(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】新規ジペプチド化合物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 5/062 20060101AFI20240613BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20240613BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240613BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C07K5/062
A61K38/05
A61P7/02
A61P9/10 101
(21)【出願番号】P 2021547662
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 US2019057985
(87)【国際公開番号】W WO2020092139
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-12
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521185169
【氏名又は名称】ファーハイ ユーエス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】リ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ユ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-543850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0169113(US,A1)
【文献】特開2000-344745(JP,A)
【文献】特開2006-249098(JP,A)
【文献】特表2005-517734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 5/062
A61K 38/05
A61P 7/02
A61P 9/10
A61P 35/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩であって、
式中、R
1は、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、または置換されていてもよいアルキニルであり、かつ
R
2は、
であり、
ここで、
pは、1~6の範囲の整数であり、かつ
R
3は、置換されていてもよいアルキル
、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールであり、かつ
R
6は、水素、置換されていてもよいアルキル
、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールであ
る、
前記化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
R
1が、置換されていてもよいC
1~6アルキルである、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
R
1が、置換されていないC
1~6アルキルである、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
R
1が、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチルである、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
R
2が、
であり、かつR
3が、置換されていてもよいC
1~12アルキル
である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
R
3
がC
1~12
アルキルであり、該C
1~12
アルキルは、非置換であるか、またはヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アシル、スルホニル、スルフヒドリル、アルキルスルファニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、エステル基、及びトリフルオロメチルからそれぞれ独立して選択される1、2、または3個の置換基で置換されたものである、請求項5に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
R
3が、置換されていてもよいヘテロシクリル基で置換されていてもよいC
1~4アルキル
であ
る、請求項5または6に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項8】
R
2
が、
である、請求項7に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
R
3が、非置換の直鎖または分枝鎖C
1~12アルキル
である、請求項5に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項10】
R
3が、非置換の直鎖または分枝鎖C
1~6アルキル
である、請求項9に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
R
3
が、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、n-ペンチル、またはn-ヘキシルである、請求項10に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項12】
R
2が
であり、ここで、nが、1~6の範囲の整数であり、かつ
R
4が、水素、置換されていてもよいアルキル
、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである、請求項5に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項13】
nが、1、2、または3である、請求項
12に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項14】
R
4が、水素、C
1~12アルキル
、フェニル、またはベンジルである、請求項
12もしくは
13に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項15】
R
2が
であり、ここで、
R
5が、水素、置換されていてもよいアルキル
、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである、請求項5に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項16】
R
5が、水素、C
1~12アルキル
、フェニル、またはベンジルである、請求項
15に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項17】
R
2が
であり、かつpが、1、2、または3である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項18】
R
6が、水素、またはC
1~12アルキル
である、請求項
17に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項19】
R
2が、
である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項20】
R
2が、
である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項21】
化合物番号1~19から選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩
:
。
【請求項22】
化合物番号1、6、8、10、12、13、17、または19から選択される、請求項21に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩:
。
【請求項23】
化合物番号17である、請求項21に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩:
。
【請求項24】
化合物番号17の塩酸塩である、請求項23に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項25】
化合物番号19である、請求項21に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩:
。
【請求項26】
請求項1~
25のいずれか1項に記載の1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩、及び任意で、薬学的に許容される担体
を含む、医薬組成物。
【請求項27】
錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤
、またはシロップ剤などの経口投与用に製剤化された、請求項
26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
対象における静脈血栓性疾患及び/または動脈血栓性疾患を治療するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項1~
25のいずれか1項に記載の1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項29】
前記血栓性疾患が、深部下肢静脈血栓症、バイパス手術または血管形成術(PT(C)A)後の再閉塞、末梢動脈疾患における閉塞、肺塞栓症、播種性血管内凝固、冠状動脈血栓症、脳卒中、及びシャントまたはステントの閉塞から選択される、請求項
28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
非弁膜症性心房細動を有する対象における脳卒中及び全身性塞栓症のリスクを低減するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項1~
25のいずれか1項に記載の1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項31】
その必要がある対象において深部静脈血栓症及び/または肺塞栓症を治療するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項1~
25のいずれか1項に記載の1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項32】
その必要がある対象において深部静脈血栓症及び/または肺性塞栓症の再発のリスクを低減するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項1~
25のいずれか1項に記載の1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項33】
その必要がある対象における深部静脈血栓症及び/または肺塞栓症の予防処置のための医薬組成物であって、治療有効量の請求項1~
25のいずれか1項に記載の1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項34】
前記対象が、股関節置換術を受けたことがある、請求項
33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
その必要がある対象においてアテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、脳動脈症、及び/または末梢動脈症を治療するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項1~
25のいずれか1項に記載の1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項36】
その必要がある対象において、例えばrt-PAまたはストレプトキナーゼによる血栓溶解療法にて抗血栓支援を提供するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項1~
25のいずれか1項に記載の1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項37】
その必要がある対象においてPT(C)A後の長期再狭窄を予防するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項1~
25のいずれか1項に記載の1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項38】
その必要がある対象において血栓依存性(clot-dependent)腫瘍の転移、増殖、及び/またはフィブリン依存性炎症過程を予防するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項1~
25のいずれか1項に記載の1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項39】
経口投与される、請求項
28~38のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月29日に出願された米国仮出願第62/751,984号に基づく利益を主張するものであり、当該出願の全容を参照により本明細書に援用するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、新規の二置換ジペプチド医薬化合物及びその塩、特に有機酸または無機酸と形成された生理学的に許容される塩に関する。詳細には、本発明は、かかる化合物を調製するためのプロセス、血栓塞栓性疾患を予防及び治療するためのその使用、ならびにかかる化合物を含有する医薬組成物に関する。本発明の新規化合物は、トリプターゼ様セリンプロテアーゼ、特にトロンビンの競合的阻害剤として有用である。
【背景技術】
【0003】
世界における心血管疾患及び脳血管疾患の死亡率は世界で2位となっており、血栓塞栓症は心血管疾患及び脳血管疾患の高い発症率の主要因となっている。特に人々の生活様式の変化及び人口の高齢化に伴い、こうした疾患の発症率が高まっている。このため、臨床的応用及び基礎研究の両方で、こうした疾患を効果的に予防及び治療する薬剤の探索及び研究が特に喫緊の課題となっている。
【0004】
血栓症は、血液凝固を引き起こす一連の複雑な反応によって引き起こされる。生物の正常な凝固カスケードは、損傷した血管壁を速やかかつ安定的に封止することで出血を止めることができる。凝固システムの制御されない活性化または活性化プロセスにおける阻害機構の欠如は、例えば、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症(PE)、心筋梗塞または脳梗塞、心房細動などの様々な関連疾患または合併症をもたらし得る。
【0005】
直接的トロンビン阻害剤及び直接的第Xa因子阻害剤の2つの主要なタイプの経口抗凝固薬が現在、市販されている。血液凝固は複雑な一連の酵素反応の結果であり、内因性及び外因性の連鎖反応が複数の増幅ステップによるプロトロンビンのトロンビンへの活性化をもたらす重要なステップである。トロンビンは、フィブリノゲンを加水分解して不溶性の繊維性凝集体を形成させ、それにより凝固及び血小板凝集を誘発するように作用し、血液凝固カスケードにおける主要な役割を担っている。したがって、トロンビン活性を阻害することで、血栓の形成を阻止することができる。2008年に上市されたダビガトランエテキシラートは、現在のところ、唯一の経口的に有効な直接的トロンビン阻害剤である。臨床的には、ダビガトランエテキシラートは、ワルファリンの代用薬として、また、非弁膜症性心房細動(NVAF)を有する患者において脳卒中及び全身性塞栓症を予防し、深部静脈血栓症を予防するための第一選択薬として使用することができる。しかしながら、ダビガトランエテキシラートは経口バイオアベイラビリティーが低く、主として腎臓により排出されるため、それ自体の欠点も有している。今までのところ、血栓症の便宜のよい治療となる、効果的な選択性を有する、経口的なバイオアベイラビリティーを有するトロンビン阻害剤は有望な選択肢を代表するものである。
【発明の概要】
【0006】
発明の簡単な概要
異なる実施形態において、本発明は、高い抗血栓作用を有し、良好な安定性、溶解性、薬物動態特性、低い毒性、または長時間作用性を有する新規の経口投与可能な化合物群を提供する。いくつかの実施形態では、調製方法、例えば、トロンビンを阻害するための、ならびに/またはトロンビン介在疾患及び/もしくはトロンビン関連疾患を治療もしくは予防するための使用方法も提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の例示的な実施形態、すなわち実施形態1~32を提供する。
【0008】
実施形態1.式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩であって、
式中、R
1は、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、または置換されていてもよいアルキニルであり、かつ
R
2は、水素、
であり、
ここで、
pは、1~6の範囲の整数であり、かつ
R
3は、置換されていてもよいアルキル(例えば、置換されていてもよいアラルキル、または置換されていてもよいヘテロアラルキル)、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールであり、かつ
R
6は、水素、置換されていてもよいアルキル(例えば、置換されていてもよいアラルキル、または置換されていてもよいヘテロアラルキル)、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールであり、
ただし、R
1及びR
2は、両方とも水素であることはない、
前記化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0009】
実施形態2.R1が、置換されていてもよいC1~6アルキルである、実施形態1の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0010】
実施形態3.R1が、置換されていないC1~6アルキルである、実施形態1の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0011】
実施形態4.R1が、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチルである、実施形態1の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0012】
実施形態5.R
2が、
であり、かつR
3が、置換されていてもよいC
1~12アルキル、例えば、非置換のもの、またはヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン(例えば、F)、アルキル(例えば、C
1~6アルキル)、ヘテロアルキル(例えば、C
1~6ヘテロアルキル)、アルコキシ(例えば、C
1~6アルコキシル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、5員または6員のヘテロアリール)、アシル、スルホニル、スルフヒドリル、アルキルスルファニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、エステル基、及びトリフルオロメチルからそれぞれ独立して選択される1、2、または3個の置換基で置換されたものである、実施形態1~4のいずれか1つの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0013】
実施形態6.R
3が、置換されていてもよいヘテロシクリル基で置換されていてもよいC
1~4アルキル(例えば、メチル)であり、例えば、R
2が
である、実施形態5の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0014】
実施形態7.R3が、非置換の直鎖または分枝鎖C1~12アルキル(例えば、n-ヘキシル)である、実施形態5の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0015】
実施形態8.R3が、非置換の直鎖または分枝鎖C1~6アルキル、例えば、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、n-ペンチル、またはn-ヘキシルである、実施形態7の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0016】
実施形態9.R
2が
であり、ここで、nが、1~6の範囲の整数であり、かつ
R
4が、水素、置換されていてもよいアルキル(例えば、置換されていてもよいアラルキルまたはヘテロアラルキル)、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである、実施形態5の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0017】
実施形態10.nが1、2、または3である、実施形態9の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0018】
実施形態11.R4が、水素、C1~12アルキル(例えば、C1~6アルキル、例えば、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、n-ペンチル、またはn-ヘキシル)、フェニル、またはベンジルである、実施形態9もしくは10の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0019】
実施形態12.R
2が、
であり、ここで、
R
5が、水素、置換されていてもよいアルキル(例えば、置換されていてもよいアラルキルまたはヘテロアラルキル)、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである、実施形態5の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0020】
実施形態13.R5が、水素、C1~12アルキル(例えば、C1~6アルキル)、フェニル、またはベンジルである、実施形態12の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0021】
実施形態14.R
2が
であり、かつpが、1、2、または3である、実施形態1~4のいずれか1つの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0022】
実施形態15.R6が、水素、またはC1~12アルキル(例えば、C1~6アルキル)である、実施形態14の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0023】
実施形態16.R
2が、
である、実施形態1~4のいずれか1つの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0024】
実施形態17.R
2が、
である、実施形態1~4のいずれか1つの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0025】
実施形態18.化合物番号1~19から選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【0026】
実施形態19.実施形態1~18のいずれかの1つ以上の化合物または薬学的に許容されるその塩、及び任意で、薬学的に許容される担体
を含む、医薬組成物。
【0027】
実施形態20.錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤(例えば、経口溶液、懸濁液、エマルションなど)、またはシロップ剤などの経口投与用に製剤化された、実施形態19の医薬組成物。
【0028】
実施形態21.静脈血栓性疾患及び/または動脈血栓性疾患を治療する方法であって、その必要がある対象に、治療有効量の実施形態1~18のいずれかの1つ以上の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または実施形態19もしくは20の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0029】
実施形態22.前記血栓性疾患が、深部下肢静脈血栓症、バイパス手術または血管形成術(PT(C)A)後の再閉塞、末梢動脈疾患における閉塞、肺塞栓症、播種性血管内凝固、冠状動脈血栓症、脳卒中、及びシャントまたはステントの閉塞から選択される、実施形態21の方法。
【0030】
実施形態23.非弁膜症性心房細動を有する対象における脳卒中及び全身性塞栓症のリスクを低減する方法であって、前記対象に、治療有効量の実施形態1~18のいずれかの1つ以上の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または実施形態19もしくは20の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0031】
実施形態24.その必要がある対象において深部静脈血栓症及び/または肺塞栓症を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の実施形態1~18のいずれかの1つ以上の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または実施形態19もしくは20の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0032】
実施形態25.その必要がある対象において深部静脈血栓症及び/または肺性塞栓症の再発のリスクを低減する方法であって、前記対象に、治療有効量の実施形態1~18のいずれかの1つ以上の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または実施形態19もしくは20の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0033】
実施形態26. その必要がある対象における深部静脈血栓症及び/または肺塞栓症の予防処置方法であって、前記対象に、治療有効量の実施形態1~18のいずれかの1つ以上の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または実施形態19もしくは20の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0034】
実施形態27. 前記対象が、股関節置換術を受けたことがある、実施形態26の方法。
【0035】
実施形態28.その必要がある対象においてアテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、脳動脈症、及び/または末梢動脈症を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の実施形態1~18のいずれかの1つ以上の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または実施形態19もしくは20の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0036】
実施形態29.その必要がある対象において、例えばrt-PAまたはストレプトキナーゼによる血栓溶解療法にて抗血栓支援を提供する方法であって、前記対象に、治療有効量の実施形態1~18のいずれかの1つ以上の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または実施形態19もしくは20の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0037】
実施形態30.その必要がある対象においてPT(C)A後の長期再狭窄を予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の実施形態1~18のいずれかの1つ以上の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または実施形態19もしくは20の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0038】
実施形態31.その必要がある対象において血栓依存性(clot-dependent)腫瘍の転移、増殖、及び/またはフィブリン依存性炎症過程を予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の実施形態1~18のいずれかの1つ以上の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または実施形態19もしくは20の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0039】
実施形態32.前記投与することが、経口投与による、実施形態21~31のいずれか1つの方法。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
本発明の目的の1つは、高い抗血栓作用を有し、良好な安定性、溶解性、薬物動態特性、低い毒性、または長時間作用性を有する新規の経口投与可能な化合物群を提供することにある。
【0041】
一実施形態では、本発明は、式(I)の新規化合物及び薬学的に許容されるその塩を提供する。
式中、R
1は、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、または置換されていてもよいアルキニルであり、
R
2は、水素、
であり、
ここで、pは、1~6の範囲の整数であり、
R
3は、置換されていてもよいアルキル(例えば、置換されていてもよいアラルキル、または置換されていてもよいヘテロアラルキル)、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールであり、
R
6は、水素、置換されていてもよいアルキル(例えば、置換されていてもよいアラルキル、または置換されていてもよいヘテロアラルキル)、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールであり、
ただし、R
1及びR
2は、両方とも水素であることはない。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態では、R1は、置換されていてもよいC1~6アルキルであり、例えば、R1は、非置換のC1~6アルキル、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチルである。
【0043】
いくつかの実施形態では、R
2は、
であってよく、R
3は、置換されていてもよいC
1~12アルキル、例えば、非置換のもの、またはヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン(例えば、F)、アルキル(例えば、C
1~6アルキル)、ヘテロアルキル(例えば、C
1~6ヘテロアルキル)、アルコキシ(例えば、C
1~6アルコキシル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、5員または6員のヘテロアリール)、アシル、スルホニル、スルフヒドリル、アルキルスルファニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、エステル基、及びトリフルオロメチルからそれぞれ独立して選択される1、2、または3個の置換基で置換されたものである。
【0044】
いくつかの実施形態では、R
3は、置換されていてもよいヘテロシクリル基で置換されていてもよいC
1~4アルキルであってよい。例えば、いくつかの好ましい実施形態では、R
2は、
であってよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、R3は、非置換の直鎖または分枝鎖C1~12アルキル(例えば、n-ヘキシル)であってよい。例えば、いくつかの実施形態では、R3は、非置換の直鎖または分枝鎖C1~6アルキル、例えば、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、n-ペンチル、またはn-ヘキシルであってよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、R
2は、
であり、ここで、nは、1~6の範囲の整数であり、
R
4は、水素、置換されていてもよいアルキル(例えば、置換されていてもよいアラルキルまたはヘテロアラルキル)、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、nは、1、2、または3であってよい。いくつかの実施形態では、R
4は、水素、C
1~12アルキル(例えば、C
1~6アルキル、例えば、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、n-ペンチル、またはn-ヘキシル)、フェニル、またはベンジルであってよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、R
2は、
であってよく、ここで、
R
5は、水素、置換されていてもよいアルキル(例えば、置換されていてもよいアラルキルまたはヘテロアラルキル)、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、R
5は、水素、C
1~12アルキル(例えば、本明細書に記載されるC
1~6アルキル)、フェニル、またはベンジルであってよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、R
2は、
であってよく、
ここで、pは、1、2、または3である。いくつかの実施形態では、R
6は、水素、またはC
1~12アルキル(例えば、C
1~6アルキル)であってよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、式(I)中のR1またはR2が、1、2、または3個の置換基などの置換基を有する場合、「置換基」は、好ましくは、C1~4アルキル(例えば、メチル、エチルなど)、ハロゲン(特にフッ素)、またはトリフルオロメチルから独立して選択することができる。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態では、R
2は、
であってよい。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態では、R
2は、
であってよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、式(I)中のR1は、水素であってよい。いくつかの実施形態では、式(I)中のR2は、水素であってよい。
【0053】
定義
当該技術分野の一般的な慣習に従って、本明細書の化学構造中にみられる記号
は、示された部分が分子の残りの部分に結合される点を示す。
【0054】
本明細書で使用するところの「アルキル」なる用語は、直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素鎖、例えば、1~20個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素鎖を指す。「Cx~yアルキル」なる用語は、x~y個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素を指す。例えば、「C1~6アルキル」は、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素を意味する。アルキル基の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル及びn-デシルが挙げられる。
【0055】
本明細書で使用するところの「アルケニル」なる用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖、例えば、2~20個の炭素を有し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖を指す。「Cx~yアルケニル」なる用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、x~y個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素鎖を指す。例えば、「C3~6アルケニル」なる用語は、3~6個の炭素原子を有するアルケニル基を指す。アルケニルの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、ブタン-2,3-ジエニル、ビニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、2-メチル-1-ヘプテニル及び3-デセニルが挙げられる。
【0056】
本明細書で使用するところの「アルキニル」なる用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖のアルキン基、例えば、2~20個の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖を指す。「Cx~yアルキニル」なる用語は、x~y個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。例えば、「C3~6アルキニル」とは、3~6個の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素ラジカルを指す。アルキニルの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、3-ブチニル、2-ペンチニル、及び1-ブチニルが挙げられる。
【0057】
本明細書で使用するところの「ヘテロアルキル」なる用語は、アルキル基の1つ以上のCH2またはCHが、独立して選択されるO、S、S(O)、SO2、NまたはNHで置き換えられた基を指す。
【0058】
本明細書で使用するところの「アラルキル」なる用語は、1つ以上の独立して選択されたアリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0059】
本明細書で使用するところの「ヘテロアラルキル」なる用語は、1つ以上の独立して選択されたヘテロアリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0060】
本明細書で使用するところの「アルコキシ」なる用語は、「O-Ra」を指し、ただし、Raはアルキルである。
【0061】
本明細書で使用するところの「シクロアルコキシ」なる用語は、「O-Ra」を指し、ただし、Raはシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルである。
【0062】
本明細書で使用するところの「シクロアルキル」なる用語は、単環式または架橋された炭素環式環系を指す。単環式シクロアルキル基は、3~10個の炭素原子、0個のヘテロ原子を有する、飽和または不飽和(非芳香族環)の炭素環系である。飽和単環系の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。飽和単環式環は、それぞれが1、2または3個の炭素原子を含み、それぞれの架橋が環系の2個の隣接していない炭素原子を連結する1個または2個のアルキレン架橋を含むことができる。かかる架橋シクロアルキル環系の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.2]デカン、ビシクロ[3.3.1]デカン、ビシクロ[4.2.1]ノナン、トリシクロ[3.3.1.0 3,7]デカン(オクタヒドロ-2,5-メチレンシクロペンタジエンまたはノルアダマンタン)及びトリシクロ[3.3.1.1 3,7]デカン(アダマンタン)が挙げられる。一部の不飽和単環式環は、4~10個の炭素原子及び0個のヘテロ原子を有するオレフィン結合を含んでもよい。例えば、4員の環系は1個の二重結合を有することができ、5員または6員の環系は1個または2個の二重結合を有することができ、7員または8員の環系は1個、2個、または3個の二重結合を有することができ、9員または10員の環は1個、2個、3個、または4個の二重結合を有することができる。不飽和の単環式シクロアルキルの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、及びシクロオクテニルが挙げられる。不飽和の単環式環もまた、それぞれが1、2または3個の炭素原子を含み、それぞれが環系の2個の隣接していない炭素原子を架橋する1個または2個のアルキレン架橋を含むことができる。オレフィン結合を含む不飽和の架橋環の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、4,5,6,7-テトラヒドロ-3aH-インダン、オクタヒドロナフチル、及び1,6-ジヒドロ-シクロペンタジエンが挙げられる。単環式及び架橋されたシクロアルキル基は、環系に含まれる任意の置換可能な原子を介して親分子部分と結合されうる。
【0063】
本明細書で使用するところの「複素環」または「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクロアルキレン」なる用語は、O、N及びSからなる群から独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んだ、飽和または不飽和(非芳香族)の単環式または架橋された3員、4員、5員、6員、7員、または8員の環系を指す。複素環中の窒素及び硫黄ヘテロ原子は任意で酸化されていてもよく、窒素原子は任意で四級化されていてもよい。飽和ヘテロシクロアルキル基の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、モルホリニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ジオキソラニル、テトラヒドロフラニル、チオモルホリニル、1,4-ジオキサニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、オキセタン、ピペラジニル、イミダゾリジニル、アゼチジン、アゼパニル、アジリジニル、ジアゼパニル、ジチアチル、ジチアニル、イソオキサゾリジニル、イソチアゾリジニル、オキサジアゾリジニル、オキサゾリジニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロチオフェニル、チアジアゾリジニル、チアゾリジニル、チオモルホリニル、トリチアアルキル及びトリチアルキルが挙げられる。オレフィン結合を有する複素環などの不飽和複素環の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、1,4,5,6-テトラヒドロピリダジニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジル、ジヒドロピラニル、イミダゾリニル、イソチアゾリニル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリニル、オキサゾリニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピロリニル、チアジアゾリル、チアゾリル及びチオピラニルが挙げられる。不飽和複素環には、
も含まれる。単環式及び架橋された複素環は、環内に含まれる任意の置換可能な炭素原子または任意の置換可能な窒素原子を介して親分子部分と結合させることができる。
【0064】
本明細書で使用するところの「アリール」なる用語は、フェニルまたはナフチルなど、ヘテロ原子を含まない単環式または多環式芳香族環を指す。
【0065】
本明細書で使用するところの「ヘテロアリール環」または「ヘテロアリール」または「ヘテロアリーレン」なる用語は、少なくとも1つの炭素原子及び1つ以上の独立して選択された窒素、酸素または硫黄原子を有する5員または6員の芳香族環を指す。本発明のヘテロアリール環は、正常な価数が維持されるという仮定の下、環内の任意の隣接原子を介して結合させることができる。ヘテロアリールの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、フラニル(これに限定されるものではないが、フラン-2-イルを含む)、イミダゾリル(これに限定されるものではないが、IH-イミダゾール-1-イルを含む)、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、1,3-オキサゾリル、ピリジニル(例えば、ピリジン-4-イル、ピリジン-2-イル、及びピリジン-3-イル)、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、1,3-チアゾリル、チエニル(これらに限定されるものではないが、チオフェン-2-イル及びチオフェン-3-イル)、トリアゾリル及びトリアジニルが挙げられる。例えば、ヘテロアリールには、式(II):
で表される構造単位が含まれる。
【0066】
本明細書で使用するところの「置換されていてもよい」なる用語は、修飾される基が置換されていなくとも、または1、2、もしくは3個の置換基で置換されていてもよいことを意味する。「置換されていてもよい」基が1、2、または3個の置換基などの置換基を有する場合、「置換基」は、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アシル、スルホニル、-SH、アルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、エステルまたはトリフルオロメチルからなる群から独立して選択することができ、上記(例えば、アルキルなど)のそれぞれは例えば、1、2、または3個の独立して選択される置換基で更に置換されてもよい。場合により、「置換されていてもよい」基が、1、2、または3個の置換基などの置換基を有する場合、「置換基」は、好ましくは、C1~4アルキル(例えば、メチル、エチルなど)、ハロゲン(特にフッ素)、またはトリフルオロメチルから独立して選択することができる。例えば、「置換されていてもよいアルキル」には、非置換のアルキルが含まれ、また、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロ(例えば、F)、アルキル(例えば、C1~6アルキル)、ヘテロアルキル(例えば、C1~6ヘテロアルキル)、アルコキシ(例えば、C1~6アルコキシ)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、5員または6員のヘテロアリール)、アシル、スルホニル、-SH、アルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、エステル及びトリフルオロメチルから独立して選択される1、2、または3個の置換基で置換されたアルキルも含まれる。
【0067】
「本発明の化合物(複数可)」には、式(I)のすべての化合物(例えば、化合物1~19のいずれか1つ以上)、薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、その互変異性体、同位体などが含まれる。本発明の化合物は水和物または溶媒和物の形態で存在する場合もある。本発明の化合物の例示的な実施形態には、実施形態1~18に記載されるものが含まれる。当業者であれば、本発明の化合物は互変異性体の混合物としても存在しうる点は理解されよう。
【0068】
本発明の化合物は、RまたはS配置の不斉炭素原子を含む。好ましくは、本発明の式(I)の2個のキラル中心は図に示される配置で主として存在し、例えば、それぞれのキラル中心について80%よりも高いエナンチオマー過剰率(ee)で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の化合物において、それぞれのキラル中心について式(I)に示される配置は他方の配置よりも約85%~90%、より好ましくは約95%~99%、より好ましくは約99%多いか、または他方の配置は検出できない。
【0069】
本発明の化合物は、自然界でみられる最大量の原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する1つ以上の原子を含む同位体標識された、または同位体濃縮された形態で存在しうる。同位体は、放射性または非放射性同位体であってよい。水素、炭素、リン、硫黄、フッ素、塩素、及びヨウ素などの原子の同位体には、これらに限定されるものではないが、2H、3H、13C、14C、15N、18O、32P、35S、18F、36Cl及び125Iが含まれる。これらの同位体及び/または他の原子の同位体を含む化合物は本発明の範囲内に含まれる。
【0070】
本発明の特定の好ましい具体的な化合物としては、これらに限定されるものではないが、以下のものが含まれる。
【0071】
【0072】
本開示には、本明細書の化合物の薬学的に許容される塩も含まれる。
【0073】
本発明の式(I)の化合物は、トリプターゼ様セリンプロテアーゼの活性を媒介するうえで有用である。より詳細には、本発明の化合物は、抗凝固薬として、また、トリプターゼ様セリンプロテアーゼの活性を調節または阻害し、それにより血栓塞栓性疾患及び他の関連する心血管疾患を治療するための薬剤として有用である。
【0074】
特に断らない限り、本明細書に開示される用語及び略語は、当業者によって理解されるそれらの通常の意味を有する。
【0075】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩には、薬学的に許容される無機及び有機酸の付加塩が含まれる。適当な酸の例としては、これらに限定されるものではないが、硫酸、亜硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、過塩素酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヘプタン酸、シュウ酸、安息香酸、サリチル酸、ケイ皮酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、乳酸、ニコチン酸、及びマンデル酸が挙げられる。
【0076】
本発明の第2の目的は、N末端保護されたアミノ酸から出発して最終生成物を調製することを含む、式(I)の化合物を調製するためのプロセスを提供することにある。プロセスは、当該技術分野では周知の同様の従来の反応によって行うことができる(本発明の化合物は以下の一般的手順に従って調製することができる)。合成経路で用いられる出発材料、試薬、技術、及び方法もまた、当業者には周知であり理解されるものである。
【0077】
本発明の化合物は、以下の一般的手順に従って調製することができる。
【0078】
【0079】
N-tert-ブトキシカルボニル-D-ロイシンのような保護アミノ酸を、EDCI/HOBtなどのカップリング剤を使用して所望のアミンとカップリングさせることができる。次いで、生成物を水素添加によりアミジンに変換することができる。次いで、R2基をアミジンに結合させることができる。保護基Tを除去した後、脱保護された生成物を求核置換反応によって最終化合物に変換することができる。
【0080】
【0081】
修飾基が結合された保護アミノ酸を、EDCI/HOBtなどのカップリング剤を使用して所望のアミンとカップリングさせることができる。次いで、カップリング生成物を、水素添加によって保護基を除去した後、アミジンに変換することができる。次いで、R2基をアミジンに結合させることができる。保護基Tを除去した後、脱保護された生成物を求核置換反応によって最終化合物に転換することができる。
【0082】
上記の合成経路において、アミドカップリング反応は、例えば、アジド、混合酸無水物、カルボジイミド(ジシクロヘキシルカルボジイミドDCC、ジイソプロピルカルボジイミドEDC)、活性エステル、カルボニルジイミダゾール、BOP-Clなどのリン試薬によって媒介される標準的なペプチドカップリング法を用いることができる。これらの方法のいくつか(特にカルボジイミド法)は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールの付加によって促進することができる。このプロセスは窒素などの不活性ガス下で行うことができ、必要に応じて、カップリング反応を酸スカベンジャーの存在下で行うことができる。適当な酸スカベンジャーの例としては、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリンなど、好ましくは、N-メチルモルホリンまたはジイソプロピルエチルアミンが挙げられる。
【0083】
上記のカップリング反応は、通常、無水溶媒中で行われる。有用な溶媒の例としては、これらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、ジクロロエタン、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。反応温度は、通常、それほど重要ではないが、好ましくは、反応は0~30℃で、2~24時間にわたって行われる。
【0084】
N末端脱保護は、例えば、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、もしくはギ酸などの有機酸、または塩酸、硫酸、または臭化水素酸などの鉱酸を用いた酸媒介加水分解;例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、水素化物、炭酸塩もしくは炭酸水素塩、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなど、またはジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジンなどの有機塩基を用いた塩基媒介加水分解;またはパラジウム、白金、またはニッケルなどの金属触媒などの触媒の存在下での水素化分解などの従来の方法によって行うことができる。適当な方法は、“Protective Groups in Organic Synthesis” Third Edition,T.W.Green and Peter G.M.Wuts(1999), Publisher:John Wiley & Sons,Inc.にもみることができる。
【0085】
一般的に、アミノ保護基の除去は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で行うことができる。有用な溶媒の例としては、ジクロロメタン、アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、酢酸、及び酢酸エチルが挙げられる。反応温度は通常それほど重要ではないが、好ましくは0~40℃である。
【0086】
N-アルキル化を求核置換により行うことができる。適当な求核置換試薬としては、これらに限定されるものではないが、臭化アルキル、ヨウ化アルキル、塩化アルキル、スルホン化アルキル、アルキルベンゼンスルホナート、アルキルp-トルエンスルホナート、アルキルメシラート、または硫酸ジメチルなどの硫酸基を含む試薬が挙げられる。ヨウ化アルキルまたはアルキルp-トルエンスルホナートが好ましい。求核置換反応は一般的に酸スカベンジャーの存在下で行われ、適当な酸スカベンジャーは、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物、水素化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸水素塩、例えば、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二カリウムなどの無機塩基、または、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、またはN-メチルモルホリンなど、好ましくはリン酸水素二カリウムもしくはジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基とすることができる。有用な溶媒の例としては、これらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。反応温度は調節することができるが、好ましくは20~80℃である。
【0087】
各工程の生成物は、カラムクロマトグラフィー及び再結晶化などの当該技術分野では周知の方法によって精製することができる。
【0088】
本発明の第3の目的は、トロンビンを阻害するための、ならびにトロンビン介在疾患及び/またはトロンビン関連疾患の予防及び/または治療に使用するための、式(I)の化合物の使用を提供することにある。本明細書の実施例のセクションに記載されるように、式(I)の代表的な化合物は、動物モデルにおいて有意な抗血栓作用を有することが示された。本発明の化合物を使用する方法は、一般的に、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩を、その必要がある(例えば、本明細書に記載されるトロンビン介在疾患またはトロンビン関連疾患のいずれかの予防または治療を必要とする)対象に、有効量、例えば、治療有効量で投与することを含む。本発明の化合物を使用する例示的な方法には、実施形態21~32に記載されるもののいずれかが含まれる。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、ダビガトランエテキシラートが有用であるとして適応される適応症のいずれかにおいてダビガトランエテキシラートの代わりに用いることができる。ダビガトランエテキシラートが有用であるとして適応される非限定的な適応症としては、US FDAによりダビガトランエテキシラートメシラート(プラザキサ)について承認された適応症、米国外の同様の機関により承認された適応症、ならびにそれぞれの内容をその全体にわたって参照により援用するところの米国特許第6,087,380号、同第7,866,474号、同7,932,273号、同9,034,822号、及び同9,925,174号に記載される、ダビガトランエテキシラートが有用であるとして適応されるそのような適応症のすべてが含まれる。
【0090】
本発明の化合物は、トロンビン介在疾患及びトロンビン関連疾患の予防及び/または治療に有用である。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩の、血栓性疾患、特に静脈もしくは動脈の血栓塞栓症、例えば、下肢の深部静脈血栓症、バイパス手術もしくは血管形成術後の再閉塞、末梢動脈疾患での閉塞、冠動脈血栓塞栓症などの予防及び/または治療における使用を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、血栓性疾患、例えば静脈もしくは動脈の血栓塞栓症、例えば、下肢の深部静脈血栓症、バイパス手術もしくは血管形成術後の再閉塞、末梢動脈疾患での閉塞、冠動脈血栓塞栓症を予防及び/または治療する方法であって、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩を、その必要がある対象に、有効量、例えば治療有効量で投与することを含む、方法を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明は、脳卒中、肺塞栓、心筋もしくは脳梗塞、心室細動、及び不整脈などの血栓症に関連する疾患または障害を予防及び/または治療するための本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩の使用を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、脳卒中、肺塞栓、心筋もしくは脳梗塞、心室細動、及び不整脈から選択される1つ以上の疾患または障害などの血栓症に関連する疾患または障害を治療または予防するための方法であって、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩を、その必要がある対象に、有効量、例えば治療有効量で投与することを含む、方法を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明は、冠動脈疾患、脳動脈疾患、及び末梢動脈疾患などのアテローム性疾患を予防及び/または治療するための本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩の使用を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、冠動脈疾患、脳動脈疾患、及び末梢動脈疾患から選択される1つ以上の疾患または障害などのアテローム性疾患または障害を予防または治療する方法であって、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩を、その必要がある対象に、有効量、例えば治療有効量で投与することを含む、方法を提供する。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明は、あらゆる腫瘍性疾患を予防及び/または治療するための本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩の使用を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、腫瘍性疾患または障害を治療または予防するための方法であって、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩を、その必要がある対象に、有効量、例えば治療有効量で投与することを含む、方法を提供する。
【0094】
本発明の化合物は、インビトロまたはエクスビボの血流ラインで抗凝固剤として作用することもできる。いくつかの実施形態では、本発明は、インビトロまたはエクスビボの血流ラインにおける凝固を阻害する方法であって、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩を、インビトロまたはエクスビボの血流ラインに有効量で加えることを含む、方法を提供する。
【0095】
更に、本明細書に記載される化合物(例えば、化合物1~19のいずれか1つ以上または薬学的に許容されるその塩)を血栓溶解剤と併用することで例えば再灌流時間を短縮し、再閉塞時間を延ばすこともできる。いくつかの実施形態では、本発明は、再灌流時間を短縮し、及び/または再閉塞時間を延ばすための方法であって、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩を、その必要がある対象に、有効量で投与することを含み、対象には血栓溶解剤も投与される、方法を提供する。更に、本発明の化合物は、マイクロサージャリー後の血栓の再形成を防止するために使用することもできる。いくつかの実施形態では、本発明は、マイクロサージャリー後の血栓の再形成を防止する方法であって、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩を、その必要がある対象に、有効量で投与することを含む、方法を提供する。本発明の化合物は、播種性血管内凝固に対する血液透析及び抗凝固剤療法における使用にも効果的である。いくつかの実施形態では、本発明は、播種性血管内凝固に対する血液透析及び抗凝固剤療法を与える方法であって、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩を、その必要がある対象に、有効量で投与することを含む、方法を提供する。本発明の化合物は、血液、血漿及び他の血液製剤のインビトロでの保存にも有用である。いくつかの実施形態では、本発明は、血液、血漿、または他の血液製剤を保存する方法であって、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物、例えば化合物1~19のいずれか1つ以上、または薬学的に許容される塩を、血液、血漿、または他の血液製剤に、例えば、血液、血漿、または他の血液製剤の凝固を防止する有効量で加えることを含む、方法を提供する。
【0096】
本発明の化合物は、経口投与することができる。その量は、投与経路、投与頻度、治療される状態などを含む、治療対象の特定の状況に応じて決まる。一般的な経口1日用量は、約0.01mg/kg~約1000mg/kgである。経口1日用量は、単回1日用量であってもよく、または1日2~4回など1日当たり複数回の用量であってもよい。投与量及び投与方法は、患者の年齢及び体重、ならびに治療される状態の重症度に応じて調整することができる。一般的には、本明細書における対象は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0097】
本発明の第4の目的は、本発明の化合物、例えば式(I)の化合物(例えば、化合物1~19のいずれか1つ以上)または薬学的に許容される塩、及び任意で、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を提供することにある。
【0098】
本発明の化合物は医薬組成物の形態で投与することができる。例えば、経口投与の場合、本発明の化合物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤(例えば、経口溶液、懸濁液、エマルションなど)またはシロップ剤の形態とすることができ、これらは、滑剤、結合剤、崩壊剤、充填剤、分散剤、乳化剤、安定化剤などを含有することができる。
【0099】
例えば、注射用製剤の場合、本発明の化合物(複数可)を生理食塩水と混合または生理食塩水に溶解することができ、適当な希釈酸または塩基または緩衝塩を加えてpHを調整することができ、これらは酸化防止剤または金属キレート剤を含んでもよい。溶液は濾過により滅菌し、滅菌条件下で滅菌アンプルに充填することができる。
【0100】
例えば、錠剤は、本発明の化合物(複数可)を賦形剤(例えば、微結晶セルロース、カルボキシメチルデンプンナトリウム、コーンスターチ、ステアリン酸マグネシウム、タルクなど)とよく混合して混合物とし、次いでこれを篩にかけ、造粒機を使用して圧縮することによって調製することができる。例えば、ハードカプセルは、本発明の化合物(複数可)を賦形剤(例えば、乾燥デンプン、ステアリン酸マグネシウムなど)とともに篩にかけ、次いで混合物を適当な装置を使用してハードゼラチンカプセルに充填することによって調製することができる。
【0101】
懸濁液を調製するには、本発明の化合物(複数可)を篩にかけ、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びシロップ剤などの賦形剤と混合して均一なペーストを形成すればよい。場合により、色素、安息香酸などを一定量の精製水で希釈し、これを攪拌下でペーストに加えることができる。次いで水を加えて所望の体積とする。医薬組成物、賦形剤などを調製するための他の方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Alfonso R.Gennaro(1990),出版元:Mack Publishing Company、及びその更新版にみることができる。
【0102】
本発明の医薬組成物は、従来法によって製造された固体、半固体、または液体製剤であってよい。これらの方法としては、例えば、混合、溶解、造粒、粉砕、乳化、包埋、スプレー乾燥、または凍結乾燥が挙げられる。かかる組成物中の有効成分は、製剤の0.1重量%~99.9重量%を構成することができる。組成物中に使用される担体、希釈剤、または賦形剤は、有効成分と相溶性を有し、薬学的に許容されるものである。
【0103】
本出願では、以下の略語を使用する場合がある。
Boc:t-ブチルオキシカルボニル
Cbz:ベンジルオキシカルボニル
Leu:ロイシン
Pro:プロリル
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン
EDCI:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
MSA:メタンスルホン酸
AcOH:酢酸
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
【0104】
生物学的活性
本発明の化合物は、優れた溶解性、速やかな活性化、良好な経口バイオアベイラビリティー、高い生物学的活性、及び低い毒性によって特徴付けられる改善された特性を一般的に有する。
【0105】
本発明の化合物の利点の1つとして、本発明の化合物は消化管で吸収されうる点がある。本発明の化合物は、式(V)の化合物と比較してより高い親油性を有し、脂質二重層の細胞膜を挟んだ本発明の化合物の受動拡散を促進する。したがって、本発明の化合物は、大幅に改善されたバイオアベイラビリティーを有しうる。更に、本発明の化合物は速やかに吸収され、式(V)の活性化合物に代謝されうる。インビトロ及びインビボ試験によって、式(I)の代表的な化合物は、シトクロムP450酵素系と相互作用することなく、エステラーゼによって式(III)及び/または式(IV)の化合物に加水分解され、最終的に式(V)の化合物に変換されうることが示されている。そのため、薬物相互作用のリスクが少ない。
【0106】
本明細書に記載されるように、式(I)の代表的な化合物は、経口投与後に式(V)の化合物と比較して予想以上に改善された薬物動態プロファイルを示し、顕著な経口抗血栓作用を有することが示された。実施例23及び実施例24に記載されるように、式(I)の代表的な化合物は、少なくとも1.5%の絶対バイオアベイラビリティー(式(V)の化合物に基づいて計算したもの)を示す。実施例22は、10mg/kgの式(V)の化合物の単回注射は、ダビガトラン及びメラガトランと比較して優れた抗血栓活性を与え、10mg/kgの式(I)の化合物(化合物1、2、6、8、10、12、17、及び19)の単回経口投与もまた、同等の用量の化合物(V)またはダビガトランの単回注射と同様の有効性を有する顕著な抗血栓作用を有したことを示す。
【0107】
詳細には、本発明の化合物の利点のいくつかには、以下の薬物動態特性が含まれる。すなわち、
1.改善されたバイオアベイラビリティーを得るための改善された消化管吸収、
2.受動(恒常)吸収によるバイオアベイラビリティーの個人間及び個人内の最小の差、及び
3.活性化合物の作用の長い持続時間。
【0108】
従来の化合物と比較した本発明の化合物の更なる利点は、薬剤の高い局所的濃度が標的部位以外では生じないことである。本発明の化合物は、消化管通過の後またはその間に式(V)の化合物を形成することによって活性化される。本発明の化合物はそれ自体では消化管内でセリンプロテアーゼを大きく阻害しないため、それらの消化管での副作用は小さくなりうる。
【0109】
本明細書に示される薬理学的試験によって、本発明の化合物の利点が更に例示される。ラットにおける薬物動態実験によって、経口投与後には化合物(V)の活性型のみが検出され、式(I)の化合物及び他の代謝産物は検出されなかったことが示され、本発明の化合物の活性化が速やかであり、かつ完全であることを示している。
【0110】
同様に、イヌにおける薬物動態実験によって、本発明の化合物の経口投与後には、化合物(V)の活性型以外に式(I)の化合物及び他の代謝産物は検出されなかったことが示され、本発明の化合物の活性化が速やかであり、かつ完全であることを示している。これらの動物実験は、本発明の化合物が良好な経口バイオアベイラビリティーを有しうることを更に示すものである。
【0111】
ラットモデルにおいて、本発明の化合物の単回経口投与は、同じ用量の式(V)の化合物またはダビガトランの単回注射で観察されたのと同様の有効性でラットの深部静脈血栓症を阻害した。このことは、本発明の化合物を経口投与することで抗血栓作用を得ることができることを示すものであり、これにより、投与方法及び患者コンプライアンスの最適化を図ることができる。
【0112】
更に、本発明の化合物のインビトロでの血漿安定性実験により、本発明の化合物のカルバメート結合が30分以内に完全に切断され、エステル結合の加水分解も顕著であったことが示された。これにより、最終的に式(V)の化合物が生成された。式(V)の化合物は概ね安定しており、8時間の実験時間中に顕著な分解は生じなかった。血漿中でのこのような速やかな切断及び加水分解は、式(I)の化合物を活性化させ、式(III)及び式(V)の化合物の有効成分を放出する。エステラーゼによる本発明の化合物の活性化にはシトクロムP450酵素が関与しないことから、薬物相互作用のリスクを低減することができる。
【0113】
更に、本発明の化合物は、酸性pHで極めて良好な水溶性を有し、そのため、薬剤の製造及び応用における様々な利点を有しうるものである。例えば、複雑でコストの嵩む製剤技術を使用する必要がなく、投与方法(例えば経口)及び患者コンプライアンスの最適化が図られる。
【実施例】
【0114】
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい化合物の合成に用いたスキームに示される特定の合成法を詳細に述べるものである。しかしながら、これらの化学反応に本発明の他のトロンビン阻害剤を合成するために若干の改変を行うことができる点は当業者には理解されるはずである。例えば、本発明で例示されていない化合物も、当業者には明らかな改良を行うことによって首尾よく合成することができる。これらの実施例は、あくまで例示の目的で使用されるものであって、いかなる意味でも本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0115】
検出方法
Varian INOVA-400装置を使用して核磁気共鳴スペクトルを得る。テトラメチルシランを内部標準として用い、化学シフト(δ)をppmで記録する。薄層クロマトグラフィー(TLC、Yantai Zhifu Huangwuシリカゲル開発及びパイロットプラントで製造された、クロマトグラフィー用のHSG-F254高速シリカゲルの予め作製されたパネルを使用)及びHPLCを生成物の反応及び純度の検出に用いる。ヨウ素蒸気または254A及び310A紫外線ランプによる照射またはニンヒドリンの1%エタノール溶液を可視化のための発色に用いる。特に断らない限り、使用したすべての試薬は分析上純粋であり、無水溶媒及び試薬は従来の方法に従って処理する。融点は、顕微鏡写真による融点測定装置で測定し、使用される温度計は補正していない。
【0116】
HPLC:Agilent 1100;検出波長:220及び254nM;カラム温度:50℃。
【0117】
移動相1:A:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液 B:アセトニトリル。
【0118】
方法1:クロマトグラフィーカラム:Sunfire C18(4.6×50mm,3.5μm);流速:2ml/分;5%~95%の移動相Aで3分間の勾配溶出。
【0119】
方法2:クロマトグラフィーカラム:XDB C18(4.6×150mm,5μm);流速:1.5ml/分;5%~95%の移動相Aで10分間の勾配溶出。
【0120】
実施例1 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(((5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル)オキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物1)の合成
R
1はエチルであり、R
2は、
である。
【0121】
a)N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[(N-((ベンジルオキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミドの調製
N-(2-エトキシ-オキソエチル)-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシン(31.7g)、L-プロリル-{4-[(N-((ベンジルオキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(41.6g)及びDIEA(38.8g)を無水DMF(200ml)に溶解し、窒素の保護下で0℃にまで冷却した後、HOBt(13.5g)及びEDCI(26.8g)を加えた。得られた混合物を0℃で20分間撹拌した後、室温にまで昇温させた。次いで、反応混合物を室温で12時間撹拌した。その後、反応混合物を氷浴中で水(2L)に滴下した後、室温で15時間攪拌した。得られたスラリーを濾過し、乾燥して白色粉末を得た(58.4g、収率:86%)。
【0122】
HPLC方法1、MS:680(M+H)。
【0123】
b)N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドの調製
N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[(N-((ベンジルオキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド(9g)をエタノール(100ml)に溶解し、10%パラジウム/炭素(1g)を加え、水素を通気した得られた混合物を40℃で8時間反応させた。このスラリーを珪藻土のパッドで濾過し、溶媒を蒸発させて暗灰色の発泡体状の固体を得た(7.22g、収率:ほぼ定量的)。
【0124】
HPLC方法1、MS:546(M+H)
【0125】
c)N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(((5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル)オキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミドの調製
N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミド(2.7g)、DIEA(700mg)及びDMAP(50mg)をTHF(20ml)に溶解し、0℃にまで冷却し、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル(4-ニトロフェニル)カーボネート(1.77g)を滴下した。添加後、得られた混合物を0℃で2時間反応させた後、減圧下で濃縮して溶媒を除去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して無色の発泡体状の固体を得た(1.73g、収率:49.3%)。
【0126】
HPLC方法2、MS:702(M+H)。
【0127】
d)N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(((5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル)オキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩の調製
上記の工程で得られた生成物をエタノール(5ml)に溶解し、氷浴中で冷却した後、4MのHCl/メタノール溶液(10ml)を加えた。得られた混合物を氷浴中で4時間反応させた。溶液を濾過し、真空下で濃縮して溶媒を部分的に除去し、エーテル(50ml)を加えた後、得られたスラリー物質を濾過し、乾燥して白色固体を得た(1.4g、収率:82.8%)。
【0128】
HPLC方法2、MS:602(M+H)。
【0129】
実施例2 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-((2-(メトキシ)エトキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物2)の合成
実施例1に記載される方法に従って、2gの標題化合物をN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから白色固体として調製した(収率:68.5%)。
【0130】
HPLC方法2、MS:548(M+H)。
【0131】
実施例3 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-((2-(tert-ブトキシ)エトキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物3)の合成
実施例1に記載される方法に従って、1.23gの標題化合物をN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから白色固体として調製した(収率:39.3%)。
【0132】
HPLC方法2、MS:590(M+H)。
【0133】
実施例4 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-((2-(ヘキシルオキシ)エトキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物4)の合成
実施例1に記載される方法に従って、0.88gの標題化合物を白色固体としてN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:26.9%)。
【0134】
HPLC方法2、MS:618(M+H)。
【0135】
実施例5 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-((2-(2-(ヒドロキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物5)の合成
実施例1に記載される方法に従って、0.66gの標題化合物を白色固体としてN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:21.5%)。
【0136】
HPLC方法2、MS:578(M+H)。
【0137】
実施例6 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-((2-(2-(エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物6)の合成
実施例1に記載される方法に従って、2.2gの標題化合物を白色固体としてN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:68.5%)。
【0138】
HPLC方法2、MS:606(M+H)。
【0139】
実施例7 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-((2-(2-(フェノキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物7)の合成
実施例1に記載される方法に従って、1.9gの標題化合物を白色固体としてN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:55%)。
【0140】
HPLC方法2、MS:654(M+H)。
【0141】
実施例8 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-((2-(2-(ベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物8)の合成
実施例1に記載される方法に従って、2.4gの標題化合物を白色固体としてN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:68.1%)。
【0142】
HPLC方法2、MS:668(M+H)。
【0143】
実施例9 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(2,5,8,11-テトラオキサトリデカノイル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物9)の合成
実施例1に記載される方法に従って、3.3gの標題化合物を白色固体としてN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:80.1%)。
【0144】
HPLC方法2、MS:650(M+H)。
【0145】
実施例10 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-((3-(エトキシ)プロポキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物10)の合成
実施例1に記載される方法に従って、3.2gの標題化合物を白色固体としてN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:65.3%)。
【0146】
HPLC方法2、MS:576(M+H)。
【0147】
【0148】
実施例11 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-((2-(エトキシカルボニル)エチル)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物11)の合成
実施例1に記載される方法に従って、1gの標題化合物を白色固体としてN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:32.8%)。
【0149】
HPLC方法2、MS:574(M+H)。
【0150】
実施例12 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-((2-(エトキシカルボニル)プロピル)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物12)の合成
実施例1に記載される方法に従って、0.95gの標題化合物を白色固体としてN-[(エトキシ)カルボニル]メチル-N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:30.4%)。
【0151】
HPLC方法2、MS:588(M+H)。
【0152】
実施例13 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(エトキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物13)の合成
a)N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[(N-(ベンジルオキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミドの調製
(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシン(249g)、L-プロリル-{4-[(N-(ベンジルオキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(416g)及びDIEA(181g)を無水DMF(2L)に溶解し、窒素下で0℃にまで冷却した後、HOBt(148g)及びEDCI(268g)を加えた。得られた混合物を0℃で20分間撹拌し、室温にまで昇温させた。反応を室温で12時間継続させた。反応混合物を氷浴中で水(10L)に滴下した後、室温で15時間攪拌した。得られたスラリーを濾過し、乾燥して白色粉末を得た(551g、収率:93%)。
【0153】
HPLC方法1、MS:594(M+H)。
【0154】
b)N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドの調製
N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[(N-(ベンジルオキシ)カルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド(60g)をエタノール(500ml)に懸濁し、10%パラジウム/炭素(6g)を加え、水素を通気した得られた混合物を30℃で8時間反応させた。このスラリーを濾過し、溶媒を蒸発させて暗灰色の発泡体状の固体を得た(48g、収率:ほぼ定量的)。
【0155】
HPLC方法1、MS:460(M+H)。
【0156】
c)N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル--{4-[N’-(エトキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミドの調製
N-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル) ベンジル]アミド(2.29g)、及びDIEA(700mg)をTHF(20ml)に溶解し、0℃にまで冷却し、クロロギ酸エチル(596mg)を徐々に滴下した。添加後、得られた混合物を0℃で2時間反応させた後、減圧下で濃縮して溶媒を除去した。得られた粗生成物を酢酸エチル(25ml)に溶解し、FLASHカラムに通し、得られた溶液を次の工程で直接使用した。
【0157】
HPLC方法1、MS:432(M+H)。
【0158】
d)D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(エトキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミドの調製
上記の工程で得られた溶液にエタノール(2ml)を加え、氷浴で冷却した後、メタンスルホン酸(2.4g)を加え、得られた混合物を室温で8時間反応させた。反応終了後、炭酸カリウム(4.1g)溶液を10℃で徐々に滴下してから0.5時間攪拌し、有機相を飽和塩溶液で洗浄し、次の工程で直接使用した。
【0159】
e)N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(エトキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩の調製
上記の工程で得られた生成物にDIEA(464mg)及びブロモ酢酸エチル(680mg)を加え、得られた混合物を50℃で8時間攪拌した。反応終了後、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製してからHClで酸性化して白色固体を得た(2g、収率: 72.2%)。
【0160】
HPLC方法1、MS:518(M+H)。
【0161】
実施例14 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(プロポキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物14)の合成
実施例13に記載される方法に従って、1.6gの標題化合物を白色固体としてN-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:56.3%)。
【0162】
HPLC方法1、MS:532(M+H)。
【0163】
実施例15 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(イソプロポキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物15)の合成
実施例13に記載される方法に従って、1.1gの標題化合物を白色固体としてN-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:38.7%)。
【0164】
HPLC方法1、MS:532(M+H)。
【0165】
実施例16 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(ブトキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物16)の合成
実施例13に記載される方法に従って、0.9gの標題化合物を白色固体としてN-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:30.9%)。
【0166】
HPLC方法1、MS:546(M+H)。
【0167】
実施例17 N-[(エトキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(ヘキシルオキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物17)の合成
実施例13に記載される方法に従って、1.8gの標題化合物を白色固体としてN-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:59%)。
【0168】
HPLC方法1、MS:574(M+H)。
【0169】
【0170】
実施例18 N-[(プロポキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(ヘキシルオキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物18)の合成
実施例13に記載される方法に従って、1.1gの標題化合物を白色固体としてN-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:35%)。
【0171】
HPLC方法1、MS:588(M+H)。
【0172】
実施例19 N-[(tert-ブチルオキシ)カルボニル]メチル-D-ロイシル-L-プロリル-{4-[N’-(ヘキシルオキシカルボニル)カルバムイミドイル]ベンジル}アミド塩酸塩(化合物19)の合成
実施例13に記載される方法に従って、1.4gの標題化合物を白色固体としてN-(tert-ブチルオキシカルボニル)-D-ロイシル-L-プロリル-[(4-カルバムイミドイル)ベンジル]アミドから調製した(収率:43.9%)。
【0173】
HPLC方法1、MS:602(M+H)。
【0174】
実施例20 異なるpH値での溶解度試験
適量の試験化学物質を異なるpH値(4.0、6.3、7.4及び9.0)の緩衝塩溶液中に計り入れ、この懸濁液を37℃で1時間振盪した。沈殿した不溶性の残渣を遠心分離により除去した。上清の含有物をHPLCにより測定して試験化学物質の溶解度を分析した。結果を下記に示す。
【0175】
実施例21 血漿安定性
ラット全血の1mlのアリコートを、DMSO(1mg/ml)中に試験物質を含有する50μlのストック溶液と混合して最終濃度を50μg/mlとした。混合物を37℃でインキュベートした。試料を、0分、30分、1時間、2時間、4時間、及び8時間の時点で採取した後、有機溶媒に加えて反応を停止させた。前処理の後、各試料をLC-MS/MSによって分析して化合物(III)、化合物(IV)、及び化合物(V)の血漿濃度を測定した。下記表に、30分で測定した化合物(V)に変換された異なる化合物の加水分解率を示す。各化合物のカルバメート結合の加水分解は30分以内に達成された。
【0176】
実施例22 ラットにおける静脈性血栓症
動物:SDラット(体重180~210g、性別 雄)。
【0177】
溶液の調製:適量の試験化学物質を秤量し、DMSOに溶解してストック溶液を得て、水で連続希釈して必要な濃度の投与用量を得た。
【0178】
実験手順:3日間の適応飼育の後、雄性Sprague-Dawley系ラットを、各群4~6匹のラットとなるようにモデル群、陽性薬剤群、及び化合物群の各群にランダムに分けた。
【0179】
モデル群のラットには等量の溶媒を静脈内注射または胃内投与し、陽性群または化合物群のラットには10mg/kgの用量を静脈内注射または胃内投与した。
【0180】
静脈内注射の5分後または胃内投与の0.5時間後に、10%抱水クロラール溶液の腹腔内注射によりラットを麻酔し、腹部を正中線切開により外科的に開腹して下大静脈を慎重に露出させた。左腎静脈を絹糸で結紮して血栓の形成を開始させた。6時間静置した後、最初の結紮部から2cm離れた遠位側の位置に別の結紮を行い、血管内部に形成された血栓を慎重に取り出し、湿らせた濾紙上で拭って、秤量した。
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
実施例23:ラットにおける薬物動態
動物:SDラット(体重200~300g、性別 雄)。
【0185】
胃内溶液の調製:適量の試験化学物質を秤量し、DMSOに溶解してストック溶液を得た後、0.5%CMC-Na溶液で連続希釈して必要な濃度の投与用量を得た。
【0186】
IV溶液の調製:適量の化合物(V)を秤量し、生理食塩水に溶解してストック溶液を得た後、連続希釈して必要な濃度の投与用量を得た。
【0187】
実験手順:3日間の適応飼育の後、雄性Sprague-Dawley系ラットを各群4匹のラットとなるように無作為に各群に分けた。
【0188】
経口試験用にラットに10mg/kgの試験化合物を経管栄養によって経口投与し、静脈内(iv)試験用に大腿静脈から2mg/kgの化合物(V)を投与した。血液試料を投与の15分、30分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、及び24時間後に眼窩から採取し、前処理後にLC-MS/MSにより分析した。
【0189】
DAS2.0ソフトウェアのノンコンパートメントモデルをデータ処理に使用して、試験化合物の最大血漿濃度(Cmax、実測値を使用)、最大血漿濃度の時間(Tmax、実測値を使用)、曲線下面積(AUC0~t、台形プラニメトリ法により計算)、AUC0~∞=AUC0~t+Ct/ke、Ct:最後の測定可能な時点における血漿濃度、ke:消失速度定数;消失半減期t1/2=0.693/ke;平均滞留時間MRT=AUMC/AUC;クリアランス速度CL/F=X0/AUC0~∞(X0:投与の用量);分布体積Vz=CL/keを含む薬物動態パラメータを計算した。
【0190】
WPSソフトウェアを使用して、各試料の平均値、標準偏差、正確性及び精度を計算した。
【0191】
2mg/kgの単回静脈内用量における化合物(V)の薬物動態パラメータを下記に示す。
【0192】
10mg/kgの単回経口投与用量における化合物(I)の薬物動態パラメータを下記に示す。
【0193】
実施例24:イヌにおける薬物動態
動物:雄のビーグル犬。
【0194】
胃内溶液の調製:適量の試験化学物質を秤量し、DMSOに溶解してストック溶液を得た後、0.5%CMC-Na溶液で連続希釈して必要な濃度の投与用量を得た。
【0195】
IV溶液の調製:適量の化合物(V)を秤量し、生理食塩水に溶解してストック溶液を得た後、連続希釈して必要な濃度の投与用量を得た。
【0196】
実験手順:3日間の適応飼育の後、雄のイヌを各群4匹のイヌとなるように無作為に各群に分けた。
【0197】
経口試験用にイヌに5mg/kgの試験化合物を経管栄養によって経口投与し、静脈内(iv)試験用に大腿静脈から2mg/kgの化合物(V)を投与した。血液試料を投与の15分、30分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、及び24時間後に採取し、前処理後にLC-MS/MSにより分析した。
【0198】
DAS2.0ソフトウェアのノンコンパートメントモデルをデータ処理に使用して、試験化合物の最大血漿濃度(Cmax、実測値を使用)、最大血漿濃度の時間(Tmax、実測値を使用)、曲線下面積(AUC0~t、台形プラニメトリ法により計算)、AUC0~∞=AUC0~t+ Ct/ke、Ct:最後の測定可能な時点における血漿濃度、ke:消失速度定数;消失半減期t1/2=0.693/ke;平均滞留時間MRT=AUMC/AUC;クリアランス速度CL/F= X0/AUC0~∞(X0:投与の用量);分布体積Vz=CL/keを含む薬物動態パラメータを計算した。
【0199】
WPSソフトウェアを使用して、各試料の平均値、標準偏差、正確性及び精度を計算した。
【0200】
2mg/kgの単回静脈内用量における化合物(V)の薬物動態パラメータを下記に示す。
【0201】
5mg/kgの単回経口投与用量における化合物(I)の薬物動態パラメータを下記に示す。
【0202】
以上、本発明を具体例に関して説明したが、本発明は更に改変することが可能である点は理解されるべきであり、かかる発明は本発明に基づくあらゆる改変、使用を含むことを意図している。かかる改変は、添付の特許請求の範囲内で使用されることも意図されている。
【0203】
特許請求の範囲を解釈するうえで、「発明の概要」及び「要約」のセクションではなく、「発明の詳細な説明」のセクションを用いることが意図されている点は認識されるべきである。「発明の概要」及び「要約」のセクションは、本発明者(ら)によって想到される本発明の1つ以上の(ただしすべてではない)例示的実施形態を記載しうるものであり、したがって、本発明および添付の特許請求の範囲をあらゆる意味で限定することを意図していない。
【0204】
本発明を、その特定の機能の実施およびそれらの関係性を説明する機能構成要素の助けによって上記に述べた。これらの機能的要素の境界は、説明の便宜上、本明細書において任意に定義されている。特定の機能及びそれらの関係性が適切に実施されている限り、代替的な境界を定義することもできる。
【0205】
属として記載される本発明の態様に関して、すべての個々の種は個々に検討される本発明の別々の態様である。本発明の態様が、ある要素を「含む」ものとして記載されている場合、その要素「からなる」または「本質的になる」実施形態も想到される。
【0206】
具体的な実施形態の上記の具体的な説明は本発明の一般的な性質を余すところなく示しているため、他者は、当業者の技能の範囲内の知識を適用することで、不要な実験を行うことなく、本発明の一般的概念から逸脱せずに、かかる具体的な実施形態を容易に改変し、及び/またはさまざまな用途に適合させることができる。したがって、そのような適合及び改変は、本明細書に示される教示及び助言に基づき、開示される実施形態の均等物の意味及び範囲内に包含されるものとする。本明細書における語句または用語は、説明を目的としたものであって、限定を目的とするものではなく、本明細書における語句または用語は本明細書の教示及び助言を考慮することで当業者によって理解されるはずである。
【0207】
本発明の広さ及び範囲は、上記に記載した例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきでなく、下記の請求項及びそれらの均等物のみに従って定義されるべきものである。
【0208】
本明細書に記載される様々な態様、実施形態、及び選択肢のいずれも、いずれかの、及びすべての変例として組み合わせることができる。
【0209】
本明細書で触れられるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかもそれぞれの個々の刊行物、特許及び特許出願が詳細かつ個別に参照により援用されていることが示されているものと同様にして、本明細書に参照により援用するものとする。本文書におけるある用語のいずれかの意味または定義が、参照によって援用される文書における同じ用語のいずれかの意味または定義と矛盾する場合には、本文書におけるその用語の意味または定義が優先するものとする。