(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/40 20060101AFI20240613BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20240613BHJP
H01R 13/6473 20110101ALI20240613BHJP
H01R 13/506 20060101ALI20240613BHJP
H01R 13/41 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01R13/40 A
H01R12/71
H01R13/6473
H01R13/506
H01R13/41
(21)【出願番号】P 2021535394
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020029106
(87)【国際公開番号】W WO2021020459
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2019139203
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 英生
(72)【発明者】
【氏名】行武 広章
(72)【発明者】
【氏名】大熊 誉仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 仁
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-135821(JP,A)
【文献】特開平04-370677(JP,A)
【文献】特開2002-158070(JP,A)
【文献】特開2001-326037(JP,A)
【文献】特開平11-288759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、
前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、
前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、
前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有
し、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、
列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、
列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、
前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、
前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成され、
前記第一側保持部は、前記端子を包囲する第一側包囲部を含んで構成され、
前記第二側保持部は、前記端子を包囲する第二側包囲部を含んで構成される、
コネクタ。
【請求項2】
端子と、
前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、
前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、
前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有
し、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、
列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、
列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、
前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、
前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成され、
前記第一側保持部と前記第二側保持部とは、一直線上に位置する、
コネクタ。
【請求項3】
端子と、
前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、
前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、
前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有
し、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、
列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、
列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、
前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、
前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成され、
前記第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジングであり、
前記第二ハウジングは、前記第一ハウジングと基板との間に配置される実装ハウジングであり、
前記端子は、反嵌合方向を挿入方向として前記ハウジングに挿入される、
コネクタ。
【請求項4】
端子と、
前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、
前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、
前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有
し、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、
列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、
列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、
前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、
前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成され、
前記第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジングであり、
前記端子は、前記第一ハウジング又は前記第二ハウジングのうち前記第二ハウジング側から反嵌合方向を挿入方向として前記ハウジングに挿入され、
前記第二側保持部は、前記端子を包囲する第二側包囲部を含んで構成され、
前記第二側包囲部の嵌合方向側の端は、コネクタ嵌合方向側20%の範囲に位置する、
コネクタ。
【請求項5】
端子と、
前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、
前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、
前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有
し、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、
列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、
列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、
前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、
前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成され、
前記第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジングであり、
前記端子は、前記第一ハウジング又は前記第二ハウジングのうち前記第二ハウジング側から反嵌合方向を挿入方向として前記ハウジングに挿入され、
前記第二側保持部は、前記端子を包囲する第二側包囲部のみから構成される、
コネクタ。
【請求項6】
端子と、
前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、
前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、
前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有
し、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、
列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、
列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、
前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、
前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成され、
前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングは、係合爪部と、係止部と、を含んで構成される分離防止機構であって、前記係合爪部が前記係止部に引っ掛かることで前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングの組付方向における分離を防止する分離防止機構を備える、
コネクタ。
【請求項7】
端子と、
前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、
前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、
前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有
し、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、
列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、
列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、
前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、
前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成され、
前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングは、凸部と凹部とを含んで構成された変位規制機構であって、前記凹部に前記凸部が挿入されることで前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの組付方向に直交する方向の相対変位を規制する変位規制機構を備える、
コネクタ。
【請求項8】
端子と、
前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、
前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、
前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有
し、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、
列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、
列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、
前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、
前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成され、
前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングは、互いに相対変位させるために設けられるものではない、
コネクタ。
【請求項9】
端子と、
前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、
前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、
前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有
し、
前記端子は、前記第一ハウジング又は前記第二ハウジングのうち前記第二ハウジング側から前記ハウジングに挿入され、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、信号端子と、電源端子と、を含んで構成され、
前記信号端子の数は、前記電源端子の数よりも多く、
前記信号端子は、前記第一ハウジングに圧入される第一側圧入部と、前記第二ハウジングに圧入される第二側圧入部と、を有し、
前記電源端子は、前記第二ハウジングに圧入される第二側圧入部を有し、前記第一ハウジングに圧入される第一側圧入部を有しない、
コネクタ。
【請求項10】
端子と、
前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、
前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、
前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有
し、
前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングは、係合爪部と、係止部と、を含んで構成される分離防止機構であって、前記係合爪部が前記係止部に引っ掛かることで前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングの組付方向における分離を防止する分離防止機構を備え、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、複数の信号端子と、複数の電源端子と、を含み、
前記複数の電源端子は、
前記複数の信号端子に対し当該信号端子のピッチ方向一方側に配置される一又は複数の一方側電源端子と、
前記複数の信号端子に対し前記ピッチ方向他方側に配置される一又は複数の他方側電源端子と、を含み、
前記分離防止機構は、
前記複数の信号端子と前記一又は複数の一方側電源端子との間に形成された一方側分離防止機構と、
前記複数の信号端子と前記一又は複数の他方側電源端子との間に形成された他方側分離防止機構と、を含む、
コネクタ。
【請求項11】
前記第一側保持部は、前記端子を包囲する第一側包囲部を含んで構成され、
前記第二側保持部は、前記端子を包囲する第二側包囲部を含んで構成され、
前記第一側包囲部と前記第二側包囲部とは、一直線上に位置し、
前記第一側包囲部と前記第二側包囲部との間の距離は、前記第一側包囲部と前記第二側包囲部のうちの何れか短い方よりも短い、
請求項1~請求項10の何れか1項に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、
列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、
列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、
前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、
前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成される、
請求項1~請求項11の何れか1項に記載のコネクタ。
【請求項13】
前記端子は、前記第一ハウジング又は前記第二ハウジングのうち前記第二ハウジング側から前記ハウジングに挿入され、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、信号端子と、電源端子と、を含んで構成され、
前記信号端子の数は、前記電源端子の数よりも多く、
前記信号端子は、前記第一ハウジングに圧入される第一側圧入部と、前記第二ハウジングに圧入される第二側圧入部と、を有し、
前記電源端子は、前記第二ハウジングに圧入される第二側圧入部を有し、前記第一ハウジングに圧入される第一側圧入部を有しない、
請求項1~請求項12の何れか1項に記載のコネクタ。
【請求項14】
前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングは、係合爪部と、係止部と、を含んで構成される分離防止機構であって、前記係合爪部が前記係止部に引っ掛かることで前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングの組付方向における分離を防止する分離防止機構を備え、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、複数の信号端子と、複数の電源端子と、を含み、
前記複数の電源端子は、
前記複数の信号端子に対し当該信号端子のピッチ方向一方側に配置される一又は複数の一方側電源端子と、
前記複数の信号端子に対し前記ピッチ方向他方側に配置される一又は複数の他方側電源端子と、を含み、
前記分離防止機構は、
前記複数の信号端子と前記一又は複数の一方側電源端子との間に形成された一方側分離防止機構と、
前記複数の信号端子と前記一又は複数の他方側電源端子との間に形成された他方側分離防止機構と、を含む、
請求項1~請求項13の何れか1項に記載のコネクタ。
【請求項15】
前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングは、凸部と凹部とを含んで構成された変位規制機構であって、前記凹部に前記凸部が挿入されることで前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの組付方向に直交する方向の相対変位を規制する変位規制機構を備え、
前記端子は、複数設けられ、
複数の前記端子は、
列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、
列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、
前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、
前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成され、
前記変位規制機構の前記凸部は、前記第一ハウジングに形成され、前記変位規制機構の前記凹部は、前記第二ハウジングに形成され、
前記凹部は、複数設けられ、
複数の前記凹部は、
前記第二側保持部に対し列間方向一方側に形成された一又は複数の一方側凹部と、
前記第二側保持部に対し列間方向他方側に形成された一又は複数の他方側凹部と、から構成される、
請求項1~請求項14の何れか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されたようなコネクタが知られている。このコネクタ(プラグコネクタ2)は、端子とハウジングとを備える。端子は、ハウジングに挿入されることで、ハウジングに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコネクタには、端子を保持する保持部の設計自由度の向上が望まれる。
【0005】
すなわち、このコネクタでは、一つのハウジング(プラグハウジング6)が端子を保持する。そのため、ハウジング成形の事情により、保持部が、一端側の保持部(取付溝6a3、取付孔6b1)と、他端側の保持部(取付溝6c2)と、に分割されている。これにより、保持部の長尺化が抑制され、ハウジング成形時に保持部を形成しやすくなっている。具体的に説明すると、保持部の長尺化が抑制されることで、ハウジング成形時に用いられる、保持部を形成するための金型のパーツを長く形成しなくて済む。そのため、パーツが破損しにくい。
しかし、このコネクタでは、保持部を形成しやすい代わりに、ハウジング下部の幅方向(列間方向)中央に大きな空間が形成される。この空間は、ハウジングの成形時に金型のパーツが位置していた部分である。そして、この空間に、端子における一端側の保持部に保持された部分が露出している。このため、端子における当該露出した部分は、そのインピーダンスが端子の他の部分に比べて上昇してしまう。
【0006】
本開示は、端子と、端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタにおいて、端子を保持する保持部の設計自由度を向上させ、インピーダンス等のコネクタ特性の調整を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様に係るコネクタは、端子と、前記端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタであって、前記ハウジングは、第一ハウジングと、第二ハウジングと、を含んで構成され、前記第一ハウジングは、前記端子の一部を保持する第一側保持部を有し、前記第二ハウジングは、前記端子の他の一部を保持する第二側保持部を有する。
【0008】
なお、本明細書において、端子の一部に対するハウジングの「保持」とは、端子の一部に対して互いに対向する二方向を含む二方向以上の方向から当接又は近接することで、端子の一部の当該二方向以上の方向への移動を規制することを意味する。
【0009】
この態様では、コネクタは、端子と、端子が挿入されたハウジングと、を備える。ハウジングは、第一ハウジングと第二ハウジングとを含んで構成される。第一ハウジングは、端子の一部を保持する第一側保持部を有し、第二ハウジングは、端子の他の一部を保持する第二側保持部を有する。
つまり、端子を保持する保持部が、第一ハウジングと第二ハウジングとに分けて形成される。このため、一つのハウジングに端子を保持する保持部の全部が形成される態様と比較して、金型によるハウジング成形の性質上、保持部の設計自由度が向上する。保持部について設計自由度が向上すると、インピーダンス等のコネクタ特性の調整が容易となる。
【0010】
第二の態様に係るコネクタは、第一の態様において、前記第一側保持部は、前記端子を包囲する第一側包囲部を含んで構成され、前記第二側保持部は、前記端子を包囲する第二側包囲部を含んで構成される。
【0011】
この態様では、第一側保持部は、端子を包囲する第一側包囲部を含んで構成され、第二側保持部は、端子を包囲する第二側包囲部を含んで構成される。つまり、第一側保持部及び第二側保持部は、共に、端子を包囲する包囲部を含んで構成される。
このため、例えば第一側保持部が包囲部を含んで構成されるものの第二側保持部が包囲部を含んで構成されない態様と比較して、端子のうち第二ハウジングに保持される部分のインピーダンスの上昇を抑えることができる。
【0012】
第三の態様に係るコネクタは、第一の態様において、前記第一側保持部と前記第二側保持部とは、一直線上に位置する。
【0013】
この態様では、第一側保持部と第二側保持部とは、一直線上に位置する。
このため、端子のうち、第一側保持部に保持される部分と第二側保持部に保持される部分との間に、曲部を形成する必要がない。
【0014】
第四の態様に係るコネクタは、第二の態様において、前記第一側包囲部と前記第二側包囲部とは、一直線上に位置する。
【0015】
この態様では、第一側包囲部と第二側包囲部とは、一直線上に位置する。
このため、コネクタ製造の際、第一ハウジングと第二ハウジングとを互いに位置合わせすると、第一側包囲部と第二側包囲部とが一直線上に位置する。したがって、当該一直線に沿って端子を挿入することができる。
【0016】
第五の態様に係るコネクタは、第四の態様において、前記第一側包囲部と前記第二側包囲部との間の距離は、前記第一側包囲部と前記第二側包囲部のうちの何れか短い方よりも短い。
【0017】
この態様では、第一側包囲部と第二側包囲部との間の距離が短い(具体的には、第一側包囲部と第二側包囲部のうちの何れか短い方よりも短い)。
このため、端子のうち第一側包囲部と第二側包囲部との間に位置する部分、すなわちハウジングに包囲されない部分の長さが短くなる。その結果、当該長さが長い態様と比較して、インピーダンスが上昇しやすい区間を短くすることができる。
【0018】
第六の態様に係るコネクタは、第一~第五の何れかの態様において、前記第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジングであり、前記第二ハウジングは、前記第一ハウジングと基板との間に配置される実装ハウジングであり、前記端子は、反嵌合方向を挿入方向として前記ハウジングに挿入される。
【0019】
この態様では、第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジングであり、第二ハウジングは、第一ハウジングと基板との間に配置される実装ハウジングである。端子は、反嵌合方向を挿入方向としてハウジングに挿入される。
このため、この態様は、嵌合方向に大きなコネクタに好適である。
【0020】
第七の態様に係るコネクタは、第一~第六の何れかの態様において、前記端子は、複数設けられ、複数の前記端子は、列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成される。
【0021】
この態様では、端子は、複数設けられる。複数の端子は、列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含む。第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、突出壁の列間方向一方側の壁面には、複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、突出壁の列間方向他方側の壁面には、複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成される。
このため、この態様は、多極のプラグコネクタに好適である。
【0022】
第八の態様に係るコネクタは、第一~第七の何れかの態様において、前記第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジングであり、前記端子は、前記第一ハウジング又は前記第二ハウジングのうち前記第二ハウジング側から反嵌合方向を挿入方向として前記ハウジングに挿入され、前記第二側保持部は、前記端子を包囲する第二側包囲部を含んで構成され、前記第二側包囲部の嵌合方向側の端は、コネクタ嵌合方向側20%の範囲に位置する。
【0023】
なお、「コネクタ嵌合方向側20%の範囲」とは、コネクタの嵌合方向の寸法を100%としたとき、コネクタの嵌合側の20%の範囲を意味する。
【0024】
この態様では、第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジングである。端子は、第一ハウジング又は第二ハウジングのうち第二ハウジング側から反嵌合方向を挿入方向としてハウジングに挿入される。
そして、第二側保持部は、端子を包囲する第二側包囲部を含んで構成され、第二側包囲部の嵌合方向側の端は、コネクタ嵌合方向側20%の範囲に位置する。
このため、端子の嵌合方向側の部分を第二包囲部により効果的に包囲することができる。したがって、例えば、端子の嵌合方向側の部分(下部)が露出した特許文献1のコネクタと比較して、端子の嵌合方向側の部分においてインピーダンスが上昇してしまうことを抑制できる。
【0025】
第九の態様に係るコネクタは、第一~第八の何れかの態様において、前記第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジングであり、前記端子は、前記第一ハウジング又は前記第二ハウジングのうち前記第二ハウジング側から反嵌合方向を挿入方向として前記ハウジングに挿入され、前記第二側保持部は、前記端子を包囲する第二側包囲部のみから構成される。
【0026】
この態様では、第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジングである。端子は、第一ハウジング又は第二ハウジングのうち第二ハウジング側から反嵌合方向を挿入方向としてハウジングに挿入される。
そして、第二側保持部は、端子を包囲する第二側包囲部のみから構成される。
このため、端子の嵌合方向側の部分を第二ハウジングにより効果的に包囲することができる。したがって、例えば、端子の嵌合方向側の部分(下部)が露出した特許文献1のコネクタと比較して、端子の嵌合方向側の部分においてインピーダンスが上昇してしまうことを抑制できる。
この態様は、コネクタが嵌合方向に長い場合に好適である。また、この態様において、第二ハウジング及び第二側包囲部を嵌合方向に長く形成することで、端子における包囲される部分を長くすることができる。
【0027】
第十の態様に係るコネクタは、第一~第九の何れかの態様において、前記端子は、前記第一ハウジングに圧入される第一側圧入部と、前記第二ハウジングに圧入される第二側圧入部と、を有する。
【0028】
この態様では、端子は、第一ハウジングに圧入される第一側圧入部と、第二ハウジングに圧入される第二側圧入部と、を有する。
このため、第一ハウジングと第二ハウジングとが分離することが端子によって抑制される。
【0029】
第十一の態様に係るコネクタは、第一~第十の何れかの態様において、前記端子は、前記第一ハウジング又は前記第二ハウジングのうち前記第二ハウジング側から前記ハウジングに挿入され、前記端子は、複数設けられ、複数の前記端子は、信号端子と、電源端子と、を含んで構成され、前記信号端子の数は、前記電源端子の数よりも多く、前記信号端子は、前記第一ハウジングに圧入される第一側圧入部と、前記第二ハウジングに圧入される第二側圧入部と、を有し、前記電源端子は、前記第二ハウジングに圧入される第二側圧入部を有し、前記第一ハウジングに圧入される第一側圧入部を有しない。
【0030】
この態様では、信号端子及び電源端子は、第一ハウジング又は第二ハウジングのうち第二ハウジング側からハウジングに挿入される。信号端子は、第一ハウジングに圧入される第一側圧入部と、第二ハウジングに圧入される第二側圧入部と、を有する。電源端子は、第二ハウジングに圧入される第二側圧入部を有し、第一ハウジングに圧入される第一側圧入部を有しない。
このため、第一ハウジングと第二ハウジングとが分離することが信号端子によって抑制される。また、電源端子は第一ハウジングに圧入される第一側圧入部を有しないので、第一ハウジングと第二ハウジングとを位置合わせした状態で、電源端子のハウジングへの挿入が容易である。
また、信号端子の数は、電源端子の数よりも多いので、第一ハウジングと第二ハウジングとの分離の抑制が、数の多い方の信号端子によって行われることとなる。
つまり、この態様では、信号端子と電源端子の両方が第一側圧入部を有する態様と比較して、端子のハウジングへの挿入が容易になると共に、数の少ない方の電源端子のみが第一側圧入部を有する態様と比較して、第一ハウジングと第二ハウジングとの分離抑制を確実に行える。
【0031】
第十二の態様に係るコネクタは、第一~第十一の何れかの態様において、前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングは、係合爪部と、係止部と、を含んで構成される分離防止機構であって、前記係合爪部が前記係止部に引っ掛かることで前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングの組付方向における分離を防止する分離防止機構を備える。
【0032】
この態様では、第一ハウジング及び第二ハウジングは、分離防止機構を備える。分離防止機構は、係合爪部と係止部とを含んで構成され、係合爪部が係止部に引っ掛かることで第一ハウジング及び第二ハウジングの組付方向における分離を防止する。
このため、第一ハウジング及び第二ハウジングの組付方向における分離が、第一ハウジング及び第二ハウジング自身により防止される。
なお、第一ハウジング及び第二ハウジングの組付方向における分離の防止は、この態様の分離防止機構と、他の手段とを組み合わされて行われてもよい。つまり、この態様は、第一ハウジング及び第二ハウジングの組付方向における分離を防止する他の手段を備えるコネクタを除外しない。
【0033】
第十三の態様に係るコネクタは、第十二の態様において、前記端子は、複数設けられ、複数の前記端子は、複数の信号端子と、複数の電源端子と、を含み、前記複数の電源端子は、前記複数の信号端子に対し当該信号端子のピッチ方向一方側に配置される一又は複数の一方側電源端子と、前記複数の信号端子に対し前記ピッチ方向他方側に配置される一又は複数の他方側電源端子と、を含み、前記分離防止機構は、前記複数の信号端子と前記一又は複数の一方側電源端子との間に形成された一方側分離防止機構と、前記複数の信号端子と前記一又は複数の他方側電源端子との間に形成された他方側分離防止機構と、を含む。
【0034】
この態様では、端子は、複数設けられる。複数の端子は、複数の信号端子と、複数の電源端子と、を含む。複数の電源端子は、複数の信号端子に対し当該信号端子のピッチ方向一方側に配置される一又は複数の一方側電源端子と、複数の信号端子に対しピッチ方向他方側に配置される一又は複数の他方側電源端子と、を含む。
そして、分離防止機構は、複数の信号端子と一又は複数の一方側電源端子との間に形成された一方側分離防止機構と、複数の信号端子と一又は複数の他方側電源端子との間に形成された他方側分離防止機構と、を含む。
このため、信号端子のピッチ方向に垂直な方向に小型のコネクタとすることができる。
【0035】
第十四の態様に係るコネクタは、第一~第十三の何れかの態様において、前記第一ハウジング及び前記第二ハウジングは、凸部と凹部とを含んで構成された変位規制機構であって、前記凹部に前記凸部が挿入されることで前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの組付方向に直交する方向の相対変位を規制する変位規制機構を備える。
【0036】
この態様では、第一ハウジング及び第二ハウジングは、変位規制機構を備える。変位規制機構は、凸部と凹部とを含んで構成され、凹部に凸部が挿入されることで第一ハウジングと第二ハウジングとの組付方向に直交する方向の相対変位を規制する。
このため、第一ハウジングと第二ハウジングとの組付方向に直交する方向の相対変位が、第一ハウジング及び第二ハウジング自身により防止される。
なお、第一ハウジング及び第二ハウジングの組付方向に直交する方向の相対変位の防止は、この態様の変位規制機構と、他の手段とを組み合わされて行われてもよい。つまり、この態様は、第一ハウジング及び第二ハウジングの組付方向に直交する方向の相対変位を防止する他の手段を備えるコネクタを除外しない。
【0037】
第十五の態様に係るコネクタは、第十四の態様において、前記端子は、複数設けられ、複数の前記端子は、列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子と、列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子と、を含み、前記第一ハウジングは、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁を有し、前記突出壁の列間方向一方側の壁面に、前記複数の一方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記突出壁の列間方向他方側の壁面に、前記複数の他方側端子が保持される複数の溝が形成され、前記変位規制機構の前記凸部は、前記第一ハウジングに形成され、前記変位規制機構の前記凹部は、前記第二ハウジングに形成され、前記凹部は、複数設けられ、複数の前記凹部は、前記第二側保持部に対し列間方向一方側に形成された一又は複数の一方側凹部と、前記第二側保持部に対し列間方向他方側に形成された一又は複数の他方側凹部と、から構成される。
【0038】
この態様では、突出壁の列間方向両側の壁面に、複数の端子が保持される複数の溝が形成される。このようなコネクタでは、突出壁の列間方向外側に、相手側コネクタ等の接続対象物の一部が配置される空間が形成される。
そして、この態様では、当該空間よりも嵌合方向側の部分を利用して、変位規制機構が形成される。よって、変位規制機構を備えつつも小型なコネクタとすることができる。
【発明の効果】
【0039】
本開示によれば、端子と、端子が挿入されたハウジングと、を備えるコネクタにおいて、端子を保持する保持部の設計自由度を向上させ、インピーダンス等のコネクタ特性の調整を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図5】実施形態のコネクタをピッチ方向に直交する平面(ピッチ方向中央の位置)で切断した様子を示す断面斜視図である。
【
図6】実施形態のコネクタを列間方向に直交する平面(列間方向中央の位置)で切断した様子を示す断面斜視図である。
【
図7】実施形態のコネクタをピッチ方向に直交する平面(ピッチ方向中央の位置)で切断した様子を示す断面図である。
【
図8】実施形態のコネクタをピッチ方向に直交する平面(電源端子の位置)で切断した様子を示す断面図である。
【
図9】実施形態のコネクタを列間方向に直交する平面(信号端子の位置)で切断した様子を示す断面図である。
【
図11】実施形態のハウジングの分解斜視図である。
【
図12】実施形態のハウジングの下方から見た分解斜視図である。
【
図13】実施形態のハウジングをピッチ方向に直交する平面で切断した様子を示す分解断面図である。
【
図14】実施形態のハウジングをピッチ方向に直交する平面で切断した様子を示す断面図である。
【
図15】実施形態のハウジングを列間方向に直交する平面で切断した様子を示す分解断面図である。
【
図16】実施形態のハウジングを列間方向に直交する平面で切断した様子を示す断面図である。
【
図17】実施形態の一対の信号端子の斜視図である。
【
図18】実施形態の複数の電源端子の斜視図である。
【
図19】実装ハウジングの信号端子保持孔の下部を示す断面図(
図14の19-19線断面図)である。
【
図20】実装ハウジングの信号端子保持孔の下部と上部との境界を示す断面図(
図14の20-20線断面図)である。
【
図21】実装ハウジングの信号端子保持孔の上部を示す断面図(
図14の21-21線断面図)である。
【
図22】嵌合ハウジングの信号端子保持孔を示す断面図(
図14の22-22線断面図)である。
【
図23】嵌合ハウジングの信号端子保持溝を示す断面図(
図14の23-23線断面図)である。
【
図24】嵌合ハウジングの信号端子保持溝を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本開示の実施形態について説明する。
【0042】
各図に示す矢印Xはコネクタ前方向を示し、矢印Yはコネクタ幅方向一方側を示し、矢印Zはコネクタ上方向を示す。なお、これら方向を示す語は説明の便宜上定義したものであり、コネクタが使用される状態での姿勢を限定するものではない。
また、+X方向を(信号端子10の)列間方向一方側、+Y方向をピッチ方向一方側、-Z方向を嵌合方向、+Z方向を反嵌合方向ということがある。
また、±Z方向を(嵌合ハウジング30と実装ハウジング40との)組付方向ということがある。
【0043】
図1~
図10には、本実施形態に係るコネクタ100が示されている。
【0044】
コネクタ100は、互いに平行に配置される基板同士を接続するためのコネクタである。
具体的には、一方の基板91にコネクタ100が実装され、他方の基板(不図示)に相手側コネクタ(不図示)が実装され、コネクタ100と相手側コネクタとが嵌合接続することで、一方の基板91と他方の基板(不図示)とが電気的に接続される。コネクタ100は、上方向から相手側コネクタが嵌合接続可能に構成される。
【0045】
コネクタ100は、所謂可動(フローティング)コネクタではない。
具体的には、コネクタ100は、嵌合ハウジング30と実装ハウジング40とを備えるが、嵌合ハウジング30及び実装ハウジング40は、互いに相対変位させるために設けられるものではない。
但し、上記説明は、嵌合ハウジング30及び実装ハウジング40が僅かに相対変位するコネクタ100を本開示の範囲から排除するものではない。実際のところ、本実施形態のコネクタ100は、嵌合ハウジング30及び実装ハウジング40が僅かに相対変位し得る。
【0046】
図10等に示すように、コネクタ100は、複数の端子10,20と、複数の端子10,20を保持するハウジング30,40と、を備える。端子10,20は、金属等の電気が流れる材料で形成される。ハウジング30,40は、合成樹脂等の絶縁性材料で形成される。
【0047】
複数の端子10,20は、複数の信号端子10と、複数の電源端子20と、から構成される。
【0048】
複数の信号端子10は、列間方向一方側の複数の一方側信号端子10Aと、列間方向他方側の複数の他方側信号端子10Bと、から構成される。
一方側信号端子10Aと他方側信号端子10Bとは、互いに同一構造であるものの、列間方向で対向する姿勢で配列される(
図17参照)。複数の一方側信号端子10Aは、互いに同一構造かつ同一姿勢とされ、ピッチ方向に等間隔に配列される。複数の他方側信号端子10Bは、互いに同一構造かつ同一姿勢とされ、ピッチ方向に等間隔に配列される。
一方側信号端子10Aと他方側信号端子10Bとを特に区別しないときは、単に信号端子10という。
【0049】
図10に示すように、複数の電源端子20は、ピッチ方向一方側の一対の一方側電源端子20Aと、ピッチ方向他方側の一対の他方側電源端子20Bと、から構成される。
一方側電源端子20Aは、複数の信号端子10が配置される領域に対してピッチ方向一方側に配置され、他方側電源端子20Bは、複数の信号端子10が配置される領域に対してピッチ方向他方側に配置される。一対の一方側電源端子20Aは、列間方向において対称の構造とされ、一対の他方側電源端子20Bも、列間方向において対称の構造とされる。
一方側電源端子20Aと他方側電源端子20Bとを区別しないときは、単に電源端子20という。
【0050】
(信号端子10の詳細)
図7、
図17に示すように、信号端子10は、ハウジング30,40に挿入される挿入部11と、ハウジング30,40に挿入されない非挿入部12と、を有する。
挿入部11は、ハウジング30,40に挿入される方向(「挿入方向」という。)である上下方向に直線状に延びる。挿入部11は、ハウジング30,40に対して下方から上方へ向けて挿入される。挿入部11は、その板幅方向をピッチ方向に向ける。
非挿入部12は、挿入部11の下側に接続され、挿入部11の下端から列間方向外側に向かって延びる。
【0051】
信号端子10は、基板91に半田付け等で固定される基板固定部124を有する。基板固定部124は、列間方向に直線状に延びる。基板固定部124は、非挿入部12の一部として形成される。
【0052】
図7に示すように、信号端子10は、嵌合ハウジング30に保持される嵌合側被保持部13,14と、実装ハウジング40に保持される実装側被保持部15と、を有する。なお、本明細書において、端子の一部に対するハウジングの「保持」とは、端子の一部に対して互いに対向する二方向を含む二方向以上の方向から当接又は近接することで、端子の一部の当該二方向以上の方向への移動を規制することを意味する。
【0053】
嵌合側被保持部13,14は、嵌合ハウジング30に形成された上下方向に延びる信号端子保持溝36(
図11、
図13参照)に収容される露出部13と、嵌合ハウジング30に形成された上下方向に延びる信号端子保持孔37に収容される被包囲部14と、を有する。露出部13は、嵌合ハウジング30に対し列間方向外側を除いた三方向(列間方向内側、ピッチ方向両側)から当接又は近接された状態となり、被包囲部14は、嵌合ハウジング30に対しピッチ方向及び列間方向の四方向から当接又は近接された状態となる。
【0054】
実装側被保持部15は、実装ハウジング40に形成された上下方向に延びる信号端子保持孔41(
図13参照)に収容される被包囲部15のみを有する。実装側被保持部15(被包囲部15)は、実装ハウジング40に対しピッチ方向及び列間方向の四方向から当接又は近接された状態となる。
【0055】
嵌合側被保持部13,14及び実装側被保持部15は、何れも、上下方向(挿入方向)に直線状に延びる挿入部11の一部として形成される。
以下、嵌合側被保持部13,14及び実装側被保持部15を特に区別しないときは、単に被保持部13,14,15という。
【0056】
図17に示すように、信号端子10は、相手側コネクタの端子が導通接触する導通接触部131を有する。導通接触部131は、嵌合側被保持部13,14の露出部13の一部として形成される。
【0057】
図9、
図17に示すように、信号端子10は、実装ハウジング40に圧入される実装側圧入部151を有する。実装側圧入部151には、その板幅方向両側であるピッチ方向両側に係止突起が形成される。実装側圧入部151は、複数(2つ)形成される。複数の実装側圧入部151は、何れも、実装側被保持部15の上下方向中央よりも下側に形成される。
【0058】
信号端子10は、嵌合ハウジング30に圧入される嵌合側圧入部141を有する。嵌合側圧入部141には、その板幅方向両側であるピッチ方向両側に係止突起が形成される。嵌合側圧入部141は、嵌合側被保持部13,14の被包囲部14の一部として形成される。
【0059】
図7に示すように、信号端子10の非挿入部12は、曲部121と、第一水平部122と、傾斜部123と、第二水平部124と、を有する。
曲部121は、挿入部11の下側が列間方向外側へ向けて略90度曲げられた部分であり、挿入部11と第一水平部122とを接続する。
第一水平部122は、基板91対し上方に離間した位置を、列間方向外側へ向けて延びる。
傾斜部123は、第一水平部122と第二水平部124とを斜めに繋ぐ部分であり、第一水平部122から第二水平部124に向けて列間方向外側かつ下方の斜め下方へ向けて延びる。
第二水平部124は、傾斜部123から列間方向外側へ向けて直線状に延び、基板91の面に沿って配置される部分である。第二水平部124は、基板固定部124として機能する。
【0060】
図17に示すように、信号端子10は、幅広部16と、幅広部16よりも幅寸法が小さい幅狭部17と、を有する。幅狭部17は、幅広部16に対して下方に形成され、幅寸法が変化する幅変部18を介して幅広部16と接続する。幅広部16は、端子延在方向である上下方向に沿って一様の板幅を有し、幅狭部17も、端子延在方向に沿って一様の板幅を有する。幅変部18は、幅狭部17から幅広部16に向けて板幅が徐々に増大するように形成される。コネクタ100と相手側コネクタとが嵌合限界まで嵌合した状態(嵌合方向で最大限に近づいた状態)で、信号端子10と相手側コネクタの信号端子との接触位置は、幅広部16の下部又は幅変部18となる。
幅狭部17を形成することでインピーダンスを上昇させつつ、接続対象物との導通接触部を幅の広い幅広部16又は幅変部18として接続信頼性を確保している。
【0061】
信号端子10は、先端部19を有する。先端部19は、幅広部16に対して上方に、幅広部16に続いて形成される。先端部19では、幅広部16から離れる方向(上方)に進むに従い、その板幅及び板厚が徐々に小さくなる。
【0062】
図7、
図17に示すように、信号端子10は、実装側被保持部15の一部として形成されたビード152を有する。ビード152は、実装側被保持部15の板幅方向中央部を列間方向外側に膨出させるように形成される。ビード152は、上下方向に延びる。実装側被保持部15におけるビード152が形成される位置は、複数(2つ)の実装側圧入部151のうち下側の実装側圧入部151と上下方向(挿入方向)で重なる位置である。ビード152により、実装側被保持部15が、実装ハウジング40の信号端子保持孔41における列間方向内側に寄った位置に配置されやすくなる。
【0063】
図17に示すように、信号端子10は、当該信号端子10をハウジング30,40に挿入するための押圧部125を有する。押圧部125は、非挿入部12の曲部121の直ぐ上方に形成され、板幅が拡大されている。ハウジング30,40に信号端子10を挿入する際、押圧部125が上方に向けて押圧される。
【0064】
(電源端子20の詳細)
図9、
図18に示すように、電源端子20は、上下方向に延びハウジング30,40に挿入される挿入部21と、ハウジング30,40に挿入されない非挿入部22と、を有する。挿入部21は、その板幅方向を列間方向に向ける。非挿入部22は、挿入部21の下側に接続される。
【0065】
図8、
図18に示すように、挿入部21は、その上部を構成する幅狭部23と、その下部を構成する幅広部24と、を有する。
【0066】
図8、
図9に示すように、挿入部21は、嵌合ハウジング30に保持される嵌合側被保持部25と、実装ハウジング40に保持される実装側被保持部26と、を有する。
幅狭部23の上側の一部が、嵌合側被保持部25となり、幅広部24の全体と幅狭部23の下側の一部とが、実装側被保持部26となる。
【0067】
図8、
図18に示すように、電源端子20は、実装ハウジング40に圧入されるための係止突起241を有する。係止突起241は、幅広部24に形成される。係止突起241は、板幅方向のうち一方側(列間方向外側)のみに形成される。係止突起241は、上下方向(挿入方向)に複数(3つ)形成される。複数の係止突起241のうち最も上方の係止突起241は、実装側被保持部26の上下方向中央よりも上方に形成され、最も下方の係止突起241は、実装側被保持部26の上下方向中央よりも下方に形成される。
【0068】
一方、電源端子20は、嵌合ハウジング30に圧入されるための係止突起を有しない。
【0069】
図18に示すように、非挿入部22は、曲部221と、第一水平部222と、傾斜部223と、第二水平部224と、を有する。
曲部221は、挿入部21の下側がピッチ方向外側へ向けて略90度曲げられた部分であり、挿入部21と第一水平部222とを接続する。
第一水平部222は、基板91に対して上方に離間した位置に配置され、板厚方向を上下方向に向ける。第一水平部222は、挿入部11に対してピッチ方向外側に形成される。
傾斜部223は、第一水平部222に対して列間方向外側に位置する。傾斜部223は、第二水平部224と第一水平部222とを斜めに接続する。
第二水平部224は、板厚方向を上下方向に向け、傾斜部223に対して列間方向外側に形成される。第二水平部224は、基板に半田付けにより固定される基板固定部224として機能する。第二水平部224は、傾斜部223の列間方向外側に位置する部分と、当該部分に対してピッチ方向内側に拡大された部分と、から構成される。
【0070】
図8に示すように、挿入部21の下端であって、非挿入部22と繋がる部分に対して板幅方向(列間方向)の両側には、一対の当接面211が形成される。電源端子20をハウジング30,40に対し、下方から上方へ向けて挿入する際、一対の当接面211に治具等を当てて上方へ向けて押し込む。非挿入部22は、挿入部11(の幅広部24)の板幅方向中央に対し、コネクタ列間方向中央に寄った位置に接続される。
【0071】
幅狭部23は、幅広部24の板幅方向中央に対してコネクタ列間方向中央に寄った位置で、幅広部24に接続される。より具体的には、幅狭部23は上下方向に沿って一様の板幅で延びる。幅狭部23の板幅方向のうち列間方向外側の端は、板厚方向から見た幅広部24の図心(
図8と同じ方向から見た図心)よりもコネクタ列間方向内側に位置する。
【0072】
≪ハウジング30,40≫
図11~
図16に示すように、ハウジング30,40は、「第一ハウジング」としての嵌合ハウジング30と、「第二ハウジング」としての実装ハウジング40と、から構成される。
【0073】
≪嵌合ハウジング30(第一ハウジング)≫
嵌合ハウジング30は、ハウジング30,40の上部を構成する。
【0074】
図16に示すように、嵌合ハウジング30は、そのピッチ方向中央の部分を構成するピッチ方向中央部30Y1と、そのピッチ方向外側の部分を構成する一対のピッチ方向外側部30Y2と、から構成される。
また、
図14に示すように、嵌合ハウジング30は、その列間方向中央の部分を構成する列間方向中央部30X1と、その列間方向外側の部分を構成する一対の列間方向外側部30X2と、から構成される。
【0075】
図11、
図12、
図13に示すように、嵌合ハウジング30は、底壁31と、底壁31の周縁から上方へ立設した周壁32と、底壁31の中央から上方に突出した突出壁33と、底壁31から下方に突出した複数(6つ)の位置決め凸部34と、底壁31から下方に突出した一対の突出爪部35と、を有する。
【0076】
嵌合ハウジング30には、コネクタ100と相手側コネクタとの接続時に、相手側コネクタの一部が配置される嵌合凹部30Uが形成される。嵌合凹部30Uは、嵌合ハウジング30の底壁31の上方の空間であって、周壁32に囲まれた空間である。
【0077】
(信号端子保持溝36)
突出壁33は、嵌合凹部30Uの底面から中央から上方へ向けて立設される。突出壁33は、ピッチ方向に延在する壁であり、その壁厚方向(列間方向)両側に一対の壁面33A,33Bを有する。突出壁33の一対の壁面33A,33Bには、信号端子10を保持するための信号端子保持溝36がピッチ方向に並んで複数形成される。突出壁33は、嵌合ハウジング30のピッチ方向中央部30Y1かつ列間方向中央部30X1に形成される。
信号端子保持溝36は、「第一側保持部」に相当する。
【0078】
(信号端子保持孔37)
嵌合ハウジング30の底壁31には、この底壁31を上下方向に貫通する信号端子保持孔37が形成される。信号端子保持孔37は、信号端子保持溝36の下方に、信号端子保持溝36に連続して形成される。
信号端子保持孔37は、「第一側保持部」の「第一側包囲部」に相当する。
【0079】
信号端子保持溝36と信号端子保持孔37とを特に区別しないときは、信号端子保持部36,37という。信号端子保持部36,37は、嵌合ハウジング30のピッチ方向中央部30Y1かつ列間方向中央部30X1に形成される。
【0080】
図11に示すように、嵌合ハウジング30の周壁32は、ピッチ方向両側において列間方向に延在する一対のピッチ方向壁32Yと、列間方向両側においてピッチ方向に延在する一対の列間方向壁32Xと、から構成される。
ピッチ方向壁32Yは、嵌合ハウジング30の列間方向の端から端までの全範囲に、一様の高さで形成される。一方、列間方向壁32Xは、ピッチ方向壁32Yよりも高さが低い壁とされ、嵌合ハウジング30のピッチ方向の端から端までの全範囲のうち一方のピッチ方向壁32Yと他方のピッチ方向壁32Yとの間の範囲にのみ形成される。ピッチ方向壁32Yの高さは突出壁33よりも高く、列間方向壁32Xの高さは突出壁33よりも低い。
【0081】
(電源端子保持溝38)
図9、
図11に示すように、ピッチ方向壁32Yのピッチ方向内側の壁面には、上下方向に延びる電源端子保持溝38が形成される。電源端子保持溝38は、一対のピッチ方向壁32Yの各々に2つずつ形成され、合計4つ形成される。
電源端子保持溝38は、「第一側保持部」に相当する。
【0082】
(電源端子保持孔39)
図9に示すように、嵌合ハウジング30には、上下方向に延びる電源端子保持孔39が形成される。電源端子保持孔39は、電源端子保持溝38の下方に、電源端子保持溝38に連続して形成される。
電源端子保持孔39は、「第一側保持部」の「第一側包囲部」に相当する。
【0083】
電源端子保持溝38と電源端子保持孔39とを特に区別しないときは、電源端子保持部38,39という。電源端子保持部38,39は、嵌合ハウジング30のピッチ方向外側部30Y2かつ列間方向中央部30X1に形成される。
【0084】
図15に示すように、嵌合ハウジング30のピッチ方向中央部30Y1の下面303は、ピッチ方向外側部30Y2の下面304よりも上方に位置しており、実装ハウジング40の上面に接触しないようになっている。
【0085】
≪実装ハウジング40(第二ハウジング)≫
実装ハウジング40は、ハウジング30,40の下部を構成する。
【0086】
実装ハウジング40は、略直方体形状とされる。
より具体的には、実装ハウジング40は、平面視で、ピッチ方向を長手方向、列間方向を短手方向とする長方形状とされる。実装ハウジング40は、縦長の形状とされており、実装ハウジング40の上下寸法は、実装ハウジング40の短手方向(列間方向)寸法よりも大きい。
【0087】
図16に示すように、実装ハウジング40は、そのピッチ方向中央の部分を構成するピッチ方向中央部40Y1と、そのピッチ方向外側の部分を構成する一対のピッチ方向外側部40Y2と、から構成される。
また、
図14に示すように、実装ハウジング40は、その列間方向中央の部分を構成する列間方向中央部40X1と、その列間方向外側の部分を構成する一対の列間方向外側部40X2と、から構成される。
【0088】
(信号端子保持孔41)
図11、
図13に示すように、実装ハウジング40には、実装ハウジング40を上下方向に貫通する信号端子保持孔41が形成される。
信号端子保持孔41は、上下方向に直線状に延びる。信号端子保持孔41は、複数の信号端子10に対応して複数形成される。複数の信号端子保持孔41は、実装ハウジング40のピッチ方向中央部40Y1かつ列間方向中央部40X1に形成される。
信号端子保持孔41は、「第二側保持部」の「第二側包囲部」に相当する。
【0089】
複数の信号端子保持孔41は、列間方向一方側の複数の信号端子保持孔41と、列間方向他方側の複数の信号端子保持孔41と、から構成される。
【0090】
(電源端子保持孔44)
実装ハウジング40には、実装ハウジング40を上下方向に貫通する電源端子保持孔44が形成される。
電源端子保持孔44は、複数の電源端子20に対応して複数形成される。
電源端子保持孔44は、本開示の「第二側保持部」の「包囲部」に相当する。
【0091】
複数の電源端子保持孔44は、ピッチ方向一方側の一対の電源端子保持孔44と、ピッチ方向他方側の一対の電源端子保持孔44と、から構成される。ピッチ方向一方側の一対の電源端子保持孔44と、ピッチ方向他方側の一対の電源端子保持孔44とは、それぞれ、実装ハウジング40のピッチ方向外側部40Y2に形成される。電源端子保持孔44は、実装ハウジング40の列間方向中央部40X1だけでなく列間方向外側部40X2にも形成される(
図8参照)。
【0092】
図8に示すように、電源端子保持孔44は、電源端子20の挿入部21の幅広部24を保持する幅広保持部44Lと、電源端子20の挿入部21の幅狭部23の下部を保持する幅狭保持部44Uと、を有する。幅広保持部44Lの列間方向の幅は、幅狭保持部44Uの列間方向の幅よりも大きい。
【0093】
図11、
図13に示すように、列間方向一方側の複数の信号端子保持孔41と列間方向他方側の複数の信号端子保持孔41との間には、中央肉抜き部49が形成される。
中央肉抜き部49は、実装ハウジング40の樹脂が肉抜きされた部分であり、実装ハウジング40の上面に開口する空間である。中央肉抜き部49は、複数の信号端子保持孔41と同様に、実装ハウジング40のピッチ方向中央部40Y1かつ列間方向中央部40X1に形成される。中央肉抜き部49は、ピッチ方向に並んで複数(図では3つ)形成される。複数の中央肉抜き部49の各々は、略直方体の空間とされる。
【0094】
(XY方向変位規制機構34,47)
嵌合ハウジング30及び実装ハウジング40は、互いに当接することで、互いのXY方向の相対変位を一定の範囲に規制するXY方向変位規制機構34,47を有する。
【0095】
XY方向変位規制機構34,47は、嵌合ハウジング30の位置決め凸部34と、実装ハウジング40の位置決め凹部47と、を含んで構成される。嵌合ハウジング30の位置決め凸部34が、嵌合ハウジング30の位置決め凹部47の内部に挿入されることで、嵌合ハウジング30と実装ハウジング40とのXY方向の相対変位が一定の範囲に規制される。
以下、具体的に説明する。
【0096】
図11に示すように、実装ハウジング40には、複数の位置決め凹部47が形成される。
位置決め凹部47は、実装ハウジング40の上面から下方に凹んだ部分である。位置決め凹部47により形成された空間は、各辺をXYZ方向に向ける略直方体形状である。位置決め凹部47の開口縁には、位置決め凸部34を位置決め凹部47の内部に案内するための傾斜面が形成される。
【0097】
図11、
図12に示すように、嵌合ハウジング30には、複数の位置決め凸部34が形成される。
位置決め凸部34は、嵌合ハウジング30の下面から下方に突出した部分である。位置決め凸部34は、各辺をXYZ方向に向ける略直方体形状である。位置決め凸部34の下端部(先端部)には、位置決め凹部47の内部に案内されるための傾斜面が形成される。
【0098】
図12、
図13に示すように、位置決め凸部34の上端部(基端部)には、基端側に向けてXY方向の寸法が次第に大きくなる根元部34Nが形成される。根元部34Nでは、ピッチ方向両側及び列間方向外側において寸法が拡大され、列間方向内側においては寸法が拡大されていない。
【0099】
XY方向変位規制機構34,47を構成する複数の位置決め凹部47及び複数の位置決め凸部34は、列間方向一方側の複数の位置決め凹部47及び複数の位置決め凸部34(以下「一方側変位規制機構」)と、列間方向他方側の複数の位置決め凹部47及び複数の位置決め凸部34(以下「他方側変位規制機構」)と、から構成される。平面視で、一方側変位規制機構と他方側変位規制機構との間に、信号端子10を保持する複数の信号端子保持部36,37,41が形成される。
【0100】
XY方向変位規制機構34,47は、複数の位置決め凹部47に複数の位置決め凸部コネクタをそれぞれ挿入した状態で、実装ハウジング40に対して嵌合ハウジング30がXY方向の両方に一定の範囲で変位可能となるように構成される。
これにより、実装ハウジング40及び嵌合ハウジング30の樹脂成形上の製造公差が原因で位置決め凹部47に位置決め凸部34が挿入できないという事態を避けることができる。このような構成は、実装ハウジング40を形成する金型と、嵌合ハウジング30を形成する金型とを適切に設計することで実現される。
【0101】
嵌合ハウジング30及び実装ハウジング40は、一対のピッチ方向外側部30Y2,40Y2において上下方向で接触し、ピッチ方向中央部30Y1,40Y1において上下方向で接触しない。このように構成されるので、熱等により実装ハウジング40又は嵌合ハウジング30が多少変形した場合でも、ピッチ方向中央部30Y1,40Y1において実装ハウジング40と嵌合ハウジング30との接触が起こり難い。 なお、熱等によりハウジングが変形すると、ハウジングの中央部分において反りが生じやすい。そのため、仮にハウジングの中央部分においての実装ハウジング40と嵌合ハウジング30とが接触していると、熱等による変形時、互いのハウジングが意図しない力を及ぼしあってしまうことが懸念される。
【0102】
(Z方向分離防止機構)
図15、
図16に示すように、嵌合ハウジング30及び実装ハウジング40は、互いがZ方向(組付方向)で分離することを防止する分離防止機構35,48を有する。
分離防止機構35,48は、実装ハウジング40の係止凹部48と、嵌合ハウジング30の突出爪部35と、を含んで構成される。係止凹部48に突出爪部35が係止されることで、嵌合ハウジング30及び実装ハウジング40との分離が防止される。
以下、具体的に説明する。
【0103】
図15に示すように、嵌合ハウジング30は、一対の突出爪部35を有する。一対の突出爪部35は、ピッチ方向一方側の突出爪部35と、ピッチ方向他方側の突出爪部35と、から構成される。一対の突出爪部35は、互いに同一構造とされるものの、ピッチ方向に対称な構造とされる。突出爪部35には、係止凹部48の係止部48Kに係合する係合部35Kが形成される。係合部35Kは、突出爪部35のピッチ方向内側に形成される。
【0104】
実装ハウジング40は、一対の係止凹部48を有する。係止凹部48は、ピッチ方向一方側の係止凹部48と、ピッチ方向他方側の係止凹部48と、から構成される。
係止凹部48には、組付の際、突出爪部35を徐々に変形させるための傾斜面48Lが形成される。傾斜面48Lは、係止凹部48のピッチ方向内側に形成される。
また、係止凹部48には、突出爪部35の係合部35Kを係止する係止部48Kが形成される。係止部48Kは、傾斜面48Lの下側に形成される。
【0105】
実装ハウジング40に嵌合ハウジング30を組み付ける際、突出爪部35の係合部35Kが係止凹部48の傾斜面48Lに乗り上げることで、一対の突出爪部35がピッチ方向外側へ向けて弾性変形する。
突出爪部35の係合部35Kが傾斜面48Lを乗り越えると、弾性変形した突出爪部35の形状が元に戻る。すると、突出爪部35の係合部35Kが、係止凹部48の傾斜面48Lの下側に形成された係止部48Kに対して下側に配置される(
図16参照)。この状態から、嵌合ハウジング30を実装ハウジング40に対して上方へ移動させても、突出爪部35の係合部35Kが係止凹部48の係止部48Kに当接し、両ハウジング30,40の分離が防止される。
【0106】
(信号端子保持部の断面構造)
次に、実装ハウジング40の信号端子保持孔41、嵌合ハウジング30の信号端子保持孔37及び信号端子保持溝36の断面構造について説明する。
なお、
図19~
図24では、信号端子保持部36,37,41の構造を見やすくするため、列間方向で最も一方側の一対の信号端子10を省略して図示している。
【0107】
まず、実装ハウジング40の信号端子保持孔41の断面構造について説明する。
【0108】
図19、
図20、
図21は、実装ハウジング40の信号端子保持孔41を拡大して示す図であって、上下方向に直交する平面で切断した様子を示す断面斜視図である(
図14参照)。
図19は、実装ハウジング40の信号端子保持孔41の下部43を示し、
図20は、実装ハウジング40の信号端子保持孔41の下部43と上部42の境界部を示し、
図21は、実装ハウジング40の信号端子保持孔41の上部42を示す。
【0109】
実装ハウジング40の信号端子保持孔41は、その断面構造の違いから、下部43と上部42とに分けることができる。実装ハウジング40の信号端子保持孔41の上部42は、下部43よりも孔が大きい。
図20に示すように、実装ハウジング40の信号端子保持孔41の下部43と上部42との境界には、段差が形成される。
【0110】
図19、
図20、
図21に示すように、実装ハウジング40の信号端子保持孔41は、上部42と下部43の何れでも、列間方向内側面41Lと、一対の側面41Sと、列間方向外側面41Uと、を有する。
【0111】
信号端子保持孔41の上部42の列間方向内側面41Lは、下部43の列間方向内側面41Lよりも列間方向内側に位置する。
信号端子保持孔41の上部42のピッチ方向一方側の側面41Sは、下部43のピッチ方向一方側の側面41Sよりもピッチ方向一方側に位置する。
信号端子保持孔41の上部42のピッチ方向他方側の側面41Sは、下部43のピッチ方向他方側の側面41Sよりもピッチ方向他方側に位置する。
信号端子保持孔41の上部42の列間方向外側面41Uは、下部43の列間方向外側面41Uよりも列間方向外側に位置する。
【0112】
信号端子10の実装側被保持部15は、信号端子保持孔41における列間方向内側に寄った位置に配置される。このような構成は、実装側被保持部15にビード152が形成されることで実現される。
そのため、信号端子保持孔41の下部43においては、信号端子保持孔41の列間方向内側面41Lに信号端子10が接触する(
図19参照)。一方、信号端子保持孔41の上部42においては、信号端子保持孔41の列間方向内側面41Lと信号端子10との間には隙間が空く(
図21参照)。
【0113】
信号端子保持孔41の列間方向内側には、列間方向内側へ凹む凹部41Rが形成される。凹部41Rが形成される位置は、列間方向内側面41Lの幅方向(ピッチ方向)の中間位置とされる。そのため、凹部41Rにより、列間方向内側面41Lが幅方向(ピッチ方向)一方側と他方側とに分離される。凹部41Rにより分離された一方側の列間方向内側面41Lと他方側の列間方向内側面41Lとは、共に、信号端子10に対し列間方向内側から当接又は近接する。
【0114】
凹部41Rは、上下方向(端子延在方向)に直交する断面視で、信号端子10と実装ハウジング40との間隔を広ける拡大部として機能する。拡大部(凹部41R)の形状を調整することで、信号端子10のインピーダンスを調整することができる。
【0115】
凹部41Rは、上下方向(信号端子保持孔41の延在方向)に延びる溝状に形成される。溝状の凹部41Rが形成される範囲は、実装ハウジング40の信号端子保持孔41の延在方向の全範囲である。凹部41Rの断面形状は、矩形とされる。
【0116】
(嵌合ハウジング30の信号端子保持部36,37)
次に、嵌合ハウジング30の信号端子保持孔37及び信号端子保持溝36の断面構造について説明する。
【0117】
図22、
図23、
図24は、嵌合ハウジング30の信号端子保持孔37又は信号端子保持溝36を拡大して示す図である。
図22、
図23は、上下方向に直交する平面で切断した様子を示す断面斜視図であり(
図14参照)、
図24は、斜視図である。
図22は、信号端子保持孔37(第一側包囲部)を示し、
図23、
図24は、信号端子保持溝36を示す。
【0118】
図22に示すように、信号端子保持孔37は、列間方向内側面37Lと、一対の側面37Sと、列間方向外側面37Uと、を有する。列間方向内側面37Lは、信号端子10の列間方向内側に当接又は近接し、一対の側面37Sは、信号端子10のピッチ方向外側に近接し、列間方向外側面37Uは、信号端子10の列間方向外側に近接する。
【0119】
列間方向外側面37Uと一対の側面37Sとの間には、一対の傾斜面37Kが形成される。一対の傾斜面37Kは、信号端子10の被保持部14に接触する。具体的には、一対の傾斜面37Kには、信号端子10の被保持部14の角部が食い込む。一対の傾斜面37Kにより、信号端子10の被保持部14が信号端子保持孔37内において列間方向内側に寄って配置される。
【0120】
信号端子保持孔37のうち信号端子10が寄って配置される側の面を「底面」といい、底面とは反対側の面を「天面」という。列間方向内側面37Lが「底面」に相当し、列間方向外側面37Uが「天面」に相当する。
【0121】
信号端子保持孔37の底面側(列間方向内側面37L側)には、底面側凹部37R1が形成される。底面側凹部37R1が形成される位置は、列間方向内側面37Lのピッチ方向(幅方向)の中央位置である。これにより、底面側凹部37R1によって、列間方向内側面37Lがピッチ方向(幅方向)の一方側と他方側とに分離される。底面側凹部37R1により分離された一方側の列間方向内側面37Lと他方側の列間方向内側面37Lとは、共に、信号端子10に対し底面側から当接又は近接する。
【0122】
信号端子保持孔37の天面側(列間方向外側面37U側)には、天面側凹部37R2が形成される。天面側凹部37R2が形成される位置は、列間方向外側面37U(天面)のピッチ方向(幅方向)の中央位置である。これにより、天面側凹部37R2によって、列間方向外側面37Uがピッチ方向(幅方向)の一方側と他方側とに分離される。天面側凹部により分離された一方側の列間方向外側面37Uと他方側の列間方向外側面37Uとは、共に、信号端子10に対し天面側から当接又は近接する。
【0123】
底面側凹部37R1と天面側凹部37R2は、上下方向(端子延在方向)に直交する断面視で、信号端子10と嵌合ハウジング30との間隔を広ける拡大部として機能する。拡大部(底面側凹部37R1と天面側凹部37R2)の形状を調整することで、信号端子10のインピーダンスを調整することができる。
【0124】
底面側凹部37R1の断面形状は、矩形とされる。天面側凹部37R2の断面形状は、矩形とされる。天面側凹部37R2のピッチ方向寸法(凹部の幅)は、底面側凹部37R1のピッチ方向寸法(凹部の幅)よりも大きい。天面側凹部37R2の列間方向寸法(凹部の深さ)は、天面側凹部37R2の列間方向寸法(凹部の深さ)よりも大きい。
【0125】
底面側凹部37R1及び天面側凹部37R2は、上下方向に延びる溝状に形成される。溝状の底面側凹部37R1及び天面側凹部37R2が形成される範囲は、嵌合ハウジング30の信号端子保持孔37の延在方向の全範囲である。
【0126】
(保持溝)
次に、嵌合ハウジング30の信号端子保持部36,37の上部を構成する信号端子保持溝36について説明する。
【0127】
図23、
図24信号端子保持溝36は、嵌合ハウジング30の突出壁33の一対の壁面33A,33Bに形成される。信号端子保持溝36は、溝深さ方向を列間方向内側とし、溝延在方向を上下方向とし、溝幅方向をピッチ方向として形成される。
【0128】
信号端子保持溝36は、信号端子10の列間方向内側に接触又は近接する列間方向内側面36Lと、信号端子10のピッチ方向両側に接触又は近接する一対の側面36Sと、を含んで構成される。信号端子保持溝36に信号端子10が配置されることで、嵌合ハウジング30が信号端子10に対し、列間方向内側及びピッチ方向両側の三方向から接触又は近接する。
【0129】
信号端子保持溝36の底面側(列間方向内側面36L側)には、凹部36Rが形成される。凹部36Rにより、信号端子10に対して底面側の空間が拡大される。凹部36Rの形状、大きさを調整することで、信号端子のうち信号端子保持溝36に収容された部分のインピーダンスの調整が可能である。
【0130】
凹部36Rが形成される位置は、列間方向内側面36Lのピッチ方向(幅方向)の中央位置である。これにより、凹部36Rによって、列間方向内側面36Lがピッチ方向(幅方向)の一方側と他方側とに分離される。底面側凹部により分離された一方側の列間方向内側面36Lと他方側の列間方向内側面36Lとは、共に、信号端子10に対し底面側から当接又は近接する。
【0131】
凹部36Rは、上下方向(信号端子保持溝36の延在方向)に沿って延びる溝状に形成される。凹部36Rの断面形状(延在方向に直交する断面形状)は、矩形とされる。
【0132】
信号端子保持溝36の凹部36Rは、信号端子保持孔37の底面側凹部37R1と上下に繋がっている。より具体的には、信号端子保持溝36の凹部36Rと、信号端子保持孔37の底面側凹部37R1とは、同一の断面形状を保ったまま上下方向に連続する。
【0133】
図24に示すように、信号端子保持溝36の凹部36Rの上端(先端)は、信号端子保持溝36の上端(先端)までは到達していない。これにより、信号端子保持溝36の凹部36Rが信号端子10に覆われ、凹部36Rが露出しないようになっている。信号端子10の上端(先端)よりも更に上方側(先端側)で凹部41Rが露出していると、接続対象物としての相手側コネクタ等が凹部41Rに引っかかったり、異物が凹部41Rに入り込んだりするという問題が起こり得る。これに対し、凹部41Rの先端側部分が端子に覆われていると、このような問題が防止される。
【0134】
また、凹部41Rの上端(先端)は、信号端子10の先端部19に覆われる位置までには到達しておらず、信号端子10の幅広部16によって覆われている。これにより、凹部41Rに異物が入り込むこと等がより確実に防止される。
【0135】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0136】
本実施形態では、コネクタ100は、端子(信号端子10、電源端子20)と、端子が挿入されたハウジング30,40と、を備える。ハウジング30,40は、第一ハウジング(嵌合ハウジング30)と第二ハウジング(実装ハウジング40)とを含んで構成される。第一ハウジングは、端子の一部を保持する第一側保持部(嵌合ハウジング30の信号端子保持部36,37、電源端子保持部38,39)を有し、第二ハウジングは、端子の他の一部を保持する第二側保持部(実装ハウジング40の信号端子保持部41、電源端子保持部44)を有する。
つまり、端子を保持する保持部が、第一ハウジング(嵌合ハウジング30)と第二ハウジング(実装ハウジング40)とに分けて形成される。このため、一つのハウジングに端子を保持する保持部の全部が形成される態様と比較して、金型によるハウジング成形の性質上、保持部の設計自由度が向上する。保持部について設計自由度が向上すると、インピーダンス等のコネクタ特性の調整が容易となる。
【0137】
また、本実施形態では、第一側保持部(嵌合ハウジング30の信号端子保持部36,37)は、端子(信号端子10)を包囲する第一側包囲部(嵌合ハウジング30の信号端子保持孔37)を含んで構成され、第二側保持部(実装ハウジング40の信号端子保持部41)は、端子(信号端子10)を包囲する第二側包囲部(実装ハウジング40の信号端子保持孔41)を含んで構成される。つまり、第一側保持部及び第二側保持部は、共に、端子を包囲する包囲部を含んで構成される。
このため、例えば第一側保持部が包囲部を含んで構成されるものの第二側保持部が包囲部を含んで構成されない態様と比較して、端子のうち第二ハウジング(実装ハウジング40)に保持される部分のインピーダンスの上昇を抑えることができる。
【0138】
また、本実施形態では、第一側保持部(嵌合ハウジング30の信号端子保持部36,37)と第二側保持部(実装ハウジング40の信号端子保持部41)とは、一直線上に位置する。
このため、端子(信号端子10)のうち、第一側保持部に保持される部分と第二側保持部に保持される部分との間に、曲部を形成する必要がない。
【0139】
また、本実施形態では、第一側包囲部(嵌合ハウジング30の信号端子保持孔37)と第二側包囲部(実装ハウジング40の信号端子保持孔41)とは、一直線上に位置する。
このため、コネクタ製造の際、第一ハウジング(嵌合ハウジング30)と第二ハウジング(実装ハウジング40)とを互いに位置合わせすると(
図14参照)、第一側包囲部(嵌合ハウジング30の信号端子保持孔37)と第二側包囲部(実装ハウジング40の信号端子保持孔41)とが一直線上に位置する。したがって、当該一直線に沿って端子(信号端子10)を挿入することができる。
【0140】
また、本実施形態では、第一側包囲部(嵌合ハウジング30の信号端子保持孔37)と第二側包囲部(実装ハウジング40の信号端子保持孔41)との間の距離D(
図7参照)が短い(具体的には、第一側包囲部(嵌合ハウジング30の信号端子保持孔37)と第二側包囲部(実装ハウジング40の信号端子保持孔41)のうちの何れか短い方よりも短い)。
このため、端子(信号端子10)のうち第一側包囲部と第二側包囲部との間に位置する部分、すなわちハウジング30,40に包囲されない部分の長さが短くなる。その結果、当該長さが長い態様と比較して、インピーダンスが上昇しやすい区間を短くすることができる。
【0141】
また、本実施形態では、第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジング30であり、第二ハウジングは、第一ハウジングと基板との間に配置される実装ハウジング40である。端子(信号端子10、電源端子20)は、反嵌合方向を挿入方向としてハウジング30,40に挿入される。
このため、嵌合方向に大きなコネクタに好適である。
【0142】
また、本実施形態では、端子(信号端子10)は、複数設けられる。複数の端子は、列間方向一方側においてピッチ方向に配列された複数の一方側端子(一方側信号端子10A)と、列間方向他方側においてピッチ方向に配列された複数の他方側端子(他方側信号端子10B)と、を含む。第一ハウジング(嵌合ハウジング30)は、反嵌合方向へ突出すると共にピッチ方向に延びる突出壁33を有し、突出壁33の列間方向一方側の壁面33Aには、複数の一方側端子が保持される複数の溝(信号端子保持溝36)が形成され、突出壁33の列間方向他方側の壁面33Bには、複数の他方側端子が保持される複数の溝(信号端子保持溝36)が形成される。
このため、多極のプラグコネクタに好適である。
【0143】
また、本実施形態では、第一ハウジングは、接続対象物と嵌合する嵌合ハウジング30である。端子(信号端子10)は、第一ハウジング又は第二ハウジング(実装ハウジング40)のうち第二ハウジング側から反嵌合方向を挿入方向としてハウジング30,40に挿入される。
そして、第二側包囲部(実装ハウジング40の信号端子保持孔41)の嵌合方向側(下側)の端は、コネクタ嵌合方向側20%の範囲(より好ましくは15%の範囲)に位置する(
図14参照)。
このため、端子(信号端子10)の嵌合方向側の部分を第二包囲部により効果的に包囲することができる。したがって、例えば、端子の嵌合方向側の部分(下部)が露出した特許文献1のコネクタと比較して、端子(信号端子10)の嵌合方向側の部分においてインピーダンスが上昇してしまうことを抑制できる。
【0144】
また、本実施形態では、第一ハウジング(嵌合ハウジング30)は、接続対象物(相手側コネクタ)と嵌合する嵌合ハウジング30である。端子(信号端子10)は、第一ハウジング又は第二ハウジング(実装ハウジング40)のうち第二ハウジング側から反嵌合方向を挿入方向としてハウジング30,40に挿入される。そして、第二側保持部(実装ハウジング40の信号端子保持部41)は、端子(信号端子10)を包囲する第二側包囲部(実装ハウジング40の信号端子保持孔41)のみから構成される。
このため、端子の嵌合方向側の部分を実装ハウジング40により効果的に包囲することができる。したがって、例えば、端子の嵌合方向側の部分(下部)が露出した特許文献1のコネクタと比較して、端子の嵌合方向側の部分においてインピーダンスが上昇してしまうことを抑制できる。
【0145】
また、本実施形態では、端子(信号端子10)は、第一ハウジング(嵌合ハウジング30)に圧入される第一側圧入部(嵌合側圧入部141)と、第二ハウジング(実装ハウジング40)に圧入される第二側圧入部(実装側圧入部151)と、を有する。
このため、第一ハウジングと第二ハウジングとが分離することが端子によって抑制される。
【0146】
また、本実施形態では、信号端子10及び電源端子20は、第一ハウジング(嵌合ハウジング30)又は第二ハウジング(実装ハウジング40)のうち第二ハウジング側からハウジング30,40に挿入される。信号端子10は、第一ハウジングに圧入される第一側圧入部(嵌合側圧入部141)と、第二ハウジングに圧入される第二側圧入部(実装側圧入部151)と、を有する。電源端子20は、第二ハウジングに圧入される第二側圧入部(幅広部24)を有し、第一ハウジングに圧入される第一側圧入部を有しない。
このため、第一ハウジングと第二ハウジングとが分離することが信号端子10によって抑制される。また、電源端子20は第一ハウジング(嵌合ハウジング30)に圧入される第一側圧入部を有しないので、第一ハウジングと第二ハウジングとを位置合わせした状態で、電源端子20のハウジング30,40への挿入が容易である。
また、信号端子10の数は、電源端子20の数よりも多いので、第一ハウジングと第二ハウジングとの分離の抑制が、数の多い方の信号端子10によって行われることとなる。
つまり、本実施形態では、信号端子10と電源端子20の両方が第一側圧入部を有する態様と比較して、端子(信号端子10と電源端子20)のハウジングへの挿入が容易になると共に、数の少ない方の電源端子20のみが第一側圧入部を有する態様と比較して、第一ハウジングと第二ハウジングとの分離抑制を確実に行える。
更に、本実施形態では、電源端子20は、板厚の大きな材料(具体的には、信号端子10よりも板厚の大きな材料)で形成されるので、電源端子20が第一側圧入部(第一ハウジングへの圧入部)を有しなくても、電源端子20の姿勢が崩れにくい。
【0147】
また、本実施形態では、第一ハウジング(嵌合ハウジング30)及び第二ハウジング(実装ハウジング40)は、分離防止機構35,48を備える。分離防止機構35,48は、係合爪部(突出爪部35)と係止部48Kとを含んで構成され、係合爪部が係止部48Kに引っ掛かることで第一ハウジング及び第二ハウジングの組付方向における分離を防止する。
このため、第一ハウジング及び第二ハウジングの組付方向における分離が、第一ハウジング及び第二ハウジング自身により防止される。
【0148】
また、本実施形態では、分離防止機構35,48は、複数の信号端子10と一又は複数の一方側電源端子20Aとの間に形成された一方側分離防止機構35,48と、複数の信号端子10と一又は複数の他方側電源端子20Bとの間に形成された他方側分離防止機構35,48と、を含む。
このため、コネクタ短手方向に小型のコネクタ100とすることができる。
【0149】
また、本実施形態では、第一ハウジング(嵌合ハウジング30)及び第二ハウジング(実装ハウジング40)は、変位規制機構(XY方向変位規制機構34,47)を備える。変位規制機構は、位置決め凸部34と位置決め凹部47とを含んで構成され、位置決め凹部47に位置決め凸部34が挿入されることで第一ハウジングと第二ハウジングとの組付方向に直交する方向の相対変位を規制する。
このため、第一ハウジングと第二ハウジングとの組付方向に直交する方向の相対変位が、第一ハウジング及び第二ハウジング自身により防止される。
【0150】
また、本実施形態では、突出壁33の列間方向両側の壁面33A,33Bに、複数の端子(信号端子10)が保持される複数の溝(信号端子保持溝36)が形成される。このようなコネクタでは、突出壁33の列間方向外側に、相手側コネクタ等の接続対象物の一部が配置される空間(嵌合凹部30U)が形成される。
そして、当該空間(嵌合凹部30U)よりも嵌合方向側の部分を利用して、変位規制機構(XY方向変位規制機構34,47)が形成される。よって、変位規制機構を備えつつも小型なコネクタとすることができる。
【0151】
また、本実施形態では、
図16に示すように、嵌合ハウジング30の一対のピッチ方向外側面301のピッチ方向の距離(嵌合ハウジング30のピッチ方向寸法)と、実装ハウジング40のピッチ方向外側面401のピッチ方向の距離(実装ハウジング40のピッチ方向寸法)とが同一とされる。更に、
図14に示すように、嵌合ハウジング30の一対の列間方向外側面302の列間方向の距離(嵌合ハウジング30の列間方向寸法)と、実装ハウジング40の列間方向外側面402の列間方向の距離(実装ハウジング40の列間方向寸法)とが同一とされる。
このため、嵌合ハウジング30と実装ハウジング40とをXY方向から包囲する枠状の治具(不図示)の内部に、嵌合ハウジング30と実装ハウジング40を配置することで、嵌合ハウジング30と実装ハウジング40とのXY方向での位置合わせを容易にすることができ、この状態で、端子10,20を挿入することができる。
【0152】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上記実施形態では、第一側保持部と第二側保持部とが共に包囲部を含んでいたが、第一側保持部と第二側保持部の一方又は両方が包囲部を含んでいなくてもよい。このような場合であっても、端子を保持する保持部を第一ハウジングと第二ハウジングとに分けて形成することで、保持部の設計自由度を向上させ、コネクタ特性の調整を容易にすることができる。
【0153】
また、上記実施形態では、端子の一部に対して互いに対向する二方向(端子の板幅方向両側)を含む三方向又は四方向から当接又は近接する保持溝及び保持孔を説明したが、「保持部」はこれに限定されず、端子の一部に対して互いに対向する二方向の方向から当接又は近接することで、端子の一部の当該二方向への移動を規制する部分であってもよい。
【0154】
また、第一ハウジングと第二ハウジングとを、溶着やその他の手段によって結合してもよい。
【0155】
また、上記実施形態では、第一ハウジングと第二ハウジングとが接触してるが、第一ハウジングと第二ハウジングとは、互いに接触しない配置関係とされてもよい。
【0156】
また、上記実施形態では、コネクタが実装される基板に垂直な方向が、相手側コネクタとの嵌合方向であったが、コネクタが実装される基板に沿った方向を嵌合方向とするコネクタにしてもよい。
【0157】
また、上記実施形態では、変位規制機構の凸部が第一ハウジングに形成され、凹部が第二ハウジングに形成されたが、第一ハウジングに凹部が形成され、第二ハウジングに凸部が形成されてもよい。
また、上記実施形態では、分離防止機構の係合爪部が第一ハウジングに形成され、係止部が第二ハウジングに形成されたが、第一ハウジングに係止部が形成され、第二ハウジングに係止爪部が形成されてもよい。
【0158】
また、上記実施形態では、第一ハウジングとしての嵌合ハウジング30や第二ハウジングとしての実装ハウジング40は、その全体が樹脂で形成された部材であるが、本開示の「第一ハウジング」「第二ハウジング」は、これに限定されない。例えば、第一ハウジングや第二ハウジングは、樹脂と金属とが結合することで構成される部材であってもよい。例えば、上記実施形態では、「係合爪部」としての突出爪部35が樹脂で形成されていたが、係合爪部は金属で形成されてもよい。
【0159】
また、上記実施形態では、電源端子20が、第一ハウジングとしての嵌合ハウジング30に圧入されるための係止突起(第一側圧入部)を有しないが、本開示の「電源端子」は、第一側圧入部を有しないものに限定されない。例えば、電源端子は、第一側圧入部と第二側圧入部との両方を有していてもよい。
【0160】
また、上記実施形態では、「変位規制機構」としてのXY方向変位規制機構34,47が、複数の位置決め凹部47と複数の位置決め凸部34とから構成されているが、本開示の「変位規制機構」は、1つの位置決め凹部と1つの位置決め凸部とから構成されてもよい。
また、上記実施形態では、位置決め凹部47により形成された空間が略直方体形状であり、位置決め凸部34が略直方体形状であるが、本開示の「凹部」「凸部」はこれに限定されない。例えば、凸部は、円柱形状などの他の形状であってもよい。
【0161】
また、上記実施形態では、変位規制機構としてのXY方向変位規制機構34,47が、実装ハウジング40に対して嵌合ハウジング30がXY方向の両方に一定の範囲で変位可能となるように構成されるが、本開示の「変位規制機構」はこれに限定されない。本開示の変位規制機構は、凹部に凸部が圧入されるように構成されてもよい。
【0162】
また、上記実施形態では、嵌合ハウジング30と実装ハウジング40とをXY方向から包囲する枠状の治具(不図示)の内部に、嵌合ハウジング30と実装ハウジング40を配置し、嵌合ハウジング30と実装ハウジング40とのXY方向での位置合わせした状態で、端子10,20を挿入する方法を説明したが、本開示のコネクタの製造方法はこれに限定されない。
嵌合ハウジング30と実装ハウジング40とをXY方向から包囲する枠状の治具を多少大きめに形成し、この治具の内部に、嵌合ハウジング30と実装ハウジング40を配置した状態で、端子10,20を挿入してもよい。つまり、変位規制機構や治具により、両ハウジングのXY方向(端子挿入方向に直交する平面内の方向)の位置決めをある程度しつつも、XY方向の両方に一定の範囲で多少の変位を可能な状態とし、この状態で、端子を挿入してもよい。この方法によれば、ハウジングの製造公差が原因で両ハウジングの端子保持部にXY方向での位置にズレが生じている場合でも、端子を挿入する段階で当該ズレを解消するように両ハウジングを相対変位させることができる。
【0163】
また、上記実施形態では、端子(信号端子10)が第一側圧入部と第二側圧入部を有し、第一ハウジングと第二ハウジングとの分離が端子によって抑制されているが、本開示の端子はこれに限定されない。
また、第一ハウジングと第二ハウジングとの分離は、端子以外の金属部材によって抑制されてもよい。例えば、本開示のコネクタは、基板に半田固定される半田固定部を有する金属部材であって、第一側圧入部と第二側圧入部を有する金属部材を備えてもよい。また例えば、本開示のコネクタは、半田固定部を有しない金属部材であって、第一側圧入部と第二側圧入部を有する金属部材を備えていてもよい。また、これらの金属部材は、電磁波の伝播を抑えるシールド部材として機能する部材であってもよい。
【符号の説明】
【0164】
100 コネクタ
10,20 端子
10 信号端子
20 電源端子
30,40 ハウジング
30 嵌合ハウジング(第一ハウジング)
33 突出壁
33A 列間方向一方側の壁面
33B 列間方向他方側の壁面
36,37 信号端子保持部(第一側保持部)
36 信号端子保持溝(溝)
37 信号端子保持孔(第一側包囲部)
38,39 電源端子保持部(第一側保持部)
38 電源端子保持溝
39 電源端子保持孔(第一側包囲部)
40 実装ハウジング(第二ハウジング)
41 信号端子保持孔(第二側保持部、第二側包囲部)
44 電源端子保持孔(第二側保持部、第二側包囲部)
34,47 XY方向変位規制機構(変位規制機構)
34 位置決め凸部(凸部)
47 位置決め凹部(凹部)
35,48 分離防止機構
35 突出爪部(係合爪部)
35K 係合部
48 係止凹部
48K 係止部
91 基板
D 距離(第一側包囲部と第二側包囲部との間の距離)