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特許7503551ポリエステルポリオール及びそれから作製されるポリウレタンポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ポリエステルポリオール及びそれから作製されるポリウレタンポリマー
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20240613BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240613BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240613BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J11/06
C09J7/38
C08G18/42 008
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021528338
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 IB2019059976
(87)【国際公開番号】W WO2020104963
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】62/770,387
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ル,ヨンシャン
(72)【発明者】
【氏名】アモス,デイビッド ティー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ゾン
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,エンカイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー,チャーリー シー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ユー
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-129024(JP,A)
【文献】特開平09-241487(JP,A)
【文献】特開平06-271413(JP,A)
【文献】特開2012-041456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08G 18/00- 18/47,63/00-64/42,71/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリエステルポリオールと、(ii)ポリイソシアネート成分と、の第2の反応生成物を含むポリウレタンポリマーを含む感圧接着剤組成物であって、
前記ポリエステルポリオールは、
(a)フタル酸、無水フタル酸、又はこれらの混合物である、成分Aと、
(b)二量体脂肪酸、二量体脂肪酸ジオール、又はこれらの混合物である、成分Bと、
(c)脂肪族ジオール、芳香族ジオール、又はこれらの混合物であり、2~10個の炭素原子と、任意に少なくとも1つの連結されたヘテロ原子と、を含み、前記ヘテロ原子が、O、S、及びNから選択される、成分Cと、
を含む反応混合物の第1の反応生成物を含む、感圧接着剤組成物
【請求項2】
前記二量体脂肪酸又は前記二量体脂肪酸ジオール中の炭素の平均数が、少なくとも20かつ45以下である、請求項1に記載の感圧接着剤組成物
【請求項3】
前記ポリエステルポリオールが、20重量%~60重量%の前記成分A、10重量%~60重量%の前記成分B、及び20重量%~60重量%の前記成分Cを含む反応混合物から誘導される、請求項1又は2に記載の感圧接着剤組成物
【請求項4】
前記第1の反応生成物が、25重量%以下の第2の脂肪族又は芳香族ジオールを更に含む反応混合物から誘導され、前記第2の脂肪族又は芳香族ジオールが、エチレングリコール、10個を超える炭素原子を有する脂肪族ジオール、又は10個を超える炭素原子を有する芳香族ジオールから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物
【請求項5】
前記第1の反応生成物が、25重量%以下の第2の二酸を更に含む反応混合物から誘導される、請求項1~4のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物
【請求項6】
前記ポリイソシアネート成分が、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、又はこれらの混合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物
【請求項7】
前記第2の反応生成物が、55重量%~99重量%の前記ポリエステルポリオールを含む反応混合物から誘導される、請求項1~6のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物
【請求項8】
前記第2の反応生成物が、官能性酸を更に含む、請求項のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物
【請求項9】
前記ポリエステルポリオールが、10,000g/molを超え、かつ最大で100,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の圧接着剤組成物。
【請求項10】
0.1重量%~5重量%の感光性誘導体を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物。
【請求項11】
前記感圧接着剤組成物が、5℃~5℃の温度範囲にわたって1Hzの周波数で.4~.5のタンデルタ値を保持する、請求項1~10のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物。
【請求項12】
基材と、
前記基材の主表面上に配置された、請求項11のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物の層と、
を含む、積層テープ。
【請求項13】
第1の基材を提供することと、
前記第1の基材の表面を、請求項11のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物と接触させることと、
を含む、接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリエステルポリオールが開示される。一実施形態では、低分子量ポリエステルポリオールをポリイソシアネートと反応させてポリウレタンポリマーを形成し、このようなポリマーを使用して接着剤を形成することができる。別の実施形態では、より高い分子量のポリエステルポリオールを使用して接着剤を形成する。このような接着剤は、ダイカット接着剤物品において有利であり得る良好な適合性及び/又は寸法安定性を有することができる。
【発明の概要】
【0002】
ポリエステルポリオールは、ポリウレタンポリマー及びその接着剤と共に開示される。一実施形態では、耐化学薬品性であることに加えて、寸法制御及び/又は適合性も有する接着剤を特定することが望まれている。
【0003】
一実施形態では、
(a)フタル酸、無水フタル酸、又はこれらの混合物である、成分Aと、
(b)二量体脂肪酸、二量体脂肪酸ジオール、又はこれらの混合物である、成分Bと、
(c)2~10個の炭素原子と、O、S、及びNから選択される任意の連結されたヘテロ原子と、を含む脂肪族又は芳香族ジオールである、成分Cと、
の第1の反応生成物を含む、ポリエステルポリオールが開示される。
【0004】
別の実施形態では、ポリエステルポリオールとポリイソシアネート成分との反応生成物であるポリウレタンポリマーが開示される。
【0005】
更に別の実施形態では、ポリエステルポリオール及び/又はポリウレタンポリマーから誘導される感圧接着剤組成物が開示される。
【0006】
積層テープなどの物品、並びにかかる感圧接着剤組成物及び積層テープを用いた基材の接合方法も記載される。
【0007】
上記の本開示の概要は、各実施形態を説明することを意図したものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明にも記載される。その他の特徴、目的及び利点は、記載及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で用いる場合、
用語「a」、「an」及び「the」は、互換的に用いられ、1つ以上を意味し、
用語「及び/又は」は、述べられた事柄の一方又は両方が起こり得ることを示すために用いられ、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)並びに(A又はB)を含み、
「架橋」とは、予め形成した2つのポリマー鎖を、化学結合又は化学的な基を使用して連結することを指す。
「モノマー」は、重合を経てその後ポリマーの基本的構造の部分を形成することができる分子であり、及び
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート(CH=CHCOOR)構造若しくはメタクリレート(CH=CCHCOOR)構造のいずれか、又はその組合せを含む化合物を指す。
【0009】
更に本明細書では、端点による範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などを含む)。
【0010】
更に本明細書では、「少なくとも1つ」の記載は、1以上の全ての数を含む(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0011】
本明細書で用いる場合、「A、B及びCのうちの少なくとも1つを含む」は、単独の要素A、単独の要素B、単独の要素C、A及びB、A及びC、B及びC、並びに3つ全ての組み合わせを指す。
【0012】
ポリエステルポリオール
【0013】
本明細書に開示されるポリエステルポリオール組成物は、少なくとも3つの成分、すなわち成分A、成分B、及び成分Cの縮合生成物である。
【0014】
成分Aは、フタル酸、無水フタル酸、又はこれらの混合物である。本明細書で用いるフタル酸は、式C(COH)の芳香族ジカルボン酸を指し、オルト異性体、メタ異性体、及びパラ異性体(すなわち、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸)を含む。フタル酸は、MilliporeSigma,St.Louis,MOなどの供給元から市販されている。無水フタル酸は、フタル酸の無水物である。無水フタル酸は、MilliporeSigma and Stepan Company(Northfield,IL.)を含む多くの供給元から市販されており、任意の所望の形態(例えば、フレーク、溶融物)を使用することができる。フタル酸及び無水フタル酸の純度は、開示される方法にとって重要とは見なされない。しかしながら、好ましくは、フタル酸及び/又は無水フタル酸は、少なくとも95%純粋、又は更には少なくとも98%純粋である。
【0015】
一実施形態では、ポリエステルポリオールは、少なくとも20、25、又は更には30重量%の成分A及び最大で40、50、又は更には60重量%の成分Aから誘導される。
【0016】
成分Bは、二量体脂肪酸、二量体脂肪酸ジオール、又はこれらの混合物である。二量体脂肪酸(二量体脂肪酸又は二量体酸としても知られる)は、不飽和脂肪酸のオリゴマー化によって調製される混合物である。本明細書で使用される語句「脂肪酸」は、5~22個の炭素原子を含有し、末端カルボン酸基によって特徴付けられるアルキル基又はアルケニル基から構成される有機化合物を意味する。有用な脂肪酸は、「Fatty Acids in Industry:Processes,Properties,Derivatives,Applications」,Chapter 7,pp 153-175,Marcel Dekker,Inc.,1989に開示されている。いくつかの実施形態では、二量体脂肪酸は、オレイン酸又はトール油脂肪酸などの18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の二量体化によって形成され得る。二量体脂肪酸は、多くの場合、少なくとも部分的に不飽和であり、多くの場合、36個の炭素原子を含有する。二量体脂肪酸は、比較的高い分子量であってもよく、様々な比の様々な大きな又は比較的高い分子量の置換シクロヘキセンカルボン酸、主に炭素数36のジカルボン酸二量体を含む混合物から構成されてもよい。構成要素構造は、以下に示すように、非環式、環式(単環式若しくは二環式)又は芳香族であってもよい。
【化1】
【化2】
【化3】
【0017】
二量体酸は、オレイン酸、リノール酸、大豆酸、又はトール油酸などの不飽和単官能性カルボン酸を、それらのオレフィン性不飽和基を通して、酸性粘土などの触媒の存在下で縮合させることによって調製することができる。二量体酸(名目上C36の二塩基酸)における様々な構造の分布は、それらの製造に使用される不飽和酸に依存する。典型的には、オレイン酸は、約38%の非環、約56%の単環及び二環、並びに約6%の芳香族を含有するジカルボン酸二量体を与える。大豆酸は、約24%の非環、約58%の単環及び二環、並びに約18%の芳香族を含有するジカルボン酸二量体を与える。トール油酸は、約13%の非環、約75%の単環及び二環、並びに約12%の芳香族を含有するジカルボン酸二量体を与える。二量体化手順はまた、三量体の酸を生成する。市販の二量体酸生成物は、典型的には、ある範囲のジカルボン酸含量を生成するために蒸留によって精製される。有用な二量体酸は、少なくとも80%のジカルボン酸、より好ましくは90%のジカルボン酸含量、更により好ましくは少なくとも95%のジカルボン酸含量を含有する。特定の用途では、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第3,595,887号に開示されているように、不飽和の水素化を含む色低減技術によって二量体酸を更に精製することが有利であり得る。水素化二量体酸はまた、高温での酸化安定性の増加をもたらし得る。他の有用な二量体酸は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Organic Chemicals:Dimer Acids(ISBN 9780471238966),copyright 1999-2014,John Wiley and Sons,Inc.に開示されている。有用な二量体酸は、少なくとも80%のジカルボン酸を含有し、より好ましくは90%のジカルボン酸含量、更により好ましくは少なくとも95%のジカルボン酸含量である。
【0018】
代表的な市販のジカルボン二量体酸は、商品名EMPOL1008及びEMPOL1061(両方ともBASF,Florham Park,New Jersey製);PRIPOL 1006、PRIPOL 1009、PRIPOL 1013、PRIPOL 1017、PRIPOL 1025及びPRIPOL 2033(全て、Coroda Inc.,Edison,New Jersey製);Radiacid 0970、Radiacid 0971、Radiacid 0972、Radiacid 0975、Radiacid 0976、及びRadiacid 0977(Oleon,Ertvelde,Belgium製);並びにUNIDYME 10及びUNIDYME TI(Kraton Corp.,Savannah,GA製)で入手可能である。
【0019】
いくつかの実施形態では、ジカルボン酸二量体、例えば、非芳香族ジカルボン酸二量体の数平均分子量は、300g/mol~1400g/mol、300g/mol~1200g/mol、300g/mol~1000g/mol、又は更には300g/mol~800g/molであってもよい。いくつかの実施形態では、ジカルボン酸二量体、例えば、非芳香族ジカルボン二量体中の炭素原子の平均数は、少なくとも20、25、又は更には30個、及び最大で40、45、50、55、又は更には60個の炭素原子である。
【0020】
一実施形態では、ポリエステルポリオールは、少なくとも10、15、20、又は更には25重量%の成分B及び最大で30、40、50、又は更には60重量%の成分Bから誘導される。
【0021】
成分Cは、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、又はこれらの混合物であり、成分Cは、2~10個の炭素原子を有する。成分C、脂肪族ジオール又は芳香族ジオールは、任意に、O(すなわち、エーテル結合)、S(すなわち、チオエーテル結合)、及びN(すなわち、二級アミン)などの少なくとも1つの連結されたヘテロ原子を有してもよい。脂肪族ジオールは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の炭素原子と、少なくとも2つのヒドロキシ(-OH)基と、任意に少なくとも1つの連結されたヘテロ原子とを有する、直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和のものであってもよい。芳香族ジオールは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の炭素原子と、環上のオルト-、メタ-又はパラ-配向にある2つのヒドロキシ(-OH)基と、任意に少なくとも1つの連結されたヘテロ原子とを含む。芳香族ジオールは、2つ以上のヒドロキシ基を含んでもよい。好適な脂肪族及び芳香族ジオールは、成分A及びBと反応性である、少なくとも2つの水素原子を有する化合物である。例示的な脂肪族ジオールとしては、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及び200g/mol~600g/molの範囲内の数平均分子量を有するポリエチレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
一実施形態では、ポリエステルポリオールは、少なくとも20、25、30、又は更には35重量%の成分C及び最大で40、50、又は更には60重量%の成分Cから誘導される。
【0023】
以下に、無水フタル酸(A)の脂肪酸エステル(B)及び脂肪族ジオール(C)との例示的な反応スキームを示す。ジオールは、カルボン酸又はエステル基と縮合して水を失い、反応物を一緒に共有結合させ、ここで、mは繰り返し単位である。
【化4】
上記反応スキームは、脂肪酸エステルを開環無水フタル酸に結合させる脂肪族ジオールを示すが、実際には、また当該技術分野において既知であるように、脂肪酸エステル単位と開環無水フタル酸単位とは、ポリエステルポリオール分子中で、その間の脂肪族ジオール結合により一緒にランダムに結合されている。脂肪酸がジオール(エステルの代わりに)である場合、脂肪酸からのジオール基は無水フタル酸と縮合して、無水フタル酸脂肪酸ジオール結合を形成し得る。
【0024】
一実施形態では、ポリエステルジオールは、本質的に成分A、B及びCから誘導され、これは追加の反応性成分が添加されないか、又は得られるポリエステルポリオールの性能に影響を及ぼさない、非常に少量の追加の反応性成分が添加されるかのいずれかを意味する。
【0025】
一実施形態では、ポリエステルジオールは、成分A、B及びCに加えて、追加の反応性成分から誘導される。
【0026】
2~10個の炭素原子を有する脂肪族ジオール及び/又は芳香族ジオールに加えて、一実施形態では、ポリエステルポリオールは、第2の脂肪族及び/又は芳香族ジオールから誘導され、この第2の脂肪族又は芳香族ジオールは、少なくとも11個の炭素原子と、少なくとも2個のヒドロキシ基を含み、任意にO、S、及びNから選択される少なくとも1つの連結されたヘテロ原子とを含む。例示的な第2の脂肪族及び/又は芳香族ジオールとしては、3-メチル-4-プロピル-オクタン-2,6-ジオール、ヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、レゾルシノールビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、及びビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチル)エーテルが挙げられる。一実施形態では、ポリエステルポリオールは、少なくとも1、5、又は更には10重量%のこの第2の脂肪族及び/又は芳香族ジオール及び最大で15、20、又は更には25重量%のこの第2の脂肪族及び/又は芳香族ジオールから誘導される。
【0027】
2つの酸基を有する化合物を含み得る成分Aに加えて、第2の二酸を使用してポリエステルポリオールを生成するために使用することができる。例示的な第2の二酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、及びタプス酸が挙げられる。一実施形態では、ポリエステルポリオールは、少なくとも1、5、又は更には8重量%のこの第2の二酸及び最大で10、又は更には15重量%のこの第2の二酸から誘導される。
【0028】
一実施形態では、本明細書に開示されるポリエステルポリオールは、成分A、B及びCを同時に一緒に反応させることによって作製することができ、これらの成分(例えば、成分B又はC)は、成分Aの開環重合及び/又は成分Bの酸部分との反応によって、ジオールに重合される。別の実施形態では、例えば、成分Aの開環重合によって、又は成分Bのヒドロキシカルボン酸の重縮合によってα-ヒドロキシ-γ-カルボキシ末端ポリエステルを調製することも可能である。次いで、α-ヒドロキシ-γ-カルボキシ末端ポリエステルを、縮合反応によって成分Cと反応させて、本開示に従って使用するためのポリエステルジオールを得ることができる。
【0029】
典型的には、成分A、B及びC並びに任意の追加の成分の反応は、160℃以上の温度及び不活性環境で起こる。
【0030】
一実施形態では、溶媒を用いてもよい。例示的な溶媒としては、キシレン、及びナフタレンが挙げられる。本開示のポリエステルジオール反応生成物の調製には、特別な点はない。エステル化は、一般に、水セパレータの助けを借りて起こる。本開示のポリエステルジオール反応生成物が、1mgのKOH/g未満、又は更には0.5mgのKOH/g未満の酸価を有する場合、反応は中断される。ここでの酸価は、ASTM E222-17によって決定される。
【0031】
一実施形態では、得られるポリエステルポリオール反応生成物は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、15、10、5、0、-5、-10、-15、-20、-25又は更には-30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0032】
得られるポリエステルポリオールは、非晶質であってもよく、又はいくらかの結晶性を有してもよい。二量体酸は、ポリエステルポリオールの構造規則性を破壊し、それによって、得られるポリエステルポリオール中の結晶性を低減又は排除することができる。
【0033】
一実施形態では、得られるポリエステルポリオール反応生成物は、少なくとも1000、1500、2000、又は更には2500g/mol、及び最大で4000、5000、6000、8000、又は更には10,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する。これらのポリエステルポリオールは、更にポリイソシアネートと反応してポリウレタンを生成することができ、これは、以下に論じられるように、感圧接着剤として使用することができる。
【0034】
別の実施形態では、得られるポリエステルポリオール反応生成物は、例えば、少なくとも10000、20000、又は更には25000g/mol、及び最大で50000、75000、又は更には100,000g/molの数平均分子量(Mn)を有するより高い分子量を保有する。これらのポリエステルポリオールは、以下に論じられるように、感圧接着剤で使用することができる。
【0035】
ポリウレタン
【0036】
本明細書に開示されるポリエステルポリオールをポリイソシアネート成分と反応させて、ポリウレタンポリマーを形成することができる。
【0037】
ポリイソシアネート成分は、様々な多官能性イソシアネート化合物を含み得る。このような多官能性イソシアネート化合物の例としては、多官能性脂肪族イソシアネート化合物、多官能性脂肪族環状イソシアネート化合物、及び多官能性芳香族イソシアネート化合物が挙げられる。
【0038】
多官能性脂肪族イソシアネート化合物の例としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0039】
多官能性脂肪族環状イソシアネート化合物の例としては、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びバイオベースの多官能性脂肪族環状イソシアネート、例えば、BASF Ludwigshafen,Germanyから商品名「DDI 1410」で入手可能な2-ヘプチル-3,4-ビス(9-イソシアナトノニル)-1-ペンチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0040】
多官能性芳香族イソシアネート化合物の例としては、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、多官能性イソシアネートは、25℃で液体のポリイソシアネートを単独で含み、又は25℃で固体の、微量のポリイソシアネートとともに含む。他の実施形態では、例えばポリオールが脂肪族ポリオールであるとき、多官能性イソシアネートは25℃で固体である。
【0042】
いくつかの実施形態では、多官能性イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート化合物を含む。他の実施形態では、多官能性イソシアネート化合物は、例えば、1,4メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、m-テトラメチレンジイソシアネート(TMXDI)、又はこれらの混合物などのオルト-又はメタ-芳香族イソシアネート化合物を含む。
【0043】
一実施形態では、ポリウレタンポリマーは、少なくとも55、60、65、又は更には70重量%のポリエステルポリオール及び最大で75、80、85、90、95、又は更には99重量%のポリエステルポリオールから誘導される。
【0044】
一実施形態では、ポリウレタンポリマーは、少なくとも1、5、8、又は更には10重量%のポリイソシアネート成分及び最大で15、20、25、30、又は更には35重量%のポリイソシアネート成分から誘導される。
【0045】
一実施形態では、ポリエステルポリオールとイソシアネート成分との反応生成物は、官能性酸含有化合物を更に含む。このような官能性酸含有化合物は、式(HX)A及び/又は(HX)(A)で表され、式中、Aは、-COM、-OSOM、-SOM、-OPO(OM)、-PO(OM)(式中、Mは、H又はカチオンであり、mの価数を有し、mが、1、2、又は更には3である)であり、Xは、O、S、NH、又はNR(式中、Rが、1~10個又は更には1~4個の炭素原子を有するアルキレン基である)から選択される官能性酸であり、Rは、3の価数を有する有機連結基であり、Rは、4の価数を有する有機連結基であり、R及びRは、1~50個、1~30個、1~15個、又は更には1~7個の炭素原子を有し、任意に、1個以上の3級窒素、エーテル酸素、又はエステル酸素原子を有し、イソシアネート反応性水素含有基を含まない。いくつかの実施形態では、Aは-COMであり、XはO又はNHであり、及びR及び又はRは、1~7個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンである。例示的な金属イオン、Mとしては、ナトリウム、カリウム、及びカルシウムが挙げられる。例示的な官能性酸含有化合物としては、ジヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシスルホン酸、ジヒドロキシホスホン酸、及びそれらの塩[以下に記載のジメチロールプロピオン酸(DMPA)(又はGEO Specialty Chemicals,Inc.による、商品名「DMPAポリオールHA-0135」、「DMPAポリオールHA-0135LV2」、「DMPAポリオールHC-0123」、及び「DMPAポリオールBA-0132などのその誘導体)など]が挙げられる。
【化5】
【0046】
いくつかの実施形態では、ポリウレタン中の官能性酸の量は、ポリウレタン100g(100g PU)当たりの官能性酸基Aのミリモル数(mmol A)という観点で記載され得る。この観点から、ポリウレタンは、0.001~45mmolのA/100g PU、0.1~45mmolのA/100g PU、1~45mmolのA/100g PU、又は1~25mmolのA/100g PUを含み得る。ポリウレタン中に少量の酸官能基を組み込むと、接着剤特性に加え、材料の、例えば極性化学物質に対する耐化学薬品性が、(酸官能基を含まない本開示のポリウレタンと比較して)更に改善され得るものと考えられる。
【0047】
一実施形態では、ポリエステルポリオールとイソシアネート成分との反応生成物は、第2のポリオール、例えば親水性ポリオールを更に含む。
【0048】
官能性酸含有化合物及び第2のポリオールは、鎖延長剤及び化学架橋剤として機能し得る。一実施形態では、ポリエステルポリオールとイソシアネート成分との反応生成物は、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50重量%の第2のポリオール及び/又は官能性酸含有化合物から誘導される。
【0049】
いくつかの実施形態では、第2のポリオールは親水性重合単位を含む。このような親水性重合単位は、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、又は20の親水性-親油性バランス(HLB)を有するものとして特徴付けられてもよい。少量のこのような親水性基は、環境老化結果を改善することができ、すなわち、接着剤は、65℃及び90%の相対湿度で800時間の経時変化後、2%、1.5%、又は1%未満のヘイズを示す。いくつかの実施形態では、ポリウレタンは、少なくとも0.5、1.0、又は1.5重量%の重合親水性単位を含む。重合親水性単位の量は、典型的には、ポリウレタンの全重合単位の10、9、8、7、6、又は5重量%未満である。いくつかの実施形態では、ポリウレタンは、4、3.5、又は3重量%以下の重合親水性単位を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、重合親水性単位は、ポリエチレングリコールポリマーに由来する。ポリエチレングリコールポリマーは、ポリエチレングリコールホモポリマー、又はエチレングリコールとコモノマーとのコポリマー(例えば、プロピレンオキシド)であってもよい。コポリマーは、典型的には、少なくとも50、60、70、80、又は90重量%のエチレングリコールの重合単位を含む。
【0051】
1つの好適なポリエチレングリコールポリマーは、商品名「YMER N-120」でPerstorpから市販されている。このようなポリマーの構造は、以下のとおりである。
【化6】
このような材料は、一般に、水性ポリウレタン分散液用の非イオン性分散剤として利用される。しかしながら、本明細書に記載されるポリウレタンは、主に疎水性であり、したがって、IPA/水の耐化学薬品性によって証明されるように、ポリウレタン水溶性又は水分散性を付与するのに十分な濃度の親水性基を含まない。ポリエチレングリコールポリマーが2つのヒドロキシル基を含む末端基を有する場合、ポリマーは、得られるポリウレタンがペンダントポリエチレングリコールポリマー単位を含むようにポリマー主鎖に組み込むことができる。対照的に、両端に末端基を有するポリエチレングリコールポリマーは、ペンダントではなく、ポリマー主鎖中に存在するポリエチレングリコールポリマー単位をもたらす。
【0052】
他の市販のエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーは、商品名「PLURONIC」でBASFから入手可能である。
【0053】
いくつかの実施形態では、(例えば、ペンダント)重合親水性単位又はポリエチレングリコールポリマーは、少なくとも200g/モル、300g/モル、400g/モル、又は500g/モルの分子量を有する。いくつかの実施形態では、重合親水性単位又はポリエチレングリコールポリマーは、2000g/モル又は1500g/モル以下の分子量を有する。
【0054】
本開示のポリウレタンポリマーは、任意に、ポリウレタンの所望の寸法安定性、適合性、及び/又は耐化学薬品性を損なわない他の成分から誘導され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、芳香族ポリエステルポリオールは、水酸基当量(OH基)のNCOイソシアネート当量(NCO基)に対する比が約1:1となるよう、イソシアネート成分と反応する。得られるポリウレタンのヒドロキシル含量は、約0.5重量%以下である。
【0056】
他の実施形態では、ポリウレタンポリマーは、化学量論に過剰当量のポリイソシアネートを反応させることにより調製できる。NCOのOHに対するモル比は、典型的には、約1.3対1又は1.2対1又は1.1対1である。本実施形態では、NCO末端基は、典型的には多官能性ポリオールと更に反応する。好適な多官能性ポリオールは、例えば、分岐鎖アジペートグリコール、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びトリペンタエリスリトールなどの2つ以上のヒドロキシル基を含み得る。
【0057】
他の実施形態では、ポリウレタンポリマーは、化学量論に過剰当量のポリエステルポリオールを反応させることにより調製できる。OHのNCOに対するモル比は、典型的には、約1.3対1又は1.2対1又は1.1対1である。本実施形態では、OH末端基は、典型的には、多官能性ポリイソシアネートと更に反応する。好適な多官能性ポリイソシアネートは、2個以上のイソシアネート基を含むことができ、それには、例えば、BayerのDesmodur N-3300、Desmodur N-3390、及びDesmodur N-3400が挙げられる。
【0058】
ウレタン結合に加え、ポリウレタンは、当該技術分野で既知の追加の基を含有することができるが、但し、このような追加の基が、望ましい寸法適合性及び/又は耐化学薬品性を損なわないものであることを条件とする。一実施形態では、ポリウレタンは、(末端)シリル基及び/又はメタ(アクリレート)結合を含有しない。
【0059】
ポリエステルポリオール成分をイソシアネート成分と反応させる場合、反応温度は、選択されたそれぞれの反応物質及び選択された触媒により、典型的には約60℃~約90℃の範囲となる。反応時間は、典型的には約2時間~約48時間の範囲である。
【0060】
ポリウレタン組成物は、典型的には、当該技術分野で既知の触媒により調製される。触媒の量は、ポリウレタンの約0.5重量部以下の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、触媒の量は、ポリウレタンの約0.001~約0.05重量%の範囲である。有用な触媒の例としては、スズII及びIV塩[第一スズオクトエート及びジブチルスズジラウレートなど]、及びジブチルスズジアセテート3級アミン化合物[トリエチルアミン及びビス(ジメチルアミノエチル)エーテルなど]、モルホリン化合物[ベータ,ベータ’-ジモルホリノジエチルエーテルなど]、ビスマスカルボキシレート、亜鉛-ビスマスカルボキシレート、鉄(III)クロライド、カリウムオクトエート、カリウムアセテートからなる群より選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
ポリウレタンの粘度の調節には溶媒を使用できる。この目的で加えるのに有用な溶媒の例(典型的には揮発性有機化合物である)としては、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、アセトン)、3級アルコール、エーテル、エステル(例えば、エチルアセテート)、アミド、炭化水素、塩化炭化水素、クロロカーボン、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0062】
得られるポリウレタンポリマーは、典型的には、少なくとも10000、20000、30000、40000、又は更には50000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。分子量は、典型的には、最大100000、150000、又は更には200000g/molである。平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーなどの当該技術分野において既知の技術を使用して決定することができる。
【0063】
感圧接着剤
【0064】
一実施形態では、上記で開示されたポリウレタンポリマー及び/又は高分子量ポリエステルポリオールは、感圧接着剤組成物及びその物品に使用することができる。
【0065】
上記で開示されたポリウレタンポリマー及び/又は高分子量ポリエステルポリオールは、架橋されて、ポリマーの更に高い分子量及び改善された耐化学薬品性、改善された熱安定性並びに/又は誘電率の安定化を達成することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示の接着剤は、任意に、化学的架橋剤を含み得る。概して、任意の好適な化学的架橋剤を使用できる。例示的な化学的架橋剤としては、ビスアミド、エポキシ(例えば、Mitsubishi Gas Chemical Co.Inc,Japanから商品名「TETRAD-X」として入手可能なN,N,N’,-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン)、メラミン、多官能性アミン及びアジリジン(例えば、PolyAziridine,LLC,Medford,NJから商品名「PZ-28」として入手可能なプロピレンイミン三官能性ポリアジリジン)、ポリカルボジイミド、及び金属酸化物及び有機金属キレート剤(例えば、アルミニウムアセチルアセトネート)などのイオン性架橋剤などの共有架橋剤が挙げられる。
【0067】
ポリマー(例えば、ポリウレタンポリマー又はポリエステルポリオール)が、官能性酸含有化合物から調製され、それによって酸性基を更に含む場合、接着剤組成物は、Stahl,USA,Calhoun,GAから市販されているようなカルボジイミド(例えば、ポリカルボジイミド)架橋剤を更に含んでもよい。このようなカルボジイミド架橋剤及び他の酸反応性化合物は、酸性基を含むポリマーが存在しない場合であっても、酸捕捉剤として機能することができる。これらの反応は、カルボジイミドに対して(例えば、カルボン酸)酸基を付加して尿素結合を形成することを伴う。上記の他の化学的架橋剤は、酸捕捉剤としても機能し得る。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5重量%のカルボジイミド及び/又は他の酸反応性化合物を更に含む。カルボジイミド及び/又は他の酸反応性化合物の濃度は、典型的には、接着剤組成物の5、4、3、又は2重量%以下である。
【0068】
ポリウレタンポリマーは、高温及び高湿度条件下で安定であることが好ましい。しかしながら、ポリウレタンポリマーは、水との反応による化学的分解の影響を受けやすい。ポリウレタンポリマーの加水分解は、アルコール及び酸を生成することができる。酸は、加水分解プロセスを更に触媒して、化学分解プロセスを加速させることができる。酸反応性化合物、特にカルボジイミド(例えば、ポリカルボジイミド)及びエポキシ化合物を含むことにより、そのような化学的分解を低減することができる。この実施形態では、これらの材料は酸トラップとして特徴付けることができる。酸トラップは、酸を減少させるだけでなく、加水分解中に生成される酸基を再架橋することもできる。
【0069】
化学的架橋に代えて、又は化学的架橋に加えて、エチレン性不飽和基及び/又はマルチ-(メタ)アクリレート架橋剤を更に含む本開示のポリマー(すなわち、ポリウレタンポリマー及び/又はポリエステルポリオールポリマー)は、(光開始剤を添加して又は非添加で)、ポリマーをγ線、電子線、又は紫外線に暴露することによって架橋することもできる。この実施形態では、ポリマーは化学的架橋剤(又はその残基)を含まなくてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の接着剤は、上記のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は親水性多官能性(メタ)アクリレートモノマーなどの、0.1~2、3、4、5、6、7、8、9、又は10重量%のマルチ(メタ)アクリレート架橋剤を含む。架橋は、接着剤のゲル含有量を増加させることができる。例えば、(例えば、マルチ(メタ)アクリレート)架橋剤が存在しない場合、ゲル含有量は、5%~10%の範囲であってもよい。しかしながら、(例えば、マルチ(メタ)アクリレート架橋剤)が存在する場合、ゲル含有量は、典型的には、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%を超え、最大60%又は70%範囲である。
【0071】
いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、非水性有機溶媒に溶解させた、本明細書に記載のポリウレタンポリマーを含む。有機溶媒量は、典型的には約2重量%~98重量%の範囲である。「非水性」により、液体媒体が含む水が3、2、又は1重量%未満であることを意味する。
【0072】
ポリウレタンポリマー及び/又はポリエステルポリオールポリマーに加えて、感圧接着剤組成物は、任意に、PSA組成物の性能及び/又は特性に影響を与えるための1つ以上の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、粘着付与剤、接着促進剤、可塑剤、追加の粘着付与剤、架橋剤、UV安定剤、静電気防止剤、着色剤、抗酸化剤、殺真菌剤、殺菌剤、有機及び/又は無機フィラー粒子、例えば、(例えば、ヒュームド)シリカ及びガラスバブル、(例えば、化学的)発泡剤、チキソトロープ剤、耐衝撃助剤、難燃剤(例えば、ホウ酸亜鉛)などが挙げられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、感圧接着剤組成物は、接着力を調節するための粘着付与剤及び/又は可塑剤を含む。例示的な可塑剤としては、炭化水素油(例えば、芳香族、パラフィン系、又はナフテン系のもの)、炭化水素樹脂、ポリテルペン、ロジンエステル、フタル酸塩(例えば、テレフタレート)、リン酸エステル、リン酸塩(例えば、トリス(2-ブトキシエチル)ホスフェート)、二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエーテル(例えば、アルキルフェニルエーテル)、エポキシ樹脂、セバシン酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、トリメリット酸塩、ジベンゾエート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。粘着付与剤の例としては、ロジン及びそれらの誘導体(例えば、ロジンエステル);ポリテルペン及び芳香族変性ポリテルペン樹脂;クマロン-インデン樹脂;炭化水素樹脂、例えば、αピネン系樹脂、βピネン系樹脂、リモネン系樹脂、脂肪族炭化水素系樹脂、芳香族変性炭化水素系樹脂、又はこれらの組み合わせが挙げられる。非水素化粘着付与剤樹脂は、典型的には、より着色性があり、耐久性(すなわち、耐候性)が低い。(部分的又は完全)水素化粘着付与剤を使用してもよい。水素化粘着付与剤の例としては、例えば、水素化ロジンエステル、水素化酸、水素化芳香族炭化水素樹脂、水素化芳香族変性炭化水素系樹脂、水素化脂肪族炭化水素系樹脂、又はこれらの組み合わせが挙げられる。追加の合成粘着付与剤の例としては、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ポリ-t-ブチルスチレン、アクリル樹脂、又はこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、接着剤組成物の粘着付与剤及び/又は可塑剤の合計量は、典型的には、全接着剤組成物の固形分の50、40、30、20、15、10、又は5重量%以下である。他の実施形態では、感圧接着剤組成物は、粘着付与剤及び/又は可塑剤をほとんど又は全く(すなわち、ゼロ)含まない。この実施形態では、接着剤組成物は、4、3、2、1、0.5、0.1、又は0.05重量%以下で粘着付与剤及び/又は可塑剤を含む。
【0074】
感圧接着剤組成物が透明であることを望む場合、接着剤は、典型的には接着剤組成物の透明性を損なう恐れがある、100nmより大きい粒径を有するフィラーを含まない。本実施形態では、接着剤組成物のフィラーの合計量は、接着剤組成物の固形分の10、9、8、7、6、5、4、3、又は2重量%以下である。いくつかの有利な実施形態では、接着剤組成物は1、0.5、0.1、又は0.05重量%以下でフィラーを含む。しかしながら、他の実施形態では、感圧接着剤は、ヒュームドシリカなどの無機酸化物フィラーをより多量に含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、チタニア及びカーボンブラックを含む、顔料及び染料などの着色剤を含む。このような顔料及び染料の濃度は、全接着剤組成物の最大約20重量%の範囲とすることができる。
【0076】
抗酸化剤の例として、フェノール、亜リン酸塩、チオエステル、アミン、ポリマー型ヒンダードフェノール、4-エチルフェノールのコポリマー、ジシクロペンタジエンとブチレンとの反応生成物、又はこれらの組合せが挙げられる。更なる例としては、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチレン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、Ciba Specialty Chemicals Corp.,Tarrytown,NYから商品名「CIBA IRGANOX 1010」で販売されているフェノール系抗酸化剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
UV吸収剤などのUV安定剤は、光誘起分解の物理的及び化学的プロセスに介入することができる化学化合物である。例示的なUV吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。他の例示的なベンゾトリアゾールとしては、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-α-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾチアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。追加の例示的なUV吸収剤としては、2(-4,6-ジフェニル-1-3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ-フェノール、及びCiba Specialty Chemicals Corp.から商品名「CIBA TINUVIN 1577」及び「CIBA TINUVIN 900」で販売されているものが挙げられる。加えて、UV吸収剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)及び/又は抗酸化剤と組み合わせて使用することができる。例示的なHALSとしては、Ciba Specialty Chemicals Corp.Basel,Switzerlandから商品名「CIBA CHIMASSORB 944」及び「CIBA TINUVIN 123」で販売されているものが挙げられる。
【0078】
添加剤は、全感圧接着剤の重量に基づいて、0.5重量%~5重量%の量で存在してもよい。ある特定の添加剤は、低重量パーセントのものであってもよく、例えば、顔料は、高分子量ポリマー100部に基づいて、0.05重量%未満又は更には0.005重量%未満で添加されてもよい。
【0079】
一実施形態では、ポリウレタンの調製中に、1つ以上のヒドロキシ基及び1つ以上のエチレン性不飽和基を含む化合物が、感光性誘導体として利用される。ヒドロキシル基は、ポリイソシアネートと反応して、エチレン性不飽和基をポリウレタン中に組み込む。いくつかの実施形態では、単一のヒドロキシル基及び単一のエチレン性不飽和基を有する化合物、例えばヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を利用することができる。この実施形態では、イソシアネート基がポリウレタンポリマー主鎖に結合され、ジイソシアネートの反対側の末端部は、化合物のヒドロキシル基に結合し、末端エチレン性不飽和基をもたらす。他の実施形態では、化合物は、少なくとも2つのヒドロキシ基及び少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有し、例えば、ビスフェノールAグリセロレートジメタクリレート(BAGDM)である。この実施形態では、化合物はポリオール(すなわち、ジオール)として機能し、それによってポリウレタン主鎖に組み込まれる。エチレン性不飽和基は、ポリウレタン主鎖に対してペンダントである。
【0080】
1つ以上のヒドロキシ基及び1つ以上のエチレン性不飽和基を含む様々な化合物を、ポリウレタンの調製中に利用することができる。このような化合物は、脂肪族又は芳香族であり得る。Nagase ChemteX Corporation,Osaka,Japanから入手可能な他の代表的な化合物としては、例えば、DA-212として入手可能なエポキシアクリレート形態の1,6ヘキサンジオール、DA-214Lとして入手可能なエポキシアクリレート形態の1,4ヘキサンジオールが挙げられる。
【0081】
一実施形態では、感圧接着剤は、0.1重量%~5重量%のこれらの感光性誘導体のうちの少なくとも1つを含む。
【0082】
一実施形態では、感圧接着剤組成物は、良好な耐化学薬品性を有する。例えば、いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、オレイン酸及び/又は70%のイソプロピルアルコール水溶液中に70℃で72時間配置された際、基材から分離しないか、溶解又は膨潤しない。加えて、又は代替的に、いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、油(食用油又は指紋油など)中に70℃で72時間配置された際、その基材から分離しないか、溶解又は膨潤しない。加えて、又は代替的に、いくつかの実施形態では、感圧接着剤物品は、サンスクリーン(例えば、Amazonから入手可能な、Banana Boat製のSport Performance、SPF 30)中に70℃で72時間配置すると、その基材から分離しないか、溶解又は膨潤しない。
【0083】
本開示の感圧接着剤組成物は、室温未満のガラス転移温度(Tg)を有する。一実施形態では、感圧接着剤組成物は、示差走査熱量測定(DSC)又は動的機械熱分析(DMA)によって測定される、0、-5、-10、-20、-25、-30、又は更には-40℃未満のTgを有する。
【0084】
感圧接着剤として機能するために、接着剤は迅速な粘着性を有するべきである。いくつかの実施形態では、感圧接着剤組成物は、25℃及び1ヘルツの周波数で、300、250、又は更には200kPa以下の弾性率G’を有する。
【0085】
いくつかの実施形態では、感圧接着剤組成物は、動的機械分析(実施例において更に記載されるもの)により測定され得るものとして、25℃及び1ヘルツの周波数で、50、100、150、又は更には200kPaを超える貯蔵弾性率G’を有する。貯蔵弾性率は温度の上昇とともに低下する。いくつかの実施形態では、感圧接着剤組成物は、70℃及び1ヘルツの周波数で、少なくとも25、30、40、50、60、70、又は更には80kPaの貯蔵弾性率G’を有する。
【0086】
感圧接着剤組成物は、表面上の特徴部に適合するだけでなく、表面を湿らせるのに十分な流れを有するべきである。感圧接着剤のコンプライアンスは、接着剤が迅速に変形する能力であり、例えば、ディスプレイコンポーネントに見られるようなインク段差輪郭などの特徴部の鋭い縁部に適合する能力である。接着剤が流動する能力は、DMAを使用して測定することができる。感圧性接着剤は粘弾性材料である。比較的薄い接着剤(150ミクロン以下)で比較的高いインク段差を被覆することは、本明細書では、粘稠なバランス(G’’で捕捉された)対弾性バランス(G’で捕捉)のシフトを必要とし、DMA測定からのタンデルタ値は、接着剤の弾性成分(剪断貯蔵弾性率G’)に対する感圧接着剤の粘着性成分(剪断損失弾性率G’’)の比である。感圧接着剤のガラス転移温度を上回る温度では、より高いタンデルタ値は、接着剤の流動性が良好であることを示す。一実施形態では、本開示の感圧接着剤は、以下の試験方法に開示されるように測定したときに、室温で1、0.5、0.3未満のタンデルタを有し、60℃で少なくとも0.5、0.7、又は1のタンデルタを有する。
【0087】
後硬化性接着剤の採用は、最初に(最終硬化前に)より低い貯蔵弾性率を有し、特に高温/オートクレーブプロセスにおいて良好な流動を有することができる。これは、接着剤のコンプライアンスを著しく改善するであろう。積層後に、後硬化は、より良好な接着及び凝集強度のための感圧接着剤の弾性率及び架橋レベルを増加させるであろう。結果として、このような接着剤のタンデルタは、硬化後に著しく減少することになる。一実施形態では、未硬化の感圧接着剤は、約25℃~約85℃の温度範囲にわたって1Hzの周波数で約0.4~約1.5のタンデルタ値を保持する。一実施形態では、硬化感圧接着剤は、約25℃~約85℃の温度範囲にわたって1Hzの周波数で約0.4~約0.8のタンデルタ値を保持する。
【0088】
感圧接着剤は、対象となる基材に対して十分な接着性を有する。一実施形態では、本開示の感圧接着剤組成物は、周囲条件で24時間の放置後、300mm/分の剥離速度で、少なくとも1.30、1.40、1.50、又は更には1.60N/mmのステンレス鋼に対する180°剥離強度を有する。あるいは、又はそれに加えて、一実施形態では、本開示の感圧接着剤組成物は、周囲条件で24時間の放置後、60mm/分の剥離速度で、少なくとも3、5、10、又は更には15N/cmのフロートガラスに対する180°剥離強度を有する。
【0089】
光学アセンブリにおいて使用される場合、感圧接着剤は光学的に透明であるような光学用途に好適である必要がある。一実施形態では、460~720nmの波長にわたる感圧接着剤は、少なくとも90、又は更には95%の透過率を有する。例えば、感圧接着剤組成物は、厚さ1ミリメートル当たり、460nmで約85%を超える透過率、530nmで約90%を超える透過率、及び670nmで約90%を超える透過率を有することができる。これらの透過特性により、電磁スペクトルの可視領域全体にわたって均一な光透過率がもたらされ、これは、フルカラーディスプレイで色点を維持するのに重要である。ヘイズは、入射ビームから2.5°より大きく偏位する透過光の割合である。一実施形態では、光学的に透明な感圧接着剤組成物は、電磁スペクトルの可視領域(例えば、460~720nm)にわたって低パーセントのヘイズ、例えば4、2、1、又は更には0.5%のヘイズを有するべきである。一実施形態では、ヘイズ及び透過率は共に、例えばASTM-D 1003-92を使用して測定することができる。CIELAB色空間では、Lは明度を、aは赤/緑を、bは青/黄色を定義する。光学用途では、bパラメータは、CIE(International Commission on Illumination 1976 Color Space)で定義される青黄色の尺度であるため、b値が低いほど、より望ましいとして選択される。一実施形態では、本開示の感圧接着剤組成物は2、1、又は更には0.5未満のbを有する(支持体について補正されたとき)。加えて、光学用途では、感圧接着剤の層は、典型的には、実質的に透過的な基材の層と一致するか、又は密接に一致する屈折率を有する。例えば接着剤層は約1.4~約1.7の屈折率を有し得る。
【0090】
物品
【0091】
従来のコーティング技術を使用して、感圧接着剤組成物をバッキング上、又は剥離ライナー上にコーティングすることで、積層テープを形成できる。例えば、これらの組成物は、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティングなどの方法により適用できる。コーティングの厚さは、変更してもよい。組成物は、以降のコーティングに望ましい任意の濃度にされ得るものの、典型的には、ポリマー固形分が、有機溶媒中、少なくとも20重量%又は25重量%とされる。いくつかの実施形態では、コーティングは、約60重量%超までのポリマー固形分(例えば、ポリウレタンポリマー又は高分子量ポリエステルポリオール)を含む。望ましい濃度は、かかるコーティング組成物を更に希釈することにより、又は一部乾燥させることにより達成することもできる。コーティング厚さは、感圧接着剤層に望ましい厚さに応じて、様々に変更することができる。
【0092】
感圧接着剤層の厚さは、典型的には、少なくとも10、15、20、又は25ミクロン(1mil)から、最大で500ミクロン(20mil)とすることができる。いくつかの実施形態では、感圧接着剤層の厚さは、400ミクロン、300ミクロン、200ミクロン、又は100ミクロン以下である。感圧接着剤は、単層又は多層でコーティングすることができる。
【0093】
従来のコーティング技術を使用して、感圧接着剤組成物を様々な可撓性及び非可撓性バッキング材料上にコーティングして、片面コーティングされた又は両面コーティングされた感圧接着テープを調製することもできる。このテープには、剥離材料又は剥離ライナーを更に含ませることができる。例えば、片面テープの場合、接着剤が配置されている面と反対側のバッキング表面は、典型的には、好適な剥離材料によりコーティングされる。剥離材料は既知であり、例えば、シリコーン、ポリエチレン、ポリカーバメート、及びポリアクリル酸などの材料を含む。両面コーティングされたテープの場合、接着剤の第2の層は、バッキング表面とは反対の面に配置される。第2の層は、本明細書に記載のとおりのポリウレタン感圧接着剤も、又は異なる接着剤組成物も含み得る。
【0094】
可撓性基材は、本明細書において、テープバッキングとして従来から利用されている、又は任意の他の可撓性材料であってもよい、任意の材料と定義される。例としては、ポリマーフィルム、織布、又は不織布;金属箔、発泡体(例えば、ポリアクリル酸、ポリエチレン、ポリウレタン、ネオプレン)、及びこれらの組み合わせ(例えば、金属化ポリマーフィルム)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン(例えば、二軸配向フィルム)、ポリエチレン(例えば、高密度又は低密度フィルム)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)、ポリビニルブチラール、ポリイミド、ポリアミド、フルオロポリマー、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、及びエチルセルロースが挙げられる。織布又は不織布は、セルロース(例えば、ティッシュ)、綿、ナイロン、レーヨン、ガラス、及びセラミック材料などの合成材料又は天然材料の繊維又はフィラメントを含み得る。
【0095】
基材は、本明細書に記載の感圧接着剤又は積層テープにより接合され得る。基材は、バッキングについて記載したものと同じ材料を含み得る。
【0096】
ある接合方法は、第1の基材を提供することと、第1の基材を感圧接着剤(例えば、積層テープ)の表面に接触させることと、を含む。本実施形態では、感圧接着剤の反対面は典型的には剥離ライナーにより覆われている。
【0097】
他の実施形態では、方法は、感圧接着剤の反対面を第2の基材に接触させることを更に含む。第1及び第2の基材は、金属、無機材料、有機ポリマー材料、又はこれらの組み合わせなどの前述の様々な材料を含み得る。
【0098】
いくつかの接合方法では、基材、感圧接着剤、又はこれらの組み合わせを加熱し、貯蔵弾性率(G’)を低減させることにより、適合性を増加させることができる。基材及び/又は感圧接着剤を、最高で30、又は35、又は40、又は45、又は50、又は55、又は60、又は65、又は70℃の温度に加熱し得る。任意に、3kPa~5kPaの圧力が使用されてもよい。一実施形態では、基材及び/又は感圧接着剤を、ホットエアーガン又は任意の圧力のオートクレーブオーブンにより加熱する。
【0099】
本明細書に記載の感圧接着剤及び積層テープは、電子機器、電化製品、及び一般工業製品の領域での使用に好適である。いくつかの実施形態では、感圧接着剤及び積層テープは、家庭用電化製品、自動車、コンピューター(例えば、タブレット類)、及び各種ハンドヘルド機器(例えば、電話類)に組み込むことができる、(例えば、照光式)ディスプレイに使用できる。
【0100】
本開示の接着剤組成物を周囲温度(25℃)にて固体基材に積層して、良好な高温安定性/湿度安定性、及び耐化学薬品性を得ることができる。本開示の接着剤組成物の優れた油(例えば、オレイン酸)、サンスクリーン、調理油、指紋油、及びアルコールに対する耐性は、高温/多湿下及び化学的環境下で接着接合強度を維持することが重要視される自動車、航空宇宙産業、電子機器、及び装置市場などの各種用途に、魅力的なものにする。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の感圧接着剤及び積層テープは、携帯電話(スマートフォンを含む)、ウェアラブル(例えば、腕時計型)デバイス、カーナビゲーションシステム、グローバルポジショニングシステム、デプスファインダー、コンピューター用モニター、ノートブック及びタブレットコンピューターディスプレイなどの、液晶ディスプレイ(「LCD」)及び発光ダイオード(「LED」)ディスプレイといった、照光式ディスプレイデバイスの内部構成要素及び外部構成要素の接合に好適である。
【0102】
一実施形態では、本明細書に開示される感圧接着剤は、モバイルハンドヘルド、ネットブック、及びラップトップコンピュータを含む容量式タッチ技術用途で使用することができる。他のタッチ技術と比較して、容量式タッチは、非常に敏感な応答、並びにマルチタッチなどの特徴を可能にする。光学的に透明な接着剤(OCA)は、多くの場合、容量式タッチパネルアセンブリ内の接合目的(例えば、異なるディスプレイコンポーネント層の取り付け)に使用される。
【0103】
OCAが機械的接合を提供するだけでなく、輝度及びコントラストを低減する空気間隙を排除することによって、ディスプレイの光学品質を大幅に増大させることもできる。ディスプレイの光学性能は、内部反射面の数を最小化することによって改善することができ、したがって、ディスプレイ内の光学素子間の空気間隙の数を除去するか、又は少なくとも最小化することが望ましい場合がある。
【0104】
一実施形態では、本開示の感圧接着剤は、隆起した集積回路、インク段差、フレックスコネクタ、及び他の3次元特徴部を含み得る、ディスプレイコンポーネントの良好な濡れ(すなわち、気泡又は空気間隙なし)を提供することができる。このような濡れは、本開示の感圧接着剤によって達成され得、これは加熱時により容易に流れることができる。
【0105】
一実施形態では、製造中、感圧接着剤組成物は、多層シート又はウェブとして2つの基材の間に積層される。次に、その後の使用のために、より小さい単位を多層シート又はウェブから切断する(例えば、ダイカットする)。したがって、いくつかの実施形態では、感圧接着剤の、積層物品の切断縁部からのクリープ(又は漏出)が最小限に抑えられるように、感圧接着剤は良好な寸法安定性を有するべきであることが重要である。このような良好な寸法安定性は、本開示の感圧接着剤によって達成され得、これは、特に硬化後に、室温で高い弾性率(G’)を有し得る。
【0106】
本開示の例示的な実施形態としては、これらに限定されるものではないが、以下が挙げられる。
【0107】
実施形態1:
(a)フタル酸、無水フタル酸、又はこれらの混合物である、成分Aと、
(b)二量体脂肪酸、二量体脂肪酸ジオール、又はこれらの混合物である、成分Bと、
(c)脂肪族ジオール、芳香族ジオール、又はこれらの混合物であり、2~10個の炭素原子と、任意に少なくとも1つの連結されたヘテロ原子と、を含み、ヘテロ原子が、O、S、及びNから選択される、成分Cと、
の第1の反応生成物を含む、ポリエステルポリオール。
【0108】
実施形態2:二量体脂肪酸又は二量体脂肪酸ジオール中の炭素の平均数が、少なくとも20かつ45以下である、実施形態1に記載のポリエステルポリオール。
【0109】
実施形態3:20重量%~60重量%の成分A、10重量%~60重量%の成分B、及び20重量%~60重量%の成分Cから誘導される、実施形態1又は2に記載のポリエステルポリオール。
【0110】
実施形態4:成分Cが、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,8-オクタンジオールのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のポリエステルポリオール。
【0111】
実施形態5:第1の反応生成物が、25重量%以下の第2の脂肪族又は芳香族ジオールを更に含み、第2の脂肪族又は芳香族ジオールが、エチレングリコール、10個を超える炭素原子を有する脂肪族ジオール、又は10個を超える炭素原子を有する芳香族ジオールから選択される、実施形態1~4のいずれか1つに記載のポリエステルポリオール。
【0112】
実施形態6:第1の反応生成物が、25重量%以下の第2の二酸を更に含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のポリエステルポリオール。
【0113】
実施形態7:15℃未満のTgを有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載のポリエステルポリオール。
【0114】
実施形態8:ポリエステルポリオールが非結晶である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のポリエステルポリオール。
【0115】
実施形態9:ポリエステルポリオールが半結晶である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のポリエステルポリオール。
【0116】
実施形態10:少なくとも1000g/molかつ10,000g/mol以下の数平均分子量を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載のポリエステルポリオール。
【0117】
実施形態11:10,000g/molを超え、かつ最大で100,000g/molの数平均分子量を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載のポリエステルポリオール。
【0118】
実施形態12:(a)実施形態1~9のいずれか1つに記載のポリオールと、(b)ポリイソシアネート成分と、の第2の反応生成物を含む、ポリウレタンポリマー。
【0119】
実施形態13:ポリイソシアネート成分が、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、又はこれらの混合物を含む、実施形態12に記載のポリウレタンポリマー。
【0120】
実施形態14:第2の反応生成物が、55重量%~99重量%のポリエステルポリオールから誘導される、実施形態12又は13に記載のポリウレタンポリマー。
【0121】
実施形態15:第2の反応生成物が、1重量%~35重量%のポリイソシアネート成分から誘導される、実施形態12~14のいずれか1つに記載のポリウレタンポリマー。
【0122】
実施形態16:第2の反応生成物が、官能性酸を更に含む、実施形態12~15のいずれか1つに記載のポリウレタンポリマー。
【0123】
実施形態17:官能性酸含有化合物が、式(HX)A及び/又は(HX)(A)で表され、式中、Aが、-COM、-OSOM、-SOM、-OPO(OM)、-PO(OM)(式中、Mは、H又はカチオンであり、mの価数を有し、mが、1、2、又は更には3である)から選択される官能性酸であり、Xが、O、S、NH、又はNR(式中、Rが、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基である)であり、Rが、3の価数を有する有機連結基であり、Rが、4の価数を有する有機連結基であり、R及びRが、1~50個の炭素原子を有し、任意に、1個以上の3級窒素、エーテル酸素、又はエステル酸素原子を有し、イソシアネート反応性水素含有基を含まない、実施形態16に記載のポリウレタンポリマー。
【0124】
実施形態18:Aが-COMであり、XがO又はNHであり、Rが1~7個の炭素原子を有するアルキレンである、実施形態17に記載のポリウレタンポリマー。
【0125】
実施形態19:第2の反応生成物が、0.01重量%~5重量%の官能性酸含有化合物から誘導される、実施形態16~18のいずれか1つに記載のポリウレタンポリマー。
【0126】
実施形態20:ポリウレタンポリマーが、少なくとも10,000g/molかつ最大で200,000g/molの数平均分子量を有する、実施形態12~19のいずれか1つに記載のポリウレタンポリマー。
【0127】
実施形態21:実施形態11に記載のポリエステルポリオールを含む、感圧接着剤。
【0128】
実施形態22:実施形態12~20のいずれか1つに記載のポリウレタンポリマーを含む、感圧接着剤。
【0129】
実施形態23:組成物が、化学的架橋剤を更に含む、実施形態21又は22に記載の感圧接着剤組成物。
【0130】
実施形態24:化学的架橋剤が、有機金属キレート剤、エポキシ、アジリジン、ポリカルボジイミド、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、実施形態23に記載の感圧接着剤組成物。
【0131】
実施形態25:0.1重量%~5重量%の感光性誘導体を更に含む、実施形態21~24のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物。
【0132】
実施形態26:粘着付与剤を更に含む、実施形態21~25のいずれか1つ記載の感圧接着剤組成物。
【0133】
実施形態27:可塑剤を更に含む、実施形態21~26のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物。
【0134】
実施形態28:フィラーを更に含む、実施形態21~27のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物。
【0135】
実施形態29:室温及び60mm/分の剥離速度で少なくとも3N/cmのガラスに対する180°剥離強度を有する、実施形態21~28のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物。
【0136】
実施形態30:0℃未満のガラス転移温度を有する、実施形態21~29のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物。
【0137】
実施形態31:25℃及び1ヘルツの周波数で300kPa以下の弾性率を有する、実施形態21~30のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物。
【0138】
実施形態32:460~720nmにわたって少なくとも90%の透過率を有する、実施形態21~31のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物。
【0139】
実施形態33:感圧接着剤が、1%未満のヘイズを有する、実施形態21~32のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物。
【0140】
実施形態34:感圧接着剤が、約25℃~約85℃の温度範囲にわたって1Hzの周波数で約0.4~約1.5のタンデルタ値を保持する、実施形態21~33のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物。
【0141】
実施形態35:感圧接着剤が、約25℃~約85℃の温度範囲にわたって1Hzの周波数で約0.4~約0.8のタンデルタ値を保持する、実施形態21~34のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物。
【0142】
実施形態36:積層テープであって、
基材と、
基材の主表面上に配置された、実施形態21~35のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物の層と、を含む、積層テープ。
【0143】
実施形態37:基材が、バッキング又は剥離ライナーである、実施形態36に記載の積層テープ。
【0144】
実施形態38:感圧接着剤組成物が、基材の両主表面上に配置されている、実施形態36又は37に記載の積層テープ。
【0145】
実施形態39:
第1の基材を提供することと、
第1の基材の表面を、実施形態21~35のいずれか1つに記載の感圧接着剤組成物と接触させることと、を含む、接合方法。
【0146】
実施形態40:感圧接着剤組成物の反対側の表面を第2の基材に接触させることを更に含む、実施形態39に記載の方法。
【0147】
実施形態41:第1及び第2の基材が、金属、無機材料、有機ポリマー材料、又はこれらの組み合わせから構成される、実施形態39又は40に記載の方法。
【0148】
実施形態42:感圧性接着剤組成物が、第1の基材に接触した後に加熱される、実施形態39~41のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0149】
別段断りのない限り、実施例及び明細書のその他の部分における、全ての部、百分率、比などは重量によるものであり、実施例で用いた全ての試薬は、全般的な化学物質供給元、例えば、MilliporeSigma Company,Saint Louis,Missouriなどから入手したもの、若しくは、入手可能なものであるか、又は、通常の方法によって合成することができる。
【0150】
これらの略語が、以下の実施例において使用される:FT-IR=フーリエ変換赤外分光法、g=グラム、min=分、h=時間、℃=摂氏度、及びml=ミリリットル。
【表1】
【0151】
特性評価方法(Characterization Methods)
【0152】
耐化学薬品性試験の方法
【0153】
調製した各接着剤物品サンプルからサンプルを調製するため、寸法0.5インチ×0.5インチ(1.27cm×1.27cm)で試験ストリップを切り出した。次に、片面上の剥離ライナーを取り外し、試験ストリップをペトリ皿の底面に固定(固着)した。試験ストリップの第2の露出面上の剥離ライナーを取り外し、このサンプル試験ストリップが内側に固定されたペトリ皿を、室温(約23℃)で15分間放置した。次に、試験ストリップを、オレイン酸、又はイソプロピルアルコール及び水の重量比70:30(IPA/HO)の混合液に70℃で8時間浸漬した。以下のガイドラインにより、接着剤サンプルの、オレイン酸、又はIPA/HO混合液に対する抵抗性を採点し、記録した。
【表2】
【0154】
初期剥離接着強度
【0155】
接着テープ実施例の接着面を、厚さ2mil(約50ミクロン)のポリエチレンテレフタレート(PET)上に積層した後、5mm×12.7mmの試験ストリップにスリットを入れた。各接着剤タイプ/パネル用に、2つの複製を準備した。各実施例のライナーを取り外し、接着テープの露出した接着剤表面を、ステンレス鋼プレート(ChemInstruments,Incorporated,Fairfield,OHから入手した、明るい焼鈍仕上げを有するType 304)の長さに沿って接着し、5回圧延した。テープを適用するに先立って、ティッシュペーパー(商標名KIMWIPE、テープ試料、第1に(the tape sample by first)Kimberly-Clark Corporation,Irving,TX)を使用してアセトンで1回、次にヘプタンで3回拭うことでプレートを洗浄した。室温で50%RHにて24時間コンディショニングした後、試験試料を65℃及び90%RHで72時間放置し、次いで、接着試験前に24時間、温度制御された室内に戻した。1000Nロードセルを取り付けた引張試験機(MTS Insight,MTS Systems,Corporation,Eden Prairie,MNから入手可能)を使用して、300mm/minのクロスヘッド速度、下部つかみ具及び上部つかみ具で把持した試験片に対し180°の角度にて、剥離接着強度を評価した。剥離接着力及び損傷モードを記録した。
【0156】
ポリマー分子量の測定
【0157】
接着剤組成物の分子量分布を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて特性評価した。Waters Corporation(Milford,MA,USA)から入手したGPC計装は、高圧液体クロマトグラフィーポンプ(モデル1515HPLC)、オートサンプラー(モデル717)、UV検出器(モデル2487)及び屈折率検出器(モデル2410)を備えていた。クロマトグラフに、Varian Inc.(Palo Alto,CA,USA)から入手可能な5マイクロメートルPLgel MIXED-Dカラムを2本設置した。
【0158】
乾燥させたポリマー試料を1.0%(重量)の濃度でテトラヒドロフランに溶解させて、VWR International(West Chester,PA,USA)から市販の0.2マイクロメートルのポリテトラフルオロエチレンフィルターを通して濾過し、ポリマー溶液の試料を調製した。得られた試料をGPCに注入し、35℃に維持されたカラムに通して毎分1mLの速度で溶出させた。システムを、線形最小二乗解析を用いてポリスチレン標準で較正して、標準検量線を作成した。各試料に関し、この標準曲線と比較して重量平均分子量(Mw)及び多分散指数(重量平均分子量を数平均分子量(Mn)により除算したもの)を計算した。
【0159】
DSCにより測定したTg
【0160】
ポリウレタン接着剤のTgは、窒素雰囲気下、加熱速度10℃/分で、温度範囲-50~150℃のTA Instruments Q200示差走査熱量計(DSC)によって測定した。
【0161】
貯蔵弾性率(G’)
【0162】
ARES G2平行平板レオメーター(TA Instruments)を使用して各サンプルの動的機械分析(DMA)を行い、温度の関数として各サンプルの物理特性を評価した。各サンプルに関し、レオメーターの直径8mmの平行平板の間、中央に約0.1gのポリマー材料を配置し、サンプルの縁が上部平板及び下部平板の縁と揃うようになるまで圧縮した。レオメーターの平行平板及びシャフトを取り囲む加熱炉の扉を閉め、温度を100℃にまで上昇させ、5分間維持して、残存している応力を弛緩させた。次に、軸力を0に設定して材料及び平板間の接触を維持した。温度を-50℃に設定し、次に-50℃から200℃まで5℃/minの速度で上昇させつつ、周波数1Hz、初期ひずみの振幅の0.15%で平行平板を振動させた。測定されるトルクが1g-cmで低下したとき、ひずみはそのときの値(current value)の50%増加し、最大でひずみを10%増加させた。25℃における貯蔵弾性率(G’)を報告する。
【0163】
実施例1.ポリエステルポリオールの合成
【0164】
ポリエステルポリオールを必要量の無水フタル酸(74.05g)、Pripol 1009(66.16g)、1,6-HDO(80.8g)、Ti(OC4H9)4(固形分に基づいて100ppm)及び120mlのキシレンを、加熱マントル、機械的撹拌器、ステンレス鋼窒素スパージ管、熱電対、温度制御器、及び水冷凝縮器を装備した500mLの丸底フラスコに入れて調製した。反応器の内容物を、190℃までのゆっくりとした窒素注入下で加熱した。反応器の内容物を、約13mlの水が収集されるまで190℃で8時間共沸蒸留した。最後に、反応混合物を100トルで4時間真空処理し、粘稠な液体ポリオールを得た。ポリオールのOH数は、ASTM E222-17に従って37.4mgのKOH/gであった。
【0165】
実施例2.ポリエステルポリオールの合成
【0166】
ポリエステル樹脂を必要量の無水フタル酸(74.05g)、Pripol 1009(66.16g)、1,6-HDO(73.27g)、Ti(OC(固形分に基づいて100ppm)及び120mlのキシレンを、加熱マントル、機械的撹拌器、ステンレス鋼窒素スパージ管、熱電対、温度制御器、及び水冷凝縮器を装備した500mLの丸底フラスコに入れて調製した。反応器の内容物を、190℃までのゆっくりとした窒素注入下で加熱した。反応器の内容物を、13mlの水が収集されるまで190℃で8時間共沸蒸留した。最後に、反応混合物を100トルで4時間真空処理し、高度に粘稠な液体ポリエステルを得た。ポリエステルのMnは、約41000グラム/モルであった。
【0167】
実施例3:ポリウレタン接着剤の合成
【0168】
機械的撹拌器、凝縮器、及び窒素入口を装備した樹脂反応容器に、100.0gの実施例1から得られたポリエステルポリオール、50gのMEK、0.05gのDBTDA、0.53gのDMPA、及び6.20gのDesmodur Hを添加した。反応を、遊離NCO基がFT-IRによって観察されなくなるまで、撹拌しながら80℃で実施した。反応中、ある量のMEKを添加して粘度を調整し、45重量%の固形分のMEK中の透明かつ透過的なポリウレタン溶液を得た。GPCデータは以下の通りであった:Mn=45.6キロダルトン、Mw=131.9キロダルトン、Pd=2.89。この溶液をRF02Nライナー(SKC Haas,Cheonan,Koreaから入手可能なシリコーンコーティングポリエステル剥離ライナー)上にコーティングし、70℃で1時間乾燥させ、接着テープを得た。
【0169】
実施例4:ポリウレタン接着剤の合成
【0170】
100gの実施例3からのMEK中のポリウレタン溶液に、0.45gのTetrad X、高度反応性、四官能性、アミン系エポキシ樹脂を添加し、撹拌して均質な溶液を形成し、次いで剥離ライナー上にコーティングし、70℃で20時間乾燥させて、架橋ポリウレタン接着剤物品を得た。
【0171】
実施例5:ポリウレタン溶液の合成
【0172】
機械的撹拌器、凝縮器、及び窒素入口を装備した樹脂反応容器に、200.0gの実施例1から得られたポリエステルポリオール、5.47gのYmer N120、50.0gのMEK、0.11gのDBTDA、0.11gのBHT、1.1gのBAGA、及び12.25gのDesmodur Hを添加した。反応を、遊離NCO基がFT-IRによって観察されなくなるまで、撹拌しながら80℃で実施した。反応中、ある量のMEKを添加して粘度を調整し、40重量%の固形分のMEK中の透明かつ透過的なポリウレタン溶液を得た。GPCデータは以下の通りであった:Mn=34.9キロダルトン、Mw=124.4キロダルトン、及びPd=3.55。
【0173】
実施例6:ポリウレタン接着剤の合成
【0174】
74gの実施例5からのポリウレタン溶液に、2.66gのCN983(MEK中50%の固形分)、0.072gのKbM-403(MEK中10%)、0.36gのTPO(MEK中10%)、1.03gのTetrad X(10%の固形分)を添加し、撹拌して均質な溶液を形成し、次いで、剥離ライナー(RF02Nなど)上にコーティングし、70℃で20分間乾燥させて、約2mil厚のポリウレタン接着剤を形成した。トップライナー(Nippa Corp.,Osaka,Japanから入手可能なJ9ライナーシリコーンコーティングポリエステル剥離ライナーなど)を接着剤の面側に積層して、2枚のライナーの間に配置されたポリウレタン接着剤の接着剤転写テープを形成した。次いで、転写テープをFusion UVシステム(Heraeus Inc.,Yardley,PA)を使用して、D-電球を使用して3J/cmの線量でUV硬化させて、架橋ポリウレタン感圧接着剤を形成した。
【0175】
比較例1:ポリウレタン接着剤の合成
【0176】
機械的撹拌器、凝縮器、及び窒素入口を装備した樹脂反応容器に、302.12gの、57.3mgのKOH/gのヒドロキシル価を有するヒドロキシル末端ポリエステルPH-56、50gのMEK、0.17gのDBTDA、1.65gのDMPA、及び28.01gのDesmodur Hを添加した。反応を、遊離NCO基がFT-IRによって観察されなくなるまで、撹拌しながら80℃で実施した。反応中、ある量のMEKを添加して粘度を調整し、45%の固形分のMEK中の透明かつ透過的なポリウレタンPSA溶液を得た。GPCデータは以下の通りであった:Mn=47.8キロダルトン、Mw=105.7キロダルトン、及びPd=2.77。
【0177】
実施例3~6及び比較例1についてのステンレス鋼上の耐化学薬品性、剥離強度、DSCにより測定したガラス転移温度(Tg)、及びG’を、以下の表2及び3に示す。
【表3】
【表4】
【0178】
上記のように、実施例3~6及び比較例1は、オレイン酸及びIPA/水に対する同様の耐性を有し、ステンレス鋼に対する同様の剥離接着力を有する。しかしながら、比較例1は、実施例3~6よりも高い弾性率を有し、25℃で300kPaよりも高いG’に起因して粘着性ではない。
【0179】
実施例7:ポリウレタン光学的に透明な接着剤(OCA)の合成
【0180】
109.28gの、実施例5と同じ方法で調製したポリウレタン溶液(47.1重量%)、5.15gのCN983(MEK中50重量%の固形分)、0.028gのKbM-403(MEK中10%)、1.5gのTPO(MEK中10%)、0.4gのTetrad X(MEK中10重量%)及び1.08gのXR5580(メトキシプロピルアセテート中50重量%)を褐色広口瓶に添加し、ロールミキサーで撹拌して均質な溶液を得た。この溶液を、ナイフコーターを用いてRF02Nライナー上にコーティングして、厚さを制御した後、コーティングされたRF02Nライナーを70℃の溶媒乾燥オーブンに30分間入れて溶媒を除去した。最後に、乾燥した接着剤表面上にJ9ライナー(Nippa Corp.,Osaka,Japanから入手可能なシリコーンコーティングポリエステル剥離ライナー)を、積層して、RF02Nライナー/4mil(約102ミクロン)の厚さのポリウレタン接着剤/J9ライナーを含む積層物品を形成した。接着テープを黒色バッグに入れて、光への曝露時に不注意に架橋することを防止した。
【0181】
実施例7の性能評価:
【0182】
ヘイズ及びb:Hunterlab UltraScan Pro Spectrophotometer(Hunter Associates Laboratory Inc.,Reston,VA)を使用して、液晶ディスプレイ(LCD)ガラスそれ自体及びLCDガラスに積層したポリウレタン接着剤のCIELAB色空間並びに%ヘイズを決定した。実施例7の積層物品からイージーライナー(RF02N)を剥がし、このポリウレタン接着剤を液晶ディスプレイ(LCD)ガラス上にローラー積層し、タイト(Nippa J9)ライナーを取り外して、LCDガラスに積層されたポリウレタン接着剤(商品名「EAGLE XG SLIM GLASS」で、Corning Inc.,NYから入手可能)を生成した。結果は、以下の表4に示される。
【表5】
【0183】
耐薬品性:実施例7からの接着テープを、周囲条件で少なくとも2時間コンディショニングし、次いで3J/cmでUV硬化させた。次いで、硬化した試料を、耐化学薬品性について試験した。試料は、オレイン酸及びIPA/水(70/30)の両方に対して5の耐化学薬品性評価を有した。
【0184】
剥離接着力:様々な温度で老化させたフロートガラス上のポリウレタン接着剤の180度剥離接着力試験を測定した。実施例7の積層物品からイージーライナー(RF02N)を剥がし、2mil(50ミクロン)のPETフィルムを接着剤の上面に積層し、得られたPET/接着剤/タイトライナーフィルムを1cm幅のストリップに切断した。次いで、タイトライナーを剥離し、接着剤ストリップを、5ポンドローラーの3回のパス(1回のパスは前方及び後方ロールである)で2in×5inのフロートガラス板上にローラー積層した。フロートガラス板(Swift Glass Co.Inc.,Elmira Heights,NY製ソーダ石灰窓ガラス)を、2回又は3回のイソプロパノール洗浄でガラスの試験表面を洗浄し、ティッシュペーパー(KIMWIPEの商品名で入手可能なものなど)で拭き取ることにより、テープを適用する前に洗浄した。25℃及び相対湿度40%で2時間コンディショニングした後、試料(PET/接着剤/ガラス)を、N下で操作したD-電球を使用して、3J/cmの線量でFusion UVシステムを用いてUV硬化させた。硬化後、試料を25℃及び相対湿度40%で少なくとも24時間放置した後、試料を様々な温度に加熱し、次いで、オーブン(Thermcraft Inc.,Winston-Salem,NCから入手可能なLab-Temp)を装備した剥離試験機(MTS Systems Corp.,Eden Prairie,MNから入手可能な「MTS CRITERION MODEL 45」の商品名で入手可能)を使用して、60mm/cmで剥離した。結果を以下に示す。典型的には、試料当たり5回の剥離接着力試験を行った。
【表6】
【0185】
弾性率、タンデルタ及びTg:未硬化及び硬化した接着テープ(3J/cmで硬化された)について、弾性率、タンデルタ、及びTgを動的機械熱分析(DMA)によって試験した。ARES G2レオメーター(TA instruments,New Castle,DEから入手可能)を使用して、直径8mmのプレート及び1.5mmの間隙を有する平行平板形状を使用して、ポリウレタン接着剤上でDMA試験を実施した。試験は、1ヘルツの周波数及び20%.の最大ひずみで3℃/分の温度走査速度を使用して行った。走査は-20℃~100℃から構成された。データを以下に要約する。
【表7】
【0186】
3次元表面に適合する接着剤の能力を以下のように評価した:5インチ(127mm)×7インチ(178mm)のLCDガラス基材を、高さ20ミクロン~40ミクロンの範囲の16の「十字形」黒色インクで印刷した。十字形黒色インクは、1.8cm長さ及び0.5cm幅であった。実施例7からの積層物品を5インチ×7インチのガラス基材とほぼ同じサイズに切断したが、イージーライナーを2mil(50ミクロン)PETフィルムで置き換えた。未硬化の接着剤試料を、ローラーを使用してガラス基材の印刷面上に積層した。次いで、積層物品を、オートクレーブ(Lorimer Corporation,Longview,TXから入手可能なモデル番号J-15501)を使用して、50℃の温度、及び0.5MPaの圧力で30分間、オートクレーブ処理した。5つの積層体を試験し、それぞれで、ポリウレタン接着剤は、積層中にいかなる気泡も捕捉することなく高さが最大40ミクロンのインク段差に適合することができた。積層された試料を更に3J/cmのD-電球でUV硬化し、耐久性試験(65℃/相対湿度90%、6時間)に供したところ、新たな気泡が発生しなかった。
【0187】
本発明の範囲及び趣旨を逸脱することのない、本発明の予見可能な改変及び変更が、当業者には明らかであろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載されている実施形態に限定されるものではない。本明細書の記述と本明細書に述べられ又は参照により組み込まれる任意の文書中の開示との間に何らかの不一致又は矛盾が存在する場合、本明細書の記述が優先される。