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特許7503530組電池に関わる推定方法、データ処理装置及び組電池に関わる推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】組電池に関わる推定方法、データ処理装置及び組電池に関わる推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/26 20060101AFI20240613BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240613BHJP
【FI】
G01R27/26 L
G01R31/389
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021148104
(22)【出願日】2021-09-10
(65)【公開番号】P2023040910
(43)【公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】306020818
【氏名又は名称】トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】森山 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 俊高
(72)【発明者】
【氏名】芝田 徹
(72)【発明者】
【氏名】中塚 裕司
(72)【発明者】
【氏名】須田 光利
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-44106(JP,A)
【文献】国際公開第2010/110377(WO,A1)
【文献】特開昭63-274876(JP,A)
【文献】特開2000-28662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
G01R 27/00
H01M 10/42
H02J 7/00
G01R 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置が、所定単位の数を有する電池セルと、当該電池セルに接続される配線とを含む経路のインダクタンスを測定する第1工程と、
データ処理装置が、所定単位の数を有する前記電池セルを流れる電流を仮想電流線と仮定して、当該仮想電流線と、前記仮想電流線に接続される配線とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出する第2工程と、
前記データ処理装置が、前記第2工程で導出される前記算出式の変数を変えることにより、前記算出式から得られるインダクタンスを、前記第1工程で測定されるインダクタンスに調整して、変数を決定する第3工程と、
前記データ処理装置が、前記第3工程で決定される変数を利用して、組電池の配線及び電池セルの数に応じた自己インダクタンスを推定する第4工程と、
を実行する組電池に関わる推定方法。
【請求項2】
前記第2工程で導出される算出式は、前記仮想電流線に関する変数と、前記電池セルの内部インダクタンスに関する変数とを含む
請求項1に記載の組電池に関わる推定方法。
【請求項3】
前記第2工程では、前記仮想電流線を円筒形と仮定して、前記仮想電流線に関する変数として前記仮想電流線の半径を変数とする
請求項2に記載の組電池に関わる推定方法。
【請求項4】
前記第4工程では、前記第3工程で決定される前記仮想電流線の変数としての半径に基づいて、経路の外部インダクタンスを算出すると共に、前記第3工程で決定される前記電池セルの内部インダクタンスを組電池の電池セルの数だけ加算して内部インダクタンスを算出し、当該外部インダクタンスと当該内部インダクタンスとを加算することにより組電池の電池セルの数に応じた自己インダクタンスを推定する
請求項3に記載の組電池に関わる推定方法。
【請求項5】
前記第1工程では、前記電池セルに接続される配線の取り回しを変えた複数のパターンでインダクタンスを測定する
請求項1又は2に記載の組電池に関わる推定方法。
【請求項6】
所定単位の数を有する電池セルと、当該電池セルに接続される配線とを含む経路のインダクタンスを測定した測定情報及び組電池情報を取得する取得部と、
所定単位の数を有する前記電池セルを流れる電流を仮想電流線と仮定して、当該仮想電流線と、前記仮想電流線に接続される配線とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出する導出部と、
前記導出部で導出される前記算出式の変数を変えることにより、前記算出式から得られるインダクタンスを、前記取得部で取得する測定情報に基づくインダクタンスに調整して、変数を決定する決定部と、
前記決定部で決定される変数を利用して、組電池の配線及び電池セルの数に応じた自己インダクタンスを推定する推定部と、
を備えるデータ処理装置。
【請求項7】
コンピュータに、
所定単位の数を有する電池セルと、当該電池セルに接続される配線とを含む経路のインダクタンスを測定した測定情報及び組電池情報を取得する取得機能と、
所定単位の数を有する前記電池セルを流れる電流を仮想電流線と仮定して、当該仮想電流線と、前記仮想電流線に接続される配線とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出する導出機能と、
前記導出機能で導出される前記算出式の変数を変えることにより、前記算出式から得られるインダクタンスを、前記取得機能で取得する測定情報に基づくインダクタンスに調整して、変数を決定する決定機能と、
前記決定機能で決定される変数を利用して、組電池の配線及び電池セルの数に応じた自己インダクタンスを推定する推定機能と、
を実現させる組電池に関わる推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組電池に関わる推定方法、データ処理装置及び組電池に関わる推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車等の電動車両の普及が進んでいる。電動車両には二次電池が使用されるため、その二次電池の特性を評価する試みが行われている。
例えば、特許文献1に記載される情報処理装置は、二次電池の交流インピーダンスを測定して、交流インピーダンスの実数成分と虚数成分とをボード線図である周波数特性図にプロットし、そのプロットの結果に対するフィッティング処理により多項式曲線を取得し、その多項式曲線をナイキスト線図上のインピーダンス曲線に変換し、そのインピーダンス曲線から等価回路の回路定数を抽出し、その回路定数から等価回路の特性を評価している。ここで、回路定数は、抵抗成分、容量成分及び内部インダクタンス成分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-191030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動車両のパワートレインが構成する電気回路では、電気的なLC回路共振が問題になる場合がある。そのLC回路共振を回避するためには、設計段階においてインダクタンス及びキャパシタンスの値を把握し、その電気回路の設計に反映させることが重要である。しかしながら、複数の二次電池から構成される組電池を制作する前の段階で、インダクタンスの値を正確に把握する方法は知られていない。ここで、そのインダクタンスは、二次電池の内部インダクタンスと、二次電池に接続される回路の外部インダクタンスとを含む。
【0005】
本開示は、インダクタンスを推定する組電池に関わる推定方法、データ処理装置及び組電池に関わる推定プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の組電池に関わる推定方法では、測定装置が、所定単位の数を有する電池セルと、その電池セルに接続される配線とを含む経路のインダクタンスを測定する第1工程と、データ処理装置が、所定単位の数を有する電池セルを流れる電流を仮想電流線と仮定して、その仮想電流線と、仮想電流線に接続される配線とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出する第2工程と、データ処理装置が、第2工程で導出される算出式の変数を変えることにより、算出式から得られるインダクタンスを、第1工程で測定されるインダクタンスに調整して、変数を決定する第3工程と、データ処理装置が、第3工程で決定される変数を利用して、組電池の配線及び電池セルの数に応じた自己インダクタンスを推定する第4工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、仮想電流線と仮定して、仮想電流線とその仮想電流線に接続される配線とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出し、その算出式の変数を変えることにより算出式から得られるインダクタンスを、測定されるインダクタンスに調整して、変数を決定し、その変数を利用して、組電池の配線及び電池セルの数に応じた自己インダクタンスを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るデータ処理システムについて説明するための図である。
図2】一実施形態に係るデータ処理装置について説明するためのブロック図である。
図3】一実施形態に係るデータ処理方法について説明するためのフローチャートである。
図4】一実施形態に係るデータ処理方法について説明するための第1の図である。
図5】一実施形態に係るデータ処理方法について説明するための第2の図である。
図6】一実施形態に係るデータ処理方法について説明するための第3の図である。
図7】内部インダクタンスを求める際の一例について説明するための第1の図である。(A)~(B)は導体等を説明するための第1~2の図である。
図8】内部インダクタンスを求める際の一例について説明するための第2の図である。(A)~(C)は導体と内部インダクタンスを求める際に利用する符号を説明するための第1~3の図である。
図9】自己インダクタンスLcalの算出式を導出する際の一例について説明するための図である。(A)~(D)は算出式を導出する際の座標等を説明する第1~4の図である。
図10】一実施形態に係るデータ処理方法について説明するための第4の図である。
図11】一実施形態に係るデータ処理方法について説明するための第5の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について説明する。
【0010】
[データ処理システム1の概要]
まず、一実施形態に係るデータ処理システム1の概要について説明する。
図1は、一実施形態に係るデータ処理システム1について説明するための図である。
【0011】
データ処理システム1は、例えば、測定装置100及びデータ処理装置200等を備えてもよい。
データ処理システム1は、例えば、複数の二次電池等の電池セル301で構成される組電池を含む経路のインダクタンスを推定する組電池インダクタンス推定システムであってよい。また、データ処理装置200は、例えば、組電池のインダクタンスを推定するための組電池に関わる推定装置であってもよい。データ処理システム1で実行されるデータ処理プログラムは、例えば、組電池のインダクタンスを推定する組電池に関わる推定プログラムであってもよい。データ処理システムで実行されるデータ処理方法は、例えば、組電池のインダクタンスを推定する組電池に関わる推定方法であってもよい。
【0012】
測定装置100は、例えば、電池セル301を含む経路のインダクタンスを測定する装置であってもよい。一例として、測定装置100は、交流インピーダンス法等を始めとする種々の測定方法により、インダクタンスを測定する装置であってもよい。測定装置100は、例えば、所定単位数の電池セル301を含む経路のインダクタンスを測定する装置であってもよい。すなわち、測定装置100は、組電池を構成する、所定単位の数を有する電池セル301と、その電池セル301に接続される配線302とを含む経路のインダクタンスを測定する(第1工程)。
【0013】
データ処理装置200は、例えば、複数の電池セル301で構成される組電池を含む経路のインダクタンスを推定するインダクタンス推定装置であってもよい。データ処理装置200は、例えば、サーバ、デスクトップ、ラップトップ及びタブレット等のコンピュータであってもよい。
【0014】
データ処理装置200は、所定単位の数を有する電池セル301を流れる電流が仮想電流線を流れる、すなわち電池セル301それ自体を仮想電流線として近似する。データ処理装置200は、その仮想電流線と、仮想電流線に接続される配線とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出する(第2工程)。算出式は、例えば、経路の内部インダクタンスと外部インダクタンスとを含む自己インダクタンスを算出する式であってもよい。算出式には、変数が含まれてもよい。その変数は、例えば、仮想電流線を円筒形と仮定した際の半径、及び、仮想電流線のインダクタンス(例えば、内部インダクタンス)であってもよい。
【0015】
データ処理装置200は、第2工程で導出される算出式の変数を変えることにより、算出式から得られるインダクタンス(自己インダクタンス)を、第1工程で測定されるインダクタンスに調整(フィッティング)して、変数を決定する(第3工程)。
データ処理装置200は、第3工程で決定される変数を利用して、組電池の電池セル301の数に応じた自己インダクタンスを推定する(第4工程)。すなわち、データ処理装置200は、例えば、所定単位数の電池セル301の自己インダクタンスに基づいて、設計段階において想定される組電池を構成する電池セル301の数に応じた自己インダクタンスを算出する。
【0016】
[データ処理装置200の詳細]
次に、一実施形態に係るデータ処理装置200の詳細について説明する。
図2は、一実施形態に係るデータ処理装置200について説明するためのブロック図である。
【0017】
データ処理装置200は、例えば、通信部211、記憶部212、表示部213及び制御部201等を備える。通信部211、記憶部212及び表示部213は、出力部の一実施形態であってもよい。制御部201は、例えば、取得部202、導出部203、決定部204、推定部205及び出力制御部206等として機能してもよい。制御部201は、例えば、データ処理装置200の演算処理装置等によって構成されてもよい。制御部201(例えば、演算処理装置等)は、例えば、記憶部212等に記憶される各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、各部(例えば、取得部202、導出部203、決定部204、推定部205及び出力制御部206等)の機能を実現してもよい。
【0018】
通信部211は、例えば、データ処理装置200の外部にある装置(外部装置)等との間で種々の情報の送受信が可能である。
外部装置は、例えば、測定装置100等であってもよい。通信部211は、例えば、測定装置100でインダクタンスが測定された結果(測定情報)を受信してもよい。
また、外部装置は、例えば、サーバ及びユーザ端末(図示せず)等であってもよい。ユーザ端末は、例えば、データ処理システム1のユーザが使用する端末等であってもよい。ユーザ端末は、例えば、デスクトップ、ラップトップ、タブレット及びスマートフォン等であってもよい。
【0019】
記憶部212は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶してもよい。記憶部212の一例は、メモリ、ソリッドステートドライブ及びハードディスクドライブ等であってもよい。
【0020】
表示部213は、例えば、種々の文字、記号及び画像等を表示することが可能である。
【0021】
取得部202は、例えば、測定装置100でインダクタンスが測定された結果としての測定情報を取得する。すなわち、取得部202は、所定単位の数を有する電池セル301と、その電池セル301に接続される配線302とを含む経路のインダクタンスを測定した測定情報を取得する。また、取得部202は、複数の電池セル301で構成される組電池に関する組電池情報を取得する。組電池情報は、例えば、組電池を構成する電池セル301の数及び配線の状況(配線経路)等を始めとする種々の情報が含まれてもよい。
取得部202は、例えば、通信部211を介して測定情報を取得してもよい。この場合、取得部202は、例えば、測定装置100から送信される測定情報を通信部211で受信することに基づいて、その測定情報を取得してもよい。又は、取得部202は、例えば、外部装置としてのサーバが測定装置100から測定情報を取得して記憶する場合、制御部201の制御に基づいて、サーバから測定情報を取得してもよい。
又は、取得部202は、例えば、測定装置100で生成される測定情報が外部メモリ(図示せず)等に記憶され、その外部メモリがデータ処理装置200のインターフェース(図示せず)に接続された場合、その外部メモリから測定情報を取得してもよい。
【0022】
測定情報には、例えば、組電池の自己インダクタンスを推定する際に、その組電池を構成する複数の電池セル301を所定単位数の電池セル301に分割した場合の、その所定単位数の電池セル301と、その電池セル301に接続される配線302とを含む経路のインダクタンスを測定した情報である。電池セル301に接続される配線302は、測定対象の配線302を変化させた、すなわち複数の配線パターンであってもよい。一例として、測定情報は、電池セル301と、その電池セル301に接続される配線302のうち、電池セル301からの距離を変えた複数パターンとの経路に応じてインダクタンスを測定した情報であってもよい。すなわち、取得部202では、電池セル301に接続される配線302の取り回しを変えた複数のパターンでインダクタンスを測定した結果を取得してもよい。
【0023】
導出部203は、所定単位の数を有する電池セル301を流れる電流を仮想電流線と仮定して、その仮想電流線と、仮想電流線に接続される配線とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出する。その電池セル301の所定単位数は、測定装置100(第1工程)で測定される電池セル301の所定単位数と同数とする。導出部203は、所定単位数の電池セル301を流れる電流が仮想電流線を流れると仮定して、すなわち所定単位数の電池セル301を仮想電流線で近似して算出式を導出する。仮想電流線は、例えば、電流が流れると仮定される配線等であってもよい。
導出部203で導出される算出式は、仮想電流線に関する変数と、電池セル301の内部インダクタンスに関する変数とを含んでもよい。すなわち、導出部203では、仮想電流線を円筒形と仮定して、仮想電流線に関する変数として仮想電流線の半径を変数としてもよい。
仮想電流線に接続される配線は、測定装置100によってインダクタンスを測定する場合の電池セル301に接続される配線のパターンに対応してもよい。すなわち、導出部203は、例えば、仮想電流線に接続される配線のパターンを、測定装置100でインダクタンスを測定する場合の電池セル301に接続される配線のパターンと同じ条件として、算出式を導出してもよい。
すなわち、導出部203は、インダクタンス(自己インダクタンスLcal)を導出する算出式を、仮想電流線の半径Rと、電池セル301の内部インダクタンスLintとを変数した下式(1)としてもよい。
Lcal=f(R,Lint) …(1)
【0024】
決定部204は、導出部203で導出される算出式の変数を変えることにより、算出式から得られるインダクタンスを、取得部202で取得する測定情報に基づくインダクタンスに調整(フィッティング)して、変数を決定する。すなわち、決定部204は、電池セル301(仮想電流線)に接続される配線のパターンに応じたインダクタンス(自己インダクタンス)の関係において、算出式の変数(例えば、仮想電流線の半径及び電池セル301の内部インダクタンス)を変えることにより、その算出式から得られるインダクタンス(自己インダクタンス)を、測定情報に基づくインダクタンスに一致(略一致)させるよう調整する。決定部204は、算出式から得られるインダクタンス(自己インダクタンス)を、測定情報に基づくインダクタンスに一致(略一致)させた場合、変数(例えば、仮想電流線の半径及び電池セル301の内部インダクタンス)を決定する。
【0025】
推定部205は、決定部204で決定される変数を利用して、経路(組電池)の電池セル301の数に応じた自己インダクタンスを推定する。
推定部205は、決定部204で決定される仮想電流線の変数としての半径に基づいて、経路(組電池)の外部インダクタンスを算出してもよい。すなわち、推定部205は、仮想電流線の半径を利用して閉回路に流れる電流による鎖交磁束を計算することに基づいて、組電池の外部インダクタンスを算出してもよい。
また、推定部205は、決定部204で決定される電池セル301の内部インダクタンスを経路(組電池)の電池セル301の数だけ加算して、組電池の内部インダクタンスを算出する。すなわち、推定部205は、決定部204で決定される内部インダクタンスに、組電池を構成する電池セル301の数(組電池を構成する所定単位の電池セル301の数)分だけ乗算して、組電池全体の内部インダクタンスを算出する。
推定部205は、上述したように算出される外部インダクタンスと内部インダクタンスとを加算することにより、組電池の配線及び電池セル301の数に応じた(組電池の)自己インダクタンスを推定する。ここで、組電池の配線(配線経路)及び電池セル301の数は、組電池情報に基づいて取得してもよい。
【0026】
出力制御部206は、推定部205によって推定される自己インダクタンスを出力するよう出力部を制御する。出力部は、例えば、上述したように通信部211、記憶部212及び表示部213等であってもよい。
すなわち、出力制御部206は、例えば、推定部205によって推定される自己インダクタンスに関する情報を外部装置に送信するよう通信部211を制御してもよい。
また、出力制御部206は、推定部205によって推定される自己インダクタンスに関する情報を記憶するよう記憶部212を制御してもよい。
また、出力制御部206は、推定部205によって推定される自己インダクタンスを表示するよう表示部213を制御してもよい。
【0027】
[データ処理方法]
次に、一実施形態に係るデータ処理方法としての組電池に関わる推定方法について説明する。
図3は、一実施形態に係るデータ処理方法について説明するためのフローチャートである。
図4~6は、一実施形態に係るデータ処理方法について説明するための第1~3の図である。
【0028】
図3に示す第1工程(ステップST1)において、測定装置100は、所定単位の数を有する電池セル301と、その電池セル301(図4参照)に接続される配線302(図4参照)とを含む経路のインダクタンスを測定する。この場合、測定装置100は、電池セル301に接続される配線302の取り回しを変えた複数のパターンでインダクタンスを測定する。
【0029】
一例として、測定装置100は、交流インピーダンス法を用い、組電池を構成する所定単位の数の電池セル301を直列に接続して自己インダクタンスを測定してもよい。所定単位数は、例えば、1個、2個、3個、4個、5個等の数であってもよい。ここで、図4に例示する場合、測定装置100は、2直列の電池セル301の自己インダクタンスを測定する。この場合、測定装置100は、図4に例示するように、測定用の配線302の取り回しを変えた複数のパターンで自己インダクタンスを測定する。具体的な一例として、測定装置100は、図4の(1)~(4)に例示するように、配線302の距離を変更した複数のパターンで電流及び電圧を計測し、交流インピーダンス法を用いてそれぞれのパターンで自己インダクタンスを算出してもよい。図4の(1)~(4)のパターンで自己インダクタンスを算出した結果は、図5に例示するようになる。ここで、図5の横軸は配線の距離((1)~(4)のパターンでの配線302の距離)であり、縦軸はインダクタンス(自己インダクタンス)を示す。
【0030】
図3に示す第2工程(ステップST2)において、データ処理装置200の導出部203は、所定単位の数を有する電池セル301を仮想電流線311(図6参照)と近似して、その仮想電流線311と、仮想電流線311に接続される配線312(図6参照)とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出する。その算出式は、仮想電流線311に関する変数と、電池セル301の内部インダクタンスに関する変数とを含むこととしてもよい。この場合、仮想電流線311の外形を円筒形と仮定して、仮想電流線311に関する変数として仮想電流線311の半径を変数としてもよい。
【0031】
すなわち、図6に例示するように、導出部203は、電池セル301の外形が円筒形の仮想電流線311で近似し、その仮想電流線311の半径をRとしてもよい。導出部203は、第1工程と同じ条件(例えば、(1)~(4)の配線パターン等)で、外部インダクタンスの関係式を閉回路に流れる電流の鎖交磁束の計算から導出する。次に、導出部203は、電池セル301の内部インダクタンスを変数Lintとし、導出された外部インダクタンスに加えて、所定単位数(例えば、2直列等)の電池セル301の自己インダクタンスLcalをRとLintの関係式(算出式)として導出する。
【0032】
図7~8は、一般的な内部インダクタンスを求める際の一例について説明するための第1~2の図である。図7(A)~(B)は導体等を説明するための第1~2の図である。図8(A)~(C)は導体と内部インダクタンスを求める際に利用する符号を説明するための第1~3の図である。
【0033】
自己インダクタンスの内部インダクタンスは、導体内部に発生する磁束と導体内部の電流の鎖交により生じるインダクタンスであり、電流の分布が一様な場合には長さのみに依存する。
一例として、直線導体は、図7(A)に例示するように導体内部に電流が均等に流れているとすると、図7(B)に例示するように導体内の一部401Aを流れる電流がつくる磁束が円筒形導体内の401Bに同心円状にできる。これにより、電流と磁束が鎖交するため、インダクタンスが存在することになる。
そのような導体の内部インダクタンスは、例えば、次のように求まる。すなわち、図8(A)に例示するように、導体402の内部の中心oからx[m]の部分で、微少厚Δx[m]と、図面に垂直な長さ1[m]とでつくる断面(図8(A)~(C)の左上から右下への斜線を付した部分)ΔSを通る磁束の磁束密度をB[T]、その内部(図8(B)の右上から左下への斜線を付した部分)を流れる電流をi’[A]、導体の透磁率をμとし、電流が導体断面を一様に流れていると仮定すると、i’による磁束鎖交数Δψは、下式のようになる。
【0034】
【数1】


そして、導体内部の磁束鎖交数ψは、Δψを利用して、下式のようになる。
【0035】
【数2】

したがって、導体1本l[m]の内部の自己インダクタンスLintは、下式のようになる。
【0036】
【数3】
【0037】
図9は、本開示に適した自己インダクタンスLcalの算出式を導出する際の一例について説明するための図である。図9(A)~(D)は算出式を導出する際の座標等を説明する第1~4の図である。
ここで、図9(A)に示す、Pは仮想電流線を含む面上の任意の点、dBは点Pでの磁束密度ベクトル、dlは電流ベクトル、rはdIから点Pへの長さベクトルを示す。
図9(B)に示す、Pはxy平面上の任意の点、xpは点Pのx座標、ypは点Pのy座標、Aは仮想電流線の中心上の点、y’は点Aのy座標、dBは微小電流diがつくる点Pでの磁束密度(Z方向)、Iは電流、diは微小電流、rは点Aから点Pまでの長さを示す。
図9(C)に示す、Bは仮想電流線がつくる点Pでの磁束密度(Z方向)を示す。
図9(D)に示す、Rは仮想電流線の半径、Cは座標(xR+Lx,yR)、Dは座標(xR+Lx,yR+Ly)、Eは座標(xR,yR+Ly)、Fは座標(xR,yR)を示す。
【0038】
(i)自己インダクタンスLcalの算出式を導出する場合、まず、図9(A)に例示するように、仮想電流線311の中心上の点による磁束密度の計算を行う。すなわち、ビオサバールの法則より、微小な電流ベクトルdIが点Pに作る磁束密度は、真空の透磁率をμ0とすると、以下のように表せる。
【0039】
【数4】

【0040】
仮想電流線311で近似した所定単位数の電池セル301(例えば、2直列電池セル等)を考えた場合、点Pの磁束密度は、2本の仮想電流線311及び3本の配線312、さらに1つのバスバー313から生成される。
まず、図9(B)に例示するように、1本の仮想電流線311上の点Aから微小電流diが閉ループ(電流経路の内側)の点Pにつくる磁束密度は、下式より求まる。
【0041】
【数5】

【0042】
(ii)次に、仮想電流線311により磁束密度の計算を行う。すなわち、図9(C)に例示するように、仮想電流線311の長さをLIとすると、仮想電流線311により生じる点Pの磁束密度Bは、下式より求まる。
【0043】
【数6】


(iii)次に、1本の仮想電流線311により閉ループ(電流経路の内側)を貫く磁束の計算を行う。すなわち、図9(D)に例示するように、電池セル301近傍の面CDEF(仮想電流線311、配線312及びバスバー313によって囲まれる領域)を例示して、磁束φを求める。
【0044】
【数7】



上式をy軸方向に積分すると下式のようになる。
【0045】
【数8】


ここで、L,L,L,Lは以下の通りである。
=L-y-L
=L-y
=y+L
=y
【0046】
次に、x軸方向に積分するが、電池セル301の場合、xは仮想電流線311の半径Rに置き換えられる。
【0047】
【数9】


ここで、g(L,x)は以下の通りである。
【0048】
【数10】


(iv)次に、外部インダクタンスを計算する。下式のように、1本の仮想電流線311から発生する磁束のうち、閉ループ(電流経路の内側)と鎖交する磁束を求め、電流Iで除算すると外部インダクタンスLext_Rが得られる。
【0049】
【数11】

ここで、コイルの巻き数を1とし、鎖交磁束に上記(iii)で導出したψを代入すると、下式のようになる。
【0050】
【数12】


上式より、Lext_Rは、仮想電流線311の半径Rによって変化する関数として下式のように表せる。
【0051】
【数13】

配線312及びバスバー313に流れる電流による外部インダクタンスは実際の寸法を使って算出する。上記と同様にビオサバールの法則を適用することで配線312、バスバー313から発生する磁束を算出し、閉ループ(電流経路の内側)と鎖交する磁束の総和を求める。電流Iで除算後にLext_Rを加えると、閉ループ全体の外部インダクタンスLextが得られるが、仮想電流線311の外部インダクタンスLext_Rの計算結果と同じく、仮想電流線311の半径Rの関数として下式のように表せる。
【0052】
【数14】

(v)次に、自己インダクタンスの算出式(関係式)を求める。すなわち、電池セル301の内部インダクタンスをLintとすると、自己インダクタンスLcalは、外部インダクタンスLextとLintの和で求められ、下式のように表せる。
【0053】
【数15】


内部インダクタンスLintも変数とすると、経路の自己インダクタンスLcalは、RとLintの関数で下式のように表すことができる。
【0054】
【数16】
【0055】
図10~11は、一実施形態に係るデータ処理方法について説明するための第4~5の図である。
【0056】
図3に示す第3工程(ステップST3)において、データ処理装置200の決定部204は、第2工程で導出される算出式の変数を変えることにより、算出式から得られるインダクタンスを、第1工程で測定されるインダクタンスにフィッティングして、変数を決定する。
【0057】
一例として、決定部204は、第2工程で導出した関係式(算出式)の仮想電流線311の半径R及び電池セル301の内部インダクタンスLintの値を変化させ、図10に例示するように、第2工程で導出される関係式(算出式)から得られるインダクタンス(自己インダクタンス)を、第1工程で測定されるインダクタンス(自己インダクタンス)と一致する(略一致する)ようにフィッティングする。決定部204は、第2工程で導出される関係式(算出式)から得られるインダクタンスと、第1工程で測定されるインダクタンスとが一致する(略一致する)ときの仮想電流線311の半径Rと内部インダクタンスLintを後述する第4工程で使用する値として決定する。ここで、図10の横軸は配線の距離((1)~(4)のパターンでの配線距離)であり、縦軸はインダクタンス(自己インダクタンス)を示す。
【0058】
図3に示す第4工程(ステップST4)において、データ処理装置200の推定部205は、第3工程で決定される変数を利用して、組電池情報に基づく組電池の配線(配線経路)と電池セル301の数に応じた自己インダクタンスを推定する。この場合、推定部205は、例えば、第3工程で決定される仮想電流線311の変数としての半径に基づいて、経路の外部インダクタンスを算出する。また、推定部205は、例えば、第3工程で決定される電池セル301の内部インダクタンスを組電池の電池セル301の数だけ加算して内部インダクタンスを算出する。推定部205は、例えば、上述したように算出される外部インダクタンスと内部インダクタンスとを加算することにより、組電池321(図11参照)(組電池の電池セル301の数に応じた)自己インダクタンスを推定する。
【0059】
一例として、推定部205は、第3工程で決定した仮想電流線311の半径Rを使い、閉回路に流れる電流の鎖交磁束の計算から組電池321の外部インダクタンスを算出する。また、推定部205は、第3工程で決定した電池セル301の内部インダクタンスLintを、図11に例示するような組電池321の電池セル301数分加算し、組電池321の内部インダクタンスとする。すなわち、推定部205は、[組電池の内部インダクタンス]=[第3工程で決定した電池セルの内部インダクタンスLint]×「電池セル数」の計算を行う。推定部205は、外部インダクタンスと内部インダクタンスとを足し合わせ、組電池321を含む経路の自己インダクタンスとする。
【0060】
[変形例]
上述した実施形態では、所定単位数の電池セル301の一例として、2直列セルを挙げて説明した。しかし、本開示では、2直列セルに限定されず、電池セル単体、及び、3直列セル以上であってもよい。
また、図5ではインダクタンスの測定結果を距離とインダクタンスとの関係にプロットする例を示し、図10ではインダクタンスの測定結果及び算出式から得られるインダクタンスを距離とインダクタンスとの関係にプロットしてフィッティングする例を示している。しかしながら、本開示では、測定結果等を距離とインダクタンスとの関係にプロットしなくともよい。
また、本実施形態では、電池セル301を仮想電流線に近似する場合に、その仮想電流線を円筒形としているが、本開示では仮想電流線の形状は円筒形に限定されることなく、他の形状であってもよい。また、仮想電流線は直線近似に限定されることはない。すなわち、変数は、仮想電流線の半径Rに限定されることはなく、仮想電流線の応じた種々の変数であってもよい。
また、本実施形態では、電池セル301の端子面に平行に配線(配線経路)を取りまわした例について説明しているが、配線(配線経路)は端子面に平行に取りまわされる例に限定されることはなく、平行以外の配線の取り回しであってもよい。
【0061】
上述したデータ処理装置200の各部は、コンピュータの演算処理装置等の機能として実現されてもよい。すなわち、データ処理装置200の取得部202、導出部203、決定部204、推定部205及び出力制御部206(制御部201)は、コンピュータの演算処理装置等による取得機能、導出機能、決定機能、推定機能及び出力制御機能(制御機能)としてそれぞれ実現されてもよい。
組電池に関わる推定プログラムは、上述した各機能をコンピュータに実現させることができる。組電池に関わる推定プログラムは、例えば、メモリ、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ又は光ディスク等の、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録されていてもよい。
また、上述したように、データ処理装置200の各部は、コンピュータの演算処理装置等で実現されてもよい。その演算処理装置等は、例えば、集積回路等によって構成される。このため、データ処理装置200の各部は、演算処理装置等を構成する回路として実現されてもよい。すなわち、データ処理装置200の取得部202、導出部203、決定部204、推定部205及び出力制御部206(制御部201)は、コンピュータの演算処理装置等を構成する取得回路、導出回路、決定回路、推定回路及び出力制御回路(制御回路)として実現されてもよい。
また、データ処理装置200の通信部211、記憶部212及び表示部213(出力部)は、例えば、演算処理装置等の機能を含む通信機能、記憶機能及び表示機能(出力機能)として実現されもよい。また、データ処理装置200の通信部211、記憶部212及び表示部213(出力部)は、例えば、集積回路等によって構成されることにより通信回路、記憶回路及び表示回路(出力回路)として実現されてもよい。また、データ処理装置200の通信部211、記憶部212及び表示部213(出力部)は、例えば、複数のデバイスによって構成されることにより通信装置、記憶装置及び表示装置(出力装置)として構成されてもよい。
【0062】
データ処理装置200は、上述した複数の各部のうち1又は任意の複数を組み合わせることが可能である。
本開示では、「情報」の文言を使用しているが、「情報」の文言は「データ」と言い換えることができ、「データ」の文言は「情報」と言い換えることができる。
【0063】
[本実施形態の態様及び効果]
次に、本実施形態の一態様及び各態様が奏する効果について説明する。なお、本実施形態は以下に記載する各態様に限定されることはなく、上述した各部を適宜組み合わせて実現されてもよい。また、以下に記載する効果は一例であり、各態様が奏する効果は以下に記載するものに限定されることはない。
【0064】
(態様1)
一態様のデータ処理方法としての組電池に関わる推定方法では、測定装置が、所定単位の数を有する電池セルと、その電池セルに接続される配線とを含む経路のインダクタンスを測定する第1工程と、データ処理装置が、所定単位の数を有する電池セルを流れる電流を仮想電流線と仮定して、その仮想電流線と、仮想電流線に接続される配線とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出する第2工程と、データ処理装置が、第2工程で導出される算出式の変数を変えることにより、算出式から得られるインダクタンスを、第1工程で測定されるインダクタンスに調整して、変数を決定する第3工程と、データ処理装置が、第3工程で決定される変数を利用して、組電池の配線及び電池セルの数に応じた自己インダクタンスを推定する第4工程と、を実行する。
これにより、組電池に関わる推定方法は、実際に組電池を製作する前の設計の段階において、組電池のインダクタンス(自己インダクタンス)を推定することができる。
また、組電池に関わる推定方法は、第1工程において電池セルに接続される配線を含むインダクタンスを測定し、第2工程において仮想電流線に接続される配線を含むインダクタンスを算出する算出式を導出して、2つのインダクタンスをフィッティングするため、配線のインダクタンス(外部インダクタンス)を考慮した組電池の自己インダクタンスを推定することができる。
また、電池セル内では3次元的に複雑に電流が流れるため、従来は電池セルを流れる電流の3次元の経路(電流経路)を数式化するのが困難であった。この点、本実施形態のデータ処理方法(組電池に関わる推定方法)は、電池セルを仮想電流線で近似することにより、算出式を導出することができる。
【0065】
(態様2)
一態様の組電池に関わる推定方法では、第2工程で導出される算出式は、仮想電流線に関する変数と、電池セルの内部インダクタンスに関する変数とを含むこととしてもよい。
これにより、組電池に関わる推定方法は、電池セルに関して変動する要素を変数とし、その変数を変えて第2工程で導出されるインダクタンスを、第1工程で測定されるインダクタンスにフィッティングすることにより、組電池のインダクタンスを推定することができる。
【0066】
(態様3)
一態様の組電池に関わる推定方法は、第2工程では、仮想電流線を円筒形と仮定して、仮想電流線に関する変数として仮想電流線の半径を変数とすることとしてもよい。
これにより、組電池に関わる推定方法は、変数の1つを仮想電流線の半径とすることにより、組電池のインダクタンスを推定することができる。
【0067】
(態様4)
一態様の組電池に関わる推定方法は、第4工程では、第3工程で決定される仮想電流線の変数としての半径に基づいて、経路の外部インダクタンスを算出すると共に、第3工程で決定される電池セルの内部インダクタンスを組電池の電池セルの数だけ加算して内部インダクタンスを算出し、その外部インダクタンスとその内部インダクタンスとを加算することにより組電池の電池セルの数に応じた自己インダクタンスを推定することとしてもよい。
これにより、組電池に関わる推定方法は、所定単位の電池セルのインダクタンスに基づいて、組電池のインダクタンス(自己インダクタンス)を推定することができる。
【0068】
(態様5)
一態様の組電池に関わる推定方法は、第1工程では、電池セルに接続される配線の取り回しを変えた複数のパターンでインダクタンスを測定することとしてもよい。
これにより、組電池に関わる推定方法は、電池セルに接続される配線の外部インダクタンスを含む、組電池のインダクタンス(自己インダクタンス)を推定することができる。
また、組電池に関わる推定方法は、電池セルに接続される配線の取り回しが変わると自己インダクタンス、すなわち外部インダクタンスと内部インダクタンスとを加算したインダクタンスが変わるが、第1工程において配線の取り回しを変えた複数パターンでインダクタンスを測定し、配線のパターンに応じて第3工程において調整(フィッティング)をしているため、より実際の組電池に近いインダクタンス(自己インダクタンス)を推定することができる。
【0069】
(態様6)
一態様のデータ処理装置は、所定単位の数を有する電池セルと、その電池セルに接続される配線とを含む経路のインダクタンスを測定した測定情報及び組電池情報を取得する取得部と、所定単位の数を有する電池セルを流れる電流を仮想電流線と仮定して、その仮想電流線と、仮想電流線に接続される配線とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出する導出部と、導出部で導出される算出式の変数を変えることにより、算出式から得られるインダクタンスを、取得部で取得する測定情報に基づくインダクタンスに調整して、変数を決定する決定部と、決定部で決定される変数を利用して、組電池の配線及び電池セルの数に応じた自己インダクタンスを推定する推定部と、を備える。
これにより、データ処理装置は、上述した一態様の組電池に関わる推定方法と同様の効果を奏することができる。
【0070】
(態様7)
一態様の組電池に関わる推定プログラムは、コンピュータに、所定単位の数を有する電池セルと、その電池セルに接続される配線とを含む経路のインダクタンスを測定した測定情報及び組電池情報を取得する取得機能と、所定単位の数を有する電池セルを流れる電流を仮想電流線と仮定して、その仮想電流線と、仮想電流線に接続される配線とを含む経路のインダクタンスを算出する算出式を導出する導出機能と、導出機能で導出される算出式の変数を変えることにより、算出式から得られるインダクタンスを、取得機能で取得する測定情報に基づくインダクタンスに調整して、変数を決定する決定機能と、決定機能で決定される変数を利用して、組電池の配線及び電池セルの数に応じた自己インダクタンスを推定する推定機能と、を実現させる。
これにより、組電池に関わる推定プログラムは、上述した一態様の組電池に関わる推定方法と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 データ処理システム
100 測定装置
200 データ処理装置
201 制御部
202 取得部
203 導出部
204 決定部
205 推定部
206 出力制御部
211 通信部
212 記憶部
213 表示部
301 電池セル
302 配線
311 仮想電流線
312 配線
313 バスバー
321 組電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11