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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】水田溝切機の溝切部
(51)【国際特許分類】
   E02B 11/02 20060101AFI20240613BHJP
   A01B 13/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
E02B11/02 Z
A01B13/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020156327
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049990
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】三澤 充
(72)【発明者】
【氏名】池田 望
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-109901(JP,A)
【文献】特開2007-247233(JP,A)
【文献】特開平08-070609(JP,A)
【文献】特開2011-131423(JP,A)
【文献】特開2017-145090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 11/02
A01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田に略V字状の溝を形成するための水田溝切機(100)に設けられ、前記溝の左右側面を形成するための左右の側板部(7a,7b)を備え、前記左右の側板部(7a,7b)の上方に開口部(7w)が形成された溝切部(7)において、
前記開口部(7w)を開閉可能に閉塞する閉塞蓋(7x)を備え、
前記閉塞蓋(7x)は、その左端部(7k)又は右端部(7v)の何れか一方の端部(7v)が、前記左右の側板部(7a,7b)の何れか一方(7b)の上端部(7f)の回動支点(7t)に回動可能に支持されると共に、前記閉塞蓋(7x)の前記左端部(7k)又は前記右端部(7v)の他方の端部(7k)が、前記左右の側板部(7a,7b)の他方(7a)の上端部(7e)に接離可能とされることを特徴とする水田溝切機(100)の溝切部(7)。
【請求項2】
前記溝切部(7)の前記左右の側板部(7a,7b)の前記他方(7a)の内側部と前記閉塞蓋(7x)の内面とを接続し、曲げられて前記溝切部(7)内に収容された接続部材(7s)を備え、
前記接続部材(7s)は、張られることにより、前記閉塞蓋(7x)の開く角度を規制し、
前記閉塞蓋(7x)は前記閉塞蓋(7x)上の泥を落とし得る角度まで開くことが可能であることを特徴とする請求項1記載の水田溝切機(100)の溝切部(7)。
【請求項3】
前記接続部材(7s)は、前記閉塞蓋(7x)が閉となるように付勢する弾性力を有することを請求項2記載の水田溝切機(100)の溝切部(7)。
【請求項4】
前記閉塞蓋(7x)を回動可能に支持する部分(7m)には、前記閉塞蓋(7x)が閉となるように付勢する付勢部材(7u)が設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の水田溝切機(100)の溝切部(7)。
【請求項5】
前記閉塞蓋(7x)の前記左端部(7k)及び前記右端部(7v)と、前記左右の側板部(7a,7b)において前記閉塞蓋(7x)の前記左端部(7k)及び前記右端部(7v)に対面するそれぞれの前記上端部(7e,7f)との間に、振動吸収部材(7i,7j)がそれぞれ介在していることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の水田溝切機(100)の溝切部(7)。
【請求項6】
前記左右の側板部(7a,7b)の前記他方(7a)の前記上端部(7e)に対して前記閉塞蓋(7x)の前記左端部(7k)又は前記右端部(7v)の前記他方の端部(7k)を一時的に固定する留め具を有することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の水田溝切機(100)の溝切部(7)。
【請求項7】
前記閉塞蓋(7x)は、蝶番(7m)を介して回動可能に支持され、
前記閉塞蓋(7x)の上面には、把手(7z)が設けられていることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の水田溝切機(100)の溝切部(7)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田溝切機の溝切部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水田の排水を速やかに行うべく水田の土表面に略V字状の溝を溝切部により形成する歩行型や乗用型の水田溝切機が知られている。これらの水田溝切機の溝切部は、溝の左右側面を形成するための左右の側板部と、溝の底面を形成するための底板部と、を備えており、左右の側板部の上方及び後方に開口部が形成されている。以下の特許文献1に記載の水田溝切機の溝切部にあっては、溝切作業の際に溝切部内へ泥が侵入・堆積するのを防止すべく、上方の開口部を覆うようにカバーが設けられている。このカバーは、その左右の端部が、左右の側板部の上部に連設された左右の上方突出板部に四箇所のボルト結合により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-109901公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の水田溝切機の溝切部にあっては、カバー上に堆積した泥を落とすのに手間がかかると共に、溝切部内に後部の開口部等から侵入・堆積した泥を除去する際に、全てのボルト結合を解除しカバーを取り外す必要があり、溝切部内の清掃が面倒であった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、閉塞蓋(カバー)上に堆積した泥を容易に落とすことができると共に、溝切部内の清掃を容易にできる水田溝切機の溝切部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による水田溝切機(100)の溝切部(7)は、水田に略V字状の溝を形成するための水田溝切機(100)に設けられ、溝の左右側面を形成するための左右の側板部(7a,7b)を備え、左右の側板部(7a,7b)の上方に開口部(7w)が形成された溝切部(7)において、開口部(7w)を開閉可能に閉塞する閉塞蓋(7x)を備え、閉塞蓋(7x)は、その左端部(7k)又は右端部(7v)の何れか一方の端部(7v)が、左右の側板部(7a,7b)の何れか一方(7b)の上端部(7f)の回動支点(7t)に回動可能に支持されると共に、閉塞蓋(7x)の左端部(7k)又は右端部(7v)の他方の端部(7k)が、左右の側板部(7a,7b)の他方(7a)の上端部(7e)に接離可能とされることを特徴としている。
【0007】
このような水田溝切機(100)の溝切部(7)によれば、溝切部(7)の上方の開口部(7w)を閉塞する閉塞蓋(7x)を、左右の側板部(7a,7b)の何れか一方(7b)の上端部(7f)の回動支点(7t)回りに回動させることにより、閉塞蓋(7x)上に堆積した泥を容易に落とすことができる。また、従来技術のように上方の開口部を閉塞するカバー全てのボルト結合を解除するというような煩雑な作業が必要なく、閉塞蓋(7x)を、回動支点(7t)回りに回動させるという簡易な操作により閉塞蓋(7x)を開にでき、結果的に溝切部(7)内の清掃を容易にできる。
【0008】
ここで、閉塞蓋(7x)の左右の側板部(7a,7b)の他方(7a)の内側部と閉塞蓋(7x)の内面とを接続し、曲げられて溝切部(7)内に収容された接続部材(7s)を備え、接続部材(7s)は、張られることにより、閉塞蓋(7x)の開く角度を規制し、閉塞蓋(7x)は閉塞蓋(7x)上の泥を落とし得る角度まで開くことが可能であると、接続部材(7s)が張られるまで閉塞蓋(7x)を開くことにより、閉塞蓋(7x)上に堆積した泥を容易に落とすことができる。また、接続部材(7s)により閉塞蓋(7x)の開き過ぎを防止でき、閉塞蓋(7x)による作物への損傷の虞がなくなる。
【0009】
また、接続部材(7s)は、閉塞蓋(7x)が閉となるように付勢する弾性力を有していると、接続部材(7s)の弾性力により、閉塞蓋(7x)を容易に閉にできる。
【0010】
また、閉塞蓋(7x)を回動可能に支持する部分(7m)には、閉塞蓋(7x)が閉となるように付勢する付勢部材(7u)が設けられていると、閉塞蓋(7x)を回動可能に支持する部分(7m)に設けられた付勢部材(7u)の付勢力により、閉塞蓋(7x)を容易に閉にできる。また、付勢部材(7u)の付勢力により、閉塞蓋(7x)の開き過ぎを防止でき、閉塞蓋(7x)による作物への損傷の虞がなくなる。
【0011】
また、閉塞蓋(7x)の左端部(7k)及び右端部(7v)と、左右の側板部(7a,7b)において閉塞蓋(7x)の左端部(7k)及び右端部(7v)に対面するそれぞれの上端部(7e,7f)との間に、振動吸収部材(7i,7j)がそれぞれ介在していると、水田溝切機(100)の作業時の振動を吸収でき、騒音の発生や破損を防止できる。
【0012】
また、左右の側板部(7a,7b)の他方(7a)の上端部(7e)に対して閉塞蓋(7x)の左端部(7k)又は右端部(7v)の他方の端部(7k)を一時的に固定する留め具を有していると、水田溝切機(100)の作業時の振動を抑止でき、騒音の発生や破損を防止できる。
【0013】
また、上記作用を好適に奏する構成としては、具体的には、閉塞蓋(7x)は、蝶番(7m)を介して回動可能に支持され、閉塞蓋(7x)の上面には、把手(7z)が設けられる構成が挙げられる。これによれば、作業者は把手(7z)を握り、蝶番(7m)のピン(7t)を回動支点として容易に閉塞蓋(7x)を開にできる。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によれば、閉塞蓋上に堆積した泥を容易に落とすことができると共に、溝切部内の清掃を容易にできる水田溝切機の溝切部を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る溝切部を備えた乗用溝切機を示す左側面図である。
図2図1中の中立戻し機構を示す平面図である。
図3図1中の溝切部を示す平面図である。
図4図1中の溝切部を示す左側面図である。
図5図3及び図4に示す溝切部の断面図である。
図6図3及び図4に示す溝切部の閉塞蓋を示す平面図である。
図7】車輪と溝切部の位相関係を示す平面図であり、車輪及び溝切部が中立位置に位置している状態を示す図である。
図8】車輪と溝切部の位相関係を示す平面図であり、車輪を中立位置から時計回りに旋回した状態を示す図である。
図9】車輪と溝切部の位相関係を示す平面図であり、車輪を中立位置から反時計回りに旋回した状態を示す図である。
図10図5中の溝切部の閉塞蓋を開にした状態を示す断面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る溝切部を示す断面図である。
図12図11に示す溝切部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る溝切部を備えた乗用溝切機の好適な実施形態について、図1図12を参照しながら説明する。図1図10は、本発明の第1実施形態を、図11及び図12は、本発明の第2実施形態を各々示すものであり、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
先ず、図1~10に示す第1実施形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る溝切部を備えた乗用溝切機を示す左側面図である。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を示す語は、乗用溝切機が水平面上に置かれた場合の前進方向を前方と定めた状態を基準としている。
【0018】
図1に示すように、水田溝切機としての乗用溝切機100は、その前部に、左右方向に延びその左右端部を作業者が握って操作するハンドル1と、ハンドル1の中央下部から斜め下方且つ前方へ延びるハンドル軸2と、ハンドル軸2の下端部に連結され紙面手前側にオフセットされてハンドル軸2と同傾斜で下方へ延びる連結ブラケット3と、連結ブラケット3に連結されたギヤケース4と、ギヤケース4の内側のハブに連結されると共に外周の周方向に沿って等間隔で平板状の滑り止め5が設けられた車輪6と、を備え、その後部に、水田(圃場)の土表面に溝を切るための溝切部7と、溝切部7に連結され斜め上方且つ後方へ延びる溝切部軸8と、を備えている。
【0019】
また、乗用溝切機100は、前後方向に後ろ下がりで延びる本体フレーム9を備えている。本体フレーム9の前部には、ハンドル軸回転支持パイプ10が設けられ、ハンドル軸回転支持パイプ10にハンドル軸2が内挿され回転自在に連結されている。
【0020】
本体フレーム9には、その軸線方向略中央の上部に、作業者が跨がって座るための座席12が設けられている。座席12は、上下方向位置が調整可能とされている。また、本体フレーム9の軸線方向中央より後部側は、後述の伝動軸収容パイプ13が進入しハンドル軸2を回転軸心として左右方向(紙面垂直方向)に揺動できるように、略U字状に側方(紙面奥側)に膨らむように湾曲する湾曲部14を備えている。本体フレーム9の湾曲部14から後方へ延びる後端部には、溝切部軸回転支持パイプ11が設けられ、溝切部軸回転支持パイプ11に溝切部軸8が内挿され回転自在に連結されている。
【0021】
ギヤケース4は、曲り歯かさ歯車等を収容し、このギヤケース4に対しては、内部に伝動軸を収容し前後方向へ後ろ上がりで延びる伝動軸収容パイプ13が連結され、伝動軸収容パイプ13の後端には原動機15が連結されている。伝動軸収容パイプ13は、ギヤケース4の曲り歯かさ歯車により右側(紙面奥側)にやや傾斜しながら後方へ延びている。原動機15は、座席12の後方に配置され、伝動軸収容パイプ13は、座席12の下を通り本体フレーム9の湾曲部14の内側を通過して原動機15に至るように配置されている。そして、原動機15の駆動力が伝動軸を介してギヤケース4のハブに伝達され、車輪6が回転する。なお、連結ブラケット3と伝動軸収容パイプ13とは補強フレーム29により連結されている。
【0022】
また、伝動軸収容パイプ13と溝切部軸8との間には、中立戻し機構24が介在している。
【0023】
図2は、中立戻し機構を示す平面図である、中立戻し機構24は、図1及び図2に示すように、伝動軸収容パイプ13と溝切部軸8とを、互いに回転軸心周り中立位置に向かうように引き寄せる弾性体としてのコイルスプリング25a,25bを介して連結したものである。伝動軸収容パイプ13には、左右方向に延びる前側の調整板26が連結され、溝切部軸8には、左右方向に延びる後側の調整板27が回転ブラケット31を介して固定されており、前側の調整板26及び後側の調整板27には、コイルスプリング25a,25bの端部を係止するための係止部(係止孔)28が左右方向に沿って複数離間して設けられている(図2参照)。
【0024】
図2に示すように、コイルスプリング25a,25bは、平面視においてハンドル軸2と溝切部軸8の各回転軸心を結ぶ直線の左右両側にそれぞれ設けられており、ここでは、右側のコイルスプリング25aは、前側及び後側の調整板26,27の下側に、左側のコイルスプリング25bは、前側及び後側の調整板26,27の上側にそれぞれ配置されている。このように、コイルスプリング25a,25bを、平面視においてハンドル軸2と溝切部軸8の各回転軸心を結ぶ直線の左右両側にそれぞれ設けているため、ハンドル1を左右の何れに切った場合でも、コイルスプリング25a,25bによりハンドル1を中立位置へ容易に戻すことができる。
【0025】
また、平面視斜めの伝動軸収容パイプ13に対して、中立戻し機構24を介して連結された図1に示す溝切部7が、乗用溝切機100の進行方向前方を向く中立位置に位置するように(車輪6の中立位置に合わせるように;図7参照)、左側のコイルスプリング25bの前側の調整板26に対する係止位置は左側にオフセットされており、右側のコイルスプリング25aよりも強い引っ張り力を働かせている。
【0026】
図3は、溝切部を示す平面図、図4は、溝切部を示す左側面図、図5は、溝切部の断面図、図6は、溝切部の閉塞蓋を示す平面図である。
【0027】
図3に示すように、溝切部7は、概略、平面視において、後端部を除く部分が先細の台形形状をなすと共に、図5に示すように、前後方向視において略V字状の溝を形成し得るように例えば平板を折り曲げることにより構成されている。
【0028】
具体的には、図3及び図5に示すように、後述する閉塞蓋7xを除いて左右対称な構造となっており、図3図5に示すように、概略、略V字状の溝の左右側面を形成するための左右の側板部7a,7bと、後端部の底部に設けられ略V字状の溝の底面を形成するための左右の底板部7c,7dと、を備えている。左右の側板部7a,7bは、前側に向かうに連れて高さ方向の寸法が短くなると共にV字をなす左右幅が小さくされ、左右の側板部7a,7bの下端部は、その後端部の底板部7c、7dを除き、突き当てられて折曲され重ねて接合された接合部7yとされている。左右の底板部7c,7dは、接合部7yより後側において、左右の側板部7a,7bの下端からそれぞれ左右内方に向かって張り出し、左右の底板部7c,7d同士の間に,後方へ向かって広がる空間Sが形成されている。
【0029】
左右の側板部7a,7bの上端部7e,7fは、左右方向外方へ張り出し平面視において先細のハの字状なすように折り曲げられた張出部とされている。左右の側板部7a,7bの上端部7e,7fの前端部は、その左右端部が例えば溶接等により固定された板状の連結板7gにより、連結されている。この連結板7gの略中央には、貫通孔7h(図3参照)が開口され、この貫通孔7hに溝切部軸8が内挿され、例えば溶接等により固定されている(図1参照)。
【0030】
溝切部7の左右の側板部7a,7bは、上方及び後方並びに前方へ開放され、上方の開口部7w(図5参照)は、例えば平板を折り曲げることにより形成された閉塞蓋7xによって、開閉可能に覆われている。図6に示すように、閉塞蓋7xは、蓋自体は左右対称な構造となっており、後端部7oを除く部分は、上方の開口部7wを覆うように、平面視において先細の台形形状をなすと共に、前後方向視において先細の山型形状をなしている(図5参照)。閉塞蓋7xの後端部7oは、下方へ傾斜するようにして(図4参照)上方の開口部7wを覆うようになっている。
【0031】
閉塞蓋7xは、図3及び図5に示すように、後端部7oを除く右端部7vが、右側の側板部7bの上端部7fに載置され、前後一対の蝶番7mを介して回動可能に支持されている。具体的には、閉塞蓋7xの右端部7vは、蝶番7mの閉塞蓋側の羽根7nに例えば溶接等により固定され(例えばネジ止め等でも可)、蝶番7mの側板部側の羽根7pは、右側の側板部7bの上端部7fに、スペーサー7qを介して、例えばネジ止め等により固定されている(例えば溶接等でも可)。
【0032】
蝶番7mの羽根7n,7pは、両方に通されるピン7tを回動支点として回動可能である。そして、閉塞蓋7xを回動可能に支持する部分である蝶番7mに対しては、閉塞蓋7xが閉となるように付勢する付勢部材7uが、ピン7tに巻き付くように配置されている。付勢部材7uは、ここでは、捩りバネが用いられている。
【0033】
また、閉塞蓋7xの後端部7oを除く左端部7kは、左側の側板部7aの上端部7eに対して接離可能とされており、閉塞蓋7xの閉時には、左側の側板部7aの上端部7eに対して載置された状態となっている。
【0034】
閉塞蓋7xの左側の上面には、図3図6に示すように、作業者により握られる把手7zが取り付けられている。具体的には、図5に示すように、把手7zの端部は、閉塞蓋7xの左側部分を貫通し、閉塞蓋7xの左側部分を貫通した部分に形成された雄螺子に、ナット7rを螺合することにより(ネジ止めすることにより)、把手7zが閉塞蓋7xに取り付けられている。把手7zを固定するナット7rには、接続部材7sの一端が共締めされている。接続部材7sはバンド状のもの(細長いもの)が好ましく、ここでは、電線が用いられている。
【0035】
接続部材7sの他端は、左側の側板部7aの内側部にネジ止めされており、接続部材7sは、曲げられて溝切部7内に収容されている。そして、接続部材7sは、閉塞蓋7xがピン7tを回動支点として回動し開となったときに張られ(図10参照)、閉塞蓋7xの開く角度を規制し、それ以上閉塞蓋7xが開くことを阻止する。
【0036】
なお、ここでは、蝶番7mにより閉塞蓋7xを開閉可能としているが、ピン結合等の回動支点を有する連結であれば良い。
【0037】
また、付勢部材7uは捩りバネに限定されるものではなく、閉塞蓋7xを回動可能に支持する部分に設けられ、閉塞蓋7xが閉となるように付勢する付勢部材であれば良い。
【0038】
また、把手7z、接続部材7sはネジ止めに限定されるものではなく、例えば溶接等であっても良い。
【0039】
因みに、ここでは、閉塞蓋7xを除く溝切部7の左右側の部分を、1枚の例えば金属等からなる平板を折り曲げてそれぞれ形成しているが、例えば左右の側板部7a,7bの上端部7f,7e等を別板とし溶接等で連結して構成しても良い。
【0040】
図7は、車輪と溝切部の位相関係を示す平面図であり、車輪及び溝切部が中立位置に位置している状態を示す図、図8は、車輪と溝切部の位相関係を示す平面図であり、車輪を中立位置から時計回りに旋回した状態を示す図、図9は、車輪と溝切部の位相関係を示す平面図であり、車輪を中立位置から反時計回りに旋回した状態を示す図である。
【0041】
上記構成を有する乗用溝切機100を使用する際には、図1に示すように、作業者は、座席12に跨がって座り、原動機15を駆動し、原動機15の駆動力を、伝動軸収容パイプ13に収容された伝動軸を介してギヤケース4内の歯車、内側のハブに伝達し、車輪6が駆動輪として回転する。
【0042】
このとき、ハンドル軸2及び溝切部軸8は、互いに回転軸心周り中立位置に位置し、図7に示すように、車輪6の方向と溝切部7の方向が一致しているため、乗用溝切機100は真っ直ぐに前進する。この際、乗用溝切機100及び作業者の重量が、車輪6及び溝切部7に加わるため、車輪6に追従する溝切部7が水田の土表面に食い込みながら、左右の側板部7a,7bの外側上方へ土が押し上げられ、押し上げられた土が、左右の側板部7a,7bの上端部7e,7fによって左右方向に拡散し、略V字状の溝が形成される。
【0043】
乗用溝切機100が前進する中で、ハンドル1を回転操作すると、ハンドル軸2、連結ブラケット3、車輪6、ギヤケース4、伝動軸収容パイプ13、原動機15が、ハンドル軸2の回転軸心を中心に回転し、例えば、ハンドル1を右に切った場合には、図8に示すように、車輪6が右に旋回し、乗用溝切機100の進行方向が右へ変更される。また、例えば、ハンドル1を左に切った場合には、図9に示すように、車輪6が左に旋回し、乗用溝切機100の進行方向が左へ変更される。
【0044】
このとき、溝切部軸8は、コイルスプリング25a,25bを有する中立戻し機構24を介して伝動軸収容パイプ13に接続されているため、溝切部7は溝切部軸8の回転軸心を中心として、ハンドル1を右に切った場合には、図8に示すように、反時計回りに回転し、左に切った場合には、図9に示すように、時計回りに回転する。すなわち、ハンドル軸2が回転した位相と、溝切部7が回転した位相とは逆位相となり、車輪6と溝切部7が逆方向を向いた状態で乗用溝切機100は進行する。このように、ハンドル軸2が回転した位相と、溝切部7が回転した位相とを逆位相にでき、車輪6と溝切部7とが逆方向を向くため、回転半径や内輪差を小さくでき、小回りを利かせることができる。
【0045】
この状態で、ハンドル1の操作方向がそのまま留まらないように、中立戻し機構24が作用し、コイルスプリング25a,25bによって、ハンドル1及び溝切部7が上記とは逆方向に回転し、中立位置に復帰する。このように、ハンドル1が中立位置へ容易に戻されるため、安定した直進性を維持できる。
【0046】
このようにして溝切部7により略V字状の溝を形成していくと、閉塞蓋7x上に泥が堆積し、除去が必要となる。
【0047】
図10は、溝切部の閉塞蓋を開にした状態を示す断面図である。作業者は把手7zを握り、閉塞蓋7xを、回動支点となるピン7t回りに回動させ、容易に開とする。
【0048】
このとき、溝切部7の左側の側板部7aの内側部と閉塞蓋7xの内面とを接続し、曲げられて溝切部7内に収容された接続部材7sがピンと張られ、閉塞蓋7xが鈍角になるまで開く。この閉塞蓋7xの開により、閉塞蓋7x上に堆積した泥は落下し容易に落とすことができる。すなわち、閉塞蓋7xを、右側の側板部7bの上端部7fの回動支点となるピン7t回りに回動させることにより、閉塞蓋7x上に堆積した泥を容易に落とすことができる。また、従来技術のように上方の開口部を閉塞するカバー全てのボルト結合を解除するというような煩雑な作業が必要なく、閉塞蓋7xを、回動支点となるピン7t回りに回動させるという簡易な操作により閉塞蓋7xを開にでき、結果的に溝切部7内の清掃を容易にできる。
【0049】
また、接続部材7sが張られることにより、閉塞蓋7xの開く角度が規制され、閉塞蓋7xは閉塞蓋7x上の泥を落とし得る角度まで開くことが可能なため、接続部材7sが張られるまで閉塞蓋7xを開くことにより、閉塞蓋7x上に堆積した泥を容易に落とすことができる。また、接続部材7sにより閉塞蓋7xの開き過ぎを防止でき、閉塞蓋7xによる作物への損傷の虞がなくなる。
【0050】
そして、閉塞蓋7x上に堆積した泥を落としたら、作業者は把手7zを握っている手を緩めて添えるか、又は、離す。
【0051】
すると、閉塞蓋7xを回動可能に支持する部分である蝶番7mに対して設けられている付勢部材7uの付勢力により、閉塞蓋7xを容易に閉にできる。
【0052】
なお、接続部材7sを例えばバネやゴム等とし、閉塞蓋7xが閉となるように付勢する弾性力を有するものとすれば、付勢部材7uがなくても、接続部材7sの弾性力により、閉塞蓋7xを容易に閉にできる。
【0053】
また、接続部材7sがなくても、付勢部材7uの付勢力を高めると共に、閉塞蓋7x上の泥を落とし得る角度まで閉塞蓋7xを作業者により開くことができるようにすれば、付勢部材7uの付勢力により、閉塞蓋7xを容易に閉にできると共に、付勢部材7uの付勢力により、閉塞蓋7xの開き過ぎを防止でき、閉塞蓋7xによる作物への損傷の虞がなくなる。
【0054】
因みに、閉塞蓋7xが閉となるように付勢する弾性力を有する接続部材7sと、付勢部材7uの両方を備えていても、閉塞蓋7xを容易に閉にできると共に、閉塞蓋7xの開き過ぎを防止でき、閉塞蓋7xによる作物への損傷の虞をなくすことができる。
【0055】
図11は、本発明の第2実施形態に係る溝切部を示す断面図、図12は、図11に示す溝切部の平面図である。
【0056】
この第2実施形態が、第1実施形態と違う点は、閉塞蓋7xの左端部7k及び右端部7vと、左右の側板部7a,7bにおいて閉塞蓋7xの左端部7k及び右端部7vに対面するそれぞれの上端部7e,7fとの間に、例えばゴム等を始めとした振動吸収部材7i,7jをそれぞれ介在させた点である。
【0057】
このような第2実施形態によれば、振動吸収部材7i,7jにより、乗用溝切機100の作業時の振動を吸収でき、騒音の発生や破損を防止できる。なお、振動吸収部材7i,7jは、ここでは、左右の側板部7a,7bの上端部7e,7f上に設けられているが、閉塞蓋7xの左端部7k、右端部7vの下面に設けられていても良い。
【0058】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、左側の側板部7aの上端部7eに対して、閉塞蓋7xの左端部7kを一時的に固定する例えば強力クリップ等の留め具を設けるようにし、乗用溝切機100の作業時の振動を抑止し、騒音の発生や破損を防止するようにしても良い。
【0059】
また、閉塞蓋7xを後方へ延長し、溝切部7の後方へ開放する開口部を塞ぐようにしても良い。
【0060】
また、上記実施形態においては、ハンドル1を回転可能としているが回転不能であっても良く、溝切部7も回転不能であっても良い。
【0061】
また、閉塞蓋7xの回動支点7tや把手7zの位置を左右逆にしても良い。この場合、閉塞蓋7xの開く方向も左右逆となり、接続部材7sの取付位置も左右逆となる。
【0062】
また、上記実施形態においては、乗用型の水田溝切機である乗用溝切機100の溝切部7に対する適用を述べているが、歩行型の水田溝切機の溝切部に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
7…溝切部、7a…左側の側板部、7b…右側の側板部、7e…左側の側板部の上端部、7f…右側の側板部の上端部、7i,7j…振動吸収部材、7k…閉塞蓋の左端部、7m…蝶番(回動可能に支持する部分)、7s…接続部材、7t…ピン(回動支点)、7u…付勢部材、7v…閉塞蓋の右端部、7w…開口部、7x…閉塞蓋、7z…把手、100…乗用溝切機(水田溝切機)。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12