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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】演算装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/06 20120101AFI20240613BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240613BHJP
   E01C 23/01 20060101ALI20240613BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20240613BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240613BHJP
   G01C 7/04 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B60W40/06
G08G1/00 J
E01C23/01
G01B21/00 T
G01B21/00 W
G01C15/00 104C
G01C7/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020187620
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076948
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 伸一
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-66040(JP,A)
【文献】特開2008-116294(JP,A)
【文献】特開2013-23050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
E01C 21/00-23/24
G01B 21/00-21/32
G01C 1/00- 1/45
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行する車両の挙動を示す車両挙動情報と、前記車両挙動情報が検出された際の前記車両の進行方向を示す進行方向情報を取得する車両挙動情報取得部と、
前記道路の延在方向を示す路線方向情報を取得する路線方向情報取得部と、
前記道路のわだち掘れ量の情報を取得する路面状態情報取得部と、
前記車両の進行方向と前記道路の延在方向とのなす角度に基づき抽出した、前記車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置における前記わだち掘れ量とを、教師データとして、前記車両挙動情報と前記わだち掘れ量との対応関係を機械学習させる学習部と、
を含み、
前記学習部は、前記道路の延在方向とのなす角度が所定値より大きくなる前記車両の進行方向に対応する前記車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置における前記わだち掘れ量とを、前記教師データとして用い、前記道路の延在方向とのなす角度が所定値以下となる前記車両の進行方向に対応する前記車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置における前記わだち掘れ量とを、前記教師データから除外する、
演算装置。
【請求項2】
前記学習部は、前記車両の進行方向と前記道路の延在方向とのなす角度が小さいほど、前記わだち掘れ量への前記車両挙動情報の感度が小さくなるように、前記教師データを生成する、請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
道路を走行する車両の挙動を示す車両挙動情報と、前記車両挙動情報が検出された際の前記車両の進行方向を示す進行方向情報を取得する車両挙動情報取得ステップと、
前記道路の延在方向を示す路線方向情報を取得する路線方向情報取得ステップと、
前記道路のわだち掘れ量の情報を取得する路面状態情報取得ステップと、
前記車両の進行方向と前記道路の延在方向とのなす角度に基づき抽出した前記車両挙動情報と、前記車両挙動情報が抽出された位置における前記わだち掘れ量とを、教師データとして、前記車両挙動情報と前記わだち掘れ量との対応関係を機械学習させる学習ステップと、
を含む、演算方法を、コンピュータに実行させるものであって、
前記学習ステップにおいては、前記道路の延在方向とのなす角度が所定値より大きくなる前記車両の進行方向に対応する前記車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置における前記わだち掘れ量とを、前記教師データとして用い、前記道路の延在方向とのなす角度が所定値以下となる前記車両の進行方向に対応する前記車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置における前記わだち掘れ量とを、前記教師データから除外する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地方自治体などの道路を管理する団体では、通常、作業員が乗車した車両で道路を巡回しつつ、作業員が目視で路面の状態を確認している。そして、路面損傷を発見した場合などには、路面状態を直接測定する専用の測定車を用いて、詳細な路面状態を測定している。また例えば、特許文献1に示すように、道路を走行した車両の挙動データから、路面状態として、わだち掘れを検出する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-66040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1のように、車両の挙動データからわだち掘れを検出するような場合には、わだち掘れの検出精度を向上させることが求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、わだち掘れの検出精度を向上可能な演算装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る演算装置は、道路を走行する車両の挙動を示す車両挙動情報と、前記車両挙動情報が検出された際の前記車両の進行方向を示す進行方向情報を取得する車両挙動情報取得部と、前記道路の延在方向を示す路線方向情報を取得する路線方向情報取得部と、前記道路のわだち掘れ量の情報を取得する路面状態情報取得部と、前記車両の進行方向と前記道路の延在方向とのなす角度に基づき抽出した、前記車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置における前記わだち掘れ量とを、教師データとして、前記車両挙動情報と前記わだち掘れ量との対応関係を機械学習させる学習部と、を含み、前記学習部は、前記道路の延在方向とのなす角度が所定値より大きくなる前記車両の進行方向に対応する前記車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置における前記わだち掘れ量とを、前記教師データとして用い、前記道路の延在方向とのなす角度が所定値以下となる前記車両の進行方向に対応する前記車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置における前記わだち掘れ量とを、前記教師データから除外する。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るプログラムは、道路を走行する車両の挙動を示す車両挙動情報と、前記車両挙動情報が検出された際の前記車両の進行方向を示す進行方向情報を取得する車両挙動情報取得ステップと、前記道路の延在方向を示す路線方向情報を取得する路線方向情報取得ステップと、前記道路のわだち掘れ量の情報を取得する路面状態情報取得ステップと、前記車両の進行方向と前記道路の延在方向とのなす角度に基づき抽出した前記車両挙動情報と、前記車両挙動情報が抽出された位置における前記わだち掘れ量とを、教師データとして、前記車両挙動情報と前記わだち掘れ量との対応関係を機械学習させる学習ステップと、を含む、演算方法を、コンピュータに実行させるものであって、前記学習ステップにおいては、前記道路の延在方向とのなす角度が所定値より大きくなる前記車両の進行方向に対応する前記車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置における前記わだち掘れ量とを、前記教師データとして用い、前記道路の延在方向とのなす角度が所定値以下となる前記車両の進行方向に対応する前記車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置における前記わだち掘れ量とを、前記教師データから除外する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、わだち掘れの検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る検出システムの模式的なブロック図である。
図2図2は、車両の模式図である。
図3図3は、演算装置の模式的なブロック図である。
図4図4は、わだち掘れが起こる位置を説明する模式図である。
図5図5は、学習モデルの概念的な模式図である。
図6図6は、本実施形態に係る学習モデルの学習方法の処理フローを説明するフローチャートである。
図7図7は、判定結果の一例を示す模式図である。
図8図8は、本実施形態に係るわだち掘れ度合いの判定フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
(検出システム)
図1は、本実施形態に係る検出システムの模式的なブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る検出システム1は、車両10と、測定データ取得装置12と、演算装置14とを含む。検出システム1は、道路を走行する車両10の車両挙動情報に基づき、その道路の路面のわだち掘れ量を判定するシステムである。わだち掘れ量とは、路面に形成されるわだちの深さを指し、例えば、道路の延在方向(路線方向)に直交する方向の断面における、最高地点と最低地点との差分である。車両挙動情報とは、道路を走行中の車両10の挙動を示す情報であり、詳しくは後述する。検出システム1は、演算装置14によって、車両挙動情報に基づいてわだち掘れ量を算出することで、路面の状態としての、わだち掘れ度合いを判定する。
【0012】
検出システム1においては、車両10が、道路を走行しながら車両挙動情報を検出し、検出した車両挙動情報を測定データ取得装置12に送信する。測定データ取得装置12は、例えば道路を管理する主体に管理される装置(コンピュータ)である。測定データ取得装置12は、車両10から送信された車両挙動情報を、演算装置14に送信する。演算装置14は、測定データ取得装置12から送信された車両挙動情報に基づき、車両10が走行した道路のわだち掘れ量を算出する。そして、演算装置14は、わだち掘れ量の算出結果を、測定データ取得装置12に送信する。このように、演算装置14は、測定データ取得装置12を介して車両挙動情報を取得するが、それに限られない。例えば、検出システム1は、測定データ取得装置12が設けられておらず、演算装置14が、車両10から直接車両挙動情報を取得してもよい。
【0013】
(車両)
図2は、車両の模式図である。図2に示すように、車両10は、位置センサ10Aと、挙動センサ10Bと、測定装置10Cと、撮像部10Dとを備える。位置センサ10Aは、車両10の位置情報を取得するセンサである。車両10の位置情報とは、車両10の地球座標を示す情報である。位置センサ10Aは、本実施形態ではGNSS(Global Navivation Satelite System)用のモジュールである。なお、図2におけるZ方向は、鉛直方向の上方を指し、図2は鉛直方向上方から車両10を見た場合の模式図といえる。
【0014】
挙動センサ10Bは、車両10の挙動を示す車両挙動情報を検出するセンサである。車両挙動情報は、道路を走行中の車両10の挙動を示す情報であれば任意であってよいが、本実施形態では、少なくとも車両10の加速度の情報を含むことが好ましい。この場合、挙動センサ10Bは、加速度を検出する加速度センサであり、より好ましくは3軸での加速度を検出する加速度センサである。また、車両挙動情報は、加速度であることに限られず、例えば、加速度、車両10の速度、車両10の角速度、車両10のステアリング角度、車両10のブレーキ量、車両10のワイパの動作、及び車両10のサスペンションの作動量の少なくとも1つであってよい。車両10の速度を検出する挙動センサ10Bは例えば速度センサであり、車両10の速度を検出する挙動センサ10Bは例えば3軸ジャイロセンサであり、車両10のステアリング角度を検出する挙動センサ10Bは例えばステアリングセンサであり、車両10のブレーキ量を検出する挙動センサ10Bは例えばブレーキセンサであり、車両10のワイパの動作を検出する挙動センサ10Bは例えばワイパセンサが挙げられ、車両10のサスペンションの作動量を検出する挙動センサ10Bは例えばサスペンションセンサが挙げられる。挙動センサ10Bの数及び種類は任意であり、検出する車両挙動情報に応じて搭載される。
【0015】
撮像部10Dは、車両10の周囲を撮像するカメラである。すなわち、撮像部10Dは、車両10の周囲の状況を画像データとして検出する。
【0016】
測定装置10Cは、位置センサ10A及び挙動センサ10Bを制御して車両10の位置情報と車両挙動情報を検出させて、検出させた位置情報と車両挙動情報とを記録する装置である。すなわち、測定装置10Cは、車両10の位置情報と車両挙動情報とを記録するデータロガーとして機能する。測定装置10Cは、コンピュータであるとも言え、制御部10C1と、記憶部10C2と、通信部10C3とを含む。制御部10C1は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。記憶部10C2は、制御部10C1の演算内容やプログラム、車両10の位置情報及び車両挙動情報などの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶装置のうち、少なくとも1つ含む。なお、記憶部10C2が保存する制御部10C1用のプログラムは、測定装置10Cが読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。通信部10C3は、外部の装置と通信を行う通信モジュールであり、例えばアンテナなどである。
【0017】
制御部10C1は、記憶部10C2に記憶されたプログラムを読み出して、位置センサ10A及び挙動センサ10Bの制御を実行する。本実施形態では、制御部10C1は、車両10が道路を走行中に、所定時間ごとに、挙動センサ10Bに車両10の車両挙動情報を検出させる。また、制御部10C1は、位置センサ10Aに、挙動センサ10Bが車両挙動情報を検出したタイミングにおける車両10の位置情報を検出させる。すなわち、制御部10C1は、車両10が所定時間走行するたびに、挙動センサ10Bに車両10の車両挙動情報を検出させ、位置センサ10Aに車両10の位置情報を検出させる。ここでの所定時間とは、例えば1分など、一定の時間であることが好ましいが、所定時間は一定の時間であることに限られず、任意の長さであってよい。すなわち、所定時間は都度変化してもよく、例えば前回検出を行ってから1分経過したタイミングで今回の検出を行い、今回の検出から3分経過したタイミングで次回の検出を行ってもよい。
【0018】
以下、挙動センサ10Bが車両挙動情報を検出したタイミングにおける車両10の位置情報を、適宜、車両位置情報と記載する。車両位置情報は、車両挙動情報が検出された位置の情報(座標)ともいえる。
【0019】
制御部10C1は、車両挙動情報が検出された際の車両10の進行方向の情報である進行方向情報を取得する。制御部10C1は、車両挙動情報に基づき、車両挙動情報が検出された際の車両10の進行方向を算出してよい。例えば、制御部10C1は、ジャイロセンサによって検出された角速度から、車両挙動情報が検出された際の車両10の進行方向を算出してもよい。なお、車両挙動情報が検出された際の車両10の進行方向とは、車両挙動情報が検出したタイミングにおける、車両10の進行方向であるが、厳密に同じタイミングであることに限られず、異なるタイミングで検出されたものであってよい。この場合、例えば、検出タイミングの差が所定値以下となる車両挙動情報と進行方向情報とが、同じタイミングで検出されたものとして扱われてよい。
【0020】
制御部10C1は、車両10の車両挙動情報と進行方向情報と車両位置情報とを取得し、取得した車両挙動情報と進行方向情報と車両位置情報とを関連付けて、記憶部10C2に記憶させる。すなわち、同じタイミングで検出された車両挙動情報と車両位置情報と進行方向情報とが、関連付けられる。そのため、記憶部10C2には、関連付けられた車両挙動情報と車両位置情報と進行方向情報とが、検出されたタイミング毎に記憶される。なお、ここで関連付けられる車両位置情報と車両挙動情報と進行方向情報とは、同じタイミングで検出されたものであるが、厳密に同じタイミングであることに限られず、異なるタイミングで検出されたものであってよい。この場合、例えば、検出タイミングの差が所定値以下となる車両位置情報と車両挙動情報と進行方向情報とが、同じタイミングで検出されたものとして扱われて、関連付けられる。なお、上記では全てのセンサのサンプリング周期が同じ前提で説明したが、各センサのサンプリング周期が異なる場合には適宜調整を行う。
【0021】
なお、本実施形態では、異なる種類の車両挙動情報を検出することが好ましく、この場合、異なる種類の車両挙動情報と、進行方向情報と車両位置情報とが、関連付けられる。すなわち例えば、車両挙動情報として車両10の加速度と角速度とが検出されて、加速度と角速度と進行方向情報と車両位置情報とが、関連付けられる。
【0022】
制御部10C1は、関連付けられた車両挙動情報と進行方向情報と車両位置情報とを、通信部10C3を介して、測定データ取得装置12に送信する。測定データ取得装置12は、車両10から受信した車両挙動情報と進行方向情報と車両位置情報とを、演算装置14に送信する。なお、測定データ取得装置12を設けない場合は、制御部10C1は、関連付けられた車両挙動情報と車両位置情報と進行方向情報とを、演算装置14に直接送信してもよい。
【0023】
また、本実施形態では、制御部10C1は、撮像部10Dを制御して、車両10が道路を走行中に、所定時間ごとに、撮像部10Dに車両10の周囲を撮像させる。制御部10C1は、撮像部10Dによって撮像された車両10の周囲の画像データを取得して、記憶部10C2に記憶させる。制御部10C1は、車両挙動情報に車両10の周囲の画像データも関連付けて、記憶部10C2に記憶させてもよい。この場合、制御部10C1は、関連付けられた車両挙動情報と進行方向情報と車両位置情報と画像データとを、測定データ取得装置12を介して、演算装置14に送信する。
【0024】
(演算装置)
演算装置14は、関連付けられた車両挙動情報と進行方向情報と車両位置情報とを取得する。演算装置14は、車両挙動情報と既知のわだち掘れ量とを用いて、わだち掘れ量を算出するための学習モデルに機械学習させる。そして、演算装置14は、わだち掘れ量の検出が必要な道路を走行した車両10の車両挙動情報を、機械学習させた学習モデルNをに入力して、その道路のわだち掘れ量を取得する。学習モデルNは、AI(Artificial Interigence)における学習モデルを指す。学習モデルNは、車両挙動情報が入力されることで、わだち掘れ量を出力して、わだち掘れの度合いを判定する。
【0025】
図3は、演算装置の模式的なブロック図である。図3に示すように、演算装置14は、例えばコンピュータであり、通信部20と、記憶部22と、制御部24とを含む。通信部20は、外部の装置と通信を行う通信モジュールであり、例えばアンテナなどである。記憶部22は、制御部24の演算内容やプログラム、学習モデルNなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAMと、ROMのような主記憶装置と、フラッシュメモリやHDDなどの不揮発性の記憶装置のうち、少なくとも1つ含む。なお、記憶部10C2が保存する制御部24用のプログラムや学習モデルNは、演算装置14が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0026】
制御部24は、演算装置、すなわちCPUである。制御部24は、学習モデルNを学習させる学習モデル生成部30と、学習済みの学習モデルNによるわだち掘れ量の判定結果を取得する結果取得部32とを含む。学習モデル生成部30は、車両挙動情報取得部40と、路線方向情報取得部42と、路面状態情報取得部44と、学習部46とを含む。制御部24は、記憶部22からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、車両挙動情報取得部40と路線方向情報取得部42と路面状態情報取得部44と学習部46と結果取得部32とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部24は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、車両挙動情報取得部40と路線方向情報取得部42と路面状態情報取得部44と学習部46と結果取得部32との少なくとも一部を、ハードウェアで実現してもよい。
【0027】
以降においては、演算装置14による学習モデルの学習方法を説明し、その後に、学習済みの学習モデルNを用いたわだち掘れ度合いの判定方法を説明する。
【0028】
(学習モデルの学習処理)
(車両挙動情報取得部)
車両挙動情報取得部40は、関連付けられた車両挙動情報と進行方向情報と車両位置情報とを取得する。すなわち、車両挙動情報取得部40は、車両10の測定装置10Cによって検出された、道路を走行した車両10の挙動を示す車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された際の車両10の進行方向の情報と、その車両挙動情報が検出された位置の位置情報とを、取得する。
【0029】
(路線方向情報取得部)
路線方向情報取得部42は、道路の延在方向を示す路線方向情報を取得する。路線方向情報取得部42は、教師データ用の車両挙動情報を検出する際に車両10が走行する道路の延在方向を示す情報を、路線方向情報として取得する。道路の延在方向は、位置毎に異なる場合があるため、路線方向情報取得部42は、道路の位置(座標)毎の延在方向を、路線方向情報として取得する。路線方向情報取得部42は、任意の方法で路線方向情報を取得してよい。例えば、路線方向情報は、通信部20を介して、外部の機器か路線方向情報を取得してもよいし、記憶部22に予め記憶されていた路線方向情報を読み出してもよい。
【0030】
(路面状態情報取得部)
路面状態情報取得部44は、道路のわだち掘れ量の情報と、そのわだち掘れ量が検出された位置を示す路面位置情報とを取得する。例えば、路面状態情報取得部44は、道路の延在方向に沿った所定距離ごとの道路のわだち掘れ量と、そのわだち掘れ量が検出された位置を示す路面位置情報とを、取得する。路面状態情報取得部44は、任意の方法でわだち掘れ量の情報と路面位置情報とを取得してよい。例えば、路面状態情報取得部44は、通信部20を介して、外部の機器からわだち掘れ量の情報と路面位置情報とを取得してもよいし、記憶部22に予め記憶されていたわだち掘れ量の情報と路面位置情報とを読み出してもよい。また、路面状態情報取得部44が取得するわだち掘れ量の情報と路面位置情報は、予め検出(測定)された情報であってもよいし、学習モデルNの教師データとして用いるために、検出されてもよい。
【0031】
(わだち掘れ)
図4は、わだち掘れが起こる位置を説明する模式図である。図4に示すように、わだちRaは、通常、道路Rの路面において、道路Rの延在方向Duに沿って形成される。従って、車両10が道路Rの延在方向Duに沿って走行している場合、車両10は、常にわだちRaを通っているか、常にわだちRaからずれた場所を通ることになり、平坦路を走行している際の挙動から大きく変わらない。そのため、車両10が道路Rの延在方向Duに沿って走行している場合には、車両10の挙動は、わだち掘れ量から受ける影響が小さく、わだち掘れ量に対する感度が小さいといえる。一方、車両10が道路Rの延在方向Duに対して交差する方向に走行する場合、車両10は、わだちRaによって形成される凹凸面を走行することになり、平坦路を走行している際の挙動とは異なることになる。そのため、車両10が道路Rの延在方向Duに交差する方向に走行している場合には、車両10の挙動は、わだち掘れ量から受ける影響が強く、わだち掘れ量に対する感度が大きくなる。図4は、位置P1、P3を走行しているタイミングにおいて、車両10が、道路Rの延在方向Duに沿って走行しており、位置P1と位置P3の間の位置P2を走行しているタイミングにおいて、車両10が、道路Rの延在方向Duに交差する方向に走行している例を示している。従って、位置P1、P3においては、車両10の進行方向Dvと、位置P1、P3における道路Rの延在方向Duとがなす角度は、0度となる。一方、位置P2においては、車両10の進行方向Dvと、位置P2における道路Rの延在方向Duとがなす角度θは、0度より大きくなる。
【0032】
このように、わだちに対する車両の挙動の感度は、車両10の進行方向Dvと道路Rの延在方向Duとのなす角度θによって変化する。本実施形態に係る学習部46は、この点に鑑み、車両挙動情報とわだち掘れ量との対応関係を学習させるための教師データを、角度θに基づき設定することで、学習モデルに適切に学習させることが可能となり、結果として、学習モデルによるわだち掘れ量の算出精度を向上できる。以下、学習部46による教師データの設定方法について具体的に説明する。
【0033】
(学習部)
(教師データの設定)
学習部46は、車両挙動情報取得部40が取得した車両挙動情報及び進行方向情報と、路線方向情報取得部42が取得した路線方向情報と、路面状態情報取得部44が取得したわだち掘れ量の情報とに基づいて、教師データを設定する。具体的には、学習部46は、車両10の進行方向Dvと道路Rの延在方向Duとのなす角度θに基づき、車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量とを、教師データとして抽出する。なお、学習部46は、車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量を、例えば、路面位置情報(わだち掘れ量が検出された位置)と、車両位置情報(車両挙動情報が検出された位置)とから特定する。
【0034】
より詳しくは、本実施形態では、学習部46は、車両挙動情報が検出された位置における車両10の進行方向Dvと道路Rの延在方向Duとのなす角度θを算出する。この場合、学習部46は、車両挙動情報取得部40が取得した車両位置情報と、路線方向情報とから、車両挙動情報が検出された位置における道路Rの延在方向Duを特定する。そして、学習部46は、車両挙動情報が検出された位置における道路Rの延在方向Duと、進行方向情報に示された車両挙動情報が検出された位置における車両10の進行方向Dvとから、車両挙動情報が検出された位置における角度θを算出する。そして、学習部46は、車両挙動情報が検出された位置における角度θに基づいて、車両挙動情報とその車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量とを、教師データとして抽出する。例えば、学習部46は、車両挙動情報が検出された位置における角度θに基づいて、その車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量とを、教師データとするかを判断する。学習部46は、車両挙動情報が検出された位置における角度θが所定値より大きくなる場合に、その車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量とを、教師データとして抽出する。一方、学習部46は、車両挙動情報が検出された位置における角度θが所定値以下となる場合に、その車両挙動情報と、その車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量とを、教師データとして抽出せず、教師データから除外する。ここでの所定値は、任意に設定可能であるが、例えば、0度であってよい。
【0035】
また、学習部46は、角度θに応じて、わだち掘れ量への車両挙動情報の感度が変化するように、教師データを生成することが好ましい。すなわち、学習部46は、車両挙動情報が検出された位置における角度θに基づいて、その車両挙動情報のわだち掘れ量への感度を設定する。そして、学習部46は、その車両挙動情報とその車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量とに、設定した感度を加味して、教師データとする。わだち掘れ量への車両挙動情報の感度が小さいほど、教師データとしての重みが、すなわち学習における教師データの参照度合いが、小さくなるといえる。そのため、学習部46は、角度θに基づいて、教師データの重み付けを行っているといえる。より詳しくは、学習部46は、角度θが小さいほど、わだち掘れ量への車両挙動情報の感度が小さくなるように、感度を設定する。従って、角度θが小さい教師データほど、重みが小さく設定され、学習モデルの学習への参照度合いが小さくなり、結果として学習済みの学習モデルNに反映され難くなる。例えば、車両挙動情報(特徴量)をxとし、その車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量をx’とし、その車両挙動情報が検出された位置における車両10の進行方向Dvの単位ベクトルをvとし、その車両挙動情報が検出された位置における道路Rの延在方向Duの単位ベクトルをuとした場合に、学習部46は、次の式(1)の関係となるように、教師データを設定してよい。式(1)に示すように、車両10の進行方向Dvと道路Rの延在方向Duとのなす角度θが0になった場合は、v/uが1となるため、わだち掘れ量への車両挙動情報の感度がゼロとなる。そのため、角度が0である場合には、車両挙動情報とわだち掘れ量とは、学習モデルの学習に参照されない。一方、角度θが大きくなるほど、感度が高くなるため、教師データとしての重み付けが大きくなり、学習モデルの学習により参照される。
【0036】
【数1】
【0037】
学習部46は、このように教師データとして設定した車両挙動情報とわだち掘れ量とを1つのデータセットとして、複数のデータセットの教師データを設定する。すなわち、学習部46は、車両挙動情報毎に、車両挙動情報とわだち掘れ量とのデータセットである教師データを、複数設定する。
【0038】
(学習)
学習部46は、教師データとして設定した車両挙動情報とわだち掘れ量とのデータセットを、学習モデルに入力して、路面を走行する車両10の挙動とわだち掘れ量との対応関係を、より詳しくは車両挙動情報とわだち掘れ量との対応関係を、学習モデルに機械学習させる。図5は、学習モデルの概念的な模式図である。学習部46は、未学習の学習モデルを学習させて、機械学習済みの学習モデルNを生成して、生成した学習モデルNを記憶部22に記憶させる。学習モデルNは、ディープラーニングによって学習された学習モデルであり、ディープラーニングによって学習された分類器を構成するニューラルネットワークを定義するモデル(ニューラルネットワークの構成情報)と、変数とで構成される。学習モデルNは、入力されたデータに基づき、そのデータのラベルを判定できるものである。ディープラーニングは、機械学習のうちの1つの手法であり、狭義には例えば4層以上のニューラルネットワークから構成される。本実施形態の例では、学習モデルNは、CNN(Conventional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)モデルであり、図5に示すように、複数の畳み込み層及び複数のプーリング層を含む中間層MNと、全結合層を含む最終層FNと、を備える。学習モデルNは、入力データINが入力された場合に、中間層MNと最終層FNとで演算を行って、出力データONを出力する。ただし、学習モデルNは、CNNモデルに限られず、任意の方式の学習モデルであってもよい。
【0039】
学習部46は、教師データを用いて学習モデルにおける重み係数及びバイアス値を設定することで、機械学習済みの学習モデルNを生成する。すなわち、学習モデルNは、学習部46によって重み係数及びバイアス値が学習された学習モデルであるといえる。
【0040】
本実施形態における学習モデルNは、車両挙動情報とわだち掘れ量との対応関係を機械学習させた学習モデルであり、車両挙動情報からわだち掘れ量を推定することで、わだち掘れの度合いを判定するものである。学習部46は、抽出した車両挙動情報を入力値とし、抽出したわだち掘れ量を出力値(ラベル)として、教師データとして、学習モデルに入力する。学習部46は、抽出した車両挙動情報とわだち掘れ量との複数のデータセットを、未学習の学習モデルに入力する。これにより、学習部46は、学習モデルにおける重み係数及びバイアス値を設定して、すなわち学習モデルを学習させて、機械学習済みの学習モデルNを生成する。
【0041】
次に、以上説明した学習モデルに学習させる方法のフローを、フローチャートに基づいて説明する。図6は、本実施形態に係る学習モデルの学習方法の処理フローを説明するフローチャートである。図6に示すように、演算装置14は、車両挙動情報取得部40により、車両挙動情報と進行方向情報とを取得し(ステップS10)、路線方向情報取得部42により、車両挙動情報が検出された車両10が走行する道路Rの路線方向情報を取得し(ステップS12)、路面状態情報取得部44により、車両挙動情報が検出された車両10が走行する道路Rのわだち掘れ量の情報を取得する(ステップS14)。ステップS10、S12、S14の処理順序は、この順に限られず任意であってよい。演算装置14は、学習部46により、車両10の進行方向Dvと道路Rの延在方向Duとのなす角度θに基づき、車両挙動情報とわだち掘れ量とを、教師データとして抽出する(ステップS16)。学習部46は、抽出した車両挙動情報とわだち掘れ量とを教師データとして、学習モデルに学習させる(ステップS18)。学習部46は、車両挙動情報とわだち掘れ量との複数のデータセットの教師データを準備して、複数セットの教師データを学習モデルに入力することで、学習モデルに学習させて、学習済みの学習モデルNを生成する。
【0042】
なお、以上説明したように、本実施形態では、車両挙動情報とわだち掘れ量とを教師データとしたが、車両10の周囲の状況を撮像した画像データも、教師データに含めてもよい。この場合、画像データは、車両挙動情報と同様に、学習の際の学習モデルへの入力データとして扱う。
【0043】
(学習モデルを用いたわだち掘れ度合いの判定)
(結果取得部)
図3に示す結果取得部32は、学習済みの学習モデルNを用いて、わだち掘れ度合いの判定が必要な道路についての、わだち掘れ度合いを判定する。具体的には、結果取得部32は、わだち掘れ度合いの判定が必要な道路を走行した車両10の挙動を示す車両挙動情報を取得する。結果取得部32は、通信部20を介して、測定データ取得装置12から車両挙動情報を取得するが、車両10から直接取得してもよい。ここでの車両挙動情報も、車両10の測定装置10Cによって検出されるが、わだち掘れ度合いの判定が必要な道路を走行した際の車両挙動情報を検出する車両10と、教師データに用いる車両挙動情報を検出する車両10とは、同じ車両であってもよいし、別の車両であってもよい。
【0044】
結果取得部32は、学習部46によって生成された学習済みの学習モデルNを記憶部22から読み出す。結果取得部32は、わだち掘れ度合いの判定が必要な道路を走行した際の車両挙動情報を、学習モデルNに入力する。学習モデルNにおいては、車両挙動情報が入力データINとして入力されて車両挙動情報の特徴量が抽出され、演算が実行される。その結果、学習モデルNからは、車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量が、出力データONとして、すなわちラベルとして、出力される。すなわち、学習モデルNは、車両挙動情報が入力されるとわだち掘れ量が出力される学習済みのプログラムであるともいえる。結果取得部32は、出力データONとして出力されたわだち掘れを、車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ度合いの判定結果として取得する。結果取得部32は、車両挙動情報が取得される毎に学習モデルNに入力して、車両挙動情報が検出された位置毎に、すなわち道路の位置毎に、わだち掘れ量を取得する。
【0045】
図7は、判定結果の一例を示す模式図である。本実施形態では、学習モデルNは、車両挙動情報及びわだち掘れ量を用いた学習により、わだち掘れ量の種類(ここでは値)を、ラベルとして割り当て可能となる。本実施形態においては、学習モデルNは、候補となるわだち掘れ量に対する一致度合いを、確率として算出する。すなわち、学習モデルNは、車両挙動情報が検出された位置における路面が、ラベルとして割り当てられたわだち掘れ量となる確率を算出するといえる。学習モデルNは、一致度合いが最も高いわだち掘れ量を、車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量として出力する。図7の例では、わだち掘れ量LA1、LA2、LA3・・・のうち、わだち掘れ量LA2となる確率が最も高いため、わだち掘れ量LA2が、車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量として出力される。ただし、わだち掘れ量は、図7に示すような確率で算出されることに限られない。
【0046】
なお、上述のように、教師データとして用いる車両挙動情報は、角度θに基づいて抽出していたが、学習モデルNを用いてわだち掘れ量を算出する場合には、学習モデルNに入力する車両挙動情報を、角度θに基づいて抽出しなくてもよい。すなわち、角度θに基づいて教師データを抽出することで、適切な学習モデルNが構築されているため、わだち掘れ量を算出するために学習モデルNに入力する車両挙動情報については、車両10の進行方向を問わずに用いることが可能となる。ただし、それに限られず、例えば、わだち掘れ量を算出するために学習モデルNに入力する車両挙動情報についても、教師データとして用いる車両挙動情報と同様に、角度θに基づいて抽出してもよい。
【0047】
次に、以上説明したわだち掘れ度合いの判定方法のフローを、フローチャートに基づいて説明する。図8は、本実施形態に係るわだち掘れ度合いの判定フローを説明するフローチャートである。図8に示すように、演算装置14は、結果取得部32により、わだち掘れ度合いの判定が必要な道路を走行した際の車両挙動情報を取得し(ステップS20)、取得した車両挙動情報を、学習済みの学習モデルNに入力する(ステップS22)。学習モデルNにおいては、車両挙動情報が入力値として入力されて、車両挙動情報が検出された位置におけるわだち掘れ量を、出力する。結果取得部32は、学習モデルNから出力されたわだち掘れ量を、わだち掘れ度合いの判定結果として取得する(ステップS24)。なお、ここで学習モデルNに入力された車両挙動情報と、学習モデルNから出力されたわだち掘れ量とを、追加の教師データとして、学習モデルNを再学習させてもよい。
【0048】
なお、車両挙動情報とわだち掘れ量とに加え、車両10の周囲の状況を撮像した画像データも教師データに含まれている場合には、結果取得部32は、車両挙動情報に加えて、車両10の周囲の状況を撮像した画像データも取得する。そして、結果取得部32は、車両挙動情報と画像データとを学習モデルNに入力して、わだち掘れ量の出力結果を取得する。
【0049】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る演算装置14は、車両挙動情報取得部40と、路線方向情報取得部42と、路面状態情報取得部44と、学習部46とを含む。車両挙動情報取得部40は、道路Rを走行する車両10の挙動を示す車両挙動情報と、車両挙動情報が検出された際の車両10の進行方向Dvを示す進行方向情報を取得する。路線方向情報取得部42は、道路Rの延在方向Duを示す路線方向情報を取得する。路面状態情報取得部44は、道路Rのわだち掘れ量の情報を取得する。学習部46は、車両10の進行方向Dvと道路Rの延在方向Duとのなす角度θに基づき抽出した、車両挙動情報と、その車両挙動情報が抽出された位置におけるわだち掘れ量とを、教師データとして学習モデルに入力することで、車両挙動情報とわだち掘れ量との対応関係を、学習モデルに機械学習させる。
【0050】
ここで、わだち掘れは、道路Rの延在方向Duに沿って形成されるため、車両10の進行方向Dvと道路Rの延在方向Duとのなす角度θによって、わだち掘れに対する車両の挙動の感度が異なる。そのため、取得した車両挙動情報とわだち掘れ量とをそのまま教師データとした場合、感度の違うもの同士が一括して教師データとして用いられるため、車両挙動情報とわだち掘れ量との対応関係を適切に学習させることができず、学習モデルNによるわだち掘れ量の検出精度が低下するおそれがある。それに対し、本実施形態に係る演算装置14は、角度θに基づき、教師データとする車両挙動情報とわだち掘れ量とを抽出する。そのため、適切な教師データを抽出して、車両挙動情報とわだち掘れ量との対応関係を適切に学習させることが可能となる。そのため、演算装置14によると、学習モデルNによるわだち掘れ量の検出精度を向上させることができる。
【0051】
また、学習部46は、道路Rの延在方向Duとのなす角度θが所定値より大きくなる車両10の進行方向Dvに対応する車両挙動情報と、その車両挙動情報が抽出された位置におけるわだち掘れ量とを、教師データとして用いる。一方、学習部46は、道路Rの延在方向Duとのなす角度θが所定値以下となる車両10の進行方向Dvに対応する車両挙動情報と、その車両挙動情報が抽出された位置におけるわだち掘れ量とを、教師データから除外する。車両10の挙動は、車両10の進行方向Dvが道路Rの延在方向Duに近づくほど、わだち掘れ量に影響を受け難くなる。すなわち、車両10の進行方向Dvが道路Rの延在方向Duに近づくほど、車両10の挙動とわだち掘れ量との対応関係は、信頼性が低くなる。それに対し、本実施形態に係る演算装置14は、角度θが所定値以下となる車両挙動情報とわだち掘れ量とを、教師データとして用いず、角度θが所定値以上となる車両挙動情報とわだち掘れ量とを、教師データとして用いる。そのため、演算装置14によると、車両10の挙動とわだち掘れ量との対応関係の信頼性の高いデータを教師データとして用いることが可能となり、学習モデルNによるわだち掘れ量の検出精度を向上させることができる。
【0052】
また、学習部46は、角度θに応じて、わだち掘れ量への車両挙動情報の感度が変化するように、教師データを生成する。上述のように、車両10の進行方向Dvと道路Rの延在方向Duとのなす角度θによって、わだち掘れに対する車両の挙動の感度が異なるが、この感度の違いは、わだち掘れ量と車両挙動情報には反映されていない。それに対し、本実施形態に係る演算装置14は、角度θに応じて、この感度を反映させて教師データを生成するため、角度θに応じて教師データの重み付けを行うことが可能となり、適切に学習させて、学習モデルNによるわだち掘れ量の検出精度を向上させることができる。
【0053】
また、学習部46は、角度θが小さいほど、わだち掘れ量への車両挙動情報の感度が小さくなるように、教師データを生成する。本実施形態に係る演算装置14は、これにより、信頼性の低い角度θが小さい教師データの重み付けを小さくさせて、適切に学習させることが可能となり、学習モデルNによるわだち掘れ量の検出精度を向上させることができる。
【0054】
また、学習部46は、車両挙動情報及びわだち掘れ量と、車両10の周囲を撮像した画像データとを、教師データとして、学習モデルに入力する。本実施形態に係る演算装置14は、車両挙動情報に加えて、画像データも教師データとして用いることで、わだち掘れ量の検出精度をさらに向上させることができる。
【0055】
また、車両挙動情報取得部40は、車両挙動情報として、少なくとも車両10の加速度の情報を取得する。車両挙動情報として加速度を用いることで、車両挙動情報とわだち掘れ量とを適切に対応付けて、わだち掘れ量を適切に確認することが可能となる。
【0056】
また、演算装置14は、学習済みの学習モデルNに、道路を走行する車両の車両挙動情報を入力して、その道路のわだち掘れ量を取得する結果取得部32をさらに含む。この演算装置14によると、上述のようにして抽出した教師データとして学習した学習モデルNを用いるため、算出精度の高い道路を取得することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 検出システム
10 車両
12 測定データ取得装置
14 演算装置
32 結果取得部
40 車両挙動情報取得部
42 路線方向情報取得部
44 路面状態情報取得部
46 学習部
Du 延在方向
Dv 進行方向
R 道路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8