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特許7503461タービンホイール、タービン及びターボチャージャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】タービンホイール、タービン及びターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/04 20060101AFI20240613BHJP
   F01D 1/08 20060101ALI20240613BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
F01D5/04
F01D1/08
F02B39/00 Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020152425
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046381
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 慶拓
(72)【発明者】
【氏名】星 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡 信仁
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0085868(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0232330(US,A1)
【文献】国際公開第2020/110257(WO,A1)
【文献】実開平06-049701(JP,U)
【文献】特開2009-108791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/04
F01D 1/08
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に連結されて軸線の周りに回転されるタービンホイールと、前記タービンホイールを回転自在に収容するケーシングと、を備えるタービンであって、
前記ケーシングは、
内部にスクロール流路を有するスクロール部と、
前記スクロール流路と前記スクロール流路よりも径方向外側の流路とを仕切る舌部と、
を含み、
前記タービンホイールは、
前記軸線に沿った断面において、前記軸線に対して傾斜するハブ面を有するハブと、
前記ハブ面に設けられた複数の翼と、
を備え、
り合う2つの前記翼の間に形成される流路を複数含み、
前記複数の流路の内の少なくとも1つの流路であるスロート拡大流路のスロート部の面積をAen、
前記複数の流路についてのスロート部の平均面積をAave、とした場合に、
Aen/Aave>1.01の関係を満たす、
タービン
【請求項2】
前記スロート拡大流路を形成する前記隣り合う2つの前記翼の翼ピッチをPen、
前記複数の翼についての翼ピッチの平均値をPave、とした場合に、
Pen>Paveの関係を満たす、
請求項1に記載のタービン
【請求項3】
前記スロート拡大流路を形成する前記隣り合う2つの前記翼の少なくとも何れか一方における前記スロート部を形成する領域における翼厚をTen、
前記複数の翼についての前記スロート部を形成する領域における翼厚の平均値をTave、とした場合に、
Ten<Taveの関係を満たす、
請求項1又は2に記載のタービン
【請求項4】
前記タービンホイールの子午面において、
前記スロート拡大流路の前記スロート部における前記ハブ面と、前記翼のチップ端とのスパン距離をHen、
前記複数の流路についての前記スロート部における前記ハブ面と、前記翼のチップ端とのスパン距離の平均値をHave、とした場合に、
Hen>Haveの関係を満たす、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のタービン
【請求項5】
前記少なくとも1つのスロート拡大流路は、複数のスロート拡大流路を含む、
請求項1乃至4の何れか一項に記載のタービン
【請求項6】
前記複数のスロート拡大流路は、離散的に配置されている、
請求項5に記載のタービン
【請求項7】
前記複数のスロート拡大流路は、連続的に配置されている、
請求項5に記載のタービン
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のタービン、
を備えるターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンホイール、タービン及びターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心式、又は斜流式のタービンでは、半径方向から排ガスを流入させるためのスクロール部を有している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-123802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクロール部を設ける場合、その構造上、舌部を設ける必要がある。そのため、排ガスの流動時に舌部の表面に境界層が発達して、ウェイク(低速領域)が発生し、速度が小さい排ガスがタービンに流入することでタービンの効率の低下を招くおそれがある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、タービンの効率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービンホイールは、
回転軸に連結されて軸線の周りに回転されるタービンホイールであって、
前記軸線に沿った断面において、前記軸線に対して傾斜するハブ面を有するハブと、
前記ハブ面に設けられた複数の翼と、
を備え、
前記タービンホイールは、隣り合う2つの前記翼の間に形成される流路を複数含み、
前記複数の流路の内の少なくとも1つの流路であるスロート拡大流路のスロート部の面積をAen、
前記複数の流路についてのスロート部の平均面積をAave、とした場合に、
Aen/Aave>1.01の関係を満たす。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービンは、上記(1)の構成のタービンホイールを備える。
【0008】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャは、上記(2)の構成のタービンを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、タービンの効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】幾つかの実施形態に係るターボチャージャの一例を示す断面図である。
図2】幾つかの実施形態に係るタービンホイールの外観の斜視図である。
図3】幾つかの実施形態に係るタービンのスクロール部について説明するための図である。
図4A】速度三角形について説明するための図である。
図4B】速度三角形について説明するための図である。
図5】幾つかの実施形態に係るタービンホイールの模式的な展開図である。
図6】幾つかの実施形態に係るタービンホイールの模式的な展開図である。
図7】他の実施形態に係るタービンホイールの模式的な展開図である。
図8】さらに他の実施形態に係るタービンホイールの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
(ターボチャージャ1の全体構成)
図1は、幾つかの実施形態に係るターボチャージャ1の一例を示す断面図である。
幾つかの実施形態に係るターボチャージャ1は、例えば自動車などの車両に搭載されるエンジンの吸気を過給するための排気ターボ過給機である。
ターボチャージャ1は、ロータシャフト2を回転軸として連結されたタービンホイール3及びコンプレッサホイール4と、タービンホイール3を回転自在に収容するケーシング(タービンハウジング)5と、コンプレッサホイール4を回転自在に収容するケーシング(コンプレッサハウジング)6とを有する。また、タービンハウジング5は、内部にスクロール流路7aを有するスクロール部7を含む。コンプレッサハウジング6は、内部にスクロール流路8aを有するスクロール部8を含む。
幾つかの実施形態に係るタービン30は、タービンホイール3と、ケーシング5とを備える。幾つかの実施形態に係るコンプレッサ40は、コンプレッサホイール4と、ケーシング6とを備える。
【0013】
(タービンホイール3)
図2は、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3の外観の斜視図である。
幾つかの実施形態に係るタービンホイール3は、ロータシャフト(回転軸)2に連結されて回転軸線AXwの周りに回転される羽根車である。幾つかの実施形態に係るタービンホイール3は、回転軸線AXwに沿った断面において、回転軸線AXwに対して傾斜するハブ面32を有するハブ31と、ハブ面32に設けられた複数の翼(動翼)33とを有する。なお、図1、2に示したタービンホイール3はラジアルタービンであるが、斜流タービンであってもよい。図2において、矢印Rはタービンホイール3の回転方向を示す。翼33は、タービンホイール3の周方向に間隔をあけて複数設けられる。
【0014】
幾つかの実施形態に係るタービンホイール3では、周方向で隣り合う2つの翼33の間に形成される流路の流路面積が最も小さくなるスロート部35が形成されている(後述する図5参照)。なお、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3では、スロート部35は、翼33の腹側において、翼の後縁37よりも前縁36側の領域に形成されている。
【0015】
なお、斜視図による図示は省略するが、幾つかの実施形態に係るコンプレッサホイール4も、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3と同様の構成を有している。すなわち、幾つかの実施形態に係るコンプレッサホイール4は、ロータシャフト(回転軸)2に連結されて回転軸線AXwの周りに回転される羽根車である。幾つかの実施形態に係るコンプレッサホイール4は、回転軸線AXwに沿った断面において、回転軸線AXwに対して傾斜するハブ面42を有するハブ41と、ハブ面42に設けられた複数の翼(動翼)43とを有する。翼43は、コンプレッサホイール4の周方向に間隔をあけて複数設けられる。
【0016】
このように構成されるターボチャージャ1では、作動流体である排ガスは、タービンホイール3の前縁36から後縁37に向かって流れる。これにより、タービンホイール3は、回転させられるとともに、ロータシャフト2を介して連結されたコンプレッサ40のコンプレッサホイール4が回転させられる。これにより、コンプレッサ40の入口部40aから流入した吸気は、コンプレッサホイール4の前縁46から後縁47に向かって流れる過程でコンプレッサホイール4によって圧縮される。
【0017】
(舌部71で生じるウェイクの影響について)
図3は、幾つかの実施形態に係るタービン30のスクロール部7について説明するための図であり、回転軸線AXwに直交する断面における模式的な断面図である。
図4Aは、タービンホイール3の前縁36における排ガスの流入角度βが理想的な流入角度に近いときの速度三角形について説明するための図である。
図4Bは、タービンホイール3の前縁36における排ガスの流入角度βが理想的な流入角度から離れてしまったときの速度三角形について説明するための図である。
【0018】
図4Aに示す速度三角形は、タービンホイール3の回転速度ベクトルUと、排ガスの絶対速度ベクトルCと、タービンホイール3から見たときの排ガスの相対速度ベクトルWとによって形成される。
図4Bに示す速度三角形は、タービンホイール3の回転速度ベクトルUと、排ガスの絶対速度ベクトルC’と、タービンホイール3から見たときの排ガスの相対速度ベクトルWとによって形成される。
【0019】
図4Aに示す速度三角形において、タービンホイール3の前縁36における排ガスの流入角度βは、前縁36における翼33のキャンバーラインCLの延在方向と相対速度ベクトルWとの角度差である。
図4Bに示す速度三角形において、タービンホイール3の前縁36における排ガスの流入角度β’は、前縁36における翼33のキャンバーラインCLの延在方向と相対速度ベクトルWとの角度差である。
なお、図4A及び図4Bにおいて、翼33の図示下方の面が圧力面PSであり、図示上方の面が負圧面SSである。
また、図4A及び図4Bにおいて、1点鎖線の円弧は、タービンホイール3の回転によって移動する前縁36の軌跡Locである。
【0020】
幾つかの実施形態では、タービンハウジング5は、スクロール流路7aとスクロール流路7aよりも径方向外側の流路9とを仕切る舌部71を有する。
一般的にタービン30では、タービンホイール3の前縁36における排ガスの流入角度βが理想的な流入角度に近いほどタービン30の空力性能が向上する。しかし、排ガスの流動時に舌部71の表面に境界層が発達して、ウェイク(低速領域)が発生すると、排ガスの絶対速度が低下して排ガスの絶対速度ベクトルCの大きさが小さくなる。そのため、タービンホイール3の前縁36における排ガスの流入角度βが理想的な流入角度から離れ、タービン30の効率低下を招くおそれがある。
【0021】
図5及び図6は、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3の模式的な展開図である。なお、図5では、隣り合う2つの翼33の翼ピッチPが一定となる領域について示している。図6では、一部翼ピッチが拡大された領域を含んだ展開図である。
図5及び図6に示すように、タービンホイール3の周方向に沿って隣り合う2つの翼33の間には、排ガスの流路12が形成されている。幾つかの実施形態に係るタービンホイール3は、隣り合う2つの翼33の間に形成される流路12を複数含んでいる。複数の流路12のそれぞれは、排ガスの流れる方向に沿って見たときの流路12の断面の面積(流路面積)が最小となる部位であるスロート部35を有する。
図5及び図6では、破線の楕円によってスロート部35が存在するおおよその位置を示している。
【0022】
一般的にタービン30の流量は、スロート部35の面積A(スロート部35における流路面積)に依存し、スロート部35の面積Aが大きくなるほど増加する。そこで、上述したウェイクによる排ガスの絶対速度の低下を抑制するため、一部の流路12においてスロート部35の面積Aを拡大することで、流路12を流れる排ガス量を増やすことが考えられる。
【0023】
そこで、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3では、複数の流路12の内の少なくとも1つの流路12であるスロート拡大流路12Aのスロート部35Aの面積Aenを複数の流路12についてのスロート部35の平均面積Aaveよりも意図的に大きくしている。具体的には、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3では、Aen/Aave>1.01の関係を満たすように、スロート拡大流路12Aのスロート部35Aの面積Aenを設定した。
なお、上記平均面積Aaveは、スロート拡大流路12Aを含むすべての流路12のスロート部35、35Aにおける流路面積の平均値である。
上記の構成では、スロート拡大流路12Aにおけるスロート部35Aの面積Aenは、複数の流路12についてのスロート部35の平均面積Aaveの1.01倍を超えている。
一般的にスロート部35の面積Aの製造上の誤差は、スロート部35の平均面積Aaveの1%未満である。そのため、スロート拡大流路12Aにおけるスロート部35Aの面積Aenは、複数の流路12についてのスロート部35の平均面積Aaveよりも意図的に大きくなるようにすることで、上記平均面積Aaveの1.01倍を超えることとなる。
【0024】
上述した幾つかの実施形態に係るタービンホイール3によれば、スロート拡大流路12Aを排ガスが流れ易くなる。そのため、上述したようなウェイクが発生しても、排ガスの絶対速度の低下を抑制でき、タービンホイール3の前縁36における排ガスの流入角度βが理想的な流入角度から離れることを抑制できる。これにより、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3を備えるタービン30において、タービン30の効率の低下を抑制できる。
【0025】
(翼ピッチによりスロート部35Aの面積Aenを大きくする場合)
幾つかの実施形態に係るタービンホイール3では、スロート拡大流路12Aを形成する隣り合う2つの翼33の翼ピッチをPen、複数の翼33についての翼ピッチPの平均値をPave、とした場合に、Pen>Paveの関係を満たすようにしてもよい。
なお、上記平均値Paveは、スロート拡大流路12Aを形成する隣り合う2つの翼33の翼ピッチPenを含むすべての翼ピッチPの平均値である。
これにより、スロート拡大流路12Aを形成する隣り合う2つの翼33の翼ピッチPenを上記翼ピッチPの平均値Paveよりも大きくすることで、比較的容易にスロート拡大流路12Aにおけるスロート部35Aの面積Aenを上記平均面積Aaveよりも大きくすることができる。
【0026】
(翼厚Tによりスロート部35Aの面積Aenを大きくする場合)
図7は、他の実施形態に係るタービンホイール3の模式的な展開図である。
図7に示すタービンホイール3では、スロート拡大流路12Aを形成する隣り合う2つの翼33の少なくとも何れか一方におけるスロート部35Aを形成する領域における翼厚をTen、複数の翼33についてのスロート部35を形成する領域における翼厚Tの平均値をTave、とした場合に、Ten<Taveの関係を満たすようにしてもよい。
なお、上記平均値をTaveは、スロート拡大流路12Aを形成する隣り合う2つの翼33を含むすべての翼33についての、スロート部35、35Aを形成する領域における翼厚Tの平均値である。
すなわち、図7に示すタービンホイール3では、スロート拡大流路12Aを形成する隣り合う2つの翼33の少なくとも何れか一方の翼33Aにおいて、スロート部35Aを形成する領域における翼厚Tenを他の翼33の翼厚Tよりも小さくすることで、スロート部35Aの面積Aenを上記平均面積Aaveよりも大きくしている。
【0027】
これにより、比較的容易にスロート拡大流路におけるスロート部の面積Aenを上記平均面積Aaveよりも大きくすることができる。
なお、図7に示すタービンホイール3のように、スロート拡大流路12Aを形成する隣り合う2つの翼33の一方の翼33Aの翼厚を前縁36から後縁37まで全体的に小さくしてもよく、スロート部35Aを形成する領域だけ翼厚を小さくしてもよい。
【0028】
(ハブ面形状の変更によりスロート部35Aの面積Aenを大きくする場合)
図8は、さらに他の実施形態に係るタービンホイール3の模式的な断面図である。
図8に示すタービンホイール3では、タービンホイール3の子午面において、スロート拡大流路12Aのスロート部35Aにおけるハブ面32と、翼33のチップ端34とのスパン距離をHenとする。タービンホイール3の子午面において、複数の流路12についてのスロート部35におけるハブ面32と、翼33のチップ端34とのスパン距離Hの平均値をHave、とする。そして、Hen>Haveの関係を満たすようにしてもよい。
なお、上記平均値Haveは、スロート拡大流路12Aのスロート部35Aを含むすべてのスロート部35、35Aにおける、ハブ面32と翼33のチップ端34とのスパン距離Hの平均値である。
【0029】
図8に示すタービンホイール3では、スロート部35におけるハブ面32と翼33のチップ端34とのスパン距離Hを変更することでスロート部35の面積Aを変更できる。例えば、図8に示すタービンホイール3では、スロート拡大流路12Aのスロート部35Aにおけるハブ面32を他の流路12のスロート部35におけるハブ面32よりもタービンホイール3の径方向内側に凹ませている。これにより、スロート拡大流路12Aのスロート部35Aにおける上記スパン距離Henをスパン距離Hの平均値Haveよりも大きくして、スロート部35Aの面積Aenを大きくしている。
このように、スロート拡大流路12Aのスロート部35Aにおけるハブ面32とチップ端34とのスパン距離Henを上記スパン距離Hの平均値Haveよりも大きくすることで、比較的容易にスロート拡大流路12Aにおけるスロート部35Aの面積Aenを上記平均面積Aaveよりも大きくすることができる。
【0030】
(スロート拡大流路12Aの配置について)
上述した幾つかの実施形態に係るタービンホイール3において、少なくとも1つのスロート拡大流路12Aは、複数のスロート拡大流路12Aを含んでいてもよい。
スロート拡大流路12Aの設置数の適した値は、例えばターボチャージャ1の仕様や、組み合わせるエンジンの仕様によって異なる。
上述した幾つかの実施形態に係るタービンホイール3において、複数のスロート拡大流路12Aを含んでいれば、スロート拡大流路12Aを1つではなく複数設けた方がタービン30の効率の低下をより抑制できる場合に有効である。
【0031】
上述した幾つかの実施形態に係るタービンホイール3において、複数のスロート拡大流路12Aは、離散的に配置されていてもよい。
複数のスロート拡大流路12Aを周方向に沿って連続的に配置した方がよいか、離散的に配置した方がよいかは、例えばターボチャージャ1の仕様や、組み合わせるエンジンの仕様によって異なる。
上述した幾つかの実施形態に係るタービンホイール3において、複数のスロート拡大流路12Aを離散的に配置すれば、複数のスロート拡大流路12Aを離散的に配置した方がよい場合に有効である。
【0032】
上述した幾つかの実施形態に係るタービンホイール3において、複数のスロート拡大流路12Aは、連続的に配置されていてもよい。
上述したように、複数のスロート拡大流路12Aを周方向に沿って連続的に配置した方がよいか、離散的に配置した方がよいかは、例えばターボチャージャ1の仕様や、組み合わせるエンジンの仕様によって異なる。
上述した幾つかの実施形態に係るタービンホイール3において、複数のスロート拡大流路12Aは、連続的に配置すれば、複数のスロート拡大流路12Aを連続的に配置した方がよい場合に有効である。
【0033】
上述した幾つかの実施形態に係るタービン30では、上述した幾つかの実施形態に係るタービンホイール3の何れかを備えるので、タービン30の効率の低下を抑制できる。
また、上述した幾つかの実施形態に係るターボチャージャ1では、上述した幾つかの実施形態に係るタービン30を備えるので、ターボチャージャ1の性能を向上できる。
【0034】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0035】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービンホイール3は、回転軸(ロータシャフト2)に連結されて軸線(回転軸線AXw)の周りに回転されるタービンホイール3であって、軸線(回転軸線AXw)に沿った断面において、軸線(回転軸線AXw)に対して傾斜するハブ面32を有するハブ31と、ハブ面32に設けられた複数の翼33と、を備える。タービンホイール3は、隣り合う2つの翼33の間に形成される流路12を複数含み、複数の流路12の内の少なくとも1つの流路12であるスロート拡大流路12Aのスロート部35Aの面積をAen、複数の流路12についてのスロート部35の平均面積をAave、とした場合に、Aen/Aave>1.01の関係を満たす。
【0036】
一般的にタービンでは、タービンホイールの前縁における排ガスの流入角度が理想的な流入角度に近いほどタービンの空力性能が向上する。しかし、排ガスの流動時に舌部の表面に境界層が発達して、ウェイク(低速領域)が発生すると、排ガスの絶対速度が低下して、タービンホイールの前縁における排ガスの流入角度が理想的な流入角度から離れ、タービンの効率低下を招くおそれがある。
【0037】
上記(1)の構成によれば、スロート拡大流路12Aを排ガスが流れ易くなる。そのため、上述したようなウェイクが発生しても、排ガスの絶対速度の低下を抑制でき、タービンホイール3の前縁36における排ガスの流入角度βが理想的な流入角度から離れることを抑制できる。これにより、上記(1)の構成によるタービンホイール3を備えるタービン30において、タービン30の効率の低下を抑制できる。
【0038】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、スロート拡大流路12Aを形成する隣り合う2つの翼33の翼ピッチをPen、複数の翼33についての翼ピッチPの平均値をPave、とした場合に、Pen>Paveの関係を満たすようにしてもよい。
【0039】
上記(2)の構成によれば、スロート拡大流路12Aを形成する隣り合う2つの翼33の翼ピッチPenを上記翼ピッチPの平均値Paveよりも大きくすることで、比較的容易にスロート拡大流路12Aにおけるスロート部35Aの面積Aenを上記平均面積Aaveよりも大きくすることができる。
【0040】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、スロート拡大流路12Aを形成する隣り合う2つの翼33の少なくとも何れか一方におけるスロート部35Aを形成する領域における翼厚をTen、複数の翼33についてのスロート部35を形成する領域における翼厚Tの平均値をTave、とした場合に、Ten<Taveの関係を満たすようにしてもよい。
【0041】
上記(3)の構成によれば、比較的容易にスロート拡大流路12Aにおけるスロート部35Aの面積Aenを上記平均面積Aaveよりも大きくすることができる。
【0042】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、タービンホイール3の子午面において、スロート拡大流路12Aのスロート部35Aにおけるハブ面32と、翼33のチップ端34とのスパン距離をHenとする。タービンホイール3の子午面において、複数の流路12についてのスロート部35におけるハブ面32と、翼33のチップ端34とのスパン距離の平均値をHave、とする。そして、Hen>Haveの関係を満たすようにしてもよい。
【0043】
上記(4)の構成では、スロート部35におけるハブ面32と翼33のチップ端34とのスパン距離Hを変更することでスロート部35の面積Aを変更できる。したがって、スロート拡大流路12Aのスロート部35Aにおけるハブ面32とチップ端34とのスパン距離Henを上記スパン距離Hの平均値Haveよりも大きくすることで、比較的容易にスロート拡大流路12Aにおけるスロート部35Aの面積Aenを上記平均面積Aaveよりも大きくすることができる。
【0044】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、少なくとも1つのスロート拡大流路12Aは、複数のスロート拡大流路12Aを含んでいてもよい。
【0045】
スロート拡大流路12Aの設置数の適した値は、例えばターボチャージャ1の仕様や、組み合わせるエンジンの仕様によって異なる。
上記(5)の構成よれば、スロート拡大流路12Aを1つではなく複数設けた方がタービン30の効率の低下をより抑制できる場合に有効である。
【0046】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、複数のスロート拡大流路12Aは、離散的に配置されていてもよい。
【0047】
複数のスロート拡大流路12Aを周方向に沿って連続的に配置した方がよいか、離散的に配置した方がよいかは、例えばターボチャージャ1の仕様や、組み合わせるエンジンの仕様によって異なる。
上記(6)の構成よれば、複数のスロート拡大流路12Aを離散的に配置した方がよい場合に有効である。
【0048】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、複数のスロート拡大流路12Aは、連続的に配置されていてもよい。
【0049】
上述したように、複数のスロート拡大流路12Aを周方向に沿って連続的に配置した方がよいか、離散的に配置した方がよいかは、例えばターボチャージャ1の仕様や、組み合わせるエンジンの仕様によって異なる。
上記(7)の構成よれば、複数のスロート拡大流路12Aを連続的に配置した方がよい場合に効果的である。
【0050】
(8)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン30は、上記(1)乃至(7)の何れかの構成のタービンホイール3を備える。
【0051】
上記(8)の構成よれば、タービン30の効率の低下を抑制できる。
【0052】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャ1は、上記(8)の構成のタービン30を備える。
【0053】
上記(9)の構成よれば、ターボチャージャ1の性能を向上できる。
【符号の説明】
【0054】
1 ターボチャージャ
2 回転軸(ロータシャフト)
3 タービンホイール
5 ケーシング(タービンハウジング)
12 流路
12A スロート拡大流路
30 タービン
31 ハブ
32 ハブ面
33、33A 翼(動翼)
34 チップ端
35、35A スロート部
36 前縁
37 後縁
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8