IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワコムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240613BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G06F3/041 470
G06F3/041 522
G06F3/044 120
G06F3/041 422
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021528170
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023170
(87)【国際公開番号】W WO2020262036
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019120181
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】門脇 淳
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005291(JP,A)
【文献】特開2008-090623(JP,A)
【文献】特開2012-043394(JP,A)
【文献】特開2012-103761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列方向に沿って互いに離間しながら面状に配置される複数本の電極を含んで構成されるタッチセンサと、
前記複数本の電極から選択的に出力される正側信号と負側信号の差分を増幅して出力する差動増幅器と、
前記差動増幅器からの出力信号に基づいて前記タッチセンサがなすセンサ領域内のタッチ位置を検出する位置検出部と、
導電性材料からなり又は導電性材料を含む部品であって、平面視にて前記センサ領域と部分的に重なるように配置される導電性部品と、
を備え、
前記導電性部品は、前記配列方向の最も外側にある端点が、前記複数本の電極のうちいずれか1本の電極上に位置するように配置されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記複数本の電極は、
第1方向に沿って互いに離間しながら配置される複数本の第1電極と、
前記第1方向に交差する第2方向に沿って互いに離間しながら配置される複数本の第2電極と、
を含み、
前記導電性部品は、前記複数本の第1電極と前記複数本の第2電極のうちいずれか1本ずつの電極が交差する交差領域上に、前記端点が位置するように配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記導電性部品は、放熱板、熱伝導路、又はバッテリパックであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
平面視にて前記端点と重なる電極を端側電極と定義するとき、
前記導電性部品は、前記端側電極と重なる輪郭線の長さが10mm以上となるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、タッチセンサ及び位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タッチセンサの正側電極の信号と負側電極の信号の間の差分を増幅して出力する、いわゆる「差動増幅方式」の位置検出装置が開示されている。互いに平行な2本の電極からの信号の差分をとることで、同一方向に発生するコモンモードノイズを打ち消す効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-095701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器の内部には、タッチセンサの他に、導電性材料からなり又は導電性材料を含む部品(以下、導電性部品という)が実装されている。この導電性部品との電磁干渉が生じることで、タッチセンサの検出信号にコモンモードノイズが混入することがある。通常、この導電性部品は、タッチセンサがなすセンサ領域と比べて小さいサイズを有しており、平面視にてセンサ領域と部分的に重なるように配置される。このため、検出信号に含まれるノイズの大きさは、センサ領域内の位置に応じて異なる可能性がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1のような差動増幅方式では、正側電極の信号と負側電極の信号に混入するノイズの大きさが異なる場合、コモンモードノイズの相殺効果が得られず、増幅によってノイズの影響がより大きくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、ノイズの発生源となり得る導電性部品との関係を考慮しつつ、差動増幅方式によるノイズの相殺効果をより発揮可能な電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明における電子機器は、配列方向に沿って互いに離間しながら面状に配置される複数本の電極を含んで構成されるタッチセンサと、前記複数本の電極から選択的に出力される正側信号と負側信号の差分を増幅して出力する差動増幅器と、前記差動増幅器からの出力信号に基づいて前記タッチセンサがなすセンサ領域内のタッチ位置を検出する位置検出部と、導電性材料からなり又は導電性材料を含む部品であって、平面視にて前記センサ領域と部分的に重なるように配置される導電性部品と、を備え、前記導電性部品は、前記配列方向の最も外側にある端点が、前記複数本の電極のうちいずれか1本の電極上に位置するように配置される。
【0008】
第2の本発明におけるタッチセンサは、行方向及び列方向に配列されたマトリクス状の信号線に駆動電圧を印加して複数の画素を駆動することで、表示領域内に画像又は映像を表示可能な表示パネルとともに用いられるセンサであって、平面視にて前記表示領域と少なくとも部分的に重なるように配置され、矩形状に配置される複数本の電極を含んで構成され、前記複数本の電極は、第1方向に延びて設けられ、かつ該第1方向の直交方向に沿って互いに離間しながら配置される複数本の第1電極と、前記第1方向に交差する第2方向に延びて設けられ、かつ該前記第2方向の直交方向に沿って互いに離間しながら配置される複数本の第2電極と、を含み、前記第1方向及び前記第2方向のうちの少なくとも一方は、前記行方向及び前記列方向の両方に対して傾斜している。
【0009】
第3の本発明における位置検出装置は、第2の本発明におけるタッチセンサと、前記タッチセンサからの検出信号に基づいて前記タッチセンサがなすセンサ領域内のタッチ位置を検出する位置検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
第1の本発明によれば、ノイズの発生源となり得る導電性部品との関係を考慮しつつ、差動増幅方式によるノイズの相殺効果をより発揮することができる。
第2,第3の本発明によれば、表示パネルとの電子干渉に起因するコモンモードノイズがタッチセンサの検出信号に混入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態における電子機器の位置検出機能に関わる回路構成図である。
図2図1に示す電子機器の分解斜視図である。
図3図2に示すメイン基板、表示パネル及びタッチセンサの相対的位置関係を示す図である。
図4図3のA部拡大図である。
図5図3のB部拡大図である。
図6A図4の放熱板の別の構成を示す図である。
図6B図4の放熱板の別の構成を示す図である。
図7図4に対応する比較例を示す図である。
図8図4の配置関係による効果を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態における電子機器の位置検出機能に関わる回路構成図である。
図10図9に示す電子機器の分解斜視図である。
図11図10の表示パネルが備える駆動回路の構造を示す図である。
図12A】ライン反転駆動方式に関する模式図である。
図12B】ライン反転駆動方式に関する模式図である。
図13図9に示す第1電極の部分拡大図である。
図14図9及び図10に示すタッチセンサの平面図である。
図15A図14のタッチセンサによる第1の効果を説明するに際し、比較例を示す図である。
図15B図14のタッチセンサによる第1の効果を説明するに際し、実施例を示す図である。
図16A図14のタッチセンサによる第2の効果を説明するに際し、比較例を示す図である。
図16B図14のタッチセンサによる第2の効果を説明するに際し、実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明における電子機器、タッチセンサ及び位置検出装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲で各々の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態における電子機器について、図1図8を参照しながら説明する。
【0014】
<電子機器10の回路構成>
図1は、本発明の第1実施形態における電子機器10の位置検出機能に関わる回路構成図である。電子機器10は、例えば、タブレット型端末、スマートフォン、パーソナルコンピュータで構成される。ユーザは、電子ペン12を把持し、電子機器10のタッチ面にペン先を押し当てながら移動させることで、電子機器10に絵や文字を書き込むことができる。この電子ペン12は、例えば、アクティブ静電方式(AES)又は電磁誘導方式(EMR)のスタイラスである。
【0015】
電子機器10は、具体的には、電子ペン12やユーザの指などの導電体の接近を検出するタッチセンサ14と、タッチセンサ14を制御するための集積回路(IC:Integrated Circuit;以下、タッチIC16)と、タッチIC16と電気的に接続されるホストプロセッサ18と、を含んで構成される。
【0016】
タッチセンサ14は、表示パネル44(図2)に重ねて配置される静電容量方式のセンサである。タッチセンサ14は、相互容量方式のセンサであってもよいし、自己容量方式のセンサであってもよい。タッチセンサ14は、配列方向に沿って互いに離間しながら面状に配置される複数本の電極20を含んで構成される。電極20の材料は、酸化インジウムスズ(ITO)であってもよいし、銅、銀、金などの金属であってもよい。
【0017】
線状又は帯状の電極20は、X方向の位置(X座標)を検出するための第1電極21と、Y方向の位置(Y座標)を検出するための第2電極22と、を含む。第1電極21と第2電極22は、ガラス又は樹脂からなる絶縁性基板(不図示)の介在によってそれぞれ絶縁されている。複数本の第1電極21は、Y方向に延びて設けられ、かつX方向に沿って互いに離間しながら等間隔に配置されている。複数本の第2電極22は、X方向に延びて設けられ、かつY方向に沿って互いに離間しながら等間隔に配置されている。すなわち、本図に示すX方向,Y方向は、タッチセンサ14がなすセンサ領域As内において定義される「センサ座標系」のX軸,Y軸に相当する。この第1実施形態では、センサ座標系は、表示パネル44(図2)がなす表示領域内にて定義される「表示座標系」に一致している。
【0018】
タッチIC16は、X選択回路24と、Y選択回路26と、スイッチ28と、差動増幅器30と、バンドパスフィルタ(以下、BPフィルタ32という)と、検波回路34と、AD変換器36と、マイクロコントロールユニット(以下、MCU38という)を含んで構成される。
【0019】
X選択回路24は、複数本の第1電極21にそれぞれ接続されているマルチプレクサである。X選択回路24は、MCU38からの指令信号に応じて、複数本の第1電極21の中から2本の電極を選択し、それぞれの電極から2種類の信号(X正側信号及びX負側信号)を同時に出力する。Y選択回路26は、複数本の第2電極22にそれぞれ接続されているマルチプレクサである。Y選択回路26は、MCU38からの指令信号に応じて、複数本の第2電極22の中から2本の電極を選択し、それぞれの電極から2種類の信号(Y正側信号及びY負側信号)を同時に出力する。
【0020】
スイッチ28は、X選択回路24及びY選択回路26の出力側にそれぞれ接続されている。スイッチ28は、MCU38からの指令信号に応じて、いずれか一方の正側信号及び負側信号を択一的に出力する。差動増幅器30は、スイッチ28を通じて、複数本の電極20から選択的に出力される正側信号と負側信号の差分を増幅して出力する。
【0021】
BPフィルタ32は、電子ペン12からの出力信号に対応する周波数を中心とする所定の帯域幅を通過させるフィルタ回路である。検波回路34は、BPフィルタ32を通過した出力信号から検波信号を生成する回路である。AD変換器36は、アナログ信号をデジタル信号に変換する信号変換器である。
【0022】
MCU38は、AD変換器36から出力されたデジタル信号を処理し、センサ領域As内のタッチ位置を検出可能な装置である。MCU38は、図示しないメモリから位置検出プログラムを読み出して実行することで、電子ペン12の状態を検出する「ペン検出機能」や、ユーザの指などによるタッチを検出する「タッチ検出機能」を発揮する。
【0023】
ペン検出機能は、例えば、タッチセンサ14のスキャン機能(グローバルスキャン又はセクタスキャン)、ダウンリンク信号の受信・解析機能、電子ペン12の状態(例えば、位置、姿勢、筆圧)の推定機能、電子ペン12に対する指令を含むアップリンク信号の生成・送信機能を含む。また、タッチ検出機能は、例えば、タッチセンサ14のスキャン機能、センサ領域As内の検出マップ(検出レベルの二次元分布)の作成機能、検出マップ上の領域分類機能(例えば、指、手の平などの分類)を含む。
【0024】
ホストプロセッサ18は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)を含む処理演算装置によって構成される。ホストプロセッサ18は、図示しないメモリに格納されたプログラムを読み出して実行することで、デジタルインクの生成、画像信号の作成、データの送受信制御を含む様々な機能を実行可能である。
【0025】
<電子機器10の装置構成>
図2は、図1に示す電子機器10の分解斜視図である。図3は、図2に示すメイン基板42、表示パネル44及びタッチセンサ14の相対的位置関係を示す図である。この電子機器10は、背面側から順に、背面カバー40、メイン基板42、表示パネル44、タッチセンサ14、及び正面カバー46を重ねて構成される。本図の例では、タッチセンサ14は、表示パネル44に外側から取り付ける「外付け型」のセンサであるが、これに代えて表示パネル44と一体的に構成される「内蔵型」(さらに分類すると、オンセル型又はインセル型)のセンサであってもよい。
【0026】
背面カバー40及び正面カバー46は、電子機器10内の電子部品を収容する筐体をなす部材である。正面カバー46には、その主面に形成された開口の全面を覆うように、透光性が高い保護パネル48が設けられている。
【0027】
表示パネル44は、例えば、液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル、電子ペーパーなどによって構成される。表示パネル44は、行方向及び列方向に配列されたマトリクス状の信号線に駆動電圧を印加して複数の画素を駆動することで、表示領域内に画像又は映像を表示する。
【0028】
メイン基板42は、電子機器10を作動するための電気回路を構成する基板である。図3に示すように、メイン基板42の上には、上記したタッチIC16及びホストプロセッサ18の他に、コネクタ50や様々な電子部品52が配置されている。コネクタ50は、タッチセンサ14の端部に設けられたフレキシブルプリント回路基板(以下、FPC基板54)とタッチIC16を電気的に接続可能に構成される。電子部品52の例として、表示パネル44の駆動IC、メモリ、無線通信モジュール、電源回路、電子素子(例えば、コイル)などが挙げられる。
【0029】
ところで、プロセッサを含む電子部品は、内部温度又は周辺温度の上昇に伴って、処理性能が低下したり誤動作を行ったりする場合がある。この現象を抑制するために、電子機器10には、自機器の内部で発生する熱を放出するための放熱板又は熱伝導路が設けられることがある。本図の例では、ホストプロセッサ18及び電子部品52の上に、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などの導電性材料を含む放熱板56(導電性部品)が取り付けられている。
【0030】
<放熱板56の配置>
図4は、図3のA部拡大図であり、タッチセンサ14と放熱板56の間の相対的位置関係を示している。以下の説明では、複数本の第1電極21は、左側から順に、#1,#2,#3,#4と識別番号を付して区別される。また、図示の便宜上、タッチセンサ14を構成する複数本の電極20のうち第1電極21のみを表記し、第2電極22を省略している。
【0031】
図4下側の平面図に示す破線は、矩形状である放熱板56の輪郭線60に相当する。この輪郭線60のうちX方向の最も外側にある点を「端点62」とすると、この端点62は、「#2」の第1電極21上に位置している。以下、端点62の位置と重なる第1電極21を「端側電極64」という。この場合、「#1」の第1電極21は端側電極64よりも外側にある一方、「#3,#4」の第1電極21は端側電極64よりも内側にある。
【0032】
図4上側のグラフは、X座標(単位:mm)と重複面積S(単位:mm)の間の対応関係を示している。この「重複面積S」とは、各々の第1電極21と放熱板56の重なり部分の面積に相当する。このグラフから理解されるように、「#1」における重複面積Sが最小値(=0)となり、「#3,#4」における重複面積が最大値となる。ここで、「#2」における重複面積Sが最大値と最小値の間の値(つまり、中間値)である点に留意する。
【0033】
図5は、図3のB部拡大図であり、端点62の近傍における第1電極21、第2電極22及び放熱板56の間の相対的位置関係を示している。図示の便宜上、1つずつの第1電極21及び第2電極22のみを表記している。
【0034】
放熱板56は、長辺がX方向に平行となり、かつ短辺がY方向に平行となるように配置されている。この場合、端点62は、輪郭線60のうちX方向の最も外側の点であるとともに、Y方向の最も外側の点でもある。そして、この端点62は、複数本の第1電極21のうちの1つの電極(つまり、端側電極64)と、複数本の第2電極22のうちの1つの電極(つまり、端側電極66)が交差する交差領域68上に位置している。
【0035】
なお、放熱板56の配置又は形状は、図4及び図5に示す例に限定されない。例えば、図6Aに示すように、放熱板56は、タッチセンサ14のセンサ領域Asに対して傾いた状態で配置されてもよい。また、図6Bに示すように、放熱板56の輪郭線60は、直線成分のみならず曲線成分を含んでもよい。
【0036】
<電子機器10による作用・効果>
第1実施形態における電子機器10は以上のように構成される。続いて、この電子機器10による作用・効果について、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0037】
図7は、実施例である図4に対応する比較例を示す図であり、タッチセンサ14と放熱板56の間の相対的位置関係を示している。図7下側の平面図から理解されるように、輪郭線60上の端点62は、「#2,#3」の第1電極21同士の隙間に位置している。この場合、図7上側のグラフに示すように、「#1,#2」における重複面積Sが最小値(=0)となり、「#3,#4」における重複面積Sが最大値となる。ここで、重複面積Sが「#1,#2」の区間にて急激に変化する点に留意する。
【0038】
図8は、図4の配置関係による効果を示す図である。グラフの横軸はX座標(単位:mm)を示すとともに、グラフの縦軸はMCU38が取得する検出値(単位:なし)を示している。ここでは、電子ペン12が電子機器10のタッチ面(図2の保護パネル48)に接触していない「ホバー状態」であることを想定する。
【0039】
比較例(破線のグラフ)から理解されるように、放熱板56の両端の位置にて検出値のピークがそれぞれ発生する。この理由は、図7に示す重複面積Sが「#2,#3」の区間にて急激に変化するため、正側電極の信号と負側電極の信号に混入するコモンモードノイズの大きさに差異が生じ、差動増幅器30(図1)を通じてこの差異が増幅されるためと考えられる。
【0040】
一方、実施例(実線のグラフ)から理解されるように、放熱板56の両端の位置にて発生するピークの高さが大幅に抑制される。この理由は、図4に示す重複面積Sが「#2」の区間にて中間値をとることにより、重複面積Sの急激な変化が比較例の場合よりも緩和され、上記したコモンモードノイズの大きさの差分が相対的に小さくなるためと考えられる。
【0041】
特に、端側電極64と重なる輪郭線60の長さ(図4下側の太い破線で示す箇所)が10mm以上となるように放熱板56を配置することで、上記した変化の緩和効果がより顕著に現われる。また、端点62が、端側電極64,66の中心線に近い位置(例えば、端側電極64,66の幅をWと定義すると、中心線から±W/4以内の範囲)にある方が好ましい。
【0042】
なお、導電性部品は、上記した放熱板56や熱伝導路の他に、メイン基板42(図3)上に配置された様々な電子部品52であってもよいし、メイン基板42とは別のモジュール(例えば、バッテリパック)であってもよい。特に、輪郭線60が長くなるにつれてタッチセンサ14との電磁干渉を引き起こす可能性が高くなる点を考慮すると、導電性部品は、占有面積が相対的に大きい部品、例えば、放熱板56、熱伝導路、又はバッテリパックであることが好ましい。
【0043】
以上のように、電子機器10は、配列方向に沿って互いに離間しながら面状に配置される複数本の電極20を含んで構成されるタッチセンサ14と、複数本の電極20から選択的に出力される正側信号と負側信号の差分を増幅して出力する差動増幅器30と、差動増幅器30からの出力信号に基づいてタッチセンサ14がなすセンサ領域As内のタッチ位置を検出するMCU38(位置検出部)と、導電性材料からなり又は導電性材料を含む部品であって、平面視にてセンサ領域Asと部分的に重なるように配置される導電性部品(ここでは、放熱板56)と、を備える。そして、放熱板56は、配列方向の最も外側にある端点62が、複数本の電極20のうちいずれか1本の電極20上に位置するように配置される。
【0044】
このように、配列方向の最も外側にある端点62が、複数本の電極20のうちいずれか1本の電極20上に位置するように構成したので、各々の第1電極21と放熱板56の重なり部分の面積である重複面積Sが配列方向に沿って急激に変化することを緩和可能となり、正側電極の信号と負側電極の信号に混入するコモンモードノイズの大きさの差分を小さくすることができる。これにより、ノイズの発生源となり得る放熱板56との関係を考慮しつつ、差動増幅方式によるノイズの相殺効果がより発揮される。
【0045】
また、複数本の電極20は、X方向(第1方向)に沿って互いに離間しながら配置される複数本の第1電極21と、X方向に交差するY方向(第2方向)に沿って互いに離間しながら配置される複数本の第2電極22と、を含むとともに、放熱板56は、複数本の第1電極21と複数本の第2電極22のうちいずれか1本ずつの電極(端側電極64,66)が交差する交差領域68上に、端点62が位置するように配置されてもよい。これにより、第1電極21及び第2電極22の両方に対して上記したノイズの相殺効果が同時に発揮される。
【0046】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態における電子機器100について、図9図16Bを参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同様の構成又は機能については、同一の参照符号を付するとともに、その説明を省略する場合がある。
【0047】
<電子機器100の装置構成>
図9は、本発明の第2実施形態における電子機器100の位置検出機能に関わる回路構成図である。電子機器100は、第1実施形態(図1の電子機器10)の場合と同様に、例えば、タブレット型端末、スマートフォン、パーソナルコンピュータで構成される。
【0048】
電子機器100は、具体的には、第1実施形態(図1のタッチセンサ14)の場合とは構成が異なるタッチセンサ102と、タッチセンサ102を制御するためのタッチIC104と、タッチIC104と電気的に接続されるホストプロセッサ18と、を含んで構成される。ここで、タッチセンサ102及びタッチIC104は、電子機器100のタッチ位置を検出する位置検出装置106に相当する。
【0049】
タッチセンサ102は、表示パネル130(図10)に重ねて配置される静電容量方式(具体的には、相互容量方式又は自己容量方式)のセンサである。このタッチセンサ102は、配列方向に沿って互いに離間しながら面状に配置される複数本の電極110を含んで構成される。電極110の材料は、酸化インジウムスズ(ITO)であってもよいが、ここでは、銅、銀、金などの金属であるとする。
【0050】
本図に示すP方向,Q方向は、タッチセンサ102がなすセンサ領域As内において定義される「センサ座標系」のP軸,Q軸に相当する。この第2実施形態では、センサ座標系は、表示パネル130(図10)がなす表示領域内にて定義される「表示座標系」に一致しない点に留意する。
【0051】
電極110は、P方向(第2方向)の位置を検出するための第1電極111と、Q方向(第1方向)の位置を検出するための第2電極112と、を含む。複数本の第1電極111は、Q方向に延びて設けられ、かつQ方向の直交方向(つまり、P方向)に沿って互いに離間しながら等間隔に配置されている。複数本の第2電極112は、P方向に延びて設けられ、かつP方向の直交方向(すなわち、Q方向)に沿って互いに離間しながら等間隔に配置されている。
【0052】
タッチIC104は、P選択回路114と、Q選択回路116と、スイッチ118と、BPフィルタ32と、検波回路34と、AD変換器36と、MCU120と、を含んで構成される。なお、このタッチIC104には、第1実施形態の回路構成と同様に、差動増幅器30(図1)が設けられてもよい。
【0053】
P選択回路114は、複数本の第1電極111にそれぞれ接続されているマルチプレクサである。P選択回路114は、MCU120からの指令信号に応じて、複数本の第1電極111の中から1本の電極を選択し、選択された電極からP信号を順次出力する。Q選択回路116は、複数本の第2電極112にそれぞれ接続されているマルチプレクサである。Q選択回路116は、MCU120からの指令信号に応じて、複数本の第2電極112の中から1本の電極を選択し、選択された電極からQ信号を順次出力する。
【0054】
スイッチ118は、P選択回路114及びQ選択回路116の出力側にそれぞれ接続されている。スイッチ118は、MCU120からの指令信号に応じて、いずれか一方の信号を択一的に出力する。
【0055】
MCU120は、AD変換器36から出力されたデジタル信号を処理し、センサ領域As内のタッチ位置を検出可能な装置である。MCU120は、上記したペン検出機能又はタッチ検出機能によりセンサ座標系の位置を算出し、得られたP-Q座標値に対して座標変換を行うことで、表示座標系の位置(X-Y座標値)に変換する。この座標変換は、タッチセンサ102と表示パネル130の間の相対的位置関係に応じて一意に特定される。センサ座標系及び表示座標系がともに直交座標系である場合、この座標変換は、固定点を中心に角度θ[rad](ただし、0<θ<π/2)だけ回転させる2次元アフィン変換である。
【0056】
<電子機器100の装置構成>
図10は、図9に示す電子機器100の分解斜視図である。この電子機器100は、第1実施形態(図2の電子機器10)の場合と同様に、背面側から順に、背面カバー40、メイン基板42、表示パネル130、タッチセンサ102、及び正面カバー46を重ねて構成される。第1実施形態の場合と同様に、タッチセンサ102は、外付け型のセンサであってもよいし、内蔵型(オンセル型又はインセル型)のセンサであってもよい。
【0057】
表示パネル130は、例えば、液晶パネル、有機ELパネル、電子ペーパーなどによって構成される。表示パネル130は、行方向及び列方向に配列されたマトリクス状の信号線に駆動電圧を印加して複数の画素134を駆動することで、表示領域内に画像又は映像を表示する。
【0058】
図11は、図10の表示パネル130が備える駆動回路132の構造を示す図である。この駆動回路132は、行方向及び列方向に配列されたマトリクス状の信号線と、当該マトリクスの交差部に対応する複数の画素134と、を含んで構成される。マトリクス状の信号線は、Y方向に延びてX方向に等間隔で配置される複数本のソース信号線136と、X方向に延びてY方向に等間隔で配置される複数本のゲート信号線138と、からなる。
【0059】
各々の画素134は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、TFT140)及び画素電極142を含んで構成される。TFT140のソース端子には、画素134に対応するソース信号線136が接続されている。TFT140のゲート端子には、画素134に対応するゲート信号線138が接続されている。TFT140のドレイン端子には、画素134に対応する画素電極142が接続されている。
【0060】
駆動回路132は、マトリクス状の信号線に交流駆動電圧を印加する「フレーム反転方式」により表示パネル130の表示駆動を行う。例えば、図12Aの「行ライン反転方式」では、駆動回路132は、複数本のゲート信号線138に関して、互い違いにかつ正負を反転させながら駆動電圧を印加する。一方、図12Bの「列ライン反転方式」では、駆動回路132は、複数本のソース信号線136に関して、互い違いにかつ正負を反転させながら駆動電圧を印加する。
【0061】
<タッチセンサ102の構成>
図13は、図9に示す第1電極111の部分拡大図である。各々の第1電極111は、同一形状のメッシュ150がQ方向に隙間なく配列されたメッシュ構造の金属細線152,154からなる。一方の金属細線152はP方向に沿って延びるように、他方の金属細線154はP方向と交差する方向(交差角度は2θ)に沿って延びるようにそれぞれ配置される。本図から理解されるように、隣り合う2本ずつの金属細線152,154に囲まれることで、内角の1つが2θ[rad]である菱形状のメッシュ150が形成される。なお、メッシュ150の形状は、上記した菱形以外の他の四角形であってもよいし、あるいは三角形、六角形を含む多角形(いわゆるポリゴン)であってもよい。
【0062】
また、図示を省略しているが、各々の第2電極112(図9)は、同一形状のメッシュ150がP方向に隙間なく配列されたメッシュ構造の金属細線152,154からなる。つまり、第2電極112は、第1電極111と基本的には同じ形状を有し、第1電極111とは異なる方向に沿って配置されている。
【0063】
図14は、図9及び図10に示すタッチセンサ102の平面図である。タッチセンサ102は、上記した矩形状のセンサ領域Asの他に、ベゼル領域Abと、集約領域Aaと、をさらに備える。
【0064】
ベゼル領域Abは、センサ領域Asの周縁部全体を囲む額縁状の領域である。ベゼル領域Abには、複数本の電極110のそれぞれ一端に設けられた引き出し線156が配線されている。この引き出し線156は、タッチセンサ102とタッチIC104(図9の例では、P選択回路114及びQ選択回路116)を電気的に接続するための信号線である。なお、ベゼル領域Abのうち網点で示した部位は、第1電極111の引き出し線156が配線される箇所に相当する。一方、ベゼル領域Abのうち縦線のハッチングで示した部位は、第2電極112の引き出し線156が配線される箇所に相当する。
【0065】
集約領域Aaは、FPC基板54(図10)に対応する帯状の領域である。集約領域Aaには、複数本の引き出し線156が互いに離間しながら平行になるように配線されている。本図の例では、集約領域Aaはセンサ領域Asの左下隅部に設けられているが、これに代えて他の部位(例えば、長辺中央、短辺中央など)に設けられてもよい。
【0066】
<第1の効果>
第2実施形態における電子機器100は以上のように構成される。続いて、この電子機器100による作用・効果について、図1A図16Bを参照しながら説明する。
【0067】
図15A及び図15Bは、図14のタッチセンサ102による第1の効果を示す図である。具体的には、図15Aは「比較例」を、図15Bは「実施例」をそれぞれ示している。図示の便宜上、第1電極21(111)、第2電極22(112)、ソース信号線136、及びゲート信号線138をそれぞれ1本ずつ表記している。
【0068】
図15Aでは、第1実施形態のタッチセンサ14を用いた場合、すなわち、X方向がP方向に、Y方向がQ方向にそれぞれ一致する場合を想定する。このとき、第1電極21とソース信号線136は、互いに平行な位置関係になりやすい傾向がある。このため、ソース信号線136との電磁干渉が生じることで、タッチセンサ14の検出信号にコモンモードノイズが混入しやすくなる。なお、第2電極22とゲート信号線138の関係においても、上記と同様の傾向がみられる。
【0069】
図15Bでは、第2実施形態のタッチセンサ102を用いた場合、すなわち、X方向がP方向に、Y方向がQ方向にそれぞれ一致しない場合を想定する。このとき、第1電極111とソース信号線136は、常に「ねじれの位置」の関係にあるので、ソース信号線136との電磁干渉が起こりにくくなり、タッチセンサ14の検出信号に対するコモンモードノイズの混入が抑制される。なお、第2電極112とゲート信号線138の関係においても、上記と同様の傾向がみられる。
【0070】
以上のように、タッチセンサ102は、X方向(行方向)及びY方向(列方向)に配列されたマトリクス状の信号線(ソース信号線136,ゲート信号線138)に駆動電圧を印加して複数の画素134を駆動することで、表示領域内に画像又は映像を表示可能な表示パネル130とともに用いられるセンサである。このタッチセンサ102は、平面視にて表示領域と少なくとも部分的に重なるように配置され、矩形状に配置される複数本の電極110を含んで構成される。そして、複数本の電極110は、Q方向(第1方向)に延びて設けられ、その直交方向に沿って互いに離間しながら配置される複数本の第1電極111と、Q方向に交差するP方向(第2方向)に延びて設けられ、その直交方向に沿って互いに離間しながら配置される複数本の第2電極112と、を含み、P方向及びQ方向のうちの少なくとも一方は、X方向及びY方向の両方に対して傾斜している。
【0071】
このように、第1電極111が延びるQ方向及び第2電極112が延びるP方向のうち少なくとも一方が、X方向及びY方向の両方に対して傾斜するので、電極110とマトリクス状の信号線の間で常に「ねじれの位置」の関係を維持可能となり、表示パネル130との電子干渉に起因するコモンモードノイズがタッチセンサ102の検出信号に混入するのを抑制することができる。
【0072】
特に、X方向に延びるゲート信号線138に関して、互い違いにかつ正負を反転させながら駆動電圧を印加する「行ライン反転方式」(図12A参照)により、表示パネル130がフレーム毎の画像又は映像を表示する場合、P方向及びQ方向は、X方向に対してそれぞれ傾斜していることが好ましい。ゲート信号線138に対する駆動電圧の符号を空間的かつ時間的に周期変化させることで、コモンモードノイズの発生がさらに抑制される。
【0073】
同様に、Y方向に延びるソース信号線136に関して、互い違いにかつ正負を反転させながら駆動電圧を印加する「列ライン反転方式」(図12B参照)により、表示パネル130がフレーム毎の画像又は映像を表示する場合、P方向及びQ方向は、Y方向に対してそれぞれ傾斜していることが好ましい。ソース信号線136に対する駆動電圧の符号を空間的かつ時間的に周期変化させることで、コモンモードノイズの発生がさらに抑制される。
【0074】
<第2の効果>
このタッチセンサ102によれば、上記したコモンモードノイズの抑制効果とは別の効果も得られる。以下、タッチセンサ102による第2の効果について、図16A及び図16Bを参照しながら説明する。図16Aは第1実施形態のタッチセンサ14を用いる「比較例」を示すとともに、図16Bは第2実施形態のタッチセンサ102を用いる「実施例」をそれぞれ示している。
【0075】
例えば、集約領域Aaがセンサ領域Asの左下隅部に設けられ、かつ上側長辺に最も近い第2電極22,112における配線レイアウトを設計する場合を想定する。例えば、図16Aの「比較例」では、センサ領域Asの右上隅、左上隅、左下隅を経由するように配線されるので、特定の電極20における配線長L1が相対的に長くなり、その分だけ電気抵抗が大きくなってしまう。これに対して、図16Bの「実施例」では、センサ領域Asの右上隅、下中央、左下隅を経由するように配線されるので、特定の電極110における配線長L2が相対的に短くなり、その分だけ電気抵抗が小さくなる。
【0076】
このように、タッチセンサ102及びMCU120が複数本の引き出し線156により接続される場合、センサ領域Asの隣り合う2辺(つまり、長辺及び短辺)を架け渡す電極110には、MCU120に近い側の端部に引き出し線156が設けられてもよい。これにより、センサ領域Asの周縁に沿って配線する場合と比べて、特定の電極110における配線長を短くしやすくなる。
【0077】
また、このタッチセンサ102には、隣り合う2辺を架け渡す電極110の他にも、対向する2辺(つまり、長辺同士又は短辺同士)を架け渡す電極110も混在し得る。その分だけ、どちらの辺側に引き出し線156を設けるかに関する選択肢が増える。これにより、第1実施形態のタッチセンサ14(図1)と比べて、引き出し線156の配置に関する設計の自由度が高くなるという別の効果も得られる。
【0078】
[符号の説明]
10,100‥電子機器、12‥電子ペン、14,102‥タッチセンサ、16‥タッチIC、20,110‥電極、21,111‥第1電極、22,112‥第2電極、30‥差動増幅器、38‥MCU(位置検出部)、44,130‥表示パネル、56‥放熱板(導電性部品)、60‥輪郭線、62‥端点、64,66‥端側電極、68‥交差領域、104‥タッチIC(位置検出部)、106‥位置検出装置、134‥画素、136‥ソース信号線、138‥ゲート信号線、150‥メッシュ、152,154‥金属細線、156‥引き出し線、Aa‥集約領域、Ab‥ベゼル領域、As‥センサ領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B