(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ウォーターポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/70 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
F04D29/70 G
(21)【出願番号】P 2020149606
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020053923
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020053924
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 崇
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友和
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-185615(JP,A)
【文献】実開平07-017984(JP,U)
【文献】実開昭60-018358(JP,U)
【文献】特開2004-301097(JP,A)
【文献】実開平03-065891(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受を支持している軸受穴が形成された支持部と、前記軸受により回転可能に支持されていると共に前記軸受穴を貫通している回転軸と、この回転軸の一端に設けられた有底筒状のプーリと、前記回転軸の他端に設けられたインペラと、このインペラと前記軸受との間に配置されたシール部材と、を有し、
前記支持部には、前記軸受穴のなかの前記シール部材と前記軸受との間の空間と、前記支持部の外部と、を連通可能な連通穴が形成されている、ウォーターポンプにおいて、
前記支持部は、中心に前記軸受穴が形成された環状の小径部と、前記軸受穴を中心として、前記小径部の外周面よりも外周面の径が大きい環状の大径部と、を有し、
前記小径部の少なくとも一部は、前記大径部よりも前記プーリ側に位置しており、
前記プーリの筒部と、前記大径部との間には、環状の第1の隙間が形成されており、
前記プーリの底部には、第2の筒部が設けられており、この第2の筒部と、前記小径部との間には、環状の第2の隙間が形成されて
おり、
前記プーリの前記筒部と、前記支持部の前記大径部とが互いに重なっている軸方向の寸法を第1の寸法とし、
前記第2の筒部と、前記支持部の前記小径部とが互いに重なっている軸方向の寸法を第2の寸法とすると、
前記第1の寸法は、前記第2の寸法よりも短い、ことを特徴とするウォーターポンプ。
【請求項2】
前記第1の隙間、又は、前記第2の隙間の少なくともいずれか一方についての、径方向の寸法は、前記軸受穴の中心線が延びている方向を基準として、前記インペラ側に向かうに連れて狭く設定されている、ことを特徴とする
請求項1に記載のウォーターポンプ。
【請求項3】
前記支持部は、前記プーリの前記底部に対向している対向面を有し、
この対向面には、前記連通穴に加えて、凹部が形成されている、ことを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載のウォーターポンプ。
【請求項4】
前記大径部は、前記小径部を囲っており、
径方向を基準として、前記大径部の厚みは、前記小径部の厚みよりも薄く、
前記凹部は、前記小径部と前記大径部との間の空間により構成されている、ことを特徴とする
請求項3に記載のウォーターポンプ。
【請求項5】
前記小径部の外周面から前記大径部の内周面に亘り複数のリブが形成されている、ことを特徴とする
請求項4に記載のウォーターポンプ。
【請求項6】
前記軸受穴の中心線は、水平方向に延びており、
前記対向面に形成された前記凹部の少なくとも一部は、前記軸受の上端よりも上方に位置している、ことを特徴とする
請求項3~請求項5のいずれか1項に記載のウォーターポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリにより駆動されるウォーターポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを冷却するための冷却水は、ウォーターポンプにより循環されている。ウォーターポンプに関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示されたウォーターポンプは、ベアリングを支持しているベアリング室が水平方向に形成された支持部と、ベアリングにより回転可能に支持されていると共にベアリング室を貫通しているインペラ駆動軸と、インペラ駆動軸の一端に設けられベルトにより駆動されるプーリと、インペラ駆動軸の他端に設けられたインペラと、インペラとベアリングとの間に設けられたメカニカルシールと、を有している。ベルトによりプーリが駆動されると、インペラ駆動軸に設けられたインペラが回転し、冷却水が送り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プーリは、有底筒状を呈しており、環状の支持部を囲っている。支持部の外周面と、プーリの筒部の内周面との間には、環状の隙間が形成されている。
【0006】
ウォーターポンプが作動する使用環境下においては、塵、埃、泥、砂、水や油(以下、ダストと呼ぶ)が、プーリと支持部との間に形成される環状の隙間に浸入することがある。浸入したダストが軸受の内部まで達すると、軸受の寿命が短くなる。
【0007】
支持部の外周面には、円板状の仕切板が設けられている。仕切板を設けることにより、プーリと支持部との間の隙間が狭くなり、ダストがプーリの内部に浸入することを抑制できる。
【0008】
この仕切板は、支持部の外周面に対して圧入又はかしめ等されて固定されている。上記の通り、支持部はベアリングを支持している部位である。仕切板の圧入又はかしめ等の際に、支持部に外力が作用すると、ベアリングに負荷がかかりベアリングの寿命低下につながる虞がある。
【0009】
本発明は、ウォーターポンプを長寿命化させる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1による発明によれば、軸受を支持している軸受穴が形成された支持部と、前記軸受により回転可能に支持されていると共に前記軸受穴を貫通している回転軸と、この回転軸の一端に設けられた有底筒状のプーリと、前記回転軸の他端に設けられたインペラと、このインペラと前記軸受との間に配置されたシール部材と、を有し、
前記支持部には、前記軸受穴のなかの前記シール部材と前記軸受との間の空間と、前記支持部の外部と、を連通可能な連通穴が形成されている、ウォーターポンプにおいて、
前記支持部は、中心に前記軸受穴が形成された環状の小径部と、前記軸受穴を中心として、前記小径部の外周面よりも外周面の径が大きい環状の大径部と、を有し、
前記小径部の少なくとも一部は、前記大径部よりも前記プーリ側に位置しており、
前記プーリの筒部と、前記大径部との間には、環状の第1の隙間が形成されており、
前記プーリの底部には、第2の筒部が設けられており、この第2の筒部と、前記小径部との間には、環状の第2の隙間が形成されている、ことを特徴とするウォーターポンプが提供される。
【0011】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記プーリの前記筒部と、前記支持部の前記大径部とが互いに重なっている軸方向の寸法を第1の寸法とし、
前記第2の筒部と、前記支持部の前記小径部とが互いに重なっている軸方向の寸法を第2の寸法とすると、
前記第1の寸法は、前記第2の寸法よりも短い。
【0012】
請求項3に記載のごとく、前記第1の隙間、又は、前記第2の隙間の少なくともいずれか一方についての、径方向の寸法は、前記軸受穴の中心線が延びている方向を基準として、前記インペラ側に向かうに連れて狭く設定されている。
【0013】
請求項4に記載のごとく、前記支持部は、前記プーリの前記底部に対向している対向面を有し、この対向面には、前記連通穴に加えて、凹部が形成されている。
【0014】
請求項5に記載のごとく、前記大径部は、前記小径部を囲っており、径方向を基準として、前記大径部の厚みは、前記小径部の厚みよりも薄く、前記凹部は、前記小径部と前記大径部との間の空間により構成されている。
【0015】
請求項6に記載のごとく、前記小径部の外周面から前記大径部の内周面に亘り複数のリブが形成されている。
【0016】
請求項7に記載のごとく、前記軸受穴の中心線は、水平方向に延びており、前記対向面に形成された前記凹部の少なくとも一部は、前記軸受の上端よりも上方に位置している。
【発明の効果】
【0017】
請求項1において、ウォーターポンプは、回転軸を支持している支持部と、回転軸の一端に設けられた有底筒状のプーリと、を有している。支持部は、中心に軸受穴が形成された環状の小径部と、小径部の外周面よりも外周面の径が大きい環状の大径部と、を有している。
【0018】
小径部の少なくとも一部は、大径部よりもプーリ側に位置している。プーリの筒部と、大径部との間には、環状の第1の隙間が形成されている。プーリの底部には、第2の筒部が設けられている。この第2の筒部と、小径部との間には、環状の第2の隙間が形成されている。
【0019】
即ち、プーリと、支持部との間には、ダストの浸入を抑制する2つの隙間が形成されている。そのため、ダストが、軸受の内部まで到達しにくい。
【0020】
加えて、第2の筒部は、プーリの底部に設けられている。第2の筒部が、支持部に嵌合されていないため、支持部に対して外力が加わらない。結果、支持部に設けられる軸受に負荷が加わらない。そのため、軸受の長寿命化が図れる。
【0021】
加えて、第2の筒部は、回転体であるプーリに設けられている。プーリが回転すると、第2の筒部も回転する。第2の筒部と、支持部の小径部との間の第2の隙間には、空気の流れが生じやすくなる。第2の隙間にダストが浸入しにくくなる。
【0022】
請求項2において、プーリの筒部と、支持部の大径部とが互いに重なっている軸方向の寸法を第1の寸法とする。プーリに設けられた第2の筒部と、小径部とが互いに重なっている軸方向の寸法を第2の寸法とする。第1の寸法は、第2の寸法よりも短い。
【0023】
加えて、第1の隙間は、プーリの内部へのダストの入口であると共に内部に浸入したダストの出口でもある。第1の寸法を短くすることにより、ダストが、第1の隙間からプーリ内部に浸入した場合であっても、第1の隙間からプーリ外部へ排出されやすくなる。
【0024】
請求項3において、第1の隙間、又は、第2の隙間の少なくともいずれか一方についての、径方向の寸法は、軸受穴の中心線が延びている方向を基準として、インペラ側に向かうに連れて狭く設定されている。ダストが浸入する側であるインペラ側の隙間が狭く設定されているため、ダストの浸入を抑制できる。ウォーターポンプを長寿命化させることができる。
【0025】
請求項4において、第1の隙間から浸入したダストは、プーリの底部に対向している対向面の縁に到達することがある。プーリは、有底筒状を呈しており、プーリが回転すると、プーリ内部で空気の流れが生じる。そのため、ダストには、空気の流れによる径方向外側の外力も作用する。対向面には、連通穴に加えて、凹部が形成されている。ダストのなかには、凹部に入り込むものもある。凹部に入り込んだダストは、軸受から離れることとなる。ダストを軸受から遠ざけることができ、ダストは軸受に浸入しにくくなる。
【0026】
仮に、凹部に入り込んだダストが軸受に向かって移動する場合であっても、凹部が形成されていない平面上を移動する場合と比較すると、軸受に到達するまでの移動距離の長さが長くなる。ダストは、軸受に到達しにくくなる。
【0027】
上記と同様の理由により、ダストは、連通穴の出口に到達しにくくなる。以上より、ウォーターポンプを長寿命化させることができる。
【0028】
請求項5において、小径部及び大径部の径方向を基準として、大径部の厚みは、小径部の厚みよりも薄い。凹部は、小径部と大径部との間の空間により構成されている。そのため、小径部と大径部との間に、より大きな凹部を形成することができる。ダストがさらに、凹部に浸入しやすくなる。ダストを軸受から離すことができ、ダストが、軸受に到達しにくくなる。ウォーターポンプを長寿命化させることができる。
【0029】
請求項6において、小径部の外周面から大径部の内周面に亘り複数のリブが形成されている。即ち、小径部と大径部との間に空間により構成された凹部が複数のリブにより区画されている。そのため、凹部に入り込んだダストが、凹部の表面を伝って、連通穴に向かって移動した場合、リブはダストの移動の妨げとなる。ダストが連通穴に近づくことをを抑制できる。
【0030】
加えて、リブが形成されたことにより、プーリが回転するとプーリ内での空気の乱流が生じやすくなる。空気の乱流による外力がダストに対して作用しやすくなり、ダストは、さらに、軸受に到達しにくくなる。ウォーターポンプを長寿命化させることができる。
【0031】
請求項7において、軸受穴の中心線は、水平方向に延びており、対向面に形成された前記凹部の少なくとも一部は、前記軸受の上端よりも上方に位置している。ダストが、重力の作用により軸受に向かって移動する場合であって、ダストは、軸受の上端に形成された凹部に入り込むため、ダストは軸受に到達しにくくなる。結果、ダストが軸受に浸入しにくくなり、ウォーターポンプを長寿命化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施例によるウォーターポンプの断面図である。
【
図2】
図1に示されたウォーターポンプの分解斜視図である。
【
図3】
図2に示されたウォーターポンプの支持部を説明する図である。
【
図4】
図1に示されたウォーターポンプの一部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【0034】
<実施例>
図1には、実施例によるウォーターポンプ10が示されている。このウォーターポンプ10は、エンジン11を冷却するための冷却水を循環させる。ウォーターポンプ10は、例えば、パワーショベル等の重機又は車両等のエンジンブロック12に対して締結部材13で固定される。
【0035】
図1、
図2を参照する。ウォーターポンプ10のハウジング20は、鋳造製品であり、締結部材13が貫通する複数(例えば5つ)の締結穴21が形成されている板状の固定部22と、軸受30を支持している軸受穴41が形成された支持部40と、から構成されている。
【0036】
支持部40の軸受穴41の中心線L1は、水平方向に延びている。固定部22の内面(エンジンブロック12側の面)には、冷却水の流路23が形成されている。ハウジング20とエンジンブロック12の側面14との間には、シール部材24が設けられている。
【0037】
以下、"内側(In)"とは、水平方向を基準として、後述するインペラ15側であり、"外側(Ou)"とは、後述するプーリ60側である。"下方(Dn)"とは、鉛直下方であり、"上方(Up)"とは、鉛直上方である。
【0038】
軸受30は、軸受穴41に嵌合している環状部材31と、環状部材31の内側に配置された円柱状の転動体32及び球状の転動体33と、から構成されている。
【0039】
支持部40の軸受穴41には、軸受30により回転可能に支持されている回転軸50が設けられている。この回転軸50は軸受穴41を軸方向に貫通している。回転軸50の外側の端部51(一端)には、ベルトにより駆動されるプーリ60が設けられている。回転軸50の内側の端部52(他端)には、インペラ15が設けられている。プーリ60が駆動されると、回転軸50に設けられたインペラ15が回転し、冷却水は流路23を通過して送り出される。
【0040】
インペラ15と軸受30との間には、メカニカルシール16(シール部材)が設けられている。メカニカルシール16は、回転軸50と軸受穴41との隙間を埋めて、冷却水が軸受穴41の内部に浸入することを抑制する。メカニカルシール16の詳細な説明は省略する。メカニカルシール16に代えて、パッキン、オイルシール等のシール部材を採用してもよい。
【0041】
プーリ60は、全体として有底筒状を呈しており、円板状の底部61と、底部61の周縁61aから内側へ延びている中空円筒形状の筒部62(第1の筒部)と、からなる。底部61には、回転軸50の外側の端部51が圧入されて固定される固定穴63が形成されている。
【0042】
底部61の内面64には、筒体65が設けられている。筒体65は、プーリ60の底部61の内面64に対して溶接されている環状のフランジ部66と、フランジ部66の径方向内側の内周縁66aから内側へ延びている中空円筒形状の第2の筒部67と、からなる。なお、第2の筒部67は、プーリ60と一体に構成してもよい。
【0043】
図3を参照する。中心線L1に沿う方向(軸方向とも言う)から見て、支持部40は、中心に軸受穴41が形成された環状の小径部42と、小径部42の外周面43よりも外周面44の径が大きい環状の大径部45と、を有している。
【0044】
大径部45は、中心線L1を中心として、小径部42を囲っている。小径部42及び大径部45の径方向を基準として、大径部45の厚みT1は、小径部42の厚みT2よりも薄い(T1<T2)。
【0045】
図1を参照する。小径部42の端面46は、大径部45の端面47よりも、外側(プーリ側)に位置している。大径部45の外周面44は、外側に向かうにつれて、外周面44の径が小さくなるように傾いている(傾斜角θ1)。同様に、小径部42の外周面43は、外側に向かうにつれて、外周面43の径が小さくなるように傾いている(傾斜角θ2)。
【0046】
図3を参照する。小径部42の外周面43と、大径部45の内周面48と、固定部22の底面25に囲われた環状の空間を凹部70とする。この凹部70は、以下に説明する複数(例えば4セット)のリブ81~84により6つに区画されている。リブ81~84は、小径部42の外周面43から大径部45の内周面48に亘って放射状に形成されている。リブ81~84は、周方向について、互いに等間隔に位置している。
【0047】
リブ81~84のうち、小径部42の外周面43の下端43aから下方に延びているものを第1のリブ81とする。第1のリブ81は、ブロック状を呈しており、他のリブ82~84よりも、周方向の寸法が厚く設定されている。
【0048】
図1、
図3を参照する。第1のリブ81には、軸受穴41のなかのメカニカルシール16と軸受30との間の空間38と、支持部40の外部と、を連通可能な連通穴39が形成されている。連通穴39は、空間38から径方向外側に延びている第1の穴35と、この第1の穴35と連通していると共に外側に延びている第2の穴36と、からなる。連通穴39の出口は、第1のリブ81の端面86に位置している。
【0049】
リブ82~84のうち、小径部42の外周面43から斜め下方に延びているものを第2のリブ82、82とし、小径部42の外周面43から斜め上方に延びているものを第3のリブ83、83とし、小径部42の外周面43の上端43bから上方に延びているものを第4のリブ84とする。
【0050】
第4のリブ84は、径方向の略中央に位置している円柱部91と、円柱部91よりも径方向内側に位置している内壁部92と、円柱部91よりも径方向外側に位置している外壁部93と、からなる。
【0051】
内壁部92の端面94は、円柱部91の端面95よりも、内側に位置している。外壁部93の端面96は、径方向外側に向かうにつれて、内側に傾いている。円柱部91の端面95は、ハウジング20を金型から離す際に押される面である。
【0052】
なお、第2のリブ82及び第3のリブ83は、第4のリブ84と、同一の大きさ・形状である。説明は省略する。さらに、連通穴39を構成する第1のリブ81を除き、第2のリブ82~第4のリブ84は設けなくても良い。
【0053】
図3を参照する。中心線L1と直交して鉛直方向に延びる線L2を基準とすると、支持部40は左右対称の構成である。以下、線L2よりも右側の構成について説明する。なお、この説明は、線L2よりも左側の構成にも適用される。
【0054】
第1のリブ81と第2のリブ82との間の空間38を第1の凹部71とする。第2のリブ82と第3のリブ83との間の空間38を第2の凹部72とする。第3のリブ83と第4のリブ84との間の空間38を第3の凹部73とする。この説明は、線L2よりも左側の構成にも適用される。説明は省略する。
【0055】
図2を参照する。小径部42の外周面43のうち、第1の凹部71の一部を構成している面を第1の湾曲面74とし、第2の凹部72の一部を構成している面を第2の湾曲面75とし、第3の凹部73の一部を構成している面を第3の湾曲面76とする。小径部42の外周面43のうち、リブ81~84よりも外側の面を環状面77とする。環状面77は、凹部70を構成していない面ともいえる。
【0056】
図4を参照する。プーリ60の筒部62の内周面68と、大径部45の外周面44との間には、環状の第1の隙間C1が形成されている。環状面77は、大径部45の外周面44よりも、外側(Ou)に位置している。第2の筒部67の内周面67aと、小径部42の環状面77との間には、環状の第2の隙間C2が形成されている。
【0057】
大径部45の外周面44は、内側(インペラ15側)に向かうに連れて、外周面44の径が大きくなるように傾いている(傾斜角θ(
図1参照))。そのため、第1の隙間C1の径方向の寸法B1は、内側(インペラ15側(
図1参照))に向かうに連れて狭くなる。内側で狭く、外側(プーリ60側)で広い。ダストが浸入する側が狭いため、ダストの浸入を抑制できる。小径部42の外周面43も同様に傾斜しており、上記と同様の効果を奏する。さらに、小径部42の外周面43は、内側(インペラ15側)に向かうに連れて、外周面43の径が大きくなるように傾いている(傾斜角θ2(
図1参照))。そのため、第2の隙間C2の径方向の寸法B2は、内側(インペラ15側(
図1参照))に向かうに連れて狭くなる。内側で狭く、外側(プーリ60側)で広い。ダストが浸入する側が狭いため、ダストの浸入を抑制できる。
【0058】
水平方向(回転軸50の中心線L1が延びる方向)を基準として、プーリ60の筒部62と、支持部40の大径部45とが互いに重なっている寸法を第1の寸法A1とする。第2の筒部67と、小径部42とが互いに重なっている寸法を第2の寸法A2とする。第1の寸法A1は、第2の寸法A2よりも短い。
【0059】
第2の筒部67は、円柱部91よりも回転軸50の径方向内側に位置している。そのため、ウォーターポンプ10の軸方向の寸法を短くすることができる。第2の筒部67の端面69は、大径部45の端面47よりも、軸方向外側(Ou)に位置している。同様に、端面69は、端面94~96よりも、軸方向外側(Ou)に位置している。なお、第2の筒部67と、円柱部91とが、回転軸50の軸方向に重なるような構成であってもよい(線L3参照)。
【0060】
図1、
図3を参照する。補足すると、軸受穴41、小径部42、大径部45、回転軸50、プーリ60、第2の筒部67は、中心線L1を中心とする同心円状に位置している。
【0061】
実施例の効果を説明する。
【0062】
図4を参照する。プーリ60の筒部62の内周面68と、大径部45の外周面44との間には、環状の第1の隙間C1が形成されている。プーリ60の底部61には、筒体65が設けられている。この筒体65の第2の筒部67と、小径部42との間には、環状の第2の隙間C2が形成されている。即ち、プーリ60と、支持部40との間には、ダストの浸入を抑制する2つの隙間C1,C2が形成されている。そのため、ダストが、軸受30の内部まで到達しにくい。
【0063】
加えて、第2の筒部67は、プーリ60の底部61に設けられている。第2の筒部67が、支持部40に嵌合されていないため、支持部40に対して外力が加わらない。結果、支持部40に設けられる軸受30に負荷が加わらないため、軸受30を長寿命化させることができる。
【0064】
加えて、第2の筒部67は、回転体であるプーリ60に設けられている。プーリ60が回転すると、第2の筒部67も回転する。第2の筒部67と、支持部40の小径部42との間の第2の隙間C2には、空気の流れが生じやすくなる。第2の隙間C2にダストが浸入しにくくなる。
【0065】
加えて、第1の寸法A1は、第2の寸法A2よりも短い。第1の隙間C1は、プーリ60の内部へのダストの入口であると共に内部に浸入したダストの出口でもある。第1の寸法A1を短くすることにより、ダストが、第1の隙間C1からプーリ60内部に浸入した場合であっても、第1の隙間C1からプーリ60外部へ排出されやすくなる。なお、第1の隙間C1の径方向の寸法B1は、最も内側において最小となる。この最小の寸法を寸法B11とする。第2の隙間C2の径方向の寸法B2のうち、最も外側において最大となる。この最大の寸法を寸法B21とする。例えば、寸法B11を、寸法B21よりも大きく設定すると(B11<B21)、ダストが、第1の隙間C1からプーリ60内部に浸入した場合であっても、第1の隙間C1からプーリ60外部へ排出されやすくなる。
【0066】
図1を参照する。加えて、大径部45の外周面44は、外側(プーリ60側)に向かうにつれて、外周面44の径が小さくなるように傾いている(傾斜角θ)。そのため、外周面44のうち、中心線L1よりも下方の面に付着したダストは、軸受30から離れるように内側に向かって移動する。ダストが軸受30に浸入しにくくなる。
【0067】
その他の効果を説明する。
【0068】
図1、
図3を参照する。プーリ60の筒部62と、回転軸50を支持している支持部40との間には、環状の第1の隙間C1が形成されている。
【0069】
支持部40のうち、プーリ60の底部61に対向している端面を対向面40aとする(対向面40aは、小径部42の端面46と、大径部45の端面47と、第1のリブ81の端面86~第4のリブ84の端面89と、を含むものともいえる。)。ダストが浸入した場合、ダストが対向面40aの縁(大径部45の端面47)に到達することがある。
【0070】
対向面40aには、連通穴39に加えて、凹部70が形成されている。凹部70のなかには、軸受30の上端30aよりも上方(線L4参照)に位置している第3の凹部73が含まれる。対向面40aは、水平方向を向いているため、ダストは、下方に向かって移動する。ただし、プーリ60は、有底筒状を呈しており、プーリ60が回転すると、プーリ60内部で空気の流れが生じる。
【0071】
ダストには、重力のみならず、空気の流れによる外力も作用する。ダストのなかには、第3の凹部73(凹部70)に入り込むものもある。第3の凹部73に入り込んだダストは、軸受30から離れることとなる。ダストを軸受30から水平方向に遠ざけることができ、ダストは軸受30に浸入しにくくなる。
【0072】
仮に、第3の凹部73(凹部70)に入り込んだダストが軸受30に向かって移動する場合であっても、第3の凹部73(凹部70)が形成されていない平面を移動する場合と比較すると、軸受30に到達するまでの移動距離が長くなる。ダストは、軸受30に到達しにくくなる。
【0073】
上記と同様の作用により、ダストは、連通穴39の出口にも到達しにくくなる。以上より、ウォーターポンプ10を長寿命化させることができる。
【0074】
加えて、大径部45の径方向の厚みT1は、小径部42の厚みT2よりも薄い。そのため、小径部42と大径部45との間に、より大きな凹部70を形成することができる。ダストがさらに、凹部70に浸入しやすくなる。ダストを軸受30から離すことができ、ダストが、軸受30に到達しにくくなる。ウォーターポンプ10を長寿命化させることができる。
【0075】
加えて、凹部70は、第1のリブ81~第4のリブ84により区画されており、さらに第2のリブ82~第4のリブ84は、連通穴39よりも上方に位置している(線L5参照)。凹部70に入り込んだダストが、凹部70の表面を伝って、連通穴39に向かって移動する場合であっても、第2のリブ82から第4のリブ84がダストの流れの妨げとなる。ダストが連通穴39に浸入することを抑制できる。
【0076】
加えて、第2のリブ82から第4のリブ84が形成されたことにより、プーリ60内での空気の乱流が生じやすくなる。ダストに対しても空気の乱流による外力が作用しやすくなり、ダストは、さらに、軸受30に到達しにくくなる。ウォーターポンプ10を長寿命化させることができる。
【0077】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。例えば、支持部40の軸受穴41の中心線L1は、水平方向に延びているとしたが、中心線L1が延びる方向はこれに限らない。中心線L1は、鉛直方向、又は、鉛直方向と水平方向との中間となる斜め方向に延びるように設定しても、本発明は同等の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のウォーターポンプは、パワーショベルや車両等のエンジンに搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0079】
10…ウォーターポンプ
15…インペラ
16…メカニカルシール(シール部材)
30…軸受、30a…上端
39…連通穴
40…支持部、40a…対向面
41…軸受穴
42…小径部、43…外周面
45…大径部、44…外周面
50…回転軸
51…外側の端部(一端)
52…内側の端部(他端)
60…プーリ
61…底部、64…内面
62…筒部、68…内周面
65…筒体
66…フランジ部
67…第2の筒部、67a…内周面
70…凹部
71…第1の凹部
72…第2の凹部
73…第3の凹部
81…第1のリブ
82…第2のリブ
83…第3のリブ
84…第4のリブ
A1…第1の寸法(水平方向の重なり寸法)
A2…第2の寸法(水平方向の重なり寸法)
B1…第1の隙間の径方向の寸法
B2…第2の隙間の径方向の寸法
C1…第1の隙間
C2…第2の隙間