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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240613BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240613BHJP
   G03G 9/10 20060101ALI20240613BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G03G9/097 375
G03G9/087 331
G03G9/097 371
G03G9/10
G03G5/05 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020147591
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042253
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 博毅
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-056981(JP,A)
【文献】特開2014-178528(JP,A)
【文献】特開2014-174341(JP,A)
【文献】特開2015-176024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/113
G03G 5/04-5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーと、キャリアとを含む2成分現像剤を用いる画像形成装置であって、
前記トナーは、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー母体粒子を有するトナーであ
前記トナー母体粒子の表面に、一次粒子が2個以上会合した会合シリカが存在し、
前記トナー母体粒子に対する会合シリカによる被覆率が1%以上2.5%以下であり、
前記トナー母体粒子に対する会合シリカの付着強度が75%以上90%以下であり、
前記会合シリカが、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理されており、
前記画像形成装置が感光体ドラムを備え、
前記感光体ドラムの表面のSP値と、前記結晶性ポリエステル樹脂のSP値との差が1.8以上2.9以下であり、
前記感光体ドラムの表面を形成する樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする画像形成装置
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記会合シリカの平均粒子径が、10nm以上200nm以下であることを特徴とする画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、2成分現像剤及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、複合機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置においては、感光体ドラム(例えば、図2の符号10)上に残ったトナーを、クリーニングブレード(例えば、図2の符号61)で回収している。ところが、感光体ドラム上に残ったトナーをクリーニングブレードで回収しきれずに、すり抜けてしまう現象(すり抜け現象)が発生する場合がある。
【0003】
すり抜け現象が発生する原因としては、現像槽(例えば、図2の符号42)内におけるトナー同士の摩擦で、外添剤である真球状の大粒径シリカがトナー母体粒子(トナーコア)表面上を転がり、トナー母体粒子表面に存在する凹部に大粒径シリカが偏在すること(図3及び図4参照)で、べたつきを有するトナー母体粒子表面が露出して感光体ドラム表面との接着力の高い状態になることや、大粒径シリカが真球状であるがゆえにクリーニングブレードにトナーが引っかからず、掻き取りにくいことが挙げられる。
【0004】
近年、省エネ化が求められる中で、トナー母体粒子中に結晶性ポリエステル樹脂を配合することにより、低温定着を実現する手法が確立されてきた。しかしながら、結晶性ポリエステル樹脂を配合すると、トナーと感光体ドラム表面とのSP値が近くなってしまい、トナーの感光体ドラムへの接着力が上がってしまう。また、低湿環境下では結晶性ポリエステルを含むトナーは帯電が高くなり、より一層感光体ドラムとの接着力が上がる。そのため、真球状の大粒径シリカを用いたトナーであっても、結晶性ポリエステル樹脂を含有していないトナーにおいてはすり抜け現象の発生を防ぐことができていたのに対し、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナーにおいてはすり抜け現象の発生を防ぎきれないという問題がある。
【0005】
特許文献1~3には、トナーの外添剤として、真球状の大粒径シリカではなく、会合シリカを使用することが開示されている。しかしながら、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナーにおける上記の課題を解決し得るトナーを開示するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-163622号公報
【文献】特開2013-190646号公報
【文献】特許第5439308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、結晶性ポリエステル樹脂を含むトナー母体粒子(トナーコア)を有するトナーにおける、すり抜け現象の発生を抑制することができるトナー、このトナーを用いた2成分現像剤、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、次のトナー、2成分現像剤、及び画像形成装置を提供する。
【0009】
(1)トナー
本発明によるトナーは、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー母体粒子を有するトナーであって、上記トナー母体粒子の表面に、一次粒子が2個以上会合した会合シリカが存在し、上記トナー母体粒子に対する会合シリカによる被覆率が1%以上30%以下であり、上記トナー母体粒子に対する会合シリカの付着強度が20%以上90%以下であるトナーである。
【0010】
上記の発明によれば、会合シリカをトナー母体粒子に外添する(付着させる)ことにより、真球状のシリカの場合よりもシリカ粒子とトナー母体粒子表面との接触点及び接触面積が大きくなるため、シリカ粒子はトナー母体粒子の凹部に偏在しにくくなる。その結果、トナー母体粒子表面の露出を抑制できる。そのうえ、クリーニングブレードとシリカ粒子との接触面積も増えるため、クリーニングブレードに引っかかりやすくなり、感光体ドラム上に残ったトナーをうまく掻き取れるようになる。したがって、すり抜け現象の発生を抑制することができる。
【0011】
上記のトナーにあっては、さらに、上記会合シリカが、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理されていることが好ましい。
【0012】
この場合、会合シリカがヘキサメチルジシラザンで疏水化処理されていることにより、高湿環境下における帯電を維持したまま、低湿環境下においてシリカ内部の水分を表面に放出し電気的にリーク効果を持たせることができると考えられるため、感光体ドラムとの接着力を抑制することができる。したがって、すり抜け現象の発生をより一層抑制することができる。
【0013】
また、上記のトナーにあっては、さらに、上記会合シリカの平均粒子径が、10nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0014】
上記会合シリカの平均粒子径が、10nm以上200nm以下の範囲内であることによって、トナーの外添剤に求められる機能である、トナー同士の凝集を防止すること、及びトナーの転写性を向上することができる。
【0015】
(2)2成分現像剤
本発明による2成分現像剤は、上記のトナーと、キャリアとを含む2成分現像剤である。2成分現像剤が上記のトナーを含むことにより、すり抜け現象の発生を抑制した2成分現像剤を実現することができる。
【0016】
(3)画像形成装置
本発明による画像形成装置は、上記の2成分現像剤を用いる画像形成装置である。画像形成装置が、上記の2成分現像剤を用いたものであることにより、すり抜け現象の発生を抑制した画像形成装置を実現することができる。
【0017】
上記の画像形成装置にあっては、当該画像形成装置が感光体ドラムを備え、当該感光体ドラムの表面のSP値と、上記結晶性ポリエステル樹脂のSP値との差が1.5以上であることが好ましい。
【0018】
上記感光体ドラム表面のSP値と、上記トナー中に含まれる結晶性ポリエステル樹脂のSP値との差を1.5以上にすることにより、感光体ドラムとトナーとの接着力を下げることができ、すり抜け現象の発生を抑制することができる。
【0019】
上記感光体ドラムの表面を形成する樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0020】
画像形成装置が備える感光体ドラムの表面(最外層である電荷輸送層)には、一般的にポリカーボネート樹脂が使用されるが、ポリテトラフルオロエチレンを使用することによって、感光体ドラム表面のSP値と結晶性ポリエステル樹脂のSP値とが離れ、SP値の差を1.5以上にすることができるため、トナーの感光体ドラム表面への接着を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、結晶性ポリエステル樹脂を含むトナー母体粒子を有するトナーにおける、すり抜け現象の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】シリカの一次粒子が2個以上会合した会合シリカを模式的に示す説明図である。
図2】本実施の形態に係る2成分現像剤で現像する現像装置を備えた画像形成装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図3】外添剤として真球状の大粒径シリカを用いたトナーにおいて、大粒径シリカがトナー表面上を転がり、トナー表面に存在する凹部に大粒径シリカが偏在する様子を模式的に示す説明図のうち、偏在する前の状態を示す説明図である。
図4】外添剤として真球状の大粒径シリカを用いたトナーにおいて、大粒径シリカがトナー表面上を転がり、トナー表面に存在する凹部に大粒径シリカが偏在する様子を模式的に示す説明図のうち、偏在した後の状態を示す説明図である。
図5】すり抜け現象の機序を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明はトナー、2成分現像剤、及び画像形成装置を含む。以下、これらについて詳細に説明する。
【0024】
<トナー・トナー母体粒子>
本発明に係るトナーは、結着樹脂を含有するトナー母体粒子と、トナー母体粒子の表面に付着する外添剤とを有している。そして、本発明に係るトナーに用いる結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含む。また、本発明に係るトナーにおいては、結晶性ポリエステル樹脂が非晶性ポリエステル樹脂中に分散している。なお、以下において適宜、外添剤がトナー母体粒子の表面に付着したトナー粒子を有するトナーのことを、外添トナーという。
【0025】
トナー母体粒子の一次粒子の体積平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、体積平均粒子径が4μm以上8μm以下のトナー母体粒子が挙げられる。非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂は、熱可塑性樹脂である。結晶性ポリエステル樹脂は、粒子状となって、非晶性ポリエステル樹脂からなる母相中に分散して存在している。
【0026】
さらに、上記トナー母体粒子は、着色剤、電荷制御剤(CCA:Charge Control Agent)及び離型剤等を含み得る。外添剤以外の成分はまとめて内添剤とも呼ばれる。着色剤としては、電子写真分野で用いられる有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。電荷制御剤としては、電子写真分野で用いられる正電荷制御用及び負電荷制御用の電荷制御剤を使用できる。離型剤としては、電子写真分野で用いられるワックスを使用することができる。
【0027】
<結着樹脂>
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含む。結晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂中に分散している。
【0028】
本発明において、結晶性樹脂と非晶性樹脂とは、結晶性指数により区別され、結晶性指数が0.6以上1.5以下の範囲にある樹脂を結晶性樹脂とし、結晶性指数が0.6未満であるか又は1.5を超える樹脂を非晶性樹脂とする。結晶性指数が1.5を超える樹脂は非晶性であり、また、結晶性指数が0.6未満である樹脂は結晶性が低く、非晶性部分が多い。
【0029】
なお、結晶性指数とは、樹脂の結晶化の度合いの指標となる物性であり、軟化温度と吸熱の最高ピーク温度の比(軟化温度/吸熱の最高ピーク温度)により定義されるものである。ここで、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性ポリエステル樹脂においては、最高ピーク温度を融点とし、非晶性ポリエステル樹脂においては、最も高温側にあるピークをガラス転移点とする。
【0030】
結晶化の度合いは、原料モノマーの種類及び比率、並びに製造条件(例えば反応温度、反応時間、冷却速度)等を調整することで制御できる。
【0031】
<結晶性ポリエステル樹脂>
結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性指数が0.6~1.5であるポリエステル樹脂であるが、結晶性指数が0.8~1.2であるポリエステル樹脂が好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを重縮合させることによって得られる。例えば、特開2006-113473号公報に記載されるような公知の方法によって製造することができる。
【0032】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール等が挙げられるが、炭素数2~8の脂肪族ジオール等の、樹脂の結晶性を促進させる多価アルコールを用いることが好ましい。なお、これら多価アルコールは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
樹脂の結晶性を高める観点から、多価アルコール中における炭素数2~8の脂肪族ジオールの含有量は、80モル%以上であることが好ましく、また、炭素数2~8の脂肪族ジオールを2種以上用いる場合は、1種の炭素数2~8の脂肪族ジオールの含有量が、多価アルコール中70モル%以上であることが望ましい。
【0034】
多塩基酸としては、フマル酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の炭素数2~30、好ましくは2~8の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸等が挙げられ、高い結晶化度(結晶性指数)を得るためには、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数2~8の脂肪族ジカルボン酸がさらに好ましい。なお、これら多塩基酸は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、5mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0036】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量は、重量平均分子量(Mw)が、5000以上100000以下であるのが好ましく、数平均分子量(Mn)が、3000以上20000以下であるのが好ましい。本発明において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、移動相としてクロロホルムが使用され、標準物質にはポリスチレンが使用される。
【0037】
結晶性ポリエステル樹脂の軟化温度は、結晶性ポリエステル樹脂が60℃以上105℃以下であることが好ましい。
【0038】
本発明に係るトナーにおいて、結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、特に限定されないが、トナー母体粒子中5~20質量%であることが好ましく、7~15質量%であることがさらに好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記下限以上であることで、低温定着性を向上させ易くすることができる。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記上限以下であることで、トナーの耐熱保存性を向上させ易くすることができる。
【0039】
<非晶性ポリエステル樹脂>
非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性指数が0.6未満であるか又は1.5を超えるポリエステル樹脂であるが、結晶性指数が1.5を超えるポリエステル樹脂の方が好ましい。また、非晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを重縮合させることによって得られる。
【0040】
多塩基酸としては、ポリエステル合成用の公知のモノマーを使用でき、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物等が挙げられる。これら多塩基酸は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
多価アルコールとしても、ポリエステル合成用の公知のモノマーを使用でき、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族系ジオール類等が挙げられる。これら多価アルコールは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は、常法に従って実施でき、例えば、有機溶媒の存在下又は非存在下で且つ重縮合触媒(オクチル酸錫等)の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価や軟化温度等が所望の値になったところで反応を終了する。これによって、非晶性ポリエステル樹脂が得られる。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比や反応率等を適宜変更することによって、例えば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、延いては得られる非晶性ポリエステル樹脂の特性を変性できる。また、多塩基酸として無水トリメリト酸を用いると、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することができる。
【0043】
また、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は、通常150℃~300℃、好ましくは170℃~280℃程度の温度条件下で行われる。さらに、上記重縮合反応は、常圧下、減圧下又は加圧下で行うことができるが、重縮合反応の進行を物性値(例えば酸価、融点等)や反応機の撹拌トルク又は動力値で追いながら、系内の圧力を適宜調整するのが望ましい。
【0044】
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、10KOHmg/g以上30KOHmg/g以下が好ましく、15KOHmg/g以上25KOHmg/g以下がより好ましい。
【0045】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上50000以下が好ましく、数平均分子量(Mn)としては、1000以上10000以下が好ましい。本発明において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)が使用され、標準物質にはポリスチレンが使用される。
【0046】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、55℃以上70℃以下が好ましい。
【0047】
本発明に係るトナーにおいて、非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、特に限定されないが、トナー母体粒子中75~90質量%であることが好ましい。
【0048】
<会合シリカ、その他の外添剤>
本発明において、会合シリカとは、シリカの一次粒子が2個以上会合したものをいう。会合シリカは、例えば、ゾルゲル法により製造することができる。
【0049】
会合シリカを構成している一次粒子は2個以上20個以下が好ましい。会合シリカを構成している一次粒子が20個を超えると、会合シリカがトナー表面から外れやすくなり、機内汚染や、感光体ドラムへの接着量の増加を引き起こすおそれがある。
【0050】
本発明に係るトナーにおいては、会合シリカがトナー母体粒子の表面に存在し、トナー母体粒子に対する会合シリカによる被覆率が1%以上30%以下である。当該被覆率は、2.5%以上20%以下であることがより好ましく、2.5%以上15%以下であることがさらに好ましい。会合シリカによる被覆率が上記下限未満では、会合シリカが外添剤としての機能を発現できない場合がある。一方、上記上限を超えると、現像槽内で会合シリカが脱離して、会合シリカがキャリアや機内を汚染するおそれがある。
【0051】
また、本発明に係るトナーにおいては、トナー母体粒子に対する会合シリカの付着強度が20%以上90%以下である。当該付着強度は、45%以上75%以下であることがより好ましい。会合シリカの付着強度が上記下限未満では、会合シリカが外添剤としての機能を発現できない場合があり、また、現像槽内で会合シリカが脱離して、会合シリカがキャリアや機内を汚染するおそれがある。
【0052】
本発明における会合シリカは、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理されていることが好ましい。会合シリカがヘキサメチルジシラザンで疏水化処理されていることにより、高湿下における帯電を維持したまま、低湿環境下において、シリカ内部の水分を表面に放出し電気的にリーク効果を持たせることができると考えられるため、感光体ドラムとの接着力を抑制することができる。したがって、すり抜け現象の発生をより一層抑制することができる。
【0053】
なお、ヘキサメチルジシラザン以外の疏水化処理剤を使用する場合においても、現像剤の調整や添加量を減らすこと(被覆率を低くすること)で低湿環境下での帯電を下げられるが、そうすると高湿環境下での帯電も下がってしまう。
【0054】
本発明における会合シリカの平均粒子径は、10nm以上200nm以下であることが好ましい。会合シリカの平均粒子径が、10nm以上200nm以下の範囲内であることによって、トナーの外添剤に求められる機能である、トナー同士の凝集を防止すること、及びトナーの転写性を向上することができる。
【0055】
本発明に係るトナーは、本発明の効果を損なわない範囲において、会合シリカ以外の外添剤を含有していてもよい。このような外添剤としては、例えば、平均粒子径が7nm~200nmの微粒子であって、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子や、該無機微粒子をシランカップリング剤、チタンカップリング剤又はシリコーンオイルにより表面処理(疎水化処理)したものが挙げられる。該外添剤の添加量は、特に限定されないが、トナー母体粒子100質量部に対して0.2~3質量部であるのが好ましい。該外添剤の添加量が0.2質量部未満では、流動性の向上効果を与えることが難しく、一方、3質量部を超えると、定着性が低下する場合がある。また、外添剤の添加方法としては、トナー母体粒子と外添剤とをヘンシェルミキサ等の気流混合機で混合する方法が一般的である。
【0056】
<トナーの製造方法>
次に、本発明に係るトナーを製造する方法について説明する。本発明に係るトナーは、混練粉砕法や凝集法等の公知の方法によって製造することができる。例えば、本発明に係るトナーを混練粉砕法によって製造する場合、まず非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、必要に応じて適宜選択される離型剤、着色剤、耐電制御剤等の内添剤とをヘンシェルミキサ等の気流混合機により混合し、得られる原料混合物を2軸混練機やオープンロール混練機等の溶融混練機により100℃~180℃程度の温度で混練する。そして、得られる溶融混練物を冷却固化し、固化物をジェットミル等のエア式粉砕機によって粉砕し、必要に応じて分級等の粒度調整を行うことにより、トナー母体粒子を製造することができる。
【0057】
<2成分現像剤>
本発明に係る2成分現像剤は、本発明に係るトナーと、キャリアとを含む。2成分現像剤は、公知の混合機を用いて、トナーとキャリアとを混合することによって製造できる。トナーとキャリアの重量比は、特に限定されないが、例えば3:97~12:88を挙げられる。
【0058】
<画像形成装置>
図2は、本実施の形態に係る2成分現像剤DVで現像する現像装置40を備えた画像形成装置100の概略構成を模式的に示す断面図である。
【0059】
図2に示すように、画像形成装置100は、像担持体として作用する感光体ドラム10と、帯電装置90と、露光装置30と、現像装置40と、転写帯電装置50と、クリーニング装置60と、定着装置70とを備えている。帯電装置90は、感光体ドラム10の表面10aを帯電させる。露光装置30は、帯電装置90によって帯電された感光体ドラム10を露光して静電潜像を形成する。現像装置40は、露光装置30によって形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。転写帯電装置50は、現像装置40によって形成されたトナー像を記録紙等の記録媒体S上に転写する。クリーニング装置60は、感光体ドラム10に残留するトナーを除去し回収する。定着装置70は、転写帯電装置50によって転写されたトナー像を記録媒体S上に定着して画像を形成する。この例では、画像形成装置100は、モノクロのプリンタ(具体的にはレーザプリンタ)とされている。なお、画像形成装置100は、例えば、カラー画像を形成できる中間転写方式のカラー画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置100は、この例では、プリンタとしたが、例えば、複写機、複合機又はファクシミリ装置であってもよい。
【0060】
感光体ドラム10は、基体11が画像形成装置100の本体フレーム(図示せず)に回転自在に支持され、図示を省略した駆動手段によって回転軸線γ回りに所定の回転方向G1(図中時計方向)に回転駆動される。
【0061】
帯電装置90は、帯電部材として作用する帯電ローラ20を備えている。帯電ローラ20は、感光体ドラム10の表面10aに接触する。帯電装置90は、高電圧印加装置24にて感光体ドラム10の表面10aを所定の電位に一様に帯電させる。帯電ローラ20は、感光体ドラム10の回転に伴って回転方向G1とは反対方向G2に従動回転する。帯電ローラ20は、回転軸21と、回転軸21上に形成された円筒状の弾性部材22と、弾性部材22上に形成された抵抗層23を備えている。帯電ローラ20の外径としては、それには限定されないが、8mm~14mm程度を例示できる。回転軸21としては、例えば、金属材料を用いることができる。弾性部材22は、感光体ドラム10に対する給電を確保するために適当な導電性を有している。抵抗層23は、帯電ローラ20全体の電気抵抗を調整することができる。
【0062】
露光装置30は、画像情報に基づいて変調された光を回転駆動される感光体ドラム10の表面10aに主走査方向である感光体ドラム10の回転軸線γ方向に繰り返し走査する。現像装置40は、現像ローラ41と、現像槽42とを備えている。現像ローラ41は、感光体ドラム10の表面10aに2成分現像剤DVを供給する。現像槽42は、2成分現像剤DVを収容する。転写帯電装置50は、高電圧印加装置51にて感光体ドラム10と転写帯電装置50との間に形成される転写ニップ部TNに所定の高電圧を印加する。クリーニング装置60は、クリーニングブレード61と、回収用ケーシング62とを備えている。クリーニングブレード61は、感光体ドラム10の表面10aに残留するトナーを除去する。回収用ケーシング62は、クリーニングブレード61によって除去されたトナーを収容する。定着装置70は、加熱ローラ71と、加圧ローラ72とを備えている。加圧ローラ72は、加熱ローラ71に押圧されて定着ニップ部FNを形成する。また、画像形成装置100は、画像形成装置100を構成する各構成要素を収容する筐体80さらに備えている。なお、図2において、符号Fは記録媒体Sの搬送方向を示している。
【0063】
画像形成装置100にあっては、感光体ドラムの表面10aのSP値(感光体ドラムの最外層である電荷輸送層のSP値)と、トナー母体粒子が含有する結晶性ポリエステル樹脂のSP値との差が1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることが特に好ましい。SP値の差を上記下限以上にすることにより、感光体ドラムとトナーとの接着力を下げることができ、すり抜け現象の発生を抑制することができる。
【0064】
感光体ドラムの表面10a(感光体ドラムの最外層である電荷輸送層)を形成する樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。画像形成装置が備える感光体ドラムの表面(電荷輸送層)には、一般的にポリカーボネート樹脂が使用されるが、ポリテトラフルオロエチレンを使用することによって、感光体ドラム表面のSP値と結晶性ポリエステル樹脂のSP値とが離れ、SP値の差を1.5以上にすることができるため、トナーの感光体ドラム表面への接着を抑制することができる。
【0065】
なお、結晶性ポリエステル樹脂の方のSP値を変更し、感光体ドラムの表面とのSP値の差を1.5以上にすることも考えられるが、そうすると主樹脂と相溶化してしまい、耐熱保存性が悪化するおそれがある。
【0066】
<キャリア>
キャリアは、現像槽42内でトナーと撹拌及び混合され、トナーに所望の電荷を与える。また、キャリアは、図2に示す現像装置40と感光体ドラム10との間で電極として働き、電荷を帯びたトナーを感光体ドラム10上の静電潜像に運び、トナー像を形成させる役割を果たす。キャリアは、磁気力により現像装置40の現像ローラ41上に保持され、現像に作用した後、再び現像槽42に戻り、新たなトナーと再び撹拌及び混合されて寿命まで繰り返し使用される。
【0067】
キャリアは、キャリア芯材と、キャリア芯材を被覆する樹脂層とを有している。キャリア芯材としては、電子写真分野で用いられるものであれば特に限定されない。キャリア芯材の材料の具体例として、鉄、銅、ニッケル、コバルトなどの磁性金属、フェライト及びマグネタイトなどの磁性金属酸化物などを挙げることができる。キャリア芯材の体積平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、30μm~100μmを挙げることができる。樹脂層は、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。シリコーン樹脂は、トナーTの消耗を抑制することができる。樹脂層は、フッ素樹脂を含む。フッ素樹脂の具体例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)及びエチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)を挙げることができる。
【実施例
【0068】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。まず、実施例等における測定について説明する。なお、以下において適宜、実施例及び比較例における会合シリカや大粒径の球形シリカのことを大シリカ粒子という。
【0069】
<SP値の計算方法>
SP値の測定方法としては、スー、クラーク(SUH,CLARKE)の方法(スー、クラーク(K.W.Suh,D.H.Clarke)著、「Cohesive Energy Densities of Polymers from Turbidimetric Titrations」、Journal of Polymer Science、A-1、vol.5、1967年、p.1671-1681)に従って、次のようにして測定した。
【0070】
測定する樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒(ジオキサン及びアセトンの混合溶液)10mlをホールピペットにて加え、マグネチックスターラーにより撹拌して溶解し、これに、疎水性溶媒(n-ヘキサン及びイオン交換水の混合溶液)を、50mlビュレットを用いて滴下し、測定温度20℃で、濁りが生じた点を滴下量とした。
【0071】
この測定値から、樹脂のSP値δを、下記式によって求めた。
δ=(Vl/2δl+Vh/2δh)/(Vl/2+Vh/2)
上記式中、Vlは、低SP溶媒(疎水性溶媒)混合系における溶媒の分子容(ml/mol)であり、Vhは、高SP溶媒(良溶媒)混合系における溶媒の分子容(ml/mol)であり、δlは、低SP溶媒(疎水性溶媒)混合系における溶媒のSP値であり、δhは、高SP溶媒(良溶媒)混合系における溶媒のSP値である。
【0072】
<大シリカ粒子の平均粒子径の測定方法>
大シリカ粒子の平均粒子径を以下の方法により求めた。
【0073】
まず、トナーに対して走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式:S-4800)を用いて粒子を撮影し、得られた画像から任意にトナー表面の大シリカ粒子100個の粒子径(長径)を測定した。次いで、100個の粒子径の平均値を算出し、これを平均粒子径とした。
【0074】
<大シリカ粒子による被覆率の算出方法>
トナー母体粒子の平均粒子径と比重、及び各外添剤の平均粒子径と比重を用いて投影面積でのモデル計算を行い、各外添剤の被覆率比を求めた。
そして、外添トナーを走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式:S-4800)で撮影し、被覆率を確認した。
【0075】
<低湿環境下でのトナーの帯電量の測定方法>
現像槽のマグローラー上の現像剤を0.2gサンプリングし、Trek社製 吸引式小型帯電量測定装置 Model 210HS-2Aを用いて、温度25℃、相対湿度5%の環境下での帯電量を得た。
【0076】
帯電量の評価基準は以下のとおりである。
低:帯電量が18μC/g未満である。
中:帯電量が18μC/g以上、35μC/g以下である。
高:帯電量が35μC/g超である。
【0077】
<大シリカ粒子の付着強度の測定方法>
各トナーにおける大シリカ粒子の付着強度は、以下の手順で測定した。
(1)トナー2.0gを100mlビーカーに秤量し、濃度0.2質量%のトリトン水溶液40mlを加えた後、スターラーで1分間撹拌する。
(2)上記の水溶液に超音波式ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、型式:US-300T)を用いて、出力40μA、4分間の条件で超音波を照射して、外添剤を離脱させる。
(3)超音波照射後の水溶液を3時間静置し、トナーと外添剤とを分離する。
(4)上澄み液を取り除いた後、沈殿物に純水を50ml加えてスターラーで5分間撹拌する。
(5)孔径1μmのメンブレンフィルタ(アドバンテック社製)を用いて吸引濾過する。(6)フィルタ上に残ったトナーを、シリカゲル入りのデシケータで24時間真空乾燥する。
(7)蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、型式:ZSX Primus II)にて上記(1)~(6)の一連の処理前後のトナー1g中の元素Siの強度を分析し、下記式にて、シリカの付着強度を算出する。
シリカの付着強度(%)={(処理後のSi強度)/(処理前のSi強度)}×100
【0078】
<機内汚染レベルの評価方法>
機内汚染レベルの評価基準は以下のとおりである。
○:現像槽周辺にシリカの白い粉体の付着は見られない。
×:現像槽周辺にはっきりとシリカの白い粉体が付着している。
【0079】
<低湿環境下でのすり抜けレベルの評価方法>
作製した2成分現像剤及びトナーを、カラー複合機(シャープ株式会社製、商品名:MX-4151)の現像装置及びトナーカートリッジにそれぞれ充填し、感光体ドラムの回転方向に、幅1mm、長辺が25cmの細い長方形のベタ画像(ID=1.45~1.50)が1cm間隔で10本形成されるように、25℃、湿度5%の環境下で50000枚の連続プリントテストを行った。
【0080】
すり抜けレベルの評価基準は以下のとおりである。
◎:優秀 感光体ドラム表面にトナーのすり抜けが見られず、クリーニングブレード上にもトナーのすり抜けが見られない。
○:良好 感光体ドラム表面にトナーのすり抜けは見られないが、クリーニングブレード上にはトナーのすり抜けが見られる。
△:可 感光体ドラム表面にトナーのすり抜けがわずかに見られ、クリーニングブレード上にはトナーのすり抜けが見られる。
×:不可 感光体ドラム表面にトナーのすり抜けがはっきりと見られ、クリーニングブレード上にはトナーのすり抜けが見られる。
【0081】
なお、すり抜け現象は、その起こり始めにおいては、感光体ドラム上にすり抜けたトナー粒子は見られないものの、図5におけるトナー粒子T1のように、クリーニングブレード上のトナー粒子が徐々にすり抜けてクリーニングブレードの下部に付着したり、プロセスユニット内に落下したりし始める。そして、すり抜けがひどくなると、図5におけるトナー粒子T2のように、感光体ドラム上にすり抜けたトナー粒子が乗るようになる。
【0082】
<トナー、2成分現像剤、及び画像形成装置の総合評価方法>
上記の評価項目(低湿環境下でのすり抜けレベル及び機内汚染レベル)の評価結果に基づいて、次の基準で総合評価を行った。
◎:優秀 すり抜けレベルが◎で、機内汚染レベルが○。使用可能。
○:良好 すり抜けレベルが○で、機内汚染レベルが○。使用可能。
△:可 すり抜けレベルが△で、機内汚染レベルが○。使用可能。
×:不可 1つの評価項目にでも×がある。使用不可。
【0083】
[大シリカ粒子(S1)の調製]
ゾルゲル法により湿式で得られたシリカゾルに対し疎水化処理(HMDS(ヘキサメチレンジシラザン)処理)を行うとともに、会合促進添加剤(水酸化テトラアルキルアンモニウム化合物)を添加し、疎水性会合シリカを得た。平均粒子径は125nmであった。
【0084】
[大シリカ粒子(S2)の調製]
ゾルゲル法により湿式で得られたシリカゾルに対し疎水化処理(PDMS(ポリジメチルシロキサン)処理)を行うとともに、会合促進添加剤(水酸化テトラアルキルアンモニウム化合物)を添加し、疎水性会合シリカを得た。平均粒子径は125nmであった。
【0085】
[大シリカ粒子(S3)の調製]
ゾルゲル法により湿式で得られたシリカゾルに対し疎水化処理(HMDS処理)を行い、疎水性球形シリカを得た。平均粒子径は125nmであった。
【0086】
[大シリカ粒子(S4)の調製]
ゾルゲル法により湿式で得られたシリカゾルに対し疎水化処理(PDMS処理)を行い、疎水性球形シリカを得た。平均粒子径は125nmであった。
【0087】
[実施例1]
トナー母体粒子(平均粒子径7.0μm)100質量部に対して、体積平均粒子径20nmのシリカ1.0質量部(日本アエロジル社製)、体積平均粒子径20nmの酸化チタン0.6質量部(テイカ社製)、及び大シリカ粒子(S1)1.9質量部を加えて、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製、型式:FM20C)にて混合し、目開き500メッシュの篩を通過させ、外添トナーを得た。
【0088】
さらに、得られた外添トナーと、体積平均粒子径40μmのフェライトコアキャリアとを、二成分現像剤全量に対する外添トナーの濃度が7質量%になるように調整して混合し、トナー濃度7質量%の二成分現像剤を得た。
【0089】
[実施例2~11、比較例1~9]
以下の表1に、実施例及び比較例において使用した大シリカ粒子の種類、平均粒子径、添加量、及び大シリカ粒子による被覆率を示す。実施例1における大シリカ粒子(S1)を、表1に示す大シリカ粒子の種類及び添加量にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして外添トナー及び二成分現像剤を得た。
【0090】
【表1】
【0091】
以下の表2に、各実施例及び比較例における、大シリカ粒子の種類、測定時に使用した感光体ドラム最外層の樹脂の種類、低湿環境下でのトナーの帯電量の測定結果、感光体ドラム最外層のSP値とトナー母体粒子が有する結晶性ポリエステル樹脂のSP値との差の計算結果、トナー母体粒子に対する大シリカ粒子による被覆率の測定結果、トナー母体粒子に対する大シリカ粒子の付着強度の測定結果、機内汚染レベルの評価結果、低湿環境下でのすり抜けレベルの評価結果、及び総合評価の結果を示す。なお、実施例9~11は、大シリカの種類、添加量、被覆率、付着強度、及び感光体ドラム最外層の樹脂の種類は同じ条件であるが、現像剤中のキャリアの帯電量を変えることで、低湿環境下でのトナーの帯電量に差を出したものである。
【0092】
【表2】
【0093】
表2から明らかなように、トナー母体粒子の表面に会合シリカが存在し、トナー母体粒子に対する会合シリカによる被覆率が1%以上30%以下であり、トナー母体粒子に対する会合シリカの付着強度が20%以上90%以下である実施例1~11のトナー、2成分現像剤、及び画像形成装置は、低湿環境下でのすり抜けレベルの評価及び機内汚染レベルの評価が共に優れるものであった。
【0094】
これに対して、これらの要件を満たさない比較例1~9は、低湿環境下でのすり抜けレベルの評価及び機内汚染レベルの評価のいずれかが「×(不可)」となり、実施例に対して劣っていた。
【0095】
さらに、感光体ドラムの表面(最外層)をPTFEにしたことにより、すり抜けレベルが良化した。また、会合シリカの疎水化処理剤としてHMDSを用いることにより、低湿環境下でのトナーの帯電量が低くなり、すり抜けレベルが良化した。
【0096】
<その他の実施形態>
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1 トナー母体粒子
2 真球状の大粒径シリカ
10 感光体ドラム
20 帯電ローラ
40 現像装置
41 現像ローラ
42 現像槽
70 定着装置
90 帯電装置
100 画像形成装置
T トナー粒子
T1 すり抜けたトナー粒子
T2 すり抜けたトナー粒子
図1
図2
図3
図4
図5