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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】パルスフロー反応装置とその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20240613BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20240613BHJP
   B01F 25/40 20220101ALI20240613BHJP
   B01F 23/00 20220101ALI20240613BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
B01J19/12 C
B01F25/40
B01F23/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021515283
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2019063522
(87)【国際公開番号】W WO2019224376
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】2018/5338
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】507249627
【氏名又は名称】アジノモト オムニケム
(73)【特許権者】
【識別番号】520457650
【氏名又は名称】エコシンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メッテン,バート,ディー,エフ,
(72)【発明者】
【氏名】トーイ,コーエン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン アケン,コーエン,ジャンヌ,アルフォンス
(72)【発明者】
【氏名】デブロウワー,ワウテル
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/072190(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/157052(WO,A1)
【文献】特表2013-542051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0161747(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0273430(US,A1)
【文献】国際公開第2014/044624(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00 - 12/02
B01J 14/00 - 19/32
G01N 35/00 - 37/00
B81B 1/00 - 7/04
B81C 1/00 - 99/00
B01F 25/40
B01F 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-長方形の断面と、長手方向(3)を有し、下壁(4)、上壁(5)、2つの側壁(6,7)、第1の端壁(8)、および前記長手方向に沿って前記第1の端壁(8)の反対側にある第2の端壁(9)によって区切られている単一の真っ直ぐな平面プロセスチャネル(2)であって、
少なくとも1つの供給ストリームを前記プロセスチャネルに導入するように構成された、前記第1の端壁における少なくとも1つの入口(10)と、前記プロセスチャネルから少なくとも1つの生成物ストリームを排出するように構成された、前記第2の端壁における少なくとも1つの出口(11)とを備えるプロセスチャネル(2)と、
-前記プロセスチャネル内で脈動流を生成するように構成されたフロージェネレータ(14)であって、前記脈動流は、前記長手方向に沿った前記プロセスチャネルを通る一方向の第一流れ成分と、前記第一流れ成分に重ね合わされ、前記一方向へ周期的に送られる第二流れ成分とを含む、フロージェネレータ(14)と、
-前記プロセスチャネル内に配設され、前記脈動流を局所的に分割し再結合するように構成された複数の静的混合要素(15)とを備えるフロー反応装置(1)。
【請求項2】
前記上壁は、少なくとも1つの透明部分を含む、請求項1に記載のフロー反応装置。
【請求項3】
前記フロー反応装置は、前記透明部分を通して前記プロセスチャネルの内部の材料を照射するように構成された少なくとも1つの照射源をさらに備える、請求項2に記載のフロー反応装置。
【請求項4】
前記反応装置は、前記プロセスチャネルと熱的に接続された熱交換器(17)をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のフロー反応装置。
【請求項5】
前記側壁の少なくとも1つは、前記流れを局所的に偏向させるように構成された複数のデフレクタ要素(16)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のフロー反応装置。
【請求項6】
前記プロセスチャネルの少なくとも前記上壁は、前記プロセスチャネルの前記側壁、前記第1の端壁、及び、前記第2の端壁に取り外し可能に取り付けられる、請求項1から5のいずれか一項に記載のフロー反応装置。
【請求項7】
前記上壁、前記下壁、前記側壁、前記第1の端壁、前記第2の端壁、および前記混合要素のうちの1つまたは複数がコーティングを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のフロー反応装置。
【請求項8】
前記フロー反応装置は、前記第1の端壁に沿って均一に分散された複数の入口と、前記第2の端壁に沿って均一に分散された複数の出口とを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のフロー反応装置。
【請求項9】
前記プロセスチャネルは内部空間を有し、前記混合要素は、前記内部空間の少なくとも5%、そして前記内部空間の最大30%を占める、請求項1から8のいずれか一項に記載のフロー反応装置。
【請求項10】
前記プロセスチャネルは、ガス室に接続された少なくとも1つの別の入口を備え、該少なくとも1つの別の入口は、半透膜を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のフロー反応装置。
【請求項11】
前記混合要素は、プロセスチャネル全体に分散されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のフロー反応装置。
【請求項12】
-請求項1から11のいずれか一項に記載のフロー反応装置を設けることと、
-供給流を前記フロー反応装置に継続的に導入することと、
-前記プロセスチャネル内で脈動流を生成することと、
-前記フロー反応装置から生成物ストリームを除去すること、とを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のフロー反応装置(1)を使用して生成物ストリームを生成するための方法。
【請求項13】
前記プロセスチャネル内に脈動流を生成することは、少なくとも0.01Hzの振動周波数で、ならびに少なくとも1μmである振動中心からピークまでの振幅で前記第二流れ成分を生成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記プロセスチャネル内の材料を加熱すること、および前記プロセスチャネル内の前記材料を冷却することのうちの1つをさらに含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記プロセスチャネル内の材料を照射することをさらに含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面フロー反応装置に関し、詳細には多相反応および/または光化学プロセスに適したフロー反応装置に関する。本発明はまた、生成物ストリームを生成するためのフロー反応装置の使用、およびフロー反応装置を使用して生成物ストリームを生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続製造は、多くの場合、商品を生産するための最も費用効果が高く、最も効率的な方法である。この技術はもともと、例えば石油産業や食品産業で、非常に大量の最終製品を生産するために開発された。しかしながら、最近では、他の利点(安全性、品質、質量、熱伝達など)が明らかになったため、連続製造は、例えば化学産業や製薬業界などの少量生産にも使用されている。特に製薬業界では、規制当局(例えばFDA)は、医薬品有効成分(API)のバッチ処理から連続処理への切り替えを望んでいる。特定のAPIを継続して生産するために、最適化された専用のシステムが開発されてきた。しかしながら、実験室およびパイロット規模では、特有のプロセスごとに適切な反応装置を設計し、実装することは非現実的であり、費用がかかる。
【0003】
この問題を考慮して、多種多様な実験室用のフロー反応装置が開発されてきた。これらの実験室用反応装置のほとんどは、(コイル状の)管、幅の狭いチャネル、または落下フィルムを利用しており、これらはスケールアップすることが難しいことが知られている。具体的には、管の直径またはチャネルの断面積を拡大することによって内部空間を増大させるとプロセス制御が悪化することになり、つまり、物質移動、熱交換、および/または流れの流体力学の制御がより困難になる。さらに、管またはチャネルの長さを大きくすると、反応装置の長さ全体にわたる圧力降下が大きくなる。
【0004】
これらのタイプのフロー反応装置に関連するスケールアップの問題は、下壁、上壁、および2つの側壁によって区切られた平面プロセスチャネルを有するフロー反応装置を提案する特許文献1で対処されたが、解決はされなかった。プロセスチャネルは、供給ストリームをプロセスチャネルに導入するための入口と、生成物ストリームをそこから排出するための出口とを備える。入口と出口との間で、プロセスチャネルは曲がりくねったパターン、すなわち蛇行フロー反応装置を有し、フロー反応装置の外部のサイズを制限しながらプロセスチャネルの必要な長さを実現し、これは、実験室の限られた利用可能スペースを考慮すると、実験室用フロー反応装置に特に有益である。さらに、複数の静的混合要素がプロセスチャネル内に配設されて、流体の流れを局所的に分割し、再結合する。
【0005】
特許文献1はさらに、プロセスチャネルを通って流れる流体の滞留時間分布(RTD)を改善することを目的としており、すなわち、RTDは可能な限り狭いことが好ましい。RTDの改善は、プロセスチャネルのデッドボリュームを低減させることによって達成され、これは2つの方法で行うことができる。
【0006】
特許文献1に開示されている第1の方法では、静的混合要素の形状は、例えば円形、楕円形、または翼形状の静的混合要素を使用することにより、長い層流境界層の流れを提供し、静的混合要素のすぐ後ろのデッドボリュームを回避するために選択されてよい。しかしながら、これは、異なる流体は典型的には異なる粘度を有し、それが特有の形状の静的混合要素によって生成される層流境界層の流れの範囲に影響を与えるという欠点を有する。そのため、実験室環境で一般的に見られるように、フロー反応装置を異なる反応に使用する場合、RTDの制御に不可欠なデッドボリュームの削減を実現するために、静的混合要素を別のセットと交換する必要がある場合がある。混合要素はフロー反応装置の不可欠な部分であるため、そのような交換は不可能である。さらに、特有の流体のために、まったく新しい形状を設計する必要がある場合もあり、これには、広範なモデリングおよび/またはシミュレーションが必要になる場合がある。さらに、層流境界層の流れは、反応装置内の流体の混合作用を小さくする。
【0007】
特許文献1に開示された第2の方法では、高い流量、すなわち比較的高いレイノルズ数を有する流れを使用して、静的混合要素の背後で乱れを引き起こす乱流を作り出し、これによりデッドボリュームも回避する。このようにして効果的な混合作用を達成することができるが、これには、流体が所望される滞留時間を有するためにフロー反応装置が十分に長くなければならないという欠点がある。したがって、蛇行反応装置は、直列に配置され、反応装置の異なるプレートが互いに積み重ねられ、それによって必要な長さを作り出すことができるが、特許文献1にも開示されているように、プロセスチャネルが長いほど、圧力降下が大きくなり、これは望ましいことではなく、また多くの場合、反応装置またはポンプなどの補助装置の圧力限界を超える。さらに、すでにかなり長い実験室用反応装置は、圧力降下を十分に制御してRTDを狭くすることができないため、複数の反応装置を直列に配置することによってスケールアップのオプションを取り除く。
【0008】
特許文献1に開示された蛇行フロー反応装置の別の欠点は、静的混合要素がそれらの間に、典型的にはサブミリメートル範囲の寸法を有する非常に狭い流体通路を形成することであり、すなわち静的混合要素がマイクロ流体チャネルを形成することである。そのような小さなチャネルは、限られた使用可能な反応装置の容積しか提供せず(例えば、特許文献1の開示によれば、混合要素は、全プロセスチャネル容積の40%~60%を占める)、当然の結果としてチャネルあたりの生産能力を制限する。さらに、プレートあたりのチャネル容積もこの場合制限され、例えばプレートあたり5~40%に制限される。特許文献1は、生産能力をスケールアップするために複数の蛇行フロー反応装置を並列に配置できることを開示しているが、マイクロ流体チャネルの小さい容積は、実際の生産に必要なフロー反応装置の数が大きくなり、このことがプロセス制御の問題をもたらす、すなわち、様々な並列フロー反応装置のプロセスパラメータを監視および制御することが非常に困難になり、このことが様々な並列反応装置の生成物ストリーム間の品質の差をもたらす可能性があるといった結果により、生産能力を事実上低減させる。
【0009】
完全に透明であるか、または透明である部分を有する平面プロセスチャネルを有するフロー反応装置を提供することも当技術分野では知られている。透明性は典型的には、目視検査のために望ましく、光化学反応に必要とされる。例えば、特許文献2は、中央の平面プロセス流体層と、2つの外側の平面熱制御流体層とを有する透明なモジュール式蛇行フロー反応装置を開示している。プロセスチャネルは、蛇行パターンに従うマイクロチャネルを形成する。同様の蛇行フロー反応装置は、特許文献3、特許文献4、および特許文献5に開示されている。
【0010】
これらのフロー反応装置の欠点は、プロセスチャネルの容積が小さいと高スループットが問題になることである。さらに、プロセスチャネルを形成する単一のマイクロチャネルは、目詰まりのために閉塞し易い場合があり、閉塞は、フロー反応装置の故障につながる可能性がある。さらに、サブミリメートルの範囲の単一のプロセスチャネルでは、固体(例えば触媒、試薬など)を使用することは困難である。
【0011】
蛇行フロー反応装置の別の欠点は、チャネルの容積、およびしたがってプレートあたりの表面も50%未満に制限され、多くの場合10%未満に制限されることである。ほとんどの光子は反応流体ではなく壁の材料に浪費されるため、光化学反応装置の場合、表面がより大きいことが特に重要である。
【0012】
蛇行フロー反応装置の別の欠点は、このようなスケールアップは、特に曲線の結果として、異なる流体力学的挙動を生じるため、プロセスチャネルの断面サイズを大きくしても簡単にスケールアップできないことである。具体的には、曲線が存在するため、プレート反応装置を二次元に拡張することによってプロセスチャネルの断面サイズを大きくすることができ、これによりプロセスチャネルの長さも自動的に長くなる。結果として、反応に対して同じ滞留時間を獲得するために、流量を増大させる必要があり、したがって、流れの流体力学的挙動に影響を与える。
【0013】
当技術分野では、フロー反応装置における乱流の発生に影響を与える他の方法の研究もある。例えば、非特許文献1は、周期的に間隔を置いたバッフルを備えた、すなわちプロセスチャネルの壁から内側に延びる環状の障害物を備えた管状プロセスチャネルを開示している。正味の流れは、振動流と組み合わせてプロセスチャネルを介して生成される、つまり、脈動流が生成される。振動流は、中程度の速度の正味の流れでも、すなわち、振動レイノルズ数が100から1000である100前後の正味のレイノルズ数の場合でも乱流をもたらす。その結果、長さ対直径の比が減少したプロセスチャネルを使用すると、長い滞留時間が可能になる。特許文献6、特許文献7、特許文献8、および特許文献9はそれぞれ、周期的に間隔を置いたバッフルを備えた管状プロセスチャネルを有する同様のフロー反応装置を開示している。
【0014】
しかし、すでに上記で説明したように、そのような管状プロセスチャネルをスケールアップすることは容易ではない。特に、直径を大きくするとプロセス制御が低下し、チャネル長を長くすると圧力損失も大きくなる。
【0015】
特許文献10は、周期的にバッフルが付けられた側壁を有する蛇行プロセスチャネルを備えたプレート反応装置を開示している。脈動流が生成されて乱流を誘発させて、プロセスチャネル内の流体の混合作用を改善する。
【0016】
その他、別の従来の問題点(欠点)としては、特許文献10に開示されているフロー反応装置のアップスケールは、いくつかの理由のために簡単ではないことがある。まず、前述のように、プロセスチャネルの蛇行するレイアウトは、反応装置をアップスケールするとその長さが長くなることを意味している。したがって、反応に対して同じ滞留時間を獲得するためには、流量を増加させる必要があり、したがって流れの流体力学的挙動に影響を与える。第2に、プロセスチャネルの断面を変える(例えば、幅を大きくする)と、管状プロセスチャネルの場合と同様に、プロセス制御が悪化することになる。さらに、プロセスチャネルの断面を変えることはまた、バッフルの形状および/または周期性の変化につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第2012/025224号パンフレット
【文献】国際公開第2015/148279号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2014/050630号明細書
【文献】ドイツ特許出願公開第10209898号
【文献】米国特許出願公開第012/122224号明細書
【文献】欧州特許第0540180号
【文献】国際公開第2008/047166号パンフレット
【文献】国際公開第87/00079号パンフレット
【文献】欧州特許第0631809号
【文献】国際公開第2017/175207号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【文献】A.P.Harvey、M.R.Mackley、およびP.Stonestreetによる「Operation and optimization of an oscillatory flow continuous reactor」というタイトルの論文、Ind.Eng.Chem.Res.2001,40,5371-5377
【発明の概要】
【0019】
本発明の目的は、拡張性が改善されたフロー反応装置を提供することである。
この目的は、本発明によれば、長手方向を有し、下壁、上壁、2つの側壁、第1の端壁、および長手方向に沿って第1の端壁の反対側にある第2の端壁によって区切られている実質的に真っ直ぐな平面プロセスチャネルであって、少なくとも1つの供給ストリームをプロセスチャネルに導入するように構成された、第1の端壁における少なくとも1つの入口と、プロセスチャネルから少なくとも1つの生成物ストリームを排出するように構成された、第2の端壁における少なくとも1つの出口とを備えるプロセスチャネルと、プロセスチャネル内で脈動流を生成するように構成されたフロージェネレータであって、脈動流は、長手方向に沿ったプロセスチャネルを通る一方向の正味の流れと、正味の流れに重ね合わされた振動流とを含む、フロージェネレータと、プロセスチャネル内に配設され、流れを局所的に分割し再結合するように構成された複数の静的混合要素とを備えるフロー反応装置によって達成される。言い換えれば、静的混合要素は、混合要素に接近する流れを少なくとも2つの流れに分割するようにそれぞれ構成されており、そのうちの1つは混合要素の一方の側に沿って、特にその右側に沿って混合要素を通過し、そのうちの他方は、混合要素の反対側に沿って、特にその左側に沿って混合要素を通過する。
【0020】
正味の一方向の流れを入口から出口まで生成することができる実質的に真っ直ぐな平面プロセスチャネルを設けることにより、プロセスチャネルの幅にほとんど依存しない流れパターンが生成される。言い換えれば、脈動流の流れパラメータ(例えば、流速および振動の中心からピークまでの振幅)が一定に保たれている場合では、プロセスチャネルの幅を変更しても、プロセスチャネル内の流れパターンに大きな影響を与えることはない。その結果、プロセスパラメータと、RTDなど、結果として生じる反応装置の性能は、プロセスチャネルの幅を変更してもほとんど影響を受けることはない。したがって、フロー反応装置をスケールアップするために、フロー反応装置の幅を拡大することができ、したがって、圧力降下および流れの挙動、ならびにその結果として、RTD、質量および/または熱伝達などのプロセスパラメータに大きな影響を与えることなく、より大きな容積、したがってより大きなスループット、すなわち生産能力の増大を実現することができる。
【0021】
さらに、脈動流を生み出すことによって、すなわち、プロセスチャネル内で、振動流の振幅に関係なく、プロセスチャネルに沿った一方向の正味の流れと、周期的な振動流との重ね合わせの結果として生じる周期的な流れを生み出すことによって、低い正味流量でも、すなわち低い正味レイノルズ数でも、大量の静的混合要素を必要とせず、それにより、国際公開第2012/025224号に開示される蛇行フロー反応装置のように反応装置の容積の比較的大きな部分を失うことなく、乱流および/またはカオス流体流れを生成することができる。したがって、必要な乱流を減少させることなく静的混合要素のサイズおよび/または配置を変更することができ、その結果、プロセスチャネル内の最大の流体体積が増加し、それによって生産能力が増大する。
【0022】
さらに、振動流成分によって生成されるより高いレベルの乱流は、RTDの改善、およびプロセスチャネル内の流体の十分なおよび/または増大した混合作用の生成などの利点も有する。十分なおよび/または増大した混合作用は、ほとんどの反応または単位操作において有利であり、特に多相反応および/または光化学プロセスにとって有利である。多相反応の場合、振動流成分によって生成されるより高いレベルの乱流は、非混和性相の再混合および一定の再分散を生み出し、したがって全体的な物質移動を改善するより大きな表面積を生み出す。
【0023】
脈動流は、上記のように当技術分野で知られているが、そのような流れは典型的には、バッフルを備えた、すなわち、欧州特許第0540180号、国際公開第2008/047166号、国際公開第87/00079号および欧州特許第0631809号に開示されているような環状リング(オリフィス)の形態のチャネルの局所的な狭窄部を備えた円筒形のプロセスチャネルに使用される。また、国際公開第2017/175207号に開示されている反応装置は、側壁に適用された局所的狭窄部を利用しており、すなわち、静的混合要素は使用されていない。その結果、当業者は、必要な乱流を生成するための静的混合要素を備えた、国際公開第2012/025224号に開示される既知の平面蛇行フロー反応装置内で脈動流を生成することは考慮しないであろう。
【0024】
本発明の一実施形態では、フロージェネレータは、少なくとも5v、好ましくは少なくとも25v、より好ましくは少なくとも50v、有利には少なくとも75v、そして最も有利には少なくとも100vである正規化された振動レイノルズ数で脈動流を生成するように構成されており、ここでvはプロセスチャネル内の材料の動粘度である。有利には、フロージェネレータは、少なくとも1、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、有利には少なくとも15、そしてより有利には少なくとも20の速度比で脈動流を生成するように構成されており、ここで、速度比は、振動レイノルズ数と正味レイノルズ数の比であり、2πfx/uによって与えられ、ここで、uは正味流れ成分の速度であり、fは振動流成分の周波数であり、xは振動流成分の中心からピークまでの振幅である。有利には、フロージェネレータは、最大200v、好ましくは最大100v、より好ましくは最大50v、最も好ましくは最大20v、有利には最大10v、より有利には最大5v、そして最も有利には最大0.5vである正規化された正味レイノルズ数で脈動流を生成するように構成されており、ここで、vはプロセスチャネル内の材料の動粘度である。
【0025】
そのような高い正規化された振動レイノルズ数を有する(すなわち、プロセスチャネル内の流体の粘度に関係なく、少なくとも5である振動レイノルズ数を有する)流れは、比較的低い正味の流量の場合でさえ乱流および/またはカオス運動を受けることが見出された。言い換えると、振動レイノルズ数は容易に増大させることができるため、固定された反応装置の長さに対してRTDが必要とする正味の流量が少ない場合(つまり、比較的長い滞留時間が必要な場合)でも、十分に混合された流れをも得ることができる。その結果、長い滞留時間を必要とするプロセスの場合、低い正味の流量はこのとき十分な混合作用で実現可能であるため、反応装置の長さを比較的短く保つことができる。
【0026】
本発明の一実施形態では、混合要素は、流れの中に垂直渦を生成するようにさらに構成されている。
【0027】
このような垂直渦は、乱流および/またはカオス流体の挙動をさらに増大させ、それによって、流体の混合、RTD、質量および/または熱伝達、ならびに上壁でのフィルムの再生などの様々な側面を改善する。
【0028】
本発明の一実施形態では、上壁は、少なくとも1つの透明部分を含み、透明部分は、好ましくは、実験用ガラス(例えば、ホウケイ酸、Pyrex(登録商標)、Vycor(登録商標))、溶融シリカ、石英、およびPMMA,COCなどのポリマーのうちの1つから製造される。
【0029】
この実施形態では、フロー反応装置は、必要な光線がプロセスチャネル内の流れを照射するために上壁を透過できるため、光光学、すなわち照射(例えば、UVまたは可視光)によって引き起こされる反応にも適している。さらに、上壁の透明性により、プロセスチャネル内の反応および/またはプロセスの目視検査が可能になる。その結果、例えば非混和性流体および/または他の多相反応混合物の液-液反応において適切に混合されているかどうかを視覚的に観察することができる。同様に、沈殿が必要に応じて発生するかどうか(結晶化など)、または固体粒子(不均一系触媒など)が反応装置のチャネルを通ってスムーズに移動するかどうかを視覚的に確認することができる。予期しない沈殿や目詰まりが発生していないかどうか、プロセスチャネル内の1つまたは複数の領域を視覚的に確認することも可能である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、上壁の内側に透明な保護カバーが設けられ、保護カバーは少なくとも透明な部分を保護し、保護カバーは、特にポリフッ素化材料を含む。
【0031】
このようにして、少なくとも透明な部分は、プロセスチャネル内のプロセスストリームから生じる可能性のある潜在的な化学的損傷から保護される。さらに、透明な保護カバーは、反応へのいかなる物質の浸出も防ぐ保護バリアとして機能することができる。保護カバーは、必要に応じて簡単に交換されてよい。
【0032】
本発明のさらに好ましい実施形態では、フロー反応装置は、透明部分を通してプロセスチャネルの内部の材料を照射するように構成された少なくとも1つの照射源をさらに備え、好ましくは、照射源を冷却するように、照射源と透明部分との間の領域を冷却するように、およびより好ましくは透明部分を冷却するように構成された少なくとも1つの冷却手段が設けられている。
【0033】
照射源を設けることにより、フロー反応装置は、非可視性放射線、例えば紫外線を必要とする光化学反応に適したものになる。
【0034】
本発明の一実施形態では、反応装置は、プロセスチャネルと熱的に接続された熱交換器をさらに備える。
【0035】
熱交換器は、加熱または冷却によってプロセスチャネル内の温度を制御する機能を提供する。これは、プロセスに応じてプロセスチャネル内の温度を設定することを可能にするため、有利である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、下壁および/または混合要素は、実験用ガラス、ポリマー、セラミックまたは金属から製造される。
【0037】
本発明のより好ましい実施形態では、下壁は、特に、少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する熱伝導性材料から製造され、下壁は熱交換器の一部であり、好ましくは混合要素は熱交換器の一部であり、かつ特に少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する熱伝導性材料から製造されており、より好ましくは、下壁および混合要素は一体的に形成される。
【0038】
熱交換器の一部として混合要素を使用することにより、表面対体積比(すなわち、プロセスチャネル内の流体の体積に対する、熱交換器とプロセスチャネル内の材料との間の接触表面積の比)が増大し、これにより、プロセスチャネル内の流体と熱交換器との間の熱伝達を改善することができる。
【0039】
本発明の一実施形態では、側壁の少なくとも1つは、流れを局所的に偏向させるように構成された複数のデフレクタ要素を備える。
【0040】
バッフルなどのデフレクタ要素を設けることにより、層流が側壁の近くで発生することを回避し、層流は、流れの一部が十分に混合されない、および/または異なる滞留時間を有することにつながるので望ましくない。
【0041】
本発明の一実施形態では、プロセスチャネルの少なくとも上壁は、プロセスチャネルの側壁および端壁に取り外し可能に取り付けられ、少なくとも1つの密閉部材が好ましくは、一方で上壁と側壁との間に、他方で第1の端壁と第2の端壁との間に設けられる。
【0042】
上壁を取り外し可能にすることにより、プロセスチャネルの内部空間を容易に清掃する、および/または部品交換することができる。
【0043】
本発明の一実施形態では、上壁、下壁、側壁、第1の端壁、第2の端壁、および混合要素のうちの1つまたは複数がコーティングを備える。
【0044】
このようなコーティングは、追加の保護層(攻撃性または腐食性媒体で使用するため)、触媒特性(触媒固液反応用)、表面張力、および/または表面積および/または表面粗さ、および/または様々な反射特性を変えることによる流動特性の改善など、様々な理由で使用されてよい。
【0045】
本発明の一実施形態では、混合要素は、プロセスチャネル内に配設された少なくとも1つの取り外し可能なインレイ(インレー)によって形成される。
【0046】
別個のインレイ(はめ込み部材)には、同じプロセスチャネルを、異なるように成形された混合要素を有する、および/または異なる材料から製造される、および/または上記のように異なるコーティングで好都合にコーティングされる多様なインレイと共に使用できるという利点がある。さらに、インレイは、プロセスチャネル内の流れの挙動を変更するための便利な方法である。さらに、混合要素が損傷した場合(例えば摩耗により)、インレイを簡単に交換することができる。
【0047】
本発明の一実施形態では、プロセスチャネルは、ガス室に接続された少なくとも1つの別の入口を備え、該少なくとも1つの別の入口は、半透膜を備え、半透膜は好ましくは、プロセスチャネルの上壁を形成する。
【0048】
この実施形態では、フロー反応装置は気液反応に特に適している。具体的には、上壁は、ガス入口に対応する半透膜によって形成されることが好ましいので、ガス室からのガスは、加えられた圧力および半透膜の特性(例えば、厚さ、組成、多孔性など)に基づいて投与量を制御するのを助ける大きな表面積にわたってプロセスチャネルに供給される。さらに、脈動流は、上壁の近くでの十分な流体の再生を確実にし、それによって、上部近くの流体の飽和効果を軽減し、したがって、ガス吸収効率を高める。
【0049】
この実施形態では、フロー反応装置は、反応媒体からのガスの除去に特に適している。したがって、記載されたガス室は、反応装置室と比較して減圧下にある必要がある。
【0050】
本発明の一実施形態では、プロセスチャネルは、部分的に混和性のガスを含む多相混合物(例えば、気液混合物または気液固混合物)を供給することができる。この場合、反応装置を傾けることができるため、溶解していないガスは上向きに進むことになる。これにより、傾斜角度に応じてガスホールドアップを改善することができる。振動運動は、気泡の平均気泡直径を減少させることにより、特有の界面領域を改善することができる。
【0051】
本発明のさらなる目的は、改善された拡張性を有する生成物ストリームを生成するための方法を提供することである。
【0052】
この目的は、上記に記載したフロー反応装置を設けること、と、供給ストリームをフロー反応装置に継続的に導入することと、プロセスチャネル内に脈動流を生成することと、フロー反応装置から生成物ストリームを除去することを含む方法で、本発明によって達成される。
【0053】
この目的はまた、上記のようなフロー反応装置を使用して生成物ストリームを生成することによって達成される。
【0054】
上記のようにフロー反応装置を使用して生成物ストリームを生成することにより、フロー反応装置の改善された拡張性は、当然のことながら、改善された拡張性を有する製造方法をもたらすことになる。
【0055】
本発明は、以下の説明および添付の図によってさらに説明される。
【0056】
【図面の簡単な説明】
【0057】

図1】本発明によるフロー反応装置の例示的な構成を示す図である。
図2図1のフロー反応装置のプロセスチャネルの上面図である。
図3】照射源を追加した、図2の線IIIで示される長手方向の平面に沿った垂直断面である。
図4】プロセスチャネルの第2の端部に焦点を当てた、図3の詳細を示す図である。
図5図1のフロー反応装置を通る横断面図の斜視図である。
図6】本発明による別のフロー反応装置の分解組立図である。
図7図6のフロー反応装置内の静的混合要素によって形成されたフローパターンを示す図である。
図8A】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の上面図である。
図8B】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の上面図である。
図8C】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の上面図である。
図8D】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の上面図である。
図8E】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の上面図である。
図8F】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の上面図である。
図8G】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の上面図である。
図8H】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の上面図である。
図8I】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の上面図である。
図8J】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の上面図である。
図9A】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の側面図である。
図9B】本発明によるフロー反応装置に適した異なる静的混合要素の側面図である。
図10】本発明によるフロー反応装置の第1の並列構成の図である。
図11】本発明によるフロー反応装置の第2の並列構成の図である。
図12】本発明によるフロー反応装置の直列構成を示す図である。
図13】本発明による気液反応に適したフロー反応装置の長手方向の平面に沿った垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、特定の実施形態に関して、かつ特定の図面を参照して説明されるが、本発明は、それに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載されている図面は概略図であり、非限定的である。図面において、いくつかの要素のサイズは、例示目的のために誇張され、縮尺通りに描かれていない場合がある。寸法および相対的な寸法は、必ずしも本発明の実施に対する実際の縮小に対応するわけではない。
【0059】
さらに、説明および特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用されており、必ずしも連続的順序または時系列の順序を説明するために使用されるわけではない。これらの用語は、適切な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、本明細書に記載される、または図示されているもの以外の順序で作用することができる。
【0060】
さらに、説明および特許請求の範囲における上部、下部、上、下などの用語は、説明の目的で使用される。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載される、または図示されている以外の方向で作用することができる。
【0061】
さらに、様々な実施形態は、「好ましい」ものと呼ばれるが、本発明の範囲を限定するものとしてではなく、本発明を実施することができる例示的な方法として解釈すべきである。
【0062】
本発明は、多種多様な反応および/またはプロセスに使用することができる、全体的に参照番号1で示されるフロー反応装置アセンブリに関する。具体的には、反応装置1は、固体または溶解したガスを含み得る流体の多相混合物を含む、流体または流体の混合物を処理するのに適している。これらのプロセスには、連続反応、温度調整、(再)混合、分離、抽出、結晶化または沈殿、浸出、吸収、ストリッピングまたは吸着が含まれてよい。処理は、生物学的プロセス、物理的プロセス、または化学反応、すなわち、有機、無機、または有機種と無機種の両方の相互変換をもたらすプロセスを含んでもよい。特に、反応装置1は、反応物および/または生成物、懸濁液、エマルジョン、および固体、液体、および(溶解した)ガスを含む分散液の混合物に適している。
【0063】
一実施形態では、反応装置1は、多種多様な熱合成または崩壊(例えば、廃棄物処理)反応に適しており、これは、任意選択で(均一に、不均一に、酵素的に)触媒作用を受ける場合がある。反応の以下の非限定的なリスト、すなわち酸化、還元、置換、排除、追加の再配置、ラジカル反応、リガンド交換、金属交換およびイオン交換は、反応装置1を用いて実施することができる。より具体的には、以下の非限定的なリストの反応、すなわち重合、アルキル化、脱アルキル化、ニトロ化、過酸化、スルホキシド化、エポキシ化、アンモ酸化、水素化、脱水素、有機金属反応、貴金属化学/均一系触媒反応、カルボニル化、チオカルボニル化、アルコキシル化、ハロゲン化、脱ハロゲン化水素、脱ハロゲン化、ヒドロホルミル化、カルボキシル化、脱炭酸、アミノ化、アリール化、ペプチドカップリング、アルドール縮合、環化凝縮、脱水素環化、エステル化、アミド化、複素環式合成、脱水、アルコール分解、加水分解、アンモノリシス、エーテル化、酵素合成、ケタル化、鹸化、異性化、四級化、ホルミル化、相間移動反応、シリル化、ニトリル合成、リン酸化、オゾン分解、アジド化学、メタセシス、ヒドロシリル化、カップリング反応、環状付加、ラジカル生成、ラジカル反応、ビラジカル反応および酵素反応のうちのいずれか1つが反応装置1で実施されてよい。
【0064】
さらに、特定の実施形態では、反応装置1は、電磁放射(例えば、ラジオ、マイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線およびガンマ線)、反応装置マトリックスと接触する電極(すなわち電気化学)、外部電場、外部磁場、または音波(例えば超音波)を使用した電位差などの非熱活性化技術によって開始される、および/または維持される反応にも適している。
【0065】
これらの活性化技術は、単独で、または組み合わせて(光電気化学など)適用することができる
【0066】
図1に示されるように、フロー反応装置1は、図2の矢印3によって示されるような長手方向を有する実質的に真っ直ぐな平面プロセスチャネル2を備える。特に、プロセスチャネル2は、好ましくは図のように実質的に長方形の断面を有する単一の実質的に真っ直ぐなチャネルから成る。プロセスチャネル2は、下壁4および上壁5(図3に示される)、2つの側壁6、7(図2に示される)、互いの反対側にある第1の端壁8および第2の端壁9(図2に示される)によって区切られている。図2から図4に示されるように、プロセスチャネル2は、第1の端壁8に入口10を備え、第2の端壁9に出口11を備える。使用中、入口10は、入口管12(図1に示されている)に接続され、そこを通って供給ストリームがプロセスチャネル2に進入する。同様に、出口11は、使用中、出口管13に接続されており、ここを通って生成物ストリームがプロセスチャネル2を出て行く。
【0067】
本明細書で使用される場合、「供給ストリーム」という用語は、所望される反応および/またはプロセスを実行するために、入口10を通ってプロセスチャネル2に導入される液体、気体および固体を含むすべての成分を意味することを意図する。
【0068】
本明細書で使用される場合、「生成物ストリーム」という用語は、所望される反応および/またはプロセスの結果として、プロセスチャネル2から出口11を通って排出される、液体、気体、および固体を含むすべての成分を意味することを意図する。
【0069】
入口10および出口11は、プロセスチャネル2の下壁4にあるものとして図に示されているが、他の実施形態では、入口10および/または出口11は、第1の端壁8および/または第2の端壁9のそれぞれ1つに設けられる場合があることは容易に理解されるであろう。さらに、1つまたは複数の追加の入口および/または出口が、第1の端壁8と第2の端壁9との間、例えば、プロセスチャネル2の中央近くに設けられる場合があることが理解されるであろう。さらに、複数の入口管12が単一の入口10に接続される場合もあり、その場合、入口10に到達する前に、フロー反応装置アセンブリ1内の複数の入口管からの流れを混合することによって供給ストリームが形成される。
【0070】
プロセスチャネル2は通常、図5および図6に示すように、様々な異なる部品から組み立てられる。特に、プロセスチャネル2の下壁4も形成する下半分22が設けられる。下半分22は、下壁4に開口する入口10(複数可)および/または出口11(複数可)を備える。図6では、静的混合要素15のシートが、下半分22にある対応する窪みの中に配置される。あるいは、図5のように、静的混合要素15は、下半分22に一体式に形成されてもよい。カバープレート23が、混合要素15の上部に配置され、カバープレート23は上壁5として機能する、または上壁5として機能する場合もある。好ましくは、シール24が、カバープレート23と下半分22との間に設けられ、シール24は、下半分22とカバープレート23との間のシール24を機械的に圧縮するとき、プロセスチャネル2の適切な密閉を確実にする。カバープレート23は、上方の半分25によって下半分22に圧締めされ、図1に示されるように、上方の半分25にある対応する穴27および下方の半分22にある少なくとも部分的にねじ切りされた穴28に嵌合する複数のボルト26(図1に示される)によって下方の半分にしっかりと固定される。好ましくは、保護層29は、カバープレート23と上方の半分25との間に設けられ、この保護層29は、プロセスチャネル2内の流体によってカバープレート23に加えられる圧力を均一にし、それにより、カバープレート23が過度の局所的な圧力により損傷する可能性を低減する。保護層29は、好ましくは、ポリフッ素化ポリマーなどの耐薬品性材料から製造される。
【0071】
下半分22および上半分25は、ボルト26以外の他の手段によって一緒に接合されてもよいことが容易に理解されよう。例えば、これらの半分22、25を一緒に圧締めするために外部クランプが設けられてもよい。あるいは、半分22、25は恒久的に一緒に接合されてもよいが、取り外し可能な上半分25によってプロセスチャネル2の内部を清掃する、および/または部品を交換することがはるかに容易になるため、取り外し可能な上半分25が好ましい。
【0072】
好ましくは、保護シート(図示せず)が、上壁5を形成するカバープレート23の側面に適用されてもよく、その場合、保護シートが上壁5を形成する。そのような保護シートは、カバープレート23が製造される材料を浸食する可能性のある材料の堆積および/または攻撃性媒体(例えば、強塩基およびフッ化物源)によって汚れないようにカバープレート23を保護するのに適しているので有利である。さらに、この保護シートは、使用中、劣化した場合に簡単に交換することができる。保護シートは、好ましくは、ポリフッ素化ポリマーなどの耐薬品性材料から製造される。
【0073】
半分22、25、混合要素15およびカバープレート23は、多種多様な材料から製造されてよい。ただし、耐薬品性のある材料が好ましい。このような材料には、(ポリ)フッ素化ポリマー(例えばPTFE、FKM、FPM、FFKM、FFPMなど)、グラファイト、ゴム、繊維およびガラス(例えば、ホウケイ酸、Pyrex(登録商標)、Vycor(登録商標)など)またはその他の透明材料が含まれてよい。ただし、Incoloy(登録商標)、Monel(登録商標)、Hastelloy(登録商標)、Inconel(登録商標)、Durimet(登録商標)、Si、SiC、鋼、ステンレス鋼、およびその他の耐食性金属または合金が好ましい。さらに、これらの構成要素は、ミリング、エッチングプロセス、レーザー媒質処理、マイクロスパークエロージョン、3D印刷などの様々な機械加工プロセスを使用して製造されてよい。
【0074】
プロセスチャネル2は、圧力下で動作するように設計されてよく、その場合、半分22、25、混合要素15、カバープレート23、シール24などの厚さおよび/または機械的強度は、所望される圧力に対して選択される。プロセスチャネル2内の典型的な圧力は、1~11バールの間、好ましくは2~5バールの間である。しかしながら、1バール未満の圧力(すなわち、低圧)もプロセスチャネル2で使用され得ることが容易に理解されよう。
【0075】
図6のような混合要素15のための別個のインレイは、図5のように下半分22と一体的に形成される混合要素15よりも有利である。具体的には、別個のインレイは、同一のプロセスチャネル2を、異なるように成形された混合要素15を有する、および/または異なる材料から製造される様々なインレイと共に使用できるという利点を有する。さらに、プロセスチャネル2のより大きな型では、フロー反応装置アセンブリ1の取り扱いが、その重量が理由で非実用的になる場合あり、インレイは、同一のベース22と蓋25を使用してプロセスチャネル2を交換するための便利な方法である。言い換えれば、インレイを交換するだけで、同一のベース22と蓋25を使用して異なるプロセスチャネル2を実現することができる。さらに、混合要素15が損傷した場合(例えば、摩耗または腐食のため)、インレイを容易に交換することができる。さらに、インレイが異なるセクションから構成され得ることは容易に理解されよう。言い換えれば、異なるインレイが、プロセスチャネル2の長さに沿って互いに隣接して配置されてもよい。
【0076】
プロセスチャネル2の内部は、追加の機能を加えるために任意選択でコーティングされてもよい。コーティングは、追加の保護層として機能し(例えば、攻撃性媒体および/または腐食性媒体が使用される場合)、触媒特性(例えば、触媒固液反応および光触媒固液反応)を有し、表面張力および/または表面粗さを変更することによって、あるいは反射特性を変更することによって流動特性を修正することができる。
【0077】
保護コーティングは有利には、アモルファスシリコン、酸素および炭素の官能化混合物(例えば、Dursan(登録商標))、タンタル、PTFE、セラミック、ガラスなどの材料を含む。
【0078】
光触媒コーティングの1つのタイプは、金属酸化物(例えば、TiO、ZnOまたはSrTiOs、CdS、CdSe、Fe、CuO、FeTiO、Biなど)またはポリマー(例えば、ポリ(メチル)メタクリレート)などの金属カルコゲナイドを含み、これは、光触媒、酸、塩基、リガンド(金属の有無にかかわらず)、有機イオン(テトラアルキルアンモニウム、スルホン酸塩、両性イオンなど)、有機触媒または酵素を共有結合するためのアンカーポイントとして機能するか、光レドックス特性(グラフェン、(ドープ)窒化グラファイトなど)を有する場合がある。別のタイプの触媒コーティングは、酵素、ペプチド、ペプチド模倣物または他の生体触媒ベースの種を含んでもよい、および/またはそれらと結合されてもよい。
【0079】
触媒コーティングの表面層は、他の触媒種を閉じ込めることができる不活性(例えば、マイクロファイバーガラス)または触媒(例えば、マイクロファイバー銅)であり得る多孔性または繊維性であってよい。言い換えれば、コーティングの表面は、その中にいくつかの細孔、くぼみ、および穴を含む微細構造を有する。このような多孔性は、プロセスチャネル2内の流体と接触するために利用可能な表面積を増大させるのに役立つ。
【0080】
さらに、コーティングの性質は、プロセスチャネル2を通って運ばれる流体中の特有の分子および/または材料の吸着に影響を及ぼす場合があり、これは、フロー反応装置1の働きをさらに改良する。
【0081】
コーティングは、ゾルゲル法、浸漬、スパッタリング、陽極酸化、電着、固定化ナノ粒子、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、火花放電下での陽極酸化(ANOF)などの多様な方法によって適用することができる。
【0082】
図1に示されるように、入口管12は、プロセスチャネル内で脈動流を生成するように構成されたフロージェネレータ14に接続され、脈動流は、長手方向に沿ってプロセスチャネルを通る一方向の正味流れ成分と、正味流れ成分に重ね合わされた振動流成分とを含む。
【0083】
本明細書で使用される場合、「脈動流」という用語は、振動流の振幅に関係なく、プロセスチャネルに沿った一方向の正味の流れと周期的振動流とを重ね合わせた結果として生じる周期的な流れを意味することを意図する。特に、最大振動速度は正味の流速より小さい場合があり、これは、流れが常に正の速度を有することを意味する。あるいは、最大振動速度が正味の流速よりも大きい場合があり、これは、流れが時には負の速度を有することを意味する。好ましくは、正味の流れは、実質的に一定の流量を有する。
【0084】
さらに、プロセスチャネル2は、図7に示されるように、流れを局所的に分割し再結合するように構成された複数の静的混合要素15をさらに備える。より具体的には、流入する流量(矢印16で示される)は、混合要素15の1つに近づき、2つの異なる流れ(左側の成分の矢印16Lおよび右側の成分の16Rで示される)に分割される。混合要素15を通過した後、次に、左側の成分16Lは、隣接する混合要素15からの右側の成分16Rと混ざり合う。
【0085】
静的混合要素15がその中に配設され、好ましくはプロセスチャネル2の全長および全幅に沿って分散されているプロセスチャネル2を、フロージェネレータ14によって生成される脈動流と組み合わせることで、正味流量が低い場合でも、プロセスチャネル2内での十分な乱流の生成および/または流体の混合作用をもたらすことが見い出された。特に、振動流成分がない場合、分割流16R、16Lがそれぞれ、隣接する混合要素15からの左手側の流れ成分、右手側の流れ成分とそれほど激しく混ざり合わない低い正味流量の場合、混合要素15は層流挙動の発達が妨げることがなく、このことは、プロセスチャネル2内の流体の十分な乱流および/または混合作用が生じないことを意味する。しかしながら、振動流成分は、振動挙動が十分に高い流量を局所的に生み出すことで、流れが十分に速い速度で混合要素15に衝突し、その結果分割された流れ成分16R、16Lは隣接する混合要素15からの左側の流れ成分、右側の流れ成分と確実に混ざり合うことになるため、この問題を軽減する。
【0086】
脈動流は生成物ストリーム内で減衰されてよい、すなわち、振動成分は、出口管13内で正味の流れを得るために減衰されることが容易に理解されよう。フロー反応装置アセンブリ1の外で正味の流れのみを有することは、特に1つまたは複数の測定機器および/または監視機器が接続されている場合に好ましい。このような減衰は、例えば油圧アキュムレータ、サイクロン、バッファなどを使用することによって、様々な方法で実現されてよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、フロージェネレータ14は、自然対流、強制対流、重力、加圧供給容器、質量流量制御(液化)ガス、スラリー投与など、当業者に知られている任意の異なる数の手段によって一方向の流れを生成してよい。特に、強制対流の場合、ポンプ(例えば、蠕動ポンプ、ギアポンプ、ダイアフラムポンプ、ピストンポンプ、遠心ポンプ、シリンジポンプなど)が使用されてよい。さらに、重力による正味の流れの場合は、プロセスチャネル2の配向は、図に示されている水平配向とは異なることが容易に理解されよう。言い換えれば、反応装置1は、特定の状況に応じて、傾斜した配向および/または垂直配向を含む、異なる配向で配置されてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、フロージェネレータ14は、振動流成分を生成するように構成された発振器(図示せず)を含んでもよい。特に、発振器は、少なくとも0.01Hz、好ましくは少なくとも0.1Hz、およびより好ましくは少なくとも0.5Hz、また最大400Hz、好ましくは最大100Hz、より好ましくは最大50Hz、そして最も好ましくは最大25Hzの振動周波数で、ならびに少なくとも1μm、好ましくは少なくとも10μm、より好ましくは少なくとも0.1mm、そして最も好ましくは少なくとも0.5mmであり、また最大100cm、好ましくは最大20cm、より好ましくは最大5cm、最も好ましくは1cm、有利には最大5mm、そしてより有利には最大2mmの振動中心からピークまでの振幅で振動流成分を生成するように構成されてよい。
【0089】
さらに、振動流の生成された中心からピークまでの振幅が、後続の混合要素15間の距離、すなわち、長手方向3に沿って互いに隣接する混合要素間の距離と少なくとも同じ桁である場合に有利である。言い換えれば、中心からピークまでの振幅は、理想的には、後続の混合要素間の距離の少なくとも半分であり、これは、周期的な振動サイクルごとに、流体の一団を後続の混合要素間の距離に少なくとも等しい長手方向の距離にわたって移動させることを保証し、このことは、各周期的振動サイクルに、流体の一団が通常は混合要素15によって分割されることを意味する。
【0090】
発振器は、逆止弁が取り外されているか、または変更されている、改良された膜ポンプまたはピストンポンプの形態であってよい。あるいは、プロセス空間、例えば供給ストリームに直接接続されたカスタムメイドのピストンまたはベローズも可能である。さらに、最初のポンプ、例えば膜ポンプは、正味流れ成分を生成するために使用されてよく、第2のポンプ、例えば、改良された膜ポンプは、振動流成分を生成するために使用されてよい。
【0091】
実際には、フロージェネレータ14は異なる設定を有してもよく、これは、フロージェネレータ14が、ある範囲の流速にわたる正味の流れ、および/またはある範囲の振動振幅にわたる、および/またはある範囲の発振周波数にわたる振動流を生成することができることを意味する。
【0092】
一般に、脈動流の場合、流れを特徴づけるために正味レイノルズ数および振動レイノルズ数が定義される。正味レイノルズ数は、R=uL/で与えられ、ここで、uは正味流れ成分の速度であり、Lは特徴的な長さであり、これは典型的には、プロセスチャネル2の水力直径と見なされており、vは流体の動粘度である。振動レイノルズ数はR=2πfxL/で与えられ、ここで、fは振動流成分の周波数であり、xは振動流成分の中心からピークまでの振幅である。両方のレイノルズ数を使用して、速度比ψ=R/R=2πfx/uを定義することも可能である。さらに、両方のレイノルズ数は動粘度を通じてプロセスチャネル2内の媒体の特性に依存するため、正規化されたレイノルズ数を定義することが有益である。

具体的には、正規化された正味レイノルズ数は
で与えられ、正規化された振動レイノルズ数は
で与えられる。
【0093】
少なくとも5v、好ましくは少なくとも25v、より好ましくは少なくとも50v、有利には少なくとも75v、そして最も有利には少なくとも100vである正規化された振動レイノルズ数は、上記のような比較的低い正味流量の場合でも、十分な乱流および/またはカオス運動をもたらすことが見い出された。いくつかの実施形態では、脈動流は、少なくとも1、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、有利には少なくとも15、そして最も有利には少なくとも20の速度比を有する。同様に、脈動流は、好ましくは最大200v、好ましくは最大100v、より好ましくは最大50v、最も好ましくは最大20v、有利には最大10v、より有利には最大5v、そして最も有利には最大0.5vである正規化された正味レイノルズ数を有する。そのような低い正味レイノルズ数は、短いプロセスチャネル2内での流体の長い滞留時間を可能にするので有利であり、これは、フロー反応装置1が非常にコンパクトであり、したがって、例えば実験室で容易に使用できることを意味する。
【0094】
レイノルズ数の計算では、プロセスチャネル2の水力直径が使用される。この水力直径は典型的には、プロセスチャネルの断面積、すなわち、その高さHおよびその幅W、ならびに混合要素15によって満たされる面積に依存する。
【0095】
本明細書で使用される場合、「プロセスチャネルの高さ」という用語は、プロセスチャネル2の下壁4と上壁5との間の平均距離を意味することを意図している。
【0096】
本明細書で使用される場合、「プロセスチャネルの長さ」という用語は、プロセスチャネル2の第1の端壁8と第2の端壁9との間の平均距離を意味することを意図している。
【0097】
本明細書で使用される場合、「プロセスチャネルの幅」という用語は、プロセスチャネル2の側壁6と7との間の平均距離を意味することを意図している。
【0098】
フロー反応装置の一例では、平面プロセスチャネル2は、高アスペクト比(例えば、少なくとも3、とりわけ少なくとも5、そしてより詳細には少なくとも10)を有する断面を有し、ここで、アスペクト比は、プロセスチャネルの幅と高さの比である。
【0099】
特定の実施形態では、プロセスチャネル2の高さHは、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.5mm、より好ましくは少なくとも1mm、そして最も好ましくは少なくとも2mmであり、高さHは最大10mm、好ましくは最大7.5mm、より好ましくは最大5mm、そして最も好ましくは最大3mmである。そのような制限された高さHは、放射線がこのとき下壁4に浸透し、したがってプロセスチャネル2内の流体の全てを十分に照射することが可能であるので、以下に説明するように光化学にとって特に有利である。
【0100】
特定の実施形態では、プロセスチャネル2の長さLは、少なくとも1cm、好ましくは少なくとも5cm、より好ましくは少なくとも10cm、有利には少なくとも25cm、そして最も有利には少なくとも50cmであり、長さは最大10m、好ましくは最大5m、より好ましくは最大2m、そして最も好ましくは最大1mである。そのような長さの範囲は、プロセスチャネル2の長さに沿ってより低い圧力降下を有することが知られている低い正味流量と組み合わせて反応および/またはプロセスに応じて、長い滞留時間と、短い滞留時間の両方が実現可能であることを保証する。
【0101】
さらに、プロセスチャネル2の幅Wは、典型的には、所望される生産能力に基づいて決定され、すなわち、プロセスチャネル2の幅が広いほど、その内部空間は大きくなり、製品ストリームの体積が大きくなる。言い換えれば、プロセスチャネル2の幅Wは、サイズ範囲において数桁をカバーする。例えば、いくつかの実施形態では、幅Wは、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも1cm、より好ましくは少なくとも2cmおよび最大10m、好ましくは最大1m、より好ましくは最大50cm、そして最も好ましくは最大10cmであってよい。
【0102】
図6に示されるフロー反応装置アセンブリ1に示されるように、プロセスチャネル2の幅Wが増大されるとき、入口10および出口11の数も増加させることが推奨されることが理解されよう。入口10および出口11の数のそのような増加は、そうでない場合に(すなわち、幅広のプロセスチャネル2に、第1の端壁8および第2の端壁9のそれぞれ1つの中央に位置する単一の入口10および単一の出口11を設ける場合)、プロセスチャネル2の角の近くでデッドボリュームが発生し、これは必然的にフロー反応装置1の性能を低下させ、特に、早すぎる進行を伴う長いテールを有する滞留時間分布(RTD)をもたらすことになり、これは望ましいことではない。
【0103】
いくつかの実施形態では、隣接する入口10および/または出口11の間の距離は、最大10cm、好ましくは最大5cm、そしてより好ましくは最大2cmである。そのような短い距離は、入口10と出口11との間のデッドボリュームを回避するのに役立つ。
【0104】
いくつかの実施形態では、混合要素15は、少なくとも0.1の混合要素/cmの密度で、より好ましくは少なくとも1つの混合要素/cmの密度で、そして最も好ましくは少なくとも5つの混合要素/cmの密度で、また1cmあたり最大100の混合要素、より好ましくは1cmあたり最大50の混合要素、そして最も好ましくは1cmあたり最大10の混合要素の密度でプロセスチャネル2に設けられる。さらに、プロセスチャネル2は、一定の内部空間、すなわち、プロセスチャネル2内に配設された混合要素15のない空間を有する。いくつかの実施形態では、混合要素15は、内部空間の少なくとも5%、好ましくは内部空間の少なくとも10%、より好ましくは内部空間の少なくとも15%を占め、また内部空間の最大60%、好ましくは内部空間の最大50%、より好ましくは内部空間の最大40%、より好ましくは内部空間の最大30%、そして有利には内部空間の最大20%を占める。
【0105】
プロセスチャネル2内の混合要素15のそのような分散は、異なる反応および/またはプロセスのレイノルズ数の全範囲に対して所望される混合レベルを提供することを可能にすることが実験的に見い出された。
【0106】
さらに、特に非常に低い正味レイノルズ数、すなわち非常に低い正味流量において、隣接する混合要素15の間に小さな開口部を設けることが有利である。したがって、混合要素15が、隣接する混合要素15から少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.5mm、より好ましくは少なくとも1mm、そして最も好ましくは少なくとも1.5mmの最短距離だけ離れており、最短距離は、好ましくは8mm未満、より好ましくは5mm未満、有利には3mm未満、そしてより有利には2.5mm未満である場合に有益であることが見い出された。
【0107】
混合要素15は、様々な形状および/またはサイズで存在し得ることが容易に理解されよう。異なる形状の混合要素15のいくつかの例が図8A図8Jに示されている。特に、混合要素15は、長方形、多角形、ひし形、卵形、目に似た形状、楕円形、または円筒形であってよい。各形状は、プロセスチャネル2内で様々な配向で配置され得ることが容易に理解されよう。さらに、異なる形状の混合要素15を同一のプロセスチャネル2内で使用することができる。さらに、混合要素15はまた、穿孔されてよい、および/または中空であってもよい。
【0108】
さらに、混合要素15は、下壁4に対して垂直な表面を有し得るが、これらの表面はまた、図7図9Aおよび図9Bのように下壁4に対して傾けられてもよい。言い換えれば、混合要素15は、高さによって変化する断面積を有してよい。図9Aおよび図9Bに示されるように、それは典型的には流れの中で改善された上向きの混合をもたらすので、そのような変化もまた有利である。そのような垂直渦、すなわち少なくとも垂直流成分を有する渦は、懸濁液(触媒、試薬)を扱う場合、または重力による下壁2上での固体の沈降が最小化されるのでプロセスチャネル2から沈殿物を引っ張って移動させる場合、またはプロセスチャネル2を介して固体を運ぶのに有益であり得る。垂直渦の生成は、プロセスチャネル2の下部と比較した場合、プロセスチャネル2の上部での照射の実質的な違いに悩まされることが知られている光化学において特に有益である。プロセスチャネル2内の流体は、上から下に混合され、また逆もまた同様であるため、垂直混合は、照射の差による結果を軽減する。言い換えれば、上壁5および下壁4の近くのフィルムは、より頻繁にリフレッシュされる。これらの渦はまた、比較的高温の上部流体層もまた、以下に説明するように熱交換器の一部を形成し得る下壁4に移動されるので、熱伝達を助ける。
【0109】
好ましくは、混合要素15は、周期的パターン、すなわち、プロセスチャネルの長手方向3に沿った繰り返しパターンに設定される。さらに、混合要素15が、対称的に順序付けられた周期的パターンで設定される場合、すなわち、混合要素15がプロセスチャネル2の垂直の長手方向中心面に対してミラーリングされる場合に有利である。このようなパターンは典型的には、RTDを改善する繰り返しフローパターンをもたらす。
【0110】
図2に示されるように、プロセスチャネル2の側壁6、7は、流れを局所的に偏向させるように構成されたデフレクタ16を備えてよい。このようにして、局所的に偏向された流れは、隣接する混合要素15のために局所的に分割された流れと混ざり合うことになるので、側壁6、7での層流の発生は大部分回避される。図示の実施形態では、側壁6、7は周期的に繰り返される狭窄部を有するが、デフレクタ16は周期的である必要はないし、プロセスチャネル2の幅Wを局所的に収縮させる必要もないことが理解されよう。
【0111】
図1に示される実施形態では、フロー反応装置1はまた、プロセスチャネル2と直接接触する熱交換器17を備える。熱交換器17は、プロセスチャネル2に熱を加えたりプロセスチャネル2から熱を除去したりすることによって、プロセスチャネル2内の温度を制御し、維持するために使用される。熱交換器17は、例えば、熱流体の循環を介するなど、異なる原理で動作することができる。
【0112】
図1に示されるように、熱交換器17は、プロセスチャネル2の下壁4と直接接触する長方形のプレートを備える、すなわち、プレートは、プロセスチャネル2が取り付けられる熱制御された支持要素を形成する。下壁4を介してプロセスチャネル2に十分な熱が供給されたり、プロセスチャネル2から熱が除去されることを確実にするのに十分に高い熱伝導率を有する限り、プレートは、複数の材料から製造することができる。特に、プレートは、金属または金属合金(鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン、Monel(登録商標)、Hastelloy(登録商標)、Inconel(登録商標)、Incoloy(登録商標)、Durimet(登録商標)、銅、タンタル、アルミニウム、パラジウム、白金、金、ロジウム、イリジウムなど)、セラミック(シリコン、炭化ケイ素、Alなど)、ポリマー(PTFE、PVDFなど)、ガラスなどを含む材料から製造されてよい。以下は、プレートの製造に使用できる様々な材料の望ましい熱伝導率λの例であり、λが約200W/mKのアルミニウム、λ=400W/mKの銅、λが約100W/mKのブロンズ、λが約50W/mKの炭素鋼、λが約430W/mKの銀、λが約100W/mKの亜鉛、λが約200W/mKのシリコン、またはλが約300~500W/mKのSiCである。一般に、熱伝導率λは、少なくとも25W/mk、より好ましくは少なくとも75W/mk、最も好ましくは少なくとも150W/mk、そして有利には少なくとも200W/mkであることが好ましい。
【0113】
特に、冷却モードでは、冷却された流体は、金属プレート17内の1つまたは複数のチャネル(図示せず)に開放している入口19への管18を介して熱交換器17内にポンプで送られる。金属プレート17内のチャネルとプロセスチャネル2との間の熱接触により、プロセスチャネル2が冷却されている間、冷却された流体は加熱される。加熱された流体はその後、管21への出口20を介して金属プレート17を出て行く。管21はこのとき典型的には、加熱された流体を冷却し、かつ冷却された流体を再び管18に注入する別の熱交換器(図示せず)に接続されている。加熱モードでは、同じ原理が適用されるが、入口19に進入する流体は、今度はプロセスチャネル2内の流体よりも高温になる。入口19および出口20の役割はまた逆にされてもよいことが容易に理解されよう。言い換えれば、冷却された、または加熱された流体を出口20から挿入して、向流熱交換器を作成してもよい。
【0114】
熱をプロセスチャネル2に供給したり、プロセスチャネル2から除去したりする必要があるので、フロー反応装置1の下方の半分22によって形成される(図5を参照)下壁4が十分に高い熱伝導率を有する材料から製造される場合に有利である。特に、下半分22は、金属または金属合金(鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン、Monel(登録商標)、Hastelloy(登録商標)、Inconel(登録商標)、Incoloy(登録商標)、Durimet(登録商標)、銅、タンタル、アルミニウム、パラジウム、白金、金、ロジウム、イリジウムなど)、セラミック(シリコン、炭化ケイ素、三酸化二アルミニウムなど)、ポリマー(PTFE、PVDFなど)、ガラスなどを含む材料から製造されてよい。
【0115】
さらに、静的混合要素15が熱交換器17の一部を形成する場合、これは、プロセスチャネル2内の流体と熱交換器17との間の接触表面積を劇的に増大させるので、これもまた有利である。図1から図5に示される実施形態では、これは、混合要素15を下壁4と、すなわちフロー反応装置1の下方の半分22と一体式に形成することによって達成される。
【0116】
電気加熱素子またはペルチェ素子で動作する熱交換器など、他のタイプの熱交換器17が使用されてもよいことが理解されよう。さらに、他の熱交換器は当業者に知られており、本発明のフロー反応装置アセンブリ1と組み合わせて容易に適用することができる。
【0117】
さらに、熱交換器17は、冷却された、または加熱された流体を導入するために複数の入口19が設けられる図6に示されるように、フロー反応装置1の下方の半分22の中に統合されてもよく、下方の半分22はまた下壁4を含むことが理解されよう。出口20は、下半分22の反対側に位置するため、図6には示されていない。この場合、追加の熱制御された支持要素を有する必要がないので、そのような構成は好ましい。さらに、図6に示される実施形態とは反対に、混合要素15はまた、熱伝達面積および/または熱伝達速度を増大させるために、フロー反応装置1の下方の半分22と一体式に形成される場合もあることが容易に理解されよう。
【0118】
プロセスチャネル2の動作温度は典型的には、フロー反応装置1が使用されている反応および/またはプロセスに依存する。いくつかの実施形態では、動作温度は、少なくとも-100℃、好ましくは少なくとも-30℃、そしてより好ましくは少なくとも-20℃、また最大400℃、好ましくは最大200℃、そしてより好ましくは最大100℃である。
【0119】
いくつかの実施形態では、フロー反応装置1は、添付の図において少なくとも部分的に透明な上壁5によって提供されてもよい。言い換えれば、カバープレート23の1つまたは複数の部分は透明である。このようにして、フロー反応装置1は、光化学、すなわち、光開始重合などのトリガーとして照射を必要とする反応に使用することができる。
【0120】
さらに、フロー反応装置1は、カバープレート23がUVおよび可視スペクトルにおける光化学の対象波長に対して少なくとも部分的に透明である場合、光化学反応の選択のために照射源32(図3に示される)と組み合わせて使用することができる。照射源32は、発光ダイオード、エキサイマーランプ、金属蒸気ランプ、ガス放電ランプ、レーザー、OLEDS、蛍光ランプ、太陽光などを含んでよい。
【0121】
本明細書で使用される場合、「照射」という用語は、光化学に適した波長の電磁放射を意味することを意図している。典型的には、電磁放射の波長は100nm~1mである。
【0122】
光化学の場合、内部プロセスチャネル2の上部が遮られていない場合、すなわち、混合要素15が完全に上壁5まで延在していない場合に有利である。このようにして、混合要素15がもたらす影が縮小し、このことは、照射量が増加することを意味する。さらに、図9に示されるような混合要素15による、すなわち垂直方向に一定でない断面を有する混合要素15による垂直渦の生成は、照射源32に近い層の一定のリフレッシュ作用をもたらすので有利である。内部プロセスチャネル2のそのような遮るもののない上部は、
【0123】
最大でプロセスチャネル高さに等しい高さ、好ましくはプロセスチャネル高さHの99.5%の高さ、より好ましくはプロセスチャネル高さHの最大95%の高さ、そして最も好ましくはプロセスチャネルの高さHの最大90%の高さを有する混合要素15を使用することによって達成されてよい。さらに、プロセスチャネルの高さHよりわずかに低い混合要素15を有することはまた、混合要素15と上壁5との間の直接の接触を回避する。
【0124】
いくつかの実施形態では、照射源32、および/または照射源32とカバープレート23との間の領域、ならびにカバープレート23自体を冷却するように構成された少なくとも1つの冷却手段(図示せず)が設けられる。このようにして、照射源32は、その効率を高めるその所望される動作温度で作動されてよい。さらに、照射源32とカバープレート23との間の領域、またはカバープレート自体を冷却することは、プロセスチャネル2内の温度を制御するのにも役立つ。
【0125】
透明カバープレート23の追加の利点は、特に長い照射時間の間に効率の損失を引き起こす、および/または使用され得る使用可能な波長を制限するいくつかの既知のフロー反応装置の場合のように、照射源23からの放射線が熱油層を透過する必要がないことである。
【0126】
透明なカバープレート23の上部に、例えばシートの形態でスペクトルフィルタ(図示せず)を配置することができる。スペクトルフィルタは、フロー反応装置1が使用されている反応および/またはプロセスに応じて適切な波長を選択するために、ショートパスフィルタ、ロングパスフィルタ、バンドパスフィルタ、または干渉フィルタであってよい。さらに、照射源32の赤外線部分によるプロセスチャネル2内の流体の望ましくない加熱作用を最小限にするために、赤外線フィルタを適用することもできる。さらに、スペクトルフィルタはまた、ホットミラーまたはコールドミラーであってもよい。
【0127】
さらに、可能な波長(特に紫外線領域)のスペクトルを広げるために、透明カバープレート23の材料は、石英、溶融シリカ、Al(サファイア)、アロン、BaF、BK7ガラス、CaF、ゲルマニウム、KRS5、LiF、MgF、シリカガラス、ZnS(FLIR)、ZnSe、酸窒化アルミニウム(AlON)、MgAl(スピネル)、ポリマー材料(ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、環状オレフィンコポリマー(COC、Topas)、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、光吸収/発光材料、発光(ソーラー)コンセントレータなどであってよい。
【0128】
光化学用のフロー反応装置における既知の問題は、このプロセスが制御不能であり、フロー反応装置の性能を低下させるため、時間の経過とともにポリマー材料の透明度が低下することである。しかしながら、フロー反応装置1の単純な設計により、様々な透明なカバープレート23および/またはそれに適用される保護シートを容易に清掃および/または交換することができるので、この問題を軽減することができる。
【0129】
光化学反応は、照射による直接の活性化または光メディエータ(すなわち、光開始剤、光触媒または光増感剤)の使用によって開始することができる。光メディエータは、供給ストリーム中の固体粒子として、またはプロセスチャネル2の内部コーティングの一部として、供給ストリーム中に均一に存在することができる。光化学気液反応(例えば、一重項酸素の生成)の場合、光増感剤もまた、図13に関して以下に説明されるように半透膜36内に存在してよい。
【0130】
さらに、上記のように、内部コーティングもまた、下壁4からの反射光が光子のより効率的な使用をもたらすので、照射の反射を増大させ、したがってフロー反応装置1の性能を高めることができる。
【0131】
光化学反応の非限定的なリストには、光異性化、光再配列、光還元(例えば、CO、光酸化(例えば、フォトフェントン反応)、環化、[2+2]環化付加(例えば、パテルノーブチ)、[4+2]環化付加、[4+4]環化付加、1,3-双極環化付加、シグマトロピックシフト、保護基またはリンカーの光開裂、光ハロゲン化(光フッ素化、光塩素化、光臭素化、光ヨウ素化)、光スルホ塩素化、光スルホキシド化、光重合、光ニトロソ化、光脱炭酸、プレビタミンDの光合成、アゾ化合物の分解、ノーリッシュ型反応、バートン型反応、フォトレドックス反応、活性種(一重項酸素など)の光生成、アルキンの光(ホモ)二量化、光付加(例えば、チオール-エンカップリング)フォトトリ(またはジ)フルオロメチル化、パーフルオロアルキル化、光アルキル化、光ヒドロキシメチル化、光アシル化、光重水素化およびトリチエーション、脱水素天然の光酸化、アミンの光ベータ酸化、カルボニル化合物の光ベータ官能化、アミンの光アルファ官能化、アルデヒドの光アルファ官能化、エーテルのアシル化、二重結合への炭素付加、相乗的光触媒(金属、有機触媒および酵素による)、光クロスカップリング反応(炭素またはヘテロ原子)(sp3-sp3、sp3-sp2、sp2-sp2)、光カスケード反応、光アザ-ヘンリー反応、光脱ハロゲン化、光ハロゲン交換反応、およびATRA(原子移動ラジカル付加)が含まれる。
【0132】
圧力、温度、粘度、流量などのプロセスパラメータのホストに関する読み取り値を提供するために、1つまたは複数のセンサおよび/または分析ツールが、プロセスチャネル2内、その1つまたは複数の壁4、5、6、7、8、9内、入口(複数可)10および/または出口(複数可)11内あるいはその近くに統合され得ることが容易に理解されよう。
【0133】
さらに、監視ツールが、透明なカバープレート23(例えば、ラマン、IR、NIR、UV-VISなど)を通して動作することが可能であってもよい。溶融シリカまたは石英を使用してカバープレート23を製造することは、これらの材料が必要な波長領域内で半透明であるという利点を有する(例えば、ホウケイ酸、Pyrex(登録商標)、Vycor(登録商標)などの一般的な実験用ガラスの使用に対して)。これにより、フロー反応装置1の動作中に分光分析が可能になる。
【0134】
(非混和性の)液体と固体の組み合わせを含む多相反応および/またはプロセスに加えて、フロー反応装置1は、(溶解した)ガスを含む多相反応にも使用することができる。反応流体中に別々の気相が存在することは、気泡がその圧縮性のために、重なった振動流成分を減衰させるので推奨されていない。ただし、正圧下で供給ストリームを事前飽和させると、この減衰は大幅に回避される場合がある。
【0135】
図13は、気液反応を効率的に実行するための基本的なフロー反応装置アセンブリ1の修正形態を示す。具体的には、加圧ガス室33がカバープレート23の下に設けられ、ガス室33には、ガス入口34およびガス出口35が設けられる。ガス室33は、プロセスチャネル2の上壁5を形成し、プロセスチャネル2へのガス入口として機能するガス透過性膜36によってプロセスチャネル2内の流体から分離されている。このような構成により、事前飽和の必要性が軽減され、十分で制御されたガス供給での作動が可能になる。さらに、反応マトリックスには、プロセスチャネル2に沿ったガスの濃度勾配がない。いくつかの実施形態では、ガス透過性膜36は不活性であり、ポリフッ素化材料を含んでよい。
【0136】
ガスの供給は、過圧、半透膜36の性質、およびその孔径に依存するであろう。典型的なガスは、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素酸化物、トリフルオロメチルヨードなどである。
【0137】
また、プロセスチャネル2内の反応媒体の脱気は、追加のラスターまたはより剛性の高い膜36を使用し、かつ減圧を適用することによって実行可能である。このようにして、前処理ステップで望ましくないガス(例えば酸素)を反応媒体から除去することができる、またはガスからの除去(脱炭酸、窒素、エテンなど)が関与するプロセスで平衡をシフトすることができる。あるいは、不活性ガスの過圧を使用して、溶液から他のガスを除去してもよい。
【0138】
図10から図12に示されるように、本発明のフロー反応装置は、異なる目的を達成するために異なる構成で使用されてよい。
【0139】
最初の例として、図10は、単一の入口管12から分割されたそのそれぞれの入口管12a、12b、12cと、単一の出口管13に結合するそのそれぞれの13a、13b、13cとを有する3つのフロー反応装置1、1´、1´´の並列構成を示している。この並列構成は、プロセスチャネル2の幅をもはや増大させることができない場合、例えばフロー反応装置1の使用可能なスペースを超えた場合に生産能力を増大させるのに適している。
【0140】
3つのフロー反応装置1、1´、1´´がそれぞれ、単一の入口管12から分割されたそのそれぞれの入口管12a、12b、12cと、分離されたままのそのそれぞれの出口管13a、13b、13cとを有する2番目の例を図11に示す。このような構成は、フロー反応装置1、1´、1´´での様々な反応に使用されてよく、これらの様々な反応には、同一の供給ストリームが必要である。あるいは、同じプロセスをフロー反応装置1、1´、1´´で実行し、比較の目的で生成物ストリームを別々に維持することもできる。さらに、同じプロセスをフロー反応装置1、1´、1´´でわずかに異なるパラメータ(例えば、異なる混合要素、異なる温度、異なる触媒インレイなど)で実行し、生成物ストリームを使用して最適なパラメータを確認してもよい。
【0141】
図12は、出口管13を備えた入口管12を有する3つのフロー反応装置1、1´、1´´の直列構成を示しており、フロー反応装置1、1´、1´´は、接続管30、31によって接続されている。このような構成は、様々な理由のために使用されてよい。例えば、所望されるプロセスがまだ開発中である可能性があり、その場合、理想的な滞留時間が何であるかが不確かな場合がある。複数の反応装置を直列に配置することは、後の段階で生産に次いで使用され得る単一のより長いフロー反応装置と概ね等価である。あるいは、フロー反応装置1、1´、1´´は、単一の反応および/またはプロセスにおいて異なるステップを実行してもよく、例えば、反応装置1での第1の波長を使用する光化学反応、続いて反応装置1´での第2の波長を使用する光化学反応、続いて反応装置1´´での熱反応などである。さらに、直列構成では、熱硬化、混合、液-液抽出などの前処理または後処理工程を実行することも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A-j】
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13