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特許7503488半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/36 20060101AFI20240613BHJP
   C08F 2/24 20060101ALI20240613BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240613BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20240613BHJP
   C08F 222/10 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C08F212/36
C08F2/24
C08F2/44 B
C08F212/08
C08F222/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020209333
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096299
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】松浦 春彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光一朗
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-313818(JP,A)
【文献】特開2000-311518(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040376(WO,A1)
【文献】特開2011-094124(JP,A)
【文献】特開2016-069619(JP,A)
【文献】国際公開第2021/085189(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子であって、
該シェル部が、芳香族系架橋性モノマー(a)を10重量%~70重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を10重量%~70重量%、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を0.5重量%~30重量%含むモノマー組成物を重合して得られる芳香族系ポリマー(P1)を含み、
エチレン性不飽和基残存率が1%~20%である、
半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子。
【化1】
(R 1 はHまたはCH 3 を表し、R 2 はH、アルキル基,またはフェニル基を表し、R 3 -Oは炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは該オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。)
【請求項2】
前記中空樹脂粒子を窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の1%熱重量減少温度が250℃以上である、請求項1に記載の半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子。
【請求項3】
前記中空樹脂粒子を40℃、95%RHの雰囲気下において96時間静置した後の水分含有率が0.5重量%以下である、請求項1または2に記載の半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子。
【請求項4】
前記中空樹脂粒子の平均粒子径が0.1μm~5.0μmである、請求項1から3までのいずれかに記載の半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子。
【請求項5】
前記オキシアルキレン基が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、及びオキシブチレン基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から4までのいずれかに記載の半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子。
【請求項6】
前記シェル部が、前記芳香族系ポリマー(P1)と、さらに、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル酸系ポリマー、及びスチレン-(メタ)アクリル酸系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である非架橋性ポリマー(P2)を含む、請求項からまでのいずれかに記載の半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子。
【請求項7】
前記芳香族系架橋性モノマー(a)がジビニルベンゼンである、請求項からまでのいずれかに記載の半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子。
【請求項8】
前記芳香族系単官能モノマー(b)がスチレン及びエチルビニルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項からまでのいずれかに記載の半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれかに記載の半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子を含む、半導体部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の情報処理量と通信速度の増大に伴い、搭載される半導体デバイスの高集積化、配線の高密度化、及び多層化などの実装技術が急速に進展している。半導体デバイスにおいて用いられる半導体部材に用いられる絶縁樹脂材料には、高い周波数の信号の伝送速度を高め、信号伝送時の損失を低減させるために、絶縁樹脂の比誘電率及び誘電正接が低いことが要求される。
【0003】
このような要求に対し、シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空粒子を絶縁樹脂に混在させることで、絶縁樹脂内に空域を導入し、低比誘電化、低誘電正接化を図る技術が報告されている。
【0004】
公知の中空粒子の一つとしてアクリル系中空樹脂粒子が知られている。例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをはじめとするアクリル系多官能モノマーを主成分としたモノマーを疎水性溶剤と共に懸濁重合することでアクリル系中空樹脂粒子が得られることが報告されている(特許文献1)。しかし、アクリル系樹脂は、比誘電率及び誘電正接が高く、低誘電特性を悪化させる。このため、特許文献1に記載のアクリル系中空樹脂粒子は、近年の高周波数の信号を処理する半導体デバイスには適用できない。
【0005】
また、半導体装置を製造する場合、プリント回路基板の表面に電子部品、配線部品等の部品を実装する際には、はんだリフロー工程が行われる。はんだリフロー工程は、プリント回路基板上にはんだペーストを印刷して、その上に部品を載せてからはんだリフロー炉で加熱し、はんだを溶かす工程である。従来の代表的なはんだであるPb共晶はんだの融点は183℃である。一方、昨今の鉛フリーはんだの代表的なAg-Sn-Cu系はんだの融点はPb共晶はんだよりも30℃程度高いものとなっている。このため、はんだリフロー炉のプロファイルの最高温度は、220℃~260℃程度へと高くなっている。したがって、半導体パッケージや半導体モジュールなどの半導体部材に用いる樹脂組成物には耐熱性の高い樹脂を用いることが求められる。このような耐熱性の高い樹脂においては、熱重量減少温度が高いことが求められる。半導体部材に用いる樹脂組成物に含まれる樹脂の熱重量減少温度が低いと、アウトガスが発生し易く、はんだリフロー時に樹脂層が剥離する等の不具合を起こし、半導体デバイスの信頼性を損ねてしまう問題ある。また、半導体部材に用いる樹脂組成物に含まれる樹脂中に揮発成分が存在する場合、その揮発成分に由来するアウトガスが発生しやすくなる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のアクリル系中空樹脂粒子は、吸水率が高く、熱重量減少温度が低い特性を有する。このため、特許文献1に記載のアクリル系中空樹脂粒子を半導体部材に用いる樹脂組成物に適用しても、はんだリフロー工程での不具合を低減できず、半導体デバイスの信頼性を高めることができない。
【0007】
アクリル系中空樹脂粒子に比べて比誘電率及び誘電正接が低い中空樹脂粒子として、スチレン系中空樹脂粒子が知られている。このようなスチレン系中空樹脂粒子として、例えば、ジビニルベンゼンを炭素数8~18の飽和炭化水素類(具体的には、ヘキサデカン)と共に懸濁重合することでポリジビニルベンゼン中空樹脂粒子を得られることが報告されている(特許文献2)。しかし、特許文献2に記載のポリジビニルベンゼン中空樹脂粒子は、ポリビニルアルコールを分散剤としているため、粒子表面にポリビニルアルコールが残存しやすく、粒子自体の比誘電率及び誘電正接の数値を高くしてしまい、低誘電特性を悪化させるため、近年の高周波数の信号を処理する半導体デバイスには適用できなかったり、粒子表面にポリビニルアルコールが残存しやすく、吸水率が高くなり、粒子中の水分がはんだリフロー時に蒸発してアウトガスが発生し、半導体デバイスの信頼性を損ねたりする。また、ポリジビニルベンゼン中空樹脂粒子は、ジビニルベンゼンの片方のビニル基の反応性低下により、未反応のまま残存しやすく、残存したビニル基を起点にした耐熱性低下を招く懸念がある。さらに、ポリビニルアルコールには、鹸化反応に用いる水酸化アルカリの残渣が含まれるため、低誘電特性の悪化の原因となるという問題がある。また、特許文献2に記載のポリジビニルベンゼン中空樹脂粒子は、絶縁樹脂に混在させて絶縁樹脂材料とした場合に、粒子表面と絶縁樹脂の間(粒子と絶縁樹脂の界面)に空隙ができやすい。このため、絶縁樹脂材料の強度が低下するという問題や低吸湿性が悪化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6513273号
【文献】特開2002-080503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、耐熱性に優れ、吸水率が低い、半導体部材用樹脂組成物に用いるスチレン系中空樹脂粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、スチレン系中空樹脂粒子を絶縁樹脂に混在させて半導体部材用樹脂組成物とする場合を想定し、半導体部材の低誘電特性を向上させるための技術について検討を行った。その結果、スチレン系中空樹脂粒子中に、エチレン性不飽和基を一定量残存させることにより、得られるスチレン系中空樹脂粒子が耐熱性に優れ、吸水率が低いことを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子は、
シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子であって、
エチレン性不飽和基残存率が1%~20%である。
【0012】
一つの実施形態においては、上記中空樹脂粒子を窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の1%熱重量減少温度が250℃以上である。
【0013】
一つの実施形態においては、上記中空樹脂粒子を40℃、95%RHの雰囲気下において96時間静置した後の水分含有率が0.5重量%以下である。
【0014】
一つの実施形態においては、上記中空樹脂粒子の平均粒子径が0.1μm~5.0μmである。
【0015】
一つの実施形態においては、上記シェル部が、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物を重合して得られる芳香族系ポリマー(P1)を含む。
【化1】
(RはHまたはCHを表し、RはH、アルキル基、またはフェニル基を表し、R-Oは炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは該オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。)
【0016】
一つの実施形態においては、上記オキシアルキレン基が、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、及びオキシブチレン基からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0017】
一つの実施形態においては、上記モノマー組成物が、芳香族系架橋性モノマー(a)を10重量%~70重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を10重量%~70重量%、及び一般式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を0.5重量%~30重量%含む。
【0018】
一つの実施形態においては、上記シェル部が、上記芳香族系ポリマー(P1)と、さらに、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル酸系ポリマー、及びスチレン-(メタ)アクリル酸系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である非架橋性ポリマー(P2)を含む。
【0019】
一つの実施形態においては、上記芳香族系架橋性モノマー(a)がジビニルベンゼンである。
【0020】
一つの実施形態においては、上記芳香族系単官能モノマー(b)がスチレン及びエチルビニルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0021】
本発明の実施形態による半導体部材は、本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によれば、耐熱性に優れ、吸水率が低い、半導体部材用樹脂組成物に用いるスチレン系中空樹脂粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(1)のTEM写真図である。
図2】実施例2で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(2)のTEM写真図である。
図3】実施例3で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(3)のTEM写真図である。
図4】実施例4で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(4)のTEM写真図である。
図5】実施例5で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(5)のTEM写真図である。
図6】実施例6で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(6)のTEM写真図である。
図7】実施例7で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(7)のTEM写真図である。
図8】実施例8で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(8)のTEM写真図である。
図9】実施例9で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(9)のTEM写真図である。
図10】実施例10で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(10)のTEM写真図である。
図11】実施例11で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(11)のTEM写真図である。
図12】実施例12で得られた半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子(12)のTEM写真図である。
図13】比較例1で得られた粒子(C1)のTEM写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0025】
本明細書において、半導体部材とは、半導体を構成する部材を意味し、例えば、半導体パッケージや半導体モジュールが挙げられる。本明細書において、半導体部材用樹脂組成物とは、半導体部材に用いる樹脂組成物を意味する。したがって、本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子は、半導体部材用樹脂組成物に用いられ、よって、半導体パッケージや半導体モジュールなどの半導体部材に好適に用いられる。このような半導体部材は、本発明の実施形態による半導体部材であり、本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子を含む。
【0026】
半導体パッケージとは、ICチップを必須構成部材として、モールド樹脂、アンダーフィル材、モールドアンダーフィル材、ダイボンド材、半導体パッケージ基板用プリプレグ、半導体パッケージ基板用金属張積層板、及び半導体パッケージ用プリント回路基板のビルドアップ材料から選ばれる少なくとも1種の部材を用いて構成されるものである。
【0027】
半導体モジュールとは、半導体パッケージを必須構成部材として、プリント回路基板用プリプレグ、プリント回路基板用金属張積層板、プリント回路基板用ビルドアップ材料、ソルダーレジスト材、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、及びプリント回路基板用接着シートから選ばれる少なくとも1種の部材を用いて構成されるものである。
【0028】
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
【0029】
≪≪中空樹脂粒子≫≫
本発明の実施形態による中空樹脂粒子は、半導体部材用樹脂組成物に用いる。半導体部材用樹脂組成物は、前述したように、半導体部材に用いる樹脂組成物である。このような樹脂組成物は、代表的には、絶縁樹脂を含む。このような絶縁樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な樹脂を採用し得る。このような絶縁樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリビスマレイミド、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、PTFE等のフッ素樹脂、シクロオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0030】
本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子は、シェル部と該シェル部により囲われた中空部分を有する中空樹脂粒子である。ここでいう中空とは、内部が樹脂以外の物質、例えば、気体や液体等で満たされている状態を意味し、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、気体で満たされている状態を意味する。
【0031】
中空部分は、1つの中空領域からなるものであってもよいし、複数の中空領域からなるものであってもよい。シェル部を構成する樹脂成分が相対的に多くなり、基材等の中空部分への浸入を防ぐ観点から、中空部分は1つの中空領域からなることが好ましい。
【0032】
中空樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm~5.0μmであり、より好ましくは0.15μm~1.0μmであり、さらに好ましくは0.2μm~0.8μmであり、特に好ましくは0.3μm~0.6μmである。中空樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。中空樹脂粒子の平均粒子径が0.1μm未満の場合、シェル部の厚みが相対的に薄くなるため、十分な強度を有する中空樹脂粒子とならないおそれがある。中空樹脂粒子の平均粒子径が5.0μmより大きい場合、懸濁重合中にモノマー成分が重合して生じるポリマーと溶剤との相分離が生じにくくなるおそれがあり、これによってシェル部の形成が困難となるおそれがある。
【0033】
本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子は、エチレン性不飽和基残存率が、好ましくは1%~20%であり、より好ましくは2%~18%であり、さらに好ましくは3%~15%であり、特に好ましくは5%~12%である。中空樹脂粒子のエチレン性不飽和基残存率が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。中空樹脂粒子のエチレン性不飽和基残存率が上記範囲を外れて大きすぎると、熱分解しやすくなり、耐熱性が低下するおそれがある。中空樹脂粒子のエチレン性不飽和基残存率が上記範囲を外れて小さすぎると、中空樹脂粒子と絶縁樹脂の界面に空隙ができやすくなり、絶縁樹脂材料の強度が低下するおそれや、絶縁樹脂材料の低吸湿性が悪化するおそれがある。
【0034】
本発明においては、半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子中に含まれるエチレン性不飽和基は、耐熱性の低下を招くおそれがある一方で、半導体部材に含まれる絶縁樹脂と反応して密着性を高める効果があることを見いだし、中空樹脂粒子中にエチレン性不飽和基を一定量残存させることにより、得られるスチレン系中空樹脂粒子が耐熱性に優れ、吸水率が低いことを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0035】
本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子は、該中空樹脂粒子を窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の1%熱重量減少温度が、好ましくは250℃以上であり、より好ましくは255℃以上であり、さらに好ましくは260℃以上であり、特に好ましくは265℃以上である。上記1%熱重量減少温度は高ければ高いほどよいが、現実的には、好ましくは300℃以下である。中空樹脂粒子を窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の1%熱重量減少温度が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。中空樹脂粒子を窒素雰囲気下において10℃/分で昇温した際の1%熱重量減少温度が上記範囲を外れて小さすぎると、中空樹脂粒子が優れた耐熱性を発現できないおそれがある。
【0036】
本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子は、該中空樹脂粒子を40℃、95%RHの雰囲気下において96時間静置した後の水分含有率が、好ましくは0.5重量%以下であり、より好ましくは0.45重量%以下であり、さらに好ましくは0.4重量%以下であり、特に好ましくは0.35重量%以下である。上記水分含有率は低ければ低いほどよく、好ましくは0重量%以上である。中空樹脂粒子を40℃、95%RHの雰囲気下において96時間静置した後の水分含有率が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。中空樹脂粒子を40℃、95%RHの雰囲気下において96時間静置した後の水分含有率が上記範囲を外れて大きすぎると、中空樹脂粒子の吸水率が高くなるおそれがある。
【0037】
≪シェル部≫
シェル部は、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物を重合して得られる芳香族系ポリマー(P1)を含む。シェル部が、このような、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物を重合して得られる芳香族系ポリマー(P1)を含むことにより、本発明の効果がより発現し得る。特に、芳香族系ポリマー(P1)を構成するモノマーとして、特定構造の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を採用することにより、本発明の効果がより発現し得る。また、芳香族系ポリマー(P1)を構成するモノマーとして、特定構造の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を採用することにより芳香族系ポリマー(P1)に備えられる極性基によって、中空樹脂粒子と絶縁樹脂との密着性が高まり得る。
【0038】
【化2】
(RはHまたはCHを表し、RはH、アルキル基、またはフェニル基を表し、R-Oは炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは該オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~100の数を表す。)
【0039】
シェル部中の芳香族系ポリマー(P1)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは60重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは80重量%~100重量%であり、特に好ましくは90重量%~100重量%である。
【0040】
<芳香族系ポリマー(P1)>
芳香族系ポリマー(P1)は、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物を重合して得られる。すなわち、芳香族系ポリマー(P1)は、芳香族系架橋性モノマー(a)由来の構造単位、芳香族系単官能モノマー(b)由来の構造単位、式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)由来の構造単位を有する。
【0041】
モノマー組成物は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、芳香族系架橋性モノマー(a)を10重量%~70重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を10重量%~70重量%、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を0.5重量%~30重量%含み、より好ましくは、芳香族系架橋性モノマー(a)を20重量%~65重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を20重量%~65重量%、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を2.0重量%~18重量%含み、さらに好ましくは、芳香族系架橋性モノマー(a)を30重量%~60重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を30重量%~60重量%、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を4.0重量%~16重量%含み、特に好ましくは、芳香族系架橋性モノマー(a)を40重量%~50重量%、芳香族系単官能モノマー(b)を40重量%~50重量%、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を6.0重量%~14重量%含む。
【0042】
本発明においては、様々な試験を行って鋭意検討したところ、上記のように、式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)をモノマー組成物に対して0.5重量%~30重量%という特定の量範囲を採用して共重合することで、エチレン性不飽和基の残存率を適切に調整し、中空樹脂粒子のエチレン性不飽和基残存率を好ましくは1%~20%の特定範囲内とすることが容易になることに着目し、これにより、エチレン性不飽和基を適切に残存させた中空樹脂粒子が、耐熱性を維持しつつ、半導体部材に含まれる絶縁樹脂と反応して密着性を高め得ることを見いだした。
【0043】
モノマー組成物は、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含む。モノマー組成物中の、芳香族系架橋性モノマー(a)と芳香族系単官能モノマー(b)と式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)の合計の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは80重量%~100重量%であり、より好ましくは85重量%~100重量%であり、さらに好ましくは90重量%~100重量%であり、特に好ましくは95重量%~100重量%である。
【0044】
モノマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)以外の、任意の適切なその他のモノマーを含んでいてもよい。その他のモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0045】
(芳香族系架橋性モノマー(a))
芳香族系架橋性モノマー(a)は、架橋性を有する芳香族系モノマーであれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な芳香族系架橋性モノマーを採用し得る。このような芳香族系架橋性モノマー(a)としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレートなどが挙げられる。本発明の効果をより一層発現させ得る点、および、反応性の点から、芳香族系架橋性モノマー(a)としては、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0046】
芳香族系架橋性モノマー(a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0047】
(芳香族系単官能モノマー(b))
芳香族系単官能モノマー(b)は、単官能の芳香族系モノマーであれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な芳香族系単官能モノマーを採用し得る。このような芳香族系単官能モノマー(b)としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、例えば、スチレン、エチルビニルベンゼン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンなどが挙げられる。本発明の効果をより一層発現させ得る点、および、反応性の点から、芳香族系単官能モノマー(b)としては、スチレン及びエチルビニルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0048】
芳香族系単官能モノマー(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0049】
((メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c))
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)は、式(1)により表される。
【化3】
【0050】
式(1)中、RはHまたはCHを表す。
【0051】
式(1)中、RはH、アルキル基、またはフェニル基を表す。
【0052】
式(1)中、R-Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。すなわち、式(1)中、Rは、炭素原子数2~18のアルキレン基を表す。
【0053】
式(1)中、R-Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2~8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基である。また、R-Oが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、及びオキシブチレン基から選ばれる少なくとも2種類以上の場合は、R-Oの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、ここでいう付加形態は、形態そのものを意味するものであり、付加反応によって得られなければならないことを意味するものではない。
【0054】
式(1)中、R-Oとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、及びオキシブチレン基(代表的には、オキシテトラメチレン基)からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0055】
式(1)中、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数(「鎖長」と称することがある)を表す。mは、1~100の数であり、好ましくは1~40の数であり、より好ましくは2~30の数であり、さらに好ましくは3~20の数であり、特に好ましくは4~18の数であり、最も好ましくは5~15の数である。mが上記範囲内にあることにより、本発明の効果がより発現し得る。
【0056】
式(1)中、R-Oが2種以上の場合、例えば、オキシエチレン基(CO)とオキシプロピレン基(CO)からなる場合、mは、それぞれのオキシアルキレン基の平均付加モル数の合計となる。具体的には、例えば、-(R-O)-が、-[(CO)(CO)]-である場合(上述の通り、付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい)、m=p+qとなる。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、例えば、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、プロポキシポリエチレングリコールメタクリレート、ブトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヘキサオキシポリエチレングリコールメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールテトラメチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノメタクリレート、モノエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートなどが挙げられる。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)としては、市販品も採用でき、例えば、日油株式会社製の商品名「ブレンマー」シリーズが採用できる。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0060】
<非架橋性ポリマー(P2)>
シェル部は、芳香族系ポリマー(P1)と、さらに、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル酸系ポリマー、及びスチレン-(メタ)アクリル酸系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である非架橋性ポリマー(P2)を含んでいてもよい。
【0061】
シェル部中の非架橋性ポリマー(P2)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0重量%~40重量%であり、より好ましくは0重量%~30重量%であり、さらに好ましくは0重量%~20重量%であり、特に好ましくは0重量%~10重量%である。
【0062】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα―オレフィンなどが挙げられる。モノマー組成物への溶解性の観点から、原料に長鎖のα-オレフィンを使用した側鎖結晶性ポリオレフィン、メタロセン触媒で製造された低分子量ポリオレフィンやオレフィンオリゴマーの使用が好ましい。
【0063】
スチレン系ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体などが挙げられる。
【0064】
(メタ)アクリル酸系ポリマーとしては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0065】
スチレン-(メタ)アクリル酸系ポリマーとしては、例えば、スチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-ブチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-プロピル(メタ)アクリレート共重合体などが挙げられる。
【0066】
≪中空樹脂粒子の比誘電率≫
中空樹脂粒子の比誘電率は、好ましくは1.0~2.5であり、より好ましくは1.0~2.4であり、さらに好ましくは1.0~2.3である。中空樹脂粒子の比誘電率が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。中空樹脂粒子の比誘電率が2.5を上回る場合、該中空樹脂粒子を含む半導体部材が優れた低誘電特性を発現できないおそれがある。
【0067】
中空樹脂粒子の比誘電率は、例えば「混合系の誘電率」(応用物理、第27巻、第8号(1958))を参考に算出することができる。分散媒と中空樹脂粒子の混合系の比誘電率をε、分散媒となる基材(例えば、ポリイミドやエポキシ等の樹脂組成物)の比誘電率をε、中空樹脂粒子の比誘電率をε、混合系中の中空樹脂粒子の体積率をφとした場合、下記式が成り立つ。すなわち、ε、ε、φを実験的に求めれば、中空樹脂粒子の比誘電率εを算出することができる。
【数1】
【0068】
なお、分散媒と中空樹脂粒子の混合系中の中空樹脂粒子の体積率φは以下のように求めることができる。
【数2】
【0069】
中空樹脂粒子の密度はピクノメーター(コーテック株式会社、TQC50mL比重瓶)と液状ポリマーであるARUFON UP―1080(東亜合成株式会社、密度1.05g/cm)を用いて実験的に求めることができる。具体的には、中空樹脂粒子の割合が10重量%となるよう、中空樹脂粒子とARUFON UP―1080を遊星攪拌脱泡機(KURABO社製、マゼルスターKK-250)を用いて脱泡攪拌し、評価用混合物を作製する。評価用混合物を容量50mLのピクノメーターに充填し、混合物で満たされたピクノメーターの重量から、空の状態のピクノメーターの重量を差し引くことで充填した評価用混合物の重量を算出する。この値から、以下式を用いて中空樹脂粒子の密度を算出することができる。
【数3】
【0070】
≪≪中空樹脂粒子の製造方法≫≫
本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で製造し得る。
【0071】
このような製造方法としては、例えば、分散工程(工程1)、重合工程(工程2)、洗浄工程(工程3)、乾燥工程(工程4)を含む。
【0072】
≪工程1:分散工程≫
工程1は、分散剤を含む水溶液に、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物と重合開始剤と沸点100℃未満の有機溶媒を含む有機混合溶液を分散させる工程である。
【0073】
水溶液中への有機混合溶液の分散は、水溶液中で有機混合溶液を液滴状で存在させることができさえすれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分散方法を採用し得る。このような分散方法としては、代表的には、ホモジナイザーを用いた分散方法であり、例えば、超音波ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。
【0074】
水溶液は、水性媒体と分散剤を含む。
【0075】
水性媒体としては、例えば、水、水と低級アルコール(メタノール、エタノール等)との混合媒体などが挙げられる。水としては、イオン交換水及び蒸留水から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0076】
分散剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分散剤を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、分散剤として界面活性剤を採用する。界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0077】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等の非反応性のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム等の反応性のアニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0078】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルトリエチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルキルジエチルアンモニウム塩、N-ポリオキシアルキレン-N,N,N-トリアルキルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0079】
両性イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル塩、亜リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。
【0080】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。
【0081】
界面活性剤の添加量は、有機混合溶液100重量部に対して、0.01重量部~1重量部が好ましい。界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0082】
水溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。
【0083】
有機混合溶液は、芳香族系架橋性モノマー(a)、芳香族系単官能モノマー(b)、及び式(1)により表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(c)を含むモノマー組成物と重合開始剤と沸点100℃未満の有機溶媒を含む。
【0084】
有機混合溶液に含まれるモノマー組成物としては、≪≪中空樹脂粒子≫≫の項目における説明をそのまま援用し得る。
【0085】
重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。
【0086】
重合開始剤は、10時間半減期温度が90℃以下であることが好ましい。このような重合開始剤を用いれば、中空樹脂粒子内に残存する重合開始剤を完全に分解することができ、例えば、中空樹脂粒子を含む半導体部材をはんだリフロー等で加熱する時に、残存する重合開始剤による樹脂の酸化劣化やガス発生を抑制することができる。
【0087】
重合開始剤は、下記式により算出される重合開始剤の分解率が98%以上となる反応温度および反応時間の組み合わせで重合することが好ましい。このような重合条件にすることで、中空樹脂粒子内に残存する重合開始剤を完全に分解することができ、例えば、中空樹脂粒子を含む半導体部材をはんだリフロー等で加熱する時に、残存する重合開始剤による樹脂の酸化劣化やガス発生を抑制することができる。
【0088】
分解率(%)=(1-exp(-kt))×100
kd=Aexp(-ΔE/RT)
【0089】
上記式中、kは熱分解速度定数を表し、tは反応時間(hr)を表し、Aは頻度因子(hr-1)を表し、ΔEは活性化エネルギー(J/mol)を表し、Rは気体定数(8.314J/mol・K)を表し、Tは反応温度(K)を表す。
【0090】
重合開始剤としては、例えば、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;などが挙げられる。
【0091】
重合開始剤の添加量は、モノマー組成物100重量部に対して、0.1~5重量部の範囲が好ましい。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0092】
沸点100℃未満の有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、などが挙げられる。
【0093】
沸点100℃未満の有機溶媒は、混合溶媒であってもよい。
【0094】
有機溶媒として沸点100℃未満の有機溶媒を用いることにより、得られる中空樹脂粒子の中空部分からの溶媒除去が容易になり、製造コストの低減が可能となる。
【0095】
沸点100℃未満の有機溶媒の添加量は、モノマー組成物100重量部に対して、20量部~250重量部が好ましい。
【0096】
有機混合溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、≪≪中空樹脂粒子≫≫の≪シェル部≫の<非架橋性ポリマー(P2)>が挙げられる。
【0097】
非架橋性ポリマー(P2)の添加量は、モノマー組成物100重量部に対して、0重量部~67重量部が好ましい。非架橋性ポリマー(P2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0098】
≪工程2:重合工程≫
工程2は、工程1で得られる分散液を加熱して懸濁重合する工程である。
【0099】
重合温度は、懸濁重合に適した温度であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合温度を採用し得る。このような重合温度としては、好ましくは30℃~80℃である。
【0100】
重合時間は、懸濁重合に適した時間であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合時間を採用し得る。このような重合時間としては、好ましくは1時間~20時間である。
【0101】
重合後に好ましく行う後加熱は、完成度の高い中空樹脂粒子を得るために好適な処理である。
【0102】
重合後に好ましく行う後加熱の温度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な温度を採用し得る。このような後加熱の温度としては、好ましくは50℃~120℃である。
【0103】
重合後に好ましく行う後加熱の時間は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な時間を採用し得る。このような後加熱の時間としては、好ましくは1時間~10時間である。
【0104】
≪工程3:洗浄工程≫
工程3は、工程2で得られたスラリーを洗浄する工程である。
【0105】
洗浄方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な洗浄方法を採用し得る。このような洗浄方法としては、例えば、(1)中空樹脂粒子を形成させた後、高速遠心機等を用いて、非常に高い遠心加速度を与えて該中空樹脂粒子を沈降させて上澄みを除去し、新たにイオン交換水または蒸留水を加え、沈降した中空樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、この操作を数回繰り返すことにより不純物を除去する方法、(2)セラミックスフィルター等を用いたクロスフロー式のろ過方法により洗浄を行うことで不純物を除去する方法、また、(3)中空樹脂粒子に対して、粒子の凝集剤となる溶媒を添加することにより、溶媒中において粒子を凝集沈降させ、フィルター等を用いて該中空樹脂粒子を分離し、洗浄溶媒により洗浄する方法、などが挙げられる。
【0106】
上記(1)の洗浄方法においては、イオン交換水または蒸留水はスラリー重量の5倍以上の量を用いて、洗浄することが好ましい。
【0107】
比重が小さい中空樹脂粒子に対しては、(2)のセラミックスフィルター等を用いクロスフロー式のろ過方法により洗浄を行うことが好ましい。
【0108】
≪工程4:乾燥工程≫
工程4は、工程3で得られた洗浄後のスラリーを乾燥する工程である。
【0109】
乾燥方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な乾燥方法を採用し得る。このような乾燥方法としては、例えば、加熱による乾燥が挙げられる。
【0110】
加熱の温度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な温度を採用し得る。このような加熱の温度としては、好ましくは50℃~120℃である。
【0111】
加熱の時間は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な時間を採用し得る。このような加熱の時間としては、好ましくは1時間~10時間である。
【実施例
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
【0113】
<平均粒子径>
動的光散乱法を利用して、中空樹脂粒子または粒子のZ平均粒子径を測定し、測定されたZ平均粒子径を得られた中空樹脂粒子または粒子の平均粒子径とした。
すなわち、まず、得られたスラリー状の中空樹脂粒子または粒子をイオン交換水で希釈し、0.1重量%に調整した水分散体にレーザー光を照射し、中空樹脂粒子または粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定した。そして、検出された中空樹脂粒子または粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により中空樹脂粒子または粒子のZ平均粒子径を求めた。
このZ平均粒子径の測定は、市販の粒子径測定装置で簡便に実施できる。以下の実施例および比較例では、粒子径測定装置(マルバーン社製ゼータサイザーナノZS)を使用してZ平均粒子径を測定した。通常、市販の粒子径測定装置は、データ解析ソフトが搭載されており、データ解析ソフトが測定データを自動的に解析することでZ平均粒子径を算出できるようになっている。
【0114】
<TEM測定:中空樹脂粒子または粒子の中空の有無と形状の観察>
乾燥粉体としての中空樹脂粒子または粒子に対し、メイワフォーシス社製「オスミウムコータNeoc-Pro」コーティング装置を用いて表面処理(10Pa、5mA、10秒)を行った。次いで、中空樹脂粒子または粒子をTEM(透過型電子顕微鏡、日立ハイテクノロジーズ社製H-7600)にて観察し、中空の有無および中空樹脂粒子または粒子の形状を確認した。この時、加速電圧は80kVとし、倍率は5000倍または1万倍として撮影した。
【0115】
<エチレン性不飽和基残存率の測定>
粒子中のエチレン性不飽和基の残存率を、JIS K 0070-1992に準拠して測定した。
200mlの三角フラスコに、実施例、比較例で製造した粒子を0.5重量部、シクロヘキサン10重量部、ウィイス試薬(0.1mol/L塩化ヨウ素・酢酸溶液)25重量部を加え、十分に振って混合した。その後、45分間放置し、粒子中に含まれるエチレン性不飽和基と塩化ヨウ素の反応を進行させた。次に、混合液に10重量%ヨウ化カリウム水溶液20重量部、水100重量部、1重量%でんぷん水溶液を0.5重量部加えて十分に振って混合し、青色に着色した混合液を作成した。青色が消えるまで0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。滴定量から、混合液の残存塩化ヨウ素量(mol)を算出した。次に、残存塩化ヨウ素量(mol)から、粒子の(A)残存エチレン性不飽和基量(mol)を算出した。また、実施例、比較例で製造した粒子0.5重量部を構成する重合体を、すべて単量体とした場合のエチレン性不飽和基量を、粒子の(B)理論全エチレン性不飽和基量(mol)とした。
下記式に基づいてエチレン性不飽和基残存率(%)を算出した。
エチレン性不飽和基残存率(%)
=[(A)残存エチレン性不飽和基量/(B)理論全エチレン性不飽和基量]×100
【0116】
<1%重量減少温度の測定>
加熱減量を、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TG/DTA6200、AST-2」示差熱熱重量同時測定装置を用いて測定した。
サンプリング方法と温度条件に関しては、以下のように行った。
白金製測定容器の底にすきまのないよう試料を10.5mg充てんして、測定用のサンプルとした。窒素ガス流量230mL/分のもと、アルミナを基準物質として加熱減量を測定した。TG/DTA曲線は、昇温速度10℃/分で30℃から500℃までサンプルを昇温させて得た。この得られた曲線から装置付属の解析ソフトを用いて、1%重量減少時の温度を算出した。
【0117】
<水分含有率の測定>
実施例、比較例で製造した粒子に対して、下記条件で吸湿処理を実施した。
試料としての粒子を、温度40℃,相対湿度95%の恒温恒湿槽の中に入れて、96時間静置した後に取り出し、温度20℃、湿度65%の環境下にて30分冷却した。冷却後、水分含有率を測定した。
水分含有率は、試料0.1gを(株)三菱化学アナリテック社製「CA-200」カールフィッシャー水分測定装置及び「VA-236S」水分気化装置にセットして測定した。測定時の陽極液、陰極液にはそれぞれ、三菱ケミカル株式会社製アクアミクロンAX、アクアミクロンCXUを使用した。測定(気化)温度は250℃とした。キャリアガスはNを用いた。キャリアガスの流量は150mL/minとした。試料の試験回数は3回とした。試料採取場所の空気のみでの水分量を2回測定し、その平均値をブランク値とした。各測定結果からブランク値を減算し、試料の重量で除して、試料の水分含有率(重量%)を求めた。試料の水分含有率(重量%)を次式で算出した。
水分含有率(重量%)
=[実測水分量(μg)-ブランク水分量(μg)]÷1000000÷試料重量(g)×100
最終結果として、3回の測定結果を平均し、試料の水分含有率(重量%)とした。
【0118】
〔実施例1〕
スチレン(St)1.15g、ジビニルベンゼン(DVB)810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、81%含有品、19%はエチルビニルベンゼン(EVB))1.85g、ヘプタン2.4g、HSクリスタ4100(側鎖結晶性ポリオレフィン、豊国製油株式会社)0.3g、ブレンマー50PEP-300(ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノメタクリレート(式(1)において、R=CH、R=H、(R-O)=[(CO)3.5(CO)2.5]、ランダム付加形態)、日油株式会社)0.3g、パーロイルL(重合開始剤、日油株式会社)0.099gを混合し、油相を作製した。
次いで、イオン交換水34gとラピゾールA-80(界面活性剤、日油株式会社)0.017gを混合し、水相を作製した。
水相に油相を加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、SONIFIER450、条件:DutyCycle=50%、OutputControl=5、処理時間3分)を用いて懸濁液を作製した。得られた懸濁液を70℃で4時間加熱することで重合を行い、中空樹脂粒子が分散したスラリーを得た。
得られたスラリーを50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いて10倍量のイオン交換水でクロスフロー洗浄し、不純物を除去した。
得られた洗浄後のスラリーを100℃にて24時間加熱することで、乾燥粉体としての中空樹脂粒子(1)を得た。得られた中空樹脂粒子(1)の平均粒子径は356nmであり、粒子密度は0.65g/cmであった。また、得られた中空樹脂粒子(1)のTEM観察結果を図1に示す。中空樹脂粒子(1)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0119】
〔実施例2〕
スチレン(St)を0.92g、ジビニルベンゼン(DVB)810を1.48g、ヘプタンを3.0g、パーロイルLを0.10gとした以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(2)を得た。得られた中空樹脂粒子(2)の平均粒子径は382nmであり、粒子密度は0.64g/cmであった。また、得られた中空樹脂粒子(2)のTEM観察結果を図2に示す。中空樹脂粒子(2)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0120】
〔実施例3〕
スチレン(St)を1.49g、ジビニルベンゼン(DVB)810を2.41g、ヘプタンを1.5g、パーロイルLを0.126gとした以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(3)を得た。得られた中空樹脂粒子(3)の平均粒子径は329nmであり、粒子密度は0.69g/cmであった。また、得られた中空樹脂粒子(3)のTEM観察結果を図3に示す。中空樹脂粒子(3)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0121】
〔実施例4〕
スチレン(St)を1.19g、ジビニルベンゼン(DVB)810を1.93g、パーロイルLを0.10g、HSクリスタ4100(側鎖結晶性ポリオレフィン、豊国製油株式会社)0.3gの代わりにポリスチレン(PS)(非架橋、重量平均分子量30万)0.18gとした以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(4)を得た。得られた中空樹脂粒子(4)の平均粒子径は390nmであり、粒子密度は0.67g/cmであった。また、得られた中空樹脂粒子(4)のTEM観察結果を図4に示す。中空樹脂粒子(4)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0122】
〔実施例5〕
ブレンマー50PEP-300を0.6gとしたことに加え、HSクリスタ4100を使用しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(5)を得た。得られた中空樹脂粒子(5)の平均粒子径は310nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(5)のTEM観察結果を図5に示す。中空樹脂粒子(5)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0123】
〔実施例6〕
ブレンマー50PEP-300(ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノメタクリレート(式(1)において、R=CH、R=H、(R-O)=[(CO)3.5(CO)2.5]、ランダム付加形態)、日油株式会社)0.3gの代わりに、ブレンマーPME-100(ポリエチレングリコールメタクリレート(式(1)において、R=CH、R=CH、(R-O)=(CO))、日油株式会社)0.3gを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(6)を得た。得られた中空樹脂粒子(6)の平均粒子径は520nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(6)のTEM観察結果を図6に示す。中空樹脂粒子(6)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0124】
〔実施例7〕
ブレンマー50PEP-300を0.3g用いる代わりに、ブレンマーPME-100を0.3g使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(7)を得た。得られた中空樹脂粒子(7)の平均粒子径は501nmであり、粒子密度は0.63g/cmであった。また、得られた中空樹脂粒子(7)のTEM観察結果を図7に示す。中空樹脂粒子(7)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0125】
〔実施例8〕
ブレンマー50PEP-300を0.3g用いる代わりに、ブレンマー55PET-800(ポリエチレングリコールテトラメチレングリコールモノメタクリレート(式(1)においてR=CH、R=H、(R-O)=[(CO)10(CO)]、ランダム付加形態)を0.3g使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(8)を得た。得られた中空樹脂粒子(8)の平均粒子径は325nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(8)のTEM観察結果を図8に示す。中空樹脂粒子(8)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0126】
〔実施例9〕
ラピゾールA-80を0.017g用いる代わりに、コータミン86W(界面活性剤、花王株式会社)0.0081gを使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(9)を得た。得られた中空樹脂粒子(9)の平均粒子径は539nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(9)のTEM観察結果を図9に示す。中空樹脂粒子(9)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0127】
〔実施例10〕
ラピゾールA-80を0.017g用いる代わりに、アデカミン4MAC-30(界面活性剤、株式会社ADEKA)0.034gを使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(10)を得た。得られた中空樹脂粒子(10)の平均粒子径は430nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(10)のTEM観察結果を図10に示す。中空樹脂粒子(10)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0128】
〔実施例11〕
ラピゾールA-80を0.017g用いる代わりに、アデカミン4MAC-30を0.0076g使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(11)を得た。得られた中空樹脂粒子(11)の平均粒子径は1270nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(11)のTEM観察結果を図11に示す。中空樹脂粒子(11)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0129】
〔実施例12〕
スチレン(St)を1.38g、ジビニルベンゼン(DVB)810を2.22g、ヘプタンの代わりにシクロヘキサンを1.5g、HSクリスタ4100を0.6g、パーロイルLを0.054g、ラピゾールA-80を0.0085g使用したこと以外は、実施例3と同様の操作を行うことで、中空樹脂粒子(12)を得た。得られた中空樹脂粒子(12)の平均粒子径は416nmであった。また、得られた中空樹脂粒子(12)のTEM観察結果を図12に示す。中空樹脂粒子(12)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0130】
〔比較例1〕
メタクリル酸メチル(MMA)1.74g、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)(共栄社化学株式会社)1.74g、トルエン2.4g、ポリスチレン(PS)(非架橋、重量平均分子量30万)0.126g、パーロイルL(重合開始剤、日油株式会社)0.104gを混合し、油相を作製した。次いで、イオン交換水34gとラピゾールA-80(界面活性剤、日油株式会社)0.034gを混合し、水相を作製した。水相に油相を加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON社、SONIFIER450、条件:DutyCycle=50%、OutputControl=5、処理時間3分)を用いて懸濁液を作製した。得られた懸濁液を70℃で4時間加熱することで重合を行い、スラリーを得た。得られたスラリーを100℃にて24時間加熱することで、乾燥粉体としての粒子(C1)を得た。得られた粒子(C1)の平均粒子径は478nmであり、粒子密度は0.614g/cmであった。また、得られた粒子(C1)のTEM観察結果を図13に示す。粒子(C1)は、シェルにより囲われた中空を持つ中空樹脂粒子であることが確認できた。配合組成や測定結果などを表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例1~12に示すように、本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子は、耐熱性に優れ、吸水率が低いことが分かった、したがって、本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子は、優れた耐熱性と低吸水率を発現でき、信頼性の高い半導体部材を提供し得る。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の実施形態による半導体部材用樹脂組成物に用いる中空樹脂粒子は、半導体部材用樹脂組成物に用いられ、したがって、半導体パッケージや半導体モジュールなどの半導体部材に好適に利用できる。
図1
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図11
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