(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】等温増幅および相対存在比を使用した宿主RNAの評価
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20240613BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALI20240613BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240613BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6883 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
(21)【出願番号】P 2021514983
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(86)【国際出願番号】 US2019051765
(87)【国際公開番号】W WO2020061217
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-07
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521107080
【氏名又は名称】インフラマティックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Inflammatix, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ローリング, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー, ティモシー イー.
(72)【発明者】
【氏名】エシュー, マーク
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/214061(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0281307(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0329038(US,A1)
【文献】特表2012-512119(JP,A)
【文献】特表2015-504305(JP,A)
【文献】国際公開第2011/068679(WO,A1)
【文献】米国特許第10072309(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0369927(US,A1)
【文献】Sci. Transl. Med.,2016年,Vol.8, No.346,346ra91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイム定量的等温増幅を使用して試験サンプルの診断スコアを推定するための方法であって、
前記試験サンプルが、少なくとも1つの第1の標的核酸と、少なくとも1つの第2の標的核酸と、参照核酸とを含有し、前記第1の標的核酸、前記第2の標的核酸および前記参照核酸の各々が、哺乳類宿主核酸を含み、前記方法が、
前記試験サンプルの第1のアリコートを前記第1の標的核酸の定量的等温増幅のための第1の反応容器に添加し、前記試験サンプルの第2のアリコートを前記第2の標的核酸の定量的等温増幅のための第2の反応容器に添加することであって、前記第1の反応容器および前記第2の反応容器の各々が、前記第1の標的核酸、前記第2の標的核酸および前記参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスを収容し、前記第2の標的核酸が、前記試験サンプルにおいて前記第1の標的核酸よりも低い予想存在比を有し、前記第1のアリコートが第1の体積を有し、前記第2のアリコートが前記第1の体積よりも大きい第2の体積を有する、第1のアリコートおよび第2のアリコートを添加することと、
前記第1の反応容器内で第1のリアルタイム定量的等温増幅アッセイを、
前記第1の反応容器内で第1の反応を開始し、
前記第1の反応における前記第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値を決定し、
前記第1の反応における前記参照核酸の第1の参照閾値までの時間値を決定し、かつ、
少なくとも前記第1の閾値までの時間値および前記第1の参照閾値までの時間値に基づいて、前記参照核酸に対する、前記試験サンプル中の前記第1の標的核酸の第1の相対存在比値を推定することにより、実行することと、
前記第2の反応容器内で第2のリアルタイム定量的等温増幅アッセイを、
前記第2の反応容器内で第2の反応を開始し、
前記第2の反応における前記第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値を決定し、
前記第2の反応における前記参照核酸の第2の参照閾値までの時間値を決定し、かつ、
少なくとも前記第2の閾値までの時間値および前記第2の参照閾値までの時間値に基づいて、前記参照核酸に対する、前記試験サンプル中の前記第2の標的核酸の第2の相対存在比値を推定することにより、実行することと、
前記第1の標的核酸の前記第1の相対存在比値および前記第2の標的核酸の前記第2の相対存在比値に基づいて前記試験サンプルの前記診断スコアを推定することと、を含む方法。
【請求項2】
前記試験サンプルの前記第1のアリコートを前記第1の反応容器に添加し、前記試験サンプルの前記第2のアリコートを前記第2の反応容器に添加する前に、臨床的に代表的な集団における前記第1標的核酸および前記第2標的核酸について試験リアルタイム定量的等温増幅アッセイを実行することによって、前記第2の標的核酸が前記第1標的核酸よりも低い予想存在比を有することを確立することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記診断スコアが、前記第1の相対存在比値と前記第2の相対存在比値との間の差に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試験サンプルが複数の第1の標的核酸および複数の第2の標的核酸を含有し、前記診断スコアが、前記複数の第1の標的核酸の前記相対存在比値に基づく第1の統計値と、前記複数の第2の標的核酸の前記相対存在比値に基づく第2の統計値との間の差に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の統計値が、前記複数の第1の標的核酸の前記相対存在比値の幾何平均を含み、前記第2の統計値が、前記複数の第2の標的核酸の前記相対存在比値の幾何平均を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の統計値が、前記複数の第1の標的核酸
の前記相対存在比値の
算術平均または合計を含み、前記第2の統計値が、前記複数の第2の標的核酸
の前記相対存在比値の
算術平均または合計を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記診断スコアが、患者が細菌感染症またはウイルス感染症を有しているか否かを診断するために使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の第1の標的核酸がウイルス感染症により多い遺伝子を含み、前記複数の第2の標的核酸が細菌感染症により多い遺伝子を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の第1の標的核酸がIFI27、JUPおよびLAX1を含み、前記複数の第2の標的核酸がHK3、TNIP1、GPAA1およびCTSBを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試験サンプルが、複数の第1の標的核酸および複数の第2の標的核酸を含有し、前記診断スコアが、回帰モデル、ツリーベースの機械学習モデル、サポートベクターマシンモデルまたは人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルを使用して、前記複数の第1の標的核酸の前記相対存在比値および前記複数の第2の標的核酸の前記相対存在比値に基づいて推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のリアルタイム定量的等温増幅アッセイおよび前記第2のリアルタイム定量的等温増幅アッセイの各々が、リアルタイム定量的ループ介在等温増幅(LAMP)アッセイである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の反応容器における前記第1の反応および前記第2の反応容器における前記第2の反応の各々が、ホットスタート機構を使用して開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
リアルタイム定量的等温増幅を使用して試験サンプルの診断スコアを推定するための装置であって、
前記試験サンプルの第1のアリコートを保持するように構成された第1の反応容器、および前記試験サンプルの第2のアリコートを保持するように構成された第2の反応容器であって、
前記試験サンプルが、第1の標的核酸と、第2の標的核酸と、参照核酸とを含有し、前記第1の標的核酸、前記第2の標的核酸および前記参照核酸の各々が、哺乳類宿主核酸を含み、
前記第1の反応容器および前記第2の反応容器の各々が、前記第1の標的核酸、前記第2の標的核酸および前記参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスを収容し、
前記第1のアリコートが第1の体積を有し、前記第2のアリコートが前記第1の体積よりも大きい第2の体積を有し、前記第2の標的核酸が、前記試験サンプル中の前記第1の標的核酸よりも低い予想存在比を有する、第1の反応容器および第2の反応容器と、
第1の閾値蛍光強度値および第2の閾値蛍光強度値を記憶するためのコンピュータメモリと、
前記第1の標的核酸および前記参照核酸を増幅する前記第1の反応容器内で第1の等温増幅反応を開始するための手段であって、前記第1の等温増幅反応が、前記第1の標的核酸に関連する第1の蛍光および前記参照核酸に関連する第1の参照蛍光を生成する、手段と、
前記第1の反応容器に光学的に連結された第1の蛍光検出器および第1の参照蛍光検出
器であって、前記第1の蛍光検出器が、時間の関数として前記第1の蛍光の強度を測定し、時間の関数として前記第1の参照蛍光の第1の参照強度を測定するように構成された、第1の蛍光検出器および第1の参照蛍光検出器と、
前記第2の標的核酸および前記参照核酸を増幅する前記第2の反応容器内で第2の等温増幅反応を開始するための手段であって、前記第2の等温増幅反応が、前記第2の標的核酸に関連する第2の蛍光および前記参照核酸に関連する第2の参照蛍光を生成する、手段と、
前記第2の反応容器に光学的に連結された第2の蛍光検出器および第2の参照蛍光検出器であって、前記第2の蛍光検出器が、時間の関数として前記第2の蛍光の強度を測定し、時間の関数として前記第2の参照蛍光の第2の参照強度を測定するように構成された、第2の蛍光検出器および第2の参照蛍光検出器と、
前記第1の蛍光検出器、前記第2の蛍光検出器、前記第1の参照蛍光検出器、前記第2の参照蛍光検出器および前記コンピュータメモリに連結されたコンピュータプロセッサであって、
関数時間としての前記第1の蛍光の強度および前記第1の閾値蛍光強度値に基づいて、前記第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値を決定し、
時間の関数としての前記第1の参照蛍光の強度および前記第1の閾値蛍光強度値に基づいて、前記参照核酸の第1の参照閾値までの時間値を決定し、
少なくとも前記第1の閾値までの時間値および前記第1の参照閾値までの時間値に基づいて、前記参照核酸に対する、前記試験サンプル中の前記第1の標的核酸の第1の相対存在比値を推定し、
時間の関数としての前記第2の蛍光の強度および前記第2の閾値蛍光強度値に基づいて、前記第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値を決定し、
時間の関数としての前記第2の参照蛍光の強度および前記第2の閾値蛍光強度値に基づいて、前記参照核酸の第2の参照閾値までの時間値を決定し、
少なくとも前記第2の閾値までの時間値および前記第2の参照閾値までの時間値に基づいて、前記参照核酸に対する、前記試験サンプル中の前記第2の標的核酸の第2の相対存在比値を推定し、
前記第1の標的核酸の前記第1の相対存在比値および前記第2の標的核酸の前記第2の相対存在比値に基づいて、前記試験サンプルの前記診断スコアを推定するように構成されたコンピュータプロセッサと、を含む装置。
【請求項14】
前記マスターミックスが、前記第1の標的核酸を検出するための第1の蛍光標識と、前記第2の標的核酸を検出するための第2の蛍光標識と、前記参照核酸を検出するための第3の蛍光標識と、を含む、請求項
13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の蛍光標識、前記第2の蛍光標識および前記第3の蛍光標識の各々が、SYTO色素を含む、請求項
14に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の閾値蛍光強度値および前記第2の閾値蛍光強度値が同じである、請求項
13に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の閾値蛍光強度値および前記第2の閾値蛍光強度値が互いに異なる、請求項
13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月19日に出願された米国仮特許出願第62/733,517号の利益を主張し、前記仮特許出願の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、診断スコアを推定する方法に関する。より具体的には、本開示は、リアルタイム定量的等温増幅を使用して診断スコアを推定する方法に関する。試験サンプルは、第1の標的核酸および第2の標的核酸を含む。第1の標的核酸の第1の相対存在比値および第2の標的核酸の第2の相対存在比値は、リアルタイム定量的等温増幅アッセイを実行することによって推定される。診断スコアは、第1の相対存在比値と第2の相対存在比値に基づいて推定される。
【背景技術】
【0003】
サンプル中の他の遺伝子および核酸の中で、低い存在比(例えば、少ないコピー数)で存在する標的遺伝子の定量は困難な場合があり得る。現在の検出方法は、遺伝子または遺伝子の転写に関連する生成物(例えば、mRNA)の増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))を伴うことが多い。逆転写酵素(RT)-PCRの出現により、RNA分子を特異的に標的化してcDNA分子を形成することができる。得られたcDNA分子自体は増幅のテンプレートとして使用可能であり、サンプル中の標的遺伝子または遺伝子生成物の検出を容易に向上させる。等温増幅法により、増幅速度はより速く、機器の複雑性はより低くなる。しかしながら、リアルタイム定量的ループ介在等温増幅(リアルタイムqLAMP)ベースの方法などの等温増幅技術では、哺乳類RNA標的の標的核酸の1,000コピー未満の標的核酸を確実に定量できない場合がある(Nixon et al.,(2014),Bimolecular Detection and Quantitation,2:4-10を参照)。
【0004】
急性感染症(細菌およびウイルスなど)の診断が改善されると、罹患率および死亡率が低下し得る。しかしながら、急性感染症を検出する方法は、特異性、感度および速度の点で不十分である。一部の増幅技術は血液培養物から直接病原体を検出できるが、これらの試験は特定の病原体の選択されたサブセットに依存する傾向があり、これは一部の病原体が検出されないことを意味する。さらに、多くの感染症は血流に入らないため、非侵襲的方法では検出できない。したがって、細菌感染症とウイルス感染症とを分類するために宿主応答(宿主遺伝子発現など)を評価し、診断および/または治療レジメンなどの結果に宿主応答を相関させる必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書中で提供されるのは、リアルタイム定量的等温増幅を使用して試験サンプルの診断スコアを推定するための方法である。いくつかの実施形態において、この方法は、少なくとも1つの第1の標的核酸と、少なくとも1つの第2の標的核酸と、参照核酸とを含有する試験サンプルを得ることを含む。第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の各々は、哺乳類宿主核酸を含む。この方法は、第1の標的核酸の定量的等温増幅のための第1の反応容器に試験サンプルの第1のアリコートを添加することと、第2の標的核酸の定量的等温増幅のための第2の反応容器に試験サンプルの第2のアリコートを添加することと、をさらに含む。第1の反応容器および第2の反応容器の各々は、第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスを収容する。第2の標的核酸は、試験サンプルにおいて第1の標的核酸よりも予想存在比が低い。第1のアリコートは、第1の体積を有する。第2のアリコートは、第1の体積よりも大きい第2の体積を有する。この方法はさらに、第1の反応容器内で第1の反応を開始し、第1の反応における第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値を決定し、第1の反応における参照核酸の第1の参照閾値までの時間値を決定し、かつ、少なくとも第1の閾値までの時間値および第1の参照閾値までの時間値に基づいて、参照核酸に対する、試験サンプル中の第1の標的核酸の第1の相対存在比値を推定することにより、第1の反応容器内で第1のリアルタイム定量的等温増幅アッセイを実行することを含む。この方法はさらに、第2の反応容器内で第2の反応を開始し、第2の反応における第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値を決定し、第2の反応における参照核酸の第2の参照閾値までの時間値を決定し、かつ、少なくとも第2の閾値までの時間値および第2の参照閾値までの時間値に基づいて、参照核酸に対する、試験サンプル中の第2の標的核酸の第2の相対存在比値を推定することにより、第2の反応容器内で第2のリアルタイム定量的等温増幅アッセイを実行することを含む。この方法はさらに、第1の標的核酸の第1の相対存在比値および第2の標的核酸の第2の相対存在比値に基づいて試験サンプルの診断スコアを推定することを含む。
【0006】
別の態様において、本明細書中で提供されるのは、リアルタイム定量的等温増幅を使用して診断スコアを推定する方法である。いくつかの実施形態において、この方法は、哺乳類対象から試験サンプルを得ることを含む。試験サンプルは、少なくとも1つの第1の標的核酸と、少なくとも1つの第2の標的核酸と、参照核酸とを含有する。第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の各々は、目的のコホート集団にわたって検証されるように、リアルタイム定量的等温増幅のダイナミックレンジ内にある試験サンプル中の予想濃度を有する。この方法はさらに、試験サンプルのアリコートを、第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスを収容する少なくとも1つの反応容器に添加することと、少なくとも1つの反応容器内で等温増幅の少なくとも1つの反応を開始することと、少なくとも1つの反応における第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値を決定することと、少なくとも1つの反応における第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値を決定することと、少なくとも1つの反応における参照核酸の参照閾値までの時間値を決定することと、少なくとも第1の閾値までの時間値および参照閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の参照核酸に対する、第1の標的核酸の第1の相対存在比値を推定することと、少なくとも第2の閾値までの時間値および参照閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の参照核酸に対する、第2の標的核酸の第2の相対存在比値を推定することと、第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値および第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値に基づいて、試験サンプルの診断スコアを推定することと、を含む。
【0007】
別の態様において、本明細書中で提供されるのは、試験サンプルに対してリアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定するための方法である。いくつかの実施形態において、この方法は、第1の標準曲線と、第2の標準曲線と、参照標準曲線とを得ることを含む。第1の標準曲線は、第1の標的核酸の開始コピー数を閾値までの時間に関連付ける第1の関数を含む。第2の標準曲線は、第2の標的核酸の開始コピー数を閾値までの時間に関連付ける第2の関数を含む。参照標準曲線は、参照核酸の開始コピー数を閾値までの時間に関連付ける参照関数を含む。第1の標準曲線、第2の標準曲線および参照標準曲線は、試験サンプルに対してリアルタイム定量的等温増幅を実行する前に生成される。この方法はさらに、哺乳類対象から試験サンプルを得ることを含む。試験サンプルは、第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸を含有する。この方法はさらに、第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスを収容する少なくとも1つの反応容器に試験サンプルを添加することと、少なくとも1つの反応容器内で等温増幅の少なくとも1つの反応を開始することと、少なくとも1つの反応における第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値を決定することと、少なくとも1つの反応における第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値を決定することと、少なくとも1つの反応における参照核酸の参照閾値までの時間値を決定することと、第1の標準曲線の第1の関数を使用して、第1の閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の第1の標的核酸の第1の開始コピー数を推定することと、第2の標準曲線の第2の関数を使用して、第2の閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の第2の標的核酸の第2の開始コピー数を推定することと、参照標準曲線によって提供される参照関数を使用して、参照閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の参照核酸の参照開始コピー数を推定することと、第1の標的核酸の第1の開始コピー数および参照核酸の参照開始コピー数に基づいて、参照核酸に対する、試験サンプル中の第1の標的核酸の第1の相対存在比値を推定することと、第2の標的核酸の第2の開始コピー数および参照核酸の参照開始コピー数に基づいて、参照核酸に対する、試験サンプル中の第2の標的核酸の第2の相対存在比値を推定することと、第1の標的核酸の第1の相対存在比値および第2の標的核酸の第2の相対存在比値に基づいて試験サンプルの診断スコアを推定することと、試験サンプルの診断スコアを所定の閾値診断スコアと比較することにより、病状の臨床診断を行うことと、含む。
【0008】
別の態様において、本明細書中で提供されるのは、リアルタイム定量的等温増幅を使用して試験サンプルの診断スコアを推定するための装置である。いくつかの実施形態において、この装置は、試験サンプルの第1のアリコートを保持するように構成された第1の反応容器、および試験サンプルの第2のアリコートを保持するように構成された第2の反応容器を含む。試験サンプルは、第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸を含有する。第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の各々は、哺乳類宿主核酸を含む。第1の反応容器および第2の反応容器の各々は、第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスを収容する。第1のアリコートは第1の体積を有し、第2のアリコートは第1の体積よりも大きい第2の体積を有する。第2の標的核酸は、試験サンプルにおいて第1の標的核酸よりも予想存在比が低い。この装置は、第1の閾値蛍光強度値および第2の閾値蛍光強度値を記憶するためのコンピュータメモリをさらに含む。この装置はさらに、第1の標的核酸および参照核酸を増幅する第1の反応容器において第1の等温増幅反応を開始するための手段を含む。第1の等温増幅反応は、第1の標的核酸に関連する第1の蛍光および参照核酸に関連する第1の参照蛍光を生成し得る。この装置はさらに、第1の反応容器に光学的に連結された第1の蛍光検出器および第1の参照蛍光検出器を含む。第1の蛍光検出器は、時間の関数として第1の蛍光の強度を測定し、時間の関数として第1の参照蛍光の第1の参照強度を測定するように構成される。この装置はさらに、第2の標的核酸および参照核酸を増幅する第2の反応容器内で第2の等温増幅反応を開始するための手段を含む。第2の等温増幅反応は、第2の標的核酸に関連する第2の蛍光および参照核酸に関連する第2の参照蛍光を生成し得る。この装置はさらに、第2の反応容器に光学的に連結された第2の蛍光検出器および第2の参照蛍光検出器を含む。第2の蛍光検出器は、時間の関数として第2の蛍光の強度を測定し、時間の関数として第2の参照蛍光の第2の参照強度を測定するように構成される。この装置はさらに、第1の蛍光検出器、第2の蛍光検出器、第1の参照蛍光検出器、第2の参照蛍光検出器およびコンピュータメモリに連結されたコンピュータプロセッサを含む。コンピュータプロセッサは、関数時間としての第1の蛍光の強度および第1の閾値蛍光強度値に基づいて、第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値を決定し、関数時間としての第1の参照蛍光の強度および第1の閾値蛍光強度値に基づいて、参照核酸の第1の参照閾値までの時間値を決定し、少なくとも第1の閾値までの時間値および第1の参照閾値までの時間値に基づいて、参照核酸に対する、試験サンプル中の第1の標的核酸の第1の相対存在比値を推定し、関数時間としての第2の蛍光の強度および第2の閾値蛍光強度値に基づいて、第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値を決定し、関数時間としての第2の参照蛍光の強度および第2の閾値蛍光強度値に基づいて、参照核酸の第2の参照閾値までの時間値を決定し、少なくとも第2の閾値までの時間値および第2の参照閾値までの時間値に基づいて、参照核酸に対する、試験サンプル中の第2の標的核酸の第2の相対存在比値を推定し、第1の標的核酸の第1の相対存在比値および第2の標的核酸の第2の相対存在比値に基づいて、試験サンプルの診断スコアを推定するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】いくつかの実施形態による、リアルタイム定量的等温増幅アッセイにおける、時間の関数としての蛍光強度の例示的なプロットを示す。
【
図2】いくつかの実施形態による、標的核酸の濃度が異なる8つのサンプルのリアルタイム定量的等温増幅アッセイにおける時間の関数としての蛍光強度の例示的なプロットを示す。
【
図3】いくつかの実施形態による、
図2に示す蛍光曲線から得られたコピー数の対数に対する閾値までの時間値を表すデータポイントの散布図およびデータポイントの線形回帰から得られた直線を示す。
【
図4】いくつかの実施形態による、試験サンプルに対してリアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定する方法を示す簡略化されたフローチャートを示す。
【
図5】他のいくつかの実施形態による、試験サンプルのリアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定する方法を示す簡略化されたフローチャートを示す。
【
図6】いくつかの実施形態による、試験サンプルに対してリアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定する方法を示す簡略化されたフローチャートを示す。
【
図7】いくつかの実施形態による、リアルタイム定量的等温増幅アッセイを使用して相対存在比値を推定するための装置の概略ブロック図を示す。
【
図8】ゴールドスタンダードアッセイ(NanoString nCounter)と比較した、定量的リアルタイム等温増幅アッセイを使用して決定された、参照核酸(YWHAB)に対する標的核酸(IFI27)の相対存在比に関するピアソン係数との相関プロットを示すグラフである。値は、両アッセイ共Log
2(存在比倍率(Fold Abundance))としてプロットされ、診断に応じて割り当てられる:丸はウイルス感染症を表し、四角は細菌性敗血症を表す。三角は健康な対照を表す。線は、標準的な線形回帰分析による曲線適合を表す。
【
図9A】いくつかの実施形態による、等温増幅アッセイおよびゴールドスタンダードのNanoString nCounterによって決定された診断スコアに関連付けられたピアソン係数との相関プロットを示す。
【
図9B】いくつかの実施形態による、qLAMPアッセイに基づくHostDx-Feverスコア分布を示す。
【
図9C】いくつかの実施形態による、NanoString nCounterに基づくHostDx-Feverスコア分布を示す。
【
図10】いくつかの実施形態による、カットオフ値が標準曲線滴定への線形回帰適合のy切片として定義される例を示す。
【
図11】いくつかの実施形態による、マルチボリューム反応容器を使用したqLAMPアッセイの実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を説明する前に、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されず、当然それ自体変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0011】
本開示は、試験サンプル中の標的核酸の相対存在比を決定するための方法、装置およびキットを提供する。qPCRは当該技術分野で周知であるが、等温増幅技術は、臨床的に関連するサンプル中の標的核酸を定量する方法をさらに進歩させることができなかった。例えば、細菌またはウイルスの核酸を定量するためのqLAMP法は、1,000コピー未満では信頼できない場合がある(Nixon et al.,(2014),Bimolecular Detection and Quantitation 2:4-10を参照)。したがって、必要なのは、サンプル中の標的核酸の開始コピー数とは無関係に、サンプル中の標的哺乳類mRNAの存在を定量するための方法である。本明細書中で提供されるのは、開始コピー数に基づくものではなく、サンプル中の標的核酸または参照核酸の絶対定量を必要としない、試験サンプル中の参照核酸に対する標的核酸の相対存在比を決定するための方法、装置およびキットである。これら方法、装置およびキットは、リアルタイム定量的等温増幅を利用して、試験サンプル中の標的核酸および参照核酸を増幅する。いくつかの態様において、標的核酸は、細菌またはウイルス感染症に応答して宿主によって発現される哺乳類宿主核酸(例えば、mRNA)である。相対定量は、同じアッセイで各標的に対して標準曲線を実行する必要なしに、またはさらには標準曲線を使用せずに、サンプル全体にわたって安定して、複数の哺乳類RNAマーカーに依存する特定の診断アルゴリズム(例えば、公開特許出願第WO2016/145426号、第WO2017/066641号、第WO2018/004806号および第WO2017/214061号を参照)の計算を行うのに十分である。
【0012】
いくつかの実施形態において、定量的リアルタイム等温増幅は、鎖置換増幅(SDA)、転写介在増幅(TMA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ローリングサークル増幅(RCA)、分岐増幅、ヘリカーゼ依存性等温DNA増幅(HDA)、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)およびループ介在等温増幅(LAMP)(例えば、Notomi et al.,(2000)Nucleic Acids Research,28(12)E63(参照により本明細書に組み込まれる))を含む。
【0013】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術の分野における当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験には、本明細書に記載されているのと類似または同等の任意の方法および材料を使用することができるが、好ましい方法および材料について記載する。本明細書に言及されているすべての刊行物およびアクセッション番号は、刊行物の引用に関連する方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
一般に、本明細書で使用される命名法、ならびに細胞培養、分子生物学、有機化学および以下に記載される核酸化学およびハイブリダイゼーションにおける実験手順は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。核酸およびペプチド合成には、標準的な技術が使用される。これらの技術および手順は、一般に、本文書全体に提供されている、当該技術分野における従来の方法および様々な一般的参考文献に従って実行される(一般に、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(参照により本明細書に組み込まれる)を参照)。
【0015】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、本主題が属する技術の分野における当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及されるすべての特許、特許出願、公開出願および刊行物、GENBANK配列、ウェブサイト、ならびに他の出版物は、特に明記しない限り、それらの全体が参照により組み込まれる。本書の用語に複数の定義がある場合は、本章における定義が優先される。URL、または他のかかる識別子もしくはアドレスを参照する場合、かかる識別子は変更されることがあり、インターネット上の特定の情報は移り変わることがあるが、同等の情報は既知であり、インターネットおよび/または好適なデータベースを検索するなどして容易にアクセスできるものと理解される。それらの参照は、かかる情報の利用可能性および公的普及を証明するものである。
【0016】
本明細書で使用される場合、「a(一つの)」、「an(一つの)」、および「the(その)」という用語は、1つまたは複数を意味するように定義され、文脈が不適切でない限り、複数形を含む。本出願では、特に明記されていない限り、単数形の使用には複数形が含まれる。
【0017】
範囲は、本明細書では、「about(約)」1つの特定値から、および/または「約」別の特定値までとして表現することができる。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、近似(approximately)、~の辺り(in the region of)、大体(roughly)、またはおおよそ(around)を意味する。「約」という用語を数値範囲と組み合わせて使用する場合、この用語は、示された数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、表示値の上下10%だけ分散した数値に変更するために使用される。かかる範囲を表現する場合、別の実施形態は、1つの特定値からおよび/または他の特定値までを含む。同様に、値を近似値として表現する場合、先行詞「約」を使用することにより、指定された値が別の実施形態を形成することが理解される。各範囲の端点が範囲に含まれることがさらに理解される。
【0018】
本明細書で使用される場合、「or(または/もしくは)」という単語は、特定リストの任意の1つのメンバーを意味し、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「including(含む)」という用語、ならびに他の形態(例えば、「include」、「includes」および「included」)は、限定的ではない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「相対存在比値」という用語は、試験サンプル中の標的核酸の測定値を指す。いくつかの実施形態において、相対存在比値は、遺伝子発現の差が異なるサンプル(例えば、異なる対象から得られたサンプルまたは単一の被験者から異なる時間(例えば、前処理と後処理)に得られたサンプル)間で比較できるように、試験サンプル中の標的核酸およびハウスキーピング遺伝子の等温増幅を実行することによって推定される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「標的核酸」という用語は、例えば、病原性(例えば、細菌またはウイルス)活性に応答して、哺乳類宿主遺伝子から発現される哺乳類RNA配列を指す。哺乳類RNAとしては、ヒト、ならびに、ウマ、ネコ、イヌ、ブタおよびヒツジなどのヒト以外の哺乳動物を挙げることができる。好ましい実施形態では、標的核酸は哺乳類mRNAである。いくつかの実施形態において、標的核酸は、哺乳類宿主mRNA内のスプライスジャンクションを包含する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「参照核酸」または「内因性対照」という用語は、標的核酸量を正規化するために使用される試験サンプル中に存在する核酸を指す。参照核酸は、試験サンプルに通常見られる天然の核酸(ハウスキーピング遺伝子mRNAなど)を含み得るか、または標的核酸量を正規化するために試験サンプル内にスパイクされた既知量の入力材料を含み得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「試験サンプル」という用語は、哺乳類から得られた生物学的サンプルを指す。場合によっては、生物学的サンプルは、臨床手順中に得られるか、または医師または医師助手によって得られる臨床サンプルであり、例えば、子宮頸部または膣スワブ、鼻腔スワブ、血液または血液成分サンプル(血漿、血清またはPMBCなど)である。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、粘液、便または尿サンプルなどの排泄された生物学的サンプルを含む。いくつかの実施形態において、試験サンプルは、鼻腔スワブ、頬スワブ、フィンガースティック血液などの自己収集標本である。
【0024】
「等温増幅」という用語は、一定の単一増幅温度(例えば、約30℃~約95℃)を使用して標的核酸が増幅されるプロセスを指す。標準的なPCRとは異なり、等温増幅反応は、増幅された標的核酸分子(すなわち、アンプリコン)の集団を形成するための、アニーリングされたオリゴヌクレオチドの変性、ハイブリダイゼーションおよび伸長の複数のサイクルを含まない。ループ介在等温増幅(LAMP)、核酸配列ベースの増幅NASBA、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ローリングサークル増幅(RCA)、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)およびヘリカーゼ依存性増幅(HDA)を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で知られている様々なタイプの等温用途がある。
【0025】
本明細書で使用される場合、「リアルタイム定量的等温増幅」という用語は、標的核酸が一定温度で増幅され、標的核酸の増幅速度が蛍光、濁度(tubidity)または同様の手段(NEARまたはLAMPなど)によって監視されるプロセスを指す。いくつかの態様において、RNA(mRNAなど)は、生物学的サンプルから単離され、cDNAを合成するためのテンプレートとして使用される。逆転写は、mRNAをcDNAに変換するための周知の方法である。増幅された標的核酸の生成物を検出および定量できるように、cDNA分子は等温増幅条件下で増幅される。本明細書で使用される場合、「増幅速度」は、標的核酸アンプリコンが生成される速度である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ」は、ポリヌクレオチド、例えば、DNAおよび/またはRNAのテンプレート指向性合成を実行する鎖置換活性と共に使用される1つ以上の酵素を指す。この用語は、全長ポリペプチドおよびポリメラーゼ活性を有するドメインの両方を包含する。市販のポリメラーゼ酵素のさらなる例としては、クレノウフラグメント(New England Biolabs(登録商標)Inc.)、Taq DNAポリメラーゼ(QIAGEN)、9°N(商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs(登録商標)Inc.)、Deep Vent(商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs(登録商標)Inc.)、Manta DNAポリメラーゼ(Enzymatics(登録商標))、Bst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs(登録商標)Inc.)およびphi29 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs(登録商標)Inc.)が挙げられるが、これらに限定されない。Bst2.0、Bst3.0およびBst2.0 WarmStart(登録商標)DNAポリメラーゼ(すべてNew England Biolabs(登録商標)Inc.から市販されている)などのポリメラーゼは、LAMPに適している。LAMPは、DNAポリメラーゼと共に逆転写酵素(RTase)を使用すると、RNAに適用できる。
【0027】
ポリメラーゼには、DNA依存性ポリメラーゼおよび逆転写酵素などのRNA依存性ポリメラーゼの両方が含まれる。DNA依存性DNAポリメラーゼの少なくとも5つのファミリーが知られているが、ほとんどはファミリーA、BおよびCに分類される。他のタイプのDNAポリメラーゼとしては、ファージポリメラーゼが挙げられる。同様に、RNAポリメラーゼとしては、典型的には、真核生物RNAポリメラーゼI、IIおよびIII、ならびに細菌RNAポリメラーゼ、ならびにファージおよびウイルスポリメラーゼが挙げられる。RNAポリメラーゼは、DNA依存性およびRNA依存性であり得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「標準曲線」という用語は、当該技術分野において明白かつ通常の意味が与えられている。通常、標準曲線は、例えばテンプレートの段階希釈によって、標的核酸の異なる濃度のサンプルのセットから導き出される。閾値までの時間値は、濃度の対数(例えば、10を底とする)に対してプロットされる。最小二乗適合が標準曲線として使用される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「等温増幅のためのマスターミックス」という用語は、等温増幅アッセイを実行するために必要なdNTP、塩(例えば、マグネシウム)および緩衝液などの複数の成分を指す。場合によっては、等温増幅のためのマスターミックスは、リアルタイム定量的等温増幅マスターミックスである。いくつかの実施形態において、等温増幅のためのマスターミックスは、増幅されるプライマー、プローブおよび核酸テンプレートを除いて、等温増幅反応を実行するために必要とされるすべての成分を含有する。
【0030】
「蛍光標識」または「フルオロフォア」という用語は、約400~約900nmの蛍光発光極大を有する化合物を指す。括弧内の発光極大(単位:nm)を有するこれらの化合物としては、Syto-9、Syto-82、Cy2(商標)(506)、GFP(レッドシフト)(507)、YO-PRO(商標)-1(509)、YOYO(商標)-1(509)、Calcein(517)、FITC(518)、FluorX(商標)(519)、Alexa(商標)(520)、Rhodamine110(520)、5-FAM(522)、Oregon Green(商標)500(522)、Oregon Green(商標)488(524)、Ribo Green(商標)(525)、Rhodamine Green(商標)(527)、Rhodamine 123(529)、MagnesiumGreen(商標)(531)、CalciumGreen(商標)(533)、TO-PRO(商標)-1(533)、TOTO(登録商標)-1(533)、JOE(548)、BODIPY(登録商標)530/550(550)、Di1(565)、BODIPY(登録商標)558/568(568)、BODIPY(登録商標)564/570(570)、Cy3(商標)(570)、Alexa(商標)546(570)、TRITC(572)、MagnesiumOrange(商標)(575)、Phycoerythrin R&B(575)、Rhodamine Phalloidin(575)、CalciumOrange(商標)(576)、Pyronin Y(580)、Rhodamine B(580)、TAMRA(582)、RhodamineRed(商標)(590)、Cy3.5(商標)(596)、ROX(608)、Calcium Crimson(商標)(615)、Alexa(商標)594(615)、TexasRed(登録商標)(615)、Nile Red(628)、YO-PRO(商標)-3(631)、YOYO(商標)-3(631)、R-phycocyanin(642)、C-Phycocyanin(648)、TO-PRO(商標)-3(660)、TOTO(登録商標) -3(660)、DiD DilC(5)(665)、Cy5(商標)(670)、Thiadicarbocyanine(671)およびCy5.5(694)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなるフルオロフォアは、PCT特許公開第WO03/023357号および米国特許第7,671,218号に開示されている。これらのおよび他の好適な蛍光色素クラスの例としては、Haugland et al.,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Sixth Ed.,Molecular Probes,Eugene,Ore.(1996);米国特許第3,194,805号、第3,128,179号、第5,187,288号、第5,188,934号、第5,227,487号、第5,248,782号、第5,304,645号、第5,433,896号、第5,442,045号、第5,556,959号、第5,583,236号、第5,808,044号、第5,852,191号、第5,986,086号、第6,020,481号、第6,162,931号、第6,180,295号および第6,221,604号、欧州特許第1408366号;Smith et al.,J.Chem. Soc. Perkin Trans.2:1195-1204(1993);Whitaker,et al.,Anal. Biochem.207:267-279(1992);Krasoviskii and Bolotin,Organic Luminescent Materials,VCH Publishers,N Y.(1988);Zolliger,Color Chemistry,2nd Edition,VCH Publishers,N Y.(1991);Hirschberg et al.,Biochemistry 37:10381-10385(1998);Fieser and Fieser,REAGENTS FOR ORGANIC SYNTHESIS,Volumes 1 to 17,Wiley,US(1995);ならびにGeiger et al.,Nature 359:859-861(1992)に見出すことができる。
【0031】
クエンチャーとフルオロフォアとの対、ならびにそれらのオリゴヌクレオチドへの結合を選択するための当該技術分野における広範なガイダンスが存在する(Haugland,1996、米国特許第3,996,345号および第4,351,760号など)。例示的なクエンチャーは、米国特許第6,727,356号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。他のクエンチャーとしては、ビスアゾクエンチャー(米国特許第6,790,945号)およびBiosearch Technologies,Inc.の色素(Black Hole(商標)Quenchersとして提供:BH-1、BH-2およびBH-3クエンチャー)、Dabcyl、TAMRAおよびカルボキシテトラメチルローダミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
任意の好適なフルオロフォアを使用して、等温増幅反応中に組み込まれたプライマー、プローブまたはヌクレオチドを蛍光標識することができる。いくつかの実施形態において、蛍光標識は、これらに限定されないが、Syto-9、Syto-82、SYBR(登録商標)、Hoechst33258またはDAPIなどのインターカレート剤である。
【0033】
本明細書で使用する場合、「閾値までの時間」という用語は、等温増幅が開始された瞬間から、標的核酸の濃度を表す蛍光強度が所定の閾値に達する瞬間までの経過時間を指す。等温増幅が開始されてからの時間に対する蛍光強度のプロット(例えば、
図1に示されるような)において、閾値までの時間は、蛍光曲線が閾値を表す水平な線と交差するX軸交差点である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「コピー数」という用語は、元の試験サンプル中に存在する(すなわち、リアルタイム定量的等温増幅前の)標的核酸分子または参照核酸分子の数を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「N倍段階希釈」という用語は、好適な緩衝液(生理食塩水、水など)を使用して、一定の希釈係数(1:5、1:10、1:20または1:50)で、溶液の第1の成分(参照核酸など)を段階的に希釈することを指す。例えば、10倍段階希釈は、第1の成分(100mg/mlの濃度で存在する参照核酸など)を希釈係数10(1:10など)で段階希釈して、10mg/mlの濃度で存在する参照核酸の第1の段階希釈物を形成し、続いて、第1の段階希釈物の2度目の10倍希釈を行う(例えば、1mg/mlの濃度で存在する参照核酸の2度目の段階希釈物を形成するため)ことなどを必要とする。
【0036】
本明細書で使用される場合、「線形回帰」という用語は、従属変数と1つ以上の独立変数との間の関係をモデル化するための統計的な線形アプローチを指す。線形回帰において、関係は、未知のモデルパラメーターがデータから推定される線形予測関数(linear predictor functions)を使用してモデル化される。このようなモデルは線形モデルと呼ばれる。通常、単一の独立変数の場合、(x,y)データポイントが散布図としてグラフ形式でプロットされる。ここで、xは独立変数であり、yは従属変数である。線形回帰は、従属変数と独立変数の間との関係を表す「最適線」を得ることを目的としている。線形回帰モデルは、最小二乗アプローチを使用して適合される場合が多いが、他のノルムにおける「コスト関数」を最小化するなど、他の方法(例えば、L1-ノルムペナルティまたはL2-ノルムペナルティ)でも適合され得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、定量的等温増幅アッセイの「線形ダイナミックレンジ」という用語は、閾値までの時間対濃度の対数(例えば、2または10を底とする)のプロットが線形である標的核酸の入力濃度の範囲を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ダイナミックレンジ」という用語は、所与のアッセイ(例えば、LAMP)が検出することができるサンプル濃度または入力量の範囲(最大から最小まで)を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「診断スコア」という用語は、病状を分類または診断するための統合されたスコアを指す。診断スコアは、特定のアルゴリズムを使用して病状に関連すると識別されたいくつかのバイオマーカーの発現レベルを、臨床的に関連する閾値を適用できる単一のスコアに結合する。例示的なアルゴリズムについては、以下のJ、KおよびL章で説明する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「集団試験」という用語は、1つ以上のバイオマーカーの発現レベルの統計を確立するための臨床的に代表的な集団の研究を指す。本明細書で使用される「臨床的に代表的な集団」という用語は、統計的有意性を確立するのに十分な大きさの個人のグループを指す。例えば、集団試験では、特定の疾患がある患者とない患者のバイオマーカーを測定し、スチューデントのt検定、ウェルチのt検定、マンホイットニーのU検定、または分散分析(ANOVA)、F検定などを使用してバイオマーカーが差次的に発現されるか否かを確認することができる。統計的有意性は、例えば、p<0.05に設定することができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「機械学習モデル」という用語は、コンピュータシステムがパターンおよび一連の試験データからの推論に依存するタスクを実行するために使用するアルゴリズムまたは統計モデルを指す。いくつかのバイオマーカーを診断スコアに統合する特定のアルゴリズムは、機械学習モデルであり得る。例示的な機械学習モデルには、線形回帰、ロジスティック回帰、決定木、サポートベクターマシン(SVM)、ランダムフォレスト、K-平均法、人工ニューラルネットワーク(ANN)などが含まれる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ホットスタート」という用語は、増幅に使用されるポリメラーゼを不活性化することによって核酸の非特異的増幅を防ぐ増幅プロセスのバリエーションを指す。ホットスタートは、プライマーダイマーの形成およびプライマーの非標的核酸への非特異的アニーリング(その後、非標的核酸は増幅中に伸長される)を低減する。ホットスタートには様々な手法がある(例えば、Paul et al.,(2010)Methods Mol Biol.,630:301-18を参照)。例えば、ポリメラーゼは、抗体、アプタマーまたは化学修飾を使用することによって不活性化することができ、その結果、ポリメラーゼ(室温および/または氷上で適度に活性であり得る)は、最適以下の温度で機能するのを阻止される。ホットスタートプロセスでは、最初の活性化ステップ(95℃など)を実行して、ポリメラーゼを活性化する。この最初の熱活性化ステップはまた、ポリメラーゼに連結した抗体を不活性化するか、またはポリメラーゼから化学修飾(リジン修飾など)を除去する。これらの成分が不活性化されると、ポリメラーゼは試験サンプル中に存在する標的核酸を増幅することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、リアルタイム定量的等温増幅アッセイで使用される抗体、アプタマーまたはポリメラーゼに対する化学修飾などのホットスタート機構を含む。
【0043】
「プライマー」は、標的核酸上の相補的配列にハイブリダイズし、核酸合成の開始点として機能するポリヌクレオチド配列を指す。プライマーは様々な長さであり得、長さが80ヌクレオチド未満、例えば、長さが20~70ヌクレオチドである場合が多い。一実施形態において、本出願の全長標的特異的プライマーは、30~65ヌクレオチド長、例えば、30、35、40、45、50、55、60または65ヌクレオチド長を含み得る。いくつかの実施形態において、多重増幅反応混合物は、20~65ヌクレオチド長の1つ以上の完全長の標的特異的プライマーを含み得る。異なる長さの標的特異的プライマーを多重増幅反応で使用して、多重全長標的特異的プライマーのうちの1つまたは複数が、多重全長標的特異的プライマー対の残りと比較して異なるヌクレオチド長を含むようにすることができる(45ヌクレオチドのヌクレオチド長を有する第1の全長標的特異的プライマーおよび58ヌクレオチドのヌクレオチド長を有する第2の全長標的特異的プライマーを含む多重増幅反応など)。等温増幅で使用するためのプライマーの長さおよび配列は、当業者に知られている原理に基づいて設計することができる。例えば、Innis et al.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis et al.,eds,1990)を参照。プライマーの設計および評価には様々なツールがある(NCBI-Blastソフトウェアなど)。本出願では、等温増幅反応中のミスハイブリダイゼーションの可能性を低減するために、高度に縮重した配列を有するプライマーを回避することができる。プライマーは、DNA、RNA、またはDNAおよびRNA部分のキメラから調製できる。場合によっては、プライマーは、1つ以上の修飾ヌクレオシド(2-アミノ-デオキシアデノシンなど)または非天然ヌクレオチド塩基(DNAプライマー中のウラシルなど)を含み得る。場合によっては、プライマーは、FRETドナーおよびFRETアクセプター部分などの蛍光標識を含むことができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「プローブ」という用語は、天然に存在するか、合成的に、組換え的に、または増幅によって生成されるかにかかわらず、目的の別のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを指す。プローブは一本鎖または二本鎖であり得る。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定および単離に役立つ。一実施形態において、本発明において使用される任意のプローブは、標識が、蛍光、放射性および発光システムを含む任意の検出システムにおいて検出可能であるように標識されることが企図される。本発明が特定の検出システムまたはラベルに限定されることを意図するものではない。
【0045】
本明細書で使用される場合、「アンプリコン」という用語は、当該技術分野における通常の慣習的な使用を保持している。アンプリコンは、DNAまたはcDNAテンプレートから生成された増幅生成物である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「相対定量」という用語は、単一サンプルにおける標的核酸の発現レベルと参照核酸の発現レベルとの間の比較、または異なるサンプルにおける同じ標的核酸の発現レベル間の比較を指す。相対定量は、サンプル中の標的核酸の絶対量を決定することを含む「絶対定量」とは対照的である。
【0047】
A.試験サンプル
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法、装置および関連キットは、試験サンプルを利用する。いくつかの実施形態において、試験サンプルは、疾患または病状を特定する目的で診断評価のために採取された臨床サンプル(例えば、鼻腔スワブ、生検または採血)から得られる。いくつかの実施形態において、試験サンプルは、医師または獣医によって得られる。いくつかの実施形態において、試験サンプルは、鼻腔スワブ、頬スワブなどの自己収集標本である。いくつかの実施形態において、試験サンプルは、医療装置(例えば、白血球アフェレーシス装置)によって得られる。任意の好適な試験サンプルを使用して、本発明を実施してもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、サンプルは、ヒトなどであるがこれに限定されない哺乳類から得られる。いくつかの実施形態において、サンプルは、チンパンジー、ネコ、イヌ、ブタ、ヒツジまたはウシなどであるがこれらに限定されない非ヒト哺乳類から得られる。いくつかの実施形態において、試験サンプルは、健康なまたは疾患のある哺乳類から得られる。いくつかの実施形態において、サンプルは、ウイルス感染症または細菌感染症と診断された、またはその疑いがある哺乳類対象から得られる。いくつかの実施形態において、哺乳類対象は、細菌感染症(例えば、Streptococcus)を有している疑いがある。いくつかの実施形態において、哺乳類対象は、ウイルス感染症(例えば、HIV)を有している疑いがある。
【0049】
いくつかの実施形態において、宿主から得られる試験サンプルは、尿、唾液、血液または血液成分(血清、血漿および末梢血単核細胞(PMBC)などであるが、これらに限定されない)などの体液を含む。任意の好適な体液を使用して、本発明を実施してもよい。
【0050】
B.標的核酸
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法、装置および関連キットは、標的核酸を利用する。いくつかの実施形態において、標的核酸は、哺乳類核酸である。いくつかの実施形態において、標的核酸は、宿主核酸(例えば、宿主の細胞によって生成されるか、または試験サンプルの供給源から得られたサンプルにおいて検出される)である。いくつかの実施形態において、標的核酸は、哺乳類宿主核酸(哺乳類DNAまたはRNAなど)である。いくつかの実施形態において、標的核酸は、哺乳類宿主RNAである。好ましい実施形態において、標的核酸は、哺乳類宿主mRNAである。一実施形態において、標的核酸は、哺乳類宿主mRNA内のスプライスジャンクションを包含する。一実施形態において、標的核酸は、哺乳類宿主mRNAと同時に検出される病原体起源の核酸を包含する。
【0051】
いくつかの実施形態において、標的核酸は、哺乳類宿主から得られたサンプル中に存在し、標的核酸は、宿主サンプルから単離される(RNA抽出など)。いくつかの実施形態において、標的核酸は、哺乳類宿主(全血など)から得られたサンプル中に存在し、標的核酸は、宿主サンプル(例えば、QIAamp RNA血液ミニキット、Qiagen、カタログ番号:52304)から単離される。
【0052】
いくつかの実施形態において、哺乳類宿主の標的核酸は、参照核酸と比較して、試験サンプル中により多く存在する。いくつかの実施形態において、哺乳類宿主の標的核酸は、参照核酸と比較して、試験サンプル中により少なく存在する。任意の好適な哺乳類宿主核酸を使用して、本発明を実施してもよい。
【0053】
C.参照核酸
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法、装置および関連キットは、参照核酸を利用する。いくつかの実施形態において、参照核酸は、哺乳類核酸である。いくつかの実施形態において、参照核酸は、宿主核酸(例えば、宿主の細胞によって生成されるか、または試験サンプルの供給源から得られたサンプルにおいて検出される)である。いくつかの実施形態において、参照核酸は、哺乳類宿主核酸(哺乳類DNAまたはRNAなど)である。いくつかの実施形態において、参照核酸は、哺乳類宿主RNAである。好ましい実施形態では、参照核酸は、哺乳類宿主mRNAである。いくつかの実施形態において、哺乳類宿主核酸は、標的核酸と比較して、試験サンプル中により多く存在する。いくつかの実施形態において、哺乳類宿主核酸は、標的核酸と比較して、試験サンプル中により少なく存在する。好ましい実施形態では、参照核酸および標的核酸は、異なる遺伝子によって発現される。さらに別の実施形態において、参照核酸および標的核酸は、同じ哺乳類生物(例えば、ヒトまたはマウス)からの異なる遺伝子によって発現される。任意の好適な参照核酸を使用して、本発明を実施してもよい。
【0054】
ハウスキーピング遺伝子
いくつかの実施形態において、参照核酸は、対応するmRNA転写物などのハウスキーピング遺伝子またはその生成物である。いくつかの実施形態において、参照核酸は、プレmRNA分子、5’キャップmRNA分子、3’アデニル化mRNA分子または成熟mRNA分子であるmRNA転写物を含む。好ましい実施形態では、参照核酸は、試験サンプルの供給源でもある哺乳類宿主から得られた成熟mRNA分子である。
【0055】
いくつかの実施形態において、参照核酸は、哺乳類ハウスキーピング遺伝子またはその遺伝子生成物(例えば、mRNA)である。いくつかの実施形態において、ハウスキーピング遺伝子は、哺乳類宿主における1つ以上の細胞集団によって構成的に発現される(すなわち、継続的に転写される)遺伝子である。構成的に発現される遺伝子は、必要な場合にのみ転写される遺伝子を指す通性遺伝子と対比され得る。本発明との使用に好適である例示的なハウスキーピング遺伝子としては、アクチン、GAPDHおよびユビキチンが挙げられる。任意の好適なハウスキーピング遺伝子を使用して、本発明を実施してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、ハウスキーピング遺伝子またはその生成物は、宿主の細胞によって比較的一定の速度で発現され、その結果、ハウスキーピング遺伝子の発現速度は、他の宿主遺伝子またはその遺伝子生成物の発現に対する参照点として使用できる。
【0057】
いくつかの実施形態において、参照核酸は、ヒトハウスキーピング遺伝子である。本発明との使用に好適である例示的なヒトハウスキーピング遺伝子としては、KPNA6、RREB1、YWHAB、染色体1オープンリーディングフレーム43(C1orf43)、荷電多小胞体タンパク質2A(CHMP2A)、ER膜タンパク質複合体サブユニット7(EMC7)、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ(GPI)、プロテアソームサブユニット、ベータタイプ2(PSMB2)、プロテアソームサブユニット、ベータタイプ4(PSMB4)、メンバーRAS癌遺伝子ファミリー(RAB7A)、受容体補助タンパク質5(REEP5)、核内低分子リボ核タンパク質D3(SNRPD3)、バロシン含有タンパク質(VCP)および液胞タンパク質ソーティング29ホモログ(VPS29)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、http://www/tau/ac/il~elieis/HKG/で提供される任意のハウスキーピング遺伝子を使用することができる(Eisenberg and Levanon.,Trends Genet.(2013),10:569-74を参照)。
【0058】
いくつかの実施形態において、参照核酸は、ブタハウスキーピング遺伝子である。本発明との使用に好適である例示的なブタハウスキーピング遺伝子としては、ACTB、B2M、GAPDH、HMBS、SDHA、HPRT1、TBP、YWHAZおよびRPL32が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
いくつかの実施形態において、参照核酸は、ウシハウスキーピング遺伝子である。本発明との使用に好適である例示的なウシハウスキーピング遺伝子としては、ACTB、GAPDH、HMBS、SF3A1 HPRT1、H2AおよびSDHAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
いくつかの実施形態において、参照核酸は、ウマハウスキーピング遺伝子である。本発明との使用に好適である例示的なウシハウスキーピング遺伝子には、ACTB、GAPDH、TOP2B、KRT8およびRPS9が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
D.試験サンプル処理
1.反応容器
いくつかの実施形態では、試験サンプルからの標的核酸および参照核酸が、第1の反応容器に供給される。本明細書で使用される場合、「反応容器」は、本発明を実施することができるシステムを指し、好適な表面(ガラス、プラスチック、シリコン、金属酸化物、ビーズおよびシラン化(例えば、アルコキシシラン)表面を含むが、これらに限定されない)上または内の試験管、マイクロ遠心チューブ、ウェル、チャンバー、マイクロウェル(例えば、96、384、および1536ウェルアッセイプレート)、キャピラリーチューブ、マイクロ流体デバイスもしくは試験サイトを含むが、これらに限定されない。任意の好適な反応容器を使用して、本発明を実施してもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、反応容器は、定量的等温増幅法の間、1000μL未満の液体を収容する。別の実施形態において、反応容器は、定量的等温増幅法の間、約15μL~約750μLの液体を収容する。
【0063】
別の実施形態において、試験サンプルからの標的核酸は、第1の反応容器に収容され、試験サンプルからの参照核酸は、第2の反応容器に収容される。反応容器は、任意の有用な寸法(幅、長さ、高さなど)のものであり得、任意の好適な材料から構成され得る。好ましくは、本出願の反応容器(複数可)は、マイクロリットルまたはナノリットルのスケールである。
【0064】
いくつかの実施形態において、複数の反応容器が複数の標的核酸に使用され、各反応容器はそれぞれの標的核酸の等温増幅に使用される。
【0065】
いくつかの実施形態において、反応容器は、定量的等温増幅の前、後または最中に、標的核酸または参照核酸を試験サンプルから単離するための捕捉領域をさらに含むことができる。一実施形態において、反応容器は、定量的等温増幅後に試験サンプルから標的核酸および/または参照核酸を単離するための捕捉領域を含むことができる。いくつかの実施形態において、捕捉領域は、フィルター、マトリックス、ポリマー、ゲル、および本明細書に記載される任意のものを含む膜(例えば、シリカ膜、ガラス繊維膜、セルロース膜、ニトロセルロース膜、ポリスルホン膜、ナイロン膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ビニルコポリマー膜もしくはイオン交換膜、繊維(例えば、ガラス繊維)、または粒子(シリカ粒子、ビーズ、アフィニティー樹脂もしくはイオン交換樹脂など)を含むことができる。
【0066】
任意の好適な材料を反応容器として使用することができる。反応容器を形成するために使用される材料は、反応容器の適切な機能のために望ましい物理的および化学的特性に関して選択される。好適な材料としては、シリコーンポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサンおよびエポキシポリマー)、ポリイミド(例えば、市販のKapton(登録商標)(ポリ(4,4’ーオキシジフェニレン-ピロメリットイミド(DuPont、デラウェア州ウィルミントン))およびUpilex(商標)(ポリ(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)(宇部工業株式会社、日本)))、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリフルオロカーボン、フッ素化ポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシポリマー、フッ素化エチレン-プロピレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロポリエチレン、パーフルオロスルホン酸、パーフルオロポリイミド、FFPM/FFKM(過フッ素化エラストマー[パーフルオロエラストマー])、FPM/FKM(フルオロカーボン[クロロトリフルオロエチレンビニリデンフルオリド])、およびそれらのコポリマー)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスチレン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、アクリレートおよびポリメチルメタクリレートなどのアクリル酸ポリマー、および他の置換および非置換ポリオレフィン(例えば、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリエチレン(PE、例えば、架橋PE、高密度PE、中密度PE、線状低密度PE、低密度PEまたは超高分子量PE)、ポリメチルペンテン、ポリブテン-1、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー(Mクラス)ゴム)、ならびにそれらのコポリマー(例えば、シクロオレフィンコポリマー)などのポリマー材料;酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどのセラミック;シリコン、ガリウムヒ素などの半導体;ガラス;金属;ならびにそれらのコーティングされた組み合わせ、複合材料および積層体が挙げられる。
【0067】
2.等温増幅タイミング機構
ホットスタート
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法、装置およびキットは、標的核酸の増幅を確実にするために様々な機構を利用し、参照核酸を(例えば、互いに、および様々な非連続の実験反復にわたって)確実に比較することができる。場合によっては、方法および装置は、試験サンプル中の非特異的(例えば、偽)増幅生成物の生成を低減または阻害する「ホットスタート」機構を含む。ホットスタートは、各反応が同時に開始することを保証し得る。ホットスタート増幅を実行するための様々な技術が当該技術分野で知られている(例えば、Paul et al.,(2010)Methods Mol Biol.,630:301-18を参照)。任意の好適なホットスタート機構を使用して、本発明を実施してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、「ホットスタート」機構は、定量的等温増幅アッセイのポリメラーゼ(例えば、RNAポリメラーゼまたはDNAポリメラーゼ)を不活性化する1つ以上の抗体を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、「ホットスタート」機構は、定量的等温増幅アッセイのポリメラーゼを不活性化する1つ以上のアプタマーを含む(例えば、WarmStart LAMPキット、New England Biolabsカタログ番号:E1700S;およびWarmStart RTx逆転写酵素、New England Biolabsカタログ番号:M0380Sを参照)。ポリメラーゼと共に使用するのに適した核酸ベースのアプタマーとしては、米国特許第5,475,096号、第5,670,637号、第5,696,249号、第5,874,557号および第5,693,502号に記載されているものが挙げられる。
【0070】
いくつかの実施形態において、「ホットスタート」機構は、定量的等温増幅アッセイのポリメラーゼを不活性化する1つ以上の化学修飾を含む。いくつかの実施形態において、これら1つ以上の化学修飾は、増幅反応が90℃を超える温度に達するまでポリメラーゼが不活性であるように、ポリメラーゼに存在する1つ以上のリジン残基が化学的に修飾されるリジン修飾を含む。
【0071】
ホットスタート機構では、加熱を使用してポリメラーゼを活性化する。また、この最初の熱活性化は、ポリメラーゼに連結した抗体を不活性化するか、またはポリメラーゼから化学修飾(例えば、リジン修飾)を除去し得る。これらの成分が不活性化されると、ポリメラーゼは試験サンプルに存在する標的核酸を増幅することができる。
【0072】
同時増幅
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法、装置およびキットは、標的核酸の増幅を確実にするために同時増幅ステップを利用し、参照核酸を(例えば、互いに、および様々な非連続の実験反復にわたって)確実に比較することができる。いくつかの実施形態において、試験サンプル中の標的核酸の増幅(例えば、第1の反応容器内)は、試験サンプル中の参照核酸の増幅(第2の反応容器内)と同時に起こる。いくつかの実施形態において、同時増幅ステップは、同じ反応容器内で同時に(例えば、同一の開始および停止増幅反応時間)標的核酸および参照核酸を増幅することを含む。いくつかの実施形態において、同時増幅は、標的核酸および参照核酸の増幅(同じまたは異なる反応容器内)が、標的核酸および参照核酸の各々が同じ指定温度(例えば、65℃)に達するまでは始まらず、その温度に達したら増幅反応が同時に開始するような「ホットスタート」機構を含み得る。
【0073】
非同時増幅
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法、装置およびキットは、2つ以上の反応を(例えば、互いに、および様々な非連続の実験反復にわたって)確実に比較できるように、増幅反応を開始するための時間インジケータを使用した標的核酸および参照核酸の非同時増幅ステップを利用する。いくつかの実施形態において、試験サンプル中の標的核酸の増幅(例えば、第1の反応容器内)は、試験サンプル中の参照核酸の増幅(例えば、第2の反応容器内)と比較して非同時的に起こる。いくつかの実施形態において、非同時増幅は、例えば、時間1で標的核酸に相補的なプライマーおよび/またはプローブを提供し、後の時間(例えば、時間2)で参照核酸に相補的なプライマーおよび/またはプローブを提供することによって、同じ反応容器内で標的核酸および参照核酸を増幅することを含む。非同時増幅アプローチを使用して試験サンプル中の標的核酸の相対存在比値を得るために、標的核酸の増幅のための増幅反応の長さを決定することが重要である。増幅反応の長さがわかれば、参照核酸の増幅を実行するための基礎として使用できる。このように、標的核酸および参照核酸の各々は、増幅反応の出力を互いに確実に比較することができるように、同じ期間および同じ条件下で増幅される。
【0074】
E.等温増幅
本明細書に記載されているのは、標的核酸の等温増幅のための方法、装置および関連キットである。等温増幅アッセイには、PCRで必要とされる周期的な加熱および冷却ステップは含まれていない。そのため、等温増幅アッセイは、等温増幅を実行するためにサーモサイクラーなどの高価な機器を必要としない(例えば、Gill and Ghaemi,(2008)Nucleos.Nucleot.Nucl.,27:224-243、Kim and Easley(2011),Bioanalysis,3:227-239およびYan et al.,Mol.Biosyst.,10:970-1003を参照)。いくつかの実施形態において、等温増幅は、リアルタイムの等温増幅アッセイを含む。いくつかの実施形態において、等温増幅アッセイは、リアルタイム定量的等温増幅アッセイである。定量的等温増幅とも呼ばれるリアルタイム等温増幅は、増幅生成物の量をリアルタイムで測定するために使用される場合が多い。通常、定量的等温増幅には、サンプル中の標的核酸の開始量の定量を可能にする、増幅反応における一連の標準と共に、標識プローブ(例えば、フルオロフォア含有プローブまたは蛍光色素)の使用が含まれる。
【0075】
いくつかの実施形態において、等温増幅は、逆転写酵素および、Bstポリメラーゼなどであるがこれに限定されない鎖置換型等温酵素を含む。逆転写酵素等温増幅は、RNAからDNAを合成および増幅するために使用される方法である。逆転写酵素は、RNAを相補的DNA(cDNA)に逆転写する酵素であり、その後、このDNA(cDNA)は等温増幅によって増幅される。逆転写酵素等温増幅は、遺伝子発現プロファイリング、遺伝子発現の決定、または転写開始部位および終止部位を含むRNA転写生成物の配列の同定に使用できる。
【0076】
いくつかの実施形態において、等温増幅は、鎖置換増幅(SDA)を含む。SDAは、特定の制限酵素がDNAにニックを入れる能力と、5’-3’エキソヌクレアーゼ欠損ポリメラーゼが下流の鎖を伸長および置換する能力に依存している。指数関数的な核酸増幅は、センス反応とアンチセンス反応を組み合わせることによって達成することができ、センス反応からの鎖置換は、アンチセンス反応のテンプレートとして機能する。例えば、DNAを切断しないが、Nt.AlwlなどのDNA鎖のうちの1つにニックを生成するニッカーゼ酵素を使用することができる。SDAはまた、熱安定性制限酵素(例えば、Aval)および熱安定性ポリメラーゼ(例えば、Bstポリメラーゼ)の組み合わせを含み得る。このような組み合わせは、増幅効率を約10倍に高めることが知られており、したがって、試験サンプル中に単一コピーとして存在する標的核酸の増幅を可能にする。
【0077】
いくつかの実施形態において、増幅反応アッセイは、転写介在増幅(TMA)または核酸配列ベースの増幅(NASBA)を含む。TMAおよびNASBAでは、RNAポリメラーゼを使用してRNA配列を増幅する。一般に、この方法は、第1および第2のプライマーおよび2つまたは3つの酵素(例えば、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素および任意にRNase H)、ならびにRNAポリメラーゼのプロモーター配列を有する第1のプライマーを利用する。標的核酸増幅の第1のステップにおいて、第1のプライマーは、規定された部位で標的RNA(例えば、リボソームRNA)にハイブリダイズする。逆転写酵素は、プロモータープライマーの3’末端からの伸長により、標的rRNAのcDNAコピーを作成する。得られたRNA:DNA二重鎖のRNAは、逆転写酵素(存在する場合)のRNase活性または追加のRNase Hによって分解される可能性がある。次に、第2のプライマーがcDNAコピーに結合し、DNAの新しい鎖が逆転写酵素によるこのプライマーの末端から合成され、二本鎖DNA分子を作成する。RNAポリメラーゼは、DNAテンプレートのプロモーター配列を認識し、転写を開始する。新しく合成された各RNAアンプリコンは、上述のプロセスに再び入り、新たなラウンドの複製のテンプレートとして機能する。
【0078】
いくつかの実施形態において、増幅反応は、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を含む。したがって、標的核酸の等温増幅は、対向するオリゴヌクレオチドプライマーのテンプレート核酸への結合およびポリメラーゼによるプライマーの伸長によって達成される(例えば、Piepenburg et al.,(2006)PloS Biol.,4(7);e204を参照)。場合によっては、等温増幅反応は、リコンビナーゼ(例えば、細菌からのRecAまたはバクテリオファージT4からのUvsX)、1つ以上の補因子(例えば、ATPまたはUvsY)、および/または1つ以上の一本鎖結合タンパク質(SSB)を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、等温増幅アッセイは、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)を含む。HDAは、DNAヘリカーゼ酵素を使用してプライマーハイブリダイゼーションおよび後続のDNAポリメラーゼによるプライマー伸長のための一本鎖テンプレートを生成するインビボシステムを模倣している。HDA反応の第1のステップでは、ヘリカーゼ酵素が標的核酸に沿って移動し、プライマーが標的領域にアニーリングできるようにする一本鎖標的領域を作成する。次に、DNAポリメラーゼは、遊離デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)を使用して、各プライマーの3’末端を伸長し、2つのDNA複製を生成する。複製された2本のDNA鎖は、独立してHDAの次のサイクルに入り、標的核酸の指数関数的な核酸増幅をもたらす。
【0080】
いくつかの実施形態において、等温増幅アッセイは、ローリングサークル増幅(RCA)を含む。通常、RCAでは、ポリメラーゼが円形テンプレートの周囲にプライマーを連続的に伸長させ、円形テンプレートの多数の繰り返しコピーを含む長い増幅生成物を生成する。反応終了までに、ポリメラーゼは円形テンプレートの何千ものコピーを生成し、コピーの鎖は元の標的核酸につながれている。RCAは、標的核酸の空間分解能および迅速な核酸増幅を可能にする。分岐増幅はRCAのバリエーションであり、閉じた円形プローブ(Cプローブ)または南京錠プローブおよび高い処理能力を持つポリメラーゼを利用して、等温条件下でCプローブを指数関数的に増幅する。
【0081】
いくつかの実施形態において、等温増幅アッセイは、ループ介在等温増幅(LAMP)を含む。LAMPは選択性を提供し、ポリメラーゼと、標的核酸中の異なる配列を認識する特別に設計されたプライマーのセットとを採用している(例えば、Nixon et al.,(2014)Bimolecular Detection and Quantitation,2:4-10;Schuler et al.,(2016)Anal Methods.,8:2750-2755;およびSchoepp et al.,(2017)Sci.Transl.Med.,9:eaal3693を参照)。PCRとは異なり、標的核酸は、複数のインナーおよびアウタープライマーならびに鎖置換活性を持つポリメラーゼを使用して、一定温度(例えば、60~65℃)で増幅される。場合によっては、標的核酸のセンス鎖およびアンチセンス鎖の一部に相補的な核酸配列を含むインナープライマー対が、LAMPを開始する。インナープライマーによる鎖置換合成に続いて、アウタープライマー対によってプライミングされた鎖置換合成は、一本鎖アンプリコンの放出を引き起こす可能性がある。一本鎖アンプリコンは、標的核酸の他方の末端にハイブリダイズし、ステムループ核酸構造を生成する第2のインナーおよび第2のアウタープライマーによってプライミングされたさらなる合成のためのテンプレートとして役立ち得る。後続のLAMPサイクリングでは、1つのインナープライマーが生成物上のループにハイブリダイズし、置換および標的核酸合成を開始して、元のステムループ生成物と、2倍の長さのステムを有する新しいステムループ生成物とを生成する。さらに、アンプリコンループ構造の3’末端は、自己テンプレート鎖合成の開始部位として機能し、追加のループ構造を形成するヘアピン様アンプリコンを生成して、自己テンプレート増幅の後続のラウンドをプライミングする。増幅は、標的核酸の多くのコピーの蓄積と共に継続する。LAMPプロセスの最終生成物は、同じ鎖内の標的核酸配列の交互に反転した反復間のアニーリングによって形成された複数のループを備えたカリフラワー様構造の標的核酸の連結反復を伴うステムループ核酸である。
【0082】
いくつかの実施形態において、等温増幅アッセイは、標的核酸を定量するためのデジタル逆転写ループ介在等温増幅(dRT-LAMP)反応を含む(例えば、Khorosheva et al.,(2016)Nucleic Acid Research,44:2 e10を参照)。通常、LAMPアッセイは、増幅反応中に検出可能なシグナル(蛍光など)を生成する。いくつかの実施形態において、蛍光を検出および定量することができる。蛍光を検出および定量するための任意の好適な方法を使用することができる。場合によっては、Applied BiosystemのQuantStudioなどのデバイスを使用して、等温増幅アッセイからの蛍光を検出および定量できる。
【0083】
F.検出
定量的リアルタイム等温増幅によって試験サンプル中の標的核酸の増幅を検出するための任意の好適な方法を使用して、本発明を実施してもよい。いくつかの実施形態において、試験サンプル中の標的核酸の定量的リアルタイム等温増幅は、標的核酸の等温増幅中に組み込まれたヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に結合した1つ以上の異なる(別個の)蛍光標識を検出することによって決定され得る(5-FAM(522nm)、ROX(608nm)、FITC(518nm)およびナイルレッド(628nm)など)。別の実施形態において、試験サンプル中の標的核酸の定量的リアルタイム等温増幅は、標的核酸の等温増幅中に組み込まれたヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に結合した単一のフルオロフォア種(例えば、ROX(608nm))の検出によって決定することができる。いくつかの実施形態において、使用される各フルオロフォア種は、その他のフルオロフォア種とは異なる蛍光シグナルを放出し、その結果、各フルオロフォアは、アッセイに存在する他のフルオロフォア種の中で容易に検出され得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、定量的リアルタイム等温増幅によって試験サンプル中の標的核酸の増幅を検出する方法は、SYTO色素(SYTO9またはSYTO82)などのインターカレート蛍光色素を使用することを含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、定量的リアルタイム等温増幅によって試験サンプル中の標的核酸の増幅を検出する方法は、非標識プライマーを使用して試験サンプル中の標的核酸を等温増幅することと、標識プローブ(例えば、フルオロフォアを有する)を使用して試験サンプル中の標的核酸の等温増幅を検出することと、を含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、定量的リアルタイム等温増幅によって試験サンプル中の標的核酸の増幅を検出する方法は、非標識プライマーを使用して試験サンプル中に存在する標的核酸を等温増幅することと、5’末端で5-FAM色素ラベルを有するプローブを使用し、かつ、3’末端でマイナーグルーブバインダー(MGB)および非蛍光クエンチャーを使用して、標的核酸の等温増幅を検出することを含み得る(ThermoFisherScientific製TaqMan Gene Expression Assaysなど)。
【0087】
いくつかの実施形態において、試験サンプル中の標的核酸の増幅の検出は、一段階または二段階の定量的リアルタイム等温増幅アッセイを使用して実行することができる。一段階の定量的リアルタイム等温増幅アッセイでは、逆転写を定量的等温増幅と組み合わせて、単一の定量的リアルタイム等温増幅アッセイを形成する。一段階アッセイにより、ハンズオン操作の数と、試験サンプルを処理するための合計時間が削減される。場合によっては、例えば、逆転写反応からのcDNAの一部が他の反応に必要であるか、または保持される場合、定量的リアルタイム等温増幅アッセイは、二段階アッセイを含み得る。二段階アッセイは、逆転写が実行される第1の段階と、次いで定量的等温増幅が実行される第二段階と、を含む。一段階アッセイまたは二段階アッセイのいずれを実行すべきか決定することは、当業者の範囲内である。
【0088】
G.標準曲線の生成
等温増幅アッセイは、異なる効率で異なる核酸を増幅し得るため、リアルタイム等温増幅アッセイで測定された閾値までの時間値を、標的核酸および参照核酸の絶対コピー数に合わせて較正する必要があり得る。これは、標的核酸および参照核酸の等温増幅の標準曲線を確立することによって達成することができる。標準曲線は、複数の既知の入力濃度で定量されたキャリブレータサンプルを使用してリアルタイム等温増幅アッセイを実行することによって得ることができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、標準曲線を生成するために、定量されたキャリブレータサンプルは、定量された材料の段階希釈を実行することによって得られる。一例として、およそ1×109コピー/標的核酸のμLの濃度を有するテンプレートが調製される。異なる入力濃度のキャリブレータサンプルを得るために、10倍濃度間隔でテンプレートを緩衝液中で希釈して、およそ109コピー/μL~およそ102コピー/μLの濃度範囲をカバーするテンプレートを得る。例えば、8つのキャリブレータサンプルが、それぞれ約1×109、1×108、1×107、1×106、1×105、1×104、1×103および1×102コピー/μlの濃度で得られる。各キャリブレータサンプルの正確な濃度は、当該技術分野で知られている方法を使用して決定することができる。
【0090】
標準曲線を得るために、リアルタイム等温増幅アッセイが、それぞれの濃度の標的核酸を含む既知の量(例えば、1μL)のそれぞれのキャリブレータサンプルを含む各アリコートに対して実行される。例えば、各アリコートは、1μLのそれぞれのキャリブレータサンプルを含み得る。例えば、109コピー/μL~102コピー/μLの濃度範囲をカバーする8つのキャリブレータサンプルがある上述の例では、8つのキャリブレータサンプルの8つのアリコートは、それぞれ以下のコピー数の標的核酸を含有する:コピー数1=1×109、コピー数2=1×108、コピー数3=1×107、コピー数4=1×106、コピー数5=1×105、コピー数6=1×104、コピー数7=1×103、コピー数8=1×102。
【0091】
それぞれのキャリブレータサンプルに対するリアルタイム等温増幅アッセイでは、標的核酸用の蛍光色素(dsDNA色素など)または蛍光標識をインターカレートすることによって放出される蛍光の強度が時間の関数として測定される。
図1は、いくつかの実施形態による、リアルタイム定量的等温増幅アッセイにおける、時間の関数としての蛍光強度の例示的なプロット110を示す。破線120は、所定の閾値強度を表す。等温増幅を開始した瞬間からの経過時間は、閾値までの時間Ttである。
図2は、いくつかの実施形態による、標的核酸の濃度が異なる8つのサンプルのリアルタイム定量的等温増幅アッセイにおける時間の関数としての蛍光強度の例示的なプロット210を示す。それぞれの閾値までの時間値は、時間の関数として各それぞれの蛍光曲線210から決定することができる。したがって、8つの閾値までの時間値Tt
1、Tt
2、Tt
3、Tt
4、Tt
5、Tt
6、Tt
7、Tt
8が、それぞれ8つのキャリブレータサンプルについて得られる。
【0092】
指数関数的増幅の場合、閾値までの時間は、開始コピー数(テンプレート存在比とも呼ばれる)の対数(例えば、10を底とする対数)に直線的に比例する。
図3は、いくつかの実施形態による、
図2に示される蛍光曲線から得られたデータポイント(丸で表される)の散布図を示す。各データポイントは、データペア[Log
10(コピー数),Tt]を表す(コピー数は、等温増幅アッセイにおける核酸の開始コピー数を指すことに留意されたい)。図示されるように、データポイントはほぼ直線310上にある。プロット内のデータポイントに対して線形回帰を実行して、総偏差が最小であるデータポイントに最適な直線310を得る。線形回帰の結果は、次の方程式で表される直線である。
Tt=m×Log
10(コピー数)+b (1)
式中、mは直線310の傾き、bはy切片である。傾きmは、標的核酸の等温増幅の効率を表し、bは、テンプレートのコピー数がゼロに近づくときの閾値までの時間を表す。方程式(1)で表される直線を標準曲線と呼ぶ。
【0093】
いくつかの実施形態において、より高いレベルのデータ信頼性を得るために、等温増幅アッセイの反復(例えば、三重反復)を各サンプルに対して実行することができる。反復した閾値までの時間値を平均し、標準偏差を計算することができる。
【0094】
所与の等温増幅アッセイに関する標準曲線が確立されると、その標準曲線を使用することによって、未知の開始コピー数の標的核酸の等温増幅アッセイを将来実行するために、以下の方程式を用いて閾値までの時間値を開始コピー数に変換することができる。
【数1】
【0095】
標準曲線のダイナミックレンジ
通常、すべての低いコピー数または非常に高いコピー数のデータポイントは、直線310から外れる可能性がある。データポイントを直線310で表すことができるコピー数の範囲は、標準曲線のダイナミックレンジと呼ばれる。閾値までの時間と標準曲線で表されるコピー数の対数との間の線形関係は、ダイナミックレンジ内でのみ有効である。
【0096】
標的核酸および参照核酸の増幅効率が所与の等温増幅アッセイで異なる場合、標的核酸および参照核酸について別々の標準曲線を得る必要があり得る。したがって、2セットのリアルタイム等温増幅アッセイ、つまり、標的核酸の標準曲線を確立するための1セットと、参照核酸の標準曲線を確立するためのもう1セットとを実行することができる。複数の標的核酸が考慮される場合、各標的核酸の標準曲線が得られ得る。
【0097】
オフボード標準曲線
いくつかの実施形態において、標準曲線は、試験サンプルを得る前に生成される。つまり、標準曲線は、試験サンプルの定量的等温増幅とオンボードでは生成されない。このような標準曲線は、オフボード標準曲線と呼ばれることがある。以下に説明するように、オフボード標準曲線を使用して、相対存在比値を推定することができる。
【0098】
H.相対存在比値の推定
標的核酸Aの未知の入力濃度の試験サンプルについて、第1のリアルタイム等温増幅アッセイを試験サンプルの第1のアリコートに対して実行して、標的核酸Aに関する第1の閾値までの時間値Tt
Aを得る。第2のリアルタイム等温増幅アッセイを試験サンプルの第2のアリコートに対して実行して、参照核酸に関する第2の閾値までの時間値Tt
Bを得る。第1のアリコートおよび第2のアリコートには、実質的に同量の試験サンプルが含有されている。第1の閾値までの時間値Tt
Aは、標的核酸Aの標準曲線を使用して、標的核酸Aの開始コピー数に変換することができる:
【数2】
第2の閾値までの時間値Tt
Bは、参照核酸Bの標準曲線を使用して、参照核酸Bの開始コピー数に変換することができる:
【数3】
標的核酸Aの開始コピー数を、参照核酸Bのコピー数に対して正規化することにより、次のような相対存在比が得られる:
【数4】
【0099】
例えば、標的核酸Aの開始コピー数が1000であり、参照核酸Bの開始コピー数が10である場合、相対存在比(A/B)は次のように計算することができる。
【数5】
【0100】
第1のアリコートと第2のアリコートに異なる量の試験サンプルが含有されている場合、相対存在比は次のように得られる。
【数6】
式中、M
1およびM
2は、それぞれ、第1のアリコートおよび第2のアリコートの質量(または体積)である。
【0101】
例えば、M
1=1、M
2=2の場合、標的核酸の開始コピー数であるコピー数
Aは1000であり、参照核酸の開始コピー数であるコピー数
Bは10であり、相対存在比(A/B)は、次のように計算できる:
【数7】
【0102】
いくつかの他の実施形態において、1つの等温増幅アッセイは、標的核酸Aおよび参照核酸Bの両方に対して実行され得る。等温増幅アッセイは、試験サンプルの同じアリコートに対して実行されるので、方程式(5)を使用して、相対存在比を得ることができる。
【0103】
標準曲線を使用しない相対存在比
標的核酸および参照核酸の増幅効率が既知の値とほぼ同じであり、標的核酸の予想コピー数および参照核酸の予想コピー数がダイナミックレンジ内にある場合、相対存在比は、標準曲線を使用せずに、閾値までの時間値から直接得ることができる。例えば、標的核酸および参照核酸の両方の増幅効率がmであり、同様の効率の結果として両方のアッセイでbが同一であると仮定すると、相対存在比は次のように計算できる:
【数8】
【0104】
上述のように、標的核酸および参照核酸の増幅効率が既知の値とほぼ同じである場合、試験サンプル中の標的核酸の相対存在比を決定することは、標的核酸の開始コピー数に基づいておらず、サンプル中の標的核酸の絶対定量を必要としない。
【0105】
I.複数の標的核酸
いくつかの実施形態において、1つの標的核酸の相対存在比値は、試験サンプル中のさらなる標的核酸の1つ以上のさらなる相対存在比値と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態において、試験サンプル中の複数の標的核酸の複数の相対存在比を、単一の診断スコアを出力できるアルゴリズムへの入力として使用することができ、診断スコアとしては、試験サンプルにおいてウイルス感染症と細菌感染症を区別するおよび/または試験サンプルが細菌感染症および/またはウイルス感染症を有していると診断することができるものなどがある(例えば、Sweeney et al.,(2016),Sci.Transl.Med.,8:346ras91346ra91を参照)。
【0106】
いくつかの実施形態において、評価のために選択される標的核酸は、CTSB、TNIP1、GPAA1およびHK3などの、細菌感染症の結果として宿主発現が増加することが知られている標的核酸から選択される。いくつかの実施形態において、評価のために選択される標的核酸は、IFI27、JUP、およびLAX1などの、ウイルス感染症の結果として宿主発現が増加することが知られている標的核酸から選択される。
【0107】
いくつかの実施形態において、遺伝子を、機械学習または他のアルゴリズムを使用して組み合わせて、細菌感染症とウイルス感染症を区別できるものなど、単一の診断スコアを生成する。このようなスコアは、細菌感染症の患者においては高く、ウイルス感染症の患者においては低くなる場合があるため、診断スコアが設定された閾値を超える患者を診察する医師は、抗生物質による治療行為を行うこととなる。これらの実施形態において、アルゴリズムスコアは、任意の個々の遺伝子レベルのみよりも高い診断力を有する(例えば、細菌感染症をウイルス感染症から区別するための受信者操作特性曲線の下により大きな領域を有する)。
【0108】
いくつかの実施形態において、複数のバイオマーカーを単一の診断スコアに統合するためのアルゴリズムのタイプとしては、幾何平均の差、算術平均の差、合計の差、単純な合計などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、診断スコアは、回帰モデル、ツリーベースの機械学習モデル、サポートベクターマシン(SVM)モデル、人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルなどの機械学習モデルを使用して、複数のバイオマーカーの相対存在比値に基づいて評価することができる。
【0109】
J.オフボード標準曲線を使用してリアルタイム定量的等温増幅を実行することにより診断スコアを推定する方法
絶対定量では通常、適切な較正と十分な精度を確保するために、試験サンプルと同じアッセイで標準曲線を作成する必要がある。このようにして得られた標準曲線は、オンボードスタンド曲線と呼ばれる。いくつかの実施形態によれば、複数のバイオマーカーのリアルタイム定量的等温増幅を使用して診断スコアを推定する方法は、相対定量のみを必要とし、したがって、オフボード標準曲線を使用することができる。これにより、正確な診断を確実かつ経済的に行うことができる、新たなクラスの超高速診断リアルタイム定量的等温増幅アッセイが可能になり得る。
【0110】
図4は、いくつかの実施形態による、試験サンプルに対してリアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定する方法を示す簡略化されたフローチャートを示す。
【0111】
402では、第1の標準曲線、第2の標準曲線および参照標準曲線が得られる。第1の標準曲線は、第1の標的核酸の開始コピー数を閾値までの時間に関連付ける第1の関数を含む。第2の標準曲線は、第2の標的核酸の開始コピー数を閾値までの時間に関連付ける第2の関数を含む。参照標準曲線は、参照核酸の開始コピー数を閾値までの時間に関連付ける参照関数を含む。第1の標準曲線、第2の標準曲線および参照標準曲線は、試験サンプルに対してリアルタイム定量的等温増幅を実行する前に生成される。
【0112】
404では、試験サンプルを哺乳類対象から得る。試験サンプルは、第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸を含有する。
【0113】
406では、試験サンプルを少なくとも1つの反応容器に添加する。少なくとも1つの反応容器には、第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスが収容されている。
【0114】
408では、少なくとも1つの反応容器内で等温増幅の少なくとも1つの反応を開始する。
【0115】
410では、少なくとも1つの反応における第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値を決定する。
【0116】
412では、少なくとも1つの反応における第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値を決定する。
【0117】
414では、少なくとも1つの反応における参照核酸の参照閾値までの時間を決定する。
【0118】
416では、第1の標準曲線の第1の関数を使用して、第1の閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の第1の標的核酸の第1の開始コピー数を推定する。
【0119】
418では、第2の標準曲線の第2の関数を使用して、第2の閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の第2の標的核酸の第2の開始コピー数を推定する。
【0120】
420では、参照標準曲線によって提供される参照関数を使用して、参照閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の参照核酸の参照開始コピー数を推定する。
【0121】
422では、第1の標的核酸の第1の開始コピー数および参照核酸の参照開始コピー数に基づいて、参照核酸に対する、試験サンプル中の第1の標的核酸の第1の相対存在比値を推定する。
【0122】
424では、第2の標的核酸の第2の開始コピー数および参照核酸の参照開始コピー数に基づいて、参照核酸に対する、試験サンプル中の第2の標的核酸の第2の相対存在比値を推定する。
【0123】
426では、第1の標的核酸の第1の相対存在比値および第2の標的核酸の第2の相対存在比値に基づいて試験サンプルの診断スコアを推定する。
【0124】
428では、試験サンプルの診断スコアを所定の閾値診断スコアと比較することにより、病状の臨床診断を行う。
【0125】
いくつかの実施形態において、等温増幅は、ループ介在等温増幅(LAMP)である。
【0126】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの反応容器内での等温増幅の少なくとも1つの反応は、ホットスタート機構を使用して開始される。
【0127】
いくつかの実施形態において、診断スコアは、第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値と、第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値との間の差に関連する。
【0128】
図4に図示される特定のステップは、本発明のいくつかの実施形態による、リアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定する特定の方法を提供することを理解されたい。別の実施形態によれば、他の一連のステップも実行され得る。例えば、本発明の代替実施形態は、上記で概説したステップを異なる順序で実行してもよい。さらに、
図4に示される個々のステップは、個々のステップに適切な様々なシーケンスで実行され得る複数のサブステップを含み得る。さらに、特定の用途に応じて、追加のステップを追加または削除できる。当業者は、多くの変形、修正および代替を認識する。
【0129】
K.標準曲線を使用せずにリアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定する方法
いくつかの実施形態によれば、診断スコアを推定する方法は、標準曲線を使用せずにリアルタイム定量的等温増幅を利用することができる。例えば、診断スコアは、以前に同定された複数のバイオマーカーの発現レベルを統合し得る。同定されたバイオマーカーの等温増幅アッセイが線形ダイナミックレンジ内で実行されると予想されることが標的試験集団全体で事前に検証されている場合、閾値までの時間値は標準曲線を使用してコピー数に変換されることなく、診断スコアを推定するためのアルゴリズムに直接プラグインすることができる。いくつかの実施形態において、臨床的に関連する閾値診断スコアは、集団研究によって確立され得る。集団研究では、目的の患者の臨床コホート全体にわたってリアルタイム定量的等温増幅アッセイが実行される。リアルタイム定量的等温増幅アッセイから得られた閾値までの時間値は、閾値診断スコアを確立するための統計モデルを訓練するために使用される。閾値診断スコアが確立されると、それを使用して患者を診断することができる。
【0130】
図5は、他のいくつかの実施形態による、標準曲線を使用せずに試験サンプルのリアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定する方法を示す簡略化されたフローチャートを示す。
【0131】
502では、試験サンプルを哺乳類対象から得る。試験サンプルは、少なくとも1つの第1の標的核酸と、少なくとも1つの第2の標的核酸と、参照核酸とを含有する。第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の各々は、目的のコホート集団にわたって検証されるように、リアルタイム定量的等温増幅のダイナミックレンジ内にある試験サンプル中の予想濃度を有する。
【0132】
504では、試験サンプルのアリコートを、記第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスを収容する少なくとも1つの反応容器に添加する。
【0133】
506では、少なくとも1つの反応容器内で等温増幅の少なくとも1つの反応を開始する。
【0134】
508では、少なくとも1つの反応における第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値を決定する。
【0135】
510では、少なくとも1つの反応における第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値を決定する。
【0136】
512では、少なくとも1つの反応における参照核酸の参照閾値までの時間値を決定する。
【0137】
514では、少なくとも第1の閾値までの時間値および参照閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の参照核酸に対する、第1の標的核酸の第1の相対存在比値を推定する。
【0138】
516では、少なくとも第2の閾値までの時間値および参照閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の参照核酸に対する、第2の標的核酸の第2の相対存在比値を推定する。
【0139】
518では、第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値および第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値に基づいて、試験サンプルの診断スコアを推定する。
【0140】
いくつかの実施形態において、方法500は、試験サンプルを得る前に、目的のコホート集団全体にわたってリアルタイム定量的等温増幅を実行して、臨床的に関連する閾値診断スコアを確立することと、試験サンプルの診断スコアを推定した後、試験サンプルの診断スコアを閾値診断スコアと比較することによって、病状の臨床診断を行うことと、をさらに含む。
【0141】
いくつかの実施形態において、等温増幅は、ループ介在等温増幅(LAMP)である。
【0142】
いくつかの実施形態において、診断スコアは、第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値と、第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値との間の差に関連する。
【0143】
いくつかの実施形態において、試験サンプルは、複数の第1の標的核酸および複数の第2の標的核酸を含有する。診断スコアは、複数の第1の標的核酸の閾値までの時間値に基づく第1の統計値と、複数の第2の標的核酸の閾値までの時間値に基づく第2の統計値との間の差に関連する。
【0144】
図5に図示される特定のステップは、本発明のいくつかの実施形態による、リアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定するための特定の方法を提供することを理解されたい。別の実施形態によれば、他の一連のステップも実行され得る。例えば、本発明の代替実施形態は、上記で概説したステップを異なる順序で実行してもよい。さらに、
図5に示される個々のステップは、個々のステップに適切な様々なシーケンスで実行され得る複数のサブステップを含み得る。さらに、特定の用途に応じて、追加のステップを追加または削除できる。当業者は、多くの変形、修正および代替を認識する。
【0145】
L.マルチボリュームリアルタイム定量的等温増幅アッセイを使用して診断スコアを推定する方法
いくつかの実施形態によれば、複数のバイオマーカーを使用して診断スコアを推定する方法は、上述のようなマルチボリュームリアルタイム定量的等温増幅アプローチを利用することができる。例えば、7つの同定された標的遺伝子IFI27、JUP、LAX1、HK3、TNIP1、GPAA1、CTSBを含むHostDx-Fever qLAMPアッセイにおいて、7つの標的遺伝子のいくつかは、試験サンプル内の他のいくつかの標的遺伝子よりも多く存在すると予想される。体積が大きい反応容器内により多く存在すると予想される遺伝子、および体積が小さい反応容器内により少なく存在すると予想される遺伝子について、リアルタイム定量的等温増幅アッセイを実行することが有利である可能性がある。このように、限られた量の試験サンプルが与えられると、定量的等温増幅アッセイは、予想存在比が高い遺伝子と予想存在比が低い遺伝子の両方に対して首尾よく実行することができる。
【0146】
いくつかの実施形態において、様々な遺伝子について予想される相対存在比は、ウェルに割り当てる前の集団試験によって確立され得る。集団試験では、統計的有意性を確立するのに十分な大きさの臨床的に代表的な集団における様々な遺伝子について、リアルタイム定量的等温増幅アッセイが実行される。例えば、集団試験では、スチューデントのt検定、ウェルチのt検定、マンホイットニーのU検定、または分散分析(ANOVA)、F検定などを使用することができる。統計的有意性は、例えば、p<0.05に設定することができる。
【0147】
図6は、いくつかの実施形態による、試験サンプルに対してリアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定する方法を示す簡略化されたフローチャートを示す。
【0148】
602では、試験サンプルを得る。試験サンプルは、少なくとも1つの第1の標的核酸と、少なくとも1つの第2の標的核酸と、参照核酸とを含有する。第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の各々は、哺乳類宿主核酸を含む。
【0149】
604では、第1の標的核酸の定量的等温増幅のための第1の反応容器に試験サンプルの第1のアリコートを添加し、第2の標的核酸の定量的等温増幅のための第2の反応容器に試験サンプルの第2のアリコートを添加する。第1の反応容器および第2の反応容器の各々は、第1の標的核酸、第2の標的核酸および参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスを収容する。第2の標的核酸は、試験サンプルにおいて第1の標的核酸よりも予想存在比が低い。第1のアリコートは、第1の体積を有する。第2のアリコートは、第1の体積よりも大きい第2の体積を有する。
【0150】
606では、第1の反応容器内で第1の反応を開始し、第1の反応における第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値を決定し、第1の反応における参照核酸の第1の参照閾値までの時間値を決定し、かつ、少なくとも第1の閾値までの時間値および第1の参照閾値までの時間値に基づいて、参照核酸に対する、試験サンプル中の第1の標的核酸の第1の相対存在比値を推定することにより、第1の反応容器内で第1のリアルタイム定量的等温増幅アッセイを実行する。
【0151】
608では、第2の反応容器内で第2の反応を開始し、第2の反応における第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値を決定し、第2の反応における参照核酸の第2の参照閾値までの時間値を決定し、かつ、少なくとも第2の閾値までの時間値および第2の参照閾値までの時間値に基づいて、参照核酸に対する、試験サンプル中の第2の標的核酸の第2の相対存在比値を推定することにより、第2の反応容器内で第2のリアルタイム定量的等温増幅アッセイを実行する。
【0152】
610では、第1の標的核酸の第1の相対存在比値および第2の標的核酸の第2の相対存在比値に基づいて、試験サンプルの診断スコアを推定する。
【0153】
いくつかの実施形態において、方法600は、試験サンプルの第1のアリコートを第1の反応容器に添加し、試験サンプルの第2のアリコートを第2の反応容器に添加する前に、臨床的に代表的な集団における第1の標的核酸および第2の標的核酸について試験リアルタイム定量的等温増幅アッセイを実行することによって、第2の標的核酸が第1標的核酸よりも低い予想存在比を有することを確立することをさらに含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、診断スコアは、第1の相対存在比値と第2の相対存在比値との間の差に関連する。
【0155】
いくつかの実施形態において、試験サンプルは複数の第1の標的核酸および複数の第2の標的核酸を含有し、診断スコアは、複数の第1の標的核酸の相対存在比値に基づく第1の統計値と、複数の第2の標的核酸の相対存在比値に基づく第2の統計値との間の差に関連する。いくつかの実施形態において、第1の統計値は、複数の第1の標的核酸の相対存在比値の幾何平均を含み、第2の統計値は、複数の第2の標的核酸の相対存在比値の幾何平均を含む。いくつかの実施形態において、診断スコアは、患者が細菌感染症またはウイルス感染症を有するか否かを診断するために使用される。いくつかの実施形態において、複数の第1の標的核酸はウイルス感染症により多い遺伝子を含み、複数の第2の標的核酸は細菌感染症により多い遺伝子を含む。例えば、複数の第1の標的核酸はIFI27、JUPおよびLAX1を含み得、複数の第2の標的核酸はHK3、TNIP1、GPAA1およびCTSBを含み得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、試験サンプルは、複数の第1の標的核酸および複数の第2の標的核酸を含有する。診断スコアは、回帰モデル、ツリーベースの機械学習モデル、サポートベクターマシンモデルまたは人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルを使用して、複数の第1の標的核酸の相対存在比値および複数の第2の標的核酸の相対存在比値に基づいて推定される。
【0157】
いくつかの実施形態において、第1のリアルタイム定量的等温増幅アッセイおよび第2のリアルタイム定量的等温増幅アッセイの各々は、リアルタイム定量的ループ介在等温増幅(LAMP)アッセイである。
【0158】
いくつかの実施形態において、第1の反応容器における第1の反応および第2の反応容器における第2の反応の各々は、ホットスタート機構を使用して開始される。
【0159】
図6に図示される特定のステップは、本発明のいくつかの実施形態による、リアルタイム定量的等温増幅を実行することによって診断スコアを推定するための特定の方法を提供することを理解されたい。別の実施形態によれば、他の一連のステップも実行され得る。例えば、本発明の代替実施形態は、上記で概説したステップを異なる順序で実行してもよい。さらに、
図6に示される個々のステップは、個々のステップに適切な様々なシーケンスで実行され得る複数のサブステップを含み得る。さらに、特定の用途に応じて、追加のステップを追加または削除できる。当業者は、多くの変形、修正および代替を認識する。
【0160】
M.プラットフォーム/デバイス
いくつかの態様において、本開示は、試験サンプル中の標的核酸の相対存在比を得るためのプラットフォームまたはデバイスを提供する。方法を実施するための任意の好適なデバイスまたはプラットフォームを使用することができる。いくつかの実施形態において、デバイスは、試験サンプル中の宿主哺乳類核酸を比較定量するのに有用であり、宿主哺乳類核酸は、細菌感染症またはウイルス感染症などの急性感染症を有している宿主を反映している。いくつかの実施形態において、急性感染症は敗血症を誘発している。
【0161】
いくつかの実施形態において、デバイスは、マイクロ流体デバイスである。いくつかの実施形態において、マイクロ流体デバイスは、同じ反応容器内での標的核酸および参照核酸の増幅を可能にする。別の実施形態において、マイクロ流体デバイスは、別個の反応容器(別個のウェルなど)における標的核酸および参照核酸の増幅を可能にする。
【0162】
サンプルを一定の温度まで加熱し、蛍光、濁度、発光、吸光度(色)または磁気/電磁電流を監視できる任意のデバイスを等温増幅に使用できる。いくつかの実施形態において、デバイスは、ThermoFisher ScientificのTaqMan遺伝子発現アッセイである。
【0163】
いくつかの実施形態において、方法を実施するためのデバイスとしては、(等温条件下で)Applied BiosystemのQuantStudioリアルタイムPCRシステムなどであるがこれに限定されない蛍光標識検出システムが挙げられる。
【0164】
当業者に明らかであるように、本発明を実施するために使用されるプラットフォームまたはデバイスは、任意の有用な寸法(長さ、幅および深さなど)を含むことができる。いくつかの実施形態において、デバイスは、標的核酸および参照核酸を含有する1つ以上の反応容器を利用するベンチトップサイズのデバイスである。いくつかの実施形態において、反応容器は、96ウェルプレートなどの単一ユニットに収納されている。いくつかの実施形態において、反応容器(または複数のハウジングユニット)は、デバイス内で順次または同時に保管、試験および/または分析することができる。
【0165】
図7は、いくつかの実施形態による、リアルタイム定量的等温増幅アッセイを使用して相対存在比値を推定するための装置700の概略ブロック図を示す。
【0166】
装置700は、1つ以上の反応容器710を含む。各反応容器710は、少なくとも1つの標的核酸および参照核酸を含有する試験サンプルのアリコートを保持するように構成される。各反応容器710は、さらに、少なくとも1つの標的核酸および参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスを保持するように構成される。マスターミックスには、少なくとも1つの標的核酸および参照核酸を検出するための蛍光標識も含まれている。
【0167】
いくつかの実施形態において、1つ以上の反応容器710は、少なくとも第1の反応容器および第2の反応容器を含む。第1の反応容器は、試験サンプルの第1のアリコートおよび第1の標的核酸の等温増幅のためのマスターミックスの第1の部分を保持するように構成されてもよい。第2の反応容器は、試験サンプルの第2のアリコートおよび第2の標的核酸の等温増幅のためのマスターミックスの第2の部分を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の反応容器710は、試験サンプルの第3のアリコートおよび参照核酸の等温増幅のためのマスターミックスの第3の部分を保持するように構成された第3の反応容器を含む。
【0168】
装置700は、1つ以上の反応容器710内で等温増幅反応を開始するための等温増幅手段720をさらに含む。例えば、等温増幅手段720は、反応容器710およびその内容物を、少なくとも1つの標的核酸および参照核酸の等温増幅を開始するのに必要な温度まで加熱するための加熱要素および温度制御を含み得る。等温増幅反応は、少なくとも1つの標的核酸に関連する蛍光および参照核酸に関連する蛍光を生成し得る。
【0169】
装置700は、1つ以上の反応容器710に光学的に連結された1つ以上の蛍光検出器730をさらに含む。各蛍光検出器730は、等温増幅反応中に、それぞれの標的核酸に関連する蛍光または参照核酸に関連する蛍光をリアルタイムで検出するように構成される。したがって、それぞれの標的核酸に関連する蛍光の強度を時間の関数として測定することができ、参照核酸に関連する蛍光の強度を時間の関数として測定することができる。いくつかの実施形態において、各蛍光検出器は、等温増幅反応中に一定間隔でそれぞれの標的核酸に関連する蛍光を検出するように構成される。例えば、等温増幅反応中に、一定間隔の蛍光検出が、毎分1回、30秒に1回、20秒に1回、10秒に1回、5秒に1回、または毎秒1回行われ得る。
【0170】
装置700は、コンピュータメモリ740をさらに含む。いくつかの実施形態において、コンピュータメモリは、1つ以上の標準曲線を記憶するように構成される。例えば、第1の標準曲線は、第1の標的核酸の開始コピー数を閾値までの時間に関連付ける第1の関数を提供し得る。第2の標準曲線は、第2の標的核酸の開始コピー数を閾値までの時間に関連付ける第2の関数を提供し得る。第3の標準曲線は、参照核酸の開始コピー数を閾値までの時間に関連付ける第3の関数を提供し得る。第1の標準曲線、第2の標準曲線および第3の標準曲線は、キャリブレータサンプルの以前の等温増幅反応から得ることができ、試験サンプルのその後の等温増幅反応において使用するためにメモリ740に記憶される。いくつかの実施形態において、コンピュータメモリ740は、1つ以上の閾値蛍光強度値を記憶するように構成される。
【0171】
装置700は、蛍光検出器730およびメモリ740に連結されたコンピュータプロセッサ750をさらに含む。メモリ740はさらに、コンピュータプロセッサ750によって実行される命令を記憶することができる。
【0172】
いくつかの実施形態において、プロセッサ750は、関数時間としての第1の標的核酸に関連する蛍光の強度および記憶された第1の閾値蛍光強度値に基づいて、第1の標的核酸の第1の閾値までの時間値を決定し、かつ、第1の標準曲線によって提供される第1の関数を使用して、第1の閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の第1の標的核酸の開始コピー数を推定するように構成される。プロセッサ750はさらに、関数時間としての第2の標的核酸に関連する蛍光の強度および記憶された第2の閾値蛍光強度値に基づいて、第2の標的核酸の第2の閾値までの時間値を決定し、かつ、第2の標準曲線によって提供される第1の関数を使用して、第2の閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の第2の標的核酸の開始コピー数を推定するように構成される。プロセッサ750はさらに、関数時間としての参照核酸に関連する蛍光の強度および記憶された第3の閾値蛍光強度値に基づいて、参照核酸の第3の閾値までの時間値を決定し、かつ、第3の標準曲線によって提供される第3の関数を使用して、第3の閾値までの時間値に基づいて、試験サンプル中の参照核酸の開始コピー数を推定するように構成される。プロセッサ750はさらに、第1の標的核酸の開始コピー数および参照核酸の開始コピー数に基づいて、参照核酸に対する試験サンプル中の第1の標的核酸の相対存在比値を推定し、かつ、第2の標的核酸の開始コピー数および参照核酸の開始コピー数に基づいて、参照核酸に対する試験サンプル中の第2の標的核酸の相対存在比値を推定するように構成される。プロセッサ750は、第1の標的核酸の第1の相対存在比値および第2の標的核酸の第2の相対存在比値に基づいて、試験サンプルの診断スコアを推定するように構成され得る。
【0173】
N.キット
いくつかの態様において、本開示は、試験サンプル中の標的核酸の相対存在比値を計算するためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、少なくとも1つの反応容器と、リアルタイム定量的等温増幅を実行するための1つ以上の構成要素(例えば、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素および/またはDNAポリメラーゼ)と、を含む。いくつかの実施形態において、キットは、2つ以上の反応容器(例えば、第1の反応容器および第2の反応容器)を含むことができる。いくつかの実施形態において、キットは、等温増幅のためのマスターミックスを含む。いくつかの実施形態において、キットは、リアルタイム定量的等温増幅のためのマスターミックスを含む。キットには、リアルタイム定量的等温増幅アッセイからの結果を解釈するための説明書が付属している場合がある。リアルタイム定量的等温増幅アッセイを行うための説明書(書面、CD-ROMなど)もキットに含まれている場合がある。
【実施例】
【0174】
以下の例は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するためではなく、例証するために提供されている。
【0175】
実施例1:等温増幅アッセイの構成
等温アッセイプライマーは、フォワードインナープライマー(FIP)およびフォワードアウタープライマー(F3)ならびに対応するバックワードインナープライマー(BIP)およびバックワードアウタープライマー(B3)を、フォワードおよびバックワードレート増強プライマー(FR、BR)と共に含む。アッセイは、WarmStart(ホットスタートとも呼ばれる)LAMP 2Xマスターミックス(NEB、CAT#E1700S)を使用して、製造元のプロトコルを20μLの総反応体積に調整し、任意の蛍光色素を最終濃度1xに添加して実行する。プライマーを、1.6μMのFIP/BIP、0.2μMのF3/B3、および0.4μMのFR/BRの最終濃度で添加する。アッセイの忠実度を向上させるために、アッセイには1mMのdUTP(ThermoFisher CAT#R0133)が追加されている。テンプレートを、経験に基づいて最適化した質量のサンプル材料を含有する標準の1μL体積に添加する。最後に、水を加えて、反応あたりの最終体積を20μLにする。96ウェルプレート(ThermoFisher CAT#4346906)にアッセイを分配して、リアルタイムPCR機器を使用した定量増幅を行う。
【0176】
定量的等温増幅を、QuantStudio 6 FlexリアルタイムPCRシステム(ThermoFisher)上で、FAM/SYBR Greenチャネルを使用して実行して、色素の蛍光を監視する。サイクリング条件には、25℃での5分間の保持ステップと、それに続く65℃での60分間の保持ステップが含まれ、その間、蛍光は20秒間隔で監視される。ウォームスタートポリメラーゼを含有するNEBキットを使用すると、溶液温度が45℃に達したときにのみ等温反応の開始が保証される。これにより、異なる実験(runs)で決定された同等の閾値までの時間(Tt)値が、それらの実験全体での反応開始からの等しい時間経過を表すことを保証することにより、プレート/実験全体でのアッセイの比較が可能になる。これにより、様々な効率のアッセイを相対的な標的定量と比較できるように、アッセイを以前に決定された標準曲線に合わせて較正することもできる。
【0177】
実施例2:標準曲線の取得および相対存在比の算出
等温増幅アッセイを較正するために、目的のmRNA配列に対応する二本鎖DNAテンプレートは、定量した対照サンプルとして使用される商業ベンダー(Integrated DNA Technologiesなど)によって合成される。凍結乾燥合成テンプレートを、およそ1×109コピー/μLの最終濃度になるようにTE緩衝液{20mMのトリス(pH8.0)、0.5mMのEDTA}に再懸濁させる。各テンプレートの正確な濃度は、Qubit蛍光光度計および関連するQubit dsDNA HSアッセイキット(ThermoFisher Scientific、CAT#Q32851など)を使用して、製造元のプロトコルに従って決定される。この値は、後続の回帰分析で使用される。標準曲線分析のためのサンプルを生成するために、各テンプレートを、10倍濃度間隔でTE緩衝液で希釈して、およそ約109コピー/μL~およそ102コピー/μLの範囲をカバーするサンプルを得た。対応する等温増幅アッセイのテンプレートとして1μLの入力を使用して、各サンプルに関する閾値までの時間(Tt)を3回決定する。
【0178】
実施例3:閾値強度の選択
閾値は、使用されている蛍光色素またはプローブ、および蛍光が検出されている機器の関数である。一般原則として、閾値は、増幅の線形フェーズで、バックグラウンドシグナルを大幅に上回り、かつ、複数の実験の反復全体にわたって結果として得られる閾値までの時間(Tt)の最小標準偏差を維持する点を特定することによって決定される。標準曲線を決定するとき、および目的のサンプル中の標的存在比を測定するときの両方で、所与の標的に同じ閾値を使用する必要がある。標的ごとに一意の標準曲線を決定する場合、異なる標的に同じ閾値を使用する必要はないが、標準曲線の較正を行わない相対比較では、すべての標的に同じ閾値を維持することが重要である。
【0179】
実施例4:等温増幅による標的核酸の相対的定量およびゴールドスタンダードmRNA定量アッセイとの比較
本明細書に記載される等温増幅アッセイを使用して患者の血液サンプルからの相対的mRNA定量の性能を評価するために、参照核酸(本明細書では「ハウスキーピング遺伝子YWHAB」と呼ばれる)に対する標的核酸(本明細書では「バイオマーカーIFI27」と呼ばれる)の相対存在比値を決定し、NanoString nCounter(NanoString Technologies Inc.、シアトル)で実施したゴールドスタンダードmRNA定量アッセイを使用して得られた測定値と比較した。NanoStringは非常に正確であり、複数の遺伝子の発現レベルを一度に測定するための有用なツールである。しかしながら、臨床応用には遅すぎる可能性もある(1アッセイあたり4~6時間)。
【0180】
サンプル選択およびRNA抽出
臨床現場で予想される標的核酸の存在比の範囲を概括するために、健康な対照群(a set of healthy controls)(6)に加えて、ウイルス感染症(6)または細菌性敗血症(8)を呈する患者からサンプルを選択した(表1を参照)。サンプルを、PAXgene Blood RNA Tubes(PreAnalytiX,GmbH)内に収集し、製造元のプロトコルに従って処理してから、-80℃で保存した。
【0181】
分析時に、サンプルを室温で2時間解凍した後、10回よりも多く反転させて、バキュテナーの内容物を均質化した。Qiacube(Qiagen、メリーランド)を使用して各サンプルのアリコートに対して最終的なRNA精製を実行し、Qubit蛍光光度計(ThermoFisher Scientific、ウォルサム)を使用して精製した全RNAを定量した(表1を参照)。
【0182】
結果-相対存在比の評価
参照核酸に対する標的核酸の相対存在比を評価するために、各標的核酸または参照核酸を、上述した一段階の逆転写-等温増幅アッセイを使用して、50ngの全RNAからシングルプレックス増幅した。
【0183】
閾値までの時間(Tt)値を、各サンプル中の各標的核酸および各参照核酸について決定し、次に、以前に決定された標準曲線を使用してLog2(テンプレートコピー数)に変換した。次に、2つの測定値の比率をとることにより、YWHABに対するIFI27の相対存在比を算出した(表1を参照)。
【0184】
同じRNAサンプルをNanoStringnCounterでも分析した。これにより、増幅することなくサンプル中に存在する宿主mRNA転写生成物を直接定量できる。NanoString nCounterを使用して得たIFI27およびYWHABの転写生成物の存在比値を対数変換し、これらの値の比率を決定して、上述の等温増幅アッセイを使用して得た測定値と比較した。
【0185】
ゴールドスタンダードに対する等温増幅アッセイの性能を定量するために、等温増幅アッセイを使用して決定した相対存在比値をNanoString nCounterを使用して決定した値の関数としてプロットし、すべてのサンプルにわたってこれら測定値間のピアソン相関係数を算出した(
図7を参照)。
【表1】
【0186】
図8は、等温増幅アッセイおよびゴールドスタンダードのNanoString nCounterによって決定された参照核酸(YWHAB)の存在比に対する標的核酸(IFI27)の存在比に関連するピアソン係数との相関プロットを示している。値は、両アッセイ共Log
2(折り畳み存在比)としてプロットし、診断に応じてコード化されている:丸はウイルス感染症を表し、四角は細菌性敗血症を表す。三角は健康な対照を表す。線は、解釈を容易にするために、標準的な線形回帰分析による曲線適合を表す。
【0187】
等温増幅アッセイは、ゴールドスタンダードアッセイ(r=0.97)との例外的な相関関係を実証し、相対存在比の測定値において優れた一致を示した。重要なことに、異なる診断(例えば、細菌性敗血症、ウイルス感染症、または健康なサンプル)を表すグループは、いずれのアッセイでもクラスター化され、等温増幅アッセイを使用しても臨床的有用性が維持されることを示している。
【0188】
実施例5:HostDx-Fever qLAMPアッセイおよびゴールドスタンダードmRNA定量アッセイとの比較
7つの遺伝子のセットは、ウイルス感染症または細菌感染症の分類に有用なバイオマーカーとして以前から同定されていた。7つの遺伝子には、ウイルス感染症により多いIFI27、JUP、LAX1、および細菌感染症により多いHK3、TNIP1、GPAA1、CTSBが含まれる。(米国特許出願公開第2019/0144943号を参照。)7つのバイオマーカーのレベルに基づく統合診断スコア(発熱スコアまたはHost-Dx-Feverスコアと呼ばれる)は、次の式に従って表されるように、幾何平均(DGM)の差を使用して推定することができる:
【数9】
【0189】
実験では、HostDx-Fever qLAMPアッセイは、分析検証コホート全体で7つの標的遺伝子の各々について検証された。全RNAを抽出し、QuantStudio6 qPCRマシンでLAMPアッセイを3回実行した。分析のゴールドスタンダードは、NanoString nCounterの絶対mRNA数であった。両方の技術に関して、HostDx-Feverスコアは、方程式(8)で表されるように、mRNAアッセイのDGMとして算出された:
【0190】
標準曲線を使用しない等温増幅を使用した相対定量
実験では、同じ細菌およびウイルスの臨床サンプルを2セットのアッセイで試験した。アッセイの各セットは、DGMアプローチを使用して組み合わせると、細菌感染症とウイルス感染症を分けることができる単一の診断スコアを作成する、以前に同定された7つのバイオマーカーを対象とした。アッセイの第1のセットでは、NanoString nCounterデジタルmRNAプラットフォームを使用した。ここでは、ハウスキーパーで正規化された数をDGM方程式(例えば、方程式(8))に入力する。
【0191】
アッセイの第2のセットは、同じmRNAを標的とする等温qLAMPアッセイのセットであった。各アッセイの閾値までの時間値Ttを、DGM方程式(例えば、方程式(8))に入力した。閾値までの時間値は、標準曲線を使用して絶対コピー数に変換されることなく、DGM方程式に直接入力されることに留意されたい。
【0192】
図9Aは、等温増幅アッセイおよびゴールドスタンダードのNanoString nCounterによって決定された診断スコアに関連付けられたピアソン係数との相関プロットを示す。黒丸はウイルス感染症を表し、灰色の丸は細菌感染症を表す。直線は、解釈を容易にするために、標準の線形回帰分析による曲線適合を表す。等温増幅アッセイは、ゴールドスタンダードアッセイとの例外的な相関関係を実証した(r=0.944)。これは、標準曲線を使用しなくてもqLAMP技術が、分析ゴールドスタンダードに対して関連する臨床サンプルにおいて非常に正確な診断結果をもたらすことができることを示している。
【0193】
図9Bは、qLAMPアッセイに基づくHostDx-Feverスコア分布を示す。
図9Cは、NanoStringnCounterに基づくHostDx-Feverスコア分布を示す。異なる診断(例えば、細菌感染症またはウイルス感染症)を表すグループは、いずれのタイプのアッセイでもクラスター化されていることに留意されたい。これは、いずれかの技術で実行されたHostDx-Feverが感染症クラスを正確に区別できること、およびHostDx-Feverバイオマーカーが基礎となる定量的技術に比較的鈍感であることを示している。しかしながら、技術的プラットフォームは、同様の相対定量を維持しながらも、異なる絶対数を生じさせる可能性があるため、最適な臨床カットオフは2つの技術で異なる場合がある。
【0194】
実施例6:マルチボリューム等温qLAMPアッセイ
所与のテンプレート濃度でより大きな体積を調べることが、線形ダイナミックレンジの下限でのqLAMPアッセイの成功率を改善し得るか否かを試験するために、実験を行った。仮説は次のとおりである。(i)qLAMPは、qPCRと同様に、反応容器内の標的遺伝子の任意であるが固定された閾値コピー数を蓄積するのに必要な時間を測定する。(ii)飽和結合条件下で、閾値数に達するのに必要な時間は、(a)反応が開始されたときに存在するコピーの数、および(b)単位時間あたりの増加率(反応効率または増幅効率と呼ばれる)に依存する。
【0195】
実験では、テンプレートの同じ濃度が2つの異なる体積(10μLおよび50μL)にわたって維持される。測定した閾値までの時間値Ttが事前定義されたカットオフ値を下回っている場合、等温増幅は成功したと見なされる。カットオフ値は、以下に例証するように、または他の手段によって、標準曲線滴定に対する線形回帰適合のy切片として定義することができる。
【0196】
図10は、カットオフ値が標準曲線滴定に対する線形回帰適合のy切片として定義される例を示している。丸1010は、様々な入力濃度について測定された閾値までの時間値である。直線1020は、線形回帰適合によって得られた標準曲線を表す。水平の破線1030は、y切片(例えば、方程式(1)または方程式(2)において表される標準曲線の「b」の値)を示す。したがって、いくつかの実施形態において、測定された閾値までの時間値Ttが水平の破線930より下にある場合、等温増幅は成功したと見なすことができる。
【0197】
実験では、96ウェルプレート上で、48ウェルの各々に10μLの試験サンプルの第1のアリコートがそれぞれ充填され、他の48ウェルの各々に50μLの試験サンプルの第2のアリコートがそれぞれ充填される。第1のアリコートと第2のアリコートのテンプレート濃度は同じである。
【0198】
図11は、qLAMPアッセイの実験結果を示る。黒丸は、20μLの反応体積で測定された閾値までの時間Ttを表し、灰色の丸は、50μLの反応体積で測定された閾値までの時間値Ttを表す。挿入図は、20~40タイムサイクル(各20秒)の閾値までの時間範囲を拡大したバージョンを示している。水平の破線は、前述のように、事前定義されたカットオフTt値を示す。図示されるように、反応体積が多いほど、閾値までの時間値が早くなり、成功率が高くなる。
【0199】
この実験は、所与の体積に分散された一定数のテンプレート分子について、固定数が線形ダイナミックレンジの下限に近い場合、体積の大部分を調べると、正確な(線形)測定値を生成する可能性が高くなることを実証している。したがって、存在比が低いバイオマーカーをアッセイするためにより大きなウェル体積を使用すると、線形ダイナミックレンジが改善され、アッセイで首尾よく実行できるサンプルの数が増える可能性がある。
【0200】
本明細書に記載される実施例および実施形態は、例示のみを目的としており、それに照らして様々な修正または変更が当業者に提案され、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれることが理解される。本明細書で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。