(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電池モジュールおよびスペーサ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20240613BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240613BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20240613BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240613BHJP
H01M 10/6561 20140101ALI20240613BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20240613BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20240613BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M10/613
H01M10/6551
H01M50/209
H01M10/6561
H01M10/6557
H01M50/293
(21)【出願番号】P 2021138802
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2023-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村石 康輔
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-096465(JP,A)
【文献】特開2015-064959(JP,A)
【文献】特開2017-157407(JP,A)
【文献】特開2019-149248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/289 - 293
H01M 10/613
H01M 10/6551
H01M 50/209
H01M 10/6561
H01M 10/6557
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルと、前記電池セル同士の間に配置される合成樹脂製のスペーサとを交互に積層してなる電池モジュールであって、
前記スペーサは、
両隣の前記電池セルの主面における一方の端部からもう一方の端部へ向かう方向に設けられ、互いに間隔を開けて配列された複数のバー部と、
各前記バー部から、一方の前記電池セルの側に、かつ前記バー部から第1の向きに伸びて形成され、一方の前記電池セルの主面
を押圧している第1フィン部と、
各前記バー部から、もう一方の前記電池セルの側に、かつ前記第1の向きと逆の第2の向きに伸びて形成され、もう一方の前記電池セルの主面
を押圧している第2フィン部とを有しており、
前記第1フィン部の前記バー部から前記第1の向きへの伸び長さである第1フィン長、および、前記第2フィン部の前記バー部から前記第2の向きへの伸び長さである第2フィン長について、
両者がいずれも前記バー部同士の間隔より小さいことと、
両者の合計が前記バー部同士の間隔より大きいこととのいずれもが成り立
ち、
前記スペーサの両隣の前記電池セルの主面は、前記バー部同士の間では、前記複数のバー部の配列方向について隙間なく、前記第1フィン部および前記第2フィン部の少なくともどちらかにより、一方が他方から遠ざかる向きへの押圧を受けている電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールであって、
前記複数のバー部の配列中の端部寄りのバー部に設けられている前記第1フィン部の前記第1フィン長および前記第2フィン部の前記第2フィン長が、
前記複数のバー部の配列中の中央寄りのバー部に設けられている前記第1フィン部の前記第1フィン長および前記第2フィン部の前記第2フィン長より大きい電池モジュール。
【請求項3】
電池モジュールを構成する複数の電池セル同士の間に配置される合成樹脂製のスペーサであって、
両隣の電池セルの主面における一方の端部からもう一方の端部へ向かう方向に設けられ、互いに間隔を開けて配置された複数のバー部と、
各前記バー部から一方の電池セルの側に
、前記複数のバー部の配列方向に対して斜め方向に伸びて形成され
ており、かつ先端が、前記バー部よりも、一方の電池セルの側へと突き出ている第1フィン部と、
各前記バー部からもう一方の電池セルの側にかつ前記第1フィン部の斜め方向と逆向きの斜め方向に伸びて形成され
ており、かつ先端が、前記バー部よりも、もう一方の電池セルの側へと突き出ている第2フィン部とを有し、
前記第1フィン部の伸び長さである第1フィン長、および、前記第2フィン部の伸び長さである第2フィン長について、
両者がいずれも前記バー部同士の間隔より小さいことと、
両者の合計が前記バー部同士の間隔より大きいことと、
両者の前記複数のバー部の配列方向への投影長の合計が前記バー部同士の間隔より小さいこととのいずれもが成り立つスペーサ。
【請求項4】
請求項3に記載のスペーサであって、
前記複数のバー部の配列中の端部寄りのバー部に設けられている前記第1フィン部の前記第1フィン長および前記第2フィン部の前記第2フィン長が、
前記複数のバー部の配列中の中央寄りのバー部に設けられている前記第1フィン部の前記第1フィン長および前記第2フィン部の前記第2フィン長より大きいスペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、複数の電池セルと、電池セル同士の間に配置される合成樹脂製のスペーサとを交互に積層してなる電池モジュール、および、電池モジュールを構成する複数の電池セル同士の間に配置される合成樹脂製のスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池モジュールとして、特許文献1に記載されているものを挙げることができる。この文献の電池モジュールでは、電池セル同士の間にスペーサを配置している。スペーサには、両隣の電池セルの主面に挟み込まれる壁部に、壁部を厚み方向に貫通する切り欠き部が形成されている。そして、このようなスペーサを用い、切り欠き部に冷却用気体を通過させることで、スペーサを介して隣接する電池セル同士の温度差が大きくなってしまうことが低減されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のような技術では、スペーサを厚み方向に貫通する冷却用気体の通過経路が、想定よりも狭くなってしまうおそれがあった。すなわち、電池モジュールにおける電池セルは、ケース内部で発生したガスによって内部圧力が上昇し、膨張することがあり得る。膨張した電池セルの一部は、スペーサに設けられた冷却用気体の通過経路へと進入する可能性がある。つまり、電池セルに膨張が生じた場合、スペーサに設けられた冷却用気体の通過経路が、電池セルに膨張が生じていない場合よりも狭くなってしまう可能性があった。これにより、電池セルの冷却が適切になされない可能性があった。
【0005】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、電池セル同士の間の空間を適切に確保することで、電池セルを適切に冷却できる電池モジュール、および、スペーサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様は、複数の電池セルと、電池セル同士の間に配置される合成樹脂製のスペーサとを交互に積層してなる電池モジュールであって、スペーサは、両隣の電池セルの主面における一方の端部からもう一方の端部へ向かう方向に設けられ、互いに間隔を開けて配列された複数のバー部と、各バー部から、一方の電池セルの側に、かつバー部から第1の向きに伸びて形成され、一方の電池セルの主面に接する第1フィン部と、各バー部から、もう一方の電池セルの側に、かつ第1の向きと逆の第2の向きに伸びて形成され、もう一方の電池セルの主面に接する第2フィン部とを有しており、第1フィン部のバー部から第1の向きへの伸び長さである第1フィン長、および、第2フィン部のバー部から第2の向きへの伸び長さである第2フィン長について、両者がいずれもバー部同士の間隔より小さいことと、両者の合計がバー部同士の間隔より大きいこととのいずれもが成り立つ電池モジュールである。
【0007】
上記態様における電池モジュールでは、第1フィン部および第2フィン部は、バー部同士の間の空間について、両隣の電池セル同士の間の大きさを適切に確保することができる。第1フィン部は、バー部の配列方向について、第2フィン部によって電池セルが押圧されていない領域について、第2フィン部の反対側の電池セルを押圧できるからである。第2フィン部についても同様である。これにより、例えば、膨張した電池セルの主面が、バー部同士の間の空間に進入してしまうことを抑制できる。よって、両隣の電池セルから、バー部同士の間の空間への放熱が適切に行われる。従って、電池セルを適切に冷却できる。
【0008】
上記態様の電池パックではさらに、複数のバー部の配列中の端部寄りのバー部に設けられている第1フィン部の第1フィン長および第2フィン部の第2フィン長が、複数のバー部の配列中の中央寄りのバー部に設けられている第1フィン部の第1フィン長および第2フィン部の第2フィン長より大きいことが望ましい。このようにすることで、電池モジュールにおいて電池セルの中央寄りの部分に大きな膨張が生じたとしても、大きなフィン長の第1フィン部、第2フィン部によって、電池セルの端部寄りの箇所を適切に押圧できる。これにより、電池セル同士の間の空間を、バー部の配列方向について均等に確保することができる。
【0009】
本開示技術の他の態様は、電池モジュールを構成する複数の電池セル同士の間に配置される合成樹脂製のスペーサであって、両隣の電池セルの主面における一方の端部からもう一方の端部へ向かう方向に設けられ、互いに間隔を開けて配置された複数のバー部と、各バー部から一方の電池セルの側に斜め方向に伸びて形成された第1フィン部と、各バー部からもう一方の電池セルの側にかつ第1フィン部の斜め方向と逆向きの斜め方向に伸びて形成された第2フィン部とを有し、第1フィン部の伸び長さである第1フィン長、および、第2フィン部の伸び長さである第2フィン長について、両者がいずれもバー部同士の間隔より小さいことと、両者の合計がバー部同士の間隔より大きいことと、両者の複数のバー部の配列方向への投影長の合計がバー部同士の間隔より小さいこととのいずれもが成り立つスペーサである。
【0010】
上記態様におけるスペーサでは、第1フィン部および第2フィン部は、バー部同士の間の空間について、両隣の電池セル同士の間の大きさを適切に確保することができる。第1フィン部は、バー部の配列方向について、第2フィン部によって電池セルが押圧されていない領域について、第2フィン部の反対側の電池セルを押圧できるからである。第2フィン部についても同様である。これにより、例えば、膨張した電池セルの主面が、バー部同士の間の空間に進入してしまうことを抑制できる。よって、両隣の電池セルから、バー部同士の間の空間への放熱が適切に行われる。従って、電池セルを適切に冷却できる。さらに、第1フィン部、第2フィン部のバー部の配列方向への投影長の合計が、バー部同士の間隔よりも小さい。これにより、スペーサを、複雑な構成の金型を用いることなく安価に製造できる。
【0011】
上記態様のスペーサではさらに、複数のバー部の配列中の端部寄りのバー部に設けられている第1フィン部の第1フィン長および第2フィン部の第2フィン長が、複数のバー部の配列中の中央寄りのバー部に設けられている第1フィン部の第1フィン長および第2フィン部の第2フィン長より大きいことが望ましい。このようにすることで、電池モジュールにおいて電池セルの中央寄りの部分に大きな膨張が生じたとしても、大きなフィン長の第1フィン部、第2フィン部によって、電池セルの端部寄りの箇所を適切に押圧できる。これにより、電池セル同士の間の空間を、バー部の配列方向について均等に確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示技術によれば、電池セル同士の間の空間を適切に確保することで、電池セルを適切に冷却できる電池モジュール、および、スペーサが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る電池モジュールの外観斜視図である。
【
図2】電池モジュールの断面図(
図1に示すA-A断面)である。
【
図4】第1実施形態に係る非圧縮状態の空間形成部の断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る圧縮状態の空間形成部の断面図である。
【
図6】スペーサを射出成形により成形する成形型について説明する図である。
【
図7】第2実施形態に係る空間形成部を説明する図である。
【
図8】電池セルの膨張が大きい場合の第1実施形態に係る空間形成部について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態である第1実施形態および第2実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。最初に第1実施形態について説明し、その後、第2実施形態について第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0015】
<第1実施形態>
本形態は、
図1にその全体構成を示す電池モジュール1に本開示技術を適用したものである。
図1の電池モジュール1は、ロアケース2に複数の電池セル3を詰めたものである。
図1には、X方向、Y方向、Z方向を示している。本形態の電池セル3は、外形が扁平状の角型のものである。複数の電池セル3はいずれも、X方向に厚み方向を、Y方向に幅方向を、Z方向に高さ方向をそれぞれ合わせて設けられている。
【0016】
複数の電池セル3は、ロアケース2の内部でX方向に積層して配置されている。電池モジュール1は、複数の電池セル3がX方向に積層されてなる電池群を、Y方向について2つ、備えている。電池モジュール1は、実際に使用される場面では
図1に示す状態に対してさらにバスバー、極柱端子、アッパーケース等が取り付けられるが、それらは本開示技術における特徴点ではないのでここでは省略する。
【0017】
図1の電池モジュール1のA-A位置での断面図を
図2に示す。
図2に示されるようにロアケース2は、フロア部4とエンドウォール部5とを有している。フロア部4は、複数の電池セル3より下方に位置する部位である。エンドウォール部5は、複数の電池セル3の側方に位置する部位である。ロアケース2に収納されている複数の電池セル3は、スペーサ6と交互に積層されている。両端の電池セル3とエンドウォール部5との間には、エンドプレート9が挟み込まれている。スペーサ6およびエンドプレート9は、合成樹脂製のものである。本形態では、スペーサ6およびエンドプレート9に、絶縁性と、ある程度の伸縮性とのある合成樹脂材を用いている。
【0018】
電池セル3は、X方向における両端にそれぞれ位置する主面31を有している。本形態の電池セル3において、主面31は、外面のうちで最も面積の大きな面である。スペーサ6は、X方向における両端にそれぞれ位置する対向面61にて、隣り合う電池セル3の主面31と対向している。
【0019】
電池モジュール1において、電池セル3、スペーサ6、エンドプレート9は、これらよりもX方向における外側に位置する両端のエンドウォール部5により、X方向について拘束されている。これにより、電池セル3、スペーサ6、エンドプレート9は、X方向について圧縮荷重を受けている。電池モジュール1にて圧縮状態の電池セル3、スペーサ6、エンドプレート9はいずれも、X方向について、非圧縮状態のときよりも縮んでいる。
【0020】
図3は、スペーサ6の斜視図である。スペーサ6は、空間形成部70を有している。空間形成部70は、Y方向およびZ方向について、スペーサ6の中央部分に設けられている。空間形成部70は、スペーサ6の両隣にそれぞれ位置する電池セル3同士の間に空間を形成できる部分である。
【0021】
スペーサ6は、空間形成部70に、Y方向に伸びるバー部71を有している。つまり、バー部71は、両隣の電池セル3の主面31における一方の端部からもう一方の端部へ向かう方向に設けられている。また、スペーサ6は、バー部71を複数有している。複数のバー部71は、Z方向について、互いに間隔を開けて配列されている。複数のバー部71にはそれぞれ、フィン部72が設けられている。
【0022】
次に、
図4および
図5により空間形成部70について詳細に説明する。
図4および
図5はともに、スペーサ6の空間形成部70の断面図である。
図4には、非圧縮状態の空間形成部70を、両隣の電池セル3とともに示している。
図5には、圧縮状態の空間形成部70を、両隣の電池セル3とともに示している。
【0023】
図4に示すように、バー部71には、フィン部72として、第1フィン部72Aと、第2フィン部72Bとが設けられている。第1フィン部72Aは、バー部71から矢印Aの向きに伸びて形成されている。第2フィン部72Bは、バー部71から矢印Bの向きに伸びて形成されている。
【0024】
矢印Aの向きは、バー部71から
図4における右隣の電池セル3の側に斜め方向に伸びている。矢印Bの向きは、バー部71から
図4における左隣の電池セル3の側に斜め方向に伸びている。矢印Bの向きは、矢印Aの向きと逆向きである。
図4には、Z方向に対して矢印Aの向きがなす鋭角側の角度θAと、Z方向に対して矢印Bの向きがなす鋭角側の角度θBとを示している。本形態において、角度θAと角度θBとは、同じ角度である。
【0025】
図4に示す非圧縮状態において、第1フィン部72Aの先端は、バー部71よりも、右隣の電池セル3の側へと突き出ている。また、非圧縮状態において、第2フィン部72Bの先端は、バー部71よりも、左隣の電池セル3の側へと突き出ている。バー部71は、右隣の電池セル3の主面31にも、左隣の電池セル3の主面31にも接触していない。
【0026】
第1フィン部72Aの伸び長さであるフィン長LAと、第2フィン部72Bの伸び長さであるフィン長LBとはいずれも、隣り合うバー部71同士の間隔Pよりも小さくされている。本形態においては、第1フィン部72Aのフィン長LAと、第2フィン部72Bのフィン長LBとは同じ長さである。また、第1フィン部72Aのフィン長LAと、第2フィン部72Bのフィン長LBとの合計は、バー部71の間隔Pよりも大きくされている。
【0027】
さらに、第1フィン部72Aのフィン長LAのバー部71の配列方向への投影長LZAと、第2フィン部72Bのフィン長LBのバー部71の配列方向への投影長LZBとを示している。投影長LZA、LZBはそれぞれ、第1フィン部72A、第2フィン部72Bの配列方向における長さである。非圧縮状態において、第1フィン部72Aの投影長LZAと、第2フィン部72Bの投影長LZBとの合計は、バー部71同士の間隔Pよりも小さくされている。このため、非圧縮状態において、バー部71の間にて隣り合う第1フィン部72Aと第2フィン部72Bとの先端同士の間には、Z方向について、隙間Gが設けられている。
【0028】
なお、複数のバー部71のうち、バー部71の配列方向において両端に位置するバー部71にはそれぞれ、第1フィン部72Aおよび第2フィン部72Bの一方のみが設けられている。具体的に、バー部71の配列方向の端に位置するバー部71には、第1フィン部72Aおよび第2フィン部72Bのうち、配列方向における内側に向けて伸びるものだけが設けられている。
【0029】
図5に示す圧縮状態では、バー部71の右側には、右隣の電池セル3の主面31が接触している。バー部71の左側には、左隣の電池セル3の主面31が接触している。つまり、圧縮状態では、バー部71は、両隣の電池セル3の主面31によって挟み込まれていることで、X方向について圧縮されつつ、その圧縮に対する反力によって両隣の電池セル3の主面31を互いに遠ざかる向きへと押圧している。これにより、バー部71の位置において、両隣の電池セル3同士の接触が抑制されている。そして、上下に隣り合う2つのバー部71の間には、スペーサ6の両隣の電池セル3の主面31同士が離間してなる空間73が形成されている。
【0030】
第1フィン部72Aは、バー部71の右側に右隣の電池セル3の主面31が接触していることで、右隣の電池セル3の主面31によって左側へと押圧されている。この押圧により、第1フィン部72Aは、右隣の電池セル3の主面31に沿って、非圧縮状態のときよりも左側へと撓んだ形状をしている。この撓んだ状態の第1フィン部72Aは、右隣の電池セル3の主面31に沿って上向きへと伸びている。そして、撓んだ状態の第1フィン部72Aは、その撓みの反力により、右隣の電池セル3の主面31を右側へ向けて押圧している。
【0031】
第2フィン部72Bは、バー部71の左側に左隣の電池セル3の主面31が接触していることで、左隣の電池セル3の主面31によって右側へと押圧されている。この押圧により、第2フィン部72Bは、左隣の電池セル3の主面31に沿って、非圧縮状態のときよりも右側へと撓んだ形状をしている。この撓んだ状態の第2フィン部72Bは、左隣の電池セル3の主面31に沿って下向きへと伸びている。そして、撓んだ状態の第2フィン部72Bは、その撓みの反力により、左隣の電池セル3の主面31を左側へ向けて押圧している。
【0032】
ここで前述したように、第1フィン部72Aのフィン長LAは、隣り合うバー部71同士の間隔Pよりも小さい。このため、右隣の電池セル3の主面31には、バー部71同士の間隔Pにおいて、第1フィン部72Aに覆われていない部分がある。また、第2フィン部72Bのフィン長LBは、隣り合うバー部71同士の間隔Pよりも小さい。このため、左隣の電池セル3の主面31には、バー部71同士の間隔Pにおいて、第2フィン部72Bに覆われていない部分がある。よって、スペーサ6の両隣の電池セル3の主面31にはいずれも、バー部71同士の間隔Pにおいて、空間73に露出している部分がある。つまり、スペーサ6の両隣の電池セル3はいずれも、発熱時には、空間73へと放熱することができる。本形態の電池モジュール1において、空間73は、電池セル3の冷却用の気体が流される冷却用気体の通過経路である。これにより、スペーサ6は、両隣の電池セル3を冷却しつつ、両隣の電池セル3同士の温度差が大きくなってしまうことを抑制できる。
【0033】
また前述したように、第1フィン部72Aのフィン長LAと、第2フィン部72Bのフィン長LBとの合計は、バー部71の間隔Pよりも大きくされている。このため、圧縮状態では、上下に隣り合う2つのバー部71における下側のバー部71に設けられた第1フィン部72Aと、上側のバー部71に設けられた第2フィン部72Bとは、バー部71の配列方向について重なっている。つまり、上下に隣り合う2つのバー部71における下側のバー部71に設けられた第1フィン部72Aと、上側のバー部71に設けられた第2フィン部72Bの先端とには、Z方向における重なりLが設けられている。
【0034】
このようになっていることで、第1フィン部72Aは、右隣りの電池セル3のうち、第2フィン部72Bによって左隣の電池セル3が押圧を受けていない領域と対向する領域を少なくとも押圧している。第2フィン部72Bは、左隣りの電池セル3のうち、第1フィン部72Aによって右隣の電池セル3が押圧を受けていない領域と対向する領域を少なくとも押圧している。つまり、スペーサ6の両隣の電池セル3は、バー部71の間隔PではZ方向について隙間なく、第1フィン部72Aおよび第2フィン部72Bの少なくともどちらかにより、一方が他方から遠ざかる向きへの押圧を受けている。
【0035】
これにより、スペーサ6は、電池セル3が何らかの要因で膨張した場合にも、第1フィン部72Aおよび第2フィン部72Bによる電池セル3の押圧によって、空間73内へと電池セル3が進入することを抑制できる。つまり、スペーサ6は、電池セル3が膨張した場合にも、空間73のX方向の大きさが狭くなることを抑制して、空間73を適切に確保できる。このため、スペーサ6は、電池セル3の膨張により、空間73に流れる冷却用気体の流量が少なくなってしまうこと抑制できる。よって、スペーサ6は、空間73を流れる冷却用気体による電池セル3の冷却機能が低下してしまうことを抑制できる。
【0036】
また、圧縮状態では、上下に隣り合う2つのバー部71の第1フィン部72Aと第2フィン部72Bとがバー部71の配列方向について重なっていることで、スペーサ6の両隣の電池セル3同士が、バー部71の間で接触してしまうことはない。例えば、両隣の電池セル3が膨張してそれぞれ第1フィン部72Aおよび第2フィン部72Bを撓ませつつ空間73へと進入したとしても、両隣の電池セル3の間には必ず、第1フィン部72Aおよび第2フィン部72Bの少なくとも一方が存在するからである。これにより、スペーサ6は、両隣の電池セル3同士の絶縁を確実に維持できる。
【0037】
また、スペーサ6は、非圧縮状態においては、第1フィン部72Aの投影長LZAと、第2フィン部72Bの投影長LZBとの合計が、バー部71同士の間隔Pよりも小さい。これにより、上下に隣り合う2つのバー部71における下側のバー部71に設けられた第1フィン部72Aと、上側のバー部71に設けられた第2フィン部72Bとが、バー部71の配列方向について重ならないようになっている。このようなスペーサ6は、安価に製造できる。
【0038】
図6は、スペーサ6を射出成形により成形する成形型90の断面図である。
図6には、空間形成部70の一部を拡大して示している。
図6に示すように、スペーサ6の成形型90は、第1型91と第2型92とにより構成されている。第1型91および第2型92は、スペーサ6を、X方向について両側から挟み込む配置で設けられている。第1型91および第2型92は、X方向に移動することができる構成である。前述したように、スペーサ6における上下に隣り合う2つのバー部71について、下側のバー部71に設けられた第1フィン部72Aの先端と、上側のバー部71に設けられた第2フィン部72Bの先端との間には、バー部71の配列方向に隙間Gがある。
【0039】
このため、第1型91および第2型92をいずれも、成形型90の内部にて成形したスペーサ6に干渉させることなく、X方向について互いに遠ざかる向きに移動させて型開きをすることができる。つまり、成形型90には、溶融樹脂を射出後に固化した第1フィン部72A、第2フィン部72Bとの干渉を避けるための、第1型91および第2型92の移動方向と交差する方向に移動するスライド機構等は不要である。これにより、成形型90を安価なものとすることができる。よって、スペーサ6を安価に製造できる。
【0040】
以上詳細に説明したように本実施形態に係る電池モジュール1では、複数の電池セル3と、電池セル3同士の間に配置される合成樹脂製のスペーサ6とが交互に積層されている。スペーサ6は、両隣の電池セル3の主面31における一方の端部からもう一方の端部へ向かう方向であるZ方向に設けられ、互いに間隔Pを開けて配列された複数のバー部71を有する。また、スペーサ6は、各バー部71に設けられた第1フィン部72Aと、第2フィン部72Bとを有する。第1フィン部72Aは、電池モジュール1に組み付けられる前においては、バー部71から両隣の電池セル3のうちの一方の電池セル3の側に斜め方向に伸びて形成されている。第2フィン部72Bは、電池モジュール1に組み付けられる前には、バー部71から、もう一方の電池セル3の側にかつ第1フィン部72Aの斜め方向とは逆向きの斜め方向に伸びて形成されている。第1フィン部72Aは、電池モジュール1に組み付けられて拘束を受けた圧縮状態では、バー部71から、一方の電池セル3の側に、かつバー部71から上向きに伸びた形状をとりつつ、電池セル3の主面31に接する。第2フィン部72Bは、電池モジュール1に組み付けられた圧縮状態では、バー部71から、もう一方の電池セル3の側に、かつ下向きに伸びた形状をとりつつ、電池セル3の主面31に接する。第1フィン部72Aのバー部71からの伸び長さであるフィン長LA、および、第2フィン部72Bのバー部71からの伸び長さであるフィン長LBはいずれも、バー部71同士の間隔Pより小さい。さらに、第1フィン部72Aのフィン長LA、および、第2フィン部72Bのフィン長LBの合計は、バー部71同士の間隔Pより大きい。このため、第1フィン部72Aおよび第2フィン部72Bは、バー部71同士の間の空間73について、両隣の電池セル3同士の間の大きさを適切に確保することができる。第1フィン部72Aは、バー部71の配列方向について、第2フィン部72Bによって電池セル3が押圧されていない領域について、第2フィン部72Bの反対側の電池セル3を押圧できるからである。第2フィン部72Bについても同様である。これにより、例えば、膨張した電池セル3の主面31が、バー部71同士の間の空間73に進入してしまうことを抑制できる。よって、両隣の電池セル3から、バー部71同士の間の空間73への放熱が適切に行われる。従って、電池セル同士の間の空間を適切に確保することで、電池セルを適切に冷却できる電池モジュールおよびスペーサが実現されている。また、スペーサ6は、第1フィン部72A、第2フィン部72Bのバー部71の配列方向への投影長LZA、LZBの合計が、バー部71同士の間隔Pよりも小さい。これにより、スペーサ6を、複雑な構成の金型を用いることなく安価に製造できる。
【0041】
<第2実施形態>
次に、上記の第1実施形態とは異なる第2実施形態について説明する。本形態では、スペーサにおける空間形成部の構成が第1実施形態と異なる。他の構成については第1実施形態と同様とすることができる。よって、本形態では、第1実施形態と異なる空間形成部の構成について説明する。
【0042】
図7は、本形態のスペーサ6の空間形成部75のX方向における断面図である。
図7には、非圧縮状態の空間形成部75を示している。
図7に示すように、本形態においても、複数のバー部71から両隣の電池セル3に向けてそれぞれフィン部が設けられている。本形態の空間形成部75では、第1実施形態と比較し、複数のバー部71の配列中の両端に位置する第1フィン部、第2フィン部がそれぞれ、第1フィン部72C、第2フィン部72Dとされている点において異なる。すなわち、Z方向に配列された複数のバー部71の中央寄りのものには、第1フィン部72A、第2フィン部72Bが設けられている。一方、複数のバー部71の配列中の端部寄りのバー部71には、右隣の電池セル3の側に第1フィン部72Cが、左隣の電池セル3の側に第2フィン部72Dが設けられている。
【0043】
第1フィン部72Cの向きである矢印Cの向きは、バー部71から右隣の電池セル3の側に斜め方向に伸びている。第2フィン部72Dの向きである矢印Dの向きは、バー部71から左隣の電池セル3の側に斜め方向に伸びている。矢印Dの向きは、矢印Cの向きと逆向きである。
図7には、Z方向に対して矢印Cの向きがなす鋭角側の角度θCと、Z方向に対して矢印Dの向きがなす鋭角側の角度θDとを示している。本形態において、角度θCと角度θDとは、同じ角度である。
図7に示す非圧縮状態において、第1フィン部72Cの先端は、バー部71よりも、右隣の電池セル3の側へと突き出ている。また、非圧縮状態において、第2フィン部72Dの先端は、バー部71よりも、左隣の電池セル3の側へと突き出ている。
【0044】
第1フィン部72Cの伸び長さであるフィン長LCと、第2フィン部72Dの伸び長さであるフィン長LDとはいずれも、隣り合うバー部71同士の間隔Pよりも小さくされている。本形態においては、第1フィン部72Cのフィン長LCと、第2フィン部72Dのフィン長LDとは、同じ長さである。また、第1フィン部72Cのフィン長LCと、第2フィン部72Dのフィン長LDとの合計は、バー部71の間隔Pよりも大きくされている。これにより、第1フィン部72C、第2フィン部72Dについても、圧縮状態では、上下に隣り合う2つのバー部71のもの同士がバー部71の配列方向について重なる。これにより、本形態においても、スペーサ6の空間形成部75は、圧縮状態において、両隣の電池セル3の間に適切に空間を形成し、そこに流れる冷却用気体による電池セル3の冷却機能が低下してしまうことを抑制できる。さらに、本形態のスペーサ6についても、両隣の電池セル3同士の絶縁を確実に維持できる。
【0045】
さらに、第1フィン部72Cのフィン長LCおよび第2フィン部72Dのフィン長LDはともに、第1フィン部72Aのフィン長LA、第2フィン部72Bのフィン長LBよりも大きい。このようになっていることで、両隣の電池セル3の一方が他方に対して傾くことを抑制できる。
【0046】
図7には、膨張した状態の電池セル3を示している。
図7に示すように、電池セル3の膨張は、高さ方向であるZ方向の端部よりも、中央部分の方が大きなものとなる傾向にある。そして、電池セル3にて大きな膨張が生じた場合、フィン部のフィン長が一定であると、
図8に示すように、Z方向における一方の端部側のみの第1フィン部72A、第2フィン部72Bに主面31が接触するように電池セル3が傾いてしまうことがある。
【0047】
フィン部のフィン長が一定である場合、膨張している電池セル3の中央付近については、第1フィン部72A、第2フィン部72Bによって主面31を適切に押圧できる。これに対し、電池セル3の両端部付近では、第1フィン部72A、第2フィン部72Bによる主面31の押圧が不十分になってしまう傾向にある。その結果、電池セル3は、Z方向における一方の端部側のバー部71にのみ主面31が接触するように傾いてしまうからである。
図8の例では、スペーサ6の両隣の電池セル3が、上側の間隔の方が下側の間隔よりも狭くなるように傾いている。
【0048】
電池セル3が傾いてしまった場合、複数のバー部71の間に形成される冷却用気体の通過経路の断面積は、Z方向について、大きさの異なるものとなってしまう。この場合、電池セル3のZ方向における一端側と他端部側とをともに、均一に冷却することができない、さらには、傾きが生じた電池セル3が多く積層された電池群においては、積層方向について蛇行が生じてしまう原因となる。
【0049】
一方、本形態のように、Z方向における端部寄りにフィン長の長い第1フィン部72C、第2フィン部72Dを配置した本形態では、スペーサ6の隣の電池セル3の中央付近に大きな膨張が生じたとしても、電池セル3の傾きが抑制される。電池セル3の両端部をともに、フィン長の長い第1フィン部72C、第2フィン部72Dによって適切に押圧することができるからである。これにより、多くの電池セル3を積層してなる電池群を、各電池セル3が積層方向に真っ直ぐに並んだ状態にすることができる。またこれにより、空間形成部75により形成される冷却用気体の複数の通過経路はいずれも、Z方向について同程度の大きさとすることができる。よって、電池セル3のZ方向における一端側と他端部側とをともに、均一に冷却できる。
【0050】
また、
図7に示す第1フィン部72Cの角度θC、第2フィン部72Dの角度θDは、第1フィン部72Aの角度θA、第2フィン部72Bの角度θBよりも大きい。つまり、第1フィン部72A、第2フィン部72Bよりもフィン長の長い第1フィン部72C、第2フィン部72Dは、第1フィン部72A、第2フィン部72Bよりも、Z方向に対する傾きが大きい。これにより、非圧縮状態において、第1フィン部72Cのフィン長LCのバー部71の配列方向への投影長LZCと、第2フィン部72Dのフィン長LDのバー部71の配列方向への投影長LZDとの合計は、バー部71同士の間隔Pよりも小さくされている。すなわち、フィン長の長い第1フィン部72C、第2フィン部72Dについても、非圧縮状態では、バー部71の配列方向について重なっておらず、これらの先端同士の間には、Z方向について、隙間Gが設けられている。よって、第1実施形態と同様に、本形態のスペーサ6についても、これを射出成形により成形する成形型を安価なものとすることができる。成形型に、固化した第1フィン部72C、第2フィン部72Dとの干渉を避けるためのスライド機構等は不要だからである。よって、本形態のスペーサ6についても、安価に製造できる。
【0051】
以上詳細に説明したように本実施形態に係る電池モジュールのスペーサ6は、複数のバー部71の配列中の端部寄りのバー部71に、第1フィン部72C、第2フィン部72Dが設けられている。これら端部寄りのバー部71に設けられている第1フィン部72C、第2フィン部72Dのフィン長LC、LDは、中央寄りのバー部に設けられている第1フィン部72A、第2フィン部72Bのフィン長LA、LBよりも大きい。このため、電池モジュールにおいて電池セル3の中央寄りの部分に大きな膨張が生じたとしても、大きなフィン長の第1フィン部72C、第2フィン部72Dによって、電池セル3の端部寄りの箇所を適切に押圧できる。これにより、電池セル同士の間の空間を、バー部の配列方向について均等に確保することができる。よって、電池セルを適切に冷却できる。
【0052】
上記実施の形態はいずれも単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。従って本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。
【0053】
例えば、上記実施の形態では、バー部の配列方向が電池セルの高さ方向である例について説明した。しかし、バー部の配列方向は、例えば、電池セルの幅方向であってもよい。また例えば、バー部の数等は、単なる一例にすぎず、適宜変更することができる。
【0054】
また上記実施の形態の適用対象は、電池種(ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の種別)については特段の限定はない。
【符号の説明】
【0055】
1 電池モジュール 71 バー部
3 電池セル 72 フィン部
6 スペーサ 72A、72C 第1フィン部
31 主面 72B、72D 第2フィン部