IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アマダの特許一覧

特許7503483レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置
<>
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図1
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図2
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図3
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図4
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図5
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図6
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図7
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図8
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図9
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図10
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図11
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図12
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図13
  • 特許-レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20240613BHJP
【FI】
B23K26/38 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020196669
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085150
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昇
(72)【発明者】
【氏名】村上 拓也
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-141165(JP,A)
【文献】特開平10-244394(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188694(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/107698(WO,A1)
【文献】特表2014-514161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金を切断することによって作製されるパーツ内に穴を形成するための穴加工線が設定され、前記穴加工線で囲まれた穴形成領域内に、直線よりなる1または複数の分割線を設定し、
前記分割線が前記穴加工線とつながる第1の連結点において、前記分割線と前記穴加工線とがなす角度、または前記分割線と前記第1の連結点における前記穴加工線の接線とがなす角度を前記分割線の接続角度とし、前記分割線を挟む2つの接続角度のうちの小さい方の接続角度を判定対象の接続角度として、前記判定対象の接続角度が所定の角度より小さいか否かを判定し、
前記判定対象の接続角度が前記所定の角度より小さいとき、前記分割線のうち、前記穴形成領域内に設定した前記穴加工線を内側に所定の距離だけオフセットした補助線と前記穴加工線との間の線分を、前記分割線が前記補助線と交わる位置から前記第1の連結点とは異なる前記穴加工線とつながる第2の連結点までの直線または曲線よりなる補正分割線に置換するように前記分割線を補正し、
前記第2の連結点において、前記補正分割線と前記穴加工線とがなす角度、または前記補正分割線と前記第2の連結点における前記穴加工線の接線とがなす角度を前記補正分割線の接続角度とし、前記補正分割線を挟む2つの接続角度のうちの前記判定対象の接続角度と同じ側の接続角度を補正接続角度として、前記補正分割線は、前記補正接続角度を前記判定対象の接続角度より大きくするように設定され、
少なくとも補正された前記分割線を含む1または複数の分割線に沿ってレーザビームを照射して、前記穴形成領域を複数のスクラップに分割し、前記穴加工線に沿ってレーザビームを照射して前記穴形成領域を切断して前記板金に前記穴を形成する
レーザ加工方法。
【請求項2】
前記判定対象の接続角度が45度未満であるとき、前記補正接続角度は45度以上であり、
前記判定対象の接続角度が45度以上であるとき、前記補正接続角度は前記判定対象の接続角度より大きい角度である
請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記補助線の形状は、前記穴加工線の形状と相似で同心である請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
板金にレーザビームを照射して前記板金を切断する加工機本体と、
前記加工機本体が前記板金を切断してパーツを作製するよう前記加工機本体を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記パーツ内に穴を形成するために設定された穴加工線で囲まれた穴形成領域を複数のスクラップに分割した後に前記穴加工線を切断して前記穴を形成するとき、
前記穴形成領域を分割するための1または複数の分割線が、前記穴加工線とつながる連結点において、前記分割線と前記穴加工線とがなす角度、または前記分割線と前記連結点における前記穴加工線の接線とがなす角度を前記分割線の接続角度とし、前記分割線を挟む2つの接続角度のうちの小さい方の接続角度が所定の角度以上となるように、前記分割線が前記穴形成領域内に設定した前記穴加工線を内側にオフセットした補助線と交わる位置で折り曲げられている分割線によって前記穴形成領域を分割するよう前記加工機本体を制御する
レーザ加工機。
【請求項5】
穴を有するパーツを示すパーツ図形データに基づき、穴を形成するために設定された穴加工線で囲まれた穴形成領域を分割線によって分割する必要があるか否かを判定する穴分割要否判定部と、
前記穴分割要否判定部によって前記穴形成領域を分割線によって分割する必要があると判定されたとき、前記穴形成領域内に1または複数の分割線を設定する分割線設定部と、
前記分割線が前記穴加工線とつながる第1の連結点において、前記分割線と前記穴加工線とがなす角度、または前記分割線と前記第1の連結点における前記穴加工線の接線とがなす角度を前記分割線の接続角度とし、前記分割線を挟む2つの接続角度のうちの小さい方の接続角度を判定対象の接続角度として、前記判定対象の接続角度が所定の角度より小さいか否かを判定する分割線補正要否判定部と、
前記分割線補正要否判定部によって前記判定対象の接続角度が前記所定の角度より小さいと判定されたとき、前記分割線のうち、前記穴形成領域内に設定した前記穴加工線を内側に所定の距離だけオフセットした補助線と前記穴加工線との間の線分を、前記分割線が前記補助線と交わる位置から前記第1の連結点とは異なる前記穴加工線とつながる第2の連結点までの直線または曲線よりなる補正分割線に置換するように前記分割線を補正する分割線補正部と、
を備え、
前記分割線補正部は、前記第2の連結点において、前記補正分割線と前記穴加工線とがなす角度、または前記補正分割線と前記第2の連結点における前記穴加工線の接線とがなす角度を前記補正分割線の接続角度とし、前記補正分割線を挟む2つの接続角度のうちの前記判定対象の接続角度と同じ側の接続角度を補正接続角度として、前記補正接続角度が前記判定対象の接続角度より大きくなるように前記補正分割線を設定し、
前記パーツ図形データと前記分割線補正部で設定された分割線とに基づき、前記穴形成領域内に前記分割線の切断経路を割り付け、前記穴加工線に穴を形成するための切断経路を割り付ける切断経路設定部と、
NC装置が、前記切断経路設定部で設定された切断経路に基づいて板金を切断して前記パーツを作製するようレーザ加工機を制御するためのNCデータを作成するNCデータ作成部と、
をさらに備える加工プログラム作成装置。
【請求項6】
前記判定対象の接続角度を補正前接続角度として、|90度-補正前接続角度|≧|90度-補正接続角度|なる関係を満たすか否かを判定し、前記関係を満たさないとき、前記分割線補正部による前記分割線の補正を削除するよう前記分割線補正部に指示する補正可否判定部をさらに備える請求項5に記載の加工プログラム作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機は、複数のスキッドが配列されたテーブル上に載置された板金にレーザビームを照射して板金を切断して、所定の形状を有するパーツを作製する。内部に穴が形成されるパーツであれば、レーザ加工機は穴が形成される穴形成領域の周囲を切断し、その後にパーツの周囲を切断する。切断されてパーツから取り除かれるべき部分はスクラップと称される。
【0003】
板金に形成する穴が大きいときには、スクラップがスキッドの間から下方へと落下しなかったり、落下しないスクラップが立ち上がって加工ヘッドと干渉したりすることがある。そこで、レーザ加工機は、スクラップの立ち上がりを防ぎ、スクラップを落下させるために、所定の大きさ以上の穴を形成するときには、穴形成領域を複数の小さなスクラップに分割する(特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-100828号公報
【文献】特開2016-78063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ加工機は、穴形成領域内に設定された分割線に沿って穴形成領域を切断した後に、穴形成領域の周囲である穴加工線に沿って板金を切断する。このとき、分割線と穴加工線とがなす角度、または分割線と分割線が穴加工線とつながる連結点における穴加工線の接線がなす角度が小さいと、連結点の近傍において金属が過度に溶融するバーニングと称される現象が発生することがある。
【0006】
連結点の近傍でバーニングが発生すると、スクラップが落下しない加工不良が発生することがある。これは、過度に溶融した金属がアシストガスによって広がってしまい、切断されるべきスクラップが切断しないためである。内部に穴を有するパーツを作製するときに、加工不良の発生を抑える分割線を形成して板金を加工することができるレーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置の登場が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、板金を切断することによって作製されるパーツ内に穴を形成するための穴加工線が設定され、前記穴加工線で囲まれた穴形成領域内に、直線よりなる1または複数の分割線を設定し、前記分割線が前記穴加工線とつながる第1の連結点において、前記分割線と前記穴加工線とがなす角度、または前記分割線と前記第1の連結点における前記穴加工線の接線とがなす角度を前記分割線の接続角度とし、前記分割線を挟む2つの接続角度のうちの小さい方の接続角度を判定対象の接続角度として、前記判定対象の接続角度が所定の角度より小さいか否かを判定し、前記判定対象の接続角度が前記所定の角度より小さいとき、前記分割線のうち、前記穴形成領域内に設定した前記穴加工線を内側に所定の距離だけオフセットした補助線と前記穴加工線との間の線分を、前記分割線が前記補助線と交わる位置から前記第1の連結点とは異なる前記穴加工線とつながる第2の連結点までの直線または曲線よりなる補正分割線に置換するように前記分割線を補正し、前記第2の連結点において、前記補正分割線と前記穴加工線とがなす角度、または前記補正分割線と前記第2の連結点における前記穴加工線の接線とがなす角度を前記補正分割線の接続角度とし、前記補正分割線を挟む2つの接続角度のうちの前記判定対象の接続角度と同じ側の接続角度を補正接続角度として、前記補正分割線は、前記補正接続角度を前記判定対象の接続角度より大きくするように設定され、少なくとも補正された前記分割線を含む1または複数の分割線に沿ってレーザビームを照射して、前記穴形成領域を複数のスクラップに分割し、前記穴加工線に沿ってレーザビームを照射して前記穴形成領域を切断して前記板金に前記穴を形成するレーザ加工方法が提供される。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、板金にレーザビームを照射して前記板金を切断する加工機本体と、前記加工機本体が前記板金を切断してパーツを作製するよう前記加工機本体を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記パーツ内に穴を形成するために設定された穴加工線で囲まれた穴形成領域を複数のスクラップに分割した後に前記穴加工線を切断して前記穴を形成するとき、前記穴形成領域を分割するための1または複数の分割線が、前記穴加工線とつながる連結点において、前記分割線と前記穴加工線とがなす角度、または前記分割線と前記連結点における前記穴加工線の接線とがなす角度を前記分割線の接続角度とし、前記分割線を挟む2つの接続角度のうちの小さい方の接続角度が所定の角度以上となるように、前記分割線が前記穴形成領域内に設定した前記穴加工線を内側にオフセットした補助線と交わる位置で折り曲げられている分割線によって前記穴形成領域を分割するよう前記加工機本体を制御するレーザ加工機が提供される。
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の第3の態様によれば、穴を有するパーツを示すパーツ図形データに基づき、穴を形成するために設定された穴加工線で囲まれた穴形成領域を分割線によって分割する必要があるか否かを判定する穴分割要否判定部と、前記穴分割要否判定部によって前記穴形成領域を分割線によって分割する必要があると判定されたとき、前記穴形成領域内に1または複数の分割線を設定する分割線設定部と、前記分割線が前記穴加工線とつながる第1の連結点において、前記分割線と前記穴加工線とがなす角度、または前記分割線と前記第1の連結点における前記穴加工線の接線とがなす角度を前記分割線の接続角度とし、前記分割線を挟む2つの接続角度のうちの小さい方の接続角度を判定対象の接続角度として、前記判定対象の接続角度が所定の角度より小さいか否かを判定する分割線補正要否判定部と、前記分割線補正要否判定部によって前記判定対象の接続角度が前記所定の角度より小さいと判定されたとき、前記分割線のうち、前記穴形成領域内に設定した前記穴加工線を内側に所定の距離だけオフセットした補助線と前記穴加工線との間の線分を、前記分割線が前記補助線と交わる位置から前記第1の連結点とは異なる前記穴加工線とつながる第2の連結点までの直線または曲線よりなる補正分割線に置換するように前記分割線を補正する分割線補正部とを備える加工プログラム作成装置が提供される。
【0010】
上記構成の加工プログラム作成装置において、前記分割線補正部は、前記第2の連結点において、前記補正分割線と前記穴加工線とがなす角度、または前記補正分割線と前記第2の連結点における前記穴加工線の接線とがなす角度を前記補正分割線の接続角度とし、前記補正分割線を挟む2つの接続角度のうちの前記判定対象の接続角度と同じ側の接続角度を補正接続角度として、前記補正接続角度が前記判定対象の接続角度より大きくなるように前記補正分割線を設定する。
【0011】
上記構成の加工プログラム作成装置は、前記パーツ図形データと前記分割線補正部で設定された分割線とに基づき、前記穴形成領域内に前記分割線の切断経路を割り付け、前記穴加工線に穴を形成するための切断経路を割り付ける切断経路設定部と、NC装置が、前記切断経路設定部で設定された切断経路に基づいて板金を切断して前記パーツを作製するようレーザ加工機を制御するためのNCデータを作成するNCデータ作成部とをさらに備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置によれば、内部に穴を有するパーツを作製するときに、加工不良の発生を抑える分割線を形成して板金を加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機の全体的な構成例を示す図である。
図2図2は、穴を有するパーツの第1の例を示す平面図である。
図3図3は、図2に示すパーツの穴形成領域を1または複数の分割線で分割する状態を示す平面図である。
図4図4は、図2に示すパーツの穴形成領域を図3に示す1または複数の分割線で分割するときの具体的な切断工程の一例を示す図である。
図5図5は、加工不良が発生する理由を説明するための図4における部分拡大図である。
図6図6は、パーツの穴形成領域を図3に示すように1または複数の分割線で分割したときに加工不良の原因となるバーニングが発生しやすい位置を示す平面図である。
図7図7は、図2に示すパーツの穴形成領域を、補正分割線を含む1または複数の分割線で分割する状態を示す平面図である。
図8図8は、図2に示すパーツの穴形成領域を、図7に示す補正分割線を含む1または複数の分割線で分割するときの具体的な切断工程の一例を示す図である。
図9図9は、補正分割線を直線として補正分割線の詳細を示す図8における部分拡大図である。
図10図10は、補正分割線を曲線として補正分割線の詳細を示す部分拡大図である。
図11図11は、穴を有するパーツの第2の例を示す平面図である。
図12図12は、オフセット線を穴形成領域内に設定できないときの補正分割線の設定方法を示す部分拡大図である。
図13図13は、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置が加工プログラムを作成する処理を示すフローチャートである。
図14図14は、加工プログラムを作成するCAM装置の機能的な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
まず、図1を用いて、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機100の全体的な構成例を説明する。図1において、ベース10上には、加工対象の材料である板金Wを載置するためのテーブル12が設けられている。テーブル12内には、例えば鉄板よりなる複数のスキッド13がX方向に配列されている。スキッド13の上端部には、複数の三角形状の突起が形成されている。よって、板金Wは、複数の突起によって支えられている。
【0016】
レーザ加工機100は、テーブル12を跨ぐよう配置された門型のフレーム14を備える。フレーム14は、サイドフレーム141及び142と上部フレーム143とを有する。フレーム14は、ベース10の側面に形成されたX方向のレール11に沿って、X方向に移動するように構成されている。
【0017】
上部フレーム143内には、Y方向に移動自在のキャリッジ15が設けられている。キャリッジ15には、レーザビームを射出する加工ヘッド16が取り付けられている。フレーム14がX方向に移動し、キャリッジ15がY方向に移動することによって、加工ヘッド16は、板金Wの上方で、X及びY方向に任意に移動するように構成されている。加工ヘッド16はZ方向にも移動自在となっている。
【0018】
ベース10、スキッド13が配列されたテーブル12、フレーム14、加工ヘッド16が取り付けられたキャリッジ15は、加工機本体60を構成する。NC装置50は、加工機本体60を制御する。NC装置50は加工機本体60を制御する制御装置の一例である。
【0019】
フレーム14には、NC装置50と接続された操作ペンダント51が取り付けられている。操作ペンダント51は、表示部511及び操作部512を有する。表示部511は、各種の情報を表示する。操作ペンダント51は、オペレータが操作部512を操作することによって、NC装置50に各種の指示信号を供給する。
【0020】
NC装置50には、ネットワークを介して、CAD(Computer Aided Design)装置1、CAM(Computer Aided Manufacturing)装置2、データベース3が接続されている。CAD装置1及びCAM装置2はコンピュータ機器によって構成されている。CAD装置1とCAM装置2とが別々のコンピュータ機器によって構成されていてもよいし、1つのコンピュータ機器によって構成されていてもよい。CAD装置1は、レーザ加工機100が作製するパーツの図形データを生成する。CAM装置2は、パーツの図形データ(及び板金の図形データ)に基づいて、レーザ加工機100が板金Wを切断してパーツを作製するための加工プログラムを作成する。CAM装置2は、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置として機能する。
【0021】
加工プログラムは、NC装置50に供給されてもよいし、データベース3に供給されて格納されてもよい。加工プログラムがデータベース3に格納されていれば、NC装置50は、作製しようとするパーツに対応する加工プログラムをデータベース3より読み出す。NC装置50は、加工プログラムに基づいて加工機本体60を制御する。
【0022】
レーザ加工機100(加工機本体60)は、加工ヘッド16をX方向またはY方向に移動させながら板金Wにレーザビームを照射して板金Wを切断して、板金Wより1または複数のパーツを切り出す。なお、板金Wには、レーザビームを照射するのに合わせて、アシストガスが吹き付けられる。図1では、アシストガスを吹き付ける構成の図示を省略している。
【0023】
レーザ加工機100が図2に示すパーツP1を作製する場合を第1の例として、レーザ加工機100が板金Wをどのように切断するのが好ましいかを説明する。パーツP1は1つの丸穴と2つの長丸穴を有するパーツである。レーザ加工機100が円形の穴加工線H1を切断すれば丸穴が形成され、長丸状の穴加工線H2a及びH2bを切断すれば長丸穴が形成される。長丸穴とは、2つの平行で同じ長さの直線の双方の端部に半円状の円弧を接続した図形である。レーザ加工機100が丸穴及び長丸穴を形成した後にパーツP1の外形を切断すれば、板金WよりパーツP1が切り出される。
【0024】
図2において、X方向は図1に示す複数のスキッド13が配列されている方向であり、Y方向はX方向と直交するスキッド13の面に沿った方向である。
【0025】
パーツP1に形成される丸穴及び長丸穴は比較的大きな穴であるため、図3に示すように、レーザ加工機100が、穴加工線H1内の穴形成領域を複数の分割線で分割し、穴加工線H2a及びH2b内の穴形成領域を各1つの分割線で分割したとする。穴加工線H1内の穴形成領域は、Y方向の分割線DL1~DL3及びX方向の分割線DL4~DL6で16分割される。穴加工線H2a及びH2b内の穴形成領域は、Y方向の分割線DL7で2分割される。各穴形成領域をこのように分割すれば、スクラップの立ち上がりを防ぎ、スクラップをスキッド13の間から落下させることができる。
【0026】
穴加工線H1内の穴形成領域をY方向の分割線DL2及びX方向の分割線DL5のみで4分割することも考えられる。しかしながら、4分割ではスクラップが落下しなかったり、落下しなかったスクラップが立ち上がったりすることがある。加工ヘッド16が立ち上がったスクラップと干渉して加工が停止したり、加工ヘッド16が破損したりすることがある。よって、図3に示すように、大きな穴を形成するときには穴形成領域を多くの分割線で分割して、スクラップを小さくするのがよい。
【0027】
穴加工線H1内の穴形成領域及び穴加工線H2a及びH2b内の穴形成領域を分割線DL1~DL7で分割するとき、具体的には、各穴形成領域は一例として図4に示すように切断される。図4において、下線を付した数字は切断工程及びその順の一例を示す。
【0028】
図4において、レーザ加工機100は、穴加工線H1の穴形成領域内にピアスPs1を開け、ピアスPs1から上方に穴加工線H1までの分割線DL11を切断し、続けて、ピアスPs1から下方に穴加工線H1までの分割線DL12を切断する。レーザ加工機100は、さらにピアスPs2を開け、ピアスPs2から上方に穴加工線H1までの分割線DL21を切断し、続けて、ピアスPs2から下方に穴加工線H1までの分割線DL22を切断する。レーザ加工機100は、さらにピアスPs3を開け、ピアスPs3から上方に穴加工線H1までの分割線DL31を切断し、続けて、ピアスPs3から下方に穴加工線H1までの分割線DL32を切断する。
【0029】
レーザ加工機100は、ピアスPs1から左方に穴加工線H1までの分割線DL41を切断し、続けて、ピアスPs1から右方に穴加工線H1までの分割線DL42を切断する。レーザ加工機100は、さらにピアスPs5を開け、ピアスPs5から左方に穴加工線H1までの分割線DL51を切断し、続けて、ピアスPs5から右方に穴加工線H1までの分割線DL52を切断する。レーザ加工機100は、さらにピアスPs6を開け、ピアスPs6から左方に穴加工線H1までの分割線DL61を切断し、続けて、ピアスPs6から右方に穴加工線H1までの分割線DL62を切断する。
【0030】
最後に、レーザ加工機100は、穴加工線H1上のいずれかの位置から板金Wを穴加工線H1に沿って切断して切断線CL1を形成する。図4では、穴加工線H1に沿った円形の切断線が形成される前の円弧状の部分的な切断線CL1を示している。
【0031】
レーザ加工機100は、穴加工線H2a及びH2b内の穴形成領域にピアスPs7を開け、ピアスPs7から上方に穴加工線H2aまたはH2bまでの分割線DL71を切断し、続けて、ピアスPs7から下方に穴加工線H2aまたはH2bまでの分割線DL72を切断する。最後に、レーザ加工機100は、穴加工線H2a及びH2b上のいずれかの位置から板金Wを穴加工線H2aまたはH2bに沿って切断して切断線CL2を形成する。図4では、穴加工線H2aまたはH2bに沿った長丸状の切断線が形成される前の部分的な切断線CL2を示している。
【0032】
図5は、分割線DL32と切断線CL1とがつながる連結点P321(第1の連結点)の周囲を拡大して示している。切断線CL1が連結点P321を過ぎて切断が進行するとき、分割線DL32と連結点P321における切断線CL1の接線T321とがなす連結点P321の手前側及び通過後の2つの角度のうち、通過後の角度が小さい。よって、ハッチングを付している部分に必要以上の熱が加わることがある。すると、金属が過度に溶融するバーニングが発生し、スクラップが落下しない加工不良を発生させることがある。
【0033】
分割線と穴加工線H1またはH2(切断線CL1またはCL2)とがなす角度、または分割線と分割線が穴加工線H1またはH2とつながる連結点における穴加工線H1またはH2の接線とがなす角度を接続角度と称することとする。
【0034】
図6に示すように、バーニングが発生しやすいのは、破線の丸で囲んでいるように、穴加工線H1で囲まれた穴形成領域においては、連結点P321の他に、連結点P111、P121、P311、P411、P421、P611、P621である。穴加工線H2aまたはH2bで囲まれた穴形成領域においては、連結点P712及びP722である。これらの連結点においては、分割線を挟む2つの接続角度のうちの一方の接続角度が小さく、加工不良を発生させることがある。小さい方の接続角度を判定対象の接続角度と称することとする。
【0035】
そこで、加工不良の発生を抑えるため、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機100及びレーザ加工機100が実行するレーザ加工方法は、図7に示すように分割線を設定して穴形成領域を切断する。1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置は、図7に示すように穴形成領域を切断する分割線を設定した加工プログラムを作成する。
【0036】
図7に示すように、レーザ加工機100は、穴加工線H1で囲まれた穴形成領域を、図3に示す分割線DL1、DL3、DL4、DL6に代えて、分割線DL1’、DL3’、DL4’、DL6’で分割する。分割線DL1’、DL3’、DL4’、DL6’は、穴加工線H1内に設定した仮想的な円形の補助線H1iと穴加工線H1との間に、それぞれ、補正分割線DL11c及びDL12c、DL31c及びDL32c、DL41c及びDL42c、DL61c及びDL62cを有する。分割線DL2及びDL5は図3と同じである。
【0037】
補助線H1iは、穴加工線H1を内側に所定の距離だけオフセットした線である。穴加工線H1と補助線H1iとは同心であるのがよい。補助線H1iの形状は穴加工線H1の形状と相似であるのがよいが、相似に限定されない。
【0038】
また、レーザ加工機100は、穴加工線H2a及びH2b内の穴形成領域を、図3に示す分割線DL7に代えて分割線DL7’で分割する。分割線DL7’は、穴加工線H2a及びH2b内に設定した仮想的な長丸状の補助線H2aiまたはH2biと穴加工線H2aまたはH2bとの間に、補正分割線DL71c及びDL72cを有する。
【0039】
補助線H2ai及びH2biは、穴加工線H2a及びH2bを内側に所定の距離だけオフセットした線である。穴加工線H2a及びH2bと補助線H2ai及びH2biとは相似形で同心であるのがよい。即ち、補助線H2ai及びH2biで形成される図形の中心は、穴加工線H2a及びH2bで形成される図形の中心と一致するように配置されているのがよい。両者の形状は相似に限定されない。
【0040】
このように、分割線DL1’、DL3’、DL4’、DL6’、DL7’は、分割線DL1、DL3、DL4、DL6、DL7が補助線H1i、H2ai、H2biと交わる位置で折り曲げられている。
【0041】
具体的には、各穴形成領域は一例として図8に示すように切断される。図8において、下線を付した数字は切断工程及びその順の一例を示す。図4と共通する説明を省略する。
【0042】
図8において、レーザ加工機100は、穴加工線H1内に形成したピアスPs1から上方に補助線H1iに到達するまで分割線DL11を切断し、その後、穴加工線H1まで進行方向を変更した補正分割線DL11cを切断する。続けて、レーザ加工機100は、ピアスPs1から下方に補助線H1iに到達するまで分割線DL12を切断し、その後、穴加工線H1まで進行方向を変更した補正分割線DL12cを切断する。
【0043】
レーザ加工機100は、穴加工線H1内に形成したピアスPs3から上方に補助線H1iに到達するまで分割線DL31を切断し、その後、穴加工線H1まで進行方向を変更した補正分割線DL31cを切断する。続けて、レーザ加工機100は、ピアスPs3から下方に補助線H1iに到達するまで分割線DL32を切断し、その後、穴加工線H1まで進行方向を変更した補正分割線DL32cを切断する。
【0044】
レーザ加工機100は、ピアスPs1から左方に補助線H1iに到達するまで分割線DL41を切断し、その後、穴加工線H1まで進行方向を変更した補正分割線DL41cを切断する。続けて、レーザ加工機100は、ピアスPs1から右方に補助線H1iに到達するまで分割線DL42を切断し、その後、穴加工線H1まで進行方向を変更した補正分割線DL42cを切断する。
【0045】
レーザ加工機100は、穴加工線H1内に形成したピアスPs6から左方に補助線H1iに到達するまで分割線DL61を切断し、その後、穴加工線H1まで進行方向を変更した補正分割線DL61cを切断する。続けて、レーザ加工機100は、ピアスPs6から右方に補助線H1iに到達するまで分割線DL62を切断し、その後、穴加工線H1まで進行方向を変更した補正分割線DL62cを切断する。
【0046】
レーザ加工機100は、穴加工線H2a及びH2b内に形成したピアスPs7から上方に補助線H2aiまたはH2biに到達するまで分割線DL71を切断し、その後、穴加工線H2aまたはH2bまで進行方向を変更した補正分割線DL71cを切断する。続けて、レーザ加工機100は、ピアスPs7から下方に補助線H2aiまたはH2biに到達するまで分割線DL72を切断し、その後、穴加工線H2aまたはH2bまで進行方向を変更した補正分割線DL72cを切断する。
【0047】
補正分割線DL11c、DL12c、DL31c、DL32c、DL41c、DL42c、DL61c、DL62cは、分割線と、分割線と穴加工線H1(切断線CL1)とがつながる連結点における接線とがなす接続角度を補正している。補正分割線DL71c及びDL72cは、分割線と、分割線と穴加工線H2aまたはH2b(切断線CL2)とがつながる連結点における接線とがなす接続角度を補正している。
【0048】
図9を用いて、補正分割線DL32c及びDL62cを例として、補正分割線DL11c、DL12c、DL31c、DL32c、DL41c、DL42c、DL61c、DL62cが接続角度をどのように補正するかを説明する。補正分割線DL32cを有さない分割線DL32は、破線で示すように連結点P321で穴加工線H1とつながる。このときの判定対象の接続角度(補正前接続角度)は90度より格段に小さい。補正分割線DL32cは、連結点P321c(第2の連結点)で穴加工線H1とつながる。補正分割線DL32cと、連結点P321cにおける穴加工線H1の接線T321cとがなす判定対象の接続角度と同じ側の接続角度(補正接続角度)は、補正前接続角度よりも大きい。
【0049】
図9に示すように、連結点P321cにおける補正接続角度は90度であることが好ましい。補正接続角度は少なくとも補正前接続角度より大きいことが必要である。補正前接続角度が45度未満であるとき、補正接続角度は45度以上とするのがよい。補正接続角度が90度未満であってもバーニングが発生しない所定の角度以上であるときには、補正接続角度を補正しなくてもよい。
【0050】
補正分割線DL62cを有さない分割線DL62は、破線で示すように連結点P621(第1の連結点)で穴加工線H1とつながる。このときの補正前接続角度は90度より格段に小さい。補正分割線DL62cは、連結点P621c(第2の連結点)で穴加工線H1とつながる。補正分割線DL62cと、連結点P621cにおける穴加工線H1の接線T621cとがなす補正接続角度は、補正前接続角度よりも大きい。
【0051】
同様に、連結点P621cにおける補正接続角度は90度であることが好ましい。補正接続角度は少なくとも補正前接続角度より大きいことが必要である。補正前接続角度が45度未満であるとき、補正接続角度は45度以上とするのがよい。補正接続角度が所定の角度以上であるときには、補正接続角度を補正しなくてもよい。
【0052】
補正分割線DL11c及びDL12c、DL31c及びDL32c、DL41c及びDL42c、DL61c及びDL62cは直線に限定されることはなく、例えば円弧である曲線であってもよい。図10は、図9における直線の補正分割線DL32c及びDL62cの代わりに、それぞれ、円弧よりなる補正分割線DL32ca及びDL62caとした例を示している。補正分割線DL32ca及びDL62caは、それぞれ、連結点P321ca及びP621caで穴加工線H1とつながる。補正分割線DL32ca及びDL62caが穴加工線H1とつながるときの補正接続角度は補正前接続角度よりも大きい。
【0053】
以上のように、判定対象の接続角度が所定の角度より小さいとき、穴形成領域内に設定した補助線H1i、H2ai、H2bと穴加工線H1、H2a、H2bとの間の線分を、直線または曲線よりなる補正分割線に置換するように分割線を補正すればよい。補正分割線は、分割線が補助線H1i、H2ai、H2bと交わる位置から第1の連結点とは異なる第2の連結点までの直線(線分)または曲線である。
【0054】
さらに、レーザ加工機100が図11に示すパーツP2を作製する場合を第2の例として、レーザ加工機100が板金Wをどのように切断するのが好ましいかを説明する。パーツP2は、図示のような形状を有する穴加工線H3a~H3cを切断することによって、互いに同じ形状の3つの穴が形成されるパーツである。レーザ加工機100が3つの穴を形成した後にパーツP2の外形を切断すれば、板金WよりパーツP2が切り出される。図11におけるX方向及びY方向の定義は図2と同じである。
【0055】
図11に示すように、レーザ加工機100が、穴加工線H3a~H3cで囲まれた穴形成領域を、一直線状の分割線DL8aそれぞれ破線部分を含む一直線状の分割線DL8b及びDL8cで分割したとする。すると、分割線DL8bと穴加工線H3bとがつながる連結点P831b及びP832bの双方において判定対象の接続角度が小さい。また、分割線DL8cと穴加工線H3cとがつながる連結点P832cにおいて判定対象の接続角度が小さい。
【0056】
そこで、加工不良の発生を抑えるため、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機100及びレーザ加工機100が実行するレーザ加工方法は、図11に示すように分割線を設定して穴形成領域を切断する。1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置は、図11に示すように穴形成領域を切断する分割線を設定した加工プログラムを作成する。
【0057】
図11に示すように、穴加工線H3a~H3c内の穴形成領域には、二点鎖線で示すように、穴加工線H3a~H3cを内側にオフセットした仮想的な補助線H3ai~H3ciが設定されている。レーザ加工機100は、穴加工線H3b及びH3cで囲まれた穴形成領域をそれぞれ実線で示す分割線DL8b’及びDL8c’で切断する。分割線DL8b’は、補助線H3biと穴加工線H3bとの間に、補正分割線DL8b1c及びDL8b2cを有する。分割線DL8c’は、補助線H3ciと穴加工線H3cとの間に、補正分割線DL8ccを有する。穴加工線H3aで囲まれた穴形成領域を分割するための分割線DL8aは補正する必要がなく、補正分割線を有していない。
【0058】
レーザ加工機100が、穴加工線H3bで囲まれた穴形成領域を分割線DL8b’で分割すれば、分割線DL8b’は連結点P831bc及びP832bcで穴加工線H3bとつながる。補正分割線DL8b1c及びDL8b2cは、連結点P831bc及びP832bcにおける補正接続角度が90度とされている。レーザ加工機100が、穴加工線H3cで囲まれた穴形成領域を分割線DL8c’で分割すれば、分割線DL8c’は連結点P832ccで穴加工線H3cとつながる。補正分割線DL8ccは、連結点P832ccにおける補正接続角度が90度とされている。
【0059】
補助線H3ai~H3ciの形状は、穴加工線H3a~H3cの形状と相似であるのがよいが、相似でなくてもよい。補助線H3ai~H3ciは、穴加工線H3a~H3cから内側に所定の距離だけ離れた位置に設定されていればよい。所定の距離とは一定の距離とするのがよいが、一定の距離でなくてもよい。
【0060】
図11において、レーザ加工機100は、穴加工線H3aで囲まれた穴形成領域においては、ピアスPs8aから例えば連結点P831aまで分割線DL8aを切断し、続けて、ピアスPs8aから逆方向に連結点P832aまで分割線DL8aを切断する。レーザ加工機100は、穴加工線H3b内の穴形成領域においては、ピアスPs8bから補助線H3biに到達するまで分割線DL8b’を切断し、その後、連結点P831bcまで補正分割線DL8b1cを切断する。続けて、レーザ加工機100は、ピアスPs8bから逆方向に補助線H3biに到達するまで分割線DL8b’を切断し、その後、連結点P832bcまで補正分割線DL8b2cを切断する。
【0061】
レーザ加工機100は、穴加工線H3cで囲まれた穴形成領域においては、ピアスPs8cから例えば連結点P831cまで分割線DL8c’を切断する。続けて、レーザ加工機100は、ピアスPs8cから逆方向に補助線H3ciに到達するまで分割線DL8c’を切断し、その後、連結点P832ccまで補正分割線DL8ccを切断する。
【0062】
図12は、互いに平行の2本の穴加工線H41及びH42が近距離にある場合を示している。このような場合、穴加工線H41及びH42をそれぞれオフセットした補助線H41i及びH42iは、穴加工線H41及びH42で囲まれた穴形成領域の外側に位置することがある。補助線H41i及びH42iが穴形成領域の外側に位置すると、破線で示す分割線DL9は補助線H41i及びH42iと交差せず、図7及び図11と同様な方法で補正分割線を設定することができない。
【0063】
そこで、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機100及びレーザ加工機100が実行するレーザ加工方法は、図12に示すように補正分割線DL9cを設定して穴形成領域を切断する。1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置は、図12に示すように穴形成領域を切断する補正分割線を設定した加工プログラムを作成する。
【0064】
レーザ加工機100は、実線で示す、穴加工線H41及びH42と直交する補正分割線DL9cで穴形成領域を切断する。レーザ加工機100は、穴加工線H41及びH42の間に形成したピアスPs9から例えば穴加工線H41に到達するまで補正分割線DL9cを切断し、続けて、ピアスPs9から穴加工線H42に到達するまで補正分割線DL9cを切断する。
【0065】
図13に示すフローチャートを用いて、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置が加工プログラムを作成する処理を説明する。図13において、CAM装置2は、処理が開始されると、ステップS1にて、パーツの図形データを含むCADデータを読み込む。CAM装置2は、ステップS2にて、切断経路を割り付けていない未割付の穴があるか否かを判定する。未割付の穴がなければ(NO)、CAM装置2は、ステップS3にて、パーツの外形に切断経路を割り付けて、処理を終了させる。
【0066】
ステップS2にて未割付の穴があれば(YES)、CAM装置2は、ステップS11にて、未割付の穴が分割すべき大きさの穴であるか否かを判定する。未割付の穴が分割すべき大きさの穴でなければ(NO)、CAM装置2は、ステップS12にて、穴(穴形成領域)の周囲(穴加工線)に切断経路を割り付けて、処理をステップS2に戻す。
【0067】
ステップS11にて未割付の穴が分割すべき大きさの穴であれば(YES)、CAM装置2は、ステップS13にて、穴形成領域内に分割線を設定する。詳細には、CAM装置2は、穴の大きさ及びスクラップの最大の大きさに応じて、X方向またはY方向に沿った1または複数本の分割線を設定する。CAM装置2は、ステップS14にて、穴形成領域内に補助線を設定し、ステップS15にて、図7または図11で説明したように分割線を補正する。
【0068】
CAM装置2は、ステップS16にて、分割線と穴加工線との接続角度が改善されたか否かを判定する。分割線を挟む2つの接続角度のうち、補正前の判定対象の接続角度と同じ側の接続角度において、|90度-補正前接続角度|≧|90度-補正接続角度|であれば接続角度が改善されている。接続角度が改善されていれば(YES)、CAM装置2は、ステップS17にて、穴形成領域内に補正された分割線の切断経路を割り付け、穴形成領域の周囲に穴を形成するための切断経路を割り付けて、処理をステップS2に戻す。
【0069】
分割線を挟む2つの接続角度のうち、補正前の判定対象の接続角度と同じ側の接続角度において、|90度-補正接続角度|>|90度-補正前接続角度|であれば接続角度が改善されていない。ステップS16にて接続角度が改善されていなければ(NO)、CAM装置2は、ステップS18にて、分割線の補正を削除する。続けて、CAM装置2は、ステップS19にて、穴形成領域内に分割線の切断経路を割り付け、穴形成領域の周囲に穴を形成するための切断経路を割り付けて、処理をステップS2に戻す。
【0070】
図14は、加工プログラムを生成するCAM装置2の機能的な構成例を示している。CAM装置2は、CAMのソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することにより、図14に示すような機能的な構成を備える。
【0071】
図14において、板取設定部201は、作製しようとするパーツの図形データ(以下、パーツ図形データ)と板金Wの図形データ(以下、板金図形データ)とに基づいて板取を実行して、板取情報を生成する。板取設定部201は、図示していない操作部を操作することによって指示された指示信号が示す個数のパーツを、板金Wを示す図形内に配置するよう板取を実行する。パーツ図形データ及び板金図形データは、CAD機器1からCAM装置2に供給されてもよいし、データベース3から読み出されてCAM装置2に供給されてもよい。
【0072】
穴分割要否判定部202は、パーツ図形データに基づき、作製しようとするパーツが穴を有するとき、穴を分割線によって分割する必要があるか否かを判定する。分割線設定部203は、穴を分割線によって分割する必要があるとき、パーツ図形データに基づき、穴形成領域内に1または複数の分割線を設定する。分割線補正要否判定部204は、パーツ図形データに基づき、分割線が穴加工線につながるときの接続角度が小さく、接続角度を大きくするために分割線を補正する必要があるか否かを判定する。
【0073】
分割線補正部205は、分割線を補正する必要があるとき、パーツ図形データに基づき、補正分割線を設定して分割線を補正する。補正可否判定部206は、パーツ図形データに基づき、分割線補正部205が補正した分割線で実際に接続角度が改善されているか否かを判定する。上記のように、補正可否判定部206は、|90度-補正前接続角度|≧|90度-補正接続角度|なる関係を満たすか否かを判定し、その関係を満たせば、接続角度が改善されていると判定する。補正可否判定部206は、その関係を満たさなければ接続角度が改善されていないと判定する。補正前接続角度は判定対象の接続角度である。
【0074】
接続角度が改善されていなければ、補正可否判定部206は、分割線補正部205に分割線の補正を削除するよう指示する。分割線の補正の削除が指示されれば、分割線補正部205は、分割線の補正を削除して分割線設定部203が設定した元の分割線に戻す。補正可否判定部206を設けない構成としてもよいが、設ける構成とすることが好ましい。
【0075】
切断経路設定部207は、穴を分割線によって分割する必要があるとき、パーツ図形データと、分割線補正部205で最終的に設定された分割線とに基づき、穴形成領域内に分割線の切断経路を割り付け、穴形成領域の周囲に穴を形成するための切断経路を割り付ける。切断経路設定部207は、穴を分割線によって分割する必要がないとき、穴形成領域の周囲に穴を形成するための切断経路のみを割り付ける。
【0076】
図13に示すフローチャートは、以上の穴分割要否判定部202~切断経路設定部207で実行される処理を示している。
【0077】
NCデータ作成部208は、板取情報と切断経路設定部207で設定された切断経路とに基づいて、NC装置50が、板金Wを切断して1または複数のパーツを作製するようレーザ加工機100を制御するためのNCデータを作成する。NCデータは、NC装置50がレーザ加工機100を制御するための機械制御コードによって構成された加工プログラムである。
【0078】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。1またはそれ以上の実施形態においては、穴形成領域内に設定されたX方向またはY方向と平行の分割線に沿って穴形成領域を切断して、穴形成領域を複数のスクラップに分割しているが、穴形成領域をどのように分割するかは限定されない。スキッド13の配列の仕方またはスキッド13の構成も図1に示す構成例に限定されない。
【符号の説明】
【0079】
1 CAD装置
2 CAM装置
3 データベース
12 テーブル
13 スキッド
50 NC装置(制御装置)
60 加工機本体
100 レーザ加工機
201 板取設定部
202 穴分割要否判定部
203 分割線設定部
204 分割線補正要否判定部
205 分割線補正部
206 補正可否判定部
207 切断経路設定部
208 NCデータ作成部
W 板金
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14