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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
H01T13/20 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021113909
(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公開番号】P2023010083
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2022-07-07
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】今井 奨
(72)【発明者】
【氏名】後澤 達哉
【合議体】
【審判長】中屋 裕一郎
【審判官】平城 俊雅
【審判官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/242930(WO,A1)
【文献】特開2006-236769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる軸孔が形成された絶縁体と、
前記軸孔に配置され、自身の先端部が前記軸孔の先端側に突出する中心電極と、
前記絶縁体を内周側に保持し、外周面にネジ部が形成された筒状の主体金具と、
一端部が前記主体金具に設けられた貫通孔に固定され、他端部が前記中心電極の前記先端部との間で放電ギャップを形成する接地電極と、
を備えるスパークプラグであって、
前記ネジ部は、前記貫通孔よりも前記軸線方向の後端側に位置する第1ネジ部と、前記貫通孔よりも前記軸線方向の先端側に位置する第2ネジ部と、を有し、
前記第1ネジ部の有効径は、前記第2ネジ部の有効径よりも大きく、前記第2ネジ部の有効径の100.30%以上であり、
前記ネジ部の呼び径がM10であることを特徴とする、スパークプラグ。
【請求項2】
請求項1に記載のスパークプラグにおいて、
前記軸線方向において、前記第2ネジ部の長さは、前記第1ネジ部の長さよりも短いことを特徴とする、スパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に用いる点火用のスパークプラグとして、エンジンヘッドに取り付けられて、中心電極の先端と接地電極との間で火花放電を発生させるスパークプラグが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のスパークプラグでは、主体金具において径方向に貫通する貫通孔が形成されており、径方向に沿って延びる棒状の接地電極が、その貫通孔に挿入されて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-046660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、スパークプラグは、先端側ほど高温になりやすいため、熱膨張しやすい。このため、特許文献1に記載のスパークプラグのように、主体金具の雄ネジが接地電極の溶接部よりも軸線方向の先端側にも形成されていると、先端側の雄ネジが熱膨張する結果、エンジンヘッドを損傷させるおそれがある。一方、エンジンヘッドの損傷を抑制するために、主体金具の雄ネジの径を小さくすると、主体金具の雄ネジとエンジンヘッドの雌ネジとの間の気密性が低下するおそれがある。したがって、エンジンヘッドの損傷を抑制しつつ、気密性の低下を抑制できる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することができる。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、スパークプラグが提供される。このスパークプラグは、軸線方向に延びる軸孔が形成された絶縁体と、前記軸孔に配置され、自身の先端部が前記軸孔の先端側に突出する中心電極と、前記絶縁体を内周側に保持し、外周面にネジ部が形成された筒状の主体金具と、一端部が前記主体金具に設けられた貫通孔に固定され、他端部が前記中心電極の前記先端部との間で放電ギャップを形成する接地電極と、を備えるスパークプラグであって、前記ネジ部は、前記貫通孔よりも前記軸線方向の後端側に位置する第1ネジ部と、前記貫通孔よりも前記軸線方向の先端側に位置する第2ネジ部と、を有し、前記第1ネジ部の有効径は、前記第2ネジ部の有効径よりも大きいことを特徴とする。この形態のスパークプラグによれば、貫通孔よりも軸線方向の後端側に位置する第1ネジ部の有効径が、貫通孔よりも軸線方向の先端側に位置する第2ネジ部の有効径よりも大きいので、熱膨張に起因して第2ネジ部の径方向の寸法が過度に大きくなることを抑制でき、また、第1ネジ部とエンジンヘッドの雌ネジとの隙間が過度に大きくなることを抑制して第1ネジ部において気密性を確保できる。したがって、エンジンヘッドの損傷を抑制しつつ、気密性の低下を抑制できる。
【0007】
(2)上記形態のスパークプラグにおいて、前記第1ネジ部の有効径は、前記第2ネジ部の有効径の100.30%以上であってもよい。この形態のスパークプラグによれば、第1ネジ部の有効径が第2ネジ部の有効径の100.30%以上なので、第1ネジ部とエンジンヘッドの雌ネジとの隙間を減少させることができ、この結果、気密性の低下をさらに抑制できる。
【0008】
(3)上記形態のスパークプラグにおいて、前記軸線方向において、前記第2ネジ部の長さは、前記第1ネジ部の長さよりも短くてもよい。この形態のスパークプラグによれば、軸線方向において第2ネジ部の長さが第1ネジ部の長さよりも短いので、第1ネジ部の軸線方向に沿った寸法を確保でき、この結果、気密性の低下をさらに抑制できる。
【0009】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、スパークプラグの製造方法、スパークプラグが取り付けられたエンジンヘッド等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スパークプラグの概略構成を示す部分断面図。
図2】スパークプラグの先端付近を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の一実施形態としてのスパークプラグ100の概略構成を示す部分断面図である。図1では、スパークプラグ100の軸心である軸線CAを境界として、紙面右側にスパークプラグ100の外観形状を示し、紙面左側にスパークプラグ100の断面形状を示している。以下の説明では、軸線CAに沿った図1の下方側(後述する接地電極40が配置されている側)を先端側と呼び、図1の上方側(後述する端子金具50が配置されている側)を後端側と呼び、軸線CAに沿った方向を軸線方向ADと呼ぶ。図1では、説明の便宜上、スパークプラグ100が取り付けられるエンジンヘッド90を破線で示している。エンジンヘッド90には、一般に、冷却媒体を循環させる図示しない冷媒流路が設けられている。スパークプラグ100は、その先端側が燃焼室95内に露出するようにエンジンヘッド90に取り付けられている。
【0012】
スパークプラグ100は、絶縁体10と、中心電極20と、主体金具30と、接地電極40と、端子金具50とを備える。なお、スパークプラグ100の軸線CAは、絶縁体10と中心電極20と主体金具30と端子金具50との各部材の軸線と一致する。
【0013】
絶縁体10は、軸線方向ADに延びる軸孔11が形成された略筒状の外観形状を有する。軸孔11には、先端側において中心電極20の一部が収容され、後端側において端子金具50の一部が収容される。このため、絶縁体10は、中心電極20を内周側に保持する。絶縁体10は、先端側の部分が後述する主体金具30の軸孔31に収容され、後端側の部分が軸孔31から露呈している。絶縁体10は、アルミナ等のセラミック材料を焼成して形成された絶縁碍子により構成されている。
【0014】
中心電極20は、軸線方向ADに沿って延びる棒状の電極であり、軸孔11に配置されている。中心電極20の先端部21は、軸孔11の先端側に突出している。先端部21には、例えば白金やイリジウム合金等によって形成された貴金属チップが接合されていてもよい。本実施形態の中心電極20は、ニッケルを主成分とするニッケル合金により形成されている。
【0015】
絶縁体10の軸孔11内において、中心電極20と端子金具50との間には、先端側から後端側へと向かって順番に、先端側シール材61と、抵抗体62と、後端側シール材63とが配置されている。このため、中心電極20は、後端側において、先端側シール材61と、抵抗体62と、後端側シール材63とを介して、端子金具50と電気的に接続されている。
【0016】
抵抗体62は、セラミック粉末と導電材とガラスとを材料として含んでいる。抵抗体62は、端子金具50と中心電極20との間における電気抵抗として機能することにより、火花放電を発生させる際のノイズの発生を抑制する。先端側シール材61と後端側シール材63とは、それぞれ導電性のガラス粉末を材料として含んでいる。本実施形態において、先端側シール材61および後端側シール材63は、銅粉末とホウケイ酸カルシウムガラス粉末とを混合した粉末を材料として含んでいる。
【0017】
端子金具50は、スパークプラグ100の後端側の端部に設けられている。端子金具50の先端側は、絶縁体10の軸孔11に収容され、端子金具50の後端側は、軸孔11から露呈している。端子金具50には、図示しない高圧ケーブルが接続され、高電圧が印加される。この印加により、後述する放電ギャップGに火花放電が発生する。放電ギャップGに発生した火花は、燃焼室95における混合気を着火させる。
【0018】
主体金具30は、軸線方向ADに沿って軸孔31が形成された略筒状の外観形状を有し、軸孔31内において絶縁体10を保持する。換言すると、主体金具30は、絶縁体10を内周側に保持する。主体金具30は、例えば低炭素鋼により形成され、ニッケルめっきや亜鉛めっき等のめっき処理が全体に施されている。主体金具30の外周面には、工具係合部32と、ネジ部33とが形成されている。工具係合部32は、スパークプラグ100をエンジンヘッド90に取り付ける際に、図示しない工具と係合する。ネジ部33は、主体金具30の先端側の領域において外周面にネジ山が形成されており、エンジンヘッド90の雌ネジ部93にねじ込まれる。ネジ部33についての詳細な説明は、後述する。
【0019】
図2は、スパークプラグ100の先端付近を拡大して示す断面図である。主体金具30には、径方向に貫通する貫通孔37が設けられている。貫通孔37は、軸線方向ADにおいて中心電極20の先端部21よりも先端側に形成されており、主体金具30の外周面と内周面とを連通させている。貫通孔37は、主体金具30の周方向の一箇所に設けられている。貫通孔37には、接地電極40が固定されている。本実施形態において、貫通孔37は、段付きの形状を有し、貫通孔37の内径は、主体金具30の外周側において内周側と比較して大きく形成されている。
【0020】
接地電極40は、棒状の金属部材により構成され、径方向に延びるように配置されている。接地電極40の一端部41は、貫通孔37に挿入されて固定されている。このため、一端部41は、固定部とも換言できる。接地電極40の他端部42は、中心電極20の先端部21と対向している。他端部42は、中心電極20の先端部21との間で、火花放電のための放電ギャップGを形成する。本実施形態の接地電極40は、中心電極20と同様に、ニッケルを主成分とするニッケル合金により形成されている。本実施形態の接地電極40は、貫通孔37において溶接されて固定されているが、溶接に限らず、例えば圧入等によって固定されていてもよい。
【0021】
主体金具30の外周面に形成されたネジ部33は、第1ネジ部34と、第2ネジ部35とを有する。第1ネジ部34は、貫通孔37よりも軸線方向ADの後端側に位置している。第2ネジ部35は、貫通孔37よりも軸線方向ADの先端側に位置している。本実施形態では、軸線方向ADにおいて、第2ネジ部35の長さは、第1ネジ部34の長さよりも短い。
【0022】
第1ネジ部34の有効径は、第2ネジ部35の有効径よりも大きい。本明細書において、「有効径」とは、JIS B 0205 2001で規定された値を示す。第1ネジ部34の有効径は、第1ネジ部34のネジ山ごとに測定した値の平均値を算出することによって求めることができる。同様に、第2ネジ部35の有効径は、第2ネジ部35のネジ山ごとに測定した値の平均値を算出することによって求めることができる。後述する実施例において示されるように、第1ネジ部34の有効径の大きさは、第2ネジ部35の有効径の大きさに対して100.30%以上であることが好ましい。なお、第1ネジ部34の有効径の大きさは、第2ネジ部35の有効径の大きさに対して101.00%以下であることが好ましい。
【0023】
本実施形態において、ネジ部33は、軸線方向ADの先端側から後端側に向かうほど、有効径が大きくなるように形成されている。このような構成に代えて、例えば、ネジ部33は、第1ネジ部34の各ネジ山の有効径がほぼ一定に形成され、第2ネジ部35の各ネジ山の有効径がほぼ一定に形成されて、第1ネジ部34と第2ネジ部35とが連続的に連なっていてもよい。なお、この場合には、第1ネジ部34と第2ネジ部35とは、なだらかに連なっていてもよいし、段を形成して連なっていてもよい。
【0024】
ネジ部33は、例えば、転造や切削等によって形成することができる。転造によって形成する場合には、例えば、第2ネジ部35の形成位置において、第1ネジ部34の形成位置よりもダイスの締め付けを強くすることにより、第1ネジ部34の有効径を第2ネジ部35の有効径よりも大きく形成してもよい。また、第1ネジ部34の形成位置と第2ネジ部35の形成位置との間に対応する位置に段差が形成されたダイスを用いて転造が行われてもよい。また、ネジ切り前の状態において、円筒状の主体金具30において第1ネジ部34の形成位置と第2ネジ部35の形成位置との間に段差が設けられていてもよく、第1ネジ部34の形成位置と第2ネジ部35の形成位置とが予めテーパ状に形成されていてもよい。また、本実施形態において、第1ネジ部34と第2ネジ部35とは、一体に形成されているが、別体に形成されていてもよい。なお、貫通孔37は、ネジ部33の形成前に形成されてもよく、ネジ部33の形成後に形成されてもよい。
【0025】
ここで、一般に、接地電極40は、混合気の燃焼に曝されて高温状態となる。このため、主体金具30に形成された貫通孔37に接地電極40が固定されるスパークプラグ100において、接地電極40の一端部41は、過熱によって酸化するおそれがある。しかしながら、本実施形態のスパークプラグ100では、軸線方向ADにおいて貫通孔37よりも先端側に第2ネジ部35が形成されているので、貫通孔37よりも先端側においても、主体金具30の第2ネジ部35とエンジンヘッド90の雌ネジ部93とを螺合させることができる。一般にエンジンヘッド90には冷媒流路が設けられているため、第2ネジ部35と雌ネジ部93とを螺合させることにより、より高温になりやすい先端側においても接地電極40の熱引き経路を確保できる。したがって、接地電極40の一端部41が過度に温度上昇することを抑制できるので、接地電極40の一端部41が酸化することを抑制できる。この結果、燃焼室95の冷熱サイクルにおいて接地電極40が貫通孔37から脱落することを抑制できるので、スパークプラグ100の耐久性を向上できる。
【0026】
また、一般に、スパークプラグ100の先端付近は、軸線方向ADの先端側に向かうほど高温になる傾向にある。このため、接地電極40が固定される貫通孔37よりも軸線方向ADの先端側に第2ネジ部35が形成されていると、第2ネジ部35は、第1ネジ部34よりも熱膨張量が大きくなる。熱膨張に起因して、第2ネジ部35の径方向の寸法が過度に大きくなってしまうと、エンジンヘッド90に形成された雌ネジ部93にひび割れ等の損傷が発生し得る。しかしながら、本実施形態のスパークプラグ100では、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径よりも大きいので、すなわち第2ネジ部35の有効径が第1ネジ部34の有効径よりも小さいので、熱膨張に起因して第2ネジ部35の径方向の寸法が過度に大きくなることを抑制できる。この結果として、本実施形態のスパークプラグ100では、エンジンヘッド90の損傷を抑制できる。
【0027】
また、本願とは異なり、ネジ部33の有効径を軸線方向ADにおいて一律に小さく形成すると、第2ネジ部35の径方向の寸法が過度に大きくなることを抑制できるので、エンジンヘッド90の損傷を抑制できると考えられる。しかしながら、ネジ部33の有効径を小さくすると、ネジ部33と雌ネジ部93との隙間が過度に大きくなってしまい、気密性が低下するおそれがある。しかしながら、本実施形態のスパークプラグ100では、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径よりも大きいので、第1ネジ部34と雌ネジ部93との隙間が過度に大きくなることを抑制でき、この結果、気密性の低下を抑制できる。
【0028】
このように、本実施形態のスパークプラグ100によれば、貫通孔37よりも軸線方向ADの後端側に位置する第1ネジ部34の有効径が、貫通孔37よりも軸線方向ADの先端側に位置する第2ネジ部35の有効径よりも大きいので、熱膨張に起因して第2ネジ部35の径方向の寸法が過度に大きくなることを抑制でき、また、第1ネジ部34と雌ネジ部93との隙間が過度に大きくなることを抑制して第1ネジ部34において気密性を確保できる。この結果、エンジンヘッド90の損傷を抑制しつつ、気密性の低下を抑制できる。
【0029】
また、第1ネジ部34において気密性を確保できるので、接地電極40の一端部41と貫通孔37との間において燃料の混合気が漏洩した場合であっても、その混合気がスパークプラグ100の座面から漏洩してしまうことを抑制できる。したがって、本実施形態のスパークプラグ100では、第2ネジ部35において気密性を確保する構成と比較して、気密性の低下をより抑制できる。
【0030】
また、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径の100.30%以上であるので、第1ネジ部34と雌ネジ部93との隙間をより減少させることができ、この結果、気密性の低下をさらに抑制できる。
【0031】
また、軸線方向ADにおいて第2ネジ部35の長さが第1ネジ部34の長さよりも短いので、第1ネジ部34の軸線方向ADに沿った寸法を確保でき、この結果、気密性の低下をさらに抑制できる。
【0032】
B.実施例:
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
<試料>
以下の表1に示すように、スパークプラグ100を作製した。より具体的には、実施例1~5として、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径よりも大きいスパークプラグ100を作製した。また、比較例1、2として、第1ネジ部34の有効径と第2ネジ部35の有効径とが同じである、すなわちネジ部33の有効径が軸線方向ADにおいて一定であるスパークプラグを作製した。比較例1と比較例2とは、ネジ部33の内径が互いに異なり、比較例1のネジ部33の有効径は、比較例2のネジ部33の有効径よりも小さい。より具体的には、比較例1のネジ部33の有効径は、実施例1、5の第2ネジ部35の有効径と同じとし、比較例2のネジ部33の有効径は、比較例3、4の第2ネジ部35の有効径と同じとした。また、比較例3、4として、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径よりも小さいスパークプラグを作製した。実施例と比較例とにおいて、いずれも呼び径はM10とし、ネジ部33の有効径以外の構成は互いに同じとし、サンプル数はそれぞれ10とした。
【0034】
<ブッシュ破損試験>
実施例のスパークプラグ100と比較例のスパークプラグとを、エンジンヘッド90を再現したブッシュに組み付けた。ブッシュの内周面に形成された雌ネジ部93の有効径は、規格下限値とした。主体金具30の軸孔31側から、接地電極40の一端部41周辺をバーナーで加熱した。接地電極40の電極温度1000℃の加熱2分と接地電極40の電極温度200℃の冷却1分とを冷熱サイクルの1サイクルとして、1000サイクル実施した。各試料を目視観察することにより、ブッシュに破損が発生したか否かにより破損性を評価した。評価基準を以下に示す。
A:ブッシュに破損が認められた
B:ブッシュに破損が認められなかった
【0035】
<気密試験>
実施例のスパークプラグ100と比較例のスパークプラグとを、エンジンヘッド90を再現したブッシュに組み付けた。ブッシュの内周面に形成された雌ネジ部93の有効径は、規格下限値とした。ISO規格に従い、試料全体を200℃にて30分間保持後、2MPaで加圧し、スパークプラグの座面から漏洩した気体の量を測定し、気密性を評価した。評価基準を以下に示す。
A:漏洩が認められなった
B:2cc/min.未満の漏洩が認められた
C:2cc/min.以上の漏洩が認められた
【0036】
ブッシュ破損試験および気密試験の結果を、表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から、以下のことがわかった。すなわち、第2ネジ部35の有効径が小さい実施例1~5および比較例1では、ブッシュの破損が認められず、第2ネジ部35の有効径が大きい比較例2~4では、ブッシュの破損が認められた。このため、第2ネジ部35の有効径が小さいことにより、エンジンヘッド90に損傷が発生することを抑制できることがわかった。また、実施例1~5と比較例1との比較により、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径よりも大きい実施例1~5では、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径と同じである比較例1と比較して、気密性の低下を抑制できることがわかった。特に、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径の100.30%以上である実施例1~3では、気密試験において漏洩が認められなったことから、気密性の低下をより抑制できることがわかった。実施例1~5では、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径よりも大きいので、第1ネジ部34と雌ネジ部93とを密着させることができた結果、気密性の低下を抑制できたと考えられる。以上の結果から、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径よりも大きいことにより、エンジンヘッド90の損傷を抑制しつつ、気密性の低下を抑制できることがわかった。
【0039】
また、比較例1では、ネジ部33の有効径が軸線方向ADにおいて一律に小さく形成されることにより、エンジンヘッド90の損傷を抑制できる一方で、雌ネジ部93とネジ部33との密着性が低下してしまい、気密性が低下したと考えられる。比較例2では、ネジ部33の有効径が軸線方向ADにおいて一律に大きく形成されることにより、気密性の低下を抑制できる一方で、ネジ部33の熱膨張によってエンジンヘッド90に損傷が発生したと考えられる。比較例2~4の結果から、第1ネジ部34の有効径が小さいほど、雌ネジ部93と第1ネジ部34との密着性が低下し、気密性が低下することがわかった。
【0040】
C.他の実施形態:
上記実施形態におけるネジ部33の構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、軸線方向ADにおいて、第2ネジ部35の長さは、第1ネジ部34の長さと同じであってもよく、第1ネジ部34の長さよりも長くてもよい。また、例えば、第1ネジ部34の有効径は、第2ネジ部35の有効径の100.30%以上に限らず、第2ネジ部35の有効径の100%を超える任意の値であってもよい。このような構成によっても、第1ネジ部34の有効径が第2ネジ部35の有効径よりも大きく形成されることによって、エンジンヘッド90の損傷を抑制しつつ、気密性の低下を抑制できる。
【0041】
上記実施形態におけるスパークプラグ100の構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、スパークプラグ100は、主体金具30の先端にカバーを備えて副燃焼室が形成されたプレチャンバープラグであってもよい。
【0042】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…絶縁体、11…軸孔、20…中心電極、21…先端部、30…主体金具、31…軸孔、32…工具係合部、33…ネジ部、34…第1ネジ部、35…第2ネジ部、37…貫通孔、40…接地電極、41…一端部、42…他端部、50…端子金具、61…先端側シール材、62…抵抗体、63…後端側シール材、90…エンジンヘッド、93…雌ネジ部、95…燃焼室、100…スパークプラグ、AD…軸線方向、CA…軸線、G…放電ギャップ
図1
図2