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特許7503448アキシャルギャップ型のミニファンモータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】アキシャルギャップ型のミニファンモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20240613BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20240613BHJP
   H02K 21/12 20060101ALI20240613BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H02K3/18 Z
F04D29/00 B
H02K21/12 M
H02K7/14 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020134924
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2021112113
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020003079
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 昌亨
(72)【発明者】
【氏名】吉田 実
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-046285(JP,A)
【文献】特開2018-166353(JP,A)
【文献】特開2010-259189(JP,A)
【文献】実開昭57-191024(JP,U)
【文献】特開平01-047252(JP,A)
【文献】特開2008-245504(JP,A)
【文献】特開2004-350449(JP,A)
【文献】特開2011-125084(JP,A)
【文献】実開平02-142960(JP,U)
【文献】特開2018-002105(JP,A)
【文献】特開2009-072010(JP,A)
【文献】特開2010-068616(JP,A)
【文献】特開2015-023716(JP,A)
【文献】特開2007-016760(JP,A)
【文献】特開平10-066309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0087514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/28
F04D 29/00
H02K 21/12
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャルギャップ型のミニファンモータであって、
放射状に配置された複数のベーンを有し、軸方向に延びるシャフトに固定されているインペラと、
中央部に吸気口を有し、前記インペラに被さるように配置されるシュラウドと、
磁極を構成する複数のマグネットを有し、前記シャフトに固定されているロータと、
前記ロータと軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されているステータと、
を備え、
前記ステータは、
中心部に前記シャフトを回転可能に支持する軸受が設置されている基板と、
前記軸受の周りに配置された、コイルおよび鉄心からなる複数のアーマチュアと、
を有し、
長方形の断面を有する平角線をその短辺側に曲げることにより、前記平角線の短辺側が前記鉄心に接して巻回されるように、前記コイルが形成され
前記平角線が、短辺側に並列した状態で密着して延びる2本以上の要素平角線で構成されるとともに、前記要素平角線の端部が、互いに離れた位置に配置されている、ミニファンモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のミニファンモータにおいて、
前記鉄心が、軸方向に延びて、角部が丸められた略三角形の断面を有する巻回部を有し、
前記巻回部に前記平角線が巻回されている、ミニファンモータ。
【請求項3】
請求項1に記載のミニファンモータにおいて、
前記要素平角線の各々の全長が略同一である、ミニファンモータ。
【請求項4】
請求項1に記載のミニファンモータにおいて、
前記要素平角線の各々の幅が、互いに異なっている、ミニファンモータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のミニファンモータにおいて、
前記ステータは、前記コイルへの通電を制御する制御回路を更に有し、
前記制御回路が、前記基板における前記アーマチュアよりも径方向外側の領域に配置されている、ミニファンモータ。
【請求項6】
請求項5に記載のミニファンモータにおいて、
前記コイルと前記制御回路とが、前記基板に設けられた配線パターンを介して接続されている、ミニファンモータ。
【請求項7】
アキシャルギャップ型のミニファンモータであって、
放射状に配置された複数のベーンを有し、軸方向に延びるシャフトに固定されているインペラと、
中央部に吸気口を有し、前記インペラに被さるように配置されるシュラウドと、
磁極を構成する複数のマグネットを有し、前記シャフトに固定されているロータと、
前記ロータと軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されているステータと、
を備え、
前記ステータは、
中心部に前記シャフトを回転可能に支持する軸受が設置されている基板と、
前記軸受の周りに配置された、コイルおよび鉄心からなる複数のアーマチュアと、
を有し、
長方形の断面を有する平角線をその短辺側に曲げることにより、前記平角線の短辺側が前記鉄心に接して巻回されるように、前記コイルが形成され、
前記平角線は、内外に密着して並列した状態で巻回方向に延びる一対の外側要素線および内側要素線で構成され、
前記外側要素線の一端と前記内側要素線の他端とが接続されることにより、前記コイルが、互いに直列に接続された外側要素コイルおよび内側要素コイルで構成されているミニファンモータ。
【請求項8】
請求項7に記載のミニファンモータにおいて、
前記外側要素線の一端と前記内側要素線の他端とが直接接続されているミニファンモータ。
【請求項9】
請求項7または8に記載のミニファンモータにおいて、
前記アーマチュアの各々は、流れる電流の位相が異なる複数のコイル群を含み、
同じ位相の前記コイル群を構成している前記コイルの各々が、互いの前記外側要素線の他端と前記内側要素線の一端とを接続することにより、並列に接続されている、ミニファンモータ。
【請求項10】
請求項9に記載のミニファンモータにおいて、
前記ステータは更に、前記コイル群への通電を制御する制御部品を有し、
前記制御部品が、前記アーマチュアよりも前記基板の径方向外側の領域に配置されている、ミニファンモータ。
【請求項11】
請求項10に記載のミニファンモータにおいて、
前記制御部品と前記コイル群の各々とが、前記基板に設けられた配線パターンを介して接続されている、ミニファンモータ。
【請求項12】
請求項10または11に記載のミニファンモータにおいて、
前記コイル群の各々がY結線されていて、前記コイル群の各々を接続する中性点が、前記アーマチュアよりも前記基板の径方向内側の領域に配置されている、ミニファンモータ。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか1つに記載のミニファンモータにおいて、
前記アーマチュアよりも前記基板の径方向外側の所定の領域に、ベタパターンからなる放熱部が設けられている、ミニファンモータ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1つに記載のミニファンモータにおいて、
前記ロータは、前記ステータ1つに対して2つあり、当該ロータの各々が、前記ステータの両側にそれぞれ配置されていて、
前記ロータの一方が、前記インペラを兼用している、ミニファンモータ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1つに記載のミニファンモータにおいて、
外径が100mm以下、全高が50mm以下であり、吸込仕事率が300W以上である、ミニファンモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、アキシャルギャップ型のミニファンモータに関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップ型のモータは、特許文献1~3に開示されている。特許文献1には、U,V,Wからなる3相の各ステータコイルを、平角線を用いたエッジワイズコイルで構成し、Y結線することによって相ごとに並列接続したモータが開示されている。特許文献2には、U,V,Wからなる3相の各ステータコイルを、平角線を用いたエッジワイズコイルで構成し、相ごとに直列接続したモータが開示されている。
【0003】
特許文献1のモータは、電気自動車や風力発電などを対象とし、特許文献2のモータは、自動車の電動ブレーキを対象としている。
【0004】
特許文献3のモータでは、断面が矩形の裸銅線を複数束ねて被覆した電線(平角線)を用いてコイルを形成している。特許文献3にはまた、1本の平角線を短辺側に曲げてコイルを形成することが開示されているが(比較例1)、そうした場合、渦電流損失が大きくなると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-90410号公報
【文献】特開2018-166353号公報
【文献】特開2009-72010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、掃除機本体を省略した、スティック型の掃除機が注目されている。通常は、電気コードも省略されている(コードレス)。従って、スティック型の掃除機は、操作性、利便性に優れる。
【0007】
スティック型の掃除機では、小型軽量で、しかもハイパワーで長時間の運転が行えるファンモータが必要とされる。例えば、ファンモータの外径が100mmを超えるサイズになると、スティック型の掃除機としては、違和感が生じるし、扱い辛い。
【0008】
従って、少なくとも外径が100mm以下の小型のサイズかつ軽量でありながら、掃除機として十分な吸引力が得られる高出力なファンモータ(ミニファンモータ)が要望されている。
【0009】
この点、特許文献1~3のモータはサイズが大き過ぎ、スティック型の掃除機への適用は困難である。仮にこれらモータを小型化するにしても、エッジワイズ巻きが困難なうえに、掃除機に見合う出力は得られない。
【0010】
そこで、開示する技術の主たる目的は、スティック型の掃除機に好適な、高出力が発揮できるミニファンモータを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する技術は、アキシャルギャップ型のミニファンモータに関する。
【0012】
前記ミニファンモータは、放射状に配置された複数のベーンを有し、軸方向に延びるシャフトに固定されているインペラと、
中央部に吸気口を有し、前記インペラに被さるように配置されるシュラウドと、
磁極を構成する複数のマグネットを有し、前記シャフトに固定されているロータと、
前記ロータと軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されているステータと、
を備え、
前記ステータは、
中心部に前記シャフトを回転可能に支持する軸受が設置されている基板と、
前記軸受の周りに配置された、コイルおよび鉄心からなる複数のアーマチュアと、
を有し、
長方形の断面を有する平角線をその短辺側に曲げることにより、前記平角線の短辺側が前記鉄心に接して巻回されるように、前記コイルが形成されている。
【発明の効果】
【0013】
開示する技術によれば、スティック型の掃除機に好適な、高出力が発揮できるミニファンモータを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態におけるミニファンモータを搭載したスティック型の掃除機を示す概略図である。
図2】第1の実施形態におけるミニファンモータを側方から見た概略図である。
図3】第1の実施形態におけるミニファンモータの分解斜視図である。
図4】第1の実施形態における基板を上方から見た概略図である。
図5A】第1の実施形態におけるアーマチュアの概略斜視図である。
図5B】第1の実施形態におけるアーマチュアの分解斜視図である。
図6A】エッジワイズ巻きを説明するための図である。
図6B】要素平角線を説明するための図である。
図7】第1の実施形態における応用例を説明するための図である。
図8A】第1の実施形態における応用例の1つを示す概略図である。
図8B】第1の実施形態における応用例の他の1つを示す概略図である。
図9】第2の実施形態におけるミニファンモータの分解斜視図である。
図10】第2の実施形態における基板を上方から見た概略図である。
図11A】第2の実施形態におけるアーマチュアの概略斜視図である。
図11B】第2の実施形態におけるアーマチュアの分解斜視図である。
図12A】第2の実施形態におけるアーマチュアの無い基板を上方から見た概略図である。
図12B】第2の実施形態における各相のコイルと制御回路との間での配線図である。
図13】第1の実施形態における各相のコイルと制御回路との間での配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0016】
-第1の実施形態-
<スティック型の掃除機>
図1に、開示する技術に好適な、スティック型の掃除機1を例示する。この掃除機1は、コードレスタイプであり、内蔵するバッテリー8の電力で駆動できるように構成されている。
【0017】
この掃除機1に、開示する技術を適用したミニファンモータ2が搭載されている。掃除機1は、吸込部3、管部4、本体部5、ダストケース6、把手部7などで構成されている。
【0018】
吸込部3は、下面に吸込口3aを有し、回動自在なローラ3bにより、床面に沿ってスライド自在に構成されている。管部4は、伸縮可能な細長い筒状の部材からなる。管部4は、その下端部は吸込部3に接続され、その上端部は本体部5に接続されている。管部4は、吸込口3aと本体部5とを連通させている。
【0019】
本体部5は、管部4よりもやや大きなサイズに形成されている。本体部5に、ミニファンモータ2、バッテリー8、制御部9などが収容されている。制御部9は、ミニファンモータ2の駆動を制御する。バッテリー8は、充電可能な二次電池であり、ミニファンモータ2に電力を供給する。
【0020】
把手部7は、ユーザが把持する部分であり、本体部5と一体に設けられている。把持部は、本体部5の後側から後方に突き出すように設けられている。掃除機1は、ユーザが把持部を片手で持った状態で扱えるように構成されている。
【0021】
把持部の下側にダストケース6が設置されている。ダストケース6は、本体部5から脱着可能に構成されている。ミニファンモータ2は、ダストケース6に隣接した位置に配置されている。ミニファンモータ2は、制御部9の制御に従い、バッテリー8から供給される電力によって駆動する。ミニファンモータ2が駆動すると、強力な吸引力が形成される。それにより、吸込口3aから吸い込まれるダストが、管部4を通ってダストケース6に集積される。
【0022】
<ミニファンモータ2>
図2に、ミニファンモータ2を示す。ミニファンモータ2は、ファンとモータとが一体に構成されている小型の装置である。
【0023】
ファンは、いわゆる遠心ファンであり、白抜き矢印で示すように、ファンの中心から空気を吸い込んで、細矢印で示すように、径方向外側に吐出する。
【0024】
モータは、軸方向に対向配置されたステータ40および2つのロータ20,30を有している(いわゆるアキシャルギャップ型)。ロータ20,30は、ステータ40の両側にそれぞれ配置されている。
【0025】
本体部5に収容できるように、ミニファンモータ2の外径Dおよび全高Hは、非常に小さく設計されている。例えば、図例のミニファンモータ2の場合、外径Dは略70mm、全高Hは略40mm程度の大きさ(いわゆる手のひらサイズ)である。従って、その重量も軽く、手のひらに載せても苦にならないレベルである。
【0026】
しかも、バッテリー8の電力を用いて、掃除機1として十分な性能が得られるように、高効率で高出力が得られるように構成されている。図例のミニファンモータ2の場合、600Wの消費電力で、100000rpm以上の高速で回転駆動でき、300W以上の吸込仕事率が得られるように構成されている。
【0027】
図3に、ミニファンモータ2の構造を示す。ミニファンモータ2は、シュラウド10、第1ロータ20、第2ロータ30、ステータ40、フレーム50、シャフト60などで構成されている。シャフト60は、棒状の部材であり、ミニファンモータ2の回転軸Aと同軸に設けられている。
【0028】
(シュラウド10)
シュラウド10は、ハット形状の外観を呈しており、環状のボトム部11と、ボトム部11の内縁に連なって、先に行くほど次第に径が小さくなるように突出したファネル部12とを有している。シュラウド10の中央に位置するファネル部12の上部に、円形の吸気口12aが形成されている。ボトム部11の裏側には、周方向に互いに間隔を隔てて配置された複数のフィン13が立設されている。
【0029】
(第1ロータ20)
第1ロータ20は、シュラウド10よりも外径が小さく、厚みの大きな円板状の部材からなる。第1ロータ20は、外周が円形の主壁部21と、主壁部21の中心に凸設されたボス部22と、ボス部22の周囲を二重に囲む円筒状の内側周壁部23および外側周壁部24と、を有している。主壁部21、ボス部22、および周壁部は、金属などの強磁性体により、一体に形成されている(いわゆるヨークに相当)。
【0030】
内側周壁部23と外側周壁部24との間には、円弧状の複数(図例では4つ)のマグネット25が嵌め込まれている。各マグネット25は、N極とS極とが周方向に交互に位置するように配置されている。これらマグネット25により、第1ロータ20の磁極が構成されている。
【0031】
(第2ロータ30)
第2ロータ30は、第1ロータ20とほぼ同じ大きさ、構造を有している。すなわち、第1ロータ20と同じ、主壁部(区別するため符号31で示す)、差込孔が開口するボス部22、内側周壁部23、および外側周壁部24を有し、内側周壁部23と外側周壁部24との間には、第1ロータ20と同様にマグネット25が嵌め込まれている(図示せず)。
【0032】
第2ロータ30は、第1ロータ20とは異なり、その主壁部31の壁面(マグネット25の反露出側)に複数のベーン36が放射状に設置されている。すなわち、第2ロータ30は、インペラを兼用している。
【0033】
(フレーム50)
フレーム50は、環状のリング枠51、複数の(図例では6つ)ピラー52、円板状の軸受カバー53、複数(図例では6つ)のアーム54などを有している。フレーム50は、ステータ40に対し、シュラウド10および第2ロータ30を所定の位置に支持する。
【0034】
各ピラー52は、周方向に等間隔で配置されており、リング枠51から軸方向に延びている。軸受カバー53は、リング枠51の中心に、リング枠51から軸方向をピラー52の側にずれて配置されている。各アーム54は、その軸受カバー53から放射状に延びてL状に屈曲し、リング枠51の内縁に接続されている。
【0035】
(ステータ40)
ステータ40は、基板41、複数(図例では6つ)のアーマチュア42、制御回路43などで構成されている。
【0036】
図2図4にも示すように、基板41は、シュラウド10よりも外径が大きな円盤状の部材からなる。基板41の表面の中心部には、軸受カバー53が被さるように、内部にベアリングを有する円柱状の軸受40aが設置されている。軸受40aにシャフト60が回転可能な状態で支持されている。シャフト60は、基板41に対して垂直な軸方向に延びている。
【0037】
基板41の外周部には、複数(図例では6つ)のネジ孔411が形成されている。基板41の裏面からこれらネジ孔411に差し込まれるネジ44が、各アーム54の下端に締結されることにより、フレーム50は、基板41に取り付けられている。シャフト60の一端は、軸受40aに被さった軸受カバー53から突出し、シャフト60の他端は、基板41の裏面から突出している。
【0038】
アーマチュア42は、コイル42aと、鉄心42bとで構成されている。各アーマチュア42は、軸受40aの周りに密集した状態で、周方向に並ぶように配置されている(アーマチュア42の詳細については後述)。
【0039】
図4に示すように、基板41は絶縁性の素材で構成されていて、基板41に制御回路43が設けられている。制御回路43は、コンデンサ43aや素子43bなどの電気部品を含み、各アーマチュア42のコイル42aへの通電を制御するように構成されている。制御回路43は、基板41における各アーマチュア42よりも径方向外側の環状の領域(環状領域R)に配置されている。環状領域Rであれば、比較的面積が大きいので、電機部品が多数であっても、支障無く配置できる。
【0040】
制御回路43は、コネクタが付いているケーブル43cを有する端子部43dも含む。ケーブル43cは、制御部9との接続に用いられる。制御回路43はまた、基板41に沿って延びる導電体で構成された配線パターン43eも含む。
【0041】
図示は省略するが、各アーマチュア42のコイル42aの端部は、基板41に差し込むことにより、配線パターン43eと接続されている。制御回路43はまた、配線パターン43eを介して端子部43dと接続されている。すなわち、このステータ40では、電気部品やコイル42aの接続に、電線424は用いられていない。基板41に形成された配線パターン43eで接続されているので、製造が容易になるし、構造も簡素化される。
【0042】
環状領域Rであれば、配線パターン43eも余裕を持って形成できるので、短絡や断線などの不具合を抑制できる。特に、このモータでは、コイル42aに大きな電流が供給されるので、配線パターン43eもそれに応じた大きな断面積が要求される。環状領域Rであれば、そのような断面積の大きな配線パターン43eも余裕をもって形成できる。
【0043】
軸受カバー53から突出したシャフト60の一端は、マグネット25の露出側から第2ロータ30のボス部22の差込孔に圧入されて固定されている。基板41の裏面から突出したシャフト60の他端は、マグネット25の露出側から第1ロータ20のボス部22の差込孔に圧入されて固定されている。
【0044】
それにより、第1ロータ20は、ステータ40と軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されている。第2ロータ30は、軸受カバー53、各アーム54、およびリング枠51に囲まれたスペースに収容されていて、第2ロータ30も、ステータ40と軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されている。
【0045】
具体的には、第1ロータ20および第2ロータ30の各々のマグネット25は、ステータ40に設けられたアーマチュア42の一群と、軸方向に対向するように構成されている。
【0046】
詳細には、第2ロータ30の各々のマグネット25は、ステータ40に設けられたアーマチュア42の一群と、直接、軸方向に対向するように構成されている。対して、第1ロータ20の各々のマグネット25は、基板41を介した状態で、ステータ40に設けられたアーマチュア42の一群と、軸方向に対向するように構成されている。
【0047】
そして、第1ロータ20および第2ロータ30の各々のマグネット25は、環状領域R(ステータ40に設けられた制御回路43)と、軸方向に対向しないように構成されている。
【0048】
すなわち、第1ロータ20および第2ロータ30の各々のマグネット25は、アーマチュア42の一群のみと、軸方向に対向するように構成されていて、制御回路43や配線パターン43eとは対向していないので、渦電流損の発生が抑制できる。従って、モータを、よりいっそう高効率化できる。
【0049】
シュラウド10は、フィン13が立設されているボトム部11の裏側をリング枠51に向け、第2ロータ30に被さる状態で、フレーム50に固定されている。それにより、シュラウド10、およびインペラを兼用する第2ロータ30により、遠心型のファンが構成されている。なお、ここでは遠心型のファンとしたが、射流型のファンとしてもよい。
【0050】
(アーマチュア42)
各アーマチュア42は、図5Aに拡大して示すように、指先に乗るレベルの微小な部品からなる。アーマチュア42は、このような微小な大きさであることから、高効率、高出力なモータを実現するために、その素材や形状が工夫されている。
【0051】
モータを高出力にするには、できるだけ大きな電流をコイル42aに供給して、強い磁力を発生させる必要がある。大きな電流をコイル42aに流すためには、太い電線が好ましく、高効率で強い磁力を発生するには、コイル42aに鉄心42bを設けたり占積率を高めたりするのが好ましい。
【0052】
そこで、図5Bに示すように、アーマチュア42は、コイル42aと、鉄心42bとで構成されている。鉄心42bは、鉄粉等を圧縮成形して形成されており、一対のフランジ部420,420および巻回部421で構成されている。各フランジ部420は、板状の部分であり、角部が丸められた略扇形に形成されている。
【0053】
詳しくは、各フランジ部420は、窄まった形状の頂角部420aと、頂角部420aから互いに離れて延びる一対の対向辺部420b,420bと、湾曲した状態でこれら対向辺部420b,420bに連なる底辺部420cとを有している(図11B参照)。
【0054】
巻回部421は、フランジ部420に直交して延びる柱状の部分であり、角部が丸められた略正三角形の断面を有している。巻回部421は、一方のフランジ部420の中央部に立設されている。各鉄心42bは、フランジ部420の頂角部420aが軸受40aと対向するようにして基板41に配置されている。
【0055】
予め所定形状のコイル42aを形成し、そのコイル42aを鉄心42bに装着することにより、アーマチュア42は形成されている。すなわち、コイル42aには、巻回部421よりも僅かに大きな略三角形の断面を有する挿入孔423が設けられていて、この挿入孔423に巻回部421が差し込まれる。そうして、挿入孔423から突出する巻回部421の突端に、他方のフランジ部420を取り付けることにより、アーマチュア42は形成されている。
【0056】
図6Aに示すように、コイル42aは、銅等の電気導体424aを絶縁膜424bで被覆して構成された電線424を巻回して形成されている。このモータでは、その電線424に、長方形の断面を有する平角線が用いられている。図6Aに矢印で示すように、平角線を、その短辺側に曲げることによってコイル42aが形成されている(いわゆるエッジワイズ巻き)。
【0057】
平角線であれば、隙間無く積層できるので、丸線に比べて高い占積率が得られる。しかも、エッジワイズ巻きであれば、厚みの小さい短辺側が積層されていくので、巻回方向(軸方向)におけるコイル42aのサイズも小さくできる。短辺側が小さくても、長辺側を大きくすることで、平角線の断面積を大きく、つまり電線424を太くできる。
【0058】
ところが、このミニファンモータ2の場合、コイル42aは、上述したように超ミニサイズになる。そのため、極小の鉄心42bに対して、断面の大きな平角線を巻回しなければならない。それに対し、このアーマチュア42では、予め所定の巻回形状に形成したコイル42aを鉄心42bに装着することによって構成されている。従って、極小の鉄心42bに対し、断面の大きい平角線を、しかも曲げ難いエッジワイズ巻きで巻き付ける必要がない。従って、製造が容易にできる。
【0059】
更に、平角線の曲げR(品質が保証できる曲げ半径の限界値)は、曲げる方向の線幅の3/4以上とされている。そのため、長辺側が大きな平角線を、極小の巻回部421の断面形状に合わせて、そのまま曲げると、曲げRの限界を超える。従って、絶縁膜424bが破れたり導線が破断したりするおそれがあり、適正な品質が確保できない。
【0060】
そこで、このミニファンモータ2では、平角線(電線424)を、短辺側に並列した状態で密着して延びる2本以上の要素平角線425で構成している。各要素平角線425の端部は、平角線の端部と同様に、配線パターン43eに接続される(並列接続)。
【0061】
図6Bに、その一例を示す。このミニファンモータ2では、上段に示すサイズの平角線(基準平角線424S)が要求されているとする。中段には、2本の要素平角線425,425で、その基準平角線424Sを構成する場合を示している。下段には、3本の要素平角線425,425,425で、その基準平角線424Sを構成する場合を示している。要素平角線425の構造は、平角線424と同じである。
【0062】
各要素平角線425の断面における短辺側の大きさは、基準平角線424Sと同じである。一方、各要素平角線425の断面における長辺側の大きさ(線幅)は、基準平角線424Sに対し、ほぼ、その本数で割った大きさになっている(絶縁膜424bの厚みの分の差異はあるが、その差異は僅か)。従って、各要素平角線425の電気導体424aの断面積の総和は、基準平角線424Sの電気導体424aの断面積と略同じである。
【0063】
このように、平角線を複数の要素平角線425で構成すれば、曲げる方向の線幅は、個々の要素平角線425の線幅になるので、曲げRを小さくできる。従って、電気導体424aの大きな断面積を維持しながら、極小の巻回部421の断面形状に合わせて曲げることが可能になる。
【0064】
要素平角線425の本数は、仕様に応じて適宜選択できる。このミニファンモータ2の場合、中段の構成(2本の要素平角線425)が採用されている。3本以上になると、短辺側に並列した状態で密着させるのが難しくなるが、2本であれば、比較的容易に短辺側に並列した状態で密着させることができる。すなわち、製造が容易である。
【0065】
このように、このミニファンモータ2によれば、平角線424をエッジワイズ巻きすることによって、コイル42aが形成されているので、軸方向にコイル42aを小さくしながら、占積率を高めることができる。アーマチュア42に鉄心42bが設けられているので、高効率で強い磁力を発生することができる。
【0066】
平角線424が、短辺側に並列した状態で密着して延びる複数の要素平角線425で構成されているので、曲げRを小さくでき、極小の巻回部421に、電気導体424aの断面積の大きな電線424を巻回することができる。従って、電流密度を下げることができるので、大電流を効率的かつ安定して流すことができる。
【0067】
予め所定形状に巻回したコイル42aを鉄心42bに装着するので、アーマチュア42の製造も容易にできる。
【0068】
<応用例>
図7に示すように、配置の関係上、曲げる方向の内側に位置する要素平角線425(符号425iで表す)よりも、曲げる方向の外側に位置する要素平角線425(符号425oで表す)の方が、全長が長くなる。線幅が大きくなると、それだけ、全長に差が生じる。
【0069】
要素平角線425i,425oの全長に差があると、それに伴って電気抵抗も差が生じる。要素平角線425i,425oの電気抵抗に差があると、電位差が発生し、図7に矢印Yで示すように、要素平角線425i,425oの端部、すなわち、それぞれを覆っている絶縁膜が剥がされて導体が露出している部位(同じ端子に接続される部位)の間で循環電流が流れる。全長の差が大きくなると、循環電流による損失が大きくなるため、モータ出力に影響が出るおそれがある。
【0070】
そこで、そのような場合には、各要素平角線425の電気抵抗の値が略同一になるようにするのが好ましい。
【0071】
例えば、図8Aに示すように、要素平角線425の端部が、互いに離れて位置するように配置するとよい。具体的には、曲げる方向の外側に位置する要素平角線425oよりも、曲げる方向の内側に位置する要素平角線425iの方が、曲げ中心に対して外周側に位置するよう、互い違いに配置すればよい。
【0072】
そうすることで、各要素平角線425i,425oの全長を略同一できる。全長が略同一になれば、電気抵抗の値が略同一になるので、循環電流を抑制できる。従って、高いモータ出力を維持できる。
【0073】
図8Bに示すように、要素平角線425i,425oの各々の幅WI,WOを、互いに異なるようにしてもよい。この場合も、各要素平角線425i,425oの抵抗値を略同一にできる。端部の位置が同じであるため、配置面で利点である。
【0074】
なお、平角線は、上述したように、3本以上の要素平角線で構成してもよい。
【0075】
-第2の実施形態-
図9に、第2実施形態のミニファンモータ2を示す。第2実施形態のミニファンモータ2の基本的な構成は、第1の実施形態と同じである。すなわち、本実施形態でも、基本的構成に関しては、第1の実施形態で説明した内容と同じである。従って、第1の実施形態では説明されていない、本実施形態特有の内容について説明する。
【0076】
(基板)
図10に示すように、基板41は、多層のプリント基板であり、その主体は積層された複数の絶縁性のプレートで構成されている。これらプレートの間に、所定形状に形成された銅箔等の電気導体を挟み込むことで、電気配線の回路(いわゆる配線パターン)が設けられている。
【0077】
制御回路43は、第1の実施形態と同様に、コンデンサ431aやスイッチング素子431bなどの制御用の電気部品(制御部品431)を含む。これら制御部品431は、各アーマチュア42への通電を制御する。制御回路43はまた、コネクタが付いているケーブル432aを有する端子部432も含む。ケーブル432aは、制御部9との接続に用いられる。
【0078】
これら制御部品431、端子部432、各アーマチュア42のコイル42aなどが、配線パターンを介して電気的に接続されている。従って、半田付けが必要になるケーブル等を大幅に省略できるので、製造コストが削減できるし、品質を向上できる。特に、このファンモータ2では、大電流が流れるので、太いケーブルを密集して配線する必要があるので効果的である。配線パターンであれば、銅箔の厚みや幅を大きくすればよいので、ミニファンモータ2に好適である。
【0079】
アーマチュア42の各々は、U相,V相,およびW相の3相からなるコイル群を構成している。このファンモータ2では、各相のコイル群は一対のコイル42a,42aからなり、点対称状に位置するアーマチュア42どうしで同相のコイル群を構成している。
【0080】
制御部品431は、各相に対応して3組設けられており、各相のコイル群に流れる電流の位相が異なるように制御する。そうすることにより、各アーマチュア42と第1ロータ20および第2ロータ30のマグネット25との間に発生する磁力の作用で、ミニファンモータ2が回転する。
【0081】
制御部品431は、第1の実施形態と同様に、基板41における各アーマチュア42よりも径方向外側の環状の領域(外側環状領域Ro)に配置されている。制御部品431は、外側環状領域Roの両面に設けられている。
【0082】
そして、本実施形態のミニファンモータ2では、より小型軽量化、高効率化、高出力化を向上できるように、アーマチュア42とともに、基板41および制御回路43も工夫されている。
【0083】
すなわち、このミニファンモータ2では、図11Aに示すように、平角線424を、短辺側に並列した状態で密着して延びる一対の平角線で構成している。換言すれば、平角線は、内外に密着して並列した状態で巻回方向に延びる外側要素線424oおよび内側要素線424iで構成されている。
【0084】
このように、平角線を2つに分けて構成すれば、曲げる方向の線幅は、半分になるので、曲げRを小さくできる。従って、電気導体の大きな断面積を維持しながら、極小の巻回部421の断面形状に合わせて曲げることが可能になる。
【0085】
このように、このミニファンモータ2によれば、平角線424をエッジワイズ巻きすることによって、コイル42aが形成されているので、軸方向にコイル42aを小さくしながら、占積率を高めることができる。アーマチュア42に鉄心42bが設けられているので、高効率で強い磁力を発生することができる。
【0086】
平角線424が、曲げる方向の線幅が小さい2つの平角線で構成されているので、曲げRを小さくでき、極小の巻回部421に、電気導体の断面積の大きな電線424を巻回することができる。従って、電流密度を下げることができるので、大電流を効率的かつ安定して流すことができる。
【0087】
予め所定形状に巻回したコイル42aを鉄心42bに装着するので、アーマチュア42の製造も容易にできる。
【0088】
(コイルの工夫)
各コイル42aにおいて、外側要素線424oの一端と内側要素線424iの他端とが直接接続されている。例えば、図11A図11Bにおいて、上側の端部からコイル42aを巻き始めたとすると、外側要素線424oおよび内側要素線424iの各々は、その巻き始め側の端部に、コイル42aの外周面に沿って巻き終わり側に向かって延びる縦延出部425を有している。これら縦延出部425は、フランジ部420の底辺部420cにおける一方の隅部の近傍に位置している。
【0089】
外側要素線424oの縦延出部425の端部は、図11Bに二点鎖線で示すように、フランジ部420よりも外方に位置して下方に突出している(外側接続端部426)。対して、内側要素線424iの縦延出部425の端部は、フランジ部420よりも上方に位置している。
【0090】
一方、外側要素線424oの巻き終わり側の端部は、フランジ部420の底辺部420cにおける他方の隅部の近傍から、巻回方向を内側要素線424iの縦延出部425の端部に向かって延びている(横延出部427)。そして、横延出部427の端部の電気導体と、内側要素線424iの縦延出部425の端部の電気導体とが、溶接等によって連結されている。その結果、各アーマチュア42が有する1つのコイル42aは、互いに直列に接続された2つの外側要素コイルおよび内側要素コイルで構成されている。
【0091】
通常であれば、これら端部は、基板41の所定位置に半田付けすることにより、基板41の配線パターンを介して接続される。それに対し、このファンモータ2では、コイル42aそれ自体で接続したので、基板41での接続箇所を削減できる。その結果、基板41をよりいっそう小型化できる。半田付け作業が減るので、品質も向上する。
【0092】
内側要素線424iと外側要素線424oとでは全長差があるので、これらに電流が流れると電位差が発生する。その電位差により、これら内側要素線424iおよび外側要素線424oの各端部を近い位置で基板41に電気的に接続すると、これらの間に循環電流が発生する。それに対し、このように接続することで、そのような循環電流の発生も防止できる。
【0093】
内側要素線424iの巻き終わり側の端部は、フランジ部420の頂角部420aの近傍で下方に向けて屈曲されている。それにより、図11Bに二点鎖線で示すように、その位置からフランジ部420よりも外方に位置して下方に突出している(内側接続端部428)。外側接続端部426および内側接続端部428は、それぞれ基板41に設けられている配線パターンに接続される。
【0094】
(基板および制御回路の工夫)
図12A図12Bに、基板41および制御回路43を示す。図12Aは、アーマチュア42を取り付ける前の基板41を表している。図12Bは、外側要素線424oと内側要素線424iと制御回路43との配線構造を表している。
【0095】
図12Aに示すように、基板41の中央には、軸受40aが設置される貫通孔412が形成されている。そして、その貫通孔412の周囲には、基板41における各アーマチュア42よりも径方向内側に位置する環状の領域(内側環状領域Ri)が設けられている。
【0096】
この内側環状領域Riに、周方向に等間隔で配置された6箇所の内側接点が設けられている(第1~第6の内側接点413a~413f)。内側環状領域Riにはまた、環状の配線パターン(中性点パターン414)が設けられている。内側接点413a~413fの各々は、中性点パターン414を介して互いに電気的に接続されている。
【0097】
そして、外側環状領域Roの内周側の縁部にも、周方向に等間隔で配置された6箇所の外側接点が設けられている(第1~第6の外側接点415a~415f)。外側環状領域Roの内周側の縁部にはまた、3つの円弧状の配線パターン(中継パターン416u~416w)が設けられている。
【0098】
互いに点対称に位置している3対の外側接点(第1外側接点415aと第4外側接点415d、第2外側接点415bと第5外側接点415e、第3外側接点415cと第6外側接点415f)の各々は、対応する中継パターン416u~416wを介して電気的に接続されている。なお、図示はしないが、中継パターン416u~416wは、各相のコイル42aに通電するために、各相に対応した制御部品431と配線パターンを介して電気的に接続されている。
【0099】
そして、内側接続端部428を内側接点413a~413fの各々に半田付けし、外側接続端部426を外側接点415a~415fの各々に半田付けすることにより、各アーマチュア42を基板41に設置する。
【0100】
そうすることで、図12Bに示すように、各アーマチュア42のコイル42aのうち、同じ位相のコイル群を構成している一対のコイル42a,42aは、中性点パターン414と中継パターン416u~416wとの間に、並列に接続されている。中性点パターン414は、各相のコイル群の一端を互いに電気的に接続することにより、中性点を構成している。
【0101】
中継パターン416u~416wは、各相のコイル群の他端と、各相に対応した制御部品431とを互いに電気的に接続することにより、中継点を構成している。それにより、各相のコイル群は、いわゆるY結線(スター結線)された状態となっている。
【0102】
このように、内側環状領域Riに中性点を配置し、外側環状領域Roに中継点を配置することにより、基板41におけるこれら内側環状領域Riと外側環状領域Roとの間の部分に、配線パターンが存在しない領域(無パターン領域Rn)が形成されている。そして、この無パターン領域Rnにアーマチュア42が設置されている。
【0103】
仮に、この領域に配線パターンが存在していると、モータが駆動されたときに、磁束が配線パターンを通過するので、渦電流が発生する。それに対し、このファンモータ2では、無パターン領域Rnが形成されているので、渦電流の発生を効果的に抑制できる。従って、モータ効率、モータ出力が向上する。
【0104】
しかも、基板41に配線パターンを効率的に配置でき、制御回路43をコンパクトに構成できる。内側環状領域Riには、中性点パターン414と各内側接点413a~413fとを設けるだけでよいので、小さい領域でよく、基板41の中心部に効率的に配置できる。
【0105】
対して、外側環状領域Roには、中継パターン416u~416wだけでなく、他の配線パターンや複数の制御部品431が設置される。従って、大きい領域が必要であるが、外側環状領域Roであれば、比較的面積が大きいので、制御部品431が大きかったり制御部品431が多数であったりしても、支障無く配置できる。しかも、外部の装置と容易に電気的に接続できる。効率よく配線できる。
【0106】
基板41が小さいと、相対的に、制御部品431の占める領域が拡大する。特に、スイッチング素子431bは、モータの駆動時には高温になるので、基板41もそれに伴って高温になり易い。基板41が高温になると、スイッチング素子431b以外の制御部品431や配線パターンが損傷するおそれがある。
【0107】
そこで、このファンモータ2では、上述した工夫による制御回路43の縮小によって余った領域を利用して、基板41の温度上昇を抑制できるようにしている。すなわち、外側環状領域Roの所定箇所に、ベタパターン429からなる放熱部が設けられている。
【0108】
具体的には、図12Aに示すように、外側環状領域Roにおける制御部品431や配線パターンが設置されていない複数の領域に、その略全域に隙間無く一様に拡がる銅箔(ベタパターン429)が設けられている。これらベタパターン429は、配線パターンとは異なり、制御部品431等と電気的には接続されていない。各ベタパターン429は、通電されない独立したパターンとなっている。
【0109】
これらベタパターン429は、プレートよりも熱伝達に優れるため、基板41の温度が高くなると、これらベタパターン429を介して効果的に放熱できる。従って、小さな基板41に高温になる制御部品431等が密集していても、基板41の温度上昇を抑制できる。
【0110】
なお、図13に、図5Aに示したアーマチュア42を用いた第1実施形態の配線図を例示する。
【0111】
この場合、外側に位置する要素平角線425oの端部2箇所と、内側に位置する要素平角線425iの端部2箇所とが、基板の所定位置(外側環状領域Roに相当する領域の所定位置)の接点pに半田付けすることによって制御回路43と接続されている。
【0112】
同相のアーマチュア42のうち、一方のアーマチュア42の要素平角線425iと他方のアーマチュアの要素平角線425oとが接続されている。このように配線すれば、個々のアーマチュア42の内外の長さの差を相殺できる。従って、循環電流による損失を抑制できる。なお、接点pは、内側環状領域Riに相当する領域に位置していてもよい。接点pの位置は、仕様に応じて選択すればよい。
【0113】
なお、開示する技術にかかるミニファンモータは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0114】
適用できる掃除機は、スティック型に限らない。例えば、ロボット型の掃除機にも好適である。ロータは2つが好ましいが、1つであってもよい。ロータの一方は、鋼板などの磁性体で代用してもよい。
【0115】
<各実施形態において開示した技術の特徴>
(第1の実施形態)
前記ミニファンモータは、放射状に配置された複数のベーンを有し、軸方向に延びるシャフトに固定されているインペラと、中央部に吸気口を有し、前記インペラに被さるように配置されるシュラウドと、磁極を構成する複数のマグネットを有し、前記シャフトに固定されているロータと、前記ロータと軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されているステータと、を備える。
【0116】
前記ステータは、中心部に前記シャフトを回転可能に支持する軸受が設置されている基板と、前記軸受の周りに配置された、コイルおよび鉄心からなる複数のアーマチュアと、を有している。そして、長方形の断面を有する平角線をその短辺側に曲げることにより、前記平角線の短辺側が前記鉄心に接して巻回されるように、前記コイルが形成されている。
【0117】
すなわち、このミニファンモータでは、遠心ファンと、アキシャルギャップ型のモータとが一体に構成されている。そのモータを構成するステータが、シャフトを軸支する軸受が中心部に設置されている基板を有し、その基板の軸受の周りに複数のアーマチュアが配置されている。そして、これらアーマチュアが、鉄心とコイルとで構成されていて、そのコイルが、長方形の断面を有する平角線をその短辺側に曲げること、すなわちエッジワイズ巻きによって形成されている。
【0118】
平角線であれば、隙間無く積層できるので、丸線に比べて高い占積率が得られる。しかも、エッジワイズ巻きであれば、厚みの小さい短辺側が積層されていくので、巻回方向(軸方向)におけるコイルのサイズも小さくできる。短辺側が小さくても、長辺側を大きくすることで、平角線の断面積を大きく、つまり電線を太くできる。従って、高出力が発揮できるミニファンモータを実現できる。
【0119】
前記ミニファンモータはまた、前記鉄心が、軸方向に延びて、角部が丸められた略三角形の断面を有する巻回部を有し、前記巻回部に前記平角線が巻回されている、としてもよい。
【0120】
そうすれば、各アーマチュアを、より密集した状態で基板の中心部に集約して配置することができる。従って、ミニファンモータのサイズを、よりいっそう小さくできる。
【0121】
前記ミニファンモータはまた、前記平角線が、短辺側に並列した状態で密着して延びる2本以上の要素平角線で構成されている、としてもよい。
【0122】
ミニファンモータの場合、コイルは、超ミニサイズになる。そのため、極小の鉄心に対して、断面の大きな平角線を巻回しなければならない。それに対し、平角線の曲げR(品質が保証できる曲げ半径の限界値)は、曲げる方向の線幅の3/4以上とされている。そのため、長辺側が大きな平角線を、極小の鉄心に合わせて曲げると、曲げRの限界を超える。従って、平角線の絶縁膜が破れたり導線が破断したりするおそれがあり、コイルの適正な品質が確保できない。
【0123】
平角線を複数の要素平角線で構成すれば、曲げる方向の線幅は、個々の要素平角線の線幅になるので、曲げRを小さくできる。従って、平角線の大きな断面積を維持しながら、大きく曲げることが可能になるので、コイルの電流密度を下げることができ、高出力が発揮できるミニファンモータを実現できる。
【0124】
前記ミニファンモータはまた、前記要素平角線の端部が、互いに離れた位置に配置されている、としてもよい。
【0125】
詳細は後述するが、各要素平角線の電気抵抗の差に起因して循環電流が流れることで、モータ出力に影響が出るおそれがある。それに対し、要素平角線の端部を、互いに離れた位置に配置すれば、各要素平角線の電気抵抗の差を略同一にして循環電流を抑制できる。従って、モータの高出力を維持できる。
【0126】
具体的には、前記要素平角線の各々の全長を略同一にすればよい。
【0127】
前記ミニファンモータはまた、前記要素平角線の各々の幅が互いに異なっている、としてもよい。
【0128】
この場合も、各要素平角線の抵抗値を略同一にできる。従って、モータの高出力を維持できる。
【0129】
前記ミニファンモータはまた、前記ステータは、前記コイルへの通電を制御する制御回路を更に有し、前記制御回路が、前記基板における前記アーマチュアよりも径方向外側の領域に配置されている、としてもよい。
【0130】
そうすれば、ロータは、アーマチュアの一群と軸方向に対向するので、制御回路とは対向しない。従って、渦電流損の発生が抑制できるので、モータを、よりいっそう高効率化できる。しかも、径方向外側の領域であれば、面積が大きいので、余裕をもって制御回路を配置できる。
【0131】
その場合、前記コイルと前記制御回路とが、前記基板に設けられた配線パターンを介して接続されている、とするのが好ましい。
【0132】
そうすれば、電線が不要になるので、製造が容易になるし、構造も簡素化される。
【0133】
(第2の実施形態)
前記ミニファンモータは、放射状に配置された複数のベーンを有し、軸方向に延びるシャフトに固定されているインペラと、中央部に吸気口を有し、前記インペラに被さるように配置されるシュラウドと、磁極を構成する複数のマグネットを有し、前記シャフトに固定されているロータと、前記ロータと軸方向に所定のギャップを隔てて対向配置されているステータと、を備える。
【0134】
前記ステータは、中心部に前記シャフトを回転可能に支持する軸受が設置されている基板と、前記軸受の周りに配置された、コイルおよび鉄心からなる複数のアーマチュアと、を有している。前記コイルは、長方形の断面を有する平角線をその短辺側に曲げることにより、前記平角線の短辺側が前記鉄心に接して巻回されるように形成されていて、前記平角線は、内外に密着して並列した状態で巻回方向に延びる一対の外側要素線および内側要素線で構成されている。そして、前記外側要素線の一端と前記内側要素線の他端とが接続されることにより、前記コイルが、互いに直列に接続された外側要素コイルおよび内側要素コイルで構成されている。
【0135】
すなわち、このミニファンモータのアーマチュアが有するコイルは、エッジワイズ巻きによって形成されている。従って、高さを抑制しながら高い占積率を得ることができる。そして、その平角線が一対の外側要素線および内側要素線で構成されている。従って、曲げる方向の線幅が小さくなるので、曲げRを小さくでき、小さなコイルでも安定した品質で形成できる。
【0136】
更に、外側要素線の一端と内側要素線の他端とが接続されることにより、コイルが、互いに直列に接続された外側要素コイルおよび内側要素コイルで構成されている。電位差の発生によって、これらの間に循環電流が発生するおそれがあるが、このように接続することで、そのような循環電流の発生も防止できる。
【0137】
前記外側要素線の一端と前記内側要素線の他端とが直接接続されている、としてもよい。
【0138】
そうすれば、基板での接続箇所を削減できる。その結果、基板をよりいっそう小型化できる。半田付け作業が減るので、品質も向上する。
【0139】
前記アーマチュアの各々は、流れる電流の位相が異なる複数のコイル群を含み、同じ位相の前記コイル群を構成している前記コイルの各々が、互いの前記外側要素線の他端と前記内側要素線の一端とを接続することにより、並列に接続されている、としてもよい。
【0140】
そうすれば、制御回路の配線を簡素化できる。従って、基板をより小型化できる。
【0141】
前記ステータは更に、前記コイル群への通電を制御する制御部品を有し、前記制御部品が、前記アーマチュアよりも前記基板の径方向外側の領域に配置されている、としてもよい。
【0142】
その領域は、比較的面積が大きいので、制御部品が大きかったり制御部品が多数であったりしても、支障無く配置できる。しかも、外部の装置と容易に電気的に接続できる。効率よく配線できる。従って、基板をより小型化できる。
【0143】
前記制御部品と前記コイル群の各々とが、前記基板に設けられた配線パターンを介して接続されている、としてもよい。
【0144】
そうすれば、半田付けが必要になるケーブル等を大幅に省略できるので、製造コストが削減できるし、品質を向上できる。特に、このファンモータでは、大電流が流れるので、太いケーブルを密集して配線する必要があるので効果的である。配線パターンであれば、銅箔の厚みや幅を大きくすればよいので、ミニファンモータに好適である。
【0145】
前記コイル群の各々がY結線されていて、前記コイル群の各々を接続する中性点が、前記アーマチュアよりも前記基板の径方向内側の領域に配置されている、としてもよい。
【0146】
そうすれば、基板のアーマチュアの設置領域に、配線パターンが存在しない領域が形成される。この領域に配線パターンが存在していると、モータが駆動されたときに、磁束が配線パターンを通過するので、渦電流が発生するが、配線パターンが無いので、渦電流の発生を効果的に抑制できる。従って、モータ効率、モータ出力が向上する。
【0147】
しかも、基板に配線パターンを効率的に配置でき、制御回路をコンパクトに構成できる。内側の領域には小さい中性点を設けるだけでよいので、基板の中心部に効率的に配置できる。
【0148】
前記アーマチュアよりも前記基板の径方向外側の所定の領域に、ベタパターンからなる放熱部が設けられている、としてもよい。
【0149】
基板が小さいと、相対的に制御部品の占める領域が拡大する。制御部品は高温になるので、基板もそれに伴って高温になり易い。ベタパターンは熱伝達に優れるため、基板の温度が高くなると、これらベタパターンを介して効果的に放熱できる。従って、小さな基板に高温になる制御部品が密集していても、基板の温度上昇を抑制できる。
【0150】
また、第1および第2の実施形態の各々において、前記ロータは、前記ステータ1つに対して2つあり、当該ロータの各々が、前記ステータの両側にそれぞれ配置されていて、前記ロータの一方が、前記インペラを兼用している、としてもよい。
【0151】
そうすれば、よりいっそう高出力が発揮できるし、部材点数が削減されて構造が簡素化され、サイズもコンパクトになる。
【0152】
外径が100mm以下、全高が50mm以下であり、吸込仕事率が300W以上である、としてもよい。
【0153】
そうすれば、サイズ、性能ともに、スティック型の掃除機の掃除機に好適であり、操作性、利便性に優れた掃除機が実現できる。
【符号の説明】
【0154】
2 ミニファンモータ
10 シュラウド
20 第1ロータ
30 第2ロータ(インペラ)
40 ステータ
41 基板
42 アーマチュア
42a コイル
42b 鉄心
424 電線(平角線)
424i 内側要素線
424o 外側要素線
43 制御回路
431 制御部品
60 シャフト
A 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13