(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】エネルギ蓄積方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F03B 17/02 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
F03B17/02
(21)【出願番号】P 2021543501
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 CH2019050032
(87)【国際公開番号】W WO2020150840
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】521329350
【氏名又は名称】ペドレッティ,マウロ
【氏名又は名称原語表記】PEDRETTI,Mauro
【住所又は居所原語表記】Via Croce 1,6710 Biasca Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ペドレッティ,マウロ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-011517(JP,A)
【文献】特開昭63-239319(JP,A)
【文献】特表2017-505096(JP,A)
【文献】特開平02-027122(JP,A)
【文献】特開昭62-294723(JP,A)
【文献】国際公開第2013/119327(WO,A1)
【文献】特開2005-009325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 3/14
F01K 27/00
F02C 6/14-6/16
F03B 13/06
F03B 17/02
F16J 12/00
F24H 3/04
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギを蓄積するために、水面下に配置されたコンテナ(2)に送り込まれる圧縮流体の形態でエネルギを蓄積する方法であって、
コンテナ(2)を海底又は湖底(6)に配置し、バラスト(15)によって、その場所に重み付けし、コンテナ(2)に圧縮流体が完全に充填された場合でも、前記コンテナが、動作位置(6)において海底又は湖底に対して押し付けられるようにし、
コンテナ(2)に入る圧縮流体の量に応じて、そこに存在する内容物である水がコンテナから周囲水に排出され、かつ、
コンテナ(2)から除去される圧縮流体の量に応じて、周囲水を再びコンテナ(2)に流入させ、
それにより、コンテナ(2)から排出される水を、タービンを駆動させるために使用し、コンテナ(2)に流入する水をコンテナにポンプで汲み上げる
ことを特徴とするエネルギ蓄積方法。
【請求項2】
前記コンテナ(2)の外壁が、一部において可撓性材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンテナ(2)の全ての外壁が可撓性材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コンテナ(2)が、その水平方向寸法が高さ倍数で
ある平坦な輪郭を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
コンテナ(2)が、バラスト(15)によって完全に覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
バラスト
が、バルク材料から成る
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
コンテナ(2)の内部に、水面に圧縮流体を導くための圧力パイプ(7)が設けられた上側領域が設け
られている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
圧縮流体用コンテナ(2)を備えた空気圧式水中エネルギ蓄積装置において、
前記コンテナ(2)が、海底又は湖底(6)に配置され、完全に負荷がかけられた時に、コンテナ(2)が圧縮流体によって海底又は湖底(6)に対して押圧された状態を維持するようにバラスト(15)で覆われ、
圧縮流体用加圧パイプ(7)が、さらに、コンテナ(2)の上側領域内に開口し、かつ、
コンテナ(2)の下側領域に設けられた均圧パイプ(8)が、コンテナ(2)を周囲水に接続し、
均圧パイプ(8)に接続されたポンプ・タービン構造体(12)がさらに設けられ、
前記ポンプ・タービン構造体(12)が、水中エネルギ蓄積装置(1)の動作中に流入する圧縮流体の量に応じて、タービンによって、均圧パイプ(8)を介して、周囲水にコンテナ(2)から水を排出し、コンテナ(2)から排出される圧縮流体の量に応じて、ポンプによって、コンテナ(2)に周囲水を供給するように構成されている
ことを特徴とする空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項9】
コンテナ(2)が、少なくとも部分的に、可撓性外壁(3)を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項10】
コンテナ(2)が、完全に可撓性壁(3)で形成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項11】
コンテナ(2)がバラスト(15)によって完全に覆われている
ことを特徴とする請求項8に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項12】
バラスト(15)が、バルク材
料から成る
ことを特徴とする請求項8に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項13】
コンテナ(2)が、その内部に、引張荷重を受けることができるバー(
9)を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項14】
コンテナ(2)の上側領域に、海又は湖の水面に圧縮流体を導く圧力
パイプ(7)が設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項15】
コンテナ(2)が、その水平方向寸法がその高さの数倍
である平坦な輪郭を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項16】
共通のバラスト層(15)で覆われた複数のコンテナ(2)を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の空気圧エネルギ蓄積装置。
【請求項17】
コンテナ(2)が、その水平方向寸法が高さの二倍以上である平坦な輪郭を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項18】
コンテナ(2)が、その水平方向寸法が高さの三倍以上である平坦な輪郭を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項19】
コンテナ(2)が、その水平方向寸法が高さの五倍以上である平坦な輪郭を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項20】
前記バルク材料が、水中エネルギ蓄積装置が配置されている海底又は湖底から取り除かれたバルク材料である
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項21】
コンテナ(2)から流出した圧縮流体によって駆動されるタービン(10)を、さらに設ける
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項22】
バラスト(15)が、周囲の海底又は湖底(6)の材料から成る
ことを特徴とする請求項12に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項23】
前記圧力パイプ(7)に、コンテナ(2)から流出する圧縮流体によって駆動され得るタービン(10)が設けられている
ことを特徴とする請求項14に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項24】
コンテナ(2)が、その水平方向寸法がその高さ二倍以上である平坦な輪郭を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項25】
コンテナ(2)が、その水平方向寸法がその高さの三倍以上である平坦な輪郭を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【請求項26】
コンテナ(2)が、その水平方向寸法がその高さの五倍以上である平坦な輪郭を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の空気圧式水中エネルギ蓄積装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のエネルギ蓄積方法及び請求項6に記載の空気圧式エネルギ蓄積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
揚水式発電プラントによるエネルギの蓄積は周知であり、確立している。しかし、対応する地形を有する地域だけでなく、例えば、風力発電プラントや他の代替エネルギ生産地の周辺等のエネルギが発生する場所においても、エネルギを蓄積できるようにする必要性が高まっている。風力発電所は沿岸地域に、また、太陽発電所も沿岸地域に設置され利用可能にされることが多い。
【0003】
これに応じて、圧縮空気を蓄積する解決手段が知られるようになり、その解決手段では、空気は海面下に蓄積され、即ち、周囲の水の圧力下で蓄積され得る。
【0004】
前記解決手段の一つは、可撓性材料で形成された複数のバルーンを海底に固定するものであり、これらバルーンには、固定の後に、下方から圧縮空気が充填され、かつ、これらのバルーンは、完全に圧縮空気が充填されるまで圧縮空気を受け入れて膨らみ得る。これらのバルーンは、当然に、かなりの浮力を発生するので、それに合わせて固定する必要がある。バルーンの固定は、バルク材を詰めたバラストコンテナから成るグリッドを海底に配置し、バラストコンテナ間にアンカーロープを張ってバルーンをバラストコンテナに固定することで解決される。この構成には、バルーンが工業用の大型である必要があり、従って、充填状態において非常に高い浮力を有し、それに応じて、バラストコンテナとその接続部の耐荷重構造が必要になるという欠点がある。さらに、このようなバルーンは海流にさらされるため、バラストコンテナに作用する力が大きくなるだけでなく、バルーンの固定場所及び圧縮空気の供給ラインにおいて、移動可能な形態でバルーンを配置する必要がある。蓄積容量を増やすために空気を十分に圧縮すると、全体の配置をより深くしなければならない。従って、競争力のある蓄電装置のために要求される労力が大きすぎる。
【0005】
電気の形態でエネルギを蓄積する別の解決手段が、フラウンホーファー研究機構のStEnSEAプロジェクト(海中蓄積エネルギ:Stored Energy in the Sea)を通して公知である。直径30m及び壁厚3mのコンクリートコンテナが、水深600m~800mに設置され、かつ、送電線を介して陸上の発電所に接続され、それにより、コンテナ毎に20MWhの蓄電が提供される。各コンクリートコンテナには、その内部と周囲の海をつなぐ均圧管が設けられている。蓄電装置が、蓄電すべきエネルギを電気の形態で受け取ると、電動ポンプを介して球体から水が汲み上げられる。蓄えた電気を使用する場合は、水がタービンを通って空の球体に流れ込み、発電機を介して電気を発生し、その電気が送電線を介して陸上に戻される。
【0006】
この解決手段の欠点は、工業的なエネルギ蓄積のためのコストが高くなることにある。前記した寸法及び強度を持つコンクリートコンテナを十分な数作ること、及び、これらのコンテナを600m~800mの深さに固定することには、コストがかかる。従って、競争力のあるエネルギ蓄積装置のために要求される労力が大きすぎる。
【0007】
本発明の目的は、蓄積装置を比較的安価にすることができるエネルギ蓄積方法及び装置を提供することにある。
【0008】
上記した目的は、請求項1に記載の特徴を有する方法、又は、請求項7に記載の特徴を有する空気圧式水中エネルギ蓄積装置によって達成される。
【0009】
エネルギ蓄積装置のコンテナに供給される圧縮流体の量又はコンテナから除去される圧縮流体の量に応じて、水がコンテナから排出され、また、コンテナに再び取り込まれるので、その圧力負荷が、その構造の高さに依存するだけで、その深さ方向の位置には依存しない最小限に低減され、エネルギ蓄積装置を簡単に、かつ、安価に製造することが可能になる。タービンを排出された水によって駆動して、周囲の水をコンテナに戻すことができるエネルギを得ることができるので、エネルギ蓄積装置の動作が、ポンプ・タービン構造体の効率までエネルギ中立であり得る。
【0010】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項による特徴を有する。
【0011】
コンテナの一部又は全体が可撓性壁から形成されている場合、特に簡単かつ安価な方法で設計することが可能になる。可撓性コンテナを海底に配置してバラストで覆うので、簡単にかつ、安価に固定を行うことが可能になり、例えば、その周辺で浚渫された海底材料でコンテナを覆うだけで、800mの深さであっても大きな問題は生じない。可撓性コンテナは、水底やバラストによる局所的な変形を吸収することができ、それにより、水底における本発明に係るエネルギ蓄積装置の構築がかなり単純化され、エネルギ蓄積装置の全体的な低コスト化に寄与する。
【0012】
本発明は、添付図面を参照して、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る空気圧式エネルギ蓄積装置の概略図である。
【
図2a】圧縮流体が充填された時の、
図1によるエネルギ蓄積装置における圧力状態を示す図である。
【
図2b】圧縮流体から取り除かれた時の、
図1によるエネルギ蓄積装置における圧力状態を示す図である。
【
図3】周囲に適合する可撓性壁を有する空気圧式エネルギ蓄積装置のコンテナを概略的に示す図である。
【
図4】本発明による空気圧式エネルギ蓄積装置の別の実施例の概略図である。
【
図5】エネルギ蓄積装置のコストに関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明による空気圧式エネルギ蓄積装置1の好ましい実施例の横断面を概略的に示す図であり、該空気圧式エネルギ蓄積装置1は、コンテナ2を有し、全てのコンテナ2の外壁3は可撓性材料で形成されている。エネルギ蓄積装置1は、水面4の下方に配置され、壁部5によって、海、湖、又は貯水池等の水域の水底6の上に載っている。可撓性壁3は、好ましくは、ポリエステル/PVC、ゴム又はコーティング済ポリエステル繊維から成るプラスチック膜から形成されている。他の繊維、例えば、ガラス繊維、ケブラー又は他の合成繊維を使用することも可能である。具体的な例では、可撓性壁3は、部分的に剛性の形態にすることもでき、例えば、水底にある壁部5の部分、蓄積すべき圧縮流体用の圧力パイプ7の位置、又は、コンテナ2を周囲の水に接続する均圧パイプ8の位置において、部分的に剛性の形態をとることもできる。しかしながら、好ましくは、コンテナ2全体が、可撓性材料で形成され得る。
【0015】
コンテナ2の上側領域には加圧パイプ7が配置されており、前記加圧パイプ7は、好ましくは、コンプレッサ・タービン構造体10に接続されている。コンプレッサ・タービン構造体10は、図面では概略的に示されており、より好ましくは、地上に配置され、発電プラント(例えば、太陽発電プラント、風力発電プラント、又は他のタイプの発電プラント)のエネルギによって駆動される。その結果、コンプレッサ・タービン構造体10のコンプレッサは、例えば、周囲の空気(又は、他の圧縮可能な流体)を吸引し、それを圧縮して、圧力パイプ7を介してコンテナ2に送り込み、エネルギ蓄積装置1をチャージし得る。さらに、エネルギ蓄積装置1をディスチャージする場合、コンプレッサ・タービン構造体10のタービンが、コンテナ2に由来する圧縮流体(例えば、空気)によって駆動され、例えば、電気を発生し得る。図面を簡単化するために、圧力パイプ7を閉鎖又は開放するために圧力パイプ7に設けられているバルブは省略されている。しかしながら、二重矢印13は、圧力パイプ7及びコンプレッサ・タービン構造体10を通る圧縮流体の二つの流れ方向を示している。その結果、コンテナ2の内部には、好ましくは、上部領域に、圧縮流体を水面に導く圧力パイプ7が設けられ、かつ、好ましくは、コンテナ2から流出する圧縮流体によって駆動されるタービン10がさらに設けられる。
【0016】
均圧パイプ8がコンテナ2の下部領域に設けられており、前記均圧パイプ8は、好ましくは、壁部5の高さの領域、即ち、水底6の領域にある開口部11を有する。均圧パイプ8には、さらに、図面に概略的に示されているポンプ・タービン構造体12が接続されている。二重矢印14は、均圧パイプ8及びポンプ・タービン構造体12を通る流体の二つの方向を示している。また、図面を簡単化するために、均圧パイプ8を開閉する弁は図面には示されていない。ポンプ・タービン構造体12は、好ましくは、水底6に配置されるが、これは地上、例えば、コンプレッサ・タービン構造体10の位置に設けることもできる。
【0017】
コンテナ2はバラスト15によって覆われており、エネルギ蓄積装置1がフルチャージされている場合でも、コンテナ2が確実に水底6に載るようにされている。バラスト15は、好ましくは、図面に示すように、コンテナ2を完全に覆う。より好ましくは、バラスト15は、砂利又は砂のようなバルク材料から成る。非常に好ましくは、水底6、例えば、エネルギ蓄積装置1の配置されている場所からえら得る材料が、バラスト15に排他的に使用される(これにより、かなりの深さの海底でも浚渫し、低コストでバルク材料をコンテナ2に堆積させることが可能になる)。
【0018】
コンテナ2には、好ましくは、その水平方向の寸法bが高さhの倍数、好ましくは2倍以上、特に好ましくは3倍以上、非常に好ましくは5倍又は10倍以上となるような平坦な輪郭を備えている。このような輪郭により、例えば、図面に示すようなレンズ形状を呈することが可能になり、バラスト15としてバルク材を使用する場合に特に有利となる。従って、より好ましくは、コンテナ2の上壁部17の傾斜は39度以下に保たれる。バラスト15は、少なくとも、コンテナ2の全ての位置において、コンテナの浮力を補償しなければならないことに留意すべきであり、そのため、図面に示すレンズ形状では、コンテナ2の端部に必要なバラスト15は、コンテナの中央領域よりも少ない。このことは、図面において、バラスト15の厚みを変えることで示されている。
【0019】
図1に示す実施形態では、コンテナ2には複数のバー9が設けられており、これらのバー9は、コンテナ2に所望の形状を与え、その輪郭を規定している。バー9は、好ましくは、引張荷重を受けることができ、コンテナ2の可撓性壁と同じ可撓性材料で構成され得る。具体的には、バー9は、コンテナ2が動作中に意図した輪郭を維持し、かつ、意図した動作容積で動作できるように、使用されるバラスト15と関連して配置される。
【0020】
図1には、コンテナ2の想像上の領域16が破線で示されており、この領域はコンテナ2の高さhの全体に渡って延びている。水底6から水面までの水の水柱の高さはHである。この想像上の領域16を用いて、本発明による水中エネルギ蓄積装置内の圧力条件を、
図2a及び2bを用いて以下に説明する。
【0021】
図面に示されていない実施形態では、水中エネルギ蓄積装置のコンテナ2は、一部に可撓性外壁3が設けられているだけである。具体的には、例えば、加圧空気パイプ7又は均圧管8の位置に、又は、コンテナ2の底部領域や天井領域にも、剛性の高い外壁3を設けることができる。
【0022】
本発明の利点は、コンテナが、コンテナの高さhからの水柱の圧力量の圧力負荷のために設計されるだけでよいことであり、海又は湖の水底6の深さ又は水面4までの高さHが、
図2a及び
図2bを参照して以下に説明するように、何の役割も果たさないことにある。
【0023】
従って、基本的には、本発明によれば、例えばコンクリート製の非可撓性の壁をコンテナ全体に設けることもできる。その理由は、深度が非常に深い場合であっても、必要とされる壁厚(圧力負荷)が比較的小さく、それにより、従来のコンテナに比べて、製造が非常に簡単になり、かつ、安価になる。
【0024】
その結果、圧縮流体の形態でエネルギを蓄積する方法が提供される。前記圧縮流体は、エネルギを蓄積するために、水面下に配置されたコンテナ2にポンプで送り込まれる。コンテナ2は、海底6又は湖底6に配置され、バラスト15によって、そこで重みがかけられ、前記コンテナ2が圧縮流体によって完全に満たされた時でも、コンテナ2が、動作位置6において海底又は湖底に対して押し付けられるようにされている。そして、コンテナ2に入る圧縮流体の量に応じて、そこに存在する水が周囲の水に排出され、かつ、コンテナ2から除去された圧縮流体の量に応じて、周囲の水が再びコンテナ2の中に流れ込み、それにより、コンテナ2から排出された水が、タービンを駆動するために使用され、コンテナ2に流れ込む水がそこに汲み上げられる。
【0025】
対応する空気圧式水中エネルギ蓄積装置は、圧縮流体用コンテナ2を有し、コンテナ2は、海底又は湖底6に置かれ、バラスト15によって覆われ、完全に負荷がかけられた時に、前記コンテナは、圧縮流体によって海底又は湖底6に対して押し付けられたままであり、さらに、圧縮流体用の圧力パイプ7がコンテナ2の上部領域に開放され、かつ、コンテナ2の下方領域に設けられた均圧パイプ8が、コンテナ2の内部と、周囲の水とを接続し、均圧管(8)に接続されたポンプ・タービン構造体12が、水中エネルギ蓄積装置1の動作中に流入する圧縮流体の量に応じて、タービンによって、均圧管8を介して、コンテナ2から周囲の水に水を排出し、かつ、コンテナ2から排出される圧縮流体の量に応じて、ポンプによって、コンテナ2内に周囲の水を搬送する。
【0026】
図2aは、コンテナが、圧縮流体、好ましくは、空気で完全に満たされている時のコンテナ2における想像上の領域16(
図1も参照)を示している。前記空気は、置き換えれた水に応じて、即ち、ここでは想像上の領域16の体積に応じて、ベクトルAによって示される浮力を生じさせる。コンテナ2がバラスト15によって底部に押し付けられた状態を維持する場合、ベクトルBによって示されたバラスト15の重量は、少なくとも浮力Aに対応していなければならず、その重量は、少なくとも空気によって置換された水の重量に対応している。ベクトルWは、想像上の領域16上の水の重量を示している。また、符号Fは、想像上の領域16の断面積を示している。
【0027】
yを水の比重とすると、結果は次のようになる。
水の重さは、W=(Hh)Fyになる。
バラスト重量は、B=Fhyであり、かつ、浮力A=FHyと等しい。
(バラストは、浮力に対応しなければならない)
空気量により、想像上の領域16の内圧は、どこでも等しいので、以下のように、その最上部領域(p1)における内圧は、開口11の位置(p2)と同じになる。
p1=p2=Hy(水の重量W+バラスト重量W、即ち、W+B=(H-h)Fy+Fhy、Fhyが上記のように作用する)
【0028】
エネルギ蓄積装置1が圧縮流体で満たされている場合、周囲の水と比較してその中に過圧が勝り、この過圧は高さhと共に増加し、この高さを有する水柱の圧力に対応する。この過圧は,水底6の深さや水の高さHとは無関係である。
【0029】
図2bは、コンテナ2に圧縮流体が充填されてなく、従って、コンテナ2が完全に水で満たされている時の、コンテナ内の想像上の領域16を示している。圧力p1は変化してなく、即ち、p1=Hyになる(想像上の領域16の上にある水の重量Wとバラスト15の重量Bは変化せず、従って、空想上領域16における頂点の内圧p1も変化しない)。
図2aによる想像上の領域16の空気含有量とは対照的に、コンテナ2は、この時、重量Fhyを有する水で満たされている。想像上のコンテナ内には水柱があり、その圧力は底部に向かって増加している(水の組成に依存して、10mあたり約1バール)。圧力p2もそれに応じて高くなり、p2=p1+hy=Hy+hyとなる。水で満たされている時、開口部11の位置の想像上の領域16には、周囲の水に比べてΔp=hyの量の過圧が生じ、これは想像上の領域16の水柱の高さに比例する。
【0030】
エネルギ蓄積装置1が水で満たされている場合、周囲の水に比べてコンテナ2内には過圧が生じており、これは水柱の高さhに相当する。この過圧は、水底6の深さや水の高さHとは無関係である。
【0031】
エネルギ蓄積装置1のコンテナ2が、
図1に示すように、レンズの形状に設計されている場合、高さhはその幅bに比べて小さく、即ち、その(過度な)圧縮応力は低くなる。バラスト15は、適切な寸法で構成されている場合、前記圧縮応力を吸収することができ、これにより、コンテナ2が、特別な特性を示す必要のない可撓性材料から製造されることを可能にし、即ち、安価に製造されることを可能にする。バー9(
図1)は、コンテナ2の輪郭を所望の形状に保つ。
【0032】
エネルギを回収するためにコンテナ2から圧縮空気を排出すると、周囲の水が開口部11からコンテナ2に流れ込む。ここで、コンテナ2内の水位は、
図2bの状態になるまで上昇する。水位が上昇すると、増加する水柱の重量によってコンテナ2内の過圧が増加するため、ポンプ・タービン構造体14のポンプを使用して周囲の水をコンテナ2内に汲み上げる必要がある。(蓄えられた空気がすべてコンテナ2から排出されるまで)エネルギE=VHyを引き出す際には、ポンプエネルギPp=V(h/2)yを同時に適用しなければならない。
【0033】
圧力p1で圧縮空気を蓄積している間に、コンテナ2から水が排出された場合、コンテナ2がまだ完全に水で満たされている時、この水は過圧hyを有し、水が完全に空になるまでに0に低下する。本発明によれば、過圧下の水は、ポンプ・タービン構造体14のタービンを通して加圧され、その結果、タービンエネルギPT=V(h/2)yが得られる。
【0034】
これは、コンテナ2の内容物(水及び圧縮流体、ここでは空気)の変化が、エネルギ的に中立な方法で行われることを意味するが、ポンプ・タービン構造体14における損失のために、現実にはそうではない。これらの損失は、蓄積可能なエネルギに比べて低く、無視できるコスト要因となる。
【0035】
この時点で、特に、バラスト15の重量は、当業者が特定のケースにおいて、例えば、公差又は安全性の考慮などに関して、
図2aの計算とは異なるように設定され得ることに留意すべきである。特定のケースでは、当業者は、
図2a又は
図2bによる計算を適宜容易に変更し得る。
【0036】
上述したように、コンテナ2は、好ましくは、
図2aによる圧縮流体を充填した状態と、
図2bによる水を充填した状態とを交互に行き来しており、コンテナ2は、例えば、コンプレッサを介して周期的に圧縮空気をコンプレッサ・タービン構造体10に充填し、タービンを介して再び空にされる。もちろん、エネルギ蓄積装置1を不規則なサイクルで稼働させること、即ち、コンテナ2に圧縮流体を部分的にしか充填しないことも可能である。圧縮流体(空気)及び水のコンテナ2への出し入れは、常に体積中立であり、即ち、コンテナ2に出入りする水の体積は、コンテナ2に送り込まれたり、コンテナ2から取り出されたりする圧縮流体の体積に対応している。
【0037】
図3は、動作状態にあるエネルギ蓄積装置1又は20のコンテナ2の断面図を示しており、この図では、明確化の目的のために理想的な輪郭に比べて、コンテナ2の実際の変形が幾分誇張されて示されている。図面を簡略化するために、圧力パイプ7、均圧パイプ8、及びコンプレッサ・タービン構造体10(
図1参照)は省略されている。コンテナ2の可撓性壁部23は、海底又は湖底の輪郭に容易に適応し、バラスト15及びバラスト15によって及ぼされる圧力に関しては、上部の可撓性壁部24が適応する(変形は、バラスト15によってコンテナ2に負荷をかけている間、又はエネルギ蓄積装置1,20の充電又は排出の間にも生じ得る)。高価で剛性の高い耐圧設計は不要であり、加えて、可撓性膜によって形成されたコンテナ2は、製造が安価であるだけでなく、海底に配置してバラストを積載するのにも安価である。
【0038】
図4は、空気圧式エネルギ蓄積装置30の複数のコンテナ24から成る別の構造を示している。これらのコンテナ24は、球状又は管状の形態であり、海底又は湖底に準備された盛り土25に埋め込まれ得る。一般的に、このような盛り土、特定の場合、例えば、部分的に岩場であったり、又は非常に水底が不均一であったりする場合、コンテナの可撓性膜が動作中に局所的に過大なストレスを受ける可能性があることを想定しなければならない場合に設けることができる。実施可能な局所的な盛り土は、剛体コンテナを用いた他の構造と比較して、あまりコストがかからない。海底又は湖底のほとんどの砂地では、盛り土なしですますことが可能である。
【0039】
図5及び
図6は、グラフ35において蓄積されたエネルギのコストに関する概算を示し、グラフ36において水深の関数として蓄積され得るエネルギ量の概算を各々示している。この概算は、可撓性膜によって完全に形成された圧縮空気用のコンテナを有する本発明によるエネルギ蓄積装置に基づいており、コンテナは水深40mの海底にあり、海砂によって覆われており、前記海砂は吸引式浚渫装置によって吸い込まれてコンテナ上に配置される。可撓性膜の傾きはコンテナの端部で30度であり、レンズ状に設計されており、直径が50m、最大高さ(中心部)は6.7mである。これにより、可撓性膜の総面積は4064m
2となり、最大蓄積体積は6734m
3となる。
【0040】
ポリエステル/PVC膜の平均的なコストは12米ドル/m2であり、従って、コンテナのコストは、48,820米ドルになる。また、上述したように、バラスト材として海砂を想定しており、その敷設費用は2米ドル/m3であり、合計7,678米ドルになる。タービン・コンプレッサ構造体についての経験値では、エネルギ蓄積コストは、20米ドル/kWhとなる。その結果、76米ドル/kWhになり、エネルギ蓄積装置が完全にチャージされた場合の蓄積エネルギは、0.75MWhとなる。
【0041】
グラフ35(
図5)は、三つの直径D=25,50,100mの空気蓄積槽について、水深H(m)の関数としてのエネルギコスト[米ドル/kWh]をグラフ化したものである。グラフ36(
図7)は、三つの直径D=25,50,100mの空気蓄積層について、水深H(m)の関数としての蓄積されるエネルギ量[MWh]をグラフ化したものである。
【0042】
その結果、水深50mですでに経済性や競争力のある産業利用が可能であることが分かり、これに対して、StEnSEAプロジェクト(上記の説明を参照)では、プロジェクトの説明書の仕様では水深約700mからしか経済的な利用ができないコンクリート製蓄積コンテナを使用している。