比べ著しく低い値を有することで、フィルムの全面積に対して均一な値を有することができ、低い延伸比でも著しく向上した位相差を実現することができる。また、優れた視野角を確保することができ、染みが発生しない高品質のディスプレイを提供することができる。
【0066】
本発明の一様態により、前記波長分散性による複屈折値にフィルムの厚さを乗じた値である位相差値に対しても上述の傾向を示す。
【0067】
本発明の一様態により、前記厚さ方向の位相差値(Rth)は、1,000~10,000であってもよい。前記のような位相差値を有する場合、視認性を著しく向上させることができ、優れた表示品質の提供に卓越している。
【0068】
本発明の一様態により、前記面内位相差値は、フィルム15cm×15cm面積に対して、均一度が10%以内であってもよい。好ましくは、均一度が9%以内であってもよく、より好ましくは、均一度が8%以内であってもよい。具体的には、前記均一度が0.01~10%であってもよく、好ましくは0.1~9%であってもよく、より好ましくは0.1~8%であってもよい。前記のような均一度を有するポリアミドイミドフィルムは、ディスプレイに提供する場合、光均一性に優れ、画面表示に不均一な部分の形成を防止し、高い信頼性を確保することができる。
【0069】
本発明の一様態により、前記ポリアミドイミドフィルムは、二無水物、ジアミンおよび芳香族二酸二塩化物を含む単量体混合物から誘導され重合されたポリアミドイミド樹脂を含むポリアミドイミドフィルムとして提供され得る。前記二無水物、ジアミンおよび芳香族二酸二塩化物は、通常使用される公知の物質であれば、特に制限されるものではない。
【0070】
本発明の一様態により、前記ジアミンは、例えば、脂肪族ジアミンおよび芳香族ジアミンなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0071】
より具体的には、前記芳香族ジアミンは、特に制限されるものではないが、例えば、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFMB)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4DDS)、ジアミノフェニルエテル、o-フェニレンジアミン(o-PDA)、p-フェニレンジアミン(p-PDA)、m-フェニレンジアミン(m-PDA)、オキシジアニリン(ODA)、メチレンジアニリン(MDA)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)および1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0072】
前記脂肪族ジアミンは、特に制限されるものではないが、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4´-ジアミノジシクロヘキシルメタン(MCA)、4,4´-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(MMCA)、エチレンジアミン(EN)、1,3-ジアミノプロパン(13DAP)、テトラメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン(16DAH)および1,12-ジアミノドデカン(112DAD)などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0073】
本発明の一様態により、前記二無水物は、脂肪族二無水物および芳香族二無水物などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0074】
さらに具体的には、本発明の一様態により、前記芳香族二無水物は、特に制限されるものではないが、例えば、4,4´-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタリックアンハイドライド(6FDA)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(PMDA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BTDA)、4,4´-オキシジフタリックジアンハイドライド(ODPA)およびビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィドジアンハイドライド(BDSDA)などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0075】
前記脂肪族二無水物は、特に制限されるものではないが、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(CBDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボキシリックジアンハイドライド(DOCDA)、ビシクロオクテン-2,3,5,6-テトラカルボキシリックジアンハイドライド(BODA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(CPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(CHDA)、1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタンジアンハイドライドおよび1,2,3,4-テトラカルボキシシクロペンタンジアンハイドライドなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を使用することができる。
【0076】
本発明の一様態により、前記二無水物は、ジアミン100モルに対して、5~80モル含むことができ、好ましくは10~70モル含んで共重合することができる。
【0077】
前記のような範囲で二無水物を含む場合、視認性および光学特性に優れたポリアミドイミドフィルムを提供することができる。
【0078】
本発明の一様態により、前記芳香族二酸二塩化物は、特に制限されるものではないが、例えば、テレフタロイルジクロライド(TPC)、イソフタロイルジクロライド(IPC)、1,1´-ビフェニル-4,4´-ジカルボニルジクロライド(BPC)、1,4-ナフタレンジカルボキシリックジクロライド(1,4-NaDC)、2,6-ナフタレンジカルボキシリックジクロライド(2,6-NaDC)、1,5-ナフタレンジカルボキシリックジクロライド(1,5-NaDC)などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を含むことができる。好ましくは、テレフタロイルジクロライドおよびイソフタロイルジクロライドなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことが好ましい。
【0079】
また、前記芳香族二酸二塩化物は、上述の例の化合物に制限して使用されず、さらに、他の酸ハライド化合物と混合して使用することができるが、好ましくは、芳香族二酸二塩化物単独で使用することが好ましい。
【0080】
本発明の一様態により、前記芳香族二酸二塩化物は、ジアミン100モルに対して、20~95モル含むことができ、好ましくは30~90モル含んで共重合することができる。
【0081】
前記のような組成から製造されたポリアミドイミドフィルムは、優れた機械的特性および耐熱性を有するだけでなく、高温でも優れた表示品質を提供し、高い透明性を維持する光学特性を提供することができる。また、より均一な複屈折値および位相差値を実現することができ、著しく広い視野角で様々な角度で優れた品質を有することができる。
【0082】
本発明の一様態により、前記ポリアミドイミドフィルムは、溶液キャスティング工程の後、1次乾燥工程で乾燥温度および時間を調節して製造することができる。例えば、前記乾燥温度は、80℃以上の温度で3分以上乾燥することができる。好ましくは、80~160℃の温度で3~15分乾燥することができる。具体的には、80~160℃の温度のうちワンポイント温度で乾燥を行うか、一番目の温度で乾燥した後、二番目の温度に昇温して乾燥を行うことができるが、前記温度および時間を満たすと、方法は特に制限されるものではない。前記のように乾燥する場合、広い視野角を提供することができ、高いコンストラスト比を実現することができ、視認性の向上によって優れた画質を提供することができる。
【0083】
本発明の一様態により、前記ポリアミドイミドフィルムは、延伸工程を行うことができる。前記延伸は、延伸する前のポリアミドイミドフィルムの幅方向(TD、transverse direction)または長さ方向(MD、machine direction)の各方向に対して、1~30%延伸することができる。好ましくは、1~20%延伸することができる。前記のように延伸することで、ポリアミドイミドフィルムの寸法安定性を向上させることができ、より優れた品質のフィルムを提供することができる。
【0084】
本発明の一様態により、前記延伸は、幅方向(TD、transverse direction)および長さ方向(MD、machine direction)による延伸比(TD/MD延伸率の比)が1.5以下であってもよい。具体的には0.8~1.5、好ましくは0.9~1.4、より好ましくは0.9~1.35であってもよい。前記のように延伸比を有することで、応力によって位相差ムラを防止し、均一な表示品質を実現することができる。好ましくは、前記延伸は、2次乾燥と同時に行うことができる。具体的には、延伸を行いながら2次乾燥工程を同時に行うことができるテンター装置などで行うことができる。このように延伸のみ行うか、2次乾燥工程のみ行うよりは、延伸および2次乾燥工程を同時に行う場合、さらに光均一性に優れ、画面表示に不均一な部分がほとんど形成されない優れた表示品質を実現することができる。
【0085】
本発明の一様態により、前記2次乾燥工程を同時に行う延伸工程は、工程中に乾燥および延伸条件を異ならせた延伸領域を1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、最も好ましくは4以上と提供することができる。具体的には、前記延伸領域を3以上構成する場合、それぞれの領域にフィルムが移動しながら2次乾燥および延伸が行われ、表面の微細なムラを著しく低減するとともに広い視野角を確保し、優れた品質の画質を提供することができる。
【0086】
さらに具体的には、前記延伸工程は、3以上の延伸領域で乾燥温度および延伸率を調節してフィルムを製造することができる。例えば、前記延伸工程は、3領域以上に延伸工程を行う際、延伸と同時に第1領域の乾燥温度は140~210℃であってもよく、第2領域の乾燥温度は150~250℃であってもよく、第3領域の乾燥温度は180~300℃であってもよい。好ましくは、第1領域の乾燥温度は140~200℃であってもよく、第2領域の乾燥温度は160~240℃であってもよく、第3領域の乾燥温度は190~280℃であってもよい。この際、前記延伸工程は、1~3領域を順に通過しながら延伸および2次乾燥が行われる。延伸の際、乾燥温度を前記のように構成する場合、前記関係式1および2を満たすことができ、複屈折値および位相差の均一度に優れ、優れた視野角を確保して、高品質のディスプレイを提供することができる。
【0087】
好ましくは、他の様態として、前記延伸工程は、4以上の延伸領域で乾燥温度および延伸率を調節してフィルムを製造することができる。例えば、前記延伸工程は、4領域以上と延伸工程を行う際、延伸と同時に第1領域の乾燥温度は140~210℃であってもよく、第2領域の乾燥温度は150~250℃であってもよく、第3領域の乾燥温度は180~300℃であってもよく、第4領域の乾燥温度は200~280℃であってもよい。好ましくは、第1領域の乾燥温度は140~200℃であってもよく、第2領域の乾燥温度は160~240℃であってもよく、第3領域の乾燥温度は190~280℃であってもよく、第4領域の乾燥温度は200~270℃であってもよい。この際、前記延伸工程は、1~4領域を順に通過しながら延伸および2次乾燥が行われる。延伸の際、乾燥温度を前記のように構成する場合、前記関係式1および2を満たすことができ、高い鮮明度を有し、相の歪み現象が発生しない優れた品質の画質を提供することができる。
【0088】
より好ましくは、フィルムの全面にわたり位相差の均一度を向上させるために、前記第1領域~第4領域のうち3領域以上が順に乾燥温度が増加することができる。さらに好ましくは、第3領域から第4領域に通過するときに、乾燥温度が同一または減少することができる。
【0089】
本発明の一様態により、前記2次乾燥工程を同時に行う延伸工程は、全工程を1~20分間行うことができ、好ましくは5~20分間、より好ましくは7.5~15分間行うことができるが、これに制限されるものではない。具体的には、延伸工程の領域が3以上である場合、各領域当たり1~10分、好ましくは1~6分であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0090】
本発明の一様態により、前記延伸工程の領域が3以上である場合、下記式1および2を満たすことができる。
【0091】
【0092】
【0093】
前記式1および式2中、
前記T1は、ポリアミドイミドフィルムの延伸工程中の第1領域の乾燥温度(℃)、前記T2は、ポリアミドイミドフィルムの延伸工程中の第2領域の乾燥温度(℃)、前記T3は、ポリアミドイミドフィルムの延伸工程中の第3領域の乾燥温度(℃)である。
【0094】
好ましくは、前記式1は、10~35を満たすことができ、前記式2は、5~80を満たすことができる。
【0095】
さらに他の様態として、前記延伸工程は、4領域以上である場合、前記式1および2を満たし、下記式3を満たしてもよい。
【0096】
【0097】
前記式3中、
前記T3は、ポリアミドイミドフィルムの延伸工程中の第3領域の乾燥温度(℃)、前記T4は、ポリアミドイミドフィルムの延伸工程中の第4領域の乾燥温度(℃)である。
【0098】
好ましくは、前記式3は、-70~5、より好ましくは、-70~0を満たすことができる。
【0099】
前記のように延伸工程中の2次乾燥温度が上述の式1および2または式1~3を満たす場合、前記関係式1および2を満たすことができ、面内複屈折値が厚さ方向の複屈折値に比べ著しく低い値を有することができ、フィルムの全面積に対して均一な値を有することができ、優れた視野角を確保して高品質のディスプレイを提供することができる。
【0100】
本発明の一様態により、前記ポリアミドイミドフィルムは、20~200μmの厚さを有することができる。好ましくは、前記透明フィルムは、20~150μm、より好ましくは20~100μmの厚さを有することができる。前記のような厚さを有することで、前記関係式1および2を満たすことができ、複屈折値および位相差の均一度に優れ、広い視野角による高いコントラスト比を実現することができ、高い鮮明度で相の歪み現象を抑制することができる。
【0101】
本発明のさらに他の様態は、上述のポリアミドイミドフィルムを含む光学素材である。
【0102】
本発明によるポリアミドイミドフィルムは、複屈折値および位相差の均一度に優れ、広い視野角による高いコントラスト比を実現することで、高い鮮明度を有して、相の歪み現象が発生しない優れた品質の画質を提供できる光学素材として卓越している。
【0103】
本発明による前記ポリアミドイミドフィルムは、自動車材料、航空素材および宇宙船素材などの耐熱先端素材;絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体およびTFT-LCDの電極保護膜など電子材料;などの広範な分野に適用され得るが、好ましくは、光学素材として、液晶表示装置のようなディスプレイ分野に適用され得る。
【0104】
具体的には、カバーウィンドウフィルム、保護フィルム、位相差フィルム、拡散フィルム、フレキシブル基板、封止材、偏光子およびタッチパネル基板などから選択される様々な光学素材としてディスプレイ分野に適用され得る。
【0105】
本発明のさらに他の様態は、上述のポリアミドイミドフィルムを含む偏光板である。
【0106】
前記のようにポリアミドイミドフィルムを含むことで、広い視野角を確保し、高品質の画質を実現できる偏光板を提供することができる。
【0107】
本発明の一様態により、前記偏光板は、直線偏光板または円偏光板など、特に形状には制限されず、様々な形状を実現することができる。
【0108】
本発明の一様態により、前記偏光板は、様々な分野において活用が可能である。例えば、移動通信端末、スマートフォン、その他のモバイル機器、ディスプレイ機器、電子黒板、屋外電光板および各種の表示部の用途で使用され得る。
【0109】
本発明のさらに他の様態は、上述の偏光板または上述の光学素材を含むディスプレイ装置である。前記ディスプレイ装置は、ポリアミドイミドフィルムを含むことで、優れた視認性を実現することができる。また、ディスプレイパネルから光が、垂直の方向だけでなく、様々な方向に出ても優れた画質を実現することができ、従来のディスプレイ装置に比べ著しく向上した視認性を有することができる。
【0110】
本発明の一様態により、前記ディスプレイ装置は、優れた光学特性を要する分野であれば、特に制限されず、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイおよび電子ペーパなどから選択される分野に適用され得る。また、適用分野に応じて、ディスプレイパネルを選択して提供することができる。具体的な例としては、液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種の画像表示装置などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0111】
実施例により、本発明によるポリアミドイミドフィルム、これを含む光学素材およびこれを含むディスプレイ装置についてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であって、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な形態に実現され得る。
【0112】
また他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本願で説明に使用される用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためであって、本発明を制限することを意図しない。
【0113】
また、明細書において特に記載していない添加物の単位は、重量%であってもよい。
【0114】
本発明の物性は、以下のように測定した。
【0115】
(1)光弾性係数
光弾性は、Deben社製のMicrotest Tensile Stageを用いて試験片を引張させる時に発生する応力に対して、引張される部分の位相差の変化を測定することで得られる。光弾性係数は、試験片を2cm×7cmの大きさで切断した後、tensile stageのthin jawsの底部に試験片をおき、thick jawsを上に覆ってねじで固定した後、光弾性を測定した。この際、フィルムをタイトに固定し、固定が完了した後、close jaws間の距離は20mmと固定した。次に、試験片を徐々に引張させ、1~3%延伸した時の面内複屈折(△nin)値の勾配を計算し、光弾性係数を記録した。1%および3%延伸した時に発生する応力をそれぞれσ1およびσ2とし、このときの面内複屈折をそれぞれ△n1および△n2としたとき、光弾性係数は、下記のように定義した。
【0116】
[△n2-△n1]/[σ2-σ1]
【0117】
(2)複屈折および位相差値の測定。
複屈折値:Axometrics社製のAxoscan装備を用いて測定した。複屈折の値は、それぞれ、波長450nm、550nmおよび650nmの光の値を測定した。面内複屈折(△nin)および厚さ方向の複屈折(△nth)は、下記式によって計算した。
【0118】
△nin=nx-ny
(△nin:面内複屈折、nx:遅相軸方向の屈折率、ny:進相軸方向の屈折率)
【0119】
△nth=nz-(nx+ny)/2
(△nth:厚さ方向の複屈折、nx:遅相軸方向の屈折率、ny:進相軸方向の屈折率、nz:厚さ方向の屈折率)
【0120】
位相差:Axometrics社製のAxoscan装備を用いて測定した。各入射角(θ)に対して、位相差を測定するが、これは、PSG(Polarization State Generator)から発生する特定の旋偏光が測定しようとするフィルムを経てどのように変わるかをPSA(Polarization State Analyzer)で検出し示した。
【0121】
(3)面内位相差値の均一度の測定
面内位相差の均一度はAxometrics社製のXY-Mapping Stageが装着されたAxoscan装備を用いて測定した。この際、Rinの値と配向角(Orientation angle)の測定が可能で、均一度の測定対象はRin値である。測定の際、試験片の大きさは15cm×15cmであり、測定pointは10EA×10EAで100pointsを測定し、下記のように均一度(%)を確認した。
【0122】
位相差値は、XY-Mapping Stageを用いて測定されるRin値をそのまま使用し、この際、Rinの最大値をRmax、最小値をRminとし、その平均値をRaveとした時に、均一度は、{(Rmax―Rmin)/(Rave×2)}×100と定義される。
【0123】
(4)フィルムの最終品質の評価。
最終品質の評価は、偏光板および製造された光学フィルムが貼り合わせられたディスプレイを視野角165゜で肉眼で観察したときに、色相の変化とイメージの染みが視認されるか否かによってOKおよびNGと判定した。
【0124】
(5)残留溶媒の含有量
残留溶媒の含有量は、TGA(TA社製、Discovery)を用いて、150℃での重量A150から370℃での重量A370を減じた値をフィルム内の残留溶媒の含有量として判断した。この際、測定条件は、昇温速度30℃/minで400℃まで昇温し、150~370℃区間での重量の変化を測定した。
【0125】
[製造例1]
[TFMB:6FDA:TPCのモル比=100:14:86]
窒素雰囲気の反応器にジメチルアセトアミド(DMAc)および2,2´-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れて十分に撹拌した後、4,4´-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタリックアンハイドライド(6FDA)を溶解されるまで十分に撹拌した。次に、テレフタロイルジクロライド(TPC)を入れて6時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体の量は、TFMB:6FDA:TPCのモル比を100:14:86とし、反応器の温度は30℃に維持した。最終取得されたポリアミック酸樹脂組成物の粘度は、33,000cpsであった。次いで、ポリアミック酸樹脂組成物にピリジン(Pyridine)と酢酸無水物(Acetic Anhydride)を総二無水物の投入量の2.5倍モル投入し、60℃で1時間撹拌して重合液1を製造した。
【0126】
次に、重合液1は、過量のメタノールに沈殿させた後、濾過して得られた固形分を50℃で6時間以上真空乾燥し、ポリアミドイミドを取得した。最終取得されたポリアミドイミドの重量平均分子量は、106,000g/molであった。
【0127】
[製造例2]
[TFMB:CBDA:IPCのモル比=100:60:40]
窒素雰囲気の反応器にジメチルアセトアミド(DMAc)および2,2´-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れて十分に撹拌した後、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(CBDA)を溶解されるまで十分に撹拌した。次に、イソフタロイルジクロライド(IPC)を入れて6時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体の量はTFMB:CBDA:IPCのモル比=100:60:40とし、反応器の温度は30℃に維持した。最終取得されたポリアミック酸樹脂組成物の粘度は、90,000cpsであった。次いで、ポリアミック酸樹脂組成物にピリジン(Pyridine)と酢酸無水物(Acetic Anhydride)を総二無水物の投入量の2.5倍モル投入し、60℃で1時間撹拌して重合液2を製造した。
【0128】
次に、重合液2は、過量のメタノールに沈殿させた後、濾過して得られた固形分を50℃で6時間以上真空乾燥し、ポリアミドイミドを取得した。最終取得されたポリアミドイミドの重量平均分子量は、310,000g/molであった。
【0129】
[製造例3]
[TFMB:CBDA:IPCのモル比=100:40:60]
窒素雰囲気の反応器にジメチルアセトアミド(DMAc)および2,2´-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れて十分に撹拌した後、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシリックジアンハイドライド(CBDA)を溶解されるまで十分に撹拌した。次に、イソフタロイルジクロライド(IPC)を入れて6時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体の量はTFMB:CBDA:IPCのモル比=100:40:60とし、反応器の温度は30℃に維持した。最終取得されたポリアミック酸樹脂組成物の粘度は、68,000cpsであった。次いで、ポリアミック酸樹脂組成物にピリジン(Pyridine)と酢酸無水物(Acetic Anhydride)を総二無水物の投入量の2.5倍モル投入し、60℃で1時間撹拌して重合液3を製造した。
【0130】
次に、重合液3は、過量のメタノールに沈殿させた後、濾過して得られた固形分を50℃で6時間以上真空乾燥し、ポリアミドイミドを取得した。最終取得されたポリアミドイミドの重量平均分子量は、180,000g/molであった。
【0131】
[実施例1]
前記重合液1をスロットダイ(Slot Die)を用いて、常温でYellow PI(Ube社製のUpilex-S 125)のフィルム上にキャスティング(casting)してから、140℃の乾燥オーブンで7分間乾燥した後、厚さ70μm、幅300mmの1次乾燥フィルムを得た。このフィルムを下記表1に記載の条件で延伸し、残留溶媒1.9重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0132】
[実施例2]
前記重合液1をアプリケータ(Applicator)を用いて、常温でガラス基板上にキャスティング(casting)してから、90℃(2分)-120℃(3分)-140℃(2分)乾燥した後、厚さ72μm、幅300mmの1次乾燥フィルムを得た。このフィルムを下記表1に記載の条件で2次乾燥および延伸し、残留溶媒2.3重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0133】
[実施例3]
前記重合液1をスロットダイ(Slot Die)を用いて、40℃でYellow PIフィルム上にキャスティング(casting)してから、140℃の乾燥オーブンで7分間乾燥した後、厚さ73μm、幅300mmの1次乾燥フィルムを得た。このフィルムを下記表1に記載の条件で2次乾燥および延伸し、残留溶媒2.0重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0134】
[実施例4]
前記重合液2をスロットダイ(Slot Die)を用いて、常温でYellow PIフィルム上にキャスティング(casting)してから、140℃の乾燥オーブンで7分間乾燥した後、厚さ68μm、幅300mmの1次乾燥フィルムを得た。このフィルムを下記表1に記載の条件で2次乾燥および延伸し、残留溶媒1.78重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0135】
[実施例5]
前記重合液2をアプリケータ(Applicator)を用いて、常温でガラス基板上にキャスティング(casting)してから、90℃(2分)-120℃(3分)-140℃(2分)乾燥した後、厚さ69μm、幅300mmの1次乾燥フィルムを得た。このフィルムを下記表1に記載の条件で2次乾燥および延伸し、残留溶媒2.2重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0136】
[実施例6]
前記重合液2をスロットダイ(Slot Die)を用いて、40℃でYellow PIフィルム上にキャスティング(casting)してから、140℃の乾燥オーブンで7分間乾燥した後、厚さ71μm、幅300mmの1次乾燥フィルムを得た。このフィルムを下記表1に記載の条件で2次乾燥および延伸し、残留溶媒2.1重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0137】
[実施例7]
前記重合液3をスロットダイ(Slot Die)を用いて、常温でYellow PIフィルム上にキャスティング(casting)してから、140℃の乾燥オーブンで7分間乾燥した後、厚さ67μm、幅300mmの1次乾燥フィルムを得た。このフィルムを下記表1に記載の条件で2次乾燥および延伸し、残留溶媒1.8重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0138】
[実施例8]
前記重合液3をスロットダイ(Slot Die)を用いて、40℃でYellow PIフィルム上にキャスティング(casting)してから、140℃の乾燥オーブンで7分間乾燥した後、厚さ70μm、幅300mmの1次乾燥フィルムを得た。このフィルムを下記表1に記載の条件で2次乾燥および延伸し、残留溶媒2.1重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0139】
[比較例1]
前記実施例1と同じ方法で1次乾燥フィルムを製造した後、下記表1に記載の方法で2次乾燥および延伸し、残留溶媒2.1重量%のフィルムを製造した。
【0140】
[比較例2]
前記実施例2と同じ方法で1次乾燥フィルムを製造した後、下記表1に記載の方法で2次乾燥および延伸し、残留溶媒2.3重量%のフィルムを製造した。
【0141】
[比較例3]
前記実施例3と同じ方法で1次乾燥フィルムを製造した後、下記表1に記載の方法で2次乾燥および延伸し、残留溶媒3.5重量%のフィルムを製造した。
【0142】
[比較例4]
前記重合液2をアプリケータ(Applicator)を用いて、常温でガラス基板上にキャスティング(casting)してから、120℃で20分間乾燥した後、厚さ64μm、幅300mmの1次乾燥フィルムを得た。このフィルムを下記表1に記載の条件で2次乾燥および延伸し、残留溶媒1.85重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0143】
[比較例5]
前記重合液3を用いてアプリケータ(Applicator)を用いて、常温でYellow PIフィルム上にキャスティング(casting)してから、140℃で2分間乾燥した後、厚さ78μm、幅300mmの1次乾燥フィルムを得た。このフィルムを下記表1に記載の条件で2次乾燥および延伸し、残留溶媒2.1重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0144】
[比較例6]
前記実施例4と同じ方法で1次乾燥フィルムを製造した後、下記表1に記載の方法で2次乾燥および延伸し、残留溶媒1.98重量%の透明PAIフィルムを製造した。
【0145】
具体的には、前記実施例1~8および比較例1~6で2次乾燥および延伸条件は、下記表1に示された条件でテンター装置で乾燥および延伸を同時に行って製造し、次に、透明PAIフィルムの光学特性を特定し、下記表2および3に示した。この際、下記表1に延伸条件で記載した数値(%)は第1領域に入って行く時の幅に対する各領域での最大フィルム幅の割合(%)を意味する。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
前記表2に示されているように、本発明によるポリアミドイミドフィルムは、関係式1および2を満たし、さらには、関係式1~4を満たすことで、表3に示されているように、均一な複屈折値および位相差を有する高品質のディスプレイを提供することができることを確認した。具体的には、高い鮮明度を有し、相の歪み現象を防止することができる光学素材として卓越していることを確認した。さらに、これは、延伸工程中に各領域に対して乾燥温度を調節することで、達成することができる。
【0150】
これにより、本発明によるポリアミドイミドフィルムは、面内複屈折値が、厚さ方向の複屈折値に比べ著しく低い値を有することで、フィルムの全面積に対して均一な値を有することができ、高品質のディスプレイを提供することができる光学素材として卓越している。
【0151】
以上、特定の事項と限定された実施例により本発明が説明されているが、これは、本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、かかる記載から様々な修正および変形が可能である。
【0152】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等または等価的な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属すると言える。