(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】正極、電極体、および電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/02 20060101AFI20240613BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240613BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240613BHJP
H01G 11/28 20130101ALI20240613BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20240613BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/66 A
H01G11/28
H01G11/70
(21)【出願番号】P 2021196261
(22)【出願日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀将
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】前田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】中井 晴也
(72)【発明者】
【氏名】野中 太貴
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-181636(JP,A)
【文献】国際公開第2013/176161(WO,A1)
【文献】特開2021-026885(JP,A)
【文献】特開2020-136117(JP,A)
【文献】特開2019-079661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02
H01M 4/13
H01M 4/66
H01G 11/28
H01G 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電箔と、
前記正極集電箔の両面に形成された正極活物質層と、
前記正極集電箔の一方の表面で前記正極活物質層と隣接して形成された第1の保護層と、を備えた正極であって、
前記正極集電箔は、少なくとも一方の端部に、前記正極集電箔が露出した正極集電箔露出部を有し、
前記第1の保護層は、前記正極集電箔露出部と、前記正極活物質層との間に位置しており、
前記第1の保護層は、前記正極活物質層側から前記正極集電箔露出部側に向かって厚みが小さくなるように形成された傾斜部を有し、
前記傾斜部は、前記傾斜部の前記正極集電箔の表面に対する角度が一定または前記正極集電箔露出部側に向かって小さくなるように形成されて
おり、
さらに、前記正極集電箔の前記第1の保護層が形成された表面の反対側の表面には、前記正極活物質層と前記正極集電箔露出部との間に第2の保護層が形成されており、
前記第1の保護層の前記傾斜部における平均厚みは、前記傾斜部の位置に対応する前記第2の保護層の平均厚みよりも大きい、正極。
【請求項2】
前記第1の保護層の前記傾斜部の傾斜方向に沿った断面において、前記傾斜部における前記第1の保護層の最大厚みT
maxは、前記傾斜部における前記第1の保護層の最小厚みT
minよりも2倍以上大きい、請求項
1に記載の正極。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の正極と、負極とを含む、電極体。
【請求項4】
請求項
3に記載の電極体を備える、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極、電極体、および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池に用いられる電極体は、例えば、シート状の正極と、シート状の負極とが、セパレータを介して積層されて構成されている。典型的には、正極および負極は、金属製の集電箔と、当該集電箔上に設けられた活物質層とを有している。正極および負極の端部には、集電箔露出部が設けられており、正極および負極それぞれにおいて、積層された複数の集電箔露出部が束ねられて溶接されている。例えば、特許文献1には、集電箔露出部として集電箔の一辺から突出した形状のタブを有する電極が開示されており、当該電極が積層された電極組立体において、積層された複数のタブを積層方向に沿って寄せ集め、溶接する技術が開示されている。また、特許文献2には、テープを用いて集電タブを寄せ集める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-4846号公報
【文献】特開2019-207794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、集電箔露出部(例えば集電タブ)は、薄い金属箔が露出している部分であるため、電極(正極および負極)の搬送時および加工時(例えば集電箔露出部の溶接時)に、シワ、折れ曲がり、破れ等が生じ易い傾向がある。本発明者らが検討したところ、この一因は、集電箔露出部の傾き方向のばらつきであることが見出された。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、集電箔露出部の傾きが制御された正極を提供することを主な目的とする。また、当該正極を備える電極体ならびに当該電極体を備える電池を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、集電箔露出部の傾きを制御するために、正極活物質層の正極集電箔露出部側に設けられる保護層に注目した。正極が備える保護層は、一般に、正極と負極との短絡を防止するなどの機能を有している。本発明者らは、かかる保護層に付加的な機能をもたせるため、当該保護層の形状について鋭意検討し、本発明を完成させた。
【0007】
ここで開示される正極は、正極集電箔と、上記正極集電箔の両面に形成された正極活物質層と、上記正極集電箔の一方の表面で上記正極活物質層と隣接して形成された第1の保護層と、を備えている。上記正極集電箔は、少なくとも一方の端部に、上記正極集電箔が露出した正極集電箔露出部を有し、上記第1の保護層は、上記正極集電箔露出部と、上記正極活物質層との間に位置しており、上記第1の保護層は、上記正極活物質層側から上記正極集電箔露出部側に向かって厚みが小さくなるように形成された傾斜部を有している。上記傾斜部は、上記傾斜部の上記正極集電箔の表面に対する角度が一定または上記正極集電箔露出部側に向かって小さくなるように形成されている。
【0008】
上記正極では、第1の保護層が正極集電箔の表面に対する角度が一定または上記正極集電箔露出部側に向かって小さくなるような傾斜部を有している。かかる構成は、第1の保護層形成用ペーストが正極集電箔の表面に塗工されたときの形状に由来する。かかる形状を有する第1の保護層形成用ペーストを乾燥させると、上記傾斜部の正極集電箔露出部側に位置に塗工された第1の保護層形成用ペーストは、塗工された当該ペーストの厚みがより大きい方向(正極活物質層側)に向かって収縮する力が働く。このとき、当該ペーストが収縮する力の方向が正極集電箔の表面に対して鋭角になる。そのため、第1の保護層形成用ペーストが乾燥させた際に、正極集電箔露出部が鋭角方向に引っ張られる力が生じる。これにより、正極集電箔露出部を第1の保護層が形成された表面側に傾斜させることができるため、正極集電箔露出部の傾き方向を制御することができる。
【0009】
ここで開示される正極の好ましい一態様では、さらに、上記正極集電箔の上記第1の保護層が形成された表面の反対側の表面には、上記正極活物質層と上記正極集電箔露出部との間に第2の保護層が形成されており、上記第1の保護層の上記傾斜部における平均厚みは、上記傾斜部の位置に対応する上記第2の保護層の平均厚みよりも大きい。これにより、第2の保護層よりも第1の保護層側に傾斜させる力がより大きくなり、好適に正極集電箔露出部の傾き方向を制御し易くなる。
【0010】
ここで開示される正極の好ましい一態様では、上記第1の保護層の上記傾斜部の傾斜方向に沿った断面において、上記傾斜部における上記第1の保護層の最大厚みTmaxは、上記傾斜部における上記第1の保護層の最小厚みTminよりも2倍以上大きい。上記最大厚みTmaxと、上記最小厚みTminとの差が大きいほど、塗工された第1の保護層形成用ペーストを乾燥させたとき、最小厚みTminにおけるペーストが収縮する力の正極集電箔の表面に対する角度が大きくなり、正極集電箔露出部をより傾斜させやすくすることができる。
【0011】
また、本開示により、ここで開示される正極と、負極とを備える電極体が提供される。かかる電極体では、正極集電箔露出部を任意の方向に調整することができるため、正極集電箔露出部を束ねるための負荷が軽減され、シワや破れの発生を防止することができる。
【0012】
また、本開示により、ここで開示される電極を備える電池が提供される。かかる電池では、正極集電箔露出部のシワや破れが防止されているため、電池の品質信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る電池の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る電池の電極体の構成を模式的に示す分解図である。
【
図3A】一実施形態に係る正極の第1の保護層形成用ペースト塗工後且つ乾燥前の正極集電箔露出部付近の構成を模式的に示す模式図である。
【
図3B】一実施形態に係る正極の正極集電箔露出部付近の構成を模式的に示す模式図である。
【
図4】一実施形態に係る正極の製造方法の一例を示す模式図である。
【
図5】一実施形態に係る正極を備える捲回電極体の積層面を示す断面図である。
【
図6】他の実施形態に係る電極体の構成を模式的に示す分解図である。
【
図7】第1変形例に係る正極の構成を模式的に示す
図3A対応図である。
【
図8】第2変形例に係る正極の構成を模式的に示す
図3A対応図である。
【
図9】第3変形例に係る正極の構成を模式的に示す
図3A対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ここで開示される技術について詳細に説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であっても実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術の内容は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
なお、各図面は模式的に描かれており、寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
また、本明細書において、数値範囲を「A~B(ここでA、Bは任意の数値)」と記載している場合は、「A以上B以下」を意味すると共に、「Aを超えてB未満」、「Aを超えてB以下」、および「A以上B未満」の意味を包含する。
【0016】
本明細書において、「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0017】
図1は、一実施形態に係る電池100の構成を模式的に示す断面図である。電池100は、電池ケース30の内部に、扁平形状の電極体(捲回電極体)20と、非水電解質(図示せず)とが収容されることで構築される角形の密閉型電池である。ここでは、電池100はリチウムイオン二次電池である。電池ケース30には、外部接続用の正極端子42および負極端子44が備えられている。また、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36が設けられている。さらに、電池ケース30には、非水電解質を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。電池ケース30の材質は、高強度であり軽量で熱伝導性が良い金属材料であることが好ましい。このような金属材料として、例えば、アルミニウムやスチール等が挙げられる。
【0018】
図2は、一実施形態に係る電池100の電極体20の構成を模式的に示す分解図である。
図2に示されるように、電極体20は、長尺シート状の正極50と、長尺シート状の負極60とが、2枚の長尺シート状のセパレータ70を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回された捲回電極体である。詳細は後述するが、正極50は、正極集電箔52と、該正極集電箔52の両面の長手側方向に形成された正極活物質層54と、正極活物質層54に隣接して形成された第1の保護層56とを備えている。正極集電箔52の捲回軸WL方向(即ち、上記長手側方向に直交するシート幅方向)の片側の縁部には、該縁部に沿って帯状に正極活物質層54が形成されずに正極集電箔52が露出した部分(即ち、正極集電箔露出部52a)が設けられている。第1の保護層56は、正極集電箔露出部52aと、正極活物質層54との間に位置している。負極60は、負極集電箔62と、該負極集電箔62の片面または両面(ここでは両面)の長手側方向に形成された負極活物質層64とを備えている。負極集電箔62の捲回軸WL方向の片側の反対側の縁部には、該縁部に沿って帯状に負極活物質層64が形成されずに負極集電箔62が露出した部分(即ち、負極集電箔露出部62a)が設けられている。正極集電箔露出部52aには正極集電板42aが接合されており、負極集電箔露出部62aには負極集電板44aが接合されている(
図1参照)。正極集電板42aは、外部接続用の正極端子42と電気的に接続されており、電池ケース30の内部と外部との導通を実現している。同様に、負極集電板44aは、外部接続用の負極端子44と電気的に接続されており、電池ケース30の内部と外部との導通を実現している(
図1参照)。なお、正極端子42と正極集電板42aとの間または負極端子44と負極集電板44aとの間に、電流遮断機構(CID)を設置してもよい。
【0019】
正極50を構成する正極集電箔52としては、例えば、アルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質層54は正極活物質を含む。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極活物質を用いてよく、例えば層状構造、スピネル構造、オリビン構造等を有するリチウム複合金属酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4,LiCrMnO4、LiFePO4等)が挙げられる。また、正極活物質層54は、導電材、
バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等
のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バイン
ダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
正極活物質層54は、正極活物質と、必要に応じて用いられる材料(導電材、バインダ等)とを適当な溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン:NMP)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を正極集電箔52の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
【0020】
負極60を構成する負極集電箔62としては、例えば、銅箔等が挙げられる。負極活物質層64は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。また、負極活物質層64は、バインダ、増粘剤等をさらに含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
負極活物質層64は、例えば、負極活物質と必要に応じて用いられる材料(バインダ等)とを適当な溶媒(例えばイオン交換水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を負極集電箔62の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
【0021】
セパレータ70としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様の各種微多孔質シートを用いることができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、セパレータ70は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
【0022】
非水電解質は従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用可能であり、例えば、有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させた非水電解液を用いることができる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を好適に採用し得る。あるいは、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)のようなフッ素化カーボネート等のフッ素系溶媒を好ましく用いることができる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.7mol/L以上1.3mol/L以下程度が好ましい。
なお、上記非水電解質は、本技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分を含んでいてもよく、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
【0023】
図3Aは、一実施形態に係る正極50の第1の保護層形成用ペースト塗工後且つ乾燥前の正極集電箔露出部52a付近の構成を模式的に示す模式図である。
図3Bは、一実施形態に係る正極50の正極集電箔露出部52a付近の構成を模式的に示す模式図である。
図3Aは、塗工されたペーストを乾燥させる前の構成(正極前駆体)を示しているが、説明のため、
図3Bに示す乾燥後に形成される正極50の符号に対応した符号を付している。
図3Aおよび3Bは、後述する第1の保護層56の傾斜部56aの傾斜方向に沿った正極50の断面を示している。換言すれば、正極集電箔52の長手側方向と直交するように正極50を切断したときの断面を示している。なお、以下の説明で「正極の断面」と記載される場合には、かかる断面のことを指す。
【0024】
図3Bに示すように、本実施形態では、正極50は、正極集電箔52と、正極活物質層54と、第1の保護層56と、第2の保護層58とを備えている。また、正極集電箔露出部52aは、第1の保護層56が形成された表面側に傾斜している。なお、第2の保護層58は、必須の構成ではなく、他の実施形態において省略してもよい。
【0025】
第1の保護層56は、正極活物質層54に隣接して形成されている。第1の保護層56は、正極活物質層54側から正極集電箔露出部52aに向かって厚みが小さくなるように形成された傾斜部56aと、傾斜部56aよりも正極集電箔露出部52a側に形成された平坦部56cと、傾斜部56aと平坦部56cとの境界部に存在する傾斜誘導部56bとを有している。
【0026】
ここで開示される正極50の製造方法は、例えば、第1の保護層形成用ペーストを塗工する工程(以下「塗工工程)ともいう)、および、塗工された第1の保護層形成用ペーストを乾燥させる工程(以下「乾燥工程」ともいう)を含む。
【0027】
塗工工程では、
図3Aのように、第1の保護層形成用ペーストを傾斜部56a、平坦部56cが形成されるように塗工する。本実施形態では、傾斜部56aは、正極集電箔52の表面に対して(
図3A中のベースラインBLに対して)、角度が一定になるように形成されている。かかる角度は、特に制限されるものではないが、例えば、10°~80°であって、20°~70°、30°~60°、40°~50°であり得る。なお、かかる角度は、
図3Aに示されるような正極の断面における角度のことをいう。
【0028】
本実施形態では、第1の保護層56において、一定の角度を有する傾斜部56aと平坦部56cとの境界に傾斜誘導部56bが存在している。換言すれば、正極50の断面において、傾斜誘導部56bを境にして、第1の保護層56の表面の正極集電箔52の表面に対する角度が変化している。第1の保護層56が傾斜部56aを備えることで、塗工された第1の保護層形成用ペーストを乾燥させた際に、傾斜部56aにおける第1の保護層形成用ペーストの収縮する力が、傾斜部56aの中央付近に向かうようになる。具体的には、傾斜部56aの正極集電箔露出部側に位置する第1の保護層形成用ペーストは、厚みがより大きい正極活物質層54側に向かって収縮する力が働き、このとき、収縮する力の方向が正極集電箔52の表面に対して鋭角になる(
図3A中の矢印参照)。そのため、第1の保護層形成用ペーストが乾燥して収縮する際に、正極集電箔露出部52aがかかる鋭角方向に引っ張られる。これにより、第1の保護層56が塗工された部分を起点に、正極集電箔露出部52aを第1の保護層56が形成された表面側に傾斜させることができる(
図3B中、矢印参照)。
【0029】
図4は、本実施形態に係る正極50の製造方法の一例を示す模式図である。
図4は、ダイヘッド200を用いて、正極集電箔52の表面に正極活物質層形成用ペーストおよび第1の保護層形成用ペーストを塗工する方法を模式的に示している。第1の保護層56の形状は、第1の保護層形成用ペーストの塗工時に概ね決定することができる。
【0030】
ダイヘッド200は、活物質層形成用ペースト吐出口210と、保護層形成用ペースト吐出口220と、これら吐出口を仕切る隔壁230とを備えている。活物質層形成用ペースト吐出口210には正極活物質層形成用ペーストが充填されており、保護層形成用ペースト吐出口220には、第1の保護層形成用ペーストが充填されている。ここでは、隔壁230の活物質層形成用ペースト吐出口210側の側壁232は、正極集電箔52の長手側方向(
図4中、上下方向)と平行となるように構成されている。また、隔壁230の保護層形成用ペースト吐出口220側の側壁234は、活物質層形成用ペースト吐出口210側の側壁232に対して鋭角(例えば、5°~50°、好ましくは10°~30°)になるように構成されている。ダイヘッド200は、正極活物質層形成用ペーストおよび第1の保護層形成用ペーストを同時に吐出している。かかる構成により、正極集電箔52上で、第1の保護層形成用ペーストが正極活物質層形成用ペーストとぶつかるように吐出される(
図4の矢印参照)。これにより、第1の保護層形成用ペーストと正極活物質層形成用ペーストとがぶつかった部分では、第1の保護層形成用ペーストが盛り上がるように塗工されるため、傾斜部56aが形成される。
【0031】
ダイヘッド200の吐出口の端部における隔壁230の幅W1を調整することで、第1の保護層56の傾斜部56aの形状を調整することができる。隔壁230の幅W1は、特に制限されるものではないが、例えば、0μm~3000μmであって、好ましくは400μm~1000μmである。隔壁230の幅W1が1000μm以下であれば、第1の保護層形成用ペーストと正極活物質層形成用ペーストとが正極集電箔52上でぶつかりやすくなり、傾斜部56aを安定的に形成することができる。また、隔壁230の強度の観点から、隔壁230の幅W1が400μm以上であるとよい。なお、隔壁230の幅W1が0μmの場合は、隔壁230の活物質層形成用ペースト吐出口210側の側壁232と、保護層形成用ペースト吐出口220側の側壁234とが吐出口の端部で直接接触している形状(即ち、隔壁230の端部が尖っている形状)を示す。
【0032】
乾燥工程は、公知方法に従って行うことができ、乾燥温度および乾燥時間は正極活物質層形成用ペーストおよび第1の保護層形成用ペーストに含まれる溶媒の量に応じて適宜決定すればよい。特に限定されるものではないが、乾燥温度は、例えば70℃~200℃とすることができる。また、乾燥時間は、例えば20秒~120分とすることができる。
【0033】
このようにして形成された正極50は、
図3Bに示すように、正極集電箔露出部52aが第1の保護層56側に傾斜している。かかる傾斜角度は、特に限定されるものではないが、例えば5°~40°であって、好ましくは15°~30°である。なお、かかる傾斜角度は、正極活物質層54が形成されている正極集電箔52の表面に対して(
図3B中のベースラインBLに対して)の角度のことをいう。
【0034】
第1の保護層56の傾斜部56aの正極集電箔52の表面に対する角度(
図3B中のベースラインBLに対しての角度)は、上記塗工工程における傾斜部56aの角度と同様とすることができ、例えば10°~80°であって、20°~70°、30°~60°、40°~50°であり得る。
【0035】
第1の保護層56の傾斜部56aの傾斜方向に沿った正極50の断面において、傾斜部56aにおける第1の保護層56の最大厚みTmaxは、傾斜部56aにおける第1の保護層56の最小厚みTminよりも2倍以上大きいことが好ましく、より好ましくは2.5倍以上、さらに好ましくは3倍以上であり得る。かかる最大厚みTmaxと、最小厚みTminとの差が大きいほど、塗工された第1の保護層形成用ペーストを乾燥させたとき最小厚みTminにおける当該ペーストが収縮する力の正極集電箔52の表面に対する角度が大きくなり、正極集電箔露出部52aをより傾斜させやすくすることができる。また、特に制限されるものではないが、かかる最大厚みTmaxは、傾斜部56aにおける第1の保護層56の最小厚みTminの10倍以下、5倍以下であり得る。
【0036】
また、傾斜部56aにおける第1の保護層56の上記最大厚みTmaxは、例えば、30μm~80μmであって、好ましくは、40μm~60μmであり得る。また、傾斜部56aにおける第1の保護層56の上記最小厚みTminは、例えば、5μm~30μmであって、好ましくは10μm~20μmである。また、傾斜部56aにおける第1の保護層56の平均厚みは、例えば、15μm~50μmであって、好ましくは20μm~40μmであり得る。
【0037】
第1の保護層56の傾斜部56aは、正極集電箔52の幅方向において、正極集電箔露出部52aが設けられた正極集電箔52の端辺から、正極集電箔露出部52a側の正極活物質層54の端辺までの距離を100%としたとき、例えば、正極活物質層54側から50%までの範囲に位置しているとよく、好ましくは30%以下の位置、より好ましくは15%以下の位置、さらに好ましくは10%以下の位置であるとよい。このように、傾斜部56aが正極活物質層54の近傍に設けられることで、正極集電箔露出部52a全体を傾斜させやすくなる。
【0038】
本実施形態では、第1の保護層56は平坦部56cを備える。平坦部56cは、傾斜部56aから正極集電箔露出部52a側に延びて形成されており、異物によって正極50と負極60とが短絡することを防止している。平坦部56cにおける第1の保護層56の平均厚みは、上述した傾斜部56aにおける第1の保護層56の最小厚みTminと同様であってよい。
【0039】
第1の保護層56は、バインダを含有する。また、第1の保護層56は、さらにセラミック粒子、導電材等を含んでいてもよい。第1の保護層形成用ペーストは、例えば、バインダと、任意で含まれるその他成分(セラミック粒子、導電材など)とを溶媒(例えばNMP)に分散させることで調製される。
【0040】
第1の保護層56に含有されるバインダとしては、例えば、アクリル系バインダ、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリオレフィン系バインダ等が挙げられ、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系ポリマーを用いることもできる。この中でも、正極集電箔露出部52aをより傾斜させやすくする観点から、PVDF等の収縮率の高いバインダが好ましく用いられる。
【0041】
第1の保護層56全体に占めるバインダの割合は、例えば、15質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。第1の保護層56に占めるバインダの割合が高いほど、第1の保護層形成用ペーストが収縮する力が強くなり、正極集電箔露出部52aを傾斜し易くすることができる。また、特に限定されないが、第1の保護層56にバインダ以外の成分(例えば、セラミック粒子、導電材等)を含む場合には、第1の保護層56全体に占めるバインダの割合は、例えば、50質量%以下であり、40質量%以下、30質量%以下であり得る。なお、第1の保護層56は、実質的にバインダのみから構成されていてもよい(即ち、バインダが100質量%)。
【0042】
第1の保護層56に含まれ得るセラミック粒子の例としては、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア(MgO)、セリア(CeO2)、酸化亜鉛(ZnO)等の酸化物系セラミックスの粒子;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックスの粒子;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物の粒子;マイカ、タルク、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン等の粘土鉱物の粒子等が挙げられる。なかでも、アルミナ粒子およびベーマイト粒子が好ましく用いられる。アルミナおよびベーマイトは融点が高く、耐熱性に優れる。また、アルミナおよびベーマイトは、モース硬度が比較的高く、機械的強度および耐久性にも優れる。さらに、アルミナおよびベーマイトは比較的安価なため、原料コストを抑えることができる。
【0043】
セラミック粒子の形状は、特に限定されず、球状であっても非球状であってもよい。セラミック粒子の平均粒子径(D50)は、特に限定されず、例えば0.01μm以上10μm以下であり、好ましくは0.1μm以上5μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径(メジアン径:D50)のことをいう。平均粒子径は、市販のレーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置等を用いて求めることができる。
【0044】
第1の保護層56がセラミック粒子を含む場合、第1の保護層56全体に占めるセラミック粒子の割合は、特に限定されないが、例えば、50質量%以上90質量%以下であり、好ましくは60質量%以上80質量%以下であり得る。
【0045】
第1の保護層56に含まれ得る導電材の例としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックなどが挙げられる。第1の保護層56が導電材を含むことで、正極50の集電性が高くなる。
【0046】
第1の保護層56が導電材を含む場合、第1の保護層56全体に占める導電材の割合は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上5.0質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下であり得る。
【0047】
本実施形態では、
図3Bに示すように、第2の保護層58は、正極集電箔52の第1の保護層56が形成された一方の表面とは反対側の表面に形成されている。第2の保護層58は、正極活物質層54と正極集電箔露出部52aとの間の位置に形成されている。本実施形態では、第2の保護層58は、正極活物質層54に隣接して形成されている。また、本実施形態では、第2の保護層58は、傾斜部を有さない平坦な層として形成されているが、その形状は特に限定されるものではない。
【0048】
第2の保護層58の構成成分は、上述した第1の保護層56と同様であってよく、例えば、上述したバインダ、セラミック粒子、導電材等を含み得る。
【0049】
第1の保護層56の傾斜部56aの位置に対応する(即ち、傾斜部56aの位置における正極集電箔52の反対側の表面)第2の保護層58の平均厚みは、第1の保護層56の傾斜部56aにおける平均厚みよりも小さいことが好ましい。即ち、第1の保護層56の傾斜部56aにおける平均厚みは、傾斜部56aの位置に対応する第2の保護層58の平均厚みよりも大きい。これにより、塗工された第1の保護層形成用ペーストを乾燥させたときの収縮する力が、塗工された第2の保護層形成用ペーストを乾燥させたときの力よりも大きくなるため、正極集電箔露出部52aが、より第1の保護層56が形成された表面側に傾きやすくなる。
【0050】
第2の保護層58全体の平均厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~20μmであって、好ましくは1μm~10μmであり得る。
【0051】
図5は、本実施形態に係る正極50を備える電極体20(捲回電極体)の積層面を示す断面図である。正極集電箔露出部52aは、第1の保護層56が形成された表面側に傾いているため、積層方向における長さ(高さ)の中央よりも下側では、正極集電箔露出部52aが上方向に傾斜し、中央よりも上側では、正極集電箔露出部52aが下方向に傾斜している。これにより、正極集電箔露出部52aが中央付近へ寄り集まった状態になる。そのため、積層された複数の正極集電箔露出部52aを束ねやすくなるため、正極集電箔露出部52aを溶接する際に、正極集電箔露出部52aへの負荷を軽減することができる。この結果、正極集電箔露出部52aのシワや破れの発生を抑制することができる。
【0052】
以上、一実施形態に係る正極50の構成および電池100の構成について説明した。正極50は、リチウムイオン二次電池に好適に採用され、正極集電箔露出部のシワや破れが防止された、品質信頼性の高い電池が実現される。リチウムイオン二次電池は、各種用途に利用可能である。具体的な用途としては、パソコン、携帯電子機器、携帯端末等のポータブル電源;電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源;小型電力貯蔵装置等の蓄電池などが挙げられ、なかでも、車両駆動用電源が好ましい。電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0053】
また、ここに開示される電池は、コイン型電池、ボタン型電池、円筒形電池、ラミネートケース型電池として構成することもできる。また、ここに開示される電池は、非水電解液の代わりに、ポリマー電解質を用いたポリマー電池や、固体電解質を用いた全固体電池等であり得る。
【0054】
以上、ここで開示される技術について、具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。ここに開示される技術には上記の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上述した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上述した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0055】
例えば、上述の実施形態では、電極体20の一例として扁平形状の捲回電極体を備える角形の電池100について説明した。しかしながら、ここで開示される電池は、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備える電池として構成することもできる。積層型電極体は、正極と負極の間のそれぞれに1枚のセパレータが介在するように、複数のセパレータを含むものであってもよく、1枚のセパレータが折り返されながら、正極と負極とが交互に積層されたものであってよい。積層型電極体の場合には、重ねられる正極50それぞれの正極集電箔露出部52aの傾斜方向を任意に決定することができる。例えば、
図5に示す捲回電極体のように、正極集電箔露出部52aを中央部へ寄せ集められるように、傾斜した正極集電箔露出部52aを配置してもよい。この場合、中央部付近の正極50は、正極集電箔露出部52aが傾斜していない従来の正極であってよい。また、正極集電箔露出部52aの傾斜方向を一方向に統一してもよく、従来の正極集電箔露出部52aが傾斜していない正極50と組み合わせて電極体20を構成してもよい。
【0056】
また、上述の実施形態では、
図2に示すように、正極集電箔露出部52aが正極集電箔52の幅方向の一端に帯状に設けられていた。しかしながら、これに限定されない。例えば、
図6に示すように、正極集電箔露出部52aが正極集電箔52の一端から延出した正極タブ52b上に設けられていてもよい。正極タブ52bは、例えば、正極集電箔52の端部をレーザー等で切断することで任意の形状に形成することができる。正極タブ52bの形状は特に限定されず、例えば台形状に形成される。なお、負極60にも同様に、負極集電箔露出部62aが負極タブ62b上に設けられていてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態では、第1の保護層56が平坦部56cを有していたが、これに限定されない。
図7は、第1変形例に係る正極50aの構成を模式的に示す
図3A対応図である。説明のため、
図7に示す正極50aは、正極集電箔露出部52aが傾斜する前(乾燥前)の状態を示している。電極体20aにおいて、第1の保護層56は、平坦部56cの代わりに、第2の傾斜部56dを有している。第2の傾斜部56dの正極集電箔52の表面に対する傾斜角度は、傾斜部56aの正極集電箔52の表面に対する傾斜角度よりも小さくなるように形成されている。かかる構成では、傾斜誘導部56bが傾斜部56aと第2の傾斜部56dとの境に存在している。かかる構成の塗工された第1保護層形成用ペーストを乾燥させることで、正極集電箔露出部52aを第1の保護層56が形成された表面側へ傾斜させることができる。
【0058】
また、上述の実施形態では、第1の保護層56において、傾斜部56aが正極集電箔52の表面に対して一定の傾斜角度を有していたが、これに限定されない。
図8は、第2変形例に係る正極50bの構成を模式的に示す
図3A対応図である。説明のため、
図8に示す正極50bは、正極集電箔露出部52aが傾斜する前(乾燥前)の状態を示している。正極50bにおける第1の保護層56の傾斜部56aの正極集電箔52の表面に対しての角度は、正極活物質層54側から正極集電箔露出部52a側に向かうほど小さくなるように構成されている。かかる構成においても、塗工された第1保護層形成用ペーストを乾燥させた際に、塗工されたペーストの厚みの小さい部分における収縮する力が正極集電箔52の表面に対して鋭角になるため、正極集電箔露出部52aを第1の保護層56が形成された表面側へ傾斜させることができる。なお、かかる構成では、傾斜誘導部56bは、傾斜部56aの一部として存在する。
【0059】
また、上述の実施形態では、第1の保護層56が平坦部56cを有していたが、これに限定されない。
図9は、第3変形例に係る正極50cの構成を模式的に示す
図3A対応図である。説明のため、
図9に示す正極50cは、正極集電箔露出部52aが傾斜する前(乾燥前)の状態を示している。正極50cでは、第1の保護層56が平坦部56cを有しておらず、正極集電箔52の表面に対して一定の傾斜角度を有する傾斜部56aを備えている。かかる構成の場合には、傾斜誘導部56bが傾斜部aの正極集電箔露出部52aと接する末端に存在している。かかる構成においても、正極集電箔露出部52aを第1の保護層56が形成された表面側へ傾斜させることができる。また、電極体20cでは、第2の保護層58が形成されておらず、他の実施形態においても、第2の保護層58を任意に省略してもよい。
【符号の説明】
【0060】
20 電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極
52 正極集電箔
52a 正極集電箔露出部
54 正極活物質層
56 第1の保護層
56a 傾斜部
56b 傾斜誘導部
56c 平坦部
58 第2の保護層
60 負極
62 負極集電箔
62a 負極集電箔露出部
64 負極活物質層
70 セパレータ
100 電池
200 ダイヘッド
210 活物質層形成用ペースト吐出口
220 保護層形成用ペースト吐出口
230 隔壁