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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】交通信号制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/08 20060101AFI20240613BHJP
   G08G 1/07 20060101ALI20240613BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G08G1/08 C
G08G1/07
G08G1/09
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020197166
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085462
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 万正
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003703(JP,A)
【文献】特開2012-133611(JP,A)
【文献】特開2004-046852(JP,A)
【文献】特開2003-217086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/08
G08G 1/07
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の道路が交差する交差点の前記道路毎に配置した歩行者用信号灯器を含む信号灯器と、前記道路毎に横断歩道の待機場所に設けられた狭域通信アンテナと、前記信号灯器及び前記狭域通信アンテナと接続され、前記信号灯器の点灯制御を行う制御装置とから構成され、前記点灯制御は複数の階梯から成るサイクルを順次繰り返している交通信号制御システムであって、
前記制御装置は、前記狭域通信アンテナによって検出される歩行者の携帯端末から送信される端末ID及び移動速度と、前記信号灯器の点灯状態とに基づいて、前記歩行者用信号灯器に対して介入制御を行い、
前記狭域通信アンテナの通信エリアに第1の携帯端末が進入したことを検出し、かつ第1の横断歩道の第1の歩行者用信号灯器、又は第2の横断歩道の第2の歩行者用信号灯器が赤信号から青信号に点灯が切換わった際に、数秒間後の前記第1の携帯端末の前記移動速度が設定速度より遅い速度で移動していると判定された場合には、前記第1の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を、或いは前記第2の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を、延長する介入制御を行い、
前記数秒間後の第2の携帯端末の前記移動速度が0に近似して停止中であると判定された場合には、前記第1の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間、又は前記第2の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間を短縮する介入制御を行い、
前記第1の携帯端末の前記移動速度が設定速度より遅い速度で移動しているとの判定結果に基づく青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を延長する介入制御によって、元来の前記サイクルの開始タイミングでない開始タイミングで前記点灯制御を行っている場合に限り、前記第2の携帯端末が停止中であるとの判定結果に基づく前記青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を短縮する介入制御を行うことを特徴とする交通信号制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記狭域通信アンテナの通信エリアに前記第1の携帯端末が進入したことを検出し、かつ前記第1の歩行者用信号灯器、又は前記第2の歩行者用信号灯器が青信号を点灯している際に、前記第1の携帯端末の前記通信エリアへの進入が前記交差点における最初の前記通信エリアへの進入であり、前記数秒間後の前記第1の携帯端末の前記移動速度が設定速度より遅い速度で移動していると判定された場合には、前記第1の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を、或いは前記第2の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を、延長する介入制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の交通信号制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記数秒間後の前記第1の携帯端末の前記移動速度が前記設定速度より速い速度で移動していると判定された場合には、前記第1の歩行者用信号灯器、又は前記第2の歩行者用信号灯器の介入制御を行わないことを特徴とする請求項に記載の交通信号制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記通信エリア内に複数の前記第1の携帯端末が検出され、複数の前記第1の携帯端末のうち、少なくとも1人以上の歩行者の移動速度が遅いと判定された場合には、前記第1の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を延長する介入制御を、又は前記第2の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を延長する介入制御を、行うことを特徴とする請求項の何れか1項に記載の交通信号制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記通信エリア内に複数の前記第2の携帯端末が検出された場合には、複数の前記第2の携帯端末の全ての歩行者が停止中であると判定された場合に限り、前記第1の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間、又は前記第2の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間を短縮する介入制御を行うことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の交通信号制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者が所持する携帯端末からの狭域通信を利用して、歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間を制御する交通信号制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、横断歩道には交通信号機が設けられ、障害者や高齢者であっても歩行者が安全に通行できるように、歩行者に信号灯器の点灯状態を知らせる交通信号制御システムが考案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ブルートゥース(登録商標)通信による通話可能範囲内に携帯電話端末を所持する視覚障害のある歩行者が存在し、横断歩道を通行中に、交通信号機が赤色点灯に切換わった場合には、即座に視覚障害のある歩行者の携帯電話端末に、赤色点灯に切換わった旨を通知する無線通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-352379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の無線通信システムでは、横断歩道を通行中に赤色の点灯に切換わった旨を通知された歩行者は、障害者や高齢者のように移動速度が遅い場合であっても横断歩道を渡り切らなければならない。赤色の点灯に切換わった旨の通知後に、自動車用の信号灯器が青信号になると、信号待ちをしていた車両が横断歩道に進入してくるので、横断歩道を渡り切っていない歩行者は非常に危険である。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、移動速度の遅い歩行者であっても安全に横断歩道を通行することが可能な交通信号制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る交通信号制御システムは、複数の道路が交差する交差点の前記道路毎に配置した歩行者用信号灯器を含む信号灯器と、前記道路毎に横断歩道の待機場所に設けられた狭域通信アンテナと、前記信号灯器及び前記狭域通信アンテナと接続され、前記信号灯器の点灯制御を行う制御装置とから構成され、前記点灯制御は複数の階梯から成るサイクルを順次繰り返している交通信号制御システムであって、前記制御装置は、前記狭域通信アンテナによって検出される歩行者の携帯端末から送信される端末ID及び移動速度と、前記信号灯器の点灯状態とに基づいて、前記歩行者用信号灯器に対して介入制御を行い、前記狭域通信アンテナの通信エリアに第1の携帯端末が進入したことを検出し、かつ第1の横断歩道の第1の歩行者用信号灯器、又は第2の横断歩道の第2の歩行者用信号灯器が赤信号から青信号に点灯が切換わった際に、数秒間後の前記第1の携帯端末の前記移動速度が設定速度より遅い速度で移動していると判定された場合には、前記第1の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を、或いは第2の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を、延長する介入制御を行い、前記数秒間後の第2の携帯端末の前記移動速度が0に近似して停止中であると判定された場合には、前記第1の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間、又は第2の歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間を短縮する介入制御を行い、前記第1の携帯端末の前記移動速度が設定速度より遅い速度で移動しているとの判定結果に基づく青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を延長する介入制御によって、元来の前記サイクルの開始タイミングでない開始タイミングで前記点灯制御を行っている場合に限り、前記第2の携帯端末が停止中であるとの判定結果に基づく前記青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を短縮する介入制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る交通信号制御システムによれば、制御装置により狭域通信アンテナによって検出される歩行者の携帯端末から送信される端末ID及び移動速度から、歩行者の移動速度に基づく速い、遅い、停止から成るステータスを判定し、横断予定の横断歩道に対応する歩行者用信号灯器の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を延長又は短縮する介入制御を行うことで、移動速度の遅い歩行者であっても安全に交差点の横断歩道を横断することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】交通信号制御システムのシステム構成図である。
図2】現示テーブルの説明図である。
図3】制御装置による信号灯器の介入制御のフローチャート図である。
図4】制御装置による別形態の信号灯器の介入制御のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は交通信号制御システムのシステム構成図であり、主道路S1と、縦道路S2とが交差する交差点Cに設けられた交通信号制御システムは、主道路S1、縦道路S2にそれぞれ配置した信号灯器10と、交差点Cの四隅部における横断歩道H1、H2の近傍の歩行者Wの待機場所に設けた4個の狭域通信アンテナ30と、信号灯器10及び各狭域通信アンテナ30と接続され、予め設定した現示テーブルTに従って、信号灯器10の点灯制御を行う制御装置40とから構成されている。
【0011】
交差点Cには、交通量の多い側の道路である主道路S1及び交通量の少ない側の道路である従道路S2の各道路Sに対して、道路Sを挟んで対となる信号灯器10が設置されている。これらの信号灯器10は、第1及び第2の横断歩道H1、H2を横断する歩行者に対して、赤色灯、青色灯の点灯を行う第1及び第2の歩行者用信号灯器11、21と、主道路S1、縦道路S2を通行する車両に対して赤色灯、黄色灯、青色灯の点灯を行う自動車用信号灯器12、22とから構成されている。
【0012】
交差点Cの四隅に設置された狭域通信アンテナ30は、信号灯器10が設置された柱体に設置され、例えばブルートゥース(登録商標)を利用した狭域通信を行う。携帯端末P-狭域通信アンテナ30間で使用されるブルートゥース(登録商標)通信は、携帯端末Pを省電力で運用することが可能であり、10kbps程度の通信速度で携帯端末P-狭域通信アンテナ30間の通信を行うことができる。
【0013】
狭域通信アンテナ30の通信エリアRは半径4m程度の円形領域であり、例えば図1における左上の通信エリアR1内に歩行者Wの所持する携帯端末Pが進入すると、狭域通信アンテナ30によって検出され、携帯端末Pの端末ID及び移動速度情報が制御装置40に送信される。携帯端末Pから送信される端末IDは、端末毎に付与される固有の識別番号等であり、移動速度情報はGPS機能により現在位置情報の時間的変化から算出される。
【0014】
制御装置40は、例えば交差点Cの一対の自動車用信号灯器12の一方が、設置された柱体に固定された箱状の筐体内に収納されており、筐体前面の開閉可能な扉体を開くことで、各種の設定操作等を行うことができる。なお、交差点Cに設けられた全ての信号灯器10及び狭域通信アンテナ30は、図1の左上の接続線のように制御装置40と接続されているが、左上の接続線以外については図示を省略している。なお、制御装置40と狭域通信アンテナ30との通信は、無線通信、有線通信の何れであってもよい。
【0015】
図2は制御装置40に記憶された現示テーブルTの一例であり、現示テーブルTに示されている直線は青信号の点灯、点線は青信号の点滅、波線は黄信号の点灯、二重線は赤信号の点灯を表している。この現示テーブルTは複数の階梯Kから構成されており、階梯K1では、例えば全ての信号灯器10が赤信号の点灯を行う点灯制御が設定されている。制御装置40の電源投入と共に、階梯K1から順に信号灯器10に対して点灯制御が開始される。
【0016】
例えば階梯K2では、歩行者用信号灯器11及び自動車用信号灯器12が青信号の点灯、歩行者用信号灯器21及び自動車用信号灯器22が赤信号の点灯を行う点灯制御が設定され、階梯K3では、歩行者用信号灯器11が青点滅、自動車用信号灯器12が青信号の点灯、歩行者用信号灯器21及び自動車用信号灯器22が赤信号の点灯を行う点灯制御が設定されている。そして、階梯K4~K10においても同様にして、図2に示す現示テーブルTに基づいた点灯制御が設定されている。
【0017】
それぞれの階梯K1~K10には、各信号灯器10の点灯状態を保持する保持秒数が設定されており、これらの階梯K1~K10までの保持秒数を加算した合計秒数、つまり階梯K1~K10の一巡する時間を1サイクル時間としている。そして、最終の階梯Kである階梯K10の次は、最初の階梯Kである階梯K1に戻り、サイクルが順次繰り返される。
【0018】
また、図2で示す現示テーブルTの可変階梯は、後述する点灯時間又は点滅時間を延長又は短縮することが可能な階梯Kであり、受付階梯は、点灯時間又は点滅時間を延長又は短縮することを判断する処理を行う階梯Kである。
【0019】
図3は歩行者Wが所持する携帯端末Pの検出によって、制御装置40が信号灯器10に対して行う介入制御のフローチャート図である。このフローチャート図においては、制御装置40の電源投入と共にスタートし、先ずステップST11において、通信エリアR内で歩行者Wの携帯端末Pが検出されたか否かを判定する。
【0020】
通信エリアR内に携帯端末Pが進入すると、自動的に携帯端末P-狭域通信アンテナ30間で通信が開始され、制御装置40によって携帯端末Pを検出することが可能となる。携帯端末Pが検出された場合にはステップST12に移行し、検出されない場合にはステップST13に移行する。
【0021】
ステップST12において、携帯端末Pの検出時の信号灯器10の点灯状態を表す階梯Kの確認を行う。そして、階梯Kが受付階梯に該当するか、つまり信号灯器10の全てが赤信号の点灯である階梯K1又は階梯K6から、歩行者用信号灯器11又は歩行者用信号灯器21が青信号の点灯に切換わる階梯K2又は階梯K7にシフトした時点か否かの確認を行う。
【0022】
階梯K1又は階梯K6から、受付階梯である階梯K2又は階梯K7にシフトした時点である場合には、ステップST14に移行し、シフトした時点でない場合にはステップST11に戻る処理を行う。
【0023】
携帯端末Pを検出した状態であって、階梯K1から階梯K2又は階梯K6から階梯K7にシフトした時点である、つまり受付階梯に移行したときにステップST14において、歩行者Wのステータスを判定する。
【0024】
歩行者Wのステータスの判定は、階梯K2又は階梯K7に移行してから所定時間、例えば2秒間の携帯端末Pの移動速度に基づいて行われる。この移動速度が設定速度より速い速度、例えば分速30mより速い速度で移動していると判定された場合には、階梯K2又は階梯K7の保持秒数で十分に横断歩道H1、H2を渡り切れると判断して、信号灯器10に対して信号制御の介入処理を行わずにステップST11に戻る。
【0025】
歩行者Wの移動速度が設定速度より遅い、例えば分速30mより遅い速度で移動していると判定された場合にはステップST15に移行して、階梯K2又は階梯K7の保持秒数の延長処理を行う。例えば、予め設定された保持秒数に対して20%延長した秒数を新たな保持秒数とする。なお、保持秒数を延長する階梯Kは、階梯K2又は階梯K7に加えて、歩行者用信号灯器11、21が青点滅する階梯K3又は階梯K8を採用することも可能である。
【0026】
なお、ステップST14の歩行者Wのステータスの判定処理において、通信エリアR内に複数の携帯端末Pが検出された場合には、それぞれの歩行者Wに対してステータスの判定を行い、少なくとも1人以上の歩行者Wの移動速度が遅いと判定された場合には、ステップST15に移行する。
【0027】
ステップST15において、歩行者用信号灯器11又は歩行者用信号灯器21の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を延長する介入処理を行うことで、移動速度が遅い老人や障害者等の歩行者Wであっても、安全に横断歩道H1、H2を渡り切ることができる。階梯K2又は階梯K7の保持秒数の延長処理を行った後にステップST11に戻る。
【0028】
ステップST14の歩行者Wのステータスの判定処理において、携帯端末Pの移動速度が0に近似して停止中と判定された場合には、歩行者Wは横断歩道H1、H2を横断する意志がない、又は他の道路Sの横断歩道H2、H1の横断待ちであると判断して、ステップST13に移行する。
【0029】
なお、ステップST14の歩行者Wのステータスの判定処理において、通信エリアR内に複数の携帯端末Pが検出された場合には、全ての歩行者Wが停止していると判定された場合に限り、ステップST13に移行する。
【0030】
ステップST14で歩行者Wのステータスが停止であると判断した場合、又はステップST11で携帯端末Pが検出されない場合に移行するステップST13では、現示テーブルTのサイクルの開始タイミングにずれがあるか否かの判定を行う。
【0031】
交差点Cには、主道路S1の自動車の流れに対して上流、下流側に隣接交差点が存在し、通常これらの隣接交差点には、交差点Cと同じ秒数のサイクル秒数が設定されている。そして、交差点Cの制御装置40は、隣接交差点から交差点Cまでの自動車の予測される移動時間に対応して、現示テーブルTのサイクルの開始タイミングをずらした状態で運用されている。
【0032】
このように、主道路S1の連続する交差点Cでは、現示テーブルTの1サイクルの秒数を一致させると共に、隣接交差点に対してサイクルの開始タイミング、特に階梯K2の開始タイミングをずらして運用することで、自動車群の流れに合わせた効率的な交通量を確保することが可能である。
【0033】
このような隣接交差点と連携する運用を維持するためには、ステップST15で延長した階梯K2又は階梯K7の保持秒数に対して、ステップST13、ST16の処理により階梯K2又は階梯K7の保持秒数を短縮して、元来のサイクルの開始タイミングに戻す必要がある。
【0034】
ステップST13では、サイクルがステップST15における保持秒数の延長処理から、元来の開始タイミングに戻っているか否かの判定を行い、開始タイミングが元来のタイミングに戻っていない場合、例えばステップST15の処理により保持秒数が10秒間延長された場合には、ステップST16に移行して、階梯K2又は階梯K7の保持秒数を10秒間分だけ短縮する。
【0035】
ステップST13では横断歩道H1、H2を渡る歩行者Wが存在しないことが明らかであることから、ステップST16において階梯K2又は階梯K7の保持秒数を10秒間短縮しても問題は生じない。前回の周期で青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を延長した延長時間分の短縮を行うことで、元来のサイクルの開始タイミングに戻すことができる。
【0036】
また、サイクルの複数回に渡って連続して階梯K2又は階梯K7の保持秒数が延長された場合には、複数回に渡って階梯K2又は階梯K7の保持秒数を短縮処理することで、元来のサイクルの開始タイミングに戻すことが可能である。
【0037】
なお、交通信号制御システムを導入する交差点Cは、必ずしも上述の隣接交差点と連携する点灯制御を行っているとは限らず、単独で運用している場合には、ステップST13、ST16の処理は不要となる。ステップST11、ST14からステップST13に移行する処理に代えて、ステップST11に戻る処理を採用する。
【0038】
図4は別形態の制御装置40が信号灯器10に対して行う介入制御のフローチャート図である。ステップST21では図3のステップST11と同処理を行う。ステップST21において携帯端末Pが検出された場合にはステップST22に移行し、携帯端末Pが検出されない場合にはステップST23に移行する。なお、ステップST23、ST27における元来のサイクルの開始タイミングに戻す処理は、図3のステップST13、ST16と同処理のため説明を省略する。
【0039】
ステップST22では、検出した携帯端末Pが通信エリアR内への最初の進入であったか否かの判定を行う。この処理は携帯端末Pから送信される端末IDに基づいて処理され、例えば歩行者W1が図1における右上の通信エリアR2から、横断歩道H1を渡って、右下の通信エリアR3に移動した際には、通信エリアR3では携帯端末Pの端末IDは通信エリアR2での検出に続いて2回目の検出となるため、ステップST21に戻る処理を行う。
【0040】
このように2回目の検出時にステップST21に戻る処理は、階梯K2又は階梯K7の間に、横断歩道H2又は横断歩道H1を渡り切った歩行者Wが、次の検知エリアRにおける検出処理に基づいて、通過した横断歩道H2又は横断歩道H1に対して、歩行者Wのステータスに基づく歩行者用信号灯器21、11の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を延長する介入制御を行わないようにするためである。
【0041】
ステップST22において、携帯端末Pが通信エリアR内に最初に進入したと判定された場合には、ステップST24に移行し、現在の階梯Kが階梯K2又は階梯K7であるかを判定する。
【0042】
現在の階梯Kが階梯K2又は階梯K7である場合にはステップST25に移行し、図3のステップST14と同様に歩行者Wの移動速度に基づく速い、遅い、停止から成るステータスの判定を行う。現在の階梯Kが階梯K2又は階梯K7でない場合には、ステップST21に戻る処理を行う。
【0043】
ステップST25における歩行者Wのステータス判定は、携帯端末Pを検出してから所定時間後に、携帯端末Pからの移動速度情報に基づいて行われる。例えば、携帯端末Pを検出してから2秒後の携帯端末Pのステータスが、移動速度が速い、遅い又は停止の何れかの状態であるかを判定する。
【0044】
このステータス判定により携帯端末Pの移動速度が設定速度より速い場合には、信号制御の介入処理を行わずにステップST21に戻り、携帯端末Pの移動速度が設定速度より遅い場合には、ステップST26に移行する。
【0045】
ステップST26では、図3のステップST15と同様に、階梯K2又は階梯K7の保持秒数を延長する介入制御を行い、階梯K2又は階梯K7の保持秒数の延長処理後に、ステップST21に戻る。
【0046】
ステップST25において、歩行者Wのステータスが停止中である場合には、前述のステップST23に移行する。1人でもステータスが遅いと判定された歩行者Wが存在する場合にはステップST26に移行し、全ての歩行者Wが停止中と判定された場合に限りステップST23に移行する。
【0047】
制御装置40による図3のフローチャートは、階梯K1又は階梯K6から、受付階梯である階梯K2又は階梯K7にシフトした際に歩行者Wを検出した場合の信号灯器10の介入制御処理を示しており、制御装置40による図4のフローチャートは、受付階梯である階梯K2又は階梯K7の信号灯器10の点灯中に歩行者Wが初めて検出された場合の信号灯器10の介入制御処理を示している。
【0048】
制御装置40において、これらの図3に示すフローチャート処理及び図4に示すフローチャート処理は、各通信エリアR毎に実行されている。また、両フローチャート処理を同時並行で実行させることも可能である。
【0049】
例えば、図1に示す歩行者W2が階梯K7のときに、つまり横断歩道H1の歩行者用信号灯器21が青信号を点灯しているときに、通信エリアR4に進入して横断歩道H1を横断し、更に横断歩道H2を横断する場合の処理については、先ず通信エリアR4で携帯端末Pを検出するステップST21が開始される図4に示すフローチャートに従って、横断歩道H1を横断することになる。
【0050】
続いて、階梯K8までに横断歩道H1を横断し、通信エリアR1に進入した歩行者W2は、階梯K1から階梯K2にシフトした時点でステップST14に移行する図3に示すフローチャートに従って、横断歩道H2を横断することになる。
【0051】
このように本発明に係る交通信号制御システムによれば、制御装置40により狭域通信アンテナ30によって検出される歩行者Wの携帯端末Pから送信される端末ID及び移動速度から、歩行者Wの移動速度に基づく速い、遅い、停止から成るステータスを判定し、横断予定の横断歩道Hに対応する歩行者用信号灯器11又は21の青信号の点灯時間又は点滅時間の少なくとも一方を延長又は短縮する介入制御を行うことで、移動速度の遅い歩行者Wであっても安全に横断歩道H1、H2を横断することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 信号灯器
11、21 歩行者用信号灯器
12、22 自動車用信号灯器
30 狭域通信アンテナ
40 制御装置
C 交差点
H1、H2 横断歩道
P 携帯端末
R1、R2、R3、R4 通信エリア
S1、S2 道路
W 歩行者
図1
図2
図3
図4