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特許7503553セルロース原材料及び混合繊維くずからセルロース原材料をリサイクルする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】セルロース原材料及び混合繊維くずからセルロース原材料をリサイクルする方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20240613BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
C08J11/24
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021534198
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2019079067
(87)【国際公開番号】W WO2020126171
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】18215489.8
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルヒル、リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】クラウス-ニートロスト、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイラッハ、クリスティアン
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103613784(CN,A)
【文献】米国特許第05236959(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102675089(CN,A)
【文献】国際公開第2018/073177(WO,A1)
【文献】特開平11-060795(JP,A)
【文献】特開2009-001734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのセルロース成分及び少なくとも1つの合成ポリマー成分を含む混合繊維くず(blended textile waste)を提供するステップ;
(b)前記少なくとも1つの合成ポリマー成分を分解するために、前記混合繊維くずを、非酸化性の水性処理媒体中で処理するステップ、ここで当該処理は、還元条件下で、120℃~180℃の温度で行われる;及び
(c)処理した混合繊維くずから再生セルロース原材料を得るステップ、
をこの順で含
ステップ(b)中に、亜ジチオン酸ナトリウム(Na )及び二酸化チオ尿素(CH S)から選ばれる少なくとも1つの還元剤が存在する、
混合繊維くずからセルロース原材料をリサイクルする方法。
【請求項2】
水性処理媒体が、少なくとも1つの加水分解剤を含み、
前記少なくとも1つの合成ポリマー成分が実質的に完全に分解されるように、前記少なくとも1つの加水分解剤の量が、前記混合繊維くず中の前記少なくとも1つの合成ポリマー成分の量と釣り合わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの加水分解剤が塩基である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基がNaOHである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水性処理媒体における前記少なくとも1つの加水分解剤の量が、前記少なくとも1つの合成ポリマー成分中の加水分解により開裂可能な結合1molあたり1mol以上である、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性処理媒体における前記少なくとも1つの加水分解剤の量が、前記少なくとも1つの合成ポリマー成分中の加水分解により開裂可能な結合1molあたり3mol未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの合成ポリマー成分が、ポリエステル繊維又はポリアミド繊維の一種を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)の後、前記混合繊維くずが、アルカリ及び/又は酸性条件下で、少なくとも1つの漂白ステップにかけられる、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの漂白ステップが、酸化漂白ステップである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記漂白ステップにかけられる前に、及び/又は複数の前記漂白ステップの間に、前記混合繊維くずが洗われる、請求項又は請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記漂白ステップにかけられる前に、及び/又は複数の前記漂白ステップの間に、前記混合繊維くずが洗われ、プレスされる、請求項~請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記混合繊維くずが、ステップ(b)における処理の前に粉砕及び/又は解体される(comminuted and/or disintegrated)、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)における処理の前に、非繊維質スクラップが前記混合繊維くずから少なくとも部分的に除去される、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのセルロース成分及び少なくとも1つの合成ポリマー成分を含む混合繊維くず(blended textile waste)から、セルロース原材料(cellulose raw material)をリサイクルする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維産業の目的の一つとして、繊維くずが環境に与える影響を低減するために、繊維くずをリサイクルする方法を提供することがある。
【0003】
繊維くずを機械的にリサイクルする手段は周知であり、これにより、上記くずは粉砕されて、クリーニングワイプ、詰め物、又は断熱材などのリサイクル済み最終製品に直接変換される。機械的にリサイクルされた繊維を紡績すると、通常、機械的特性に劣る低品質の糸になってしまう。また、機械的なリサイクル方法では、染料などの補助的な成分を除去するのに苦労する。このように、機械的にリサイクルされた繊維は、通常、品質が劣り、新しい繊維製品の製造に対する高い要求を満たすことができない。
【0004】
上記の機械的リサイクルの欠点を解消する解決策として、ケミカルリサイクル法が考えられる。例えば、セルロース成分を含む繊維くずを前処理した後、再生セルロース成形体を製造してもよい。しかし、再生成形体を製造する方法は、原材料の品質及びそこに含まれる不純物に非常に敏感である。
【0005】
国際公開公報WO2015/077807 A1では、繊維くずから再生綿繊維(recycled cotton fiber)を前処理する方法が示されており、ここで、上記再生綿繊維は、金属除去ステップ及びその後の酸化漂白ステップを経る。前処理された再生綿繊維は、その後、再生セルロース系成形体の製造に再利用することが可能である。
【0006】
国際公開公報WO2018/115428 A1には、ガス状の酸化剤と組み合わせて、アルカリ条件下で綿をベースとした原材料を処理する方法が開示されている。
【0007】
国際公開公報WO2018/073177 A1には、セルロース系繊維くずからセルロース原材料をリサイクルする方法が記載されている。当該公報には、セルロース成分を膨潤させるために、還元剤の存在下、アルカリ条件下でセルロース成分を処理することが開示されている。アルカリ性条件での処理の後に、酸素及び/又はオゾンによる漂白が行われる。
【0008】
しかし、繊維くずの大半は、セルロース系及び合成系のポリマー繊維などの、異なる種類の繊維の混合物である、混合繊維くず(blended textile waste)である。例えば、ごく一般的な混合繊維くずには、綿及びポリエステルの繊維が含まれている。純綿の生地であっても、縫い糸又はラベルなどからのポリエステルが混入していることがある。そのため、セルロース成分を過度に劣化させることなく、混合繊維くずを処理し、このような混合繊維くずからセルロース成分を抽出することは、繊維くずのリサイクル方法の課題となっている。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本開示の目的の一つは、セルロース原材料の品質が改善され、混合繊維くず中の合成ポリマー成分を確実かつ効果的に削減する、混合繊維くずからセルロース原材料をリサイクルするための信頼性の高い方法を提供することである。
【0010】
上記の目的は、独立請求項1に係る方法によって発明的に達成される。
【0011】
少なくとも1つのセルロース成分及び少なくとも1つの合成ポリマー成分を含む混合繊維くずを提供し、上記少なくとも1つの合成ポリマー成分を分解するために、上記混合繊維くずを非酸化性の水性処理媒体で処理し、処理された混合繊維くずからセルロース原材料を得ることにより、セルロース含有繊維くずから合成ポリマーによる不要な汚染を除去するための簡単かつ信頼性の高い方法を提供することが可能である。
【0012】
さらに上記処理を100℃以上の温度で行う場合、混合繊維くずに含まれる上記少なくとも1つの合成ポリマー成分を効率的に分解することが可能である。さらに上記処理を200℃未満の温度で行う場合、十分に穏やかなプロセス条件が維持され、上記少なくとも1つのセルロース成分の過剰な分解を避けることが可能である。
【0013】
1つまたは複数の合成ポリマー成分の分解中に、高温の水性処理媒体の存在下で行われる加水分解により、合成ポリマー分子の分子量及び分子鎖長は意図的に(deliberately)低下する。そのため、分解した合成ポリマー成分分子は、分子鎖長が短くなり、好ましくは単量体構成成分に分割され、水溶液に溶解しやすくなる。続いて、これにより、合成ポリマー成分をセルロース成分から容易に分離することが可能となるため、純度及び品質が向上した再生セルロース原材料(recycled cellulose raw material)を得ることが可能となる。このように、本発明は、合成ポリマー成分が顕著に低減され、汚染度の低い高品質な再生セルロース原材料を得ることが可能な、混合繊維くずからセルロース原材料をリサイクルする改良された方法を提供し得る。
【0014】
概して、本発明の文脈において「再生セルロース原材料(recycled cellulose raw material)」とは、リサイクルパルプ、繊維製品パルプ、コットンパルプ、ラグパルプ、若しくは溶解パルプなど、又はそれらの組み合わせと称され得る。上記セルロース原材料は、リヨセル繊維、ビスコース繊維、モダール繊維、又はキュプラ繊維などの再生セルロース系繊維の製造のための出発原料に特に適し得る。また、再生セルロース原材料は、セルロース系パルプから紙、紙状材料、又は不織布材料を製造するための出発原料としても利用することが可能である。
【0015】
概して、本発明の文脈において「混合繊維くず(blended textile waste)」とは、少なくとも1つのセルロース成分を構成する任意の種類のセルロース系繊維と、少なくとも1つの合成ポリマー成分を構成する任意の種類の合成ポリマー繊維との混合物であってもよいことがさらに言及される。好適なセルロース系繊維としては、例えば、綿繊維、レーヨン繊維、ビスコース繊維、リヨセル繊維、又はモダール繊維などが挙げられる。合成ポリマー成分は、例えば、ポリアミド若しくはポリエステル繊維、又は加水分解により分解可能なその他の合成繊維を含んでよい。上記のような繊維は、直径及び長さが異なっていてもよく、連続繊維(フィラメント)であっても、ステープル繊維であってもよい。
【0016】
さらに、混合繊維くずは、消費前及び/又は消費後(pre- and/or post-consumer)の繊維製品くずであってもよく、安価で信頼性の高いセルロース原材料提供方法を提供することがかのうである。消費後の繊維製品くずは、以下の1つ又は複数を含んでよい:シャツ、ジーンズ、スカート、ドレス、ガウン、スーツ、オーバーオール、ズボン、パンツ、下着、セーター、プルオーバーなどの着用済み衣類;ベッドリネン、タオル、カーテン、クロス、テーブルクロス、シートカバー、カーテン、椅子張り生地などの使用済み家庭用繊維製品;ワイプ、おむつ、フィルターなどの不織布製品、など。消費前の繊維製品くずは、衣料品、家庭用繊維製品、不織布などの製造時に発生する裁断くず若しくはスクラップ、又は糸(yarns)、繊維製品(textiles)、若しくは再生セルロース繊維などの製造時に発生する製造くずなどを含んでよい。
【0017】
さらに、本発明の文脈における水性処理媒体は非酸化性であり、すなわち、処理媒体には実質的に酸化剤が含まれないことを述べておく。さらに、処理媒体を大気圧の酸素分圧に曝すことは、処理媒体中に酸化剤が存在することであるとは看做されず、したがって非酸化性であることを述べておく。特に、ステップ(b)の処理は、1バール未満、より具体的には0.5バール未満、さらに具体的には0.25パール未満の酸素分圧で実施される。
【0018】
水性処理媒体が少なくとも1つの加水分解剤を含み、当該少なくとも1つの加水分解剤の量を、合成ポリマー成分が実質的に完全に分解されるように、少なくとも1つの合成ポリマー成分の量と釣り合わせる場合、すなわち、上記加水分解剤が、少なくとも、ステップ(b)における処理後に合成ポリマー成分における実質的にすべての加水分解により開裂可能な結合が開裂するような量で添加される場合、上記プロセスをさらに改善することが可能である。これにより、加水分解剤は、合成ポリマー成分中の加水分解により開裂可能な結合の開裂を促進するための触媒として作用する。このような加水分解により開裂可能な結合は、例えば、エステル結合(例えばポリエステルの場合)又はアミド結合(例えばポリアミドの場合)であってもよい。合成ポリマー含有量を基準として加水分解剤の量を規定することにより、セルロース成分を分解させ、それにより再生セルロース原材料の品質を低下させ得る作用を有する加水分解剤の過剰分が減るため、合成ポリマー成分の分解と粘度(重合後)調整とのバランスをとることが可能である。このように、激しいセルロース分解反応を回避しつつ、合成ポリマー成分を効率的に分解させることで、得られるセルロース原材料の制御性を改善し、粘度調整を細かく行うことが可能となる。
【0019】
少なくとも1つの加水分解剤が塩基である場合、上記プロセスの操作性をさらに改善することが可能である。塩基は、アルカリ加水分解反応において加水分解により開裂可能な結合を開裂するための効率的な触媒として作用することができ、それによって、塩基はこの反応中で(例えば、開裂した合成ポリマー構成成分と塩を形成することにより)消費される。したがって、合成ポリマー成分の完全な分解後には、アルカリ水性処理媒体中に存在する遊離した過剰塩基の量は非常に少量であり、セルロース成分の分解を強く抑制することが可能である。さらに、水性アルカリ処理媒体中のセルロース成分の処理によって、セルロース成分が膨潤し、その結果、セルロース成分の内部構造が解放され、セルロース成分から非セルロース成分(例えば、非共有結合の染料、汚れ、不純物、非セルロース繊維など)に対してアクセスする、除去する及び/又は解きほぐす能力が向上し得る。緩んだ非セルロース成分は効率的に除去することが可能であり、純度の高い再生セルロース原材料を得ることが可能である。
【0020】
さらに、加水分解剤として使用される塩基が水酸化ナトリウム(NaOH)である場合、信頼性及びコスト効率の高いプロセスを提供することが可能である。これにより、水性アルカリ処理媒体中のNaOHの総含有量は、混合繊維廃棄物に含まれる合成ポリマー成分の量に応じて、混合繊維くず1kgあたり10~300g(例えば20~250g)の範囲であり得る。NaOHは、容易に入手可能であり、パルプ及びセルロース原材料の処理に広く使用されている、コスト効率が高く信頼性の高い塩基として作用することが可能である。
【0021】
少なくとも1つの加水分解剤が酸である場合、プロセスのコスト効率を向上させることが可能である。酸は、効率的な加水分解剤として作用し、加水分解により開裂可能な結合を開裂させる触媒として働くことが可能である。通常、酸は反応において消費されないので、合成ポリマー成分を実質的に完全に分解するために必要な加水分解剤の触媒量は少量でよい。酸が硫酸(HSO)である場合、セルロース系の原材料を処理するプロセスにおいて容易に入手可能であるので、プロセスをさらに改善することが可能である。
【0022】
ステップ(b)の前に、以下のステップを含む場合、プロセスの信頼性をさらに向上し得る:混合繊維くずを分析して、合成ポリマー成分の量を決定すること、合成ポリマー成分を完全に分解するために必要な少なくとも1つの加水分解剤の量を計算すること、及びステップ(b)において混合繊維くずを処理するために計算された量の上記少なくとも1つの加水分解剤を含む水性処理媒体を提供すること。
【0023】
加水分解剤の量が、合成ポリマー成分の加水分解により開裂可能な結合1molあたり、1mol以上、より具体的には1.25mol以上、さらに具体的には1.5mol以上である場合、上記のプロセスの信頼性をさらに向上することが可能である。したがって、ステップ(b)において添加される加水分解剤の最小量は、合成ポリマー成分の加水分解により開裂可能な結合に対する加水分解剤の化学量論比を満たすことである。上記の条件は、合成ポリマー成分における加水分解により開裂可能な欠乏の量(nbonds)に対する加水分解剤の量(nagent)の比率(nagent/nbonds)が1より大きく、より具体的には1.25より大きく、さらに具体的には1.5より大きい場合、同様に満たされ得る。
【0024】
さらに、加水分解剤の量が、合成ポリマー成分における加水分解により開裂可能な結合1molあたり、3mol未満、より具体的には2.75mol未満、さらに具体的には2.5mol未満である場合、未消費の加水分解剤の過剰量を大幅に減らすことが可能である。このように、合成ポリマー成分を完全に分解するのに必要な量を超える加水分解剤の過剰量を最小限に抑えながら、合成ポリマー成分を完全に分解するのに十分な加水分解剤を供給することができる。したがって、より費用対効果の高いプロセスを得ることが可能である。上記の条件は、合成ポリマー成分中の加水分解剤の量(nagent)に対する加水分解により開裂可能な結合の量(nbonds)の比率(nagent/nbonds)が3よりも低く、より具体的には2.75よりも低く、さらに具体的には2.5よりも低い場合、同様に満たされ得る。
【0025】
ステップ(b)の処理を110℃~190℃の温度で行う場合、高品質のセルロース原材料を確保しつつ、プロセスの信頼性をさらに向上させることが可能である。上記の利点は、処理を120℃~180℃、例えば125℃~175℃、例えば130℃~170℃の温度で行う場合、さらに改善され得る。このように、本方法では、セルロース成分の不要な分解を抑制しつつ、合成ポリマー成分の確実な分解及び低減を図ることが可能であるため、汚染度の低い高品質な再生原材料を得ることができる。
【0026】
ステップ(b)における処理を300分未満の時間で行う場合、セルロース原材料の品質がさらに向上し得る。長時間の処理を避けることで、セルロース成分の分解反応を効果的に抑えることが可能である。処理を30分~250分間、より具体的には60分~200分間、さらに具体的には120分~180分間の時間行う場合、さらに改善することが可能である。
【0027】
少なくとも1つの合成ポリマー成分が、ポリエステル又はポリアミド繊維の一種を含む場合、本発明の方法は非常に高い効果を得ることが可能である。このようなポリエステル繊維としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)-、PBT(ポリブチレンテレフタレート)-、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)-、PEN(ポリエチレンナフタレート)-、PLA(ポリ乳酸)-、PGA(ポリグリコリド)-、又はPBS(ポリブチレンサクシネート)-繊維が挙げられる。ポリアミド繊維は、ナイロンPA6(ポリカプロラクタム)若しくはナイロンPA66(ポリ[ヘキサメチレンアジパミド])などの脂肪族ポリアミド類、又は、PPTA(ポリ[p-フェニレンテレフタルアミド])若しくはPMPI(ポリ[m-フェニレンイソフタルアミド])などの芳香族ポリアミド(アラミド)類からなる繊維であってもよい。
【0028】
ステップ(b)における処理を還元条件で行う場合、セルロース成分の膨潤性がさらに改善し、その結果、セルロース収率を向上させることが可能である。さらに、還元条件を用いることで、セルロース成分に非共有結合している建て染め染料(vat dyes)(例えばインディゴなど)を除去することが可能である。
【0029】
ステップ(b)中に少なくとも1つの還元剤が存在する場合、上記の利点をさらに改善することが可能である。より具体的には、少なくとも1つの還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム(Na)又は二酸化チオ尿素(CHS)を含む場合、セルロース成分の膨潤がさらに改善され得る。還元剤は、混合繊維くず1kgあたり、1g~100g、より具体的には25g~75gの濃度で存在することが好ましい。
【0030】
ステップ(b)の後に、混合繊維くずを、アルカリ性及び/又は酸性条件での漂白ステップに少なくとも1回かけることにより、再生セルロース原材料の品質をさらに向上させることが可能である。それにより、ステップ(b)において除去できなかった残りの染料を漂白及び/又は分解することができる。このようにして得られた原材料は、白色度が高く、セルロース系製品の製造(例えば、ビスコース繊維の製造、リヨセル繊維の製造、モダール繊維の製造、製紙など)など、さまざまな用途に使用するのに適している。さらに、漂白ステップが酸化漂白ステップである場合、多種多様な染料を信頼性高く除去することが可能である。
【0031】
混合繊維くずを、漂白ステップの前及び/又は複数の漂白ステップの間に、洗浄したり、任意選択的に(optionally)プレスする場合、漂白の効率をさらに向上することが可能である。これは特に、ステップ(b)における処理がアルカリ性であるのに対して、ステップ(b)後の漂白ステップが酸性である場合、又はその逆の場合に当てはまる。また、ステップ(b)における処理が還元条件で行われる場合、漂白ステップを行う前に混合繊維くずを洗浄することにより、漂白ステップの効率を大幅に改善することが可能である。それにより、混合繊維くずを漂白ステップにかける前に、ステップ(b)における処理の状態がすでに中和されていることを確証することができる。これは、酸性条件下での漂白ステップの後にアルカリ性条件下での漂白ステップを行う場合、及びその逆の場合にも同様に重要である。
【0032】
ステップ(b)における処理の前に、混合繊維くずを粉砕(comminuted)及び/又は解体(disintegrated)すると、本方法の信頼性をさらに向上することが可能である。混合繊維くずの粉砕及び/又は解体は、セルロース成分を合成ポリマー成分から機械的に切り離す(disentanble)のに役立ち、したがって、水性処理媒体においてセルロース成分のより強固な膨潤及び合成ポリマー成分の分解を可能にすることができる。
【0033】
ステップ(b)における処理の前に、混合繊維くずから非繊維質スクラップを少なくとも部分的に除去することにより、本方法の信頼性をさらに向上することが可能である。非繊維質スクラップとしては、例えば、ボタン、ジッパー、装飾要素、プリント、ラベル、及び/又は汚れなどから生じたものが挙げられる。このような非繊維質スクラップは、金属又は合成ポリマーなどの材料からなる固体粒子の形態で繊維くずに含まれるのが一般的である。
【0034】
混合繊維くず中のセルロース成分及び合成ポリマー成分の量が1wt%以上、より具体的には2wt%以上、さらに具体的には3wt%以上である場合、信頼性の高いリサイクル方法が提供され得る。
【0035】
ステップ(b)における処理が、混合繊維くずを水性処理媒体中に浸漬して懸濁液を得ることを含む場合、混合繊維くずからセルロースをリサイクルするためのより信頼性の高い方法が提供され得る。混合繊維くずを浸漬することにより、特に浸漬中に混合繊維くずを撹拌する場合、混合繊維くずをより均一かつ均質に処理することが可能となる。
【0036】
上記処理が、上記懸濁液を100℃より高い温度に加熱することをさらに含む場合、上記の方法により、合成ポリマー成分の迅速かつ信頼性の高い分解を容易に確保することが可能である。より詳細には、上記処理が、合成ポリマー成分の分解中に懸濁液の温度を少なくとも100℃よりも高く維持することをさらに含む場合、純度の高い高品質の再生原材料を得ることが可能である。
【0037】
また、本開示の目的の一つは、高純度かつ白色度の高い、高品質な再生セルロース原材料を提供することである。
【0038】
本発明は、請求項1~17のいずれかに記載の方法で得られる再生セルロース原材料によって、上記の目的を達成する。このような再生セルロース原材料は、再生セルロース成形体の製造に使用又は再使用するのに適しており、原材料に対する品質及び純度に関する高い要求を課すことができる。このようなセルロース原材料から調製される紡糸ドープ(spinning dopes)は、フィルター汚染に対する影響が少なく、輝度に優れた再生成形体が得られる。
【0039】
請求項18に記載の再生セルロース原材料は、再生セルロース成形体の製造(例えば、ビスコース-、モダール-、キュプラ-、リヨセル-、又はイオン液体-プロセスによる製造)、セルロース誘導体(例えば酢酸セルロース)からの成形体の製造、及び紙又は不織布製品の製造に有利に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を複数の実施形態に基づいて説明する。
【0041】
第1の実施形態において、混合繊維くずからセルロース原材料をリサイクルする方法は、
(a)少なくとも1つのセルロース成分及び合成ポリマー成分を含む混合繊維くずを提供するステップ;
(b)上記合成ポリマー成分を分解するために、上記混合繊維くずを、非酸化性の水性処理媒体中で処理するステップ、ここで当該処理は、100℃~200℃の温度で行われる;及び
(c)処理した混合繊維くずから再生セルロース原材料を得るステップ、
をこの順で含む。
【0042】
ステップ(a)において、少なくとも1つのセルロース成分及び少なくとも1つの合成ポリマー成分を形成する複数の異なる繊維製品繊維の混合物からなる混合繊維くずが提供される。セルロース成分及び合成ポリマー成分の他に、混合繊維くずは、天然タンパク質系の繊維などの他の繊維製品繊維の残留物を含んでいてもよい。混合繊維くずは、上記の通り、消費前及び/又は消費後の繊維くずである。上記繊維くずからのセルロース成分は、セルロース系繊維(例えば、綿繊維、ビスコース繊維、モダール繊維、リヨセル繊維又はキュプラ繊維)を含む。このセルロース成分は、繊維くずから回収され、セルロース原材料にリサイクルされて、新たな再生セルロース系繊維を製造することができる。一方、上記繊維くずからの合成ポリマー成分は、加水分解によって分解可能な非セルロース系合成ポリマー繊維製品繊維(例えば、限定されないが、ポリエステル又はポリアミド繊維などを含む。
【0043】
セルロース成分及び合成ポリマー成分の繊維は、通常、紡糸(yarn-spinning)、編み(knitting)及び/又は織り(weaving)などにより、繊維くず中でもともと混ざり合っている。そのため、異なる成分の繊維を分離し、個別により効率的に処理できるようにするために、ステップ(b)における処理の前に、混合繊維くずを粉砕及び/又は解体する。さらに、ステップ(b)における処理の前に、混合繊維くずから非繊維質スクラップを少なくとも部分的に除去する。このような非繊維質スクラップは、繊維製品に含まれる非繊維質の固形構成要素(ボタン、ジッパー、装飾要素、プリント、ラベル、及び/又は汚れなど)から生じ得る。
【0044】
別の実施形態では、前処理として、ステップ(b)における処理を行う前に、混合繊維くずを洗浄及びプレス乾燥させて、緩い汚れを除去する。
【0045】
ステップ(b)では、合成ポリマー成分を分解するために、混合繊維くずを水性処理媒体で処理する。これにより、混合繊維くずは水性処理媒体に浸されて、懸濁液が形成される。任意選択的に(optionally)、この懸濁液を撹拌又は強制的に混合(forcefully intermix)して、混合繊維くずの分散を改善してもよい。その後、懸濁液を少なくとも100℃より高い温度に加熱し、それにより、混合繊維くずを100℃~200℃の温度でさらに処理する。更なる実施形態では、ステップ(b)における混合繊維くずの処理は、110℃~190℃の温度、120℃~180℃の温度、125℃~175℃の温度、又は130℃~170℃の温度で実施される。
【0046】
第1の実施形態では、処理媒体は加水分解剤を含み、この加水分解剤は、混合繊維くず中の合成ポリマー成分の含有量と釣り合わされた量で水性処理媒体に添加されている。これは、ステップ(b)における処理の前に混合繊維くずを分析し、それによって混合繊維くず中の合成ポリマー成分の含有量を決定することによって行うことが可能である。決定された合成ポリマー成分の含有量に基づいて、加水分解剤の量は、ステップ(b)における処理中に合成ポリマー成分が実質的に完全に分解されるように選択される。
【0047】
本実施形態における加水分解剤は塩基であり、特にNaOHであることが好ましい。したがって、非酸化性の水性処理媒体は水性アルカリ処理媒体であり、合成ポリマー成分はアルカリ加水分解によって分解されることになる。水性アルカリ処理媒体への塩基の添加量は、合成ポリマー成分中の加水分解により開裂可能な結合1molあたり1mol~3molになるように選択される。合成ポリマー成分の含有量及び組成から、加水分解により開裂可能な結合の量を容易に導き出すことが可能である。例えば、合成ポリマー成分がポリエチレンテレフタレート(PET)である場合、モノマーユニットのモル重量MPETは192.17g/molであり、2個のエステル結合を含む。したがって、PET成分の加水分解により開裂可能な結合の量nbonds,PETは以下の通りとなる:
bonds,PET=2・mPET/MPET, (1)
ここで、mPETは混合繊維くず中に含まれるPETの総質量である。このスキームは、繊維くずに含まれている他の全ての合成ポリマー成分にも準用することが可能であり、続いて以下を組み合わされる:
bonds=nbonds,PET+nbonds,pc2+nbonds,pc3+ … , (2)
ここで、nbonds,pc2及びnbonds,pc3は、任意の第2及び第3の合成ポリマー成分の加水分解により開裂可能な結合の量であり、式(1)によって等価的に決定される。したがって、上記の通り、水性処理媒体に添加される加水分解剤nagentとしての塩基(NaOH)の量は、1・nbonds~3・nbondsであり、ここで、nbondsは、全ての合成ポリマー成分の加水分解により開裂可能な結合の総量を意味している。したがって、薬剤の量と結合の量とは以下の比率を満足する:
1≦nagent/nbonds≦3 (3)
【0048】
更なる実施形態では、水性アルカリ処理媒体に添加される塩基の量は、合成ポリマー成分中の加水分解により開裂可能な結合1molあたり、1.25mol以上又は1.5mol以上であり、最大で2.75mol又は2.5molとなるように選択される。したがって、塩基の添加量は、1.25≦nagent/nbonds≦2.75、又は1.5≦nagent/nbonds≦2.5を満たすことになる。
【0049】
水性アルカリ処理液は、セルロース成分を膨潤させて、セルロース繊維の構造を解放し、それにより、その中に含まれる不要な物質(例えば、着色成分(colors)、染料、樹脂、又はその他の繊維製品仕上げ剤(textile finishing chemicals)など)を除去する役割を果たす。さらに、合成ポリマー成分は、水性アルカリ処理液中で分解(すなわち水和)されることとなる。上記分解中に、合成ポリマー成分は破壊される一方、セルロース成分は基本的に変化しない。上記の通り、第1の合成ポリマー成分のPET繊維は、PET鎖分子のエステル結合を開裂することにより、その構成成分であるエチレングリコールとテレフタル酸に分解される。これにより、この反応及びその後のテレフタル酸二ナトリウム塩(CNa)の生成によってNaOH分子が消費され、少量のNaOH分子だけが余剰となる。
【0050】
ステップ(c)では、処理された混合繊維くずから、最終的に再生セルロース原材料が得られる。本実施形態では、セルロース原材料は、膨潤したセルロース成分を、全ての非セルロース系成分(例えば、分解した合成ポリマー成分など)から分離することによって得られる。このような分離は、例えば懸濁液の濾過によって、容易に行うことが可能である。
【0051】
第2の実施形態では、ステップ(a)~(c)を、第1の実施形態について上述した通り行う。さらに、ステップ(b)における処理は、還元条件で実施される。それにより、少なくとも1つの還元剤が水性アルカリ媒体中に存在することとなり、懸濁液中に存在することとなる。還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム(Na)又は二酸化チオ尿素(CHS)から選択されることが好ましく、混合繊維くず1kgあたり1g~100g(例えば25g~75g)の濃度でアルカリ性媒体中に存在する。
【0052】
第3の実施形態では、上記の第1又は第2の実施形態におけるステップに加えて、ステップ(b)における処理後に、混合繊維くずを少なくとも1つの漂白ステップにかける。漂白ステップは、アルカリ性及び/又は酸性の条件で行うことができる。ステップ(b)における処理後に、少なくとも1つの酸化的漂白ステップを行うことが好ましい。したがって、前の処理の条件を中和し、かつその後の漂白ステップの効率を向上させるために、漂白ステップを行う前に、混合繊維くずを洗浄し、任意選択的に(optionally)プレスすることが好ましい。
【実施例
【0053】
以下の実施例において、本発明の範囲をいかなる事項についても制限することなく、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0054】
示された全ての実施例では、本発明に係る再生セルロース原材料の製造方法は混合繊維くずに適用され、処理のいくつかのパラメータは実施例全体を通して帰られている。全ての実施例において、繊維くずの組成は、まず、NIR分光法(近赤外分光法)によって決定された。処理後、得られた再生セルロース原材料をビュフナー漏斗で使用済み水性処理液から分離し、再びNIR分光法で分析してその組成(例えば、残留合成ポリマー成分の含有量など)を決定した。同様に、使用済み水性処理液を分析して、過剰な処理剤(例えば、加水分解剤/塩基など)の含有量を測定した。このようにして決定された再生セルロース原料の組成から、合成ポリマー成分の削減量及びセルロース成分の収率を求めた。
【0055】
<実施例A~C>
実施例A、B及びCは、セルロース成分61.1%、及び合成ポリマー成分37.9%の組成を有するベッドリネンの混合繊維くずを使用した場合の再生セルロース原材料の製造方法の結果を示している。セルロース成分は綿繊維から成り、合成ポリマー成分はPET繊維から成っていた。繊維くず中に含まれるその他の成分の含有量は0.1%未満であった。4つの実施例のいずれにおいても、混合繊維くずは粉砕された後、加水分解剤としてNaOHを使用したアルカリ性水性処理媒体で処理された。ステップ(b)の処理中の温度は、異なる時間、150℃に保たれた。さらに、NaOHの濃度は、混合繊維くずに対して70g/kgから110g/kgの間で変えた。全てのNaOH濃度は、水性アルカリ処理媒体中で混合繊維くずを処理した後に、使用済み水性処理媒体中に残留NaOHが存在しないように選択された。
【0056】
表1に実施例A~Cの結果をまとめる。
【0057】
<実施例D~G>
実施例D、E、F及びGでは、実施例A~Cと同様の再生セルロース原材料の製造方法を採用した。実施例D及びFでは、セルロース成分84%及び合成ポリマー成分16%の組成を有する混合された混合繊維くず(mixed blended textile waste)を使用した。セルロース成分は綿繊維から成り、合成ポリマー成分はPET繊維から成っていた。実施例E及びGでは、白シャツの混合繊維くずが使用され、その組成はセルロース成分88.2%及び合成ポリマー成分11.8%であった。全ての実施例における他の残留成分の含有量は、0.1%未満であると判断された。4つの実施例のいずれにおいても、混合繊維くずは粉砕された後、加水分解剤としてNaOHを使用したアルカリ水性処理媒体で処理された。実施例D、E及びGでは、ステップ(b)の処理中の温度を150℃に保ち、60分~180分の異なる持続時間で処理した。実施例Fでは、温度を130℃で150分間保持した。全ての実施例E~GにおけるNaOH濃度は、塩基の量と加水分解により開裂可能な結合の量との間の比率(nagent/nbonds)がおおよそ1.5~4になるように、混合繊維くずに対して100g/kgから200g/kgの間で変えた。したがって、再生セルロース原材料を得た後の使用済み水性処理液には、残留NaOHが存在していた。
【0058】
表1に実施例E~Gの結果をまとめる。
【0059】
<実施例H>
実施例Hでは、上記の実施例A~Gと同様の再生セルロース原材料の製造方法を採用し、セルロース成分が81.4%及び合成ポリマー成分が18.6%の組成のワイシャツの混合繊維くずを用いた。セルロース成分は綿繊維から成り、合成ポリマー成分はPET繊維から成っていた。その他の残留成分の含有率は0.1%未満であった。混合繊維くずを粉砕した後、加水分解剤としてNaOHを使用したアルカリ水性処理媒体で処理した。さらに、実施例Hでは、ステップ(b)における処理を還元条件下で行い、水性処理媒体中の還元剤として亜ジチオン酸ナトリウム(Na)を混合繊維くずに対して50g/kgの濃度で使用した。処理中の温度は130℃で120分間保持された。NaOHは混合繊維くずに対して150g/kgが選ばれた。
【0060】
表2に実施例Hの結果を示す。
【0061】
<比較例U、V及びW>
比較のために、実施例U、V及びWでは、上記と同様の手法で再生セルロース原材料を製造する方法を採用したが、処理中の温度は100℃以下に保たれた。実施例U~Wでは、異なる組成を有する混合繊維くずを使用した:実施例Uでは、セルロース成分76.5%及び合成ポリマー成分23.5%を含む混合繊維くずを使用し;実施例Vでは、セルロース成分84.0%及びポリマー成分16.0%を含む混合繊維くずを使用し;実施例Wでは、セルロース成分89.8%及び合成ポリマー成分10.2%を含む混合繊維くずを使用した。実施例U~Wの全てにおいて、他の残留成分の含有量は0.1%未満であった。3つの比較例のいずれにおいても、混合繊維くずは粉砕された後、加水分解剤としてNaOHを使用したアルカリ水性処理媒体で処理され、ステップ(b)の処理中の温度は90℃が120分間維持された。実施例V及びWでは、さらに、ステップ(b)における処理を還元条件下で行い、水性処理媒体中の還元剤として亜ジチオン酸ナトリウム(Na)を、混合繊維くずに対して50g/kgの濃度で使用した。
【0062】
表2に比較例U、V及びWの結果をまとめる。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】


本発明は以下の態様を含む。
<1> (a)少なくとも1つのセルロース成分及び少なくとも1つの合成ポリマー成分を含む混合繊維くず(blended textile waste)を提供するステップ;
(b)前記少なくとも1つの合成ポリマー成分を分解するために、前記混合繊維くずを、非酸化性の水性処理媒体中で処理するステップ、ここで当該処理は、100℃~200℃の温度で行われる;及び
(c)処理した混合繊維くずから再生セルロース原材料を得るステップ、
をこの順で含む、混合繊維くずからセルロース原材料をリサイクルする方法。
<2> 水性処理媒体が、少なくとも1つの加水分解剤を含み、
前記少なくとも1つの合成ポリマー成分が実質的に完全に分解されるように、前記少なくとも1つの加水分解剤の量が、前記混合繊維くず中の前記少なくとも1つの合成ポリマー成分の量と釣り合わされる、<1>に記載の方法。
<3> 前記少なくとも1つの加水分解剤が塩基であり、より具体的にはNaOHである、<2>に記載の方法。
<4> 水性処理媒体における前記少なくとも1つの加水分解剤の量が、前記少なくとも1つの合成ポリマー成分中の加水分解により開裂可能な結合1molあたり1mol以上である、<2>又は<3>に記載の方法。
<5> 前記水性処理媒体における前記少なくとも1つの加水分解剤の量が、前記少なくとも1つの合成ポリマー成分中の加水分解により開裂可能な結合1molあたり3mol未満である、<4>に記載の方法。
<6> ステップ(b)における処理が、110℃~190℃、より具体的には120℃~180℃の温度で行われる、<1>~<5>のいずれか1項に記載の方法。
<7> 前記少なくとも1つの合成ポリマー成分が、ポリエステル繊維又はポリアミド繊維の一種を含む、<1>~<6>のいずれか1項に記載の方法。
<8> ステップ(b)における処理が還元条件下で行われる、<1>~<7>のいずれか1項に記載の方法。
<9> ステップ(b)中に少なくとも1つの還元剤が存在する、<8>に記載の方法。
<10> ステップ(b)の後、前記混合繊維くずが、アルカリ及び/又は酸性条件下で、少なくとも1つの漂白ステップに、より具体的には酸化漂白ステップにかけられる、<1>~<9>のいずれか1項に記載の方法。
<11> 前記漂白ステップにかけられる前に、及び/又は複数の前記漂白ステップの間に、前記混合繊維くずが洗われ、任意選択的に(optionally)プレスされる、<10>に記載の方法。
<12> 前記混合繊維くずが、ステップ(b)における処理の前に粉砕及び/又は解体される(comminuted and/or disintegrated)、<1>~<11>のいずれか1項に記載の方法。
<13> ステップ(b)における処理の前に、非繊維質スクラップが前記混合繊維くずから少なくとも部分的に除去される、<1>~<12>のいずれか1項に記載の方法。
<14> <1>~<13>のいずれか1項に記載の方法により得られる再生セルロース原材料。
<15> セルロース成形品の製造方法における、<14>に記載の再生セルロース原材料の使用。