(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電圧検出線および電圧検出線モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/569 20210101AFI20240613BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240613BHJP
H01M 50/583 20210101ALI20240613BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20240613BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240613BHJP
【FI】
H01M50/569
H01M10/48 P
H01M50/583
H01M50/591 101
H01M50/588
(21)【出願番号】P 2021516093
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2020016989
(87)【国際公開番号】W WO2020218223
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019083932
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】三原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】稲村 卓思
(72)【発明者】
【氏名】小島 康雅
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098038(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143160(WO,A1)
【文献】特開平08-190809(JP,A)
【文献】特開2017-084606(JP,A)
【文献】特開2016-152137(JP,A)
【文献】実開昭57-083050(JP,U)
【文献】特開2015-207393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-598
H01M 10/48
H01H 85/00-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線、および前記導線を被覆する絶縁フィルムを有し、電池の電圧を検出するための電圧検出線であって、
前記導線は、所定の電気抵抗値を有する低抵抗部と、前記低抵抗部よりも電気抵抗値が高く、当該導線に過電流が流れると溶断する高抵抗部と、を有し、
前記絶縁フィルムは、前記低抵抗部を覆い所定の
機械的強度
または耐熱強度を有する高強度部と、前記高抵抗部を覆い前記高強度部よりも
機械的強度
または耐熱強度が低
く、前記高抵抗部が溶断した際に切断される低強度部と、を有することを特徴とする電圧検出線。
【請求項2】
前記電圧検出線は、積層された複数の電池の電圧を検出するものであり、電池の積層方向に延びる第1領域と、前記積層方向と交わる方向に延びる第2領域と、を有し、
前記高抵抗部は、前記第2領域に配置される請求項1に記載の電圧検出線。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電圧検出線と、
前記電圧検出線を支持する支持プレートと、を備えることを特徴とする電圧検出線モジュール。
【請求項4】
前記支持プレートは、前記高抵抗部を下から支持する第1凸部を有する請求項3に記載の電圧検出線モジュール。
【請求項5】
前記第1凸部は、先端に凹部を有する請求項4に記載の電圧検出線モジュール。
【請求項6】
前記支持プレートは、前記高抵抗部に隣接する前記低抵抗部を下から支持する第2凸部を有する請求項3乃至5のいずれか1項に記載の電圧検出線モジュール。
【請求項7】
前記支持プレートは、一対の前記第2凸部を有し、
一対の前記第2凸部は、前記高抵抗部の両外側の前記低抵抗部を下から支持する請求項6に記載の電圧検出線モジュール。
【請求項8】
前記電圧検出線モジュールは、前記支持プレートに載置されて前記電圧検出線を覆うカバープレートを備え、
前記カバープレートは、前記高抵抗部に隣接する前記低抵抗部を前記支持プレートに向けて押す第3凸部を有する請求項3乃至7のいずれか1項に記載の電圧検出線モジュール。
【請求項9】
前記支持プレートは、前記高抵抗部に隣接する前記低抵抗部を下から支持する第2凸部を有し、
前記第2凸部と前記第3凸部とは、前記支持プレートが拡がる平面方向において互いにずれて配置され、前記第2凸部の先端は、前記第3凸部の先端よりも前記カバープレート側に突出している請求項8に記載の電圧検出線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検出線および電圧検出線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の高い出力電圧が要求される電源として、複数個の電池が電気的に接続された電池モジュールが知られている。電池モジュールにおいて、隣り合う電池はバスバーを介して電気的に接続されていた。また、例えば特許文献1に開示されるように、各バスバーには電圧検出線が取り付けられ、各電池間の電圧が検出されていた。
【0003】
電圧検出線の設けられた電池モジュールでは、電圧検出線どうしが短絡すると、これらの電圧検出線に接続された電池どうしが短絡するおそれがあった。これに対し、特許文献1では、電圧検出線に過電流が流れた際に溶断する電流制限素子を電圧検出線の途中に設けていた。過電流が流れた際に電流制限素子が溶断することで、電圧検出線における通電が遮断されるため、電圧検出線を介した電池間短絡を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、電流制限素子を有する電圧検出線について鋭意検討を重ねた結果、外部からの振動や電圧検出線の撓みあるいは撓みの開放等により、断線した電圧検出線が再び導通する可能性がゼロではないことを認識するに至った。電池モジュールの安全性を高める上では、断線した電圧検出線の再導通の可能性を少しでも下げることが望ましい。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、断線した電圧検出線の再導通を抑制するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、電圧検出線である。この電圧検出線は、導線、および導線を被覆する絶縁フィルムを有し、電池の電圧を検出するための電圧検出線であって、導線は、所定の電気抵抗値を有する低抵抗部と、低抵抗部よりも電気抵抗値が高く、当該導線に過電流が流れると溶断する高抵抗部と、を有し、絶縁フィルムは、低抵抗部を覆い所定の強度を有する高強度部と、高抵抗部を覆い高強度部よりも強度の低い低強度部と、を有する。
【0008】
本発明の他の態様は、電圧検出線モジュールである。この電圧検出線モジュールは、上記態様の電圧検出線と、電圧検出線を支持する支持プレートと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、断線した電圧検出線の再導通を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る電圧検出線が搭載される電池モジュールの分解斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、
図3のA-A線に沿った断面図である。
図4(B)は、
図3のB-B線に沿った断面図である。
【
図5】
図5(A)および
図5(B)は、実施の形態に係る電圧検出線モジュールの一部分の断面図である。
【
図6】変形例1に係る電圧検出線モジュールの一部分の断面図である。
【
図7】変形例2に係る電圧検出線モジュールの一部分の断面図である。
【
図8】変形例3に係る電池モジュールの一部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る電圧検出線が搭載される電池モジュールの分解斜視図である。なお、
図1では、出力端子22、バスバー42、電圧検出線46を簡略化している。電池モジュール1は、電池積層体2と、一対のエンドプレート4と、冷却プレート6と、熱伝導層8と、サイドセパレータ10と、拘束部材12と、支持プレート28と、電圧検出線46と、カバープレート60と、を備える。
【0014】
電池積層体2は、複数の電池14と、セル間セパレータ16と、を有する。各電池14は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。また、各電池14はいわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶18を有する。外装缶18の一面には図示しない略長方形状の開口が設けられ、この開口を介して外装缶18に電極体や電解液等が収容される。外装缶18の開口には、開口を塞ぐ封口板20が設けられる。
【0015】
封口板20には、長手方向の一端寄りに正極の出力端子22が配置され、他端寄りに負極の出力端子22が配置される。一対の出力端子22はそれぞれ、電極体を構成する正極板、負極板と電気的に接続される。以下では適宜、正極の出力端子22を正極端子22aと称し、負極の出力端子22を負極端子22bと称する。また、出力端子22の極性を区別する必要がない場合、正極端子22aと負極端子22bとをまとめて出力端子22と称する。
【0016】
外装缶18、封口板20および出力端子22は導電体であり、例えば金属製である。封口板20と外装缶18の開口とは、例えばレーザ溶接により接合される。各出力端子22は、封口板20に形成された貫通孔(図示せず)に挿通される。各出力端子22と各貫通孔との間には、絶縁性のシール部材(図示せず)が介在する。
【0017】
本実施の形態の説明では、便宜上、封口板20を電池14の上面、封口板20と対向する外装缶18の底面を電池14の下面とする。また、電池14は、上面および下面をつなぐ2つの主表面を有する。この主表面は、電池14が有する6つの面のうち面積の最も大きい面である。また、主表面は、上面および下面の長辺と接続される長側面である。上面、下面および2つの主表面を除いた残り2つの面は、電池14の側面とする。この側面は、上面および下面の短辺と接続される一対の短側面である。
【0018】
また、便宜上、電池積層体2において電池14の上面側の面を電池積層体2の上面とし、電池14の下面側の面を電池積層体2の下面とし、電池14の側面側の面を電池積層体2の側面とする。これらの方向および位置は、特に言及がない限り便宜上規定したものである。したがって、例えば、本発明において上面と規定された部分は、下面と規定された部分よりも必ず上方に位置することを意味するものではない。
【0019】
封口板20には、一対の出力端子22の間に弁部24が設けられる。弁部24は、安全弁とも呼ばれ、各電池14が電池内部のガスを噴出するための機構である。弁部24は、外装缶18の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。弁部24は、例えば封口板20の一部に設けられる、他部よりも厚さが薄い薄肉部と、この薄肉部の表面に形成される線状の溝とで構成される。この構成では、外装缶18の内圧が上昇すると、溝を起点に薄肉部が裂けることで開弁される。各電池14の弁部24は、後述する排気ダクト38に接続され、電池内部のガスは弁部24から排気ダクト38に排出される。
【0020】
また、各電池14は、絶縁フィルム26を有する。絶縁フィルム26は、例えば筒状のシュリンクチューブであり、外装缶18を内部に通した後に加熱される。これにより、絶縁フィルム26は収縮し、外装缶18の2つの主表面、2つの側面および底面を被覆する。絶縁フィルム26により、隣り合う電池14間、あるいは電池14とエンドプレート4や拘束部材12との間の短絡を抑制することができる。
【0021】
複数の電池14は、隣り合う電池14の主表面同士が対向するようにして所定の間隔で積層される。なお、「積層」は、任意の1方向に複数の部材を並べることを意味する。したがって、電池14の積層には、複数の電池14を水平に並べることも含まれる。本実施の形態では、電池14は水平に積層されている。したがって、電池14の積層方向Xは、水平に延びる方向である。以下では適宜、水平で且つ積層方向Xに垂直な方向を水平方向Yとし、積層方向Xおよび水平方向Yに対し垂直な方向を鉛直方向Zとする。
【0022】
また、各電池14は、出力端子22が同じ方向を向くように配置される。本実施の形態の各電池14は、出力端子22が鉛直方向上方を向くように配置される。また、各電池14は、隣接する電池14を直列に接続する場合、一方の電池14の正極端子22aと他方の電池14の負極端子22bとが隣り合うように積層される。また、隣接する電池14を並列に接続する場合、一方の電池14の正極端子22aと他方の電池14の正極端子22aとが隣り合うように積層される。
【0023】
セル間セパレータ16は、絶縁スペーサとも呼ばれ、例えば絶縁性を有する樹脂シートからなる。セル間セパレータ16を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の熱可塑性樹脂が例示される。セル間セパレータ16は、隣接する2つの電池14の間に配置されて、当該2つの電池14間を電気的に絶縁する。
【0024】
電池積層体2は、一対のエンドプレート4により電池14の積層方向Xに挟まれる。一対のエンドプレート4は、電池14の積層方向Xにおける電池積層体2の両端に配置される。一対のエンドプレート4は、積層方向Xにおける両端に位置する電池14と、外端セパレータ5を介して隣り合う。外端セパレータ5は、セル間セパレータ16と同じ樹脂材料で構成することができる。各エンドプレート4は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属で構成される金属板である。エンドプレート4と電池14との間に外端セパレータ5が介在することで両者が絶縁される。各エンドプレート4は、水平方向Yを向く2つの面に締結孔4aを有する。
【0025】
電池積層体2の上面には、支持プレート28が載置される。支持プレート28は、電圧検出線46を支持する板状の部材である。電圧検出線46は、電池14の電圧を検出するための部材である。本実施の形態の電圧検出線46は、積層された複数の電池14の電圧を検出する。
【0026】
支持プレート28は、電池積層体2の上面、つまり各電池14の弁部24が配置される面を覆う。支持プレート28は、各電池14の弁部24に対応する位置に、弁部24を露出させる複数の開口32を有する。複数の開口32は、電池積層体2の上面に沿って延びるベース板33に設けられる。また、支持プレート28は、各電池14から噴出したガスを一時的に貯留する排気ダクト38を有する。したがって、支持プレート28は、いわゆるダクトプレートとしても機能する。排気ダクト38は、電池14の積層方向Xに延びて各電池14の弁部24に接続される。各弁部24は、開口32を介して排気ダクト38に連通される。
【0027】
排気ダクト38は、複数の開口32の上方を覆う第1壁部34と、各開口32の側方を囲う一対の第2壁部36と、で画成される。一対の第2壁部36は、複数の開口32を挟んで水平方向Yに配列される。第1壁部34は、各弁部24と対向する。一対の第2壁部36は、ベース板33からカバープレート60に向けて突出し、排気ダクト38の両側面を構成する。第1壁部34は、一対の第2壁部36の上端に固定されて排気ダクト38の天面を構成する。
【0028】
また、支持プレート28は、各電池14の出力端子22に対応する位置に、出力端子22を露出させる開口40を有する。各開口40には、バスバー42が載置される。複数のバスバー42は、支持プレート28によって支持される。したがって、支持プレート28は、いわゆるバスバープレートとしても機能する。各開口40に載置されたバスバー42によって、隣り合う電池14の出力端子22どうしが電気的に接続される。
【0029】
本実施の形態の支持プレート28は、第1壁部34を除いてポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の樹脂で構成される。第1壁部34は、鉄やアルミニウム等の金属で構成される。また、一対の第2壁部36は、ベース板33と一体成形される。第1壁部34は、ねじ等の締結部材(図示せず)により一対の第2壁部36に固定される。
【0030】
バスバー42は、銅やアルミニウム等の金属で構成されるおおよそ帯状の部材である。バスバー42は、一方の端部が一方の電池14の出力端子22に接続され、他方の端部が他方の電池14の出力端子22に接続される。バスバー42と出力端子22とは、例えばレーザ溶接や超音波接合により接合される。バスバー42は、隣接する複数個の電池14における同極性の出力端子22どうしを並列接続して電池ブロックを形成し、さらに電池ブロックどうしを直列接続する場合もある。積層方向Xにおいて両端に位置する電池14の出力端子22に接続されるバスバー42は、外部接続端子44を有する。外部接続端子44は、外部負荷(図示せず)に接続される。
【0031】
支持プレート28に載置される電圧検出線46は、複数のバスバー42に電気的に接続されて各電池14の電圧を検出する。電圧検出線46は、複数の導線80(
図2参照)を有する。各導線80は、一端が各バスバー42に接続され、他端がコネクタ48に接続される。コネクタ48は、外部の電池ECU(図示せず)等に接続される。電池ECUは、各電池14の電圧等の検知、各電池14の充放電等を制御する。
【0032】
冷却プレート6は、積層方向Xおよび水平方向Yに延在する平板状であり、アルミニウム等の熱伝導性の高い材料で構成される。冷却プレート6は、電池積層体2に熱交換可能に接続されて各電池14を冷却する。電池積層体2は、下面が冷却プレート6側を向くようにして、冷却プレート6に載置される。冷却プレート6は、電池モジュール1の外部に熱交換可能に接続されてもよい。また、冷却プレート6は、水やエチレングリコール等の冷媒が流れる流路を内部に有してもよい。
【0033】
熱伝導層8は、電池積層体2と冷却プレート6との間に介在する絶縁性の部材である。熱伝導層8は、電池積層体2の底面全体を覆っている。熱伝導層8は、例えばアクリルゴムシートやシリコーンゴムシート等の、良好な熱伝導性を有する公知の樹脂シート等で構成することができる。また、熱伝導層8は、良好な熱伝導性および絶縁性を有する公知の接着剤、グリス等で構成されてもよい。なお、外装缶18が絶縁フィルム26等で十分に絶縁されている場合には、熱伝導層8は絶縁性を有しなくてもよい。
【0034】
サイドセパレータ10は、絶縁性を有し、拘束部材12と電池積層体2とを絶縁するための部材である。本実施の形態では、水平方向Yに一対のサイドセパレータ10が配列される。一対のサイドセパレータ10の間には、電池積層体2、一対のエンドプレート4、冷却プレート6および熱伝導層8が配置される。各サイドセパレータ10は、例えば絶縁性を有する樹脂からなる。サイドセパレータ10を構成する樹脂としては、セル間セパレータ16と同様の熱可塑性樹脂が例示される。
【0035】
本実施の形態のサイドセパレータ10は、第1部分50と、第2部分52と、第3部分53と、を有する。第1部分50は、矩形の平板状であり、電池積層体2の側面に沿って電池14の積層方向Xに延びる。第2部分52は、積層方向Xに延びる帯状であり、第1部分50の下辺から電池積層体2側に突出する。第3部分53は、積層方向Xに延びる帯状であり、第1部分50の上辺から電池積層体2側に突出する。第2部分52および第3部分53の間には、電池積層体2、冷却プレート6および熱伝導層8が配置される。
【0036】
拘束部材12は、バインドバーとも呼ばれ、電池14の積層方向Xに長い長尺状の部材である。本実施の形態では、水平方向Yに一対の拘束部材12が配列される。各拘束部材12は金属製である。拘束部材12を構成する金属としては、鉄やステンレス鋼等が例示される。一対の拘束部材12の間には、電池積層体2、一対のエンドプレート4、冷却プレート6、熱伝導層8および一対のサイドセパレータ10が配置される。
【0037】
本実施の形態の拘束部材12は、平面部54と、一対の腕部56と、を有する。平面部54は矩形状であり、電池積層体2の側面に沿って積層方向Xに延びる。一対の腕部56は、鉛直方向Zにおける平面部54の両側の端部から電池積層体2側に突出する。一対の腕部56の間には、電池積層体2、冷却プレート6、熱伝導層8およびサイドセパレータ10が配置される。
【0038】
平面部54における各エンドプレート4と対向する領域には、コンタクトプレート68が溶接等により固定される。コンタクトプレート68には、エンドプレート4の締結孔4aに対応する位置に貫通孔70が設けられる。また、平面部54は、コンタクトプレート68の貫通孔70に対応する位置に貫通孔58を有する。
【0039】
各拘束部材12の平面部54に一対のエンドプレート4が係合することで、複数の電池14が積層方向Xに挟み込まれる。具体的には、複数の電池14と複数のセル間セパレータ16とが交互に配列されて電池積層体2が形成され、電池積層体2が外端セパレータ5を介して一対のエンドプレート4で積層方向Xに挟まれる。また、電池積層体2の下面に熱伝導層8および冷却プレート6が配置される。この状態で、電池積層体2、一対のエンドプレート4、冷却プレート6および熱伝導層8が一対のサイドセパレータ10で水平方向Yに挟まれる。さらに、一対のサイドセパレータ10の外側から、一対の拘束部材12が全体を水平方向Yに挟み込む。
【0040】
一対のエンドプレート4と一対の拘束部材12とは、締結孔4a、貫通孔70および貫通孔58が重なり合うように、互いに位置合わせされる。そして、ねじ等の締結部材59が貫通孔58および貫通孔70に挿通され、締結孔4aに螺合される。これにより、一対のエンドプレート4と一対の拘束部材12とが固定される。一対のエンドプレート4と一対の拘束部材12とが係合されることで、複数の電池14は、積層方向Xにおいて締め付けられて拘束される。
【0041】
また、拘束部材12は、複数の電池14を積層方向Xに挟み込むとともに、電池積層体2、熱伝導層8および冷却プレート6をこれらの配列方向に挟み込む。具体的には、拘束部材12は一対の腕部56で電池積層体2、熱伝導層8および冷却プレート6を鉛直方向Zに挟み込む。つまり、拘束部材12は、複数の電池14を締結する機能と、電池積層体2と冷却プレート6とを締結する機能とを兼ね備えている。
【0042】
一対の拘束部材12が一対のエンドプレート4に固定された状態で、サイドセパレータ10の第1部分50は、電池積層体2の側面と拘束部材12の平面部54との間に介在する。これにより、各電池14の側面と平面部54とが電気的に絶縁される。サイドセパレータ10の第2部分52は、冷却プレート6と拘束部材12の下側の腕部56との間に介在する。これにより、冷却プレート6と下側の腕部56とが電気的に絶縁される。サイドセパレータ10の第3部分53は、電池積層体2の上面と拘束部材12の上側の腕部56との間に介在する。これにより、各電池14の上面と上側の腕部56とが電気的に絶縁される。
【0043】
一例として、これらの組み付けが完了した後に、電池積層体2に支持プレート28が載置される。支持プレート28は、一対のサイドセパレータ10の第3部分53が係合することで電池積層体2に対して固定される。そして、各電池14の出力端子22にバスバー42が載置される。また、支持プレート28に電圧検出線46が載置される。続いて、各バスバー42に電圧検出線46の導線80が電気的に接続される。また、各バスバー42が出力端子22に電気的に接続される。
【0044】
支持プレート28の上面には、カバープレート60が載置される。カバープレート60は、支持プレート28に載置されて電圧検出線46を覆う板状の部材である。本実施の形態のカバープレート60は、電池モジュール1の外郭の一部、具体的には電池モジュール1の上面を構成する、いわゆるトップカバーである。カバープレート60により、電池14の出力端子22や弁部24、バスバー42、電圧検出線46等への結露水や塵埃等の接触が抑制される。
【0045】
カバープレート60は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート
(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の絶縁性を有する樹脂で構成される。カバープレート60は、鉛直方向Zで外部接続端子44と重なる位置に絶縁カバー部62を有する。カバープレート60が支持プレート28に載置された状態で、外部接続端子44は絶縁カバー部62で覆われる。
【0046】
カバープレート60は、水平方向Yにおける両端部が支持プレート28に固定される。本実施の形態の支持プレート28は、水平方向Yにおける両端部に、積層方向Xに間隔をあけて複数の係合爪72を有する。また、カバープレート60は、電池積層体2の上面に沿って延びるベース板61における、鉛直方向Zから見て各係合爪72と重なる位置に係合孔74を有する。カバープレート60が支持プレート28に載置されると、各係合孔74に各係合爪72が挿入される。これにより、カバープレート60の水平方向Yにおける両端部がスナップフィットにより支持プレート28に固定される。支持プレート28と、電圧検出線46と、カバープレート60と、で電圧検出線モジュール47が構成される。
【0047】
図2は、電池モジュール1の平面図である。なお、
図2では、一部の電池14のみ、および一部の導線80のみを破線で図示している。また、サイドセパレータ10、拘束部材12およびカバープレート60の図示を省略している。
【0048】
電圧検出線46は、検出線本体76と、複数のタブ端子部78と、を備える。検出線本体76は、巨視的に電池14の積層方向Xに延びる幹部76aと、幹部76aから各バスバー42に向けて分岐する複数の枝部76bと、で構成される。幹部76aの端部はコネクタ48に接続され、各枝部76bの端部は各バスバー42の近傍まで延在する。
【0049】
また、検出線本体76は、各バスバー42に対応付けられた複数の導線80と、複数の導線80を被覆する絶縁フィルム82と、を有する。つまり、本実施の形態の電圧検出線46は、フレキシブルプリント配線基板(FPC)である。FPCで構成される電圧検出線46は、厚み方向が鉛直方向Zと平行になり、幅方向および長さ方向が積層方向Xおよび水平方向Yを含むXY平面と平行になるように姿勢が定められて、支持プレート28に載置される。複数の導線80は、銅などの導電性材料で構成される。絶縁フィルム82は、例えばポリイミド(PI)やポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂で構成される。各導線80は、一端がコネクタ48に接続され、他端が対応するバスバー42の近傍まで延在する。したがって、各導線80は、幹部76aから枝部76bにかけて延在する。
【0050】
例えば検出線本体76は、絶縁フィルム82の表面に金属箔を接着した後、金属箔をエッチングして配線パターン、すなわち導線80を形成し、導線80を絶縁フィルム82で被覆することで得られる。また、導線80を構成する材料をインクジェット等により絶縁フィルム82に塗布することで、絶縁フィルム82上に導線80を形成することもできる。
【0051】
各タブ端子部78は、帯状の金属部材であり、各導線80の端部と各バスバー42とを電気的に接続する。各タブ端子部78の一方の端部はバスバー42上に載置され、例えばレーザ溶接や超音波接合によってバスバー42に接合される。各タブ端子部78の他方の端部は、例えばはんだ付けによって導線80に接合される。これにより、各バスバー42とコネクタ48とが電気的に接続される。また、一部の導線80は、外部接続端子44とコネクタ48とを電気的に接続する。
【0052】
タブ端子部78は、バスバー42における積層方向Xの略中央部に接合される。あるいはタブ端子部78は、バスバー42における2つの電池14をまたぐ領域に接合される。これにより、各電池14の膨張収縮にともなうタブ端子部78およびバスバー42の接合部の変位量を小さくすることができる。このため、タブ端子部78とバスバー42との接続状態をより安定的に維持することができる。
【0053】
また、検出線本体76は、電池14の積層方向Xに延びる第1領域84と、積層方向Xと交わる方向に延びる第2領域86と、を有する。本実施の形態では第2領域86が幹部76aに設けられている。幹部76aは、複数の第1領域84と複数の第2領域86とが交互に接続された構造を有する。積層方向Xにおいて、各第2領域86は、隣り合う2つの枝部76bの間に配置されている。
【0054】
各電池14は、使用にともなって膨張、収縮する場合がある。各電池14が膨張、収縮すると、各電池14の出力端子22に固定されたバスバー42が積層方向Xに変位し得る。この場合、各バスバー42に固定された複数の枝部76bが相対的に積層方向Xに変位し得る。積層方向Xと交わる方向に延びる第2領域86は、積層方向Xに延びる第1領域84に比べて、枝部76bの変位に追従してより柔軟に変形することができる。具体的には、第2領域86が積層方向Xと交わる方向に延びるように構成されることで、検出線本体76に積層方向Xの負荷が加わった際に、第2領域86が曲げ変形あるいは剪断変形して、枝部76bの積層方向Xの変位を許容することができる。より効果的に枝部76bの変位に追従させるためには、
図2に例示するとおり、外形が曲線状の構造、言い換えればアーチ状の構造を第2領域86に含めることが好ましい。この構成では、検出線本体76に積層方向Xの負荷が加わった際に、第2領域86の両端が互いに離間するように第2領域86が変形する。したがって、各第2領域86は、積層方向Xにおいて自身を挟んで並ぶ2つの枝部76bの相対的な変位を吸収する変位吸収部として機能することができる。これにより、各バスバー42と電圧検出線46との電気的接続の安定性を高めることができる。
【0055】
図3は、第2領域86における導線80の断面図である。
図4(A)は、
図3のA-A線に沿った断面図である。
図4(B)は、
図3のB-B線に沿った断面図である。なお、
図3では、XY平面に対して平行な断面を図示している。導線80は、低抵抗部88と高抵抗部90とを有する。低抵抗部88は、高抵抗部90よりも電気抵抗値が低い部分である。高抵抗部90は、低抵抗部88よりも電気抵抗値が高い部分である。つまり、低抵抗部88は相対的に電気抵抗値が低く、高抵抗部90は相対的に電気抵抗値が高い。
【0056】
低抵抗部88は、導線80の延在方向、言い換えれば電流の通電方向と直交する断面積が相対的に大きい大断面積部で構成される。一方、高抵抗部90は、導線80の延在方向と直交する断面積が相対的に小さい小断面積部で構成される。本実施の形態では、低抵抗部88は相対的に幅A1(XY平面方向の寸法)が太く、高抵抗部90は相対的に幅A2が細い。また、低抵抗部88の厚みB1(鉛直方向Zの寸法)と高抵抗部90の厚みB2とは同じ大きさである。なお、低抵抗部88の厚みB1を相対的に大きくし、高抵抗部90の厚みB2を相対的に薄くすることによって、低抵抗部88の断面積を高抵抗部90の断面積よりも大きくしてもよい。高抵抗部90は、導線80に過電流が流れると優先的に溶断する。これにより、導線80を流れる過電流を直ちに遮断することができる。
【0057】
また、絶縁フィルム82は、高強度部92と低強度部94とを有する。高強度部92は、低抵抗部88を覆う。低強度部94は、高抵抗部90を覆う。高強度部92は相対的に強度が高く、低強度部94は相対的に強度が低い。「強度」とは、機械的強度あるいは耐熱性(耐熱強度)である。本実施の形態では、高強度部92における低抵抗部88の幅方向(XY平面方向)の被覆厚C1が、低強度部94における高抵抗部90の幅方向の被覆厚C2よりも大きい。被覆厚C2が被覆厚C1よりも小さいことで、低強度部94の強度が高強度部92の強度よりも弱められている。高強度部92における低抵抗部88の厚み方向(鉛直方向Z)の被覆厚D1と、低強度部94における高抵抗部90の厚み方向(鉛直方向Z)の被覆厚D2とは、同じ大きさである。
【0058】
なお、低強度部94の被覆厚D2を高強度部92の被覆厚D1よりも小さくすることによって、低強度部94の強度を高強度部92の強度よりも弱めてもよい。「被覆厚」は、絶縁フィルム82における導線80と接する内表面から反対側の外表面までの距離を意味し、電圧検出線46の厚み方向、幅方向、長さ方向のいずれの方向であるかを問わない。また、低強度部94の被覆厚D2を高強度部92の被覆厚D1よりも小さくする場合、低強度部94の剛性を高強度部92の剛性よりも低くすることができる。本実施形態の低強度部94は、検出線本体76の第2領域86に設けられているため、低強度部94の剛性を高強度部92の剛性よりも低くすることにより、第2領域86の曲げ変形や剪断変形を効果的に許容することができる。
【0059】
相対的に強度の低い低強度部94で高抵抗部90を覆うことで、高抵抗部90が溶断した際に、溶断箇所において絶縁フィルム82をより確実に切断することができる。これにより、切り離された導線80の一端側と他端側とを物理的に遠ざけることができるため、溶断した導線80が再び導通する可能性を低減することができる。以下では適宜、検出線本体76のうち高抵抗部90および低強度部94で構成される部分を溶断部96と称し、低抵抗部88および高強度部92で構成される部分を非溶断部98と称する。
【0060】
本実施の形態の高抵抗部90は、検出線本体76の第2領域86に配置される。高抵抗部90は、低抵抗部88に比べて断面積が小さいため、低抵抗部88に比べて変形しやすい。このため、高抵抗部90を第2領域86に配置することで、第2領域86をより変形させやすくすることができる。これにより、各バスバー42と電圧検出線46との電気的接続の安定性をより高めることができる。
【0061】
図5(A)および
図5(B)は、実施の形態に係る電圧検出線モジュール47の一部分の断面図である。
図5(A)は、溶断部96が接続されている状態を図示している。
図5
(B)は、溶断部96が溶断した状態を図示している。本実施の形態の支持プレート28は、第1凸部100を有する。第1凸部100は、支持プレート28のベース板33から鉛直方向上方に突出し、その先端に溶断部96が載置される。したがって、導線80の高抵抗部90は、第1凸部100によって下から支持される。
【0062】
第1凸部100によって溶断部96を支持することで、溶断部96が溶断した際に、切り離された検出線本体76の一端側と他端側とがそれぞれ自重により垂れ落ちる。このとき、検出線本体76の一端側と他端側とは、第1凸部100によって隔てられる。つまり、第1凸部100が衝立として機能する。これにより、溶断した導線80が再び導通することをより確実に抑制することができる。
【0063】
また、支持プレート28は、第2凸部102を有する。第2凸部102は、支持プレート28が拡がる平面方向、つまりXY平面方向において第1凸部100とずれて配置され、ベース板33から鉛直方向上方に突出する。第2凸部102は、その先端に溶断部96に隣接する非溶断部98が載置される。したがって、導線80における高抵抗部90に隣接する低抵抗部88は、第2凸部102によって下から支持される。本実施の形態の支持プレート28は一対の第2凸部102を有し、溶断部96の両外側の非溶断部98が下から支持されている。
【0064】
溶断部96に隣接する非溶断部98を第2凸部102によって支持することで、溶断部96が溶断した際に、切り離された検出線本体76の一端側と他端側との自重による落下をより確実に生じさせることができる。これにより、当該一端側と他端側とをより確実に遠ざけることができるため、溶断した導線80が再び導通することをより確実に抑制することができる。また、本実施の形態の第2凸部102は、第1凸部100よりも突出高さが低い。これにより、切り離された検出線本体76の一端側と他端側との自重による落下をより確実に生じさせることができる。
【0065】
また、本実施の形態のカバープレート60は、第3凸部104を有する。第3凸部104は、ベース板61から鉛直方向下方に突出する。第3凸部104の先端は、溶断部96に隣接する非溶断部98を支持プレート28に向けて押す。したがって、導線80における高抵抗部90に隣接する低抵抗部88は、第3凸部104によって支持プレート28に向けて押される。本実施の形態のカバープレート60は一対の第3凸部104を有し、溶断部96の両外側の非溶断部98が支持プレート28に向けて押されている。
【0066】
溶断部96に隣接する非溶断部98を第3凸部104によって鉛直方向下方に押すことで、溶断部96が溶断した際に、切り離された検出線本体76の一端側と他端側との落下をより確実に生じさせることができる。これにより、当該一端側と他端側とをより確実に遠ざけることができるため、溶断した導線80が再び導通することをより確実に抑制することができる。
【0067】
また、第2凸部102と第3凸部104とは、支持プレート28が拡がる平面方向において互いにずれて配置される。そして、第2凸部102の先端は、第3凸部104の先端よりもカバープレート60側に突出している。したがって、第3凸部104の先端は、第2凸部102の先端よりも支持プレート28側に突出している。このため、第2凸部102および第3凸部104は、支持プレート28およびカバープレート60が並ぶ鉛直方向Zと交わる方向から見て互いに重複する。これにより、溶断部96が溶断した際に導線80や絶縁フィルム82の破片が飛散することを抑制することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態に係る電圧検出線46は、導線80、および導線80を被覆する絶縁フィルム82を有する。導線80は、所定の電気抵抗値を有する低抵抗部88と、低抵抗部88よりも電気抵抗値が高く、当該導線80に過電流が流れると溶断する高抵抗部90と、を有する。絶縁フィルム82は、低抵抗部88を覆い所定の強度を有する高強度部92と、高抵抗部90を覆い高強度部92よりも強度の低い低強度部94と、を有する。これにより、高抵抗部90が溶断した際に、溶断箇所において絶縁フィルム82をより確実に切断することができる。この結果、切り離された導線80の一端側と他端側とを遠ざけて、溶断した導線80の再導通やアーク放電の発生を抑制することができる。よって、断線した電圧検出線46の再導通を抑制して、電池モジュール1の安全性を高めることができる。
【0069】
また、電圧検出線46は、電池14の積層方向Xに延びる第1領域84と、積層方向Xと交わる方向に延びる第2領域86と、を有する。そして、高抵抗部90は、第2領域86に配置される。これにより、各電池14の膨張等に起因して各バスバー42が変位した際に、第2領域86をより変形させやすくすることができる。この結果、各バスバー42と電圧検出線46との電気的接続の安定性を高めることができ、電池モジュール1の安全性をより高めることができる。
【0070】
また、本実施の形態の電圧検出線モジュール47は、電圧検出線46と、電圧検出線46を支持する支持プレート28と、を備える。そして、支持プレート28は、高抵抗部90を下から支持する第1凸部100を有する。第1凸部100によって高抵抗部90を支持することで、高抵抗部90が溶断した際に、切り離された導線80の一端側と他端側とをそれぞれ自重により落下させ、導線80の一端側と他端側とを第1凸部100によって隔離することができる。これにより、溶断した導線80の再導通やアーク放電の発生をより確実に抑制することができる。
【0071】
また、本実施の形態の支持プレート28は、高抵抗部90に隣接する低抵抗部88を下から支持する第2凸部102を有する。これにより、高抵抗部90が溶断した際に、切り離された導線80の一端側と他端側とをより確実に遠ざけることができる。よって、溶断した導線80の再導通やアーク放電の発生をより確実に抑制することができる。また、第2凸部102によって、溶断部96が溶断した際に導線80や絶縁フィルム82の破片が広範囲に飛散することを抑制することができる。
【0072】
また、本実施の形態の電圧検出線モジュール47は、支持プレート28に載置されて電圧検出線46を覆うカバープレート60を備える。そして、カバープレート60は、高抵抗部90に隣接する低抵抗部88を支持プレート28に向けて押す第3凸部104を有する。これにより、高抵抗部90が溶断した際に、切り離された導線80の一端側と他端側とをより確実に遠ざけることができる。よって、溶断した導線80の再導通やアーク放電の発生をより確実に抑制することができる。また、第3凸部104によって、溶断部96が溶断した際に導線80や絶縁フィルム82の破片が広範囲に飛散することを抑制することができる。
【0073】
また、本実施の形態において、第2凸部102と第3凸部104とは支持プレート28が拡がる平面方向において互いにずれて配置され、第2凸部102の先端は第3凸部104の先端よりもカバープレート60側に突出している。これにより、支持プレート28とカバープレート60とで挟まれる空間に、ラビリンス構造の通路部を形成することができる。この結果、溶断部96が溶断した際に生じる導線80や絶縁フィルム82の破片が広範囲に飛散することをより確実に抑制することができる。また、本実施の形態では、高抵抗部90を挟んで両側に一対の第2凸部102および一対の第3凸部104が配置されている。したがって、導線80や絶縁フィルム82の破片をより確実に溶断部96の近傍に留まらせることができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0075】
(変形例1)
図6は、変形例1に係る電圧検出線モジュール47の一部分の断面図である。なお、
図6ではカバープレート60の図示を省略している。変形例1に係る電圧検出線モジュール47において、第1凸部100は、その先端に凹部100aを有する。つまり、第1凸部100の先端の一部は、第1凸部100によって支持される溶断部96から離間する方向に凹んでいる。第1凸部100によって溶断部96が支持された状態において、第1凸部100の先端の一部と溶断部96とは凹部100aにおいて非接触の状態となる。これにより、溶断部96に生じる熱が第1凸部100を介して放散されることを抑制して、溶断部96をより確実に溶断させることができる。
【0076】
(変形例2)
図7は、変形例2に係る電圧検出線モジュール47の一部分の断面図である。なお、
図7ではカバープレート60の図示を省略している。実施の形態では、第1凸部100によって溶断部96を下から支えているが、特にこの構成に限定されない。例えば、変形例2では、一対の第2凸部102のみで検出線本体76を支持している。このような構成によっても、切り離された検出線本体76の一端側と他端側とを自重により落下させて一端側と他端側とを遠ざけることができる。また、変形例2では、検出線本体76が2つの溶断部96を有し、各溶断部96に隣接する非溶断部98が第2凸部102によって支持されている。
【0077】
(変形例3)
図8は、変形例3に係る電池モジュール1の一部分の平面図である。実施の形態では、検出線本体76の幹部76aに第2領域86が設けられているが、特にこの構成に限定されない。例えば、変形例3では、枝部76bに第2領域86が設けられている。変形例3の枝部76bは、電池14の積層方向Xに延びる第1領域84と、積層方向Xと交わる方向に延びる第2領域86と、を有する。このような構成においても、バスバー42の積層方向Xの変位に追従して第2領域86を変位させることができる。よって、各バスバー42と電圧検出線46との電気的接続の安定性を高めることができる。なお、枝部76bに第2領域86を設ける場合、必ずしも第1領域84を枝部76bに設ける必要はない。例えば、枝部76bが幹部76aから開口40に向かって直線状に突き出た部分のみを有し、この部分が第2領域86を構成してもよい。
【0078】
ただし、バスバー42の積層方向Xの変位に追従して第2領域86を変位させるためには、枝部76bに設けられる第2領域86が検出線本体76の幹部76aに対してスムーズに積層方向Xに変位できることが望ましい。これに対し、
図8に示されるように枝部76bに第1領域84を設け、この第1領域84の途中に曲線状の外形を有する第2領域86を設けた構造とすることで、枝部76bに設けられた第2領域86を幹部76aに対してスムーズに変位させることができる。したがって、第2領域86をバスバー42の積層方向Xの変位に効果的に追従させることができる。また、第2領域86は、幹部76aと枝部76bとの両方に設けてもよい。
【0079】
(その他)
実施の形態では第2凸部102と第3凸部104とを互いにずらして配置しているが、第2凸部102の先端と第3凸部104の先端とを互いに対向させ、2つの先端の間に検出線本体76を通してもよい。
【0080】
カバープレート60が鉛直方向下方、支持プレート28が鉛直方向上方に位置するように電池モジュール1の姿勢が定められる場合、カバープレート60が電圧検出線46の支持プレートとして機能し、支持プレート28がカバープレートとして機能することができる。この場合、カバープレート60に第1凸部100を設けることで、第1凸部100によって溶断部96を下から支持することができる。また、カバープレート60に設けられる第3凸部104が第2凸部102として機能し、支持プレート28に設けられる第2凸部102が第3凸部104として機能し得る。
【0081】
電池モジュール1が備える電池14の数は特に限定されない。エンドプレート4と拘束部材12との締結構造を含む、電池モジュール1の各部の構造は特に限定されない。電池14は、円筒状等であってもよい。
【0082】
なお、実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目1]
電池14と、
導線80および絶縁フィルム82を有し、電池14の電圧を検出するための電圧検出線46であって、導線80が所定の電気抵抗値を有する低抵抗部88と、低抵抗部88よりも電気抵抗値が高く導線80に過電流が流れると溶断する高抵抗部90と、を有し、絶縁フィルム82が低抵抗部88を覆い所定の強度を有する高強度部92と、高抵抗部90を覆い高強度部92よりも強度の低い低強度部94と、を有する電圧検出線46と、を備える電池モジュール。
【符号の説明】
【0083】
28 支持プレート、 46 電圧検出線、 47 電圧検出線モジュール、 60 カバープレート、 80 導線、 82 絶縁フィルム、 84 第1領域、 86 第2領域、 88 低抵抗部、 90 高抵抗部、 92 高強度部、 94 低強度部、
100 第1凸部、 102 第2凸部、 104 第3凸部。