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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ヒートシールコーティング
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/84 20060101AFI20240613BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240613BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240613BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 3/14 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240613BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20240613BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240613BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20240613BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20240613BHJP
   D21H 19/20 20060101ALI20240613BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
D21H19/84
B05D1/36 Z
B05D5/00 Z
B05D7/24 301E
B32B3/14
B32B27/00 Z
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
B32B27/30 B
B32B27/36
B65D65/42 A
C09J11/04
C09J123/08
C09J179/08
D21H19/20 A
D21H19/82
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020526486
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 US2018061468
(87)【国際公開番号】W WO2019099792
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】62/587,598
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】398031330
【氏名又は名称】アイメリーズ ユーエスエー,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】メイザニス,ポール
(72)【発明者】
【氏名】プラット,ギャレス ヴイ.
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-208637(JP,A)
【文献】米国特許第05102734(US,A)
【文献】特表2004-512391(JP,A)
【文献】特開2003-261837(JP,A)
【文献】特表2016-520671(JP,A)
【文献】特開2002-013095(JP,A)
【文献】特開平10-153399(JP,A)
【文献】特開昭56-058096(JP,A)
【文献】特開昭62-299338(JP,A)
【文献】特開2002-187760(JP,A)
【文献】特開2003-237964(JP,A)
【文献】特開平07-052944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
C09J1/00-5/10
9/00-201/10
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面及び第2の表面を有する少なくとも1つの基材と、
第1のポリマーであって、
(i)水分散性であり、
(ii)スチレンブタジエンラテックス、エチレンモノマーと不飽和カルボン酸モノマーとのポリマー、ポリエチレンテレフタレート、それらの任意の誘導体、それらの任意のコポリマー、及びそれらの任意の組み合わせから選ばれ、
(iii)前記少なくとも1つの基材の前記第1の表面を被覆してコーティングを形成する、
前記第1のポリマーと、
前記少なくとも1つの基材の前記第2の表面を部分的に被覆して不連続層を形成する、前記第1のポリマーと同じ又は異なる第2のポリマーと、
を含む物品であって、
前記第1の表面のコーティングは、
前記第1のポリマーと同じ又は異なる第3のポリマー及び鉱物質を含む内側層と、
前記第1のポリマーを含むが、前記鉱物質を有しない外側層と、
を含み、
前記第1の表面のコーティングは、前記第2の表面上の前記不連続層とヒートシールを形成することが可能である、物品。
【請求項2】
前記第1のポリマー又は前記第2のポリマーの少なくとも一方は、少なくとも2種の異なるモノマーから形成されるコポリマーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記少なくとも2種の異なるモノマーには、エチレンモノマー及び不飽和カルボン酸モノマーが含まれる、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記不飽和カルボン酸モノマーは、アクリル酸又はメタクリル酸から選択される、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記第2のポリマーは、ポリエーテルイミド又はその誘導体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記第2の表面上の前記第2のポリマーの乾燥塗工重量は、0.1g/m~3.0g/mの範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記第1の表面上のコーティングの乾燥塗工重量は、1.0g/m~9.0g/mの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記鉱物質は、フィロケイ酸塩鉱物質を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記フィロケイ酸塩鉱物質は、タルク、カオリン、マイカ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記コーティングは、該コーティングの重量基準で、10%~80%の前記第1のポリマーを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記第1の表面のコーティングは、前記内側層と前記少なくとも1つの基材の前記第1の表面との間に、セルロース又は第3のポリマーを含むプレコート層を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記第3のポリマーは、スチレン含有コポリマーを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
前記プレコート層は、鉱物質を更に含む、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
前記第2の表面の前記不連続層は、鉱物質を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
前記少なくとも1つの基材は、紙を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
第1の表面及び第2の表面を有する少なくとも1つの基材と、
第1のポリマーであって、
(i)水分散性であり、
(ii)スチレンブタジエンラテックス、エチレンモノマーと不飽和カルボン酸モノマーとのポリマー、ポリエチレンテレフタレート、それらの任意の誘導体、それらの任意のコポリマー、及びそれらの任意の組み合わせから選ばれ、
(iii)前記少なくとも1つの基材の前記第1の表面を被覆してコーティングを形成する、
前記第1のポリマーと、
前記少なくとも1つの基材の前記第2の表面を部分的に被覆して不連続層を形成する、前記第1のポリマーと同じ又は異なる第2のポリマーと、
を含む物品であって、
前記第1の表面のコーティングは、前記第2の表面上の前記不連続層とヒートシールを形成することが可能であり、
前記物品は、前記第1の表面が容器の内面であり、前記第2の表面が容器の外面である、ヒートシールされた容器である、物品。
【請求項17】
前記ヒートシールされた容器は、10℃~100℃の範囲の温度の液体を保持するように構成される、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
前記物品は、少なくとも85%のリパルプ性を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権主張]
本PCT国際出願は、2017年11月17日付けで出願された米国仮特許出願第62/587,598号の優先権の利益を主張し、その主題は、引用することによりその全体が本出願の一部をなす。
【0002】
本開示の実施の形態は包括的に、コーティング、例えばヒートシールコーティング、そのようなコーティングを含む組成物及び物品、並びにそれらの作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
水又はその他の水分に曝されることで起こり得る劣化に対して保護するために、様々なコーティングが使用されている。例えば、液体又は食品の包装に使用される紙製品はしばしば、ポリマー等の疎水性材料でコーティングされる。しかしながら、ポリマーコーティングは十分な保護をもたらさない場合がある。例えば、片方の表面にだけ施されたコーティング又はヒートシールされていないコーティングでは、容器に水分が浸透し、その強度又は安定性が損なわれる場合がある。さらに、コーティングを適用する方法は、コーティングされた表面間に相互作用をもたらし、こうして、それらの表面は共に接着又は貼着又は互いに「粘着」するため、製造が中断される場合がある。製造の効率は、高速プロセスにとって特に重要となり得る。さらに、押出されたポリエチレン又はポリエチレンテレフタレート等の幾つかの種類のポリマー材料でコーティングされた紙製品は十分にリサイクル又はリパルプすることができないため、環境に優しくない又はライフサイクルの観点から費用効率が良くない。したがって、これらの問題点の一部又は全てに対処するコーティングを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ヒートシールコーティングを備えた物品を含む。例えば、本開示は、第1の表面及び第2の表面を有する少なくとも1つの基材と、上記少なくとも1つの基材の第1の表面を被覆してコーティングを形成する水分散性の第1のポリマーと、上記少なくとも1つの基材の第2の表面を部分的に被覆して不連続層を形成する上記第1のポリマーと同じ又は異なる第2のポリマーとを含む物品であって、上記第1の表面のコーティングは、上記第2の表面上の不連続層とヒートシールを形成することが可能である、物品を含む。幾つかの例では、第1のポリマー又は第2のポリマーの少なくとも一方は、少なくとも2種の異なるモノマーから形成されるコポリマーを含み得る。少なくとも2種の異なるモノマーには、例えば、エチレンモノマー及び不飽和カルボン酸モノマーが含まれ得る。例えば、不飽和カルボン酸モノマーは、アクリル酸又はメタクリル酸から選択され得る。少なくとも1つの例では、少なくとも1つの基材は、紙を含み得る。幾つかの例では、物品は、少なくとも約85%のリパルプ性を有し得る。少なくとも1つの例では、第2のポリマーは、ポリエーテルイミド又はその誘導体を含み得る。
【0005】
本開示の幾つかの態様によれば、第2の表面上の第2のポリマーの乾燥塗工重量は、約0.1g/m~約3.0g/mの範囲であり得る。例えば、第1の表面上のコーティングの乾燥塗工重量は、約1.0g/m~約9.0g/mの範囲であり得る。
【0006】
本開示の幾つかの態様によれば、第1の表面のコーティングは、鉱物質を更に含み得る。幾つかの例では、鉱物質は、フィロケイ酸塩鉱物質を含み得る。例えば、フィロケイ酸塩鉱物質は、タルク、カオリン、マイカ、又はそれらの組み合わせを含み得る。付加的に又は代替的に、第2の表面の不連続層は、鉱物質を更に含み得る。
【0007】
幾つかの場合に、第1の表面のコーティングは、第1のポリマーと同じ又は異なる第3のポリマー及び鉱物質を含む内側層と、第1のポリマーを含むが、鉱物質を有しない外側層とを含み得る。幾つかの例では、コーティングは、コーティングの重量基準で約10%~約80%の第1のポリマーを含み得る。幾つかの例では、第1の表面のコーティングは、内側層と少なくとも1つの基材の第1の表面との間に、セルロース又は第3のポリマーを含むプレコート層を更に含み得る。幾つかの場合に、第3のポリマーは、スチレン含有コポリマーを含み得る。少なくとも1つの例では、プレコート層は、鉱物質を更に含み得る。
【0008】
本開示の幾つかの態様によれば、物品は、第1の表面が容器の内面であり、第2の表面が容器の外面である、ヒートシールされた容器であり得る。幾つかの例では、ヒートシールされた容器は、約10℃~約100℃の範囲の温度の液体を保持するように構成され得る。幾つかの場合に、物品は、少なくとも1つの基材の第1の表面が容器の外面であり、少なくとも1つの基材の第2の表面が容器の内面である、ヒートシールされた容器であり得る。
【0009】
さらに、本明細書には、物品の作製方法が開示される。例えば、該方法は、第1のポリマーを含む水性分散液を第1の表面に適用することにより基材の第1の表面上にコーティングを形成することと、第1のポリマーと同じ又は異なる第2のポリマーを含む分散液を第2の表面の一部に適用することにより基材の第2の表面上に不連続層を形成することとを含み得て、上記第1の表面のコーティングは、上記第2の表面上の不連続層とヒートシールを形成することが可能である。幾つかの場合に、第2の表面に適用される水性分散液は、有機溶剤を含み得る。幾つかの例では、基材の第2の表面に適用される水性分散液は、鉱物質を更に含み得る。少なくとも1つの例では、基材は、紙を含み得る。幾つかの場合に、該方法は、コーティングの一部を不連続層の一部にヒートシールすることを更に含み得る。
【0010】
本開示の幾つかの態様によれば、第1のポリマー又は第2のポリマーの少なくとも一方は、少なくとも2種の異なるモノマーから形成され得る。幾つかの例では、少なくとも2種の異なるモノマーには、エチレンモノマー及び不飽和カルボン酸モノマーが含まれる。幾つかの例では、第2の表面上の第2のポリマーの乾燥塗工重量は、0.1g/m~3.0g/mの範囲であり得る。
【0011】
本開示の幾つかの態様によれば、第1の表面に適用される水性分散液は、鉱物質を更に含み得る。幾つかの例では、第1の表面上でのコーティングの形成は、第1のポリマー及び鉱物質を含む第1の水性分散液を適用して内側層を形成することと、上記内側層に、第1のポリマーを含むが、鉱物質を有しない第2の水性分散液を適用して外側層を形成することとを含み得る。幾つかの場合に、第1の表面上でのコーティングの形成は、第1の水性分散液の適用前に、第1のポリマーとは異なる第3のポリマーを含む第3の水性分散液を適用してプレコート層を形成することを更に含み得て、こうして、上記プレコート層は、基材の第1の表面と内側層との間にある。幾つかの例では、第3のポリマーは、セルロース又はスチレン含有コポリマーを含み得る。少なくとも1つの例では、第3の水性分散液は、鉱物質を更に含み得る。
【0012】
幾つかの例では、鉱物質は、フィロケイ酸塩鉱物質を含み得る。例えば、鉱物質は、タルク、カオリン、マイカ、又はそれらの組み合わせを含み得る。幾つかの場合に、コーティングは、コーティングの重量基準で約10%~約80%の第1のポリマーを含み得る。
【0013】
本開示の実施の形態及び様々な態様を以下の詳細な説明及び添付の図面に示す。図面に示される様々な特徴は、縮尺通りに描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは、本開示の幾つかの態様によるコーティングを備えた例示的なカップを示す図であり、カップの斜視図を示す図である。
図1B図1Bは、本開示の幾つかの態様によるコーティングを備えた例示的なカップを示す図であり、ヒートシールされたコーティングを備えたカップの底部及び側面の部分の断面を示す図である。
図1C図1Cは、本開示の幾つかの態様によるコーティングを備えた例示的なカップを示す図であり、ヒートシールされたコーティングを備えたカップの側面の断面を示す図である。
図2】本開示の幾つかの態様によるコーティングの例示的な層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の特定の態様を、以下でより詳細に記載する。引用することにより本出願の一部をなす用語及び/又は定義と矛盾する場合には、本明細書に示される用語及び定義を優先する。
【0016】
本明細書で使用される場合に、用語「含む("comprises," "comprising,")」、又はこれらの他のいかなる変形語も、非排他的な包括を範囲に含むものと解釈されるため、要素の列挙を含むプロセス、方法、組成物、物品、又は装置は、これらの要素だけを含むものではなく、そのようなプロセス、方法、組成物、物品、又は装置に表現上列挙されていない他の要素又はそれらに固有の要素も含み得る。用語「例示的」は、「理想的」ではなく「例」の意味で使用される。
【0017】
本明細書で使用される場合に、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈に特段の記載がない限り、複数形の指示対象を含む。用語「ほぼ」及び「約」は、参照された数又は値とほとんど同じであることを指す。本明細書で使用される場合に、用語「ほぼ」及び「約」は、具体的な量又は値の±5%を含むと理解されるべきである。
【0018】
本開示は、大量の水性液体及び水の結露に対して保護するバリアとして機能するように1種以上の材料でコーティングされた物品、例えば紙製品を含む。本明細書で使用される「コーティングされた」及び「コーティングする」という用語は、広く解釈されるべきであり、例えば、表面の均一な被覆、又は基材の全表面若しくは表面領域を被覆することに限定されない。基材の表面がコーティングを含む場合に、その表面は、コーティングによって完全に又は部分的にのみ被覆されていてもよい。1つ以上のコーティングは、物品内に収容される熱い物質及び/又は冷たい物質、例えば熱い液体及び/又は冷たい液体に対する水バリア(water barrier)を与え得る。
【0019】
本明細書の物品は、例えば、本開示の幾つかの態様で、物品の内面及び外面(又はその逆)に相当し得る第1の表面及び第2の表面を有する基材を含み得る。幾つかの例では、物品は、第1の表面を被覆してコーティングを形成する第1のポリマーと、基材の第2の表面を部分的にのみ被覆して、例えば基材の一部が未被覆のままである不連続層を形成する第2のポリマーとを含み得る。第1の表面及び第2の表面上の1つ以上のコーティングは、ヒートシールを形成することが可能であり得る。
【0020】
また、本明細書には、そのような物品の作製方法が開示される。幾つかの例では、該方法は、分散液、例えば水性分散液及び/又は非水性分散液を基材の1つ以上の表面に適用して1つ以上のコーティングを形成することを含み得る。分散液は、鉱物質を有する又は有しない1種以上のポリマーを含み得る。本明細書の方法は、基材の1つ以上の表面を共にヒートシールすることを更に含み得る。
【0021】
本開示による物品は、1つ以上のコーティングを有する少なくとも1つの基材を含み得る。各基材は、それぞれコーティングを含む1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれより多くの表面を含み得る。例えば、基材は、第1の表面と第1の表面の反対側の第2の表面とを含み得て、その際、第1の表面全体、第2の表面全体、又はそれらの一部は、それぞれのコーティングにより被覆されている。本開示の幾つかの態様では、物品は、共に連結され得る2つ以上の基材を含み得る。例えば、2つ以上の基材は、相補的なコーティングされた表面を介して共にヒートシールされて、物品が形成され得る。
【0022】
本明細書の基材は、セルロース系材料を含み得る。そのようなセルロース系ベースの基材には、紙が含まれ得る。「紙」という用語は、本明細書で使用される場合、板紙製品、白ボール(white-lined board)、ライナーボード及び厚紙(cardboard)等の板紙を含む全ての形態の紙を意味すると理解されるものとする。紙は、新聞印刷用紙、非塗工砕木紙(uncoated groundwood)、塗工砕木紙(coated groundwood)、塗工上質紙、非塗工上質紙、包装紙、産業用紙、中芯紙、筆記用紙、タイピング用紙、写真品質紙又は壁紙も含み得る。セルロース系ベースの基材は、1つ以上のウェブ、例えば繊維のブレンドで形成された単層又は多層のペーパーウェブで形成され得る。他のタイプの基材も使用することができ、これにはポリマー基材、金属ベースの基材、及びテキスタイルが含まれる。金属ベースの基材の例としては、アルミホイル、金属蒸着ポリマー膜、金属蒸着紙、及びAlOx又はSiOx塗工ポリマー膜が挙げられる。ポリマー基材の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリオレフィン、例えば二軸配向ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、二軸配向ポリプロピレン、キャストポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、例えば二軸配向ポリアミド及びナイロン、並びにポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0023】
上述のように、1つ以上の基材の1つ以上の表面は、1つ以上の表面を完全に被覆する
又は部分的にのみ被覆するコーティングを含み得る。各々のコーティングは、1種の材料又は材料の組み合わせの1層以上の層を含み得る。幾つかの例では、物品は、基材と基材の第1の表面を被覆する1層以上の層を含むコーティングとを含み得る。付加的に又は代替的に、物品は、基材の第2の表面を被覆する1層以上の層を含む別のコーティングを含み得る。
【0024】
本明細書のコーティングは、水バリア、すなわち、水及び含水物質/水性物質に対するバリアとして機能することで、例えば、基材の完全性及び/又は物品の完全性を損なう可能性のある液体又は他の水分から基材を保護することができる。コーティングは、物品の様々な部分を共に接着させるため、及び/又は物品の継ぎ目若しくは接合部に沿った適切な水バリアを保持するようにシール可能、例えばヒートシール可能であり得る。本明細書のコーティングに適した材料には、限定されるものではないが、ポリマー(コポリマー、ターポリマー、テトラポリマー等を含む)、多糖材料、及び鉱物質が含まれる。
【0025】
本開示によるコーティングは、単一のポリマー又はポリマーの組み合わせを含み得る。幾つかの例では、コーティングは、ポリマー材料を一切含まない少なくとも1層の層を含み得る。
【0026】
本開示の幾つかの態様によれば、ポリマーの1種以上は水分散性であり得る。すなわち、水分散性ポリマーは、例えば、界面活性剤等の分散剤を使用することなく、水又は他の水性担体へと分散させることが可能であり得る。付加的に又は代替的に、水性担体を水分散性ポリマーに加えることで、安定的な分散液を形成することができる。そのような安定的な分散液は、室温で少なくとも1ヶ月間の貯蔵安定性を有し得る。水分散性ポリマーは、水分散性を付与する非イオン性官能基又はアニオン性官能基を含み得る。幾つかの場合に、水分散性ポリマーには、水溶性ポリマーも含まれ得る。水分散性ポリマーの例としては、スチレンポリマー(例えば、スチレン含有ポリマー又はスチレンベースのポリマー、例えばスチレンブタジエン又はスチレンアクリルラテックス)、エチレンモノマーと不飽和カルボン酸モノマーとのポリマー(例えば、エチレンアクリル酸コポリマー)、ポリエチレンテレフタレート、それらの任意の誘導体、それらの任意のコポリマー、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。少なくとも1つの例では、水分散性ポリマーは、エチレンアクリル酸又はそれらの誘導体を含む。
【0027】
本明細書のコーティングで使用され得る他の例示的なポリマーは、ポリエーテルイミド及びその誘導体であり、これらは、任意に実質的に純粋形で適用され、又は適用のために有機溶剤等の適切な溶剤中に分散され得る。
【0028】
幾つかの場合に、1種以上のポリマーは、2種以上のモノマー、例えば、2種、3種、4種、又はそれより多種の異なるモノマーから形成され得る。例えば、ポリマーは、2種の異なるモノマーを含む(例えば、それらのモノマーから形成される)コポリマーであり得る。別の例では、ポリマーは、3種の異なるモノマーを含む(例えば、それらのモノマーから形成される)ターポリマーであり得る。別の例では、ポリマーは、4種の異なるモノマーを含む(例えば、それらのモノマーから形成される)テトラポリマーであり得る。幾つかの場合に、ポリマーは、イオノマー、例えば電気的に中性な繰返単位及びイオン化される単位の部分の両方の繰返単位を含むポリマーを含み得る。少なくとも1つの例では、ポリマーは、アルキレンモノマー及び不飽和酸モノマーを含む。アルキレンモノマーの例としては、エチレンモノマー(例えばエタン)、プロピレンモノマー(例えばプロペン)、ブチレンモノマー(例えばブタン)、ペンチレンモノマー(例えばペンテン)、ヘキシレンモノマー(例えばヘキサン)、ヘプチレンモノマー(例えばヘプタン)、オクチレンモノマー(例えばヘプテン)、スチレンモノマー、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。不飽和酸モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、ブロモアクリル酸モノマー、エチルアクリル酸モノマー、プロピルアクリル酸モノマー等)、イタコン酸モノマー、マレイン酸水素メチルモノマー、マレイン酸モノマー、テレフタル酸モノマー、エチレン性不飽和酸、それらの塩、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。不飽和酸モノマーが不飽和酸の塩を含む場合、その塩は、揮発性アルカリ(例えば、アンモニア及びアミノメチルプロパノール等)に由来する塩、及びカルボン酸塩(例えば、水酸化カリウムのカルボン酸塩)を含み得る。少なくとも1つの例では、ポリマーは、スチレン含有ポリマー若しくはスチレンベースのポリマー、例えばスチレンブタジエン、又はそれらの誘導体を含み得る。
【0029】
本明細書で使用することができるポリマーの例としては、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/メタクリル酸コポリマー、エチレン/イタコン酸コポリマー、エチレン/マレイン酸水素メチルコポリマー、エチレン/マレイン酸コポリマー、エチレン/アクリル酸/メタクリル酸メチルターポリマー、エチレン/アクリル酸/アクリル酸エチルターポリマー、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸エチルターポリマー、エチレン/イタコン酸/メタクリル酸メチルターポリマー、エチレン/マレイン酸水素メチル/アクリル酸エチルターポリマー、エチレン/アクリル酸/酢酸ビニルターポリマー(00は、このターポリマーの外面を形成する第1のコーティング117を有する基材116により形成される)、エチレン/プロピレン/アクリル酸ターポリマー、エチレン/アクリルアミド/アクリル酸ターポリマー、エチレン/スチレン/アクリル酸ターポリマー、エチレン/メタクリル酸/アクリロニトリルターポリマー、エチレン/フマル酸/ビニルメチルエーテルターポリマー、エチレン/塩化ビニル/アクリル酸ターポリマー、エチレン/塩化ビニリデン/アクリル酸ターポリマー、ポリエチレン/アクリル酸グラフトコポリマー、ポリエチレン/メタクリル酸グラフトコポリマー、重合エチレン/プロピレン/アクリル酸グラフトターポリマー、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本開示の幾つかの態様によれば、1つ以上のコーティングは、エチレン及び不飽和カルボン酸の少なくとも1種のコポリマーを含み得る。1種以上の不飽和カルボン酸モノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの組み合わせを含み得る。エチレン及び不飽和カルボン酸のコポリマーは、コーティングの重量基準で約1重量%~約50重量%の不飽和カルボン酸、例えば、約5%~約50%、約5%~約30%、約10%~約40%、又は約10%~約30%の不飽和カルボン酸を含み得る。少なくとも1つの例では、エチレン及び不飽和カルボン酸のコポリマーは、コーティングの重量基準で約5%~約30%の不飽和カルボン酸を含み得る。幾つかの例では、ポリマーは、エチレンアクリル酸コポリマー、例えばエチレンモノマー(CH=CH)及びアクリル酸モノマー(CH=CH-COH)を含むコポリマーであり得る。
【0031】
本明細書のコーティングのポリマーは、例えば、ヒートシール性をもたらす及び/又はコーティングの製造を容易にするために望ましい融点を有し得る。例えば、ポリマーを含むコーティングは、ポリマーの融点以上に加熱した場合に共にヒートシールされ得る。幾つかの例では、ポリマーは、約50℃~約200℃、例えば、約70℃~約120℃、約80℃~約100℃、約120℃~約180℃、又は約140℃~約160℃の範囲の融点を有し得る。少なくとも1つの例では、ポリマーは、約70℃~約120℃の範囲の融点を有し得る。
【0032】
本明細書のコーティングのポリマーは、1個以上の酸基を含み得る。酸基の一部又は全ては中和されていてもよい。例えば、ポリマー上の酸基の少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%が中和されていてもよい。幾つかの場合に、ポリマー上の酸基の約10%~約100%、約20%~約80%、約30%~約70%、約40%~約60%、約30%~約50%、又は約50%~約70%が中和されていてもよい。酸基の中和により、水分散が補助され得る。幾つかの例では、酸基は過剰中和されていてもよく、例えば、ポリマーに加えられる中和塩基の量は、ポリマーの完全な中和に必要な化学量論的量を上回る。
【0033】
ポリマーにおける酸基は、1種以上の中和剤により中和され得る。例示的な中和剤には、塩(例えば、アンモニウム塩又はアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩又はカリウム塩)、有機アミン、水酸化物塩(例えば、水酸化アンモニウム又はアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)が含まれる。中和剤として水酸化アンモニウムが使用される場合に、乾燥時にアンモニアが放出され得ることから、コーティング中には最少量の塩しか残らない。これは被膜の耐水性を改善し得る。中和剤としてアルカリ金属塩が使用される場合に、ポリマーと共にイオノマーが形成され得る。これは被膜の結晶性及びコーティングのバリア特性を改善し得る。
【0034】
本明細書のコーティングは、それぞれのコーティングの全重量に対して、約0.1重量%~100重量%の1種以上のポリマーを含み得る。例えば、コーティング(1層として又は複層で)中には、コーティングの重量基準で約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、又は約20%~約40%の範囲の量で、1種以上のポリマーが存在し得る。幾つかの例では、コーティング中には、コーティングの重量基準で10重量%未満、例えば、5%未満の量で、1種以上のポリマーが存在し得る。幾つかの例では、コーティング中には、コーティングの重量基準で80重量%より多く、例えば90%より多く、又は95%より多くの量で、ポリマーが存在し得る。
【0035】
ポリマーに加えて又はポリマーに代えて、本明細書のコーティングは、1種の多糖材料を含み得る。例えば、コーティングは、セルロースを含み得る。幾つかの場合に、セルロースは、フィブリル化、例えばミクロフィブリル化又はナノフィブリル化されていてもよい。本明細書のコーティングは、それぞれのコーティングの全重量に対して、約0.1重量%~100重量%の1種以上の多糖材料を含み得る。例えば、コーティング(1層として又は複層で)中には、コーティングの重量基準で約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、又は約20%~約40%の範囲の量で、1種以上の多糖材料が存在し得る。幾つかの例では、コーティング中には、コーティングの重量基準で10%未満、例えば5%未満の量で、1種以上の多糖材料が存在し得る。幾つかの例では、コーティング中には、コーティングの重量基準で80重量%より多く、例えば90%より多く、又は95%より多くの量で、1種以上の多糖材料が存在し得る。
【0036】
本明細書に開示されるコーティングは、1種以上の鉱物質を含み得る。幾つかの例では、1種以上の鉱物質は、自然粘土又は合成粘土を含み得る又はそれらから誘導され得る。幾つかの例では、1種以上の鉱物質は、フィロケイ酸塩鉱物質を含み得る。鉱物質は、コーティングに適した形状係数を有し得る。本明細書で使用される場合に、形状係数は、様々なサイズ及び形状の粒子の集団についての平均粒子径対粒子厚の比率の平均値(重量平均基準)の尺度を指す。形状係数は、米国特許第5,576,617号に記載される電気伝導率法及び装置を使用して測定され得る。この方法では、完全に分散された粒子の水性懸濁液が細長い管を貫流するときに該水性分散液の電気伝導率が測定される。電気伝導率の測定は、(a)管の長手方向軸線に沿って互いに分離された一対の電極と、(b)管の横方向幅にわたって互いに分離された一対の電極との間で行われる。粒状材料の形状係数は、これらの2つの伝導率の測定値の間の差から決定される。形状係数が高いほど一般的により扁平な材料であると説明される。鉱物質は、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、又は少なくとも約200の形状係数を有し得る。幾つかの場合に、鉱物質は、約10~約200、例えば、約20~約200、約20~約100、約40~約100、約50~約80、約50~約60、又は約40~約60の範囲の形状係数を有し得る。
【0037】
本明細書のコーティング中に含まれ得る例示的な鉱物質には、限定されるものではないが、カオリン、メタカオリン、タルク、マイカ、クロライト、ピロフィライト、サーペンティン、及びそれらの組み合わせが含まれる。幾つかの例では、コーティング又はコーティングの層は、1種のみの鉱物質、例えばタルク、カオリン、又はマイカを含み得る。代替的に、コーティング又はコーティングの層は、2種以上の鉱物質の組み合わせ(例えば、混合物)を含み得る。コーティングの異なる層は、異なる鉱物質又は鉱物質の組み合わせを含み得る。鉱物質の混合物を含む層又はコーティングの場合に、2種以上の鉱物質は、一緒にミル粉砕又は粉砕されていてもよい。
【0038】
本開示の幾つかの態様によれば、1つ以上のコーティングは、タルクを含み得る。タルクは、巨視的結晶タルク、微結晶タルク、又はそれらの組み合わせであり得る。タルクは、天然タルク、合成タルク、又はそれらの混合物であり得る。天然タルクは、天然起源、例えば、天然タルク鉱床から得られたタルクを含み得る。タルクは、例えば、薄片の積層体として整列された式SiMg10(OH)の水和ケイ酸マグネシウム、及び/又はクロライト(水和ケイ酸マグネシウムアルミニウム)を含み得る。任意に、タルクは、他の鉱物質、例えばドロマイトを付随し得る。
【0039】
本開示の幾つかの態様によれば、1つ以上のコーティングは、カオリン及び/又はカオリナイトを含み得る。カオリンは、加工形態又は非加工形態で使用することができ、天然源、例えば天然カオリン粘土鉱床から得ることができる。カオリンは、カオリンの重量基準で約50重量%~約100重量%、例えば、約50%~約95%、約50%~約90%、約70%~約100%、約70%~約90%、又は約80%~約100%のカオリナイト(AlSi(OH))を含有し得る。
【0040】
本明細書の鉱物質は、加工されていても又は加工されていなくてもよい。幾つかの例では、1種以上の鉱物質は、処理又は加工されておらず、例えば、1つ以上のコーティングへと導入する前に、天然の固体の形態のままである。本開示の幾つかの態様では、鉱物質又は鉱物質の組み合わせは、1つ以上のコーティングへと導入する前に、例えば物理的処理及び/又は化学的処理により加工され得る。例えば1種以上の鉱物質は、例えば亜ジチオン酸ナトリウム等の還元性漂白剤を用いて漂白され得る。幾つかの例では、1種以上の鉱物質を、例えば凝析技術、浮選技術、又は磁気分離技術によって処理して、不純物を分離することができる。さらに、例えば1種以上の鉱物質は焼成され得る。幾つかの場合に、1種以上の鉱物質は、焼成タルク、焼成カオリン、又はそれらの組み合わせを含み得る。幾つかの場合に、1種以上の鉱物質は部分的に焼成され得る。例えば、1種以上の鉱物質は部分的に焼成されたタルク又は部分的に焼成されたカオリン(例えば、メタカオリン)を含み得る。
【0041】
幾つかの例では、鉱物質は1つ以上の細砕工程、例えば、粉砕又はミル粉砕によって加工され得る。粗鉱物質の軽い細砕を使用して、その適切な層間剥離を起こすことができる。細砕は、プラスチック(例えば、ナイロン)のビーズ又は細粒、砂、又はセラミック製の粉砕助剤若しくはミル粉砕助剤を使用することができる。鉱物質は、既知の粒度分級方法、例えば、篩別及び遠心分離(又はその両方)により処理することで、所望の粒度分布を有する粒子を得ることができる。
【0042】
鉱物質は、1つ以上のコーティングに適した粒度分布を有し得る。例えば、鉱物質は、約0.1μm~約10μm、例えば、約0.5μm~約7.5μm、約0.5μm~約5μm、約1.0μm~約3.5μm、約2.0μm超~約3.5μm、又は約2.2μm~約3.5μmのd50を有し得る。鉱物質は、約10μm未満、例えば、約8μm未満、約6μm未満、又は約5μm未満のd95を有し得る。鉱物質は、約20μm未満、例えば、約15μm未満、約10μm未満、約8μm未満、約6μm未満、又は約5μm未満のd98を有し得る。
【0043】
本明細書に記載される鉱物質の粒度分布は、Micromeritics Instruments Corporation社(米国、ジョージア州、ノークロス)によって供給されるSedigraph 5100装置を使用して、水性媒体中に完全に分散された状態の鉱物質を沈降させることによって測定され得る。そのような装置は、サイズ(「等価球直径」(e.s.d)と呼ばれる)が所与のe.s.d値よりも小さい粒子の累積重量パーセントの測定及びプロットを提供し得る。平均粒子サイズd50は、粒子の50重量%がそのd50値未満の等価球直径を有して存在する粒子のe.s.dのこのようにして測定された値である。d95及びd98は、粒子のそれぞれ95重量%及び98重量%がそのd95値又はd98値未満の等価球直径を有して存在する粒子のe.s.dのこのようにして測定された値である。
【0044】
コーティング中には、コーティングの乾燥成分の重量基準で約0.1%~約100%、例えば、約10%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、又は約60%~約90%の範囲の量で、鉱物質が存在し得る。1つの例では、コーティング中の鉱物質の量は、コーティングの乾燥成分の重量基準で約40%~約60%であり得る。別の例では、コーティング中の鉱物質の量は、約65%であり得る。幾つかの例では、コーティング中に存在する鉱物質の量は、コーティングの乾燥成分の重量基準で5%未満、例えば、2%未満、1%未満、又は0.1%未満であり得る。
【0045】
コーティングは、1つ以上の添加剤、例えば界面活性剤、接着促進剤、希釈剤、架橋剤、保水助剤、粘度調整剤、増粘剤、滑沢/カレンダリング助剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤(antifoamers/defoamers)、乾燥又は湿潤ピック改善添加剤、乾燥又は湿潤ラブ改善及び/又は耐摩耗添加剤、グロスインクホールドアウト(gloss-ink hold-out)添加剤、光沢剤及び/又は蛍光増白剤、染料、殺生物剤/腐敗抑制剤、レベリング及び平滑化助剤、耐油脂添加剤、耐水添加剤、顔料、並びにそれらの任意の組み合わせを更に含み得る。
【0046】
基材の表面は、1種以上の材料の1層以上の層を含むコーティングにより被覆され得る。本開示の幾つかの態様によれば、基材の表面は、1層、2層、3層、4層、5層、6層、7層、8層、9層、10層、又はそれより多層を含むコーティングにより被覆され得る。基材の一部又は全ての表面は、コーティングにより部分的に又は完全に被覆され得る。幾つかの例では、基材は、少なくとも2層又は少なくとも3層のコーティング層により被覆された一方の表面と少なくとも1層又は少なくとも2層のコーティング層により被覆されたもう一方の表面との2つの表面を有し得る。或る特定の場合に、基材の1つ以上の表面は、コーティングにより一切被覆されていない。
【0047】
コーティングは、物品を連続的に被覆する1層以上の層を含み得る。代替的に、そして付加的に、コーティングは、物品を不連続的に被覆して、例えば、表面の部分的又は不完全な被覆をもたらす1層以上の層を含み得る。本開示の幾つかの態様によれば、コーティングの1層以上の層は鉱物質を含み得ず、一方で、他の層は1種以上の鉱物質を含み得る。少なくとも1つの例では、基材は、鉱物質を一切含まない1層以上の層を含むコーティングを有し得る。幾つかの例では、1つ以上のコーティングは、1種以上の鉱物質を含む1層以上の層を含み得る。幾つかの場合に、コーティング中又はコーティングの層中の1種以上の鉱物質の量は、コーティング又は層の重量基準で約0.1%~約100%、例えば、コーティング又はコーティングの層の全量の重量基準で約0.1%~約10%、約1%~約20%、約10%~約30%、約20%~約40%、約30%~約50%、約40%~約60%、約50%~約70%、約60%~約80%、約70%~約90%、又は約80%~約100%であり得る。
【0048】
幾つかの例では、本明細書のコーティングは、第1のポリマー及び第1の鉱物質を含む第1の層と、第1のポリマーと同じ又は異なっていてもよい第2のポリマーを含む第2の層とを含み得る。幾つかの場合に、第2の層は、第1の鉱物質と同じ又は異なっていてもよい第2の鉱物質を含み得る。第2のコーティング中の第2の鉱物質の量は、第1のコーティング中の第1の鉱物質の量の重量基準で、約90重量%未満、例えば、約80%未満、約60%未満、約40%未満、約20%未満、約10%未満、又は約5%未満、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%であり得る。幾つかの例では、第2の層は鉱物質を含まない。本開示の幾つかの態様によれば、第1の層は内側層であってもよく、第2の層は基材の同じ表面上の(内側層に対する)外側層であってもよい。
【0049】
代替的に、第1の層及び第2の層は基材の異なる表面上にある。例えば、物品が容器である場合に、第1の層は内面上のコーティング中に含まれていてもよく、第2の層は容器の外面上のコーティング中に含まれていてもよく、任意にそれぞれ1つ以上の追加の層を有する。
【0050】
本明細書のコーティングは1層以上のプレコート層を含み得る。1層以上のプレコート層は(例えば、基材表面付近を含む)基材表面と、物品の表面を形成する最外コーティング層との間に存在し得る。1層以上のプレコート層は連続的であってもよく、その際、例えば、プレコート層が基材表面を完全に被覆している。代替的に、1層以上のプレコート層は不連続的であってもよく、例えば、基材表面の不完全な被覆をもたらす。幾つかの例では、物品は、基材表面と直接的に接触してプレコート層を含み得る。これらの場合に、プレコート層は表面上に置かれ得る。代替的に又は付加的に、プレコート層の少なくとも一部は、基材の厚さへと或る距離で、例えば、基材の厚さの約0.1%~100%、例えば、約10%~50%、約40%~約80%、約50%~約90%、又は約60%~約100%へと浸透し得る。
【0051】
1層以上のプレコート層は、コーティングの他の層中の1種以上の材料と異なる又は同じであってもよい1種以上のポリマーを含み得る。付加的に又は代替的に、1層以上のプレコート層は、セルロース等の1種以上の多糖材料を含み得る。1層以上のプレコート層は、コーティングの他の層中の鉱物質と異なる又は同じであってもよい1種以上の鉱物質を更に含み得る。1つの例では、プレコート層は、スチレンポリマー(例えば、スチレンブタジエンコポリマー)及びカオリン、例えば、プレコート層の重量基準で50重量%のカオリン及び50重量%のスチレンブタジエンを含み得る。
【0052】
本明細書のコーティングは、所望の乾燥塗工重量を有することで、例えば、十分なバリアを提供することができる。幾つかの例では、コーティングは、約0.1グラム毎平方メートル(g/m)~約3.0g/m、例えば、約0.5g/m~約3.0g/m、約0.5g/m~約2.0g/m、約0.5g/m~約1.0g/m、約1.0g/m~約3.0g/m、又は約1.0g/m~約2.0g/mの乾燥塗工重量を有し得る。幾つかの場合に、本明細書のコーティングは、少なくとも約0.1g/m、少なくとも約0.5g/m、少なくとも約1.0g/mで、かつ、最大約3.0g/m又は約2.0g/m又は約1.0g/mの乾燥塗工重量を有し得る。幾つかの場合に、本明細書のコーティングは、約0.5g/m、約0.8g/m、約1.0g/m、約1.2g/m、約1.4g/m、約1.6g/m、約1.8g/m、約2.0g/m、約2.2g/m、約2.4g/m、約2.6g/m、約2.8g/m、又は約3.0g/mの乾燥塗工重量を有し得る。幾つかの例では、そのようなコーティングは、基材の表面を部分的にのみ被覆し得る。例えば、コーティングは、不連続的であり得る。他の例では、コーティングは、約1.0g/m~約10.0g/m、例えば約1.0g/m~約9.0g/m、約3.0g/m~約8.0g/m、約3.0g/m~約6.0g/m、約5.0g/m~約8.0g/m、又は約4.0g/m~約6.0g/mの範囲の乾燥塗工重量を有し得る。幾つかの場合に、本明細書のコーティングは、少なくとも約1.0g/m又は少なくとも約3.0g/m又は少なくとも約4.0g/m又は少なくとも約5.0g/mで、かつ、最大約6.0g/m又は約8.0g/m又は約9.0g/m又は約10.0g/mの乾燥塗工重量を有し得る。幾つかの例では、そのようなコーティングは、基材の表面の少なくとも一部、例えば全体を被覆し得る。基材の異なる表面は、異なる量のコーティング(異なる乾燥塗工重量)を有し得る。
【0053】
本明細書のコーティングは、所望の平均厚さを有し得る。例えば、コーティングは、約0.1μm~約10.0μm、例えば約1.0μm~約10.0μm、約2.0μm~約9.0μm、約4.0μm~約8.0μm、又は約5.0μm~約7.0μmの範囲の厚さを有し得る。
【0054】
コーティングは、コーティングされた基材にバリア、例えば水性バリア(aqueous barrier)及び/又はガスバリアを与える特徴を有し得る。これらの場合に、コーティングは、コーティングを通じた気体、蒸気及び/又は液体の透過を低減又は防止し得る。例えば、コーティングは、コーティングを通じた水溶液(例えば、水、水を基礎とする食品、水を基礎とする飲料)又は水分の透過を低減又は防止し得る。
【0055】
本明細書のコーティングは、所望の吸水能力を有し得る。コーティングの吸水能力は、試料の吸水度(単位面積当たりの水の重量)を指し得るコッブ値により測定され得る。幾つかの例では、コーティングのコッブ値は、以下の手順により決定され得る:1)試料の重さを量り、2)試料を容器に入れ、3)容器を水で満たし、4)或る期間、例えば30分間待ち、5)水を注ぎ出し、6)試料の重さを量る。その際、コッブ値は、試料の最終重量から試料の初期重量を引いた後に、水により覆われた試料の面積により割ることによって計算される。幾つかの例では、コーティングは、約30g/m未満、約25g/m未満、約20g/m未満、約10g/m未満、約5g/m未満、又は約2g/m未満のコッブ値を有し得る。幾つかの場合に、コーティングのコッブ値は、TAPPI T441規格に従って1分間の持続期間で測定され得る。
【0056】
本開示の幾つかの態様によれば、コーティングは、或る特定の温度範囲内で水性バリアとして機能するように構成され得る。例えば、物品のコーティングは、温かい物質、熱い物質及び/又は室温の物質、例えば約10℃~約100℃、例えば約20℃~約100℃、約30℃~約100℃、約50℃~約100℃、約70℃~約100℃、又は約80℃~約100℃の範囲の温度の物質に対してバリアとして機能するように構成され得る。そのような場合に、コーティングは、そのような温度で物品の内側に収容される物質、例えば液体に対して適切なバリアを与え得る。
【0057】
本明細書のコーティングされた基材及びそのようなコーティングされた基材を含む物品は、リサイクル可能であり得る。基材が紙を含む場合に、物品は、部分的に又は完全にリパルプされ得る。幾つかの例では、本明細書に開示される物品の重量の約50%~約100%、例えば、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約85%~約95%、約90%~約99%、少なくとも約85%、少なくとも約87%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%をリサイクル(例えば、リパルプ)することができる。リサイクル又はリパルプされ得る物品のパーセントは、Fiber Box AssociationによるVoluntary Standard For Repulping and Recycling Corrugated Fiberboard Treated to Improve Its Performance in the Presence of Water and Water Vapor (Rev. August 15, 2013)に記載される方法によって試験され得る。幾つかの例では、リパルプされ得る物品のパーセントは、AMC Maelstomリパルパーを使用して測定され得る。そのような場合に、1インチ×1インチ四方に切断された110グラムの物品を、2895グラムの水(6.5±0.5のpH、50℃)を収容するリパルパーに加え、15分間にわたり浸漬させ、その後に30分間リパルプすることができる。次いで、300mLのアリコートのリパルプされたスラリーを、振動面内篩(Vibrating Flat Screen)(0.006インチのスロットサイズ)を通して篩別することができる。リジェクト(スクリーンにより捕捉されたもの)及び繊維のアクセプトを回収し、乾燥させ、重さを量ることができる。アクセプト及びリジェクトの重量に対するアクセプトのパーセントを計算することができ、その際、100%が完全なリパルプ性である。
【0058】
本明細書のコーティング及び物品は、1種以上の分散液、例えば水性分散液又は有機溶剤を含む分散液を基材に適用することによって作製され得る。例えば、本開示による物品の作製方法は、例えば分散液を各表面に適用することによって、基材の1つ以上の表面上に1つ以上のコーティングを形成することを含み得る。1種以上の分散液は、異なる化学的組成を有していてもよく、それらを基材の1つ以上の表面に適用することで、1層以上の層を形成することができる。
【0059】
鉱物質は、コーティングに導入する前に懸濁液で存在し得る。分散液は、コーティング材料、例えば、ポリマー、鉱物質、及び/又は他の添加剤を水若しくは水性媒体又は有機溶剤と混和(例えば、混合)することによって調製され得る。分散液は、塗工装置により適用するのに適した粘度を有し得る。分散液の粘度は、約100センチポアズ(cP)~約2500cP、約100cP~約500cP、約500cP~約1000cP、約1000cP~約2000cP、又は約1500cP~約2500cPの範囲であり得る。幾つかの例では、分散液の粘度は、LV DV-E粘度計及びスピンドル番号3を使用して23℃及び100rpmで測定されたブルックフィールド粘度であり得る。
【0060】
分散液は、固体成分を含む懸濁液又は分散液であり得る。分散液は、塗工装置により適用するのに適した量で固体成分を含み得る。例えば、分散液は、全分散液の重量基準で約30%~約70%、約35%~約65%、約40%~約60%、又は約45%~約55%の範囲の固体成分を含み得る。
【0061】
鉱物質を含有する水性懸濁液又は非水性懸濁液は、懸濁液の重量基準で約40%~約90%、約50%~約80%、約50%~約70%、約60%~約70%、又は約50%~約60%の範囲の固体含量を有し得る。
【0062】
幾つかの例では、上記方法は、第1の表面に第1の水性分散液を適用して第1の層を形成し、第2の水性分散液を適用して第2の層を形成し、第3の分散液を適用して第3の層を形成することを含み得る。第1の水性分散液は、第2の水性分散液の前に適用され得る。これらの場合に、第1の水性分散液及び第2の水性分散液が同じ表面に適用される場合に、第1の水性分散液は内側層を形成して得て、第2の水性分散液は外側層を形成し得る。幾つかの場合に、第3の層はプレコート層であり得る。これらの場合に、第3の水性分散液を適用した後に、第1の水性分散液及び第2の水性分散液が同じ表面上に適用され得る。本明細書の方法は、第1のポリマーと同じ又は異なる第2のポリマーを含む分散液を第2の表面の一部に適用することによって、基材の第2の表面上に不連続層を形成することを更に含み得る。第2のポリマーを含む分散液は、水性又は非水性であり、例えば有機溶剤を含む分散液であり得る。
【0063】
本開示の幾つかの態様によれば、物品の作製方法は、以下の工程:第1のポリマーを含む水性分散液を第1の表面に適用することによって基材の第1の表面上にコーティングを形成する工程、及び第2のポリマーを含む分散液を第2の表面の一部に適用することによって基材の第2の表面上に不連続層を形成する工程の1つ以上を含み得る。第1の表面のコーティングは、第2の表面上の不連続層とヒートシールを形成することが可能であり得る。幾つかの場合に、第1の表面に適用される水性分散液は、鉱物質を含み得る。これらの場合に、第1の表面上でのコーティングの形成は、第1のポリマー及び鉱物質を含む第1の水性分散液を適用して内側層を形成することと、上記内側層に、第1のポリマーを含むが、鉱物質を有しない第2の水性分散液を適用して外側層を形成することとを含み得る。本明細書で使用される場合に、表面の内側層は、コーティングの外側層と比べて基材表面に近い層を指す。幾つかの場合に、第1の表面上でのコーティングの形成は、1層以上のプレコート層を適用した後に、第1の水性分散液及び第2の水性分散液を適用することを更に含み得る。1層以上のプレコート層は、基材の表面とコーティングの別の層(例えば、内側層)との間に存在し得る。幾つかの例では、1層以上のプレコート層は、ポリマー及び鉱物質を含み得る。
【0064】
様々な技術によって、例えば吹き付け塗布、カーテン塗布、ブレード塗布、ロールコーター若しくはグラビアコーターでの塗布、ブラシ塗布、浸漬、フレキソ塗布、フィルム塗布、又はロッド塗布によって、基材に分散液を適用することができる。幾つかの例では、適用された分散液は、基材に適用されたら、乾燥(例えば、熱により)させて、固体コーティングを形成することができる。幾つかの場合に、分散液は、基材に局所的に適用することができる。
【0065】
本開示の幾つかの態様によれば、上記方法は塗工装置により実施され得る。そのような塗工装置は、本明細書に記載される分散液を基材に適用するためのアプリケーターと、任意に正確なレベルの分散液が適用されることを保証するための計量装置とを備え得る。コーティングは、コーティングヘッドによりコーティングステーションに加えられ得る。紙のそれぞれの側面にコーティングを適用するコーターは、それぞれの側面に適用されるコーティング層の数に応じて、或る特定の数のコーティングヘッドを有し得る。幾つかのコーティングヘッドは、一度に片方の側面のみをコーティングする。他のコーティングヘッド、例えばロールコーター(例えば、フィルムプレス、ゲートロール、及びサイズプレス)のコーティングヘッドは、1回の通過で2つの側面をコーティングすることが可能であり得る。
【0066】
物品を作製するのに使用することができる塗工装置の例としては、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、マルチヘッドコーター、ロールコーター、ロール又はブレードコーター、キャストコーター、実験用コーター、グラビアコーター、キスコーター、液体適用システム、リバースロールコーター、カーテンコーター、及びスプレーコーターが挙げられる。幾つかの例では、印刷によって、例えば、オフセット印刷、フレキソ印刷、又は輪転式グラビア印刷によって、基材に水性分散液が適用され得る。そのような印刷法は、コーティングを基材上の特定の領域に適用することを可能にし得る。
【0067】
幾つかの例では、本明細書の方法は、本明細書に開示されるコーティングを備えた物品(例えば、紙又は他のシート材料)を使用して容器を作製することを含み得る。容器は、自動製造装置で作製され得る。例えば、本明細書のコーティングを備えた紙を使用して、高速のカップ用コンバーティングラインで紙コップを作製することができる。そのような装置で加工するときに、そのコーティングは、粘着又は該装置の運転の中断を抑止又は防止し得る。「粘着する」という用語は一般に、コーティングされた基材が、例えば製造の間にそれ自体に、別の基材に、機器の一部に、及び/又は他の表面に貼着する場合を指す。粘着は、生産の進行を抑止し又は更には妨げる場合がある。例えば、粘着は、コーティングされた紙又は他のコーティングされた基材が、それ自体及び/又は機械の部分に巻き付く原因となり得る。例えば、コーティングは、装置の様々な部品に殆どないし全く貼着を起こさない場合がある。本開示は、機械及び/又は他の基材への粘着、例えば接着を防止するか、それとも最小化する製造の間の構成を提供し得る。例えば、本明細書に開示されるコーティングされた物品は、コーティングされた物品の表面(例えば、最外表面)が接着せずに又は限られた接着しか伴わずに機械及び/又は別の基材の表面と接触するように、抄紙/コンバージョン/印刷過程を通して進行し得る。本明細書のコーティングされた基材は非粘着効果を達成し得るが、依然として十分に強いヒートシールを提供する。
【0068】
本明細書の物品の作製方法は、コーティングの一部と別のコーティングの一部とを接着させることを含み得る。同じ基材の異なる表面上に又は異なる基材上に2つのコーティングが存在し得る。別の場合に、該方法はコーティングの複数の部分を接着させることを含み得る。本開示の幾つかの態様によれば、接着はヒートシールにより実施され得る。例えば、物品は、カップの側面を形成する第1の基材とカップの基部を形成する第2の基材とを含むカップであり得る。カップの側面と基部とは2つの基材上のコーティングをヒートシールすることにより連結され得て、それにより、カップの継ぎ目又は接合部沿いを含む基材に到達する液体又は水分に対するバリアを与えることができる。
【0069】
本開示の幾つかの態様による例示的な物品100、すなわち飲料を収容するのに適したカップが図1A図1Cに示されている。図1Aは、2つのコーティングされた基板、すなわちコーティングされた底部基材120及びコーティングされた側面基材115から形成されたカップ100の外側の斜視図を示す。両方の基材は、例えば、紙の内面及び外面にコーティングを備えた紙を含み得る。カップ100は、コーティングされた底部基材120とコーティングされた側面基材115とを接合する第1の継ぎ目130と、コーティングされた側面基材115の端部を共に接合する第2の継ぎ目140とを有する。
【0070】
図1Bは、コーティングされた底部基材120及びコーティングされた側面基材115の一部を接合する第1の継ぎ目130の断面図を示す。示されるように、カップ100のコーティングされた底部基材120は、カップ100のコーティングされた底部基材120の外面を形成する第1のコーティング117と、カップ100のコーティングされた底部基材120の内面を形成する第2のコーティング118とを有する基材116によって形成される。カップ100のコーティングされた側面基材115は、カップ100の外側面を形成する第1のコーティング112と、カップ100のコーティングされた側面基材115の内側面を形成する第2のコーティング114とを有する基材110により形成される。様々なコーティング117、118、112、114は、本明細書に記載される同じ又は異なる材料を含み得る。基材110の内側面上のコーティング114は、1)ヒートシール領域131で底部基材116の内面上のコーティング118とヒートシールされ、2)ヒートシール領域132で底部基材116の外面上のコーティング117とヒートシールされる。図1Cは、コーティングされた側面基材115の一部を接合する第2の継ぎ目141の断面図を示す。側面基材110の内面及び外面それぞれ上のコーティング114、112は、側面基材110の端部でヒートシールされる。
【0071】
1種以上のポリマーを有するコーティングに、1種以上のポリマーの融点以上である温度で、(例えば、或る圧力で)熱を加えることによってヒートシールが実施され得る。幾つかの例では、ヒートシーラー、例えば紙コップ作製装置でのヒートシーラーによってヒートシールが実施され得る。シールされた物品は所望のシール強度を示し、適切な繊維引裂け(fiber tear)の結果が達成され得る。
【0072】
図2は、本開示の幾つかの態様によるカップ等の物品100に使用され得るコーティング又はコーティング系の例示的な構成を示す。図2の断面図に示されるように、コーティング系200は、2つの表面を有する基材210を含む。第1の表面は、コーティング220により被覆されている。コーティング220は、3層(層221、層222及び層223)を含む。層221はヒートシール層(例えば、1種以上のヒートシール可能な材料を含む)であってもよく、層222は水バリア層(例えば、任意に1層以上の別の層と組み合わせて水及び/又は他の水性材料又は水分に対する耐性をもたらす)であってもよく、層223は本明細書に記載されるプレコート層であってもよい。例えば、層221は、1種以上のヒートシール可能なポリマー(1種以上の鉱物質を有する又は有しない)を含んでいてもよく、層222は、少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の鉱物質を含んでいてもよく、層223は、任意に1種以上の鉱物質と一緒に少なくとも1種のポリマー及び/又は多糖材料を含んでいてもよい。
【0073】
更に図2を参照すると、基材210の第2の表面は、コーティング230により被覆されている。コーティング230は、1層だけ、例えばヒートシール層(例えば、1種以上のヒートシール可能な材料を含む)を含み得る。例えば、層230は、1種以上のヒートシール可能なポリマー(1種以上の鉱物質を有する又は有しない)を含み得る。幾つかの例では、層230は、例えばコーティングの材料が紙基材を完全に被覆しないような不連続層であり得る。基材210がそれ自体にヒートシールするように設計されている場合に、最外層221と単一層のコーティング230とが共にヒートシールされ得る。
【0074】
少なくとも1つの例では、ヒートシール層221及びヒートシール層230の両方は、任意に粘度制御剤、pH制御剤、及び/又は細菌防除剤等の1種以上の添加剤と一緒に同じヒートシール可能なポリマー、例えばエチレンアクリル酸又はその誘導体を含み得る。層230及び層221は、互いの粘着が避けられるように構成され得る。例えば、不連続層230は、そうでなければ起こり得る粘着を抑止し得る。幾つかの例では、層221及び層230の両方は、鉱物質含量を一切有しないエチレンアクリル酸又は少なくとも1種の鉱物質を有するエチレンアクリル酸等の1種以上の同じ材料を含み得る。他の場合に、層222はポリマー及び鉱物質を含んでいてもよく、層230は鉱物質を一切有しないポリマーを含んでいてもよい。少なくとも1つの例では、層222は、約65%(重量基準)の高アスペクト比のタルク及び約35%(重量基準)のエチレンアクリル酸を含み得る。プレコート層223は、スチレンブタジエンラテックス等のポリマー又はミクロフィブリル化セルロース若しくはナノフィブリル化セルロース等の多糖を含み得る。幾つかの例では、プレコート層223は、鉱物質、例えばカオリンを更に含み得る。少なくとも1つの例では、プレコート層は、約50%(重量基準)のカオリン及び約50%(重量基準)のスチレンブタジエンラテックスを含み得る。少なくとも1つの例では、層230は、エチレンアクリル酸又はポリエーテルイミドを含む。これらの材料及び材料の量は例示的であるにすぎず、他の材料及び層の組み合わせが本明細書の開示により包含されることが理解される。
【0075】
図2に示されるコーティング系の例は、温かい液体及び熱い液体を含む室温(約20℃)以上の温度の液体を収容するために有用であり得る。一般的にこの範囲内の室温では結露は形成しないので、カップの外面は、冷たい物質用の容器ほどの完全又は堅牢なコーティングを含む必要はない。この構成により、材料コスト/製造コストを下げ、基材のリサイクル性及びリパルプ性を高めることが可能となり得る。
【0076】
図1A図1C及び図2は物品及びコーティング系の例を示しているが、本開示は更なる物品及びコーティング系を含むことが理解される。
【実施例
【0077】
最初にタルクを水性媒体に高剪断下(約2000rpm)で添加し、約2500rpmで高剪断分散を20分間~30分間継続することによって、タルクスラリーを調製した。水性媒体は、約48重量%の最終固体含量を得るために十分な水を含んでいた。水性媒体のpHを、NaOHを使用して9.5に調整した。水性媒体は、およそ0.3%のポリアクリレート分散剤(タルクの乾燥重量に対する乾燥分散剤)も含んでいた。最終粘度はおよそ60mPa・s(ブルックフィールド、100rpm、スピンドル5)であった。タルクスラリーの一部をエチレンアクリル酸ポリマーバインダーの水性分散液(Michelman社のMP4990R)と混合して、90:10のポリマーの乾燥部:タルクの乾燥部の重量比を有するタルク及びポリマーを有する組成物を得ることによって、第1のコーティング組成物を調製した。同様にMP4990Rポリマーバインダーのみから第2のコーティング組成物を調製した(100:0のポリマー:タルクの重量比)。
【0078】
試験カップストックボード(化学パルプの外側層を有するCTMPコア)を作製し、以下に記載されるように粘着性及びヒートシール有効性について評価した。5つの試験試料を作製し、表3及び表4に示される粘着性及びヒートシールの結果のそれぞれについて評価した。表3及び表4における結果は、各々について実行された5つの試験からの最頻値の結果である。
【0079】
15pphのスチレンブタジエン(SB)ラテックスと、2μmより小さい粒子を少なくとも75%有する約20の形状係数を有するカオリンとを含むプレコート用組成物により、各カップストックボードを片方の側面だけに6gsm~8gsmの塗工重量でプレコートした。そのカップストックボードのもう一方の側面は、該当する場合に第2のコーティング組成物の適用まで未コーティングのままにした。各試験について、第1のコーティング組成物及び第2のコーティング組成物の様々な塗工重量(表3及び表4に示される)を、該当する場合にカップストックボードのプレコートされた側面又は未コーティングの側面のいずれかにコーティングした。コーティングは、所望の塗工重量が得られるように選択されたワイヤー巻きのバー(Kバー)を使用して適用した。コーティング組成物を、非吸収性基材上で上記バーの前方に置き、バーを基材の下に引き下げて、基材を均一にコーティングした。次いで、表面に熱気をかけて、コーティングを乾燥させた。コーティングされた紙の試料の重さを量り、それを未コーティングの紙の試料の重量と比較することによって、塗工重量(gsm)を決定した。コーティングされた紙及び未コーティングの紙の両方を、23℃及び50%の相対湿度でコンディショニングした。
【0080】
ヒートシール性及び粘着性の両方の評価のために、Arcticsコントローラー(Arctics controller)(高性能なリアルタイムインパルス制御システム)を備えたホットバーヒートシーラーHM-91を使用した。ヒートシーラーの両方のジョーを加熱し、一定の力が与えられるようにソレノイドを動作させ、ジョーはPTFE被覆されたガラスクロスで覆われ、シーリング幅は6mmであった。
【0081】
試験試料は2枚のコーティングされたボードからなり、評価対象となるコーティングされた側面(面)は(面同士で)共に接合されている。試料は予熱せず、試料を開いたジョーの間に配置し、ジョーを設定温度で設定時間にわたり寄せ合わせ、ジョーが開いた後に試料を取り出し、試料を室温で30分間冷ましてから、後続の評価の間に2つのコーティングされたボード間のシールを破壊する。シールの破損を観察することによって、シール品質の評価及び順位付けを行う。
【0082】
ヒートシール試験
試験試料を、130℃±1℃の温度で0.2秒間ヒートシールした。シール強度の評価のための基準を以下に表1で示す。これは、シールが良好であるほど高い値が達成されるシール品質の評価である。最頻値の結果を以下の表3に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
粘着試験
試験試料を47℃±3℃の温度に10秒間曝した。粘着性の評価のための基準を以下に表2で示す。これは粘着性の評価であり、これらの条件下での、試料は粘着/シールすべきではないため、シールが不良であるほど値は高くなる。最頻値の結果を以下の表4に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
本明細書に開示されるコーティングされた物品は、様々な製品、例えば、耐水性、耐熱性、耐グリース性、及び/又はヒートシール性が望まれる製品を作製することを含み得る又はその作製のために使用され得る。製品の例としては、カップ、プレート、ボウル、食品容器、例えば食品(例えば、サンドイッチ)ラップ、ブッチャーラップ、ゲーブルトップカートン、フォールディングカートン、紙パウチ、モールド紙製品、バター/マーガリンラップ、ペットフードボックス及びサック、多壁紙サック、芝生用再使用バッグ(lawn refuse bags)、おむつ、及び複合材料が挙げられる。
【0089】
本開示の他の態様及び実施形態は、本明細書及び本明細書に開示される実施形態の実施を考慮すれば、当業者には明らかであろう。
【0090】
本明細書及びその実施例は、例示的なものであるとみなされるにすぎず、本開示の真の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
図1A
図1B
図1C
図2