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特許7503532ジアステレオ異性的に濃縮されたPCTAから誘導されたガドリニウム及びキレート配位子の錯体並びに合成方法
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  • 特許-ジアステレオ異性的に濃縮されたPCTAから誘導されたガドリニウム及びキレート配位子の錯体並びに合成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ジアステレオ異性的に濃縮されたPCTAから誘導されたガドリニウム及びキレート配位子の錯体並びに合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20240613BHJP
   C07F 5/00 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 49/10 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
C07D471/08 CSP
C07F5/00 D
A61K49/10
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021173862
(22)【出願日】2021-10-25
(62)【分割の表示】P 2021541200の分割
【原出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2022009462
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】1900433
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591052505
【氏名又は名称】ゲルベ
【氏名又は名称原語表記】GUERBET
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ル グルニエ ソワジック
(72)【発明者】
【氏名】シェンデ アラン
(72)【発明者】
【氏名】セール マルティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デクロン ステファン
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ ブリュノ
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/030618(WO,A1)
【文献】特表2009-513574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VII):
【化1】
の錯体であって、
ここで、Yは塩素原子、-OR基、又は-O-C(O)-R基を表し、R及びRは互いに独立してC~Cアルキル基を表し、
式:
【化2】
の異性体VII-RRRとVII-SSSの混合物を含む少なくとも80%のジアステレオ異性体過剰を有する、錯体。
【請求項2】
Yが-OR基を表し、
前記錯体が、式(VIII):
【化3】
のトリエステルガドリニウム錯体であり、
式:
【化4】
の異性体VIII-RRRとVIII-SSSの混合物を含む少なくとも80%のジアステレオ異性体過剰を有する、
請求項に記載の錯体。
【請求項3】
前記ジアステレオ異性体過剰が少なくとも85%である、請求項に記載の錯体。
【請求項4】
前記ジアステレオ異性体過剰が少なくとも90%である、請求項2又は3に記載の錯体。
【請求項5】
がメチル基である、請求項2~4のいずれかに記載の錯体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガドリニウム及びPCTA系のキレート配位子の錯体を合成するための新規
なプロセスに関し、これにより、医用画像の分野、特に磁気共鳴画像での、造影剤として
の用途に最も特に有利な物理化学的特性を有する前述の錯体の立体異性体を優先的に得る
ことが可能になる。又、本発明は、ジアステレオ異性的に濃縮された錯体(diaste
reoisomerically enriched complex)それ自体、及び
又任意選択でガドリニウムを含む2つの合成中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、米国特許第4647447号明細書に記載されている、ランタニド(常磁性金
属)、特にガドリニウム(Gd)のキレートに基づく多くの造影剤が知られている。これ
らの製品は、GBCA(ガドリニウム系の造影剤)という用語で照合される場合が多い。
いくつかの製品が販売されており、その中には、DOTA(1,4,7,10-テトラア
ザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸)に基づくメグルミンガドテレ
ート、DO3A-ブトロールに基づくガドブトロール、HPDO3Aに基づくガドテリド
ールなどの環状型キレート、及び特にDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)又はDT
PA-BMA(ガドジアミド配位子)に基づく直鎖型キレートがある。
【0003】
その一部は開発中である、他の製品は、新しい世代のGBCAを表している。それらは
本質的に、欧州特許第1931673号明細書に記載されているように、ビシクロポリア
ザマクロシクロカルボン酸錯体(欧州特許第0438206号明細書)又はPCTA誘導
体(即ち、最小の(a minima)3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9,3
,1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-三酢酸の化学構造
を含む誘導体)などの環状型キレートの錯体である。
【0004】
欧州特許第1931673号明細書に記載されているPCTA系のキレート配位子の錯
体は、化学的に比較的容易に合成できるという利点と、更に、現在市場に出回っている、
他のGBCAよりも優れた緩和性(水で11~12mM-1.s-1までであり得る緩和
性r)を有するという利点があり、この緩和性は、これらの製品の効率に対応し、従っ
てこれらのコントラスト力(contrasting power)に対応する。
【0005】
体内では、ランタニド、特にガドリニウムのキレート(又は錯体)は、化学平衡状態に
あり(その熱力学的定数Kthermによって特徴付けられる)、前述のランタニドの望
ましくない放出につながる可能性がある(以下の式1を参照):
【化1】
キレート又は配位子(Ch)とランタニド(L)の間の錯体化化学平衡により、錯体C
h-Lが得られる。
【0006】
2006年以降、NSF(腎性全身性線維症又は線維性皮膚障害)として知られる病状
は、少なくとも部分的に遊離ガドリニウムの体内への放出に関連している。この病気は、
特定のカテゴリーの患者向けに販売されているガドリニウム系の造影剤に関して保健当局
に注意を喚起している。
【0007】
従って、患者の耐性という複雑な問題を完全に安全な方法で解決し、投与後の望ましく
ないランタニド放出のリスクを制限又は排除するための戦略が実施された。造影剤の投与
は、診断検査中であろうと、用量の調整及び治療処置の有効性のモニタリングのためであ
ろうと、多くの場合繰り返されるため、この問題を解決することは更に困難である。
【0008】
加えて、2014年以降、ガドリニウム系の製品、より特には直鎖型ガドリニウムキレ
ートを繰り返し投与した後のガドリニウムの脳沈着の可能性について言及されてきている
が、このような沈着は、ドタレム(Dotarem)(登録商標)などの、ガドリニウム
環状型キレートでほとんど報告されていないか、まったく報告されていない。その結果、
様々な国が、直鎖型キレートの大部分を市場から撤退させる、又は、安定性が不十分であ
ると考えられるため、使用の適応を大幅に制限することを決定してきた。
【0009】
従って、ランタニドが体内に放出されるリスクを制限するための戦略は、可能な限り高
い熱力学的及び/又は速度論的安定性によって区別される錯体を選択することにある。こ
の理由は、錯体が安定しているほど、経時的に放出されるランタニドの量が制限されるた
めである。
【0010】
しかしながら、欧州特許第1931673号明細書に記載されているピクレンタイプの
構造を含むPCTA系のキレート配位子の錯体は、良好な速度論的安定性を有しながら、
一般的に他のサイクレン系の環状型化合物の錯体よりも低い熱力学的定数を有する。
【0011】
これは特に、以下に示す式(II)の錯体の場合である:
【化2】
【0012】
具体的には、特に国際公開第2014/174120号パンフレットに記載されている
ように、安定度定数としても知られる式(II)の錯体の形成のための反応に対応する熱
力学的平衡定数は、1014.9(即ち、log(Ktherm)=14.9)である。
比較のために、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’
’’-四酢酸(DOTA-Gd)のガドリニウム錯体の安定度定数は、1025.6(即
ち、log(Ktherm)=25.6)である。
【0013】
しかしながら、式(II)の錯体は、特に、側鎖がグラフトされている環状型化合物の
窒素原子に対して、錯体の前述の側鎖のα位に位置する3つの不斉炭素原子が存在するた
め、いくつかの立体異性体に対応することに留意されたい。これらの3つの不斉炭素は、
上記の式(II)にてアスタリスク()で印されている。
【0014】
従って、欧州特許第1931673号明細書に記載されているように式(II)の錯体
の合成は、立体異性体の混合物の生成をもたらす。
【0015】
式(II)の錯体の側鎖のアミノプロパンジオール基も又、不斉炭素を含む。従って、
式(II)の錯体は、合計6つの不斉炭素を含み、従って64の配置的に立体異性体の形
態で存在する。しかしながら、以降の説明では、所与の側鎖について考慮される立体異性
の唯一の源は、便宜上、上記の式(II)にてアスタリスク()で印されたカルボン酸
基を支えている不斉炭素に対応するものである。
【0016】
これらの3つの不斉炭素のそれぞれは、R又はSの絶対配置であり得るので、式(II
)の錯体は、以下でII-RRR、II-SSS、II-RRS、II-SSR、II-
RSS、II-SRR、II-RSR及びII-SRSと呼ばれる立体異性体の8つのフ
ァミリーの形態で存在する。より正確には、立体化学の通常の命名法によれば、式(II
)の錯体は、ジアステレオ異性体の8つのファミリーの形態で存在する。
【0017】
「ファミリー」という用語の使用は、前述のように、特にアミノプロパンジオール基内
に不斉炭素が存在するために、これらのファミリーのそれぞれが、いくつかの立体異性体
を照合するという点で正当化される。
【0018】
それにもかかわらず、以降の説明では、所与のアミノプロパンジオール基の不斉炭素に
関連する立体異性は考慮されないので、異性体、立体異性体又はジアステレオ異性体II
-RRR、II-SSS、II-RRS、II-SSR、II-RSS、II-SRR、
II-RSR及びII-SRSという用語は、それぞれが立体異性体のファミリーに対応
することを述べることなく、区別なく使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び超高速液体クロマトグラ
フィー(UHPLC)により、以降の説明ではiso1、iso2、iso3、及びis
o4と呼ばれる、クロマトグラムでの保持時間によって特徴付けられる4つの異なる溶出
ピークに対応する、従来技術のプロセスに従って得られた式(II)の錯体の異性体の4
つの未分解の(unresolved)ピーク又は群を分離及び同定することに成功した
。欧州特許第1931673号明細書に記載されているプロセスを実行することにより、
得られた混合物中の群iso1、iso2、iso3、及びiso4のそれぞれの含有量
は、以下の通り、20%、20%、40%、及び20%である。
【0020】
次いで、本発明者らは、異性体のこれらの様々な群が異なる物理化学的特性を有するこ
とを発見し、以下に示す式(II-RRR)と(II-SSS)の異性体II-RRRと
II-SSSの混合物を含むiso4として知られる異性体の群が、医用画像の造影剤と
して最も有利であると判明していることを決定した。
【化3】
【0021】
従って、驚くべきことに、iso4は、式(II)の錯体が欧州特許第1931673
号明細書に記載されているプロセスを実行することによって得られる形態のジアステレオ
異性体の混合物よりも著しく優れた熱力学的安定性によって識別される。具体的には、そ
の平衡熱力学的定数Ktherm iso4は、1018.7(即ち、log(Kthe
rm iso4)=18.7)に等しく、この値は、Pierrard et al.,
Contrast Media Mol.Imaging,2008,3,243-25
2及びMoreau et al.,Dalton Trans.,2007,1611
-1620に記載の方法を実行することによって決定されている。
【0022】
更に、iso4は、本発明者らによって単離された4つの群の中で最良の速度論的慣性
(kinetic inertia)(速度論的安定性としても知られる)を有する異性
体の群である。具体的には、本発明者らは、37℃での酸性水溶液(pH=1.2)にお
けるそれらの脱錯体化速度論を研究することにより、異性体の4つの群の速度論的慣性を
評価した。異性体の各群について決定された半減期値(T1/2)は、以下の表1に示さ
れており、半減期は、以下の脱錯体化反応(式2)に従い、最初に存在する錯体の量の5
0%が解離するまでの時間に相当する。
【化4】
【0023】
【表1】
【0024】
比較のために、環状型ガドリニウム錯体であるガドブトロール又はガドテレートは、同
じ条件下でそれぞれ18時間及び4日の速度論的慣性を有するが、ガドジアミド又はガド
ペンテテートなどの直鎖型ガドリニウム錯体は、瞬時に解離する。
【0025】
加えて、iso4は、特にiso3よりも化学的に安定している。この理由は、式(I
I)の錯体のアミド官能基が加水分解されやすいことである。アミド官能基の加水分解反
応(式3)により、3-アミノ-1,2-プロパンジオールが放出されることによってな
される、二重に結合した不純物の形成が生じる。本発明者らは、pH13の水溶液中での
式(II)の錯体の加水分解反応の速度論を研究し、iso4のアミド官能基が、iso
3のアミド官能基よりも加水分解に対してより安定であることを認めた。
【化5】
【0026】
異性体の様々な群の緩和性、即ち造影剤としての効率に関して、行われた測定は、群i
so1、iso2、及びiso4において比較的同等のコントラスト力、及びiso3に
おいて効率が低減したことを実証している(表2を参照)。
【0027】
【表2】
【0028】
本発明者らは、式(II)の錯体を調製及び精製するための新規なプロセスの開発に成
功し、特に有利な物理化学的特性を有する、前述の錯体のジアステレオ異性体II-RR
R及びII-SSSを優先的に得ることを可能にした。本発明によるプロセスは、最も安
定性の低い立体異性体を最も安定性の高い立体異性体に変換することによる異性体濃縮の
工程を含み、これは、驚くべきことに、最終の錯体ではなく六酸中間錯体で行われるが、
式(II)の錯体の最も安定な異性体を得ることを非常に優勢的に可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0029】
目的のジアステレオ異性体を優勢的に得ることを可能にするプロセスの実施は、立体異
性体の混合物を調製し、次いでその後、通常の技術に従ってジアステレオ異性体を分離し
、従って目的の異性体を単離することを試みることからなる代替法と比較した場合、紛れ
もなく有利である。具体的には、ジアステレオ異性体を工業規模で分離する工程を伴わな
いプロセスを実行することがより簡易であるということに加えて、分離することがないこ
とは、最終的に廃棄されるであろう望ましくないジアステレオ異性体の生成を可能な限り
制限することによって、第1にかなりの時間を節約し、第2にプロセスの全体的な収率を
改善することを可能にする。更に、通常の分離技術は、一般的に、溶媒の大量の使用を伴
うが、これは、経済的コスト以上に、環境上の理由から望ましくない。更に、国際がん研
究機関によってヒト(群1)に対して発がん性があると分類されているシリカへの職業上
の曝露に固有の健康リスクを考えると、シリカでのクロマトグラフィーは特に避ける必要
がある。
【0030】
前に示したように、本発明者らによって開発された式(II)の錯体を調製するための
プロセスは、下記の式(I)の中間六酸ガドリニウム錯体の異性体濃縮の工程に基づく:
【化6】
式(I)の錯体は、側鎖がグラフトされている環状型化合物の窒素原子に対して、錯体
の前述の側鎖のα位置に位置する3つの非対称炭素原子の存在のために、いくつかの立体
異性体に対応する。これらの3つの不斉炭素は、上記の式(I)にてアスタリスク(*)
で印されている。
【0031】
カルボキシレート官能性を有する3つの不斉炭素のそれぞれが、R又はSの絶対配置で
あり得るので、式(I)の錯体は、以下でI-RRR、I-SSS、I-RRS、I-S
SR、I-RSS、I-SRR、I-RSR及びI-SRSと呼ばれる8つの立体異性体
の形態で存在する。より正確には、立体化学の通常の命名法によれば、式(I)の錯体は
、相互のジアステレオ異性体である4つの対のエナンチオマーの形態で存在する。
【0032】
本発明者らは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び超高速液体クロマトグラ
フィー(UHPLC)により、以降の説明ではisoA、isoB、isoC、及びis
oDと呼ばれる、クロマトグラムでの保持時間によって特徴付けられる4つの異なる溶出
ピークに対応する、欧州特許第1931673号明細書に記載のプロセスに従って得られ
た式(I)の錯体の異性体の4つの未分解のピーク又は群を分離及び同定することに成功
した。
【0033】
IsoDは、水から結晶化する。X線回折分析により、本発明者らは、異性体のこの群
の結晶構造を決定することができ、従って、それが、以下の式(I)、式(I-RRR)
及び(I-SSS)の錯体のジアステレオ異性体I-RRR及びI-SSSを含むことを
発見することができた。
【化7】
【0034】
式(I)の錯体のジアステレオ異性体I-RRRとI-SSSは互いにエナンチオマー
であることに留意されたい。
【0035】
本発明のプロセスの異性体濃縮工程は、isoDにおいて式(I)の中間六酸ガドリニ
ウム錯体を濃縮することを目的としている。
【0036】
式(II)の錯体の合成は、特に、式(I)の中間六酸錯体のカルボン酸官能基のアミ
ド官能基への変換を伴う。このアミド化反応は、式(I)の錯体の3つの不斉炭素原子の
絶対配置を変更しない。
【0037】
従って、前に得られたisoDにおいて濃縮された式(I)の六酸錯体に対してアミド
化反応を行うと、iso4において濃縮された式(II)の錯体を得ることが可能になる
【0038】
式(I)の六酸ガドリニウム錯体
従って、本発明は、第1に、式(I):
【化8】
の六酸ガドリニウム錯体であって、式:
【化9】
の異性体I-RRRとI-SSSの混合物を含む少なくとも80%のジアステレオ異性体
過剰(diastereoisomeric excess)から構成される、六酸ガド
リニウム錯体に関する。
【0039】
本発明の文脈において、「ジアステレオ異性体過剰」という用語は、式(I)の六酸ガ
ドリニウム錯体に関して、前述の錯体は、優勢的に、ジアステレオ異性体I-RRR、I
-SSS、I-RRS、I-SSR、I-RSS、I-SRR、I-RSR及びI-SR
Sから選択される異性体又は異性体の群の形態で存在することを示すことを意図している
。前述のジアステレオ異性体過剰は、パーセントとして表され、式(I)の六酸ガドリニ
ウム錯体の総量に対する優勢的な異性体又は異性体の群によって表される量に対応する。
異性体は、定義上、同じモル質量を有するので、このパーセントは、モルベース又は質量
ベースのいずれかであり得ることが理解される。
【0040】
特定の一実施形態では、本発明による式(I)の錯体は、少なくとも85%、とりわけ
少なくとも90%、特に少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、有利には少な
くとも98%、より有利には少なくとも99%の、異性体I-RRRとI-SSSの混合
物を含むジアステレオ異性体過剰を有する。
【0041】
好ましくは、前述のジアステレオ異性体過剰は、少なくとも70%、特に少なくとも8
0%、有利には少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の異性体I-RRRとI
-SSSの混合物から構成される。
【0042】
有利には、前述のジアステレオ異性体過剰は、異性体I-RRRとI-SSSの混合物
からなる。
【0043】
又、「異性体I-RRRとI-SSSの混合物」という用語は、ひいては、I-RRR
又はI-SSSのいずれかである異性体の1つのみが存在する場合を網羅する。しかしな
がら、「異性体I-RRRとI-SSSの混合物」という用語は、異性体I-RRRとI
-SSSのそれぞれが可変であるがゼロ以外の量で存在する全ての場合を優先的に示す。
【0044】
好ましい実施形態では、異性体I-RRRとI-SSSは、65/35~35/65、
とりわけ60/40~40/60、特に55/45~45/55の比で前述の混合物中に
存在する。有利には、異性体I-RRR/I-SSSの混合物は、ラセミ(50/50)
混合物である。
【0045】
より特には、前に定義されたジアステレオ異性体過剰は、HPLCプロットのピーク4
(即ち、isoDに対応する溶出順で4番目のピーク)に対応し、33.9から37.5
分の保持時間、通常は約35.7分を特徴とし、前述のプロットは、以下に記載されるH
PLC法を使用して得られる。
【0046】
本発明の目的のために、「HPLCプロット」という用語は、所与の組成及び所与の溶
離液の流量に対する時間の関数としての固定相における化合物の(この場合は化合物の異
性体の)混合物の通過及び分離後に検出器によって測定された濃度のプロファイルを意味
する。HPLCプロットは、分析された化合物又は化合物の混合物に特徴的な様々なピー
ク又は未分解の(unresolved)ピークから構成されている。
【0047】
HPLC法:
-Waters Symmetry(登録商標)C18-250×4.6mm-5μmカ
ラム。
これは、C18(オクタデシル)グラフトでの球状シリカ粒子を含む逆相HPLCカラム
であり、そのシラノールはキャッピング剤で処理されている(末端キャップされている)
。又、長さ250mm、内径4.6mm、粒子サイズ5μm、空隙率100Å、及び炭素
含有量19%が特徴である。
使用する固定相は、水性移動相と互換性があることが優先される。
-分析条件:
【0048】
【表3】
【0049】
-移動相グラジエント(体積比):
【0050】
【表4】
【0051】
式(II)の錯体
本発明は、第2に式(II):
【化10】
の錯体であって、式:
【化11】
の異性体II-RRRとII-SSSの混合物を含む少なくとも80%のジアステレオ異
性体過剰(diastereoisomeric excess)から構成される、錯体
に関する。
【0052】
本発明の文脈において、「ジアステレオ異性体過剰」という用語は、式(II)の錯体
に関して、前述の錯体は、優勢的に、ジアステレオ異性体II-RRR、II-SSS、
II-RRS、II-SSR、II-RSS、II-SRR、II-RSR及びII-S
RSから選択される異性体又は異性体の群の形態で存在することを示すことを意図してい
る。前述のジアステレオ異性体過剰は、パーセントとして表され、式(II)の錯体の総
量に対する優勢的な異性体又は異性体の群によって表される量に対応する。異性体は、定
義上、同じモル質量を有するので、このパーセントは、モルベース又は質量ベースのいず
れかであり得ることが理解される。
【0053】
特定の一実施形態では、本発明による式(II)の錯体は、少なくとも85%、特に少
なくとも90%、特に少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%、有利には少なく
とも97%、より有利には少なくとも99%の、異性体II-RRRとII-SSSの混
合物を含むジアステレオ異性体過剰を有する。
【0054】
好ましくは、前述のジアステレオ異性体過剰は、少なくとも70%、特に少なくとも8
0%、有利には少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の異性体II-RRRと
II-SSSの混合物から構成される。
【0055】
有利には、前述のジアステレオ異性体過剰は、異性体II-RRRとII-SSSの混
合物からなる。
【0056】
又、「異性体II-RRRとII-SSSの混合物」という用語は、ひいては、II-
RRR又はII-SSSのいずれかである異性体の1つのみが存在する場合を網羅する。
しかしながら、「異性体II-RRRとII-SSSの混合物」という用語は、異性体I
I-RRRとII-SSSのそれぞれが可変であるがゼロ以外の量で存在する全ての場合
を優先的に示す。
【0057】
好ましい実施形態では、異性体II-RRRとII-SSSは、65/35~35/6
5、特に60/40~40/60、特に55/45~45/55の比で前述の混合物中に
存在する。有利には、異性体II-RRRとII-SSSは、50/50の比で混合物中
に存在する。
【0058】
より具体的には、前に定義されたジアステレオ異性体過剰は、UHPLCプロットのピ
ーク4(即ち、iso4に対応する溶出順で異性体の4番目の未分解のピーク)に対応し
、6.0~6.6分、典型的には約6.3分の保持時間が特徴であり、前述のプロットは
、以下に記載されるUHPLC法を使用して得られる。
【0059】
本発明の目的のために、「UHPLCプロット」という用語は、所与の組成及び所与の
溶離液の流量に対する時間の関数としての固定相における化合物の(この場合は化合物の
異性体の)混合物の通過及び分離後に検出器によって測定された濃度のプロファイルを意
味する。UHPLCプロットは、分析された化合物又は化合物の混合物に特徴的な様々な
ピーク又は未分解のピークから構成されている。
【0060】
UHPLC法:
-Waters Cortecs(登録商標)UPLC T3 150×2.1mm-1
.6μmカラム。
これは、優先的に非常に硬い、コアから構成された球状粒子を含む逆相UPLCカラムで
あり、三官能性C18(オクタデシル)グラフトでの多孔質シリカに囲まれたシリカから
なり、そのシラノールはキャッピング剤で処理されている(末端キャップされている)。
又、長さ150mm、内径2.1mm、粒子サイズ1.6μm、空隙率120Å、及び炭
素含有量4.7%が特徴である。
【0061】
使用する固定相は、水性移動相と互換性があることが優先される。
-分析条件:
【0062】
【表5】
【0063】
-移動相グラジエント(%体積/体積):
【0064】
【表6】
【0065】
好ましい実施形態では、本発明による式(II)の錯体は、ラセミ又は鏡像異性的に純
粋な形態、好ましくはラセミ形態で、前に定義された本発明による式(I)の錯体、及び
3-アミノ-1,2-プロパンジオールで開始するアミド化によって得られる。
【0066】
本発明の目的のために、「アミド化」という用語は、アミン官能基との反応によってカ
ルボン酸官能基をアミド官能基に変換するための反応を意味する。
【0067】
このような反応は、説明の続きに詳述されているように、カルボン酸官能基の活性化後
に特に実行され得る。
【0068】
式(II)の錯体を調製するためのプロセス
本発明は又、以下の連続する工程を含む、式(II)の錯体を調製するためのプロセス
に関する:
a)以下の式(III):
【化12】
の六酸をガドリニウムを用いて錯体化して、前に定義された式(I)の六酸ガドリニウム
錯体を得る工程、
b)式(I)の六酸ガドリニウム錯体をpH2から4の水溶液中で加熱することによって
異性化して、式(I)の前述の六酸ガドリニウム錯体の異性体I-RRRとI-SSSの
混合物を含む少なくとも80%のジアステレオ異性体過剰から構成されるジアステレオ異
性的に濃縮された錯体を得る工程、
c)工程b)で得られたジアステレオ異性的に濃縮された錯体から開始して、3-アミノ
-1,2-プロパンジオールとの反応によって、式(II)の錯体を形成する工程。
【0069】
本明細書では、特に明記しない限り、「Gd」、「ガドリニウム」及び「Gd3+」と
いう用語は、Gd3+イオンを示すために区別なく使用される。ひいては、これは又、塩
化ガドリニウム(GdCl)又は酸化ガドリニウム(Gd)などの遊離ガドリニ
ウムの供給源であり得る。
【0070】
本発明において、「遊離Gd」という用語は、好ましくは錯体形成のために利用可能で
ある、錯体化されていない形態のガドリニウムを示す。これは典型的には、水に溶解した
Gd3+イオンである。ひいては又、塩化ガドリニウム(GdCl)又は酸化ガドリニ
ウムなどの遊離ガドリニウムの供給源であり得る。
【0071】
・工程a)
この工程の過程で、式(III)の六酸とガドリニウムとの錯体化反応が起こり、これ
により、前に定義された式(I)の六酸ガドリニウム錯体を得ることが可能になる。
【0072】
特定の実施形態によれば、工程a)は、水中での式(III)の六酸と遊離Gdの供給
源との反応を含む。
【0073】
好ましい実施形態では、遊離Gdの供給源は、GdCl又はGd、好ましくは
Gdである。
【0074】
好ましくは、工程a)で使用される試薬、即ち、ガドリニウムの供給源(典型的には酸
化ガドリニウム)、式(III)の六酸及び水は、特に金属不純物に関して、可能な限り
純粋である。
【0075】
従って、ガドリニウムの供給源は、有利には、好ましくは99.99%を超える純度、
更により好ましくは99.999%を超える純度の酸化ガドリニウムである。
【0076】
プロセスで使用される水は、好ましくは50ppm未満のカルシウム、より好ましくは
20ppm未満、最も好ましくは15ppm未満のカルシウムを含む。一般的に、このプ
ロセスで使用される水は、脱イオン水、注入用水(注入グレードの水)、又は精製水であ
る。
【0077】
有利には、この工程a)で使用される試薬(式(III)の六酸及びガドリニウム)の
量は、この工程の間で起こる錯体化反応の平衡式によって決定されるように、化学量論的
比率に対応する、又はそれに近い。
【0078】
「化学量論的比率に近い」という用語は、試薬が導入されるモル比率と化学量論的比率
の差が、15%未満、特に10%未満、好ましくは8%未満であることを意味する。
【0079】
ガドリニウムは、化学量論的比率に対してわずかに過剰に導入されることができる。式
(III)の六酸として導入される材料の量に対するガドリニウムとして導入される材料
の量の比は、1より大きいが、典型的には1.15未満、特に1.10未満、有利には1
.08未満である。言い換えれば、導入されるガドリニウムの量は、これ自体が1当量に
相当する、導入される式(III)の六酸の量に対して、1当量(当量)より多いが、典
型的には、1.15当量未満、特に1.10当量未満、有利には1.08当量未満である
。遊離ガドリニウムの供給源がGdである好ましい実施形態では、導入されるGd
の量は、導入される式(III)の六酸の量(1当量)に対して、典型的には0.
5当量を超えるが、0.575当量未満、特に0.55当量未満、有利には0.54当量
未満である。
【0080】
特定の実施形態によれば、工程a)は、以下の連続する工程を含む:
a1)式(III)の六酸の水溶液の調製、及び
a2)工程a1)で得られた水溶液への遊離ガドリニウムの供給源の添加。
【0081】
この実施形態では、工程a1)で調製された水溶液中の式(III)の六酸の含有量は
、水溶液の総重量に対して、典型的には10%~60%、特に15%~45%、好ましく
は20%~35%、有利には25%~35重量%、更により有利には25重量%~30重
量%である。
【0082】
優先的に、工程a)及びb)は、ワンポット(one-pot)実施形態に従って、即
ち、同じ反応器内で、単離又は精製の中間工程なしで実行される。
【0083】
従って、この好ましい実施形態では、工程a)で形成された式(I)の六酸ガドリニウ
ム錯体は、単離又は精製されることなく、工程a)に使用されるものと同じ反応器内で異
性化工程b)に直接供される。
【0084】
・工程b)
工程a)において式(III)の六酸とガドリニウムとの錯体化反応によって形成され
た式(I)の六酸ガドリニウム錯体は、最初にジアステレオ異性体の混合物の形態で得ら
れる。
【0085】
工程b)は、異性体I-RRR及びI-SSSにおけるジアステレオ異性体の混合物を
濃縮して、少なくとも85%、とりわけ少なくとも90%、特に少なくとも95%、好ま
しくは少なくとも97%、有利には少なくとも98%、より有利には少なくとも99%の
、異性体I-RRRとI-SSSの混合物を含むジアステレオ異性体過剰から構成される
式(I)のジアステレオ異性的に濃縮された六酸ガドリニウム錯体を得ることを目的とし
ている。
【0086】
好ましくは、前述のジアステレオ異性体過剰は、少なくとも70%、特に少なくとも8
0%、有利には少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の異性体I-RRRとI
-SSSの混合物から構成される。
【0087】
有利には、前述のジアステレオ異性体過剰は、異性体I-RRRとI-SSSの混合物
からなる。
【0088】
本発明者らは、実際、工程a)の終わりに得られた式(I)の六酸ガドリニウム錯体の
溶液のpH及び温度などの要因が、式(I)の錯体の様々な異性体がジアステレオ異性体
の混合物中に存在する比に影響を与えることを発見した。経時的に、混合物は、驚くべき
ことに、最も熱力学的に安定であるが、又最も化学的に安定である異性体、この場合は異
性体I-RRR及びI-SSSを含む異性体の群に濃縮されるようになる傾向がある。
【0089】
又、「異性体I-RRRとI-SSSの混合物」という用語は、ひいては、I-RRR
又はI-SSSのいずれかである異性体の1つのみが存在する場合を網羅する。しかしな
がら、「異性体I-RRRとI-SSSの混合物」という用語は、異性体I-RRRとI
-SSSのそれぞれが可変であるがゼロ以外の量で存在する全ての場合を優先的に示す。
【0090】
好ましい実施形態では、異性体I-RRR及びI-SSSは、65/35~35/65
、とりわけ60/40~40/60、特に55/45~45/55の比で前述の混合物中
に存在する。有利には、異性体I-RRR/I-SSSの混合物は、ラセミ(50/50
)混合物である。
【0091】
水溶液中での式(I)の六酸ガドリニウム錯体の異性化の工程b)は、典型的には、2
~4、特に2~3、有利には2.2~2.8のpHで実施される。
【0092】
pHは、酸、好ましくは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸又はリン酸などの無機酸、例
えば、塩酸で、優先的に調整される。
【0093】
ガドリニウムキレートは、酸性媒体において低い速度論的慣性が特徴であることが当技
術分野で知られていることから、このようなpH条件下で、混合物、特に異性体、この場
合は異性体I-RRRとI-SSSの混合物の濃縮が起こることは全く驚くべきことであ
る。具体的には、媒体中のHイオンの濃度が高いほど、プロトンが、配位子のドナー原
子の1つに移動する可能性が高くなり、こうして錯体の解離が引き起こされる。その結果
、当業者は、式(I)の六酸ガドリニウム錯体を2~4のpHの水溶液に入れると、I-
RRR及びI-SSSへのその異性化ではなく、前述の錯体の解離をもたらすと予想した
であろう。
【0094】
式(III)の六酸の錯体化について欧州特許第1931673号明細書によって推奨
されるpHの範囲、即ち5.0~6.5は、その異性体I-RRR及びI-SSSに濃縮
された式(I)の錯体を得ることができないことに留意されたい。
【0095】
工程b)は、典型的には、80℃~130℃、特に90℃~125℃、好ましくは98
℃~122℃、有利には100℃~120℃の温度で、典型的には10時間~72時間、
特に10時間~60時間、有利には12時間~48時間、実施される。
【0096】
全ての予想に反して、上記のpH条件と組み合わせると、ガドリニウムキレートの不安
定性に有利に働くはずのこうした温度条件は、その脱錯体化又は任意の他の不純物の形成
をもたらさず、I-RRR及びI-SSSへのその異性化をもたらす。
【0097】
特定の一実施形態では、工程b)の水溶液は、酢酸を含む。次いで、工程b)は、10
0℃~120℃、特に110℃~118℃の温度で、典型的には12時間~48時間、と
りわけ20時間~30時間、特に24時間~26時間、有利に実行される。
【0098】
酢酸は、好ましくは、酢酸含有量が、工程a)で使用される式(III)の六酸の質量
に対して、25質量%~75質量%、特に40質量%~50質量%である量で、工程a)
で得られた式(I)の六酸ガドリニウム錯体の溶液を加熱する前に、加えられる。
【0099】
水溶液が有利には100℃~120℃、典型的には110℃~118℃の温度に加熱さ
れるとき、一定体積の溶液を維持するために、水が蒸発するにつれて酢酸が徐々に加えら
れる。
【0100】
好ましい実施形態によれば、工程b)の終わりに、ジアステレオ異性的に濃縮された錯
体は、結晶化によって、好ましくはシーディングによる結晶化によって単離される。
【0101】
この実施形態では、工程b)は、以下の連続する工程を含む:
b1)式(I)の六酸ガドリニウム錯体をpH2~4にて水溶液中で加熱することによっ
て異性化して、式(I)の前述の六酸ガドリニウム錯体の異性体I-RRRと異性体I-
SSSの混合物を含む少なくとも80%のジアステレオ異性体過剰から構成されるジアス
テレオ異性的に濃縮された錯体を得る工程、並びに
b2)前述のジアステレオ異性的に濃縮された錯体を結晶化、好ましくはシーディングに
より結晶化することによって単離する工程。
【0102】
結晶化工程b2)は、第1に、結晶の形態でより高純度の脱色生成物を得るために、前
の工程から生じる可能性がある、水溶液中に存在する任意の不純物を除去することを目的
としており、第2に、工程b1)の終わりに得られたものよりも高い、前述の錯体の異性
体I-RRRとI-SSSの混合物を含むジアステレオ異性体過剰を得るために、式(I
)の六酸ガドリニウム錯体のジアステレオ異性体濃縮を継続することを目的としている。
【0103】
具体的には、式(I)の六酸錯体の異性体I-RRR及びI-SSSは、水から結晶化
する。他方、前述の異性体に濃縮されていない式(I)の六酸ガドリニウム錯体は、結晶
化しない。
【0104】
工程b)の過程で錯体が濃縮されるようになる傾向がある(及び、全ての予想に反して
、それが実行される条件に照らして)、異性体I-RRR及びI-SSSは、水から結晶
化する錯体の唯一の異性体であるということは、まったく予想外の結果である。従って、
異性化及び結晶化は、異性体I-RRR及びI-SSSの濃縮に相乗的に寄与し、その結
果、本発明によるプロセスの全体的な効率に寄与する。
【0105】
更に、式(I)の六酸ガドリニウム錯体の目的の異性体の水での結晶化は、前述の錯体
の三ナトリウム塩のエタノールからの沈殿の工程を伴う、欧州特許第1931673号明
細書の実施例7に記載されるように溶媒の添加を回避することを可能にすることに留意さ
れたい。
【0106】
工程b2)は、10℃~70℃、とりわけ30℃~65℃、特に35℃~60℃の温度
で有利に実施される。
【0107】
一変形形態によれば、上記の範囲内にあるように水溶液の温度を下げた後、結晶化プロ
セスは、シーディングによって誘導される。「プライミングによる結晶化」としても知ら
れる「シーディングによる結晶化」は、「シード」又は「プライマー」として知られる既
知の量の結晶の結晶化が行われる反応器(結晶化容器としても知られる)への導入を含む
。これにより、結晶化時間を短縮することができる。シーディングによる結晶化は、当業
者に周知である。本発明によるプロセスにおいて、プライマーを用いたシーディング、本
例では、温度が事前に下げられたジアステレオ異性的に濃縮された錯体の水溶液に加えら
れた式(I)のジアステレオ異性的に濃縮された六酸ガドリニウム錯体の結晶は、核形成
を得ることを可能にし、こうして結晶化を開始することを可能にする。シーディングによ
る結晶化の持続時間は、有利には2時間~20時間、好ましくは6時間~18時間、典型
的には16時間である。
【0108】
次いで、式(I)のジアステレオ異性的に濃縮された六酸ガドリニウム錯体の結晶は、
当業者に周知の任意の技術によって、典型的には濾過及び乾燥によって単離される。
【0109】
有利には、工程b2)の終わりに単離された式(I)のジアステレオ異性的に濃縮され
た六酸ガドリニウム錯体の純度は、95%より大きく、特に98%より大きく、有利には
99%より大きく、前述の純度は、工程b2)の終わりに得られた総質量に対する式(I
)の錯体の質量パーセントとして表される。
【0110】
特定の実施形態では、結晶化によって単離された工程b)からのジアステレオ異性的に
濃縮された錯体は、再結晶化によって再び精製され、ジアステレオ異性体に濃縮され精製
された錯体が得られる。
【0111】
この実施形態では、工程b)は、前述の連続する工程b1)及びb2)に加えて、式(
I)の単離されたジアステレオ異性的に濃縮された六酸ガドリニウム錯体の再結晶化によ
る精製の工程b3)を含む。
【0112】
再結晶化工程b3)は、結晶化工程b2)と同様に、第1に、より高純度の生成物を得
ることを目的としており、第2に、工程b2)の終わりに得られたものよりも高い前述の
錯体の異性体I-RRRとI-SSSの混合物を含むジアステレオ異性体過剰を得るため
に、式(I)の六酸ガドリニウム錯体のジアステレオ異性体濃縮を継続することを目的と
している。
【0113】
工程b3)は、典型的には、以下の連続するサブ工程を含む:
・工程b2)で単離された式(I)のジアステレオ異性的に濃縮された六酸ガドリニウム
錯体の水溶性溶液での懸濁、好ましくは水での懸濁、
・有利には80℃~120℃の温度、例えば100℃に加熱することによる前述の錯体の
溶解、
・好ましくは、有利には10℃~90℃、とりわけ20℃~87℃、特に55℃~85℃
の温度で、典型的には2時間~20時間、とりわけ6時間~18時間、シーディングによ
る再結晶化、並びに、
・例えば、濾過及び乾燥による、式(I)のジアステレオ異性的に濃縮され精製された六
酸ガドリニウム錯体の結晶の単離。
【0114】
工程b3)の終わりに単離された式(I)の精製されたジアステレオ異性的に濃縮され
た六酸ガドリニウム錯体の純度は、典型的には98%を超え、特に99%を超え、有利に
は99.5%を超え、前述の純度は、工程b2)の終わりに得られた総質量に対する式(
I)の錯体の質量パーセントとして表される。
【0115】
別の実施形態では、工程b)からのジアステレオ異性的に濃縮された錯体は、ジアステ
レオ異性体I-RRR及びI-SSS以外の式(I)の錯体のジアステレオ異性体の選択
的脱錯体化によって、即ちジアステレオ異性体I-RSS、I-SRR、I-RSR、I
-SRS、I-RRS及びI-SSRの選択的脱錯体化によって更に濃縮される。
【0116】
この実施形態では、工程b)は、前述の連続する工程b1)及びb2)に加えて、ジア
ステレオ異性体I-RRR及びI-SSS以外の式(I)の錯体のジアステレオ異性体の
選択的脱錯体化の工程b4)を含む。この変形形態では、工程b)は又、前述の工程b3
)を含み得、前述の工程b3)は、工程b2)とb4)の間、又はb4)の後に実行され
る。
【0117】
工程b2)の終わりに又は工程b3)の終わりに得られたものよりも高い前述の錯体の
異性体I-RRR及びI-SSSの混合物を含むジアステレオ異性体過剰を得るために、
前述の工程が工程b4)の前に実行される場合、選択的脱錯体化工程b4)は、式(I)
の六酸ガドリニウム錯体のジアステレオ異性体濃縮を継続することを目的としている。
【0118】
工程b4)は、典型的には、以下の連続するサブ工程を含む:
・工程b2)又は工程b3)で単離された式(I)のジアステレオ異性的に濃縮された六
酸ガドリニウム錯体の水中での懸濁、
・塩基、例えば水酸化ナトリウムの添加、
・有利には、30℃~60℃の温度、特に35℃~55℃、例えば40℃に、典型的には
2時間~20時間、特に10時間~18時間、加熱すること、
・有利には10℃~30℃の温度、例えば30℃に冷却すること、
・例えば、濾過及び乾燥による、式(I)のジアステレオ異性体的に濃縮され精製された
六酸ガドリニウム錯体の単離。
【0119】
工程b4)は、異性体I-RRR及びI-SSSが塩基性媒体中で最も安定していると
いうことによって可能になる。このような塩基性条件は、水酸化ガドリニウムの形成を促
進し、その結果、最も安定性の低い異性体の脱錯体化を促進する。
【0120】
従って、驚くべきことに、異性体I-RRR及びI-SSSは、異性化工程b1)を可
能にする酸性媒体、及び選択的脱錯体化工程b4)を可能にする塩基性媒体の両方におい
てより安定であることに留意されたい。
【0121】
好ましい実施形態では、上記の変形形態のいずれか1つによる工程b)の終わりに得ら
れたジアステレオ異性的に濃縮された錯体は、少なくとも85%、とりわけ少なくとも9
0%、特に少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、有利には少なくとも98%
、より有利には少なくとも99%の、異性体I-RRRとI-SSSの混合物を含むジア
ステレオ異性体過剰を有する。
【0122】
好ましくは、前述のジアステレオ異性体過剰は、少なくとも70%、特に少なくとも8
0%、有利には少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の異性体I-RRRとI
-SSSの混合物から構成される。
【0123】
有利には、前述のジアステレオ異性体過剰は、異性体I-RRRとI-SSSの混合物
からなる。
【0124】
又、「異性体I-RRRとI-SSSの混合物」という用語は、ひいては、I-RRR
又はI-SSSのいずれかである異性体の1つのみが存在する場合を網羅する。しかしな
がら、「異性体I-RRRとI-SSSの混合物」という用語は、異性体I-RRRとI
-SSSのそれぞれが可変であるがゼロ以外の量で存在する全ての場合を優先的に示す。
【0125】
好ましい実施形態では、異性体I-RRRとI-SSSは、65/35~35/65、
とりわけ60/40~40/60、特に55/45~45/55の比で前述の混合物中に
存在する。有利には、異性体I-RRR/I-SSSの混合物は、ラセミ(50/50)
混合物である。
【0126】
・工程c)
工程c)は、その前駆体、工程b)で得られた式(I)のジアステレオ異性的に濃縮さ
れた六酸ガドリニウム錯体から式(II)の錯体を形成することを目的としている。
【0127】
この工程の間、側鎖がグラフトされる環状型化合物の窒素原子に対して、錯体の前述の
側鎖のγ位置に位置する炭素原子によって支えられる、式(I)の六酸錯体の3つのカル
ボン酸官能基は、3-アミノ-1,2-プロパンジオールとのアミド化反応を介して、ラ
セミ又は鏡像異性的に純粋な形態、好ましくはラセミ形態で、アミド官能基に変換される
【0128】
このアミド化反応は、側鎖がグラフトされている環状型化合物の窒素原子に対して、前
述の側鎖のα位置に位置する3つの非対称炭素原子の絶対配置を変更しない。結果として
、工程c)は、少なくとも80%である、工程b)の終わりに得られた式(I)のジアス
テレオ異性的に濃縮された六酸ガドリニウム錯体が得られる異性体I-RRRとI-SS
Sの混合物を含むジアステレオ異性体過剰と同一である異性体II-RRRとII-SS
Sの混合物を含むジアステレオ異性体過剰を有する式(II)の錯体を得ることを可能に
する。
【0129】
好ましい実施形態では、工程c)の終わりに得られた式(II)の錯体は、少なくとも
85%、とりわけ少なくとも90%、特に少なくとも92%、好ましくは少なくとも94
%、有利には少なくとも97%、より有利には少なくとも99%の、異性体II-RRR
とII-SSSの混合物を含むジアステレオ異性体過剰を有する。
【0130】
好ましくは、前述のジアステレオ異性体過剰は、少なくとも70%、特に少なくとも8
0%、有利には少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の異性体II-RRRと
II-SSSの混合物から構成される。
【0131】
有利には、前述のジアステレオ異性体過剰は、異性体II-RRRとII-SSSの混
合物からなる。
【0132】
又、「異性体II-RRRとII-SSSの混合物」という用語は、ひいては、II-
RRR又はII-SSSのいずれかである異性体の1つのみが存在する場合を網羅する。
しかしながら、「異性体I-RRRとI-SSSの混合物」という用語は、異性体I-R
RRとI-SSSのそれぞれが可変であるがゼロ以外の量で存在する全ての場合を優先的
に示す。
【0133】
好ましい実施形態では、異性体II-RRRとII-SSSは、65/35~35/6
5、とりわけ60/40~40/60、特に55/45~45/55の比で前述の混合物
中に存在する。有利には、異性体II-RRRとII-SSSは、50/50の比で混合
物中に存在する。
【0134】
アミド化反応は、当業者に周知の任意の方法に従って、特にカルボン酸官能基を活性化
するための試薬の存在下で、及び/又は酸触媒作用によって実施することができる。
【0135】
これは、特に、欧州特許第1931673号明細書、特にこの特許の段落[0027]
に記載されている方法に従って実施することができる。
【0136】
特定の一実施形態では、工程c)は、カルボニル基の炭素原子が、カルボン酸官能基の
カルボニル基の炭素原子よりも求電子性であるように、カルボニル(C=O)基を含む誘
導された官能基の形態で、側鎖がグラフトされている環状型化合物の窒素原子に対して、
錯体の前述の側鎖のγ位に位置する炭素原子によって支えられる式(I)の六酸錯体のカ
ルボン酸(-COOH)官能基の活性化を含む。従って、この特定の実施形態によれば、
前述のカルボン酸官能基は、特に、エステル、塩化アシル又は酸無水物官能基の形態で、
又はアミド結合をもたらすことができる任意の活性化形態で活性化され得る。アミド結合
をもたらすことができる活性化形態は、当業者に周知であり、例えば、ペプチド結合を形
成するためのペプチド化学で知られている一連の方法によって得ることができる。このよ
うな方法の例は、出版物、Synthesis of peptides and pe
ptidomimetics volume E22a,pages 425-588,
Houben-Weyl et al.,Goodman Editor,Thieme
-Stuttgart-New York(2004)に記載されており、これらの例の
中で、特に、アジド(アシルアジド)を介した、例えば、ジフェニルホスホリルアジド(
一般に略称DPPAと呼ばれる)などの試薬の作用を介したカルボン酸の活性化の方法、
カルボジイミドの単独又は触媒(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド及びその誘導体
)の存在下での使用、カルボニルジイミダゾール(1,1’-カルボニルジイミダゾール
、CDI)の使用、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホス
ホニウムヘキサフルオロホスフェート(一般に略語BOPと呼ばれる)などのホスホニウ
ム塩、又は2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチ
ルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(一般に略語HBTUと呼ばれる)などのウロ
ニウムの使用を挙げることができる。
【0137】
好ましくは、工程c)は、エステル、塩化アシル又は酸無水物官能基の形態で上記のカ
ルボン酸(-COOH)官能基の活性化を含む。
【0138】
この実施形態は、欧州特許第1931673号明細書に記載されているように、EDC
I/HOBTなどのカップリング剤を使用するカルボン酸官能基の活性化によるペプチド
カップリングよりも好ましい。具体的には、このようなカップリングは、1当量の1-エ
チル-3-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]尿素の形成をもたらし、これは、特にシ
リカでのクロマトグラフィー又は溶媒を加えることによる液/液抽出によって除去されな
ければならない。このような更なる工程によって引き起こされるプロセスの複雑さの増加
とは別に、前述のように、このような精製方法の使用は望ましくない。更に、HOBTは
爆発性の生成物であるため、HOBTの使用自体に問題がある。
【0139】
本発明の目的のために、「エステル官能基」という用語は、-C(O)O-基を示すこ
とを意図している。それは、特に、Rが(C~C)アルキル基に対応する基-C(
O)O-Rであり得る。
【0140】
本発明の目的のために、「(C~C)アルキル基」という用語は、1~6、好まし
くは1~4の炭素原子を含む直鎖又は分岐の飽和炭化水素系の鎖を意味する。言及され得
る例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチ
ル、tert-ブチル、ペンチル及びヘキシル基を含む。
【0141】
本発明の目的のために、「酸塩化物官能基」としても知られる「塩化アシル官能基」と
いう用語は、-CO-Cl基を示すことを意図している。
【0142】
本発明の目的のために、「酸無水物官能基」という用語は、-CO-O-CO-基を示
すことを意図している。それは、特に、Rが(C~C)アルキル基に対応する基-
CO-O-CO-Rであり得る。
【0143】
カルボン酸官能基を、エステル、塩化アシル又は酸無水物官能基に変換するための反応
は、当業者に周知であり、当業者は、当業者が精通している任意の通常の方法に従ってそ
れらを実施することができる。
【0144】
次いで、式(II)の錯体は、ラセミ又は鏡像異性的に純粋な形態の、好ましくはラセ
ミ形態の、3-アミノ-1,2-プロパンジオールとの反応により、エステル、塩化アシ
ル又は酸無水物官能基、特にエステル又は酸無水物、好ましくはエステルの形態で活性化
されたカルボン酸官能基のアミノリシスによって得られる。
【0145】
優先的には、カルボン酸官能基を活性化する工程及びアミノリシスの工程は、ワンポッ
ト実施形態に従って、即ち、同じ反応器内で、並びに、エステル、塩化アシル又は酸無水
物官能基、特にエステル又は酸無水物、好ましくはエステルの形態で活性化されたカルボ
ン酸官能基を含む中間体の単離又は精製の中間工程なしで実施される。
【0146】
特定の実施形態によれば、工程c)は、以下の連続する工程を含む:
c1)式(VII)の活性化された錯体の形成
【化13】
(式中、Yは、塩素原子、基-OR又は-O-C(O)-Rを表し、好ましくは、Y
は、基-OR又は-O-C(O)-Rを表し、R及びRは、互いに独立して、(
~C)アルキル基に対応する)、並びに
c2)式(VII)の活性化された錯体の3-アミノ-1,2-プロパンジオールとのア
ミノリシス。
【0147】
当業者に明確に明らかであるように、式(VII)の活性化された錯体の形成のための
反応は、側鎖がグラフトされている環状型化合物の窒素原子に対して、前述の側鎖のα位
に位置する3つの非対称炭素原子の絶対配置を変更しない。結果として、工程c1)は、
少なくとも80%である、工程b)の終わりに得られた式(I)のジアステレオ異性的に
濃縮された六酸ガドリニウム錯体が得られる異性体I-RRRとI-SSSの混合物を含
むジアステレオ異性体過剰と同一である、以下で表される式(VII-RRR)と(VI
I-SSS)の異性体VII-RRRとVII-SSSの混合物を含むジアステレオ異性
体過剰を有する式(VII)の活性化された錯体を得ることを可能にする。
【化14】
【0148】
Yが塩素原子を表す場合、工程c1)は、典型的には、工程b)で得られた式(I)の
ジアステレオ異性的に濃縮された六酸ガドリニウム錯体と塩化チオニル(SOCl)と
の反応によって行われる。
【0149】
Yが-O-C(O)-CH基を表す場合、工程c1)は、典型的には、工程b)で得
られた式(I)のジアステレオ異性的に濃縮された六酸ガドリニウム錯体と塩化アセチル
との反応によって行われる。
【0150】
有利な実施形態では、工程c)は、エステル官能基の形態での上記のカルボン酸(-C
OOH)官能基の活性化を含む。
【0151】
この実施形態によれば、工程c)は、より特には、以下の連続する工程を含み得る:
c1)式(VIII)のトリエステルの形成
【化15】
(式中、Rは、(C~C)アルキル基を表す)、及び
c2)式(VIII)のトリエステルの3-アミノ-1,2-プロパンジオールとのアミ
ノリシス。
【0152】
工程c1)は、典型的には、塩酸などの酸の存在下で、溶媒及び試薬の両方として作用
する式ROHのアルコールにて実施される。
【0153】
最初の段階では、式(I)の六酸ガドリニウム錯体とアルコールROHを反応器に入
れる。次いで、反応媒体を、10℃未満、特に5℃未満、典型的には0℃の温度まで冷却
し、次いでアルコールROHの酸性溶液、典型的にはROHにおける塩酸を徐々に加
える。反応媒体は、室温で(即ち、20~25℃の温度で)、典型的には5時間より長い
時間、好ましくは10時間~20時間、攪拌され続けられる。工程c2)の前に、反応媒
体を10℃未満、特に0℃~5℃の温度に冷却する。
【0154】
又、工程c2)は、典型的には、塩酸などの酸の存在下で、式ROHのアルコールに
て実施される。
【0155】
従って、工程c1)及びc2)は、ワンポット実施形態に従って容易に実行することが
できる。有利には、式(VII)のトリエステルは、工程c1)とc2)の間で分離され
ない。
【0156】
しかしながら、アミノリシス反応を促進するために、工程c2)において、式ROH
のアルコールは、好ましくは、真空蒸留によって除去される。
【0157】
本発明の目的のために、「真空蒸留」という用語は、10~500ミリバール、とりわ
け10~350ミリバール、好ましくは10~150ミリバール、特に50~100ミリ
バールの圧力で行われる混合物の蒸留を意味する。
【0158】
同様に、アミノリシス反応を促進するために、工程c2)において、3-アミノ-1,
2-プロパンジオールが大過剰に導入される。典型的には、導入される3-アミノ-1,
2-プロパンジオールの材料量は、それ自体が1相当に相当する、工程c)で最初に導入
された式(I)のジアステレオ異性的に濃縮された六酸ガドリニウム錯体の材料量と比較
して、4当量より多く、特に7当量より多く、有利には10当量より多い。
【0159】
驚くべきことに、ガドリニウム錯体の速度論的不安定性を増加させるはずの工程c1)
及びc2)で典型的に使用される酸性条件にもかかわらず、式(VIII)のトリエステ
ルの脱錯体化又は異性化は観察されない。所望のトリアミドは、非常に良好な変換度で得
られ、環状型化合物の窒素原子に対して、側鎖のα位置に位置する3つの不斉炭素原子の
絶対配置が保持されている。
【0160】
更に、一般的に、エステルとアミンの直接反応によるアミド化反応は、文献に非常に慎
重に記載されていることに留意されたい(この主題については、K.C.Nadimpa
lly et al.,Tetrahedron Letters,2011,52,2
579-2582を参照)。
【0161】
好ましい実施形態では、工程c)は、以下の連続する工程を含む:
c1)特に、塩酸などの酸の存在下でメタノールでの反応による、式(IV)
【化16】
のメチルトリエステルの形成、及び
c2)特に、塩酸などの酸の存在下でメタノールでの式(IV)のメチルトリエステルの
3-アミノ-1,2-プロパンジオールとのアミノリシス、
【0162】
有利には、式(IV)のメチルトリエステルは、工程c1)とc2)の間で単離されな
い。
【0163】
好ましい実施形態では、工程c2)において、典型的には55℃を超える温度、特に6
0℃~65℃に達するまで、メタノールが真空蒸留によって除去され、反応媒体は、室温
に冷却して水で希釈する前に、典型的には5時間より長い時間、特に10時間~20時間
真空でこの温度に維持される。
【0164】
本発明は、プロセスの各工程に関連して、上記の特定の、有利な又は好ましい実施形態
の全ての組み合わせを包含する。
【0165】
又、本発明は、式(VIII):
【化17】
のトリエステルガドリニウム錯体であって、式:
【化18】
の異性体VIII-RRRとVIII-SSSの混合物を含む少なくとも80%のジアス
テレオ異性体過剰から構成される、トリエステルガドリニウム錯体に関する。
【0166】
本発明の文脈において、「ジアステレオ異性体過剰」という用語は、式(VIII)の
トリエステルガドリニウム錯体に関して、前述の錯体は、優勢的に、ジアステレオ異性体
VIII-RRR、VIII-SSS、VIII-RRS、VIII-SSR、VIII
-RSS、VIII-SRR、VIII-RSR及びVIII-SRSから選択される異
性体又は異性体の群の形態で存在することを示すことを意図している。前述のジアステレ
オ異性体過剰は、パーセントとして表され、式(VIII)のトリエステル錯体の総量に
対する優勢的な異性体又は異性体の群によって表される量に対応する。異性体は、定義上
、同じモル質量を有するので、このパーセントは、モルベース又は質量ベースのいずれか
であり得ることが理解される。
【0167】
特定の一実施形態では、本発明による式(VIII)のトリエステルガドリニウム錯体
は、少なくとも85%、とりわけ少なくとも90%、特に少なくとも95%、好ましくは
少なくとも97%、有利には少なくとも98%、より有利には少なくとも99%の、異性
体VIII-RRRとVIII-SSSの混合物を含むジアステレオ異性体過剰を有する
【0168】
好ましくは、前述のジアステレオ異性体過剰は、少なくとも70%、特に少なくとも8
0%、有利には少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の異性体VIII-RR
RとVIII-SSSの混合物から構成される。
【0169】
有利には、前述のジアステレオ異性体過剰は、異性体VIII-RRRとVIII-S
SSの混合物からなる。
【0170】
又、「異性体VIII-RRRとVIII-SSSの混合物」という用語は、VIII
-RRR又はVIII-SSSのいずれかである異性体の1つのみが存在する場合を網羅
する。しかしながら、「異性体VIII-RRRとVIII-SSSの混合物」という用
語は、異性体VIII-RRRとVIII-SSSのそれぞれが可変であるがゼロ以外の
量で存在する全ての場合を優先的に示す。
【0171】
好ましい実施形態では、異性体VIII-RRR及びVIII-SSSは、65/35
~35/65、とりわけ60/40~40/60、特に55/45~45/55の比で前
述の混合物中に存在する。有利には、異性体VIII-RRR/VIII-SSSの混合
物は、ラセミ(50/50)混合物である。
【0172】
好ましい実施形態では、本発明による式(VIII)のトリエステルガドリニウム錯体
は、トリメチルガドリニウム錯体、即ち、Rがメチル基(CH)である式(VIII
)のトリエステルガドリニウム錯体である。
【0173】
式(III)の六酸の調製
本発明による式(II)の錯体を調製するためのプロセスの工程a)に関与する式(I
II)の六酸は、既知の任意の方法により、特に欧州特許第1931673号明細書に記
載されている方法により調製することができる。
【0174】
しかしながら、好ましい実施形態によれば、式(III)の六酸は、式(V):
【化19】
のピクレンの式ROOC-CHG-(CH-COOR(IX)
(式中、
-R及びRは、互いに独立して、(C~C)アルキル基、特に、ブチル、イソブ
チル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル又はヘキシル基などの(C~C
)アルキル基を表し、
-Gは、トシレート又はトリフラート基などの脱離基、或いはハロゲン原子、好ましく
は臭素原子を表す)の化合物とのアルキル化によって得られ、
式(X)
【化20】
のヘキサエステルを得、
続いて加水分解工程が行われ、式(III)の前述の六酸が得られる。
【0175】
好ましい実施形態では、RとRは同一である。
【0176】
有利な実施形態によれば、式(III)の六酸は、式(V):
【化21】
のピクレンの2-ブロモグルタル酸ジブチルとのアルキル化によって得られ、
式(VI):
【化22】
のブチルヘキサエステルを得、
続いて加水分解工程が行われ、式(III)の前述の六酸が得られる。
【0177】
使用された2-ブロモグルタル酸ジブチルは、ラセミ又は鏡像異性的に純粋な形態であ
り、好ましくはラセミ形態である。
【0178】
欧州特許第1931673号明細書に記載されている2-ブロモグルタル酸エチルの使
用と比較して、2-ブロモグルタル酸ジブチルの使用は特に有利である。具体的には、市
販の2-ブロモグルタル酸ジエチルは、比較的不安定な化合物であり、経時的に温度の影
響下で分解する。より正確には、このエステルは、加水分解されて又は環化して、こうし
てその臭素原子を失うようになる傾向がある。市販の2-ブロモグルタル酸ジエチルを精
製し、又は純度を向上させてそれを得るための新しい合成経路を開発し、こうしてその分
解を防ぐ試みは成功しなかった。
【0179】
アルキル化反応は、典型的には、極性溶媒中で、好ましくは水中で、特に脱イオン水中
で、有利には炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下で行われる。
【0180】
明らかな理由から、欧州特許第1931673号明細書に記載されているアセトニトリ
ルよりも、特に水の使用が好ましい。
【0181】
反応は、40℃~80℃、典型的には50℃~70℃、特に55℃~60℃の温度で、
5時間~20時間、特に8時間~15時間、有利に実施される。
【0182】
加水分解工程は、酸又は塩基、有利には水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下で有利に
実施される。加水分解溶媒は、水、エタノールなどのアルコール、又は水/アルコール混
合物であり得る。この工程は、40℃~80℃、典型的には40℃~70℃、特に50℃
~60℃の温度で、典型的には10時間~30時間、特に15時間~25時間、有利に実
行される。
【0183】
更に、本発明は、式(VI)のブチルヘキサエステルに関する:
【化23】
【0184】
具体的には、このヘキサエステルは、より短いアルキル鎖を有するエステルと比較して
、特に欧州特許第1931673号明細書に記載のエチルヘキサエステルと比較して、著
しく改善された安定性によって識別される。
【図面の簡単な説明】
【0185】
図1】経時的な所与の群の異性体の面積パーセントとして表される式(II)の錯体の異性体の群iso1からiso4の塩基性条件下での分解。
【実施例
【0186】
以下に示す実施例は、本発明の非限定的な例示として示されている。
【0187】
HPLCによる式(I)の六酸ガドリニウム錯体の異性体の群isoA、isoB、is
oC及びisoDの分離
ポンプシステム、インジェクター、クロマトグラフィーカラム、UV分光光度検出器及
びデータ処理及び制御ステーションから構成されるHPLC機が使用される。使用される
クロマトグラフィーカラムは、C18-250×4.6mm-5μmカラムである(Wa
tersのSymmetry(登録商標)range)。
-移動相:
経路A:100%のアセトニトリル及び経路B:0.1%体積/体積のHSO(96
%)の水溶液
-試験溶液の調製:
精製水における10mg/mLの式(I)の六酸ガドリニウム錯体の溶液
-分析条件:
【0188】
【表7】
【0189】
-グラジエント:
【0190】
【表8】
【0191】
4つの主要なピークが得られる。HPLCプロットのピーク4、即ちisoDは、35
.7分の保持時間に対応する。
【0192】
UHPLCによる式(I)の六酸ガドリニウム錯体の異性体の群isoA、isoB、i
soC及びisoDの分離
ポンプシステム、インジェクター、クロマトグラフィーカラム、UV検出器及びデータ
ステーションから構成されるUHPLC機が使用される。使用されるクロマトグラフィー
カラムは、UHPLC 150×2.1mm-1.8μmカラム(Waters Acq
uity UPLC HSS T3カラム)である。これは、三官能性C18(オクタデ
シル)グラフトでのシリカから構成される球状粒子を含む逆相UPLCカラムであり、そ
のシラノールはキャッピング剤で処理されている(末端キャップされている)。又、長さ
150mm、内径2.1mm、粒子サイズ1.8μm、空隙率100Å、及び炭素含有量
11%が特徴である。
【0193】
使用する固定相は、水性移動相と互換性があることが優先される。
-移動相:
経路A:100%のアセトニトリル及び経路B:0.1%体積/体積のHSO(96
%)の水溶液
-試験溶液の調製:
精製水における0.8mg/mLの式(I)の六酸ガドリニウム錯体の溶液
-分析条件:
【0194】
【表9】
【0195】
-グラジエント:
【0196】
【表10】
【0197】
4つの主要なピークが得られる。UHPLCプロットのピーク4、即ちisoDは、1
7.4分の保持時間に対応する。
【0198】
UHPLCによる式(II)の錯体の異性体iso1、iso2、iso3、及びiso
4の群の分離
ポンプシステム、インジェクター、クロマトグラフィーカラム、UV検出器、及びデー
タステーションから構成されるUHPLC機が使用される。使用されるクロマトグラフィ
ーカラムは、UHPLC150×2.1mm-1.6μmカラム(Waters Cor
tecs(登録商標)UPLC T3カラム)である。
【0199】
-移動相:
経路A:100%のアセトニトリル及び経路B:0.0005%の体積/体積のHSO
(96%)の水溶液
【0200】
-試験溶液の調製:
精製水における2mg/mLの式(II)の錯体の溶液
【0201】
-分析条件:
【0202】
【表11】
【0203】
-グラジエント:
【0204】
【表12】
【0205】
4つの主要なピークが得られる。UHPLCプロットのピーク4、即ちiso4は、6
.3分の保持時間に対応する。
【0206】
緩和性の測定
緩和時間T及びTは、20MHz(0.47T)、60MHz(1.41T)、及
び37℃でMinispec(登録商標)mq20機(Brueker)において標準的
な手順にて決定した。縦緩和時間Tは、反転回復シーケンスを使用して測定され、横緩
和時間Tは、CPMG(Carr-Purcell-Meiboom-Gill)技術
により測定される。
【0207】
緩和率R(=1/T)及びR(=1/T)は、37℃で水溶液中の様々な濃度
の全金属(0.5×10-3~5×10-3モル/Lの範囲)について計算された。濃度
の関数としてのR又はRの間の相関は線形であり、傾きは、(1/秒)×(1/ミリ
モル/L)、即ち(mM-1.s-1)で表される緩和性r(R/C)又はr(R
/C)を表す。
【0208】
酸性媒体中の式(II)の錯体の異性体の群の速度論的慣性(kinetic iner
tia)の測定
異性体iso1からiso4(C=8×10-6M)の4つの未分解のピークに存在す
るガドリニウム錯体の解離を、塩酸溶液中、37℃、pH1.2で、溶液へのガドリニウ
ムの放出をモニタリングすることにより、イオン強度を制御せずに疑似一次速度論的条件
下で検討する。遊離ガドリニウムの量は、Arsenazo III(C=5.3×10
-4M)の溶液を添加した後、654nmでの分光分析によって決定された。
【0209】
異性体の各群について決定された半減期(T1/2)を、以下の表に整理する:
【0210】
【表13】
【0211】
式(II)の錯体の異性体の群の塩基性条件下での分解の検討
式(II)の錯体は、この実施例の残りの部分ではAPと呼ばれる。総称isoXと呼
ばれる、異性体iso1からiso4の未分解のピークの分解の速度論は、HPLC純度
を測定し、異性体の各未分解のピークの面積を経時的にモニタリングすることによって評
価される。従って、測定された強度は、次の通りである:
-PHPLC(時間)、及び
-[数1]
【数1】
【0212】
選択した分解条件は、以下の通りである:[AP]=0.1N水酸化ナトリウムにおけ
る1mM。これらの希釈条件下では、実験媒体におけるAPの分解の影響は低い。分解生
成物は、媒体のpHを変更せず、このパラメーターは、分解速度論の検討において重要で
ある。これは、初期のpHと分解終了時(72時間、37℃)のpHを測定することによ
って実験的に確認される:
【0213】
【表14】
【0214】
溶液を調製する方法を、以下に説明する:
-各生成物約0.05g、qs 10mLのmQ水を秤量し、[AP]=5mMとなる
溶液Aを得る、
-希釈:2mLの溶液A、qs 10mLのNaOH(0.1N)、[AP]=1mM
及び[NaOH]=0.08Mとなる溶液Bを得る、
-HPLCフラスコにおける溶液のアリコート、及び
-検討温度(37℃)でのNaOHにおけるAPの溶液を含むHPLCフラスコのインキ
ュベーション。
【0215】
各地点について、アリコートを採取し、試料を希釈せずにHPLCによって分析する(
酢酸アンモニウム法)。
【0216】
得られた結果を図1に示す。
【0217】
式(VI)のブチルヘキサエステルの調製
184kg(570モル)の2-ブロモグルタル酸ジブチル及び89kg(644モル
)の炭酸カリウムを反応器内で混合し、55~60℃に加熱する。24kgの水における
29.4kg(143モル)のピクレンの水溶液を、前の調製物に加える。反応混合物を
55~60℃に維持し、次いで約10時間還流する。反応後、媒体を冷却し、155kg
のトルエンで希釈し、次いで300リットルの水で洗浄する。ブチルヘキサエステルを、
175kg(1340モル)のリン酸(75%)で水相に抽出する。次いで、150kg
のトルエンで3回洗浄する。ブチルヘキサエステルを、145kgのトルエンと165k
gの水で希釈することにより、トルエン相に再抽出し、続いて30%水酸化ナトリウム(
質量/質量)で塩基性化してpH5~5.5にする。下の水相を除去する。ブチルヘキサ
エステルは、真空下、60℃で濃縮し乾燥することにより、約85%の収率で得られる。
【0218】
式(III)の六酸の調製
113kg(121モル)のブチルヘキサエステルを、8kgのエタノールと共に反応
器に入れる。媒体を55±5℃にし、次いで161kg(1207.5モル)の30%水
酸化ナトリウム(質量/質量)を3時間かけて加える。反応混合物をこの温度で約20時
間維持する。次いで、ブタノールを、反応媒体のデカンテーションによって除去する。ナ
トリウム塩の形態で得られた式(III)の六酸を水で希釈して、約10%(質量/質量
)の水溶液を得る。この溶液を酸性カチオン樹脂で処理する。水溶液中の式(III)の
六酸を、約90%の収率及び95%の純度で得る。
【0219】
式(I)の六酸ガドリニウム錯体の調製
・実験プロトコル
・錯体化及び異性化
-酢酸なし
式(III)の六酸の28重量%の水溶液418kg(式(III)の純粋な六酸11
7kg/196モル)を反応器に入れる。塩酸を加えることにより溶液のpHを2.7に
調整し、次いで37kg(103.2モル)の酸化ガドリニウムを加える。反応媒体を1
00~102℃で48時間加熱して、式(III)の六酸の予想される異性体分布を達成
する。
【0220】
-酢酸あり
酸化ガドリニウム(0.525モル当量)を、28.1質量%の式(III)の六酸の溶
液にて懸濁する。
【0221】
99~100%の酢酸(50質量%/式(III)の純粋な六酸)を室温で媒体に注ぐ
【0222】
媒体を加熱して還流し、続いて水を除去しながら媒体に酢酸を徐々に再度満たすことに
より質量で113℃まで蒸留する。113℃の温度に達したら、開始体積に達するのに十
分な量の酢酸を加える。
【0223】
媒体を一晩113℃に維持する。
【0224】
・結晶化、再結晶化
-結晶化
溶液における式(I)の六酸ガドリニウム錯体を40℃に冷却し、プライマーを加え、
試薬を少なくとも2時間接触させたままにする。次いで、生成物を40℃で濾過すること
により単離し、浸透水で洗浄する。
【0225】
-再結晶化
前に得られた式(I)の六酸ガドリニウム錯体(固形分約72%)180kgを、39
0kgの水に懸濁する。媒体を100℃に加熱して生成物を溶解し、次いで80℃に冷却
して少量のプライマーを加えることによりプライミングする。室温まで冷却した後、式(
I)の六酸ガドリニウム錯体を濾過及び乾燥により単離する。
【0226】
・選択的脱錯体化
乾燥生成物を、20℃で浸透水とともに反応器に入れる。加えられる水の質量は、式(
I)の六酸ガドリニウム錯体の理論質量の2倍に等しい。30.5%の水酸化ナトリウム
(質量/質量)(6.5当量)を20℃で媒体に注ぐ。NaOHの添加の終わりに、媒体
を50℃で16時間接触させたままにする。媒体を25℃に冷却し、生成物をClarc
elのベッドにて濾過する。
【0227】
・ジアステレオ異性体I-RRRとI-SSSの混合物を含むジアステレオ異性体過剰の
含有量
以下の表3に示されているように、ジアステレオ異性体の混合物中に式(I)の錯体の
様々な異性体が存在する比は、錯体化及び異性化工程が実行される条件に依存する。
【0228】
【表15】
【0229】
再結晶化及び選択的脱錯体化の更なる工程により、混合物I-RRRとI-SSSのジ
アステレオ異性体過剰を増加させることが可能になる(表4を参照)。
【0230】
【表16】
【0231】
式(II)の錯体の調製
式(I)の六酸錯体90kg(119モル)及びメタノール650kgを反応器に入れ
る。混合物を約0℃に冷却し、次いで塩酸のメタノール溶液(メタノールにおける8.2
5%のHCl)111kg(252モル)を、温度を0℃に維持しながら注ぐ。反応媒体
を室温にし、次いで撹拌を16時間続ける。0~5℃に冷却した後、120kg(131
9モル)の3-アミノ-1,2-プロパンジオールを加える。次いで、反応媒体を、真空
下でメタノールを蒸留除去しながら、60~65℃の温度に達するまで加熱する。濃縮物
をこの温度で真空下で16時間維持する。接触の終わりに、室温に冷却しながら、媒体を
607kgの水で希釈する。式(II)の精製してない錯体の溶液を、20%塩酸(質量
/質量)で中和する。こうして978.6kgの溶液が得られ、濃度は10.3%であり
、これは101kgの材料に相当する。得られた収率は86.5%である。
【0232】
式(II)の錯体から開始する異性体の変換の試験
式(II)の錯体の異性体は、予備HPLCにより単離された式(I)の六酸錯体の異
性体isoA、isoB、isoC及びisoDの群から合成された。異性体の4つの群
を単離し、次いでR及びSの3-アミノ-1,2-プロパンジオール(APD)でアミド
化した。従って、8つの異性体が得られた:
isoA+APD(R)及びisoA+APD(S)、
isoB+APD(R)及びisoB+APD(S)、
isoC+APD(R)及びisoC+APD(S)、及び
isoD+APD(R)及びisoD+APD(S)。
【0233】
これらの異性体のそれぞれを、式(I)の六酸ガドリニウム錯体の異性化を可能にする
条件下に置いた。
【0234】
こうして、pH3のHCl溶液は、1mLの1N HClを1リットルの水にて希釈す
ることによって調製される。異性体は、1mMの濃度でpH3のHCl溶液に加えられる
。10mgの粉末を10mLのこの溶液に溶解する。得られた8つの溶液を100℃に加
熱し、次いでT及びT+23時間でHPLCによって分析する。
【0235】
HPLCにより測定した純度のパーセントを、以下の表に示す。
【0236】
【表17】
【0237】
純度の低下は、異性化反応によって課せられる条件のため生成物の化学的分解(アミド
官能基の加水分解)によるものである。
【0238】
様々な化合物の異性化を可能にする条件は、アミド官能基の加水分解を介して生成物の
実質的な化学的分解をもたらすため、異性化は、欧州特許第1931673号明細書に記
載のプロセスに従って得られた式(II)の錯体において直接的に他の物質が入いらず且
つ選択的である方法で行うことができない。
図1