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  • 特許-フィルム製造方法及びフィルム製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】フィルム製造方法及びフィルム製造装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20240613BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20240613BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240613BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20240613BHJP
   B05C 11/06 20060101ALI20240613BHJP
   B29C 41/28 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B05D3/00 F
B05D3/04 Z
B05D7/00 A
B05C5/02
B05C11/06
B29C41/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020160107
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053325
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄三
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-329463(JP,A)
【文献】特開2013-156488(JP,A)
【文献】特開2005-215210(JP,A)
【文献】特開2005-254227(JP,A)
【文献】特開2002-273299(JP,A)
【文献】特開平2-239914(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B05C 1/00-21/00
B29C 41/00-41/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの製造方法であって、
溶剤可溶性の樹脂と、溶剤と、を含む塗工液を、塗工手段を用いて支持体上に塗布して塗膜を形成する塗工工程と、
前記塗膜へ気体を吹き付けにより前記塗膜の粘度を増加させる厚膜化工程と、前記塗膜を乾燥する工程と、を有し、
前記気体を吹き付けにより前記塗膜の粘度を増加させる厚膜化工程の気体の風速の前記基材の表面位置での前記基材に垂直な方向の成分である衝突風速の最大値が2.0m/s以上7.0m/s以下であり、
前記衝突風速が最大となる位置の前記基材の搬送方向前後10mmにおける前記衝突風速の最大値からの平均変化率が0.25m/(s・mm)以下であるフィルム製造方法。
【請求項2】
前記塗工液の粘度が、1~50cPであることを特徴とする請求項1に記載のフィルム製造方法。
【請求項3】
吹き付ける気体の温度が、15~35℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム製造方法。
【請求項4】
前記塗膜の平均厚みが80μm以上、200μm以下である請求項1~3のいずれかに記載のフィルム製造方法。
【請求項5】
帯状の基材を長手方向に連続搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送されている前記基材に塗工液を塗工する塗工装置と、
前記塗工装置により形成された塗膜への気体の吹き付けにより前記塗膜の粘度を増加させる厚膜化装置と、を備え、
前記厚膜化装置は、前記基材の表面位置における前記気体の風速の前記基材に垂直な方向の成分である衝突風速の最大値が2.0m/s以上7.0m/s以下、かつ前記衝突風速が最大となる位置の前記基材の搬送方向前後10mmにおける前記衝突風速の最大値からの平均変化率が0.25m/(s・mm)以下となるよう前記気体を吹き付けるフィルム製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム製造方法及びフィルム製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を有機溶媒に溶解した塗工液を基材上に塗工し、塗工により形成される塗膜を乾燥することによって樹脂フィルムを製造する方法が知られている。このような方法でフィルムを製造する場合、必要な機能を得るために40μm以上の厚い塗膜を優れた外観で製膜することが必要になることがある。
【0003】
塗工液として低粘度なものを使用することで塗工液の表面張力等によって塗工から乾燥までの間に塗膜の外観不良が低減されることが知られている。しかしながら、粘度が低い場合、塗工後に塗膜が流れてしまい厚膜を維持することができない。一方、厚膜を得るために粘度を増加させると、塗工部でのビード欠陥に由来した塗工ムラ(スジ、段ムラ)の影響が顕著に現れてしまい優れた外観の塗膜を得ることができない。
【0004】
下記特許文献1には、塗料の塗布位置に対して相対的に支持体(ベースフィルム)を移動させながら、この支持体の一方の面に前記塗料を塗布する工程と、この塗布後に前記塗料の塗布面を少なくとも気体の吹きつけにより平滑化する工程とを有する塗膜形成方法が記載されている。特許文献1では、塗布直後の塗膜に気体を吹き付けることにより流動を停止させ、塗布面の平滑化を図ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-261791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の方法により塗膜を平滑化したフィルムを取得することができるが、Wet膜が厚い塗膜に対して適用すると、塗膜表面に風紋が発生してしまい、人の目で見た場合に外観不良として認識される。このような外観不良をもたらす風紋は、得られたフィルムを光学フィルムとして用いる場合には欠陥となる。
【0007】
本発明は、外観不良を低減した厚膜フィルム製造方法及びフィルム製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の構成により、外観不良を低減した厚膜フィルム製造方法及びフィルム製造装置を提供することを見出した。
【0009】
(1).フィルムの製造方法であって、
溶剤可溶性の樹脂と、溶剤と、を含む塗工液を、塗工手段を用いて支持体上に塗布して塗膜を形成する塗工工程と、
前記塗膜へ気体を吹き付けにより前記塗膜の粘度を増加させる厚膜化工程と、前記塗膜を乾燥する工程と、を有し、
前記気体を吹き付けにより前記塗膜の粘度を増加させる厚膜化工程の気体の風速の前記基材の表面位置での前記基材に垂直な方向の成分である衝突風速の最大値が2.0m/s以上7.0m/s以下であり、
前記衝突風速が最大となる位置の前記基材の搬送方向前後10mmにおける前記衝突風速の最大値からの平均変化率が0.25m/(s・mm)以下であるフィルム製造方法。
【0010】
(2).前記塗工液の粘度が、1~50cPであることを特徴とする(1)に記載のフィルム製造方法。
【0011】
(3).吹き付ける気体の温度が、15~35℃であることを特徴とする(1)または(2)に記載のフィルム製造方法。
【0012】
(4).前記塗膜の平均厚みが80μm以上、200μm以下である(1)~(3)のいずれかに記載のフィルム製造方法。
【0013】
(5).帯状の基材を長手方向に連続搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送されている前記基材に塗工液を塗工する塗工装置と、
前記塗工装置により形成された塗膜への気体の吹き付けにより前記塗膜の粘度を増加させる厚膜化装置と、を備え、
前記厚膜化装置は、前記基材の表面位置における前記気体の風速の前記基材に垂直な方向の成分である衝突風速の最大値が2.0m/s以上7.0m/s以下、かつ前記衝突風速が最大となる位置の前記基材の搬送方向前後10mmにおける前記衝突風速の最大値からの平均変化率が0.25m/(s・mm)以下となるよう前記気体を吹き付けるフィルム製造装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外観不良を低減した厚膜フィルム製造方法及びフィルム製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るフィルム製造装置の構成を示す模式図である。
図2】試作例における衝突風速の分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るフィルム製造装置の構成を示す模式図である。
【0017】
フィルム製造装置は、帯状の基材B(支持体)を長手方向に連続搬送する搬送装置1と、搬送装置1により搬送されている基材Bに塗工液Pを塗工する塗工装置2と、塗工装置2により形成された塗膜Fへの気体Gの吹き付けにより塗膜Fの粘度を増加させる厚膜化装置3と、厚膜化装置3により厚膜化した塗膜Fを乾燥する乾燥装置4を備える。
【0018】
搬送装置1は、図示するように、搬送装置1は、長尺帯状の基材を複数の搬送ローラにより連続搬送する構成とすることができる。この場合、搬送装置1は、リールに巻き取られた基材Bを巻き解いて搬送し、塗膜Fを乾燥して形成される製品フィルムを剥離した後の基材Bを別のリールに巻き取るよう構成されてもよい。
【0019】
塗工装置2は、塗工液Pを基材Bの表面に一様に塗布する。具体的には、塗工装置2は、例えばダイコータ、ナイフコータ、バーコータ、グラビアコータ等を挙げることができる。
【0020】
特に限定されないが、図示する例では、塗工装置2は、不図示のタンクから供給される塗工液Pを、基材Bの幅全体に吐出するダイ21を有する構成とされている。
【0021】
塗工装置2で基材Bに塗布される塗工液Pは、製膜する機能膜の主成分となる樹脂と、この樹脂を溶解する有機溶媒とを含むものを用いることができる。
【0022】
塗工液Pに含まれる樹脂としては、特に限定されないが、例えば得られるフィルムを光学用途に用いる場合等には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂等が好適に用いられる。
【0023】
また、前期塗工液Pに含まれる樹脂の重量平均分子量は、500~20000が好ましく、2000~14000がより好ましく、3000~12000が更に好ましい。前期樹脂の重量平均分子量が前記下限以上である場合、塗工装置2により形成させる塗膜Fにおいて、前期樹脂の揮発を抑制することができる。また前期樹脂の重量平均分子量が前記上限以下である場合、前期塗工液Pの過度な粘度増加を抑制することができ、厚膜化装置3によって外観不良を低減した厚膜を得ることができる。
【0024】
また、前記塗工液Pの粘度は1~50cPが好ましく、5~35cPがより好ましく、10~20cPが更に好ましい。粘度が前記下限以上である場合、塗工装置2により形成させる塗膜Fを、厚膜化装置3により厚膜化する効果を十分に得ることができる。また前期塗工液Pの粘度が前記上限以下である場合、厚膜化装置3によって外観不良を低減した厚膜を得ることができる。
【0025】
また、前期塗工液Pの固形分濃度は、30~70%が好ましく、40~60%がより好ましく、45~55%が更に好ましい。固形分濃度が前記下限以上である場合、塗工装置2により形成させる塗膜Fが過度に厚くならず、厚膜化装置3によって外観不良を低減した厚膜を得ることができる。また前期塗工液Pの固形分濃度が前記上限以下である場合、レベリング効果を十分に発揮でき、厚膜化装置3によって外観不良を低減した厚膜を得ることができる。
【0026】
塗工液Pに含まれる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、トルエンやメチルイソエチルケトンやプロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶媒が好ましい。このような沸点領域の溶媒を使用することによって、比較的厚みが大きい製品フィルムを製造する場合にも、残留する有機溶媒量の低減および設備コストの観点からも望ましい。
【0027】
外観不良を抑制するためには塗工部での塗工液Pの粘度を低くする必要がある。塗工液Pの粘度が低くなると、厚膜形成が困難になるが、厚膜化装置3により外観不良を抑制した厚膜塗工が可能となる。
【0028】
塗工装置2により形成される塗膜Fの平均厚みの下限としては、80μmが好ましく、120μmがより好ましい。一方、塗工装置2により形成される塗膜Fの平均厚みの上限としては、200μmが好ましく、160μmがより好ましい。塗工装置2により形成される塗膜Fの平均厚みが前記下限以上である場合、塗膜Fの厚膜を維持することが難しく、外観不良が生じやすいので厚膜化装置3により外観不良を低減した厚膜を得る効果が顕著となる。また、塗工装置2により形成される塗膜Fの平均厚みが前記上限以下である場合、厚膜化装置3によって外観不良を低減した厚膜を得ることができる。
【0029】
塗工装置2により形成される塗膜Fの厚膜化装置3により気体Gが吹き付けられる領域(後述する吹付領域)における平均温度(気体の温度)の下限としては、15℃が好ましく、20℃がより好ましい。一方、塗工装置2により形成される塗膜Fの平均温度の上限としては、35℃が好ましく、25℃がより好ましい。塗工装置2により形成される塗膜Fの平均温度を前記下限以上とすることによって、冷却が不要となるため、塗工装置2の設備コスト及びランニングコストの増大を抑制できる。また、塗工装置2により形成される塗膜Fの平均温度を前記上限以下とすることによって、塗工後に厚膜化装置3で厚膜を維持する際に塗膜F中の有機溶媒が多量に蒸発して後のレベリングによる平滑化を阻害することを防止できると考えられる。
【0030】
厚膜化装置3は、塗工装置2により形成された塗膜Fに垂直に気体Gを吹き付けることによって、塗膜Fの厚膜を維持する。
【0031】
厚膜化装置3は、塗膜Fに吹き付ける気体Gを噴射するノズル31を有する。ノズル31は、基材Bの搬送方向に垂直かつ基材Bの表面に平行な方向(基材Bの幅方向と平行)に延びるスリット状の吹出口を有し、吹出口の直前の流路が吹出口に向かってテーパ状に縮幅(流路の吹出口の短手方向)の寸法が吹出口に向かって減少する。
【0032】
基材Bの表面位置における気体Gの風速の基材Bに垂直な方向の成分である衝突風速の最大値の下限としては、2.0m/sが好ましく、3.0m/sがより好ましく、3.8m/sが更に好ましい。一方、衝突風速の最大値の上限としては、7.0m/sが好ましく、6.0m/sがより好ましく、5.4mが更に好ましい。衝突風速の最大値を前記下限以上とすることによって、塗膜Fの厚みを十分に維持することができる。また、衝突風速の最大値を前記上限以下とすることによって、塗膜Fの表面の風紋や塗膜の飛散を抑制することができる。なお、衝突風速は、基材Bがない状態で、基材Bが搬送される位置に配置した風速計により測定される値とする。
【0033】
衝突風速が最大となる位置の基材Bの搬送方向前後10mmにおける衝突風速の最大値からの平均変化率(最大風速の変化量を前後距離10mmで除した値の平均値、以下、ピーク前後の平均変化率という)の下限としては、0.02m/(s・mm)が好ましく、0.04m/(s・mm)がより好ましく、0.06m/(s・mm)が更に好ましい。一方、ピーク前後の平均変化率の上限としては、0.25m/(s・mm)が好ましく、0.20m/(s・mm)がより好ましく、0.15m/(s・mm)が更に好ましい。ピーク前後の平均変化率を前記下限以上とすることによって、衝突風速の最大値を十分な大きさとしつつ、気体Gが衝突する範囲が大きくなり過ぎることを防止できる。また、ピーク前後の平均変化率を前記上限以下とすることによって、基材Bの搬送方向前後の風力差によって生じる塗膜Fの前後移動を抑制することにより、塗膜Fの表面に風紋が形成されることを抑制できる。
【0034】
乾燥装置4は、塗膜Fを乾燥することによって樹脂フィルムとする装置である。塗膜Fを乾燥する方法としては、温風、輻射熱等により塗膜F中の有機溶媒の気化を促進する方法とすることができる。
【0035】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態に係るフィルム製造装置は、帯状の基材Bを長手方向に連続搬送する搬送装置1と、搬送装置1により搬送されている基材Bに塗工液Pを塗工する塗工装置2と、塗工装置2により形成された塗膜Fへの気体Gの吹き付けにより塗膜Fを厚膜化する厚膜化装置3と、を備え、厚膜化装置3は、基材Bの表面位置における気体Gの風速の基材に垂直な方向の成分である衝突風速の最大値が2.0m/s以上7.0m/s以下、かつ衝突風速が最大となる位置の前後10mmにおける衝突風速の最大値からの平均変化率が0.25m/s以下となるよう気体Gを噴射する。このフィルム製造装置によれば、衝突風速の最大値を所定の範囲に収めることによって、塗膜の厚みを維持できるとともに、衝突風速のピーク前後の平均変化率が小さいことによって塗膜Fの表面に風紋が形成されることを抑制して外観不良を低減することができる。
【0036】
また、本実施形態のフィルム製造装置は、本発明の一実施形態のフィルム製造方法を実施する装置である。つまり、本発明の一実施形態のフィルム製造方法は、長手方向に連続搬送される帯状の基材Bに塗工液Pを塗工する工程(塗工工程)と、塗工により形成された塗膜Fへの気体Gの吹き付けにより塗膜Fを厚膜化する工程(厚膜化工程)と、塗膜Fを乾燥する工程(乾燥工程)と、を備え、気体Gの風速の基材B表面位置での基材Bに垂直な方向の成分である衝突風速の最大値が2.0m/s以上であり、衝突風速が最大となる位置の基材Bの搬送方向前後10mmにおける衝突風速の最大値からの平均変化率が0.25m/(s・mm)以下である。このフィルム製造方法によれば、衝突風速の最大値を所定の範囲に収めることによって、塗膜の厚みを維持できるとともに、平均変化率が小さいことによって塗膜の表面に風紋が形成されることを抑制して外観不良を低減することができる。
【0037】
本発明の一実施形態のフィルム製造方法において、気体Gが吹き付けられるときの塗膜Fの平均温度が15℃以上35℃以下であることが好ましい。これによって、塗膜Fの過度な乾燥が抑制されるので、外観不良を抑制した厚膜フィルムを得ることができる。
【0038】
本発明の一実施形態のフィルム製造方法において、塗膜Fの平均厚みが80μm以上200μm以下であることが好ましい。このように、塗膜の厚みが大きい場合に、外観不良を抑制した厚膜フィルムを得られる効果が特に顕著になる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。
【0040】
本発明に係るフィルム製造装置において、乾燥装置は必須ではなく、塗膜を自然乾燥してもよい。
【実施例
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
反応容器にβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100重量部、塩化マグネシウム0.12重量部、水11重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル11重量部を仕込み、130℃で3時間攪拌後、60℃で減圧脱気してシロキサン樹脂を得て、上記シロキサン系樹脂100重量部、トリアリールスルホニウム・SbF6塩のプロピレンカーボネート溶液2重量部、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンのキシレン/イソブタノール溶液0.2重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル100重量部を配合し粘度を10cPに調整した塗工液を、2.0m/minの速度で搬送される基材にダイコータにより塗工直後のWET膜厚が150μmとなるように塗工してから、厚膜化装置において送風機、バルブ、ノズル及び塗膜距離の制御により、基材搬送方向の衝突風速の分布を図2のように異ならせて塗膜に気体を吹き付けて厚膜化したものを120℃で2分加熱乾燥し、その後、高圧水銀ランプを用いて波長250~390nmの積算光量が1000mJ/cmとなるように紫外線を照射し、塗膜を硬化させることにより塗工フィルムを得た。得られたフィルムの膜厚及び外観を評価した。
【0043】
厚みは、山文電気社製の厚み計測装置「TOF-5R01」を用いて測定し、平均値75μm以上、かつ平均値との最大偏差(最大値又は最小値と平均値との差)が平均値の2%以下であったものを「良」、平均値が75μm未満、もしくは最大偏差が2%超であったものを「不良」とした。外観は、光源を用いた反射及び投影による目視において、風紋が視認されなかったものを「良」とし、風紋が視認されたものを「不良」とした。
【0044】
塗膜に衝突する気体の風速分布は、基材がない状態で、日本カノマックス社の風速計「アネモマスター6162」を用いて、基材を搬送する面上の各位置での基材に垂直な方向の風速(衝突風速)として測定した。
【0045】
図2に、測定した衝突風速の分布を示し、次の表1に、使用した樹脂の種類、衝突風速の最大値及びピーク前後の平均変化率と、膜厚及び外観の良否の評価結果とを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
この結果から、衝突風速の最大値が一定の範囲であり、かつ衝突風速のピーク前後の平均変化率が一定以下の大きさである場合には、得られるフィルムの膜厚が良好で、風紋による外観異常が生じないことが確認できた。
【符号の説明】
【0048】
1 搬送装置
2 塗工装置
3 厚膜化装置
4 乾燥装置
11 搬送ローラ
21 ダイ
31 ノズル
B 基材
F 塗膜
G 気体
P 塗工液
図1
図2