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特許7503562鉄およびマンガンをドープしたタングステン酸塩およびモリブデン酸塩のガラスならびにガラスセラミックス物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】鉄およびマンガンをドープしたタングステン酸塩およびモリブデン酸塩のガラスならびにガラスセラミックス物品
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20240613BHJP
   C03C 3/118 20060101ALI20240613BHJP
   C03C 10/02 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C03C3/091
C03C3/118
C03C10/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021547706
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 US2020017048
(87)【国際公開番号】W WO2020171967
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】62/808,010
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/810,564
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】デイネカ,マシュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コール,ジェシー
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-248011(JP,A)
【文献】米国特許第04430257(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
40モル%~80モル%のSiOと、
3モル%~20モル%のAlと、
3モル%~50モル%のBと、
1モル%~18モル%のWO+MoOと、
0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、
0モル%~15モル%のROと
を含み
記ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上であり、
O-Alは、-12モル%~+4モル%の範囲であり、
少なくとも1つの非晶質相と少なくとも1つの結晶相を含み、該少なくとも1つの結晶相は、化学形態MWO 、MMoO 、またはその両方の酸化物を含み、Mは、Fe 2+ またはMn 2+ である、物品。
【請求項2】
1モル%~10モル%のFをさらに含む、請求項1記載の物品。
【請求項3】
WOが2モル%~15モル%である、請求項1記載の物品。
【請求項4】
MoOが2モル%~15モル%である、請求項1記載の物品。
【請求項5】
0.01モル%~1モル%のSnOをさらに含む、請求項1記載の物品。
【請求項6】
0.1モル%~2モル%のROをさらに含み、ROは、MgO、CaO、SrO、ZnOおよびBaOのうちの1つ以上である、請求項1記載の物品。
【請求項7】
前記物品が、300nm~400nmの紫外線(UV)波長帯域で少なくとも5OD/mmの平均吸光度を示し、400nm~700nmの可視光線波長帯域で少なくとも2OD/mmの平均吸光度を示す、請求項1から6までのいずれか1項記載の物品。
【請求項8】
前記物品が、700nm~3000nmでの少なくとも50%の光透過率と、320nm~525nmのシャープなカットオフ波長とを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の物品。
【請求項9】
前記物品が、1mmの厚さで10%以下のヘイズを示す、請求項1から6までのいずれか1項記載の物品。
【請求項10】
物品であって、
40モル%~80モル%のSiOと、
3モル%~20モル%のAlと、
3モル%~50モル%のBと、
1モル%~18モル%のWO+MoOと、
0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、
0モル%~15モル%のROと、
少なくとも1つの非晶質相および1つの結晶相と
を含み
記ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上であり、
O-Alは、-12モル%~+4モル%の範囲であり、
さらに、前記結晶相は、ガラス相内に均一に分布した複数の結晶性析出物を含み、前記複数の結晶性析出物は、化学形態MWOおよびMMoOのうちの少なくとも一方の酸化物を含み、Mは、Fe2+またはMn2+である、物品。
【請求項11】
ガラスセラミックスであって、
シリカ、アルミニウム、ホウ素および酸素を含む非晶質相と、
複数の結晶性析出物を含む結晶相と
を含み、前記複数の結晶性析出物は、前記非晶質相内に均一に分布しており、前記結晶性析出物は、化学形態MWOおよびMMoOのうちの少なくとも一方の酸化物を含み、Mは、Fe2+またはMn2+であり、
ガラスセラミックスの組成は、ガラスセラミックス100モル%を基準として、
40モル%~80モル%のSiO と、
3モル%~20モル%のAl と、
3モル%~50モル%のB と、
1モル%~18モル%のWO +MoO と、
0.1モル%~2モル%のFe +MnO と、
0モル%~15モル%のR Oと
を含み、
前記R Oは、Li O、Na O、K O、Rb OおよびCs Oのうちの1つ以上であり、
O-Al は、-12モル%~+4モル%の範囲である、ガラスセラミックス。
【請求項12】
H、S、Cl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Ga、Se、Br、Zr、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、I、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ta、Os、Ir、Pt、Au、Ti、Pb、BiおよびUからなる群から選択される1つ以上のドーパントをさらに含み
記1つ以上のドーパントは、0.0001モル%~0.5モル%の範囲で存在する、請求項11記載のガラスセラミックス。
【請求項13】
前記ガラスセラミックスが、300nm~400nmの紫外線(UV)波長帯域で少なくとも5OD/mmの平均吸光度を示し、400nm~700nmの可視光線波長帯域で少なくとも2OD/mmの平均吸光度を示す、請求項11または12記載のガラスセラミックス。
【請求項14】
前記ガラスセラミックスが、700nm~3000nmでの少なくとも50%の光透過率と、320nm~525nmのシャープなカットオフ波長とを含む、請求項11または12記載のガラスセラミックス。
【請求項15】
前記複数の結晶性析出物が、電子顕微鏡で測定された1nm~500nmの長さ寸法を有する、請求項11または12記載のガラスセラミックス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、2019年2月20日に出願された米国仮特許出願第62/808,010号および2019年2月26日に出願された米国仮特許出願第62/810,564号の優先権の利益を主張し、それらの内容が依拠され、それらの内容全体を、本明細書に完全に記載されているものとして、参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、総じて、ガラスおよび/またはガラスセラミックスを含む物品に関し、より具体的には、そのような物品を形成する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ノートブックコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ポータブルナビゲーションデバイス(PND)、メディアプレーヤ、携帯電話、ポータブルインベントリデバイス(PID)、および他のポータブルコンピューティングデバイスなどの電子デバイスは、収斂すると同時に、小型化、軽量化および高機能化している。そのような小型デバイスの開発および可用性に貢献している要因の一つは、電子部品のサイズをさらに縮小することで計算密度および動作速度を高めることができる能力である。ポータブルコンピューティングデバイスの高機能化に貢献している別の要因は、(例えば、マイクロ波や無線周波数による)無線通信機能への依存度の高まりである。しかしながら、電子デバイスの小型化、軽量化および高機能化が好まれる傾向は、ポータブルコンピューティングデバイスの一部の部品の設計に関して、継続的な課題となっている。
【0004】
特に設計上の課題となっているポータブルコンピューティングデバイスに関連する部品としては、様々な内部/電子部品を収容するために使用されるエンクロージャまたはハウジングが挙げられる。これらのエンクロージャおよびハウジングに関連する設計上の一課題は、格納された電子部品の無線通信周波数に対して透過性であるべきことである。別の設計上の課題は、総じて、エンクロージャまたはハウジングの軽量化および薄型化の追求と、エンクロージャまたはハウジングの高強度化および高剛性化の追求という、相反する2つの設計目標から生じる。より軽量なエンクロージャまたはハウジング、典型的にはファスナの数が少ない薄型のプラスチック構造体は、より高強度および高剛性のエンクロージャまたはハウジング、典型的にはファスナの数が多く重量が増した厚みのあるプラスチック構造体とは対照的に、より柔軟性が高い傾向にある一方で、座屈したり折れ曲がったりしやすくなる。残念ながら、プラスチックは柔らかい素材であるため、簡単に傷がついたり、すり切れたりして、その外観が損なわれてしまう。
【0005】
ガラスセラミックスは、他の様々な用途にも広く使用されており、ポリマーよりもはるかに硬度があり、傷がつきにくいことが知られている。例えば、ガラスセラミックスは、キッチンにおいて調理台、調理器具、ならびにボウルおよびディナープレートなどの食器として広く使用されている。別の例としては、透明なガラスセラミックスが、オーブンおよび/または炉の窓などに使用されている。しかしながら、これらのオーブン・炉向けのガラスセラミックスは、高い硬度および耐引っかき性を有しているものの、電子デバイスのハウジングに適した機械的特性(例えば、強度)および/または光学的特性(例えば、無線通信周波数に対する透過性)の望ましい組み合わせを有しているとは一般に理解されていない。他のガラスおよびガラスセラミックスは、類似の要件を有しているいくつかの用途(例えば、光学フィルタ、眼科用レンズ、審美性・芸術性を追求したガラス用途)には適しているものの、資源保全回復法(RCRA)をはじめとする、連邦法で高度に規制されている(そのため製造にコストがかかるか、さもなければ実用的ではない)材料(例えば、カドミウムやセレンなど)を含んでいる。さらに、これらの同じ用途に適している可能性もある他の既知の「暗色」ガラスおよびガラスセラミックスは、かなりの高温で長時間の熱処理を必要とするため、フュージョン成形プロセスでは実用化されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ポータブルコンピューティングデバイスのエンクロージャまたはハウジング、ならびに光学フィルタ、眼科用レンズ、審美的用途や、類似の機械的および光学的特性の要件を有している他の用途の部品において、選択肢の向上および/または製造コストの低減を提供する、ガラスおよびガラスセラミックス材料、組成物、物品のほか、ガラスおよびガラスセラミックス技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様によると、物品は、40モル%~80モル%のSiOと、3モル%~20モル%のAlと、3モル%~50モル%のBと、1モル%~18モル%のWO+MoOと、0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、0モル%~15モル%のROとを含む。ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上である。また、RO-Alは、-12モル%~+4モル%の範囲である。
【0008】
本開示の態様によると、物品は、50モル%~70モル%のSiOと、8モル%~15モル%のAlと、3モル%~25モル%のBと、2モル%~8モル%のWO+MoOと、0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、5モル%~15モル%のROとを含む。ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上である。また、RO-Alは、-7モル%~+4モル%の範囲である。
【0009】
本開示の態様によると、物品は、40モル%~80モル%のSiOと、3モル%~20モル%のAlと、3モル%~50モル%のBと、1モル%~18モル%のWO+MoOと、0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、0モル%~15モル%のROと少なくとも1つの非晶質相および1つの結晶相とを含む。ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上である。また、RO-Alは、-12モル%~+4モル%の範囲である。さらに、結晶相は、複数の結晶性析出物を含み、複数の結晶性析出物は、化学形態MWOおよびMMoOのうちの少なくとも一方の酸化物を含み、Mは、Fe2+またはMn2+である。
【0010】
第1の態様によると、物品は、40モル%~80モル%のSiOと、3モル%~20モル%のAlと、3モル%~50モル%のBと、1モル%~18モル%のWO+MoOと、0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、0モル%~15モル%のROと、を含む。ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上である。また、RO-Alは、-12モル%~+4モル%の範囲である。
【0011】
第2の態様によると、1モル%~10モル%のFをさらに含む、第1の態様記載の物品が提供される。
【0012】
第3の態様によると、WOが2モル%~15モル%である、第1または第2の態様記載の物品が提供される。
【0013】
第4の態様によると、MoOが2モル%~15モル%である、第1から第3までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0014】
第5の態様によると、0.01モル%~1モル%のSnOをさらに含む、第1から第4までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0015】
第6の態様によると、0.1モル%~2モル%のROをさらに含み、ここで、ROは、MgO、CaO、SrO、ZnOおよびBaOのうちの1つ以上である、第1から第5までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0016】
第7の態様によると、物品が、300nm~400nmの紫外線(UV)波長帯域で少なくとも5OD/mmの平均吸光度を示し、400nm~700nmの可視光線波長帯域で少なくとも2OD/mmの平均吸光度を示す、第1から第6までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0017】
第8の態様によると、物品が、700nm~3000nmでの少なくとも50%の光透過率と、320nm~525nmのシャープなカットオフ波長とを含む、第1から第6までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0018】
第9の態様によると、物品が、1mmの厚さで10%以下のヘイズを示す、第1から第8までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0019】
第10の態様によると、物品は、50モル%~70モル%のSiOと、8モル%~15モル%のAlと、3モル%~25モル%のBと、2モル%~8モル%のWO+MoOと、0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、5モル%~15モル%のROとを含み、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上である。また、RO-Alは、-7モル%~+4モル%の範囲である。
【0020】
第11の態様によると、4モル%~8モル%のFをさらに含む、第10の態様記載の物品が提供される。
【0021】
第12の態様によると、WOが3モル%~7モル%である、第10または第11の態様記載の物品が提供される。
【0022】
第13の態様によると、MoOが2モル%~5モル%である、第10から第12までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0023】
第14の態様によると、0.1モル%~0.5モル%のSnOをさらに含む、第10から第13までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0024】
第15の態様によると、0.1モル%~2モル%のROをさらに含む、第10から第14までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。また、ROは、MgO、CaO、SrO、ZnOおよびBaOのうちの1つ以上である。
【0025】
第16の態様によると、物品が、300nm~400nmの紫外線(UV)波長帯域で少なくとも7OD/mmの平均吸光度を示し、400nm~700nmの可視光線波長帯域で少なくとも5OD/mmの平均吸光度を示す、第10から第15までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0026】
第17の態様によると、物品が、700nm~3000nmでの少なくとも50%の光透過率と、320nm~525nmのシャープなカットオフ波長とを含む、第10から第15までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0027】
第18の態様によると、物品が、1mmの厚さで5%以下のヘイズを示す、第10から第17までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0028】
第19の態様によると、物品は、40モル%~80モル%のSiOと、3モル%~20モル%のAlと、3モル%~50モル%のBと、1モル%~18モル%のWO+MoOと、0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、0モル%~15モル%のROと、少なくとも1つの非晶質相および1つの結晶相とを含み、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上である。また、RO-Alは、-12モル%~+4モル%の範囲であり、結晶相は、複数の結晶性析出物を含み、複数の結晶性析出物は、化学形態MWOおよびMMoOのうちの少なくとも一方の酸化物を含み、Mは、Fe2+またはMn2+である。
【0029】
第20の態様によると、H、S、Cl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Ga、Se、Br、Zr、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、I、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ta、Os、Ir、Pt、Au、Ti、Pb、BiおよびUからなる群から選択される1つ以上のドーパントをさらに含む、第19の態様記載の物品が提供される。また、1つ以上のドーパントは、0.0001モル%~0.5モル%の範囲で存在する。
【0030】
第21の態様によると、物品が、300nm~400nmの紫外線(UV)波長帯域で少なくとも5OD/mmの平均吸光度を示し、400nm~700nmの可視光線波長帯域で少なくとも2OD/mmの平均吸光度を示す、第19または第20の態様記載の物品が提供される。
【0031】
第22の態様によると、物品が、700nm~3000nmでの少なくとも50%の光透過率と、320nm~525nmのシャープなカットオフ波長とを含む、第19または第20の態様記載の物品が提供される。
【0032】
第23の態様によると、複数の結晶性析出物が、電子顕微鏡で測定された1nm~500nmの最長の長さ寸法を含む、第19から第22までの態様のいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0033】
本開示のこれらのおよび他の特徴、利点および目的は、以下の明細書、特許請求の範囲、および添付の図面を参照することにより、当業者にさらに理解され、認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下は、添付図面における図の説明である。図は、必ずしも縮尺通りではなく、図の特定の特徴および特定の表示は、明瞭性および簡潔性のために、縮尺的または概略的に誇張して示されている場合がある。
図1】本開示の少なくとも1つの例による、物品の横断面図である。
図2】本開示の少なくとも1つの例による、FおよびFeをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-2)のアニール処理された注入材料の写真を示す図である。
図3A】本開示の少なくとも1つの例による、550℃で105分間熱処理し、1℃/分で475℃まで冷却し、炉速で周囲温度まで冷却した、図2のガラスセラミックスの、波長の関数としての吸光度(OD/mm)のプロットを示す図である。
図3B】本開示の少なくとも1つの例による、550℃で105分間熱処理し、1℃/分で475℃まで冷却し、炉速で周囲温度まで冷却した、図2のガラスセラミックスの、波長の関数としての0.5mmの経路長における透過率のプロットを示す図である。
図4A】本開示の少なくとも1つの例による、550℃で240分間熱処理し、1℃/分で475℃まで冷却し、炉速で周囲温度まで冷却した、Feをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-7)の、波長の関数としての吸光度(OD/mm)のプロットを示す図である。
図4B】本開示の少なくとも1つの例による、550℃で240分間熱処理し、1℃/分で475℃まで冷却し、炉速で周囲温度まで冷却した、Feをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-7)の、波長の関数としての0.5mmの経路長における透過率のプロットを示す図である。
図5A】本開示の少なくとも1つの例による、550℃で240分間熱処理し、1℃/分で475℃まで冷却し、炉速で周囲温度まで冷却した、FおよびFeをドープした酸化モリブデンガラスセラミックス(例1-10)の、波長の関数としての吸光度(OD/mm)のプロットを示す図である。
図5B】本開示の少なくとも1つの例による、550℃で240分間熱処理し、1℃/分で475℃まで冷却し、炉速で周囲温度まで冷却した、FおよびFeをドープした酸化モリブデンガラスセラミックス(例1-10)の、波長の関数としての0.5mmの経路長における透過率のプロットを示す図である。
図6A】本開示の例による、図3A図5B(例1-2、例1-7および例1-10)のガラスセラミックスならびに比較用のFeおよびTiをドープしたガラスセラミックスの、波長の関数としての吸光度(OD/mm)のプロットを示す図である。
図6B】本開示の例による、図3A図5B(例1-2、例1-7および例1-10)のガラスセラミックスならびに比較用のFeおよびTiをドープしたガラスセラミックスの、波長の関数としての0.5mmの経路長における透過率のプロットを示す図である。
図6C】本開示の例による、図3A図5B(例1-2、例1-7および例1-10)のガラスセラミックスならびに比較用のFeおよびTiをドープしたガラスセラミックスの、0.5mmの経路長における可視スペクトルにおける波長の関数としての透過率のプロットを示す図である。
図7】本開示の例による、550℃で240分間熱処理し、1℃/分で475℃まで冷却し、炉速で周囲温度まで冷却した、FおよびMnをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-13、例1-14および例1-15)ならびに比較用のCdSeをドープしたガラスの、波長の関数としての吸光度(OD/mm)のプロットを示す図である。
図8A】本開示の少なくとも1つの例による、550℃で240分間熱処理し、1℃/分で475℃まで冷却し、炉速で周囲温度まで冷却した、Mnをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-17および例1-18)の、波長の関数としての吸光度(OD/mm)のプロットを示す図である。
図8B】本開示の少なくとも1つの例による、550℃で240分間熱処理し、1℃/分で475℃まで冷却し、炉速で周囲温度まで冷却した、Mnをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-17および例1-18)の、波長の関数としての0.5mmの経路長における透過率のプロットを示す図である。
図9A】本開示の例による、熱処理を受けた、FおよびFeをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-1)のX線粉末回折(XRD)プロットを示す図である。
図9B】本開示の例による、熱処理を受けた、FおよびFeをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-2)のX線粉末回折(XRD)プロットを示す図である。
図9C】本開示の例による、熱処理を受けた、FおよびFeをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-2)のX線粉末回折(XRD)プロットを示す図である。
図9D】本開示の例による、熱処理を受けた、FおよびFeをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-2)のX線粉末回折(XRD)プロットを示す図である。
図9E】本開示の例による、熱処理を受けた、FおよびFeをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-3)のX線粉末回折(XRD)プロットを示す図である。
図9F】本開示の例による、熱処理を受けた、FおよびFeをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-4)のX線粉末回折(XRD)プロットを示す図である。
図9G】本開示の例による、熱処理を受けた、FおよびFeをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-5)のX線粉末回折(XRD)プロットを示す図である。
図10A】本開示の例による、550℃で60分間熱処理し、周囲温度まで熱風冷却した、FおよびMnをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-13)のXRDプロットを示す図である。
図10B】本開示の例による、550℃で60分間熱処理し、周囲温度まで熱風冷却した、FおよびMnをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-14)のXRDプロットを示す図である。
図10C】本開示の例による、550℃で60分間熱処理し、周囲温度まで熱風冷却した、FおよびMnをドープした酸化タングステンガラスセラミックス(例1-15)のXRDプロットを示す図である。
図11A】本開示の例による、550℃で60分間熱処理し、周囲温度まで熱風冷却した、Feをドープした酸化モリブデンガラスセラミックス(例1-9)のXRDプロットを示す図である。
図11B】本開示の例による、550℃で60分間熱処理し、周囲温度まで熱風冷却した、Feをドープした酸化モリブデンガラスセラミックス(例1-10)のXRDプロットを示す図である。
図11C】本開示の例による、550℃で60分間熱処理し、周囲温度まで熱風冷却した、Mnをドープした酸化モリブデンガラスセラミックス(例1-19)のXRDプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、当業者には説明から明らかになるか、または特許請求の範囲および添付の図面とともに以下の説明に記載されているように本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0036】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のいずれか1つがそれ自体で採用され得ること、または列挙された項目の2つ以上の任意の組み合わせが採用され得ることを意味する。例えば、組成物が成分A、Bおよび/またはCを含むと記載されている場合、その組成物は、A単独;B単独;C単独;AとBとの組み合わせ;AとCとの組み合わせ;BとCとの組み合わせ;またはA、BおよびCの組み合わせを含み得る。
【0037】
本明細書において、第1と第2、上と下などの関係用語は、ある実体または行為を別の実体または行為から区別するためにのみ使用されており、そのような実体または行為の間に実際のいかなるそのような関係または順序も必ずしも要求したり暗示したりするものではない。
【0038】
本開示の修正は、当業者および本開示を作成または使用する者に生じる。したがって、図面に示され、上述した実施形態は、単に例示を目的としたものであり、均等論をはじめとする特許法の原則に従って解釈される以下の特許請求の範囲により定められる本開示の範囲を限定することを意図したものではないことが理解される。
【0039】
記載された開示の構造、および他の構成要素が、特定の材料に限定されないことは、当業者によって理解されるであろう。本明細書に開示された開示の他の例示的な実施形態は、本明細書に別段の記載がない限り、多種多様な材料から形成され得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、ならびに他の数量および特性が、正確ではなく、正確である必要もないが、許容範囲、変換係数、四捨五入、測定誤差などや、当業者に知られている他の要因を反映して、所望に応じて、近似的および/またはより大きくてもより小さくてもよいことを意味する。数値または範囲の端点を記述する際に「約」という用語が使用されている場合、本開示は言及されている特定の値または端点を含むと理解されるべきである。本明細書中の数値または範囲の端点が「約」と記載されているか否かにかかわらず、数値または範囲の端点は、「約」によって修正されているものと、「約」によって修正されていないものの2つの実施形態を含むことを意図している。さらに、各範囲の端点は、他の端点との関係においても、他の端点とは独立しても有効であることが理解されるであろう。
【0041】
特に指定のない限り、すべての組成物は、バッチ状態(as-batched)のモルパーセント(モル%)を単位として表される。当業者に理解されるように、様々な溶融成分(例えば、フッ素、アルカリ金属、ホウ素など)は、その成分の溶融中に(例えば、蒸気圧、溶融時間および/または溶融温度の関数として)異なるレベルの揮発を受ける可能性がある。つまり、そのような成分に関連して使用されるバッチ状態のモルパーセント値は、最終的な溶融時の物品におけるこれらの成分の±0.2モル%以内の値を含むことを意図している。上述のことを念頭に置いて、最終物品とバッチ状態の組成物との間の実質的な組成の同等性が期待される。
【0042】
本開示において、「バルク」、「バルク組成」および/または「全体組成」という用語は、物品全体の全体組成を含むことを意図しており、これは、結晶相および/またはセラミックス相の形成に起因してバルク組成とは異なる可能性のある「局所組成」または「局所化された組成」とは区別することができる。
【0043】
同様に本明細書で使用される場合、「物品」、「ガラス物品」、「セラミックス物品」、「ガラスセラミックス」、「ガラス要素」、「ガラスセラミックス物品」という用語は、互換的に使用されてもよく、それらの最も広い意味で、ガラスおよび/またはガラスセラミックス材料で全体的または部分的に作られた任意の物体を含むものである。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ガラス状態」とは、結晶化せずに剛性状態に冷却されたフュージョン生成物である、本開示の物品内の無機非晶質相材料を指す。本明細書で使用される場合、「ガラスセラミックス状態」とは、ガラス状態と、本明細書に記載される「結晶相」および/または「結晶性析出物」との双方を含む、本開示の物品内の無機材料を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「透過度」、「透過率」、「光透過率」および「全透過率」とは、本開示において互換的に使用され、吸収、散乱および反射を考慮した外部透過率または透過率を指す。フレネル反射は、本明細書で報告される透過度および透過率の値から差し引かれない。さらに、特定の波長範囲で参照される任意の全透過率の値は、指定された波長範囲で測定された全透過率の値の平均値として与えられる。さらに、同様に本明細書で使用される場合、「平均吸光度」は、(2-log(平均透過率(%)))/経路長として与えられる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「光学密度単位」、「OD」および「OD単位」は、OD=-log(I/I)で与えられる分光計で測定される、試験された材料の吸光度の尺度として一般的に理解される光学密度単位を指すために、本開示で互換的に使用される。ここで、Iはサンプルに入射する光の強度であり、Iはサンプルを透過する光の強度である。さらに、本開示で使用される「OD/mm」または「OD/cm」という用語は、光学密度単位(すなわち、光学分光計によって測定されたもの)をサンプルの厚さ(例えば、ミリメートルまたはセンチメートルの単位)で割ることによって決定される、吸光度の正規化された尺度である。さらに、特定の波長域で参照される光学密度単位(例えば、280nm~380nmのUV波長では3.3OD/mm~24.0OD/mm)は、指定された波長域での光学密度単位の平均値として与えられる。
【0047】
同様に本明細書で使用される場合、「シャープなカットオフ波長」および「カットオフ波長」という用語は互換的に使用され、320nm~525nmの範囲内のカットオフ波長を指し、ガラスセラミックスにおいて、カットオフ波長(λ)より下での透過率に比べてカットオフ波長(λ)より上での透過率が大幅に高い。カットオフ波長(λ)とは、ガラスセラミックスの所定のスペクトルにおける「吸収限界波長」と「高透過限界波長」との中間に位置する波長である。「吸収限界波長」とは、透過率が5%の波長と規定され、「高透過波長」とは、透過率が72%の波長と定義される。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ヘイズ」という用語は、1mmの透過経路を有するサンプルにおいて、±2.5°の入射角の外側に散乱した透過光のパーセンテージを指し、ASTM手順D1003に従って測定したものである。
【0049】
本開示のガラスセラミックスならびにガラスセラミックスの材料および物品に関連して、圧縮応力および圧縮深さ(「DOC」)は、市販の機器、本明細書で特に断りのない限り、例えばGlasStress, Ltd.(エストニア・タリン)製の散乱光ポラリスコープSCALP220および付属のソフトウェアバージョン5、または折原製作所(日本・東京)製のFSM-6000を用いて表面応力を評価することによって測定される。両機器は光学リタデーションを測定するが、このリタデーションは被検査材料の応力光学係数(「SOC」)を介して応力に変換されなければならない。したがって、応力測定は、ガラスの複屈折に関連するSOCの正確な測定に依存する。SOCそのものは、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題する、ASTM規格C770-98(2013)に記載されている手順Cの修正版(「修正手順C」)に従って測定され、上記文献の内容全体を、参照により本明細書に援用するものとする。修正手順Cには、厚さ5~10mmおよび直径12.7mmのガラスまたはガラスセラミックス製のディスクを試験片として使用することが含まれる。このディスクは、等方性で均質であり、両面が研磨されて平行になるようにコアドリルで加工されている。修正手順Cには、ディスクに加えられる最大力Fmaxを計算することも含まれる。この力は、少なくとも20MPaの圧縮応力を発生させるのに十分なものでなければならない。Fmaxは、次の式を用いて計算される:
Fmax=7.854
式中、Fmaxは最大力(N)、Dはディスクの直径(mm)、hは光路の厚さ(mm)である。各力を加えるごとに、次の式を用いて応力が算定される:
σ(MPa)=8F/(πh)
式中、Fは力(N)、Dはディスクの直径(mm)、hは光路の厚さ(mm)である。
【0050】
本明細書で特に断りのない限り、「実質的に含まない」という用語は、指定された元素または成分(例えば、Cd、Se)が、参照されるガラス、ガラスセラミックスまたは物品に意図的または目的をもって含まれておらず、指定された元素または成分の測定可能な量が500ppm未満であることを意味する。
【0051】
本開示の物品は、本明細書で概説した組成物の1つ以上を有するガラスおよび/またはガラスセラミックスで構成されている。物品は、耐引っかき性、強度、軽量、比較的低い加工コスト、ならびにポータブル電子デバイスのハウジングおよび構造部品としてや、光学要素および光学フィルタとして使用するのに適した特定の光学特性を有する。つまり、本開示の物品は、多くの用途に採用することができる。例えば、物品は、多くの光学関連および/または審美的な用途における基板、フィルタ、要素、レンズ、カバーおよび/または他の要素の形で採用することができる。別の例として、物品は、ノートブックコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ポータブルナビゲーションデバイス(PND)、メディアプレーヤ、携帯電話、ポータブルインベントリデバイス(PID)、および他のポータブルコンピューティングデバイスのためのハウジング、カバー、エンクロージャなどとして採用することができる。
【0052】
総じて、本開示の物品は、バッチ状態の組成物から形成され、ガラス状態でキャストされる。物品は、後にアニール処理および/または熱的に加工(例えば、熱処理)を行い、複数のセラミックスまたは結晶状の粒子、析出物などを有するガラスセラミックス状態を形成してもよい。採用されたキャスト技術、キャストされたガラスの量、およびキャスト形状に応じて、物品は容易に結晶化し、追加の熱処理なしにガラスセラミックスになることがある(例えば、本質的にガラスセラミックス状態にキャストされることがある)と理解されるであろう。成形後の熱加工を採用した例では、物品の一部、大部分、実質的に全部、または全部が、ガラス状態からガラスセラミックス状態に変換されてもよい。つまり、物品の組成物は、ガラス状態および/またはガラスセラミックス状態に関連して記載されることがあるが、物品の局所的な部分が異なる組成を有する(すなわち、セラミックスまたは結晶性析出物の形成に起因する)にもかかわらず、物品のバルク組成は、ガラス状態とガラスセラミックス状態との間で変換されても実質的に変化しないままであり得る。
【0053】
様々な例によると、物品は、Al、SiO、B、WOおよび/またはMO、Feおよび/またはMnO、ならびにROを含むことができ、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上である。さらに、物品は、ROおよび/または多数のドーパントを含むことができ、ここで、ROは、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOのうちの1つ以上である。本明細書で提供される教示から逸脱することなく、多数の他の成分(例えば、F、As、Sb、Ti、P、Ce、Eu、La、Cl、Br、SnOなど)が物品に含まれ得ることが理解されるであろう。
【0054】
ここで図1を参照すると、本開示によるガラスおよび/またはガラスセラミックス組成物を有する基板14を含む物品10が示されている。物品10は、多くの用途に採用することができる。例えば、物品10および/または基板14は、多くの光学関連および/または審美的な用途において、基板、要素、カバー、および他の要素の形で採用することができる。
【0055】
基板14は、一対の対向する主面18および22の範囲を定めるか、または一対の対向する主面18および22を含む。物品10のいくつかの例では、基板14は、圧縮応力領域26を含む。図1に示すように、圧縮応力領域26は、主面18から基板内の第1の選択された深さ30まで延在する。いくつかの例では、基板14は、主面18から第2の選択された深さ(図示せず)まで延在する類似の圧縮応力領域26を含む。さらに、いくつかの例では、複数の圧縮応力領域26が、基板14の主面18,22および/または縁部から延在していてもよい。基板14は、その表面積の範囲を定めるために、選択された長さおよび幅、または直径を有していてもよい。基板14は、その長さおよび幅、または直径によって範囲が定められる基板14の主面18と22との間に、少なくとも1つの縁部を有していてもよい。基板14はまた、選択された厚さを有していてもよい。
【0056】
本明細書で使用される場合、「選択された深さ」(例えば、選択された深さ30)、「圧縮の深さ」および「DOC」は、本明細書に記載される基板14の応力が圧縮力から引張力に変化する深さの範囲を定めるために互換的に使用される。DOCは、イオン交換処理に応じて、表面応力計、例えばFSM-6000、または散乱光ポラリスコープ(SCALP)によって測定してもよい。カリウムイオンをガラス基板に交換することによって、ガラスまたはガラスセラミックス組成物を有する基板14に応力を発生させる場合には、表面応力計を用いてDOCが測定される。ナトリウムイオンをガラス物品に交換することによって応力を発生させる場合には、SCALPを用いてDOCが測定される。カリウムイオンとナトリウムイオンとの双方をガラスに交換することによって、ガラスまたはガラスセラミックス組成物を有する基板14に応力を発生させる場合には、ナトリウムの交換深さがDOCを示し、カリウムイオンの交換深さが圧縮応力の大きさの変化を示す(ただし、圧縮力から引張力への応力の変化は示さない)と考えられるので、DOCはSCALPによって測定され、そのようなガラス基板のカリウムイオンの交換深さは、表面応力計によって測定される。同様に本明細書で使用される場合、「最大圧縮応力」とは、基板14の圧縮応力領域26内の最大圧縮応力と定義される。いくつかの例では、最大圧縮応力は、圧縮応力領域26の範囲を定める1つ以上の主面18および22で、または当該主面に近接して得られる。他の例では、最大圧縮応力は、1つ以上の主面18および22と、圧縮応力領域26の選択された深さ30との間で得られる。
【0057】
図1に例示的に示されている物品10のいくつかの例では、基板14は、化学的に強化されたアルミノホウケイ酸塩のガラスまたはガラスセラミックスから選択される。例えば、基板14は、10μmよりも大きい第1の選択された深さ30まで延在する圧縮応力領域26を有し、150MPaよりも大きい最大圧縮応力を伴う、化学的に強化されたアルミノホウケイ酸塩のガラスまたはガラスセラミックスから選択されることができる。更なる例では、基板14は、25μmよりも大きい第1の選択された深さ30まで延在しかつ400MPaよりも大きい最大圧縮応力を有する圧縮応力領域26を有する、化学的に強化されたアルミノホウケイ酸塩のガラスまたはガラスセラミックスから選択される。物品10の基板14はまた、主面18および22の1つ以上から、選択された1つ以上の深さ30まで延在し、かつ150MPaよりも大きい、200MPaよりも大きい、250MPaよりも大きい、300MPaよりも大きい、350MPaよりも大きい、400MPaよりも大きい、450MPaよりも大きい、500MPaよりも大きい、550MPaよりも大きい、600MPaよりも大きい、650MPaよりも大きい、700MPaよりも大きい、750MPaよりも大きい、800MPaよりも大きい、850MPaよりも大きい、900MPaよりも大きい、950MPaよりも大きい、1000MPaよりも大きい最大圧縮応力、およびこれらの値の間のすべての最大圧縮応力レベルを有する、1つ以上の圧縮応力領域26を含んでいてもよい。いくつかの例では、最大圧縮応力は、2000MPa以下である。さらに、圧縮の深さ(DOC)または第1の選択された深さ30は、基板14の厚さおよび圧縮応力領域26の発生に関連する加工条件に応じて、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、およびさらに高い深さに設定することができる。いくつかの例では、DOCは、基板14の厚さ(t)の0.3倍以下であり、例えば、0.3t、0.28t、0.26t、0.25t、0.24t、0.23t、0.22t、0.21t、0.20t、0.19t、0.18t、0.15t、0.10t、およびそれらの間のすべての値である。
【0058】
以下でより詳細に説明されるように、物品10は、バッチ状態の組成物から形成され、ガラス状態でキャストされる。物品10は、後にアニール処理および/または熱的に加工(例えば、熱処理)を行い、複数のセラミックスまたは結晶状粒子を有するガラスセラミックス状態を形成してもよい。採用したキャスト技術に応じて、物品10は容易に結晶化し、追加の熱処理なしにガラスセラミックスになることがある(例えば、本質的にガラスセラミックス状態にキャストされることがある)と理解されるであろう。成形後の熱加工を採用した例では、物品10の一部、大部分、実質的に全部、または全部が、ガラス状態からガラスセラミックス状態に変換されてもよい。つまり、物品10の組成物は、ガラス状態および/またはガラスセラミックス状態に関連して記載されることがあるが、物品10の局所的な部分が異なる組成を有する(すなわち、セラミックスまたは結晶性析出物の形成に起因する)にもかかわらず、物品10のバルク組成は、ガラス状態とガラスセラミックス状態との間で変換されても実質的に変化しないままであり得る。さらに、組成物はバッチ状態の観点から記載されているが、当業者であれば、物品10のどの成分が溶融プロセスで揮発する(すなわち、バッチ状態の組成物と比べて物品10中の存在量が少なくなる)可能性があり、他の成分は揮発しないことを認識するであろうことが理解されるであろう。
【0059】
様々な例によると、物品10は、Al、SiO、B、WOおよび/またはMO、Feおよび/またはMnO、ならびにROを含むことができ、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上である。物品10はまた、ROおよび/または多数のドーパント(例えば、SnO、F、Pなど)を含むことができ、ここで、ROは、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOのうちの1つ以上である。特に断りのない限り、ガラス組成は、溶融るつぼ中でのバッチ状態のモル百分率(モル%)に対応する。
【0060】
物品10は、40モル%~80モル%のSiO、または45モル%~75モル%のSiO、または50モル%~70モル%のSiO、または50モル%~75モル%のSiO、または50モル%~56モル%のSiOを有していてもよい。例えば、物品10は、42モル%、44モル%、46モル%、48モル%、50モル%、52モル%、54モル%、56モル%、58モル%、60モル%、62モル%、64モル%、66モル%、68モル%、70モル%、72モル%、74モル%、76モル%、または78モル%のSiOを有していてもよい。SiOの上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0061】
物品10は、3モル%~15モル%のAl、または5モル%~15モル%のAl、または7モル%~15モル%のAl、または8モル%~15モル%のAl、または7モル%~12モル%のAl、または10モル%~12モル%のAlを含んでいてもよい。例えば、物品10は、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、8モル%、9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、14モル%、または15モル%のAlを有していてもよい。Alの上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0062】
物品10は、WOおよび/またはMoOを含む。WOとMoOとを組み合わせた量は、本明細書では「WO+MoO」と呼ばれ、ここで、「WO+MoO」は、WO単独、MoO単独、またはWOとMoOとの組み合わせを指すことが理解される。例えば、WO+MoOは、1モル%~18モル%、または2モル%~10モル%、または2モル%~8モル%、または3.5モル%~8モル%、または3モル%~6モル%であってもよい。WOに関して、物品10は、0モル%~18モル%、または1モル%~15モル%、または2モル%~15モル%、または1モル%~7モル%、または3モル%~7モル%、または2モル%~4モル%を有していてもよい。例えば、物品は、0モル%、1モル%、2モル%、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、8モル%、9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、または14モル%のWOを有していてもよい。MoOに関して、物品10は、0モル%~18モル%、または1モル%~15モル%、または2モル%~15モル%、または2モル%~5モル%、または1モル%~7モル%、または1モル%~4モル%を有していてもよい。例えば、物品は、0モル%、1モル%、2モル%、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、8モル%、9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、または14モル%のMoOを有していてもよい。WO、WO+MoO、および/またはMoOの量の上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0063】
物品10は、3モル%~50モル%のB、または3モル%~25モル%のB、または10モル%~20モル%のB、または10モル%~15モル%のBを含んでいてもよい。例えば、物品10は、3モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、35モル%、40モル%、45モル%、または50モル%のBを有していてもよい。Bの上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0064】
物品10は、少なくとも1つのアルカリ金属酸化物を含んでいてもよい。アルカリ金属酸化物は、化学式ROで表されてもよく、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbO、CsOおよび/またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上である。物品10は、0モル%~20モル%、または0モル%~15モル%、または5モル%~15モル%、または8モル%~15モル%、または10モル%~15モル%のROを有していてもよい。例えば、物品10は、0モル%、1モル%、1.1モル%、2モル%、3モル%、4モル%、5モル%、6モル%、7モル%、8モル%、9モル%、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、14モル%、15モル%、16モル%、17モル%、18モル%、19モル%、または20モル%のROを有していてもよい。ROの上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0065】
物品10は、RO-Al(すなわち、ROとAlとの量の差)が、-12モル%~+4モル%、または-7モル%~+4モル%、または-3モル%~+4モル%、または0モル%~+4モル%、または+0.5モル%~+4モル%、または+1モル%~+4モル%、または+1モル%~+3モル%、または+1モル%~+2モル%であるようなアルカリ金属含有量を有する。RO-Alの上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。本明細書で規定されるROとAlとの差は、酸化タングステンと相互作用する過剰なアルカリ金属カチオンの利用可能性に影響を与え、それによって、アルカリ金属タングステンブロンズ、例えば非化学量論的なタングステン亜酸化物(x>0.3のMWO結晶)および化学量論的なアルカリ金属タングステン酸塩(例えば、NaWO)の形成を調節またはその他の方法で制御する。理論に拘束されるものではないが、物品10のガラス中にアルカリ金属が過剰に存在することで、より多くのアルカリ金属がタングステン結晶中にインターカレートして、より高いドーパント濃度のブロンズ結晶を形成することが可能になり、これにより、様々なレベルの結晶化(例えば、溶融後の熱処理を通じて)の際に更なる吸光度変化をもたらすことができる。別の言い方をすれば、過剰なアルカリ金属レベルは、MWO結晶の化学量論比のより大きな変化を可能にし、その結果、吸光度の変化に現れるバンドギャップエネルギーのより大きなシフトが生じることになる。
【0066】
物品は、Feおよび/またはMnOを含む。FeとMnOとを組み合わせた量は、本明細書では「Fe+MnO」と呼ばれ、ここで、「Fe+MnO」は、Fe単独、MnO単独、またはFeとMnOとの組み合わせを指すことが理解される。例えば、Fe+MnOは、0.1モル%~5モル%、または0.1モル%~2モル%、または0.1モル%~1.5モル%、または0.2モル%~1モル%であってもよい。Feに関して、物品10は、0.1モル%~5モル%、または0.1モル%~2モル%、または0.1モル%~1.5モル%、または0.2モル%~1モル%を有していてもよい。例えば、物品は、0.1モル%、0.2モル%、0.3モル%、0.4モル%、0.5モル%、0.6モル%、0.7モル%、0.8モル%、0.9モル%、1モル%、1.1モル%、1.2モル%、1.3モル%、1.4モル%、1.5モル%、2モル%、2.5モル%、3モル%、3.5モル%、4モル%、4.5モル%、または5モル%のFeを有していてもよい。MnOに関して、物品10は、0.1モル%~5モル%、または0.1モル%~2モル%、または0.1モル%~1.5モル%、または0.2モル%~1モル%を有していてもよい。例えば、物品は、0.1モル%、0.2モル%、0.3モル%、0.4モル%、0.5モル%、0.6モル%、0.7モル%、0.8モル%、0.9モル%、1モル%、1.1モル%、1.2モル%、1.3モル%、1.4モル%、1.5モル%、2モル%、2.5モル%、3モル%、3.5モル%、4モル%、4.5モル%、または5モル%のMnOを有していてもよい。Fe、Fe+MnO、および/またはMnOの量の上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0067】
物品10はまた、少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物および/またはZnOを含んでいてもよい。アルカリ土類金属酸化物は、化学式ROで表されてもよく、ここで、ROは、MgO、CaO、SrOおよびBaOのうちの1つ以上である。ROはまた、ZnOを含んでいてもよい。物品10は、0モル%~5モル%のRO、または0モル%~3モル%のRO、または0モル%~2モル%のRO、または0.1モル%~2モル%のRO、または0モル%~1モル%のRO、または0.01モル%~1モル%のRO、または0.05モル%~0.5モル%のROを含んでいてもよい。RO(ZnOを含む)の上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。様々な例によると、ROの量は、ROおよび/またはZnOの量よりも多くてもよい。さらに、物品10の実施形態は、ROおよび/またはZnOを実質的に含んでいなくてもよい。
【0068】
物品10はまた、0.01モル%~1モル%のSnO、または0.05モル%~0.5モル%のSnO、または0.1モル%~0.5モル%のSnO、または0.15モル%~0.5モル%のSnOを含んでいてもよい。例えば、物品10は、0.01モル%のSnO、0.02モル%のSnO、0.03モル%のSnO、0.04モル%のSnO、0.05モル%のSnO、0.06モル%のSnO、0.07モル%のSnO、0.08モル%のSnO、0.09モル%のSnO、0.1モル%のSnO、0.5モル%のSnO、または1モル%のSnOを含んでいてもよい。SnOの上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。理論に拘束されるものではないが、物品10および本開示の組成物中の酸化スズのレベルは、タングステンブロンズ結晶の部分的な還元において重要な役割を果たすことができ(例えば、組成物中の過剰なアルカリ金属含有量とある程度の相乗効果を伴う)、これは、更なる化学量論的変化(すなわち、より多くのW6+をW5+に還元するのに必要なMWO非化学量論的結晶におけるより大きなx値)を得ることを大いに促進し得る成分である。
【0069】
様々な例によると、物品10に、P(Pの形で)および/またはF(Fイオンの形で)をドープすることができる。例えば、物品10は、0モル%~3モル%のP、または0モル%~2モル%のP、または0モル%~1.5モル%のPを含んでいてもよい。物品10はまた、0モル%~15モル%のF、または1モル%~10モル%のF、または3モル%~7モル%のF、または4モル%~8モル%のFを含んでいてもよい。さらに、Pおよび/またはFの上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが、物品10および本開示の組成物における使用のために企図される。理論に拘束されるものではないが、Pおよび/またはFを含む物品10は、これらのドーパントが一定量のSiOを犠牲にして添加されることができるため、粘度の観点から「より柔らかい」ものとすることができる。さらに、そのような「より柔らかい」組成物は、アルカリ金属酸化物と競合するSiOが少ないため、W含有結晶へのアルカリ金属酸化物の分配を増加させることができる。さらに、これらの「より柔らかい」組成物に関連する粘度曲線の増加は、アルカリ金属酸化物のタングステン結晶への拡散速度にも影響を与えることができる。W含有結晶へのアルカリ金属酸化物の分配が増加すると、1つの組成物で熱処理を変えることにより、更なる吸光度変化効果を得ることができる。
【0070】
様々な例では、物品10は、CdおよびSeを実質的に含まない。本明細書で特に断りのない限り、「実質的に含まない」という用語は、指定された元素または成分が物品10に意図的に含まれておらず、物品10に存在する測定可能な量が500ppm未満であることを意味する。いくつかの実施形態では、物品10は、Cd、Seおよび/またはRCRAに基づく規制の対象となる他の元素を実質的に含まないことができる。
【0071】
様々な例によると、物品10は、紫外線、可視光線、色光線および/または近赤外線の吸光度を変化させるために、H、S、Cl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Ga、Se、Br、Zr、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、I、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ta、Os、Ir、Pt、Au、Ti、Pb、BiおよびUからなる群から選択される少なくとも1つのドーパントをさらに含んでいてもよい。ガラス組成物中のドーパントの濃度は、0.0001モル%~1.0モル%、0.0001モル%~0.5モル%、または0.0001モル%~0.1モル%とすることができる。例えば、物品10は、0.0001モル%、0.001モル%、0.01モル%、0.1モル%、0.5モル%、または1モル%の濃度で、前述のドーパントのいずれか1つ以上を含んでいてもよい。これらのドーパントの上述の範囲の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0072】
SiO、Al、WO、MoO、WO+MoO、B、Fe+MnO、RO、RO、P、F、SnO、およびドーパントの上述の各組成物および組成範囲は、本明細書で概説したガラスの他の成分の任意の他の組成物および/または組成範囲と一緒に使用してもよいことが理解されるであろう。例えば、第1A表、第1B表および第1C表は、物品10の例示的な組成範囲をバッチ状態のモル%で提供する。
【0073】
【表1A】
【0074】
【表1B】
【0075】
【表1C】
【0076】
従来のタングステンまたはタングステン/モリブデン混合物を含有するアルカリ金属ガラスの形成は、溶融プロセス中に溶融成分が分離することによって阻害されてきた。溶融プロセス中にガラス成分が分離することで、溶融ガラス内のタングステン酸アルカリ金属塩、ひいてはそのような溶融物からキャストされた物品の固溶限界が認識される結果となった。従来、タングステン、モリブデン、またはタングステン/モリブデン混合溶融物がわずかでも過アルカリ性(例えば、RO-Al=0.25モル%以上)の場合、溶融したホウケイ酸塩ガラスは、ガラスと高密度な液体の第2の相との双方を形成した。タングステン酸アルカリ金属塩の第2の相の濃度は、十分な混合、高温での溶融、および少量のバッチサイズ(約1000g)の採用によって最小限に抑えることができたが、完全に排除することはできず、有害な第2の結晶相の形成につながった。このタングステン酸アルカリ金属塩相の形成は、酸化タングステンと任意の酸化モリブデンとが、「遊離」または「結合していない」アルカリ金属炭酸塩と反応する溶融物の初期段階で起こると考えられている。形成されたホウケイ酸塩ガラスと比べてタングステン酸アルカリ金属塩およびモリブデン酸アルカリ金属塩の密度が高いことから、それは急速に偏析および/または層状化し、るつぼの底に溜まり、密度が大きく異なるためにガラス内に急速には溶解しない。RO成分は、ガラス組成物に有益な特性を提供し得るため、溶融物中のRO成分の存在を単に減少させることは望ましくない可能性がある。タングステンおよび/またはモリブデンが偏析すると、それによりガラスを飽和させることが困難になり、したがって、ガラスから結晶化して本明細書に記載される析出物を形成することが困難になる。
【0077】
均質な単相のW含有、単相のMo含有、またはWおよびMo混合相含有の過アルカリ性溶融物が、「結合した」アルカリ金属の使用により得られることが発見された。本開示において、「結合した」アルカリ金属は、アルミニウム、ホウ素、および/またはケイ素原子に結合している酸素イオンに結合しているアルカリ金属元素であり、一方で、「遊離」または「結合していない」アルカリ金属は、ケイ素、ホウ素、またはアルミニウム原子に既に結合している酸素イオンに結合していないアルカリ金属の炭酸塩、硝酸塩、または硫酸塩である。例示的な結合したアルカリ金属としては、長石、霞石、ホウ砂、リシア輝石、他のナトリウムまたはカリウムの長石、アルカリ金属アルミニウムケイ酸塩および/またはアルカリ金属と1つ以上のアルミニウムおよび/またはケイ素原子とを含む他の酸化物組成物を挙げることができる。結合した形態でアルカリ金属を導入することにより、アルカリ金属は、溶融物中に存在するWおよび/またはMoと反応して高密度のタングステン酸アルカリ金属塩および/またはモリブデン酸アルカリ金属塩の液体を形成することができない。さらに、このバッチ材料の変更により、タングステン酸アルカリ金属塩および/またはモリブデン酸アルカリ金属塩の第2の相を形成することなく、強過アルカリ性組成物(例えば、RO-Al=2.0モル%以上)の溶融を可能にすることができる。これにより、溶融温度および混合方法を変化させても、単相の均質なガラスを製造することが可能になった。タングステン酸アルカリ金属相とホウケイ酸塩ガラスとは完全には混じり合わないので、長時間の撹拌により2つの相を混合して単相の物品をキャストすることも可能であることが理解されるであろう。
【0078】
ガラス溶融物がキャストされ、ガラス状態の物品に固化されると、物品10は、物品10内に結晶相を形成または変化させるために、アニール処理、熱処理、またはその他の方法で熱的に加工を行ってもよい。したがって、物品10は、ガラス状態からガラスセラミックス状態へと変わってもよい。ガラスセラミックス状態の結晶相は、様々な形態をとることができる。様々な例によると、結晶相は、物品10の熱処理された領域内で、複数の析出物、例えば均一に分布した析出物として形成される。つまり、析出物は、総じて結晶構造を有していてもよい。ガラスセラミックス状態は、2つ以上の結晶相を含んでいてもよい。
【0079】
本明細書で使用される場合、「結晶相」とは、本開示の物品内の無機材料であって、3次元的に周期的なパターンで配列された原子、イオンまたは分子から構成される固体を指す。さらに、本開示で参照される「結晶相」は、明示的に別段の定めがない限り、以下の方法で存在すると判定される。第一に、粉末X線回折(「XRD」)を用いて、結晶性析出物の存在を検出する。第二に、(例えば、析出物のサイズ、数量および/または化学的性質のために)XRDがうまくいかなかった場合、ラマン分光法(「ラマン」)を用いて、結晶性析出物の存在を検出する。任意に、透過型電子顕微鏡(「TEM」)を用いて、XRDおよび/またはラマン技術により得られた結晶性析出物の測定結果を目視で確認するか、またはその他の方法で実体化する。特定の状況では、析出物の数量および/またはサイズは、析出物の目視確認が特に困難であると分かるほど小さい可能性がある。つまり、XRDおよびラマンのより大きなサンプルサイズは、より多くの数量の材料をサンプリングして析出物の存在を判定するために有利であり得る。
【0080】
結晶性析出物は、総じて棒状または針状の形態を有していてもよい。析出物は、1nm~500nm、または1nm~400nm、または1nm~300nm、または1nm~250nm、または1nm~200nm、または1nm~100nm、または1nm~75nm、または1nm~50nm、または5nm~50nm、または1nm~25nm、または1nm~20nm、または1nm~10nmの最長の長さ寸法を有していてもよい。析出物のサイズは、電子顕微鏡を用いて測定してもよい。本開示において、「電子顕微鏡」という用語は、まず走査型電子顕微鏡を用いて析出物の最長の長さを目視で測定し、析出物を解像できない場合には、次に透過型電子顕微鏡を用いて測定することを意味する。結晶性析出物は、総じて棒状または針状の形態を有していてもよいので、析出物は、5nm~50nm、または2nm~30nm、または2nm~10nm、または2nm~7nmの幅を有していてもよい。析出物のサイズおよび/または形態は、均質、実質的に均質であってもよく、または変化してもよいことが理解されるであろう。
【0081】
析出物の比較的小さいサイズは、析出物によって散乱される光の量を低減するのに有利であり、ガラスセラミックス状態にあるときに物品10の高い光学的透明性につながり得る。以下でより詳細に説明されるように、析出物のサイズおよび/または数量は、物品10の異なる部分が異なる光学的特性を有するように、物品10全体で変化させてもよい。例えば、析出物が存在する物品10の部分は、異なる析出物(例えば、サイズおよび/または数量)が存在する物品10の部分および/または析出物が存在しない物品10の部分と比較して、吸光度、色、反射率、光の透過率、および/または屈折率の変化をもたらすことができる。
【0082】
析出物は、酸化タングステン、酸化モリブデン、または酸化タングステンと酸化モリブデンに鉄および/またはマンガンを加えたもので構成されていてもよい。結晶相には、結晶相の0.1モル%~100モル%で、以下のうちの少なくとも1つの酸化物:(i)W+Feおよび/またはMn;(ii)Mo+Feおよび/またはMn;(iii)Mo+W+Feおよび/またはMn;ならびに(iv)(i)~(iii)のいずれかとアルカリ金属カチオンとが含まれる。理論に拘束されるものではないが、物品10の熱加工(例えば、熱処理)中に、タングステンおよび/またはモリブデンのカチオンが、鉄および/またはマンガンのカチオンとともに、凝集して結晶性析出物を形成し、それによって、ガラス状態をガラスセラミックス状態に変えることができると考えられている。析出物中に存在するモリブデンおよび/またはタングステンは、鉄および/またはマンガンとともに、還元されていてもよいし、部分的に還元されていてもよい。例えば、析出物中のモリブデンおよび/またはタングステンは、0~+6、または+4~+6、または+5~+6の酸化状態を有していてもよい。様々な例によると、モリブデンおよび/またはタングステンは、+6の酸化状態を有していてもよい。例えば、これらのガラスセラミックスによって形成される析出物は、WOおよび/またはMoOの一般的な化学構造を有していてもよい。これらのガラスセラミックスによって形成される他の析出物は、非化学量論的なタングステン亜酸化物、非化学量論的なモリブデン亜酸化物、「モリブデンブロンズ」および/または「タングステンブロンズ」として知られていることもある。析出物中には、上述のアルカリ金属の1つ以上、Feおよび/またはMn、および/または他のドーパントが存在してもよい。タングステン、モリブデンおよび/またはタングステン/モリブデン混合ブロンズは、MWOまたはMMoOの一般的な化学形態をとる非化学量論的なタングステンおよび/またはモリブデンの亜酸化物のグループであり、ここで、Mは、Fe、Mn、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Ba、Zn、Ag、Au、Cu、Sn、Cd、In、Tl、Pb、Bi、Th、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびUであり、かつ0<x<1である。構造体MWOおよびMMoOは、還元されたWO、MoO、WOおよび/またはMoOネットワークの空孔(空格子点および/または隙間)が、MまたはM2+カチオンと自由電子とに解離したM原子によってランダムに占有された固体欠陥構造であると考えられている。「M」の濃度に応じて、材料の特性は金属性から半導性まで幅広くなり、それによって、様々な光吸収特性や電子特性の調整が可能になる。さらに、これらのブロンズの構造体は、Mカチオンが酸化物ホストの空孔またはチャネル内にインターカレートし、M1+またはM2+カチオンと自由電子とに解離する固体欠陥構造であると考えられている。また、xを変化させることで、これらの材料は、明確かつ広範な均質性を持つ幅広い一連の固相として存在することができる。別の例として、物品10の結晶性析出物は、化学形態MWOおよび/またはMMoOのうちの少なくとも1つの酸化物を含むことができ、この場合、MはFe2+またはMn2+である。タングステン酸塩(またはモリブデン酸塩)として知られているこれらの結晶相は、最も単純なタングステンおよびモリブデンのアニオンWO 2-およびMoO 2-にその名を由来しており、これらのアニオンは、Fe2+および/またはMn2+などの安定化した2+カチオンを荷電して安定な結晶種を形成することができる。天然に存在する鉄およびマンガンのタングステン酸塩は、口語的には鉄重石(FeWO)およびマンガン重石(MnWO)という鉱物として知られている。鉄およびマンガンのモリブデン酸塩も天然に存在している。
【0083】
析出物を形成するために、物品10の一部、大部分、実質的に全部、または全部を熱的に加工してもよい。熱加工技術としては、炉(例えば、熱処理炉)、レーザおよび/または物品10を局所的および/またはバルク的に加熱する他の技術を挙げることができるが、これらに限定されない。熱加工を受けている間、結晶性析出物は、物品10が熱的に加工されてガラスセラミックス状態を形成する場合、均質な形で物品10内に内部で核を形成する。つまり、いくつかの例では、物品10は、ガラス部分とガラスセラミックス部分との双方を含んでいてもよい。物品10がバルクで熱的に加工される(例えば、物品10全体が炉に入れられる)例では、析出物は、物品10全体で均質に形成されることができる。言い換えれば、析出物は、物品10の表面から物品10のバルク全体(すなわち、表面から10μmよりも大きい)に存在してもよい。物品10が局所的に(例えば、レーザを介して)熱的に加工される例では、析出物は、熱加工が十分な温度に達したところ(例えば、熱源に近接した物品10の表面およびバルク内)にのみ存在してもよい。物品10は、析出物を生成するために2回以上の熱処理を受けてもよいことが理解されるであろう。加えてまたはその代わりに、熱加工は、既に形成された(例えば、先行する熱加工の結果としての)析出物を除去および/または変質させるために利用してもよい。例えば、熱加工の結果、析出物の分解が起こり得る。
【0084】
様々な例によると、物品10は、黒色であってもよい。本開示において、「黒色」または「純黒」という用語は、可視スペクトル(すなわち、400nm~700nm)に対して少なくとも2OD/mmの吸光度を示すことができる材料を意味する。鉄および/またはマンガンを含むような、本開示のタングステンおよびモリブデンのブロンズは、強いUVおよびVIS吸収も示すことができる。理論に拘束されるものではないが、本開示のガラスセラミックスの例の吸光度の機構的起源は、鉄マンガン重石固溶体ファミリーからの様々な結晶種の固溶体の形成に起因して生じ得る。鉄マンガン重石は、純鉄の端成分である鉄重石(FeWO)と純マンガンの端成分であるマンガン重石(MnWO)との間の中間体である(Fe,Mn)WOの形態の鉄マンガンタングステン酸塩固溶体鉱物である。
【0085】
本開示の純黒の吸収性ガラスセラミックスにおける結晶子は、鉄+タングステン、鉄+モリブデン、鉄+タングステン+モリブデン(タングステン/モリブデン混合ガラスセラミックスの場合)、または前述の組み合わせのいずれかの酸化物+ガラス中に存在するかまたは結晶中にインターカレートする可能性のある以下のドーパントの少なくとも1つ:H、S、Cl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Ga、Se、Br、Zr、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、I、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ta、Os、Ir、Pt、Au、Tl、Pb、BiおよびUを含む。これらのガラスセラミックスのいくつかの実施形態では、少なくとも1つのドーパントは、ガラスセラミックス中に0モル%~0.5モル%で存在する。同様に、(例えば、光学フィルタ用途のための)カドミウムおよびセレン含有フィルタガラスに類似した吸光度プロファイルを引き起こす本開示のガラスセラミックス中の結晶子は、マンガン+タングステン、マンガン+モリブデン、マンガン+タングステン+モリブデン(タングステン/モリブデン混合ガラスセラミックスの場合)、または前述の組み合わせのいずれかの酸化物+ガラス中に存在するかまたは結晶中にインターカレートする可能性のある以下のドーパントの少なくとも1つ:H、S、Cl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Ga、Se、Br、Zr、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、I、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ta、Os、Ir、Pt、Au、Tl、Pb、BiおよびUを含む。これらのガラスセラミックスのいくつかの実施形態では、少なくとも1つのドーパントは、ガラスセラミックス中に0モル%~0.5モル%で存在する。さらに、これらのドーパントの量を使用して、例えば、ガラスセラミックスを採用する物品に対する意図された光学関連の用途に基づき必要に応じて、ガラスセラミックスの吸光度をさらに修正する(例えば、シャープなカットオフ波長を得る)ことができる。
【0086】
析出物を発生させ、黒色を生成し、かつ/または(例えば、シャープなカットオフ波長を用いる)光学関連の用途に適した吸光度プロファイルを生成するための物品10の熱加工は、単一のステップでまたは複数のステップを介して達成され得る。例えば、純黒の色または物品10が示す特定の吸光度プロファイルの生成(例えば、WOおよび/またはMoO析出物の形成に始まり、その結晶子の部分的な還元と同時にドーパント種の(例えば、アルカリ金属カチオンの結晶への)インターカレーションが続けて行われる)は、物品10が形成された直後に、または後の時点で、単一の熱処理で完了することができる。例えば、物品10はキャストされ、次いで最終形態(例えば、レンズブランクまたは他の光学的もしくは審美的な要素)に加工され、次いで色が生成される(例えば、アルカリ金属イオンの析出物へのインターカレーション)直下の温度でアニール処理されてもよい。このアニーリングにより、WOおよび/またはMoOのクラスター化を開始することができ、次いで高温での二次的な熱加工を行うことで、更なる結晶化と、WOおよび/またはMoO結晶の部分的な還元と、アルカリ金属イオンおよび/または他の種のインターカレーションによる色の生成とを可能にすることができる。アニーリングにより、鉄および/またはマンガンをドープしたタングステン酸塩、モリブデン酸塩、および/またはW+Mo混合「タングステン酸塩/モリブデン酸塩」の化学的形成も可能になり得る。
【0087】
析出物を生成し、かつ/またはドーパントを析出物中にインターカレートさせる物品10の熱加工は、様々な時間および温度の下で行われてもよい。物品10の熱加工は、特に断りのない限り、空気中で行われることが理解されるであろう。物品10が炉の中で熱的に加工される例では、物品10は、室温で炉の中に置かれた状態で制御された昇温を伴ってもよく、かつ/または既に高温になっている炉の中に「投入」されてもよい。熱加工は、400℃~1000℃の温度で行われてもよい。例えば、二次的な熱加工(例えば、ポストアニーリング)は、400℃、または425℃、または450℃、または475℃、または500℃、または505℃、または510℃、または515℃、または520℃、または525℃、または530℃、または535℃、または540℃、または545℃、または550℃、または555℃、または560℃、または565℃、または570℃、または575℃、または580℃、または585℃、または590℃、または595℃、または600℃、または605℃、または610℃、または615℃、または620℃、または625℃、または630℃、または635℃、または640℃、または645℃、または650℃、または655℃、または660℃、または665℃、または670℃、または675℃、または680℃、または685℃、または690℃、または695℃、または700℃の温度で行われる。好ましい実施形態では、二次的な熱加工は、475℃~600℃、または500℃~575℃で行われることができ、これは、純黒の色を達成し得る従来のガラスセラミックス組成物(例えば、Feおよび/またはMnドーパントを含むが、モリブデンまたはタングステンを含まない)で採用される熱加工よりもかなり低い温度である。二次的な熱加工に提供される温度の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることも理解されるであろう。
【0088】
二次的な熱加工(例えば、ポストアニーリング)は、1秒~24時間の時間にわたって行われてもよい。例えば、熱加工は、1秒、または30秒、または45秒、または1分、または2分、または5分、または10分、または15分、または20分、または25分、または30分、または35分、または40分、または45分、または50分、または55分、または60分、または65分、または70分、または75分、または80分、または85分、または90分、または95分、または100分、または105分、または110分、または115分、または120分、または125分、または130分、または135分、または140分、または145分、または150分、または155分、または160分、または165分、または170分、または175分、または180分、または185分、または190分、または195分、または200分、または205分、または210分、または215分、または220分、または225分、または230分、または235分、または240分、または245分、または250分、または255分、または300分、または350分、または400分、または450分、または500分の間行われてもよい。熱加工は、6時間以上、7時間以上、8時間以上、9時間以上、10時間以上、11時間以上、12時間以上、13時間以上、14時間以上、または15時間以上と、著しく長い時間行われてもよいことが理解されるであろう。好ましい実施形態では、二次的な熱加工は、15分~120分、または30分~105分で実施することができ、これは、純黒の色を達成し得る従来のガラスセラミックス組成物で採用される熱加工の期間よりもかなり短い期間である。二次的な熱加工に提供される期間の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることも理解されるであろう。
【0089】
いくつかの例では、物品10は、次いで0.1℃/分、または1℃/分、または2℃/分、または3℃/分、または4℃/分、または5℃/分、または6℃/分、または7℃/分、または8℃/分、または9℃/分、または10℃/分の速度で低温に冷却されてもよい。下限温度は、室温(例えば、23℃)~500℃であってもよい。例えば、低温は、23℃、50℃、75℃、100℃、125℃、150℃、175℃、200℃、225℃、250℃、275℃、300℃、325℃、350℃、375℃、400℃、425℃、450℃、470℃、または500℃であってもよい。物品10は、上述の時間、温度および冷却速度のうちの1つ以上を使用して多段階の熱加工を受けてもよいことが理解されるであろう。二次的な熱加工に提供される冷却速度および低温の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることも理解されるであろう。
【0090】
上記で説明したように、炉の使用に加えてまたはその代わりに、レーザおよび/または他の局所的な熱源の使用によって、物品10を熱的に加工してもよい。そのような例は、ガラスセラミックス内に局所的に暗いまたは明るい領域を生成するのに有利であり得る。レーザおよび/または局所的な熱源は、析出物を作り出し、かつ/または1つ以上のアルカリ金属イオンを析出物中にインターカレートさせて、局所的な色および/または吸光度の違いを生じさせるのに十分な熱エネルギーを供給することができる。レーザおよび/または他の熱源は、物品10全体で変化する光学特性を優先的に作り出すために、物品10全体に走査または誘導されてもよい。レーザおよび/または局所的な熱源の強度および/または速度は、物品10の様々な部分が異なるレベルの暗い陰影を示すように、物品10全体を移動する際に調節されてもよい。そのような特徴は、物品10に印、記号、文字、数字および/または画像を作成する際に有利であり得る。
【0091】
物品10は、電磁放射の特定の波長帯域に対する吸光度を示してもよい。吸光度は、1ミリメートル当たりの光学密度(OD/mm)で表されてもよい。当業者に理解されるように、光学密度は、物品10に入る光強度に対する物品10から出る光強度の比の対数である。吸光度データは、ISO15368による測定規則に準拠して、UV/VIS分光光度計を用いて収集してもよい。300nm~400nmの紫外線(UV)波長範囲に対して、物品10は、0.1OD/mm~20OD/mm、または1OD/mm~15OD/mm、または5OD/mm~15OD/mm、または7OD/mm~15OD/mmの平均吸光度を有していてもよい。例えば、物品10は、300nm~400nmの波長に対して、0.5OD/mm以上、または1.0OD/mm以上、または1.5OD/mm以上、または2.0OD/mm以上、または2.5OD/mm以上、または3.0OD/mm以上、または3.5OD/mm以上、または4.0OD/mm以上、または4.5OD/mm以上、または5.0OD/mm以上、または5.5OD/mm以上、または6.0OD/mm以上、または6.5OD/mm以上、または7.0OD/mm以上、または7.5OD/mm以上、または8.0OD/mm以上、または8.5OD/mm以上、または9.0OD/mm以上、または9.5OD/mm以上、または10.0OD/mm以上の平均吸光度を有していてもよい。上掲の300nm~400nmの平均吸光度値の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0092】
400nm~700nmの可視光線の波長範囲に対して、物品10は、0.1OD/mm~20OD/mm、または0.1OD/mm~15OD/mm、または0.1OD/mm~12OD/mm、または0.2OD/mm~12OD/mm、または0.2OD/mm~10OD/mm、または5OD/mm~10OD/mm、または7OD/mm~10OD/mmの平均吸光度を有していてもよい。例えば、物品10は、400nm~700nmの波長に対して、少なくとも0.1OD/mm、0.2OD/mm、0.3OD/mm、0.4OD/mm、0.5OD/mm、1OD/mm、1.5OD/mm、2OD/mm、2.5OD/mm、3OD/mm、3.5OD/mm、4OD/mm、4.5OD/mm、5OD/mm、5.5OD/mm、6OD/mm、7OD/mm、8OD/mm、9OD/mm、10OD/mm、11OD/mm、12OD/mm、15OD/mm、または20OD/mmの平均吸光度を有していてもよい。上掲の400nm~700nmの平均吸光度値の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0093】
700nm~1500nmの波長範囲に対して、物品10は、0.05OD/mm~10OD/mm、または0.05OD/mm~5OD/mm、または0.1OD/mm~5OD/mm、または0.1OD/mm~4OD/mm、または0.5OD/mm~4OD/mm、または1OD/mm~4OD/mmの平均吸光度を有していてもよい。例えば、700nm~1500nmの波長範囲に対して、物品10は、0.05OD/mm、0.1OD/mm、0.2OD/mm、0.3OD/mm、0.4OD/mm、0.6OD/mm、0.8OD/mm、1.0OD/mm、1.2OD/mm、1.4OD/mm、1.6OD/mm、1.8OD/mm、2.0OD/mm、2.2OD/mm、2.4OD/mm、2.6OD/mm、2.8OD/mm、3.0OD/mm、3.2OD/mm、3.4OD/mm、3.6OD/mm、3.8OD/mm、4.0OD/mm、5.0OD/mm、7.5OD/mm、または10OD/mmの吸光度を有していてもよい。上掲の700nm~1500nmの平均吸光度値の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0094】
700nm~2000nmの波長範囲に対して、物品10は、0.05OD/mm~10OD/mm、または0.05OD/mm~5OD/mm、または0.1OD/mm~5OD/mm、または0.1OD/mm~4OD/mm、または0.5OD/mm~3OD/mm、または1OD/mm~3OD/mmの平均吸光度を有していてもよい。例えば、700nm~2000nmの波長範囲に対して、物品10は、0.05OD/mm、0.1OD/mm、0.2OD/mm、0.3OD/mm、0.4OD/mm、0.6OD/mm、0.8OD/mm、1.0OD/mm、1.2OD/mm、1.4OD/mm、1.6OD/mm、1.8OD/mm、2.0OD/mm、2.2OD/mm、2.4OD/mm、2.6OD/mm、2.8OD/mm、3.0OD/mm、3.2OD/mm、3.4OD/mm、3.6OD/mm、3.8OD/mm、4.0OD/mm、5.0OD/mm、7.5OD/mm、または10OD/mmの吸光度を有していてもよい。上掲の700nm~2000nmの平均吸光度値の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0095】
物品10は、電磁放射線の異なる波長帯域に対して異なる透過率を示してもよい。透過率は、透過パーセントで表されてもよい。透過率データは、本開示で特に断りのない限り、ISO15368による測定規則に準拠して、0.5mmの厚さを有するサンプルでUV/VIS分光光度計を用いて収集してもよい。300nm~400nmのUV波長範囲に対して、物品10は、0%~50%、または0.01%~30%、または0.01%~0.91%の透過率を有していてもよい。例えば、物品10は、300nm~400nmの波長に対して、0.5%、または5%、または10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%の透過率を有していてもよい。上掲の透過率値の間の任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0096】
物品10は、400nm~700nmの可視光線の波長範囲に対して、0%~95%、または0%~88%、または0%~82%、または0%~70%、または0%~60%、または0%~50%、または0%~40%、または0%~30%、または0%~20%、または0%~10%、または5%~50%、または10%~70%の透過率を有していてもよい。1.9mmの厚さを有するいくつかの例では、物品10は、400nm~700nmの波長範囲内で、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも15%、または少なくとも20%の平均透過率を示す。上掲の透過率値の間またはその値を上回る任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0097】
物品10は、700nm~3000nmの赤外線(IR)または近赤外線(NIR)の波長範囲に対して、0%~95%、または0%~88%、または0%~82%、または0%~70%、または0%~60%、または0%~50%、または0%~40%、または0%~30%、または0%~20%、または0%~10%、または5%~50%、または10%~70%の透過率を有していてもよい。いくつかの例によると、物品10は、700nm~3000nmのIR/NIR波長範囲において、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の透過率を示してもよい。0.5mmの厚さを有するいくつかの例では、物品10は、700nm~3000nmの波長範囲内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の平均透過率を示す。上掲の700nm~3000nmの波長範囲における透過率値の間またはその値を上回る任意のおよびすべての値と範囲とが企図されていることが理解されるであろう。
【0098】
上に開示されているように、ガラスセラミックスは、いくつかの例示的な実施形態によると、約400nm~約700nmの範囲の少なくとも1つの50nm幅の光の波長帯域に対して、約5%/mm以上の透過率を有する。しかしながら、他の実施形態では、ガラスセラミックスは、より低い透過率、例えば不透明なものを有する。少なくともいくつかのそのような実施形態によると、ガラスセラミックスは、光を強く吸収するが散乱せず、低いヘイズを有する。そのような様々な実施形態によると、ガラスセラミックスは、300nm~400nmの波長を有する光の少なくとも一部(例えば、>90%)に対して少なくとも5OD/mmの平均吸光度を有するか、または同じ波長にわたる光に対して少なくとも7OD/mmの平均吸光度を有する。これらのガラスセラミックスは、10%未満のヘイズも示すことができる。様々な実施形態によると、本開示のガラスセラミックスは、400nm~700nmの波長を有する光の少なくとも一部(例えば、>90%)に対して少なくとも2OD/mmの平均吸光度を有するか、または同じ波長にわたる光に対して少なくとも5OD/mmの平均吸光度を有する。物品10は、これらの実施形態によると、10%未満のヘイズも示すことができる。そのような様々な実施形態によると、ガラスセラミックスはまた、700nm~1500nmの波長を有する光の少なくとも一部(例えば、>90%)および700nm~2000nmの波長を有する一部の光(例えば、>90%)に対して、それぞれ少なくとも0.1OD/mmの吸光度を示すか、または同じ波長にわたる一部の光に対して少なくとも1OD/mmの吸光度を示す。光学密度は、分光光度計を用いて行われる吸光度の測定から計算され、ヘイズは、ヘイズメータによる広角散乱試験によって測定されることも理解されるべきである。
【0099】
物品10はまた、1mmの厚さで、400nm~700nmの可視光線波長帯域に対して0.1%~25%の散乱を示してもよい。例えば、物品10は、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下の散乱を示してもよい。散乱データは、ISO13696(2002)Optics and Optical Instruments - Test methods for radiation scattered by optical componentsに準拠して収集される。
【0100】
本開示のいくつかの態様では、物品10は、320nm~525nm、320nm~800nm、または350nm~800nmの波長帯域において、シャープなカットオフ波長を示してもよい。
【0101】
様々な例によると、物品10は、低いヘイズを示してもよい。例えば、物品は、20%以下、または15%以下、または12%以下、または11%以下、または10.5%以下、または10%以下、または9.5%以下、または9%以下、または8.5%以下、または8%以下、または7.5%以下、または7%以下、または6.5%以下、または6%以下、または5.5%以下、または5%以下、または4.5%以下、または4%以下、または3.5%以下、または3%以下、または2.5%以下、または2%以下、または1.5%以下、または1%以下、または0.5%以下、または0.4%以下、または0.3%以下、または0.2%以下、または0.1%以下、またはそれらの間の任意のおよびすべての値と範囲とを示してもよい。物品のヘイズは、1mmの厚さのサンプルを用いて、ヘイズの測定に関連して上に概説した手順に従って測定される。様々な例によると、物品のヘイズは、従来のガラスセラミックス、例えば、黒色の色相を達成し得る従来のガラスセラミックスといったものよりも低くてもよい。さらに、物品のヘイズは、光を散乱させる傾向のある大きな結晶子(例えば、<100nm、または<60nm、または<40nm)の数量が少ないか、またはそのような大きな結晶子が存在しないことに起因する可能性がある。
【0102】
本開示の様々な例は、様々な特性および利点を提供することができる。特定の特性および利点は、特定の組成物に関連して開示されることがあるが、開示された様々な特性および利点は、他の組成物にも同様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0103】
第一に、物品10のガラスセラミックス組成物は、比較的低い厚さ(例えば、0.5mm~0.7mm)の純黒の材料として特徴づけることができ、これは化学的に強化された耐引っかき性シートへと形成することができる。そのようなシートは、ポータブルコンピューティングデバイスのハウジングおよびエンクロージャをはじめとする部品として使用するのに適している。
【0104】
第二に、物品10の純黒のガラスセラミックス組成物は、低温(例えば、500℃~575℃)および低期間(例えば、30分~105分)の熱処理サイクルで製造することができ、これは、従来のガラスセラミックス組成物で同等の黒色を生成するための熱処理ステップよりも、温度が著しく低く、期間が短い。したがって、本開示のガラスセラミックス組成物は、同様の特性を有する従来のガラスセラミックスよりも著しく低い製造コストで製造することができる。本開示のガラスセラミックス組成物の低温熱処理サイクルの別の利点は、これらの熱処理サイクルの前に行われた典型的なアニーリングサイクルに比較的近い温度であることである。つまり、本開示のガラスセラミックス組成物は、ガラスに結晶性析出物を発生させるために採用された熱処理サイクル中にシートが反ったり表面が変形したりするリスクを減らして熱処理することができる。さらに、物品10において使用するための本開示のガラスセラミックス組成物のいくつかは、溶融およびアニーリングの際に自発的に結晶化して、追加の熱処理ステップを必要とせずに純黒を形成するように調整することができる。
【0105】
第三に、物品10の組成物は、物品10のフュージョン成形または3次元(3D)成形プロセスが可能であるような十分に高い液相粘度を有することができる。イオン交換に関して、イオン交換は、選択された深さ30での圧縮応力を提供することができ、これにより、物品10の耐久性および/または耐引っかき性を高めることができる。さらに、本開示のガラスセラミックス組成物は、他の従来のガラスセラミックス組成物で採用されている3D成形プロセスに関連する色の変化またはヘイズに関連する問題の影響を受けにくい。注目すべきは、本開示のガラスセラミックスの実施形態は、再加熱(熱処理サイクルの後)の際に白化せず、その結果、本開示のガラスセラミックスは、3D成形プロセスで所望の形状に形成される際に、後処理を必要としない点である。
【0106】
第四に、本開示のFe含有ガラスセラミックス組成物は、溶融中の放射トラッピング(例えば、IRに影響された放射トラッピング)の傾向が低いと特徴づけることができる。放射トラッピングの影響を受けやすい材料では、粘度レベルが加工中に著しく変動し、特にシート状の材料のフュージョンドロー加工において、プロセスの不安定性につながる可能性がある。つまり、これらのガラスセラミックス組成物は、特に、酸化タングステンおよび/または酸化モリブデンを含まない他の従来のガラスセラミックス組成物と比較して、従来の溶融およびフュージョンドロー加工に特に適している。
【0107】
第五に、本開示のMn含有ガラスセラミックス組成物、および当該組成物を含む物品は、光学関連の用途で採用される従来のガラス、ガラスセラミックスおよびセラミックス材料に対する様々な利点、例えばCdSeガラスに対する利点といったものを提供する。前で述べたように、本開示のガラスセラミックス組成物の例は、CdおよびSeを実質的に含まず、一方で、橙色の従来のCdSe光学フィルタガラスに類似した、シャープな可視減衰を提供する。さらに、本開示のガラスセラミックス材料は、インジウム、ガリウムおよび/または他の高コストの金属および成分を採用する従来のCdSeガラスの代替品と比較して、より低コストの材料で配合されており、そのうちのいくつかはRCRAに基づき高度に規制されている。さらに、これらのガラスセラミックス材料は、他の従来のCdSeガラス代替品、例えば追加の半導体合成およびミリングステップを必要とするインジウムおよびガリウム含有半導体ドープガラスとは異なり、従来の溶融クエンチプロセスで製造することができる。
【0108】
第六に、Mn含有ガラスセラミックス材料は、熱処理温度および時間条件の選択によりカットオフ波長が調整可能であると特徴づけることができる。本開示のガラスセラミックス材料は、従来のCdSeガラスに代わる他の非カドミウム含有半導体ドープガラスと比較して、よりシャープな可視減衰も提供している。
【実施例
【0109】
以下の例は、本開示の物品の組成物の特定の非限定的な例を表す。
【0110】
実施例1
ここで第2表を参照すると、例示的な鉄およびマンガンをドープした酸化タングステンおよび酸化モリブデンガラスセラミックスの列挙が提供される。特に、例1-1~例1-8は、鉄をドープした酸化タングステンガラスセラミックス組成物であり、例1-9~例1-12は、鉄をドープした酸化モリブデンガラスセラミックス組成物であり、例1-13~例1-18は、マンガンをドープした酸化タングステンガラスセラミックス組成物であり、例1-19および例1-20は、マンガンをドープした酸化モリブデンガラスセラミックス組成物であり、これらはすべて本開示の物品(例えば、物品10)における使用に適している。鉄をドープした組成物のうち、例1-1~例1-5、例1-9および例1-10はフッ素を含み、例1-6~例1-8、例1-11および例1-12はフッ素を含まない。マンガンをドープした組成物のうち、例1-13~例1-15および例1-19はフッ素を含み、例1-16~例1-18および例1-20はフッ素を含まない。鉄をドープした組成物のうち、例6-8、例11および例12はリンを含む。マンガンをドープした組成物のうち、例16-18、および例20もリンを含む。さらに、これらの例示的な組成物はすべて、バッチ状態のモル%で提供される。
【0111】
【表2-1】
【0112】
【表2-2】
【0113】
この実施例では、第2表の組成物は、バッチ成分を秤量し、これらをターブラまたはボールミルで混合し、Ptるつぼにおいて1350℃~1650℃の温度で6~24時間溶融することによって調製した(本開示の組成物には、シリカ、耐火物またはPt/Rhるつぼも採用できる)。いくつかの例では、溶融物の均質性を向上させるために二重溶融法を採用した。二重溶融では、溶融したガラスを水に注入し、これによりガラスを急速に冷却することで、特定の組成物の小さな破砕された顆粒を形成させることを伴っていた。次いで、顆粒をるつぼに再装入し、再び溶融させた。あるいはこれらの組成物を機械的に撹拌して均質性を向上させることでも同様の効果が得られた。次いで、ガラスを金属製のテーブルにキャストして、ガラスの「光学注入材料(optical pour)」または「パティ(patty)」を製造した。一部の溶融物は、スチール製のテーブルにキャストし、次いでスチール製のローラを使ってシート状に圧延した。次いで、ガラスを400℃~550℃の間の温度で30分~150分の間のアニール時間でアニール処理した。
【0114】
第2表に列挙されている本実施例のキャストされたままの組成物のサンプルのいくつかは、追加の二次的な熱処理を必要とせずに、前述の溶融ステップおよびアニーリングステップの際に純黒またはシャープなカットオフ波長特性を引き起こす結晶相を発生させた。残りの組成物は、周囲空気の電気オーブンにおいて500℃~575℃の範囲の温度で30分~240分の間、二次的な熱処理ステップに供した。
【0115】
実施例2
本実施例では、フッ素含有の鉄をドープした酸化タングステンガラスセラミックスを、第2表で上に概説したように、例1-2に従って溶融し、アニール処理した。図2に示すように、得られたガラスセラミックス材料の写真(すなわち、アニール処理された光学注入材料として)は、周囲の照明の下で純黒の特性を有することを示しており、これは追加の熱処理を一切行わなくても明らかである。
【0116】
実施例3
溶融およびアニーリングの後、実施例2の材料を525℃で105分間の熱処理に供し、1℃/分で475℃まで冷却し、次いで周囲空気の電気オーブンにおいて炉速で室温まで冷却した。図3Aおよび図3Bにそれぞれ示すように、得られた材料の吸光度および透過率を測定した。特に、図3Aおよび図3Bは、0.5mmの経路長における波長(200nm~3200nm)の関数としての吸光度(OD/mm)および透過率(%)をそれぞれプロットしたものである。さらに、図3Aの吸光度データを評価して、本実施例の材料の特定の波長範囲(例えば、UV、VIS、およびIR/NIR領域)での平均、最小および最大の吸光度値を求め、以下の第3表にまとめた。
【0117】
なお、従来の厚さ(例えば、0.2~0.7mm)では、サンプルの吸光度が非常に強く、サンプルは光を殆ど透過させなかったことから、検出器の限界値を下回る場合があった。したがって、第4表(および本開示の後続の表)の特定の平均値および最小値については、OD/mmの単位で、サンプルが少なくとも指定された値を吸収することを示す指定された値よりも大きい吸光度(例えば、>5)として報告している。
【0118】
【表3】
【0119】
実施例4
本実施例では、フッ素を含まない、鉄をドープした酸化タングステンガラスセラミックスを、第2表で上に概説したように、例1-7に従って溶融し、アニール処理した。溶融およびアニーリングの後、本実施例の材料を、550℃で240分間の熱処理に供し、1℃/分で475℃まで冷却し、次いで、周囲空気の電気オーブンにおいて炉速で室温まで冷却した。図4Aおよび図4Bにそれぞれ示すように、得られた材料の吸光度および透過率を測定した。特に、図4Aおよび図4Bは、0.5mmの経路長における波長の関数としての吸光度(OD/mm)および透過率(%)をそれぞれプロットしたものである。さらに、図4Aの吸光度データを評価して、本実施例の材料の特定の波長範囲(例えば、UV、VIS、およびIR/NIR領域)での平均、最小および最大の吸光度値を求め、以下の第4表にまとめた。
【0120】
【表4】
【0121】
実施例5
本実施例では、フッ素をドープし、鉄をドープした酸化モリブデンガラスセラミックスを、第2表で上に概説したように、例1-10に従って溶融し、アニール処理した。溶融およびアニーリングの後、本実施例の材料を、550℃で240分間の熱処理に供し、1℃/分で475℃まで冷却し、次いで、周囲空気の電気オーブンにおいて炉速で室温まで冷却した。図5Aおよび図5Bにそれぞれ示すように、得られた材料の吸光度および透過率を測定した。特に、図5Aおよび図5Bは、0.5mmの経路長における波長の関数としての吸光度(OD/mm)および透過率(%)をそれぞれプロットしたものである。さらに、図5Aの吸光度データを評価して、本実施例の材料の特定の波長範囲(例えば、UV、VIS、およびIR/NIR領域)での平均、最小および最大の吸光度値を求め、以下の第5表にまとめた。
【0122】
【表5】
【0123】
実施例6
本実施例では、実施例3~実施例5(例1-2、例1-7および例1-10)のガラスセラミックスを、酸化鉄および酸化チタンはドープしているが、酸化タングステンおよび酸化モリブデンは含まない比較用のガラスセラミックス組成物(比較例1)と比較する。比較例1は、以下の組成(バッチ状態のモル%)を有する:63.82%のSiO;13.89%のAl;5.10%のB;13.76%のNaO;0.014%のKO;1.74%のMgO;0.032%のCaO;0.060%のSnO;0.029%のZrO;0.076%のTiO;0.564%のFe;および0.005%のMnO。特に、図6Aおよび図6Bは、これらの材料について、0.5mmの経路長における波長(200nm~3200nm)の関数としての吸光度(OD/mm)および透過率(%)をそれぞれプロットしたものである。さらに、図6Cは、これらの同じ材料について、0.5mmの経路長における可視スペクトルの波長(400nm~800nm)の関数としての透過率(%)をプロットしたものである。これらの図のデータから明らかなように、これらのサンプルは、測定のUV、VISおよびNIRスペクトルにわたって同等の吸光度および透過率の特性を示している。しかしながら、熱処理に関しては、実施例3~実施例5のサンプルは、それぞれ525℃で105分間、550℃で240分間および550℃で240分間の熱処理を行った。一方、比較用のガラスセラミックスは、630℃で2時間熱処理し、続けて750℃にさらに昇温して4時間保持する必要があった。つまり、実施例3~実施例5のサンプルでは、比較用のガラスセラミックスよりも80℃~200℃低い温度で、必要とされる熱処理時間が1.5分の1~3.4分の1に短くなった。
【0124】
再び図6Bを参照すると、経路長0.5mmのサンプルの平均透過率(%)データが、UV(200nm~400nm)、VIS(400nm~700nm)ならびにNIR(700nm~1500nm;および700nm~2500nm)の波長領域に対する本実施例の4つのサンプルについて、以下の第6表にまとめられている。第6表のデータから明らかなように、これらのサンプルは、測定のUV、VISおよびNIRスペクトルにわたって同等の透過率特性を示している。
【0125】
【表6】
【0126】
実施例7
本実施例では、マンガンをドープした酸化タングステンガラスセラミックス組成物を、第2表で上に概説したように、例1-13、例1-14および例1-15に従って溶融し、アニール処理した。溶融およびアニーリングの後、本実施例の材料を、550℃で240分間の熱処理に供し、1℃/分で475℃まで冷却し、次いで、周囲空気の電気オーブンにおいて炉速で室温まで冷却した。これらのガラスセラミックスのサンプルを、従来のCdSeガラス(比較例2)と比較した。図7に示すように、本実施例のサンプルの吸光度を測定した。特に、図7は、0.5mmの経路長における波長の関数としての吸光度(OD/mm)をプロットしたものである。さらに、図7の吸光度データを評価して、本実施例の材料(例1-13、例1-14および例1-15)の特定の波長範囲(例えば、UV、VISおよびIR/NIR領域)での平均、最小および最大の吸光度値を求め、以下の第7A表~第7C表にまとめた。図7および第7A表~第7C表のデータから明らかなように、本実施例のガラスセラミックス組成物は、それらの色がマンガンのタングステン酸塩(MnWO)を由来としており、RCRA規制の比較用CdSeガラスと同等の色および吸光度特性を示している。
【0127】
【表7A】
【0128】
【表7B】
【0129】
【表7C】
【0130】
実施例8
本実施例では、フッ素を含まない、マンガンをドープした酸化タングステンガラスセラミックス組成物を、第2表で上に概説したように、例1-17および例1-18に従って溶融し、アニール処理した。溶融およびアニーリングの後、本実施例の材料を、550℃で240分間の熱処理に供し、1℃/分で475℃まで冷却し、次いで、周囲空気の電気オーブンにおいて炉速で室温まで冷却した。図8Aおよび図8Bに示すように、本実施例のサンプルの吸光度および透過率を測定した。特に、図8Aおよび図8Bは、0.5mmの経路長における波長の関数としての吸光度(OD/mm)および透過率(%)をプロットしたものである。さらに、図8Aの吸光度データを評価して、本実施例の材料(例1-17および例1-18)の特定の波長範囲(例えば、UV、VISおよびIR/NIR領域)での平均、最小および最大の吸光度値を求め、以下の第8A表および第8B表にまとめた。図8Aおよび図8B、ならびに第8A表および第8B表のデータから明らかなように、本実施例のガラスセラミックス組成物は、中程度ないし低い可視透過率およびIR吸光度を示すことから、眼科用アイウェアによく適している。それらの吸光度は、マンガン-タングステン酸塩-固溶体相(すなわち、マンガン重石)の形成に起因している。
【0131】
【表8A】
【0132】
【表8B】
【0133】
実施例9
本実施例では、鉄をドープした酸化タングステンガラスセラミックスのサンプルを、第2表に従って調製し(例1-1~例1-5)、図9A図9Gに示されているように、粉末X線回折(XRD)分析に供した。いくつかのサンプルは、後続の熱処理を行わずにアニール処理された状態で維持した:図9Aおよび図9Bに示すように、例1-1および例1-2。残りのサンプルは、後続の熱処理に供した:図9Cに示すように、525℃で105分間熱処理した例1-2;図9Dに示すように、550℃で105分間熱処理した例1-2;図9Eに示すように、550℃で60分間熱処理した例1-3;図9Fに示すように、550℃で60分間熱処理した例1-4;および図9Gに示すように、550℃で60分間熱処理した例1-5。例1-2~例1-5の各サンプルを、周囲空気中で冷却し、続けて所定の温度で熱処理を行った(例えば、例1-5では、550℃で60分間熱処理し、続けて周囲空気中で冷却を行った)。図から明らかなように、本実施例のガラスセラミックス組成物はすべて、マグネシウムのタングステン酸塩(MgWO)を主結晶相とするXRDシグネチャを示した。これらの組成物には微量のMgしか含まれておらず、マグネシウムのタングステン酸塩と鉄のタングステン酸塩との面間隔(d-spacing)は非常に似ているため、図9A図9Gの各XRDプロットは、鉄のタングステン酸塩、FeWO(すなわち、鉄重石)の存在を示していると考えられる。
【0134】
実施例10
本実施例では、マンガンをドープした酸化タングステンガラスセラミックスのサンプルを、第2表に従って調製し(例1-13~例1-15)、図10A図10Cに示されているように、粉末X線回折(XRD)分析に供した。すべてのサンプルを、後続の熱処理に供した:図10Aに示すように、550℃で60分間熱処理し、続けて周囲空気中で冷却した例1-13;図10Bに示すように、550℃で60分間熱処理し、続けて周囲空気中で冷却した例1-14;および図10Cに示すように、550℃で60分間熱処理し、続けて周囲空気中で冷却した例1-15。図から明らかなように、本実施例のガラスセラミックス組成物はすべて、マンガンのタングステン酸塩、MnWO(すなわち、マンガン重石)のXRDシグネチャを示した。
【0135】
実施例11
本実施例では、鉄およびマンガンをドープした酸化モリブデンガラスセラミックスのサンプルを、第2表に従って調製し(例1-9、例1-10および例1-19)、図11A図11Cに示されているように、粉末X線回折(XRD)分析に供した。すべてのサンプルを、後続の熱処理に供した:図11Aに示すように、550℃で60分間熱処理し、続けて周囲空気中で冷却した例1-9;図11Bに示すように、550℃で60分間熱処理し、続けて周囲空気中で冷却した例1-10;および図11Cに示すように、550℃で60分間熱処理し、続けて周囲空気中で冷却した例1-19。これらの図のXRDデータを評価しても、これらのサンプルに主結晶相が存在することはまだ明らかになっていない。
【0136】
例示的な実施形態に示されているように、本開示の要素の構造および配置は、単なる例示に過ぎないことに留意することも重要である。本開示では、本技術革新のいくつかの実施形態のみを詳細に説明したが、本開示を検討する当業者であれば、記載されている主題の新規の教示および利点から実質的に逸脱することなく、多くの変更が可能であること(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状および比率、パラメータの値、取り付け配置、材料の使用、色、配向などのバリエーション)を容易に理解するであろう。例えば、一体的に形成されたものとして示されている要素が複数の部品で構成されていてもよいし、複数の部品として示されている要素が一体的に形成されていてもよいし、インタフェースの動作を逆にしたり、その他の方法で変えたりしてもよく、構造体、および/または部材、またはコネクタ、または他のシステムの要素の長さもしくは幅を変えたりしてもよいし、要素間に設けられた調節位置の性質または数を変えたりしてもよい。本システムの要素および/またはアセンブリは、十分な強度もしくは耐久性を提供する多種多様な材料のいずれかから、多種多様な色、質感、および組み合わせで構成されていてもよいことに留意すべきである。したがって、そのような変更はすべて、本技術革新の範囲に含まれることが意図されている。本技術革新の趣旨から逸脱することなく、所望のおよび他の例示的な実施形態の設計、動作条件、および配置について、他の置換、修正、変更、および省略を行うことができる。
【0137】
記載されているプロセス、または記載されているプロセス内のステップのいずれも、他の開示されているプロセスまたはステップと組み合わせて、本開示の範囲内の構造を形成し得ることが理解されるであろう。本明細書で開示されている例示的な構造およびプロセスは、説明のためのものであり、限定的に解釈されるべきではない。
【0138】
また、本開示の概念から逸脱することなく、前述の構造および方法に変更および修正が加えられ得ることを理解すべきであり、さらに、そのような概念は、以下の特許請求の範囲によってカバーされることを意図していると理解すべきであるが、ただし、これらの特許請求の範囲が、その文言によって別段の定めをしている場合を除く。さらに、以下に示す特許請求の範囲は、この詳細な説明に組み込まれ、その一部を構成している。
【0139】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0140】
実施形態1
物品であって、
40モル%~80モル%のSiOと、
3モル%~20モル%のAlと、
3モル%~50モル%のBと、
1モル%~18モル%のWO+MoOと、
0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、
0モル%~15モル%のROと
を含み、ここで、
Oは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上であり、
O-Alは、-12モル%~+4モル%の範囲である、物品。
【0141】
実施形態2
1モル%~10モル%のFをさらに含む、実施形態1記載の物品。
【0142】
実施形態3
WOが2モル%~15モル%である、実施形態1または2記載の物品。
【0143】
実施形態4
MoOが2モル%~15モル%である、実施形態1から3までのいずれか1つ記載の物品。
【0144】
実施形態5
0.01モル%~1モル%のSnOをさらに含む、実施形態1から4までのいずれか1つ記載の物品。
【0145】
実施形態6
0.1モル%~2モル%のROをさらに含み、ここで、
ROは、MgO、CaO、SrO、ZnOおよびBaOのうちの1つ以上である、実施形態1から5までのいずれか1つ記載の物品。
【0146】
実施形態7
前記物品が、300nm~400nmの紫外線(UV)波長帯域で少なくとも5OD/mmの平均吸光度を示し、400nm~700nmの可視光線波長帯域で少なくとも2OD/mmの平均吸光度を示す、実施形態1から6までのいずれか1つ記載の物品。
【0147】
実施形態8
前記物品が、700nm~3000nmでの少なくとも50%の光透過率と、320nm~525nmのシャープなカットオフ波長とを含む、実施形態1から6までのいずれか1つ記載の物品。
【0148】
実施形態9
前記物品が、1mmの厚さで10%以下のヘイズを示す、実施形態1から8までのいずれか1つ記載の物品。
【0149】
実施形態10
物品であって、
50モル%~70モル%のSiOと、
8モル%~15モル%のAlと、
3モル%~25モル%のBと、
2モル%~8モル%のWO+MoOと、
0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、
5モル%~15モル%のROと
を含み、ここで、
Oは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上であり、
O-Alは、-7モル%~+4モル%の範囲である、物品。
【0150】
実施形態11
4モル%~8モル%のFをさらに含む、実施形態10記載の物品。
【0151】
実施形態12
WOが3モル%~7モル%である、実施形態10または11記載の物品。
【0152】
実施形態13
MoOが2モル%~5モル%である、実施形態10から12までのいずれか1つ記載の物品。
【0153】
実施形態14
0.1モル%~0.5モル%のSnOをさらに含む、実施形態10から13までのいずれか1つ記載の物品。
【0154】
実施形態15
0.1モル%~2モル%のROをさらに含み、ここで、
ROは、MgO、CaO、SrO、ZnOおよびBaOのうちの1つ以上である、実施形態10から14までのいずれか1つ記載の物品。
【0155】
実施形態16
前記物品が、300nm~400nmの紫外線(UV)波長帯域で少なくとも7OD/mmの平均吸光度を示し、400nm~700nmの可視光線波長帯域で少なくとも5OD/mmの平均吸光度を示す、実施形態10から15までのいずれか1つ記載の物品。
【0156】
実施形態17
前記物品が、700nm~3000nmでの少なくとも50%の光透過率と、320nm~525nmのシャープなカットオフ波長とを含む、実施形態10から15までのいずれか1つ記載の物品。
【0157】
実施形態18
前記物品が、1mmの厚さで5%以下のヘイズを示す、実施形態10から17までのいずれか1つ記載の物品。
【0158】
実施形態19
物品であって、
40モル%~80モル%のSiOと、
3モル%~20モル%のAlと、
3モル%~50モル%のBと、
1モル%~18モル%のWO+MoOと、
0.1モル%~2モル%のFe+MnOと、
0モル%~15モル%のROと、
少なくとも1つの非晶質相および1つの結晶相と
を含み、ここで、
Oは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOのうちの1つ以上であり、
O-Alは、-12モル%~+4モル%の範囲であり、
さらに、前記結晶相は、ガラス相内に均一に分布した複数の結晶性析出物を含み、前記複数の結晶性析出物は、化学形態MWOおよびMMoOのうちの少なくとも一方の酸化物を含み、Mは、Fe2+またはMn2+である、物品。
【0159】
実施形態20
H、S、Cl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Ga、Se、Br、Zr、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、I、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ta、Os、Ir、Pt、Au、Ti、Pb、BiおよびUからなる群から選択される1つ以上のドーパントをさらに含み、ここで、
前記1つ以上のドーパントは、0.0001モル%~0.5モル%の範囲で存在する、実施形態19記載の物品。
【0160】
実施形態21
前記物品が、300nm~400nmの紫外線(UV)波長帯域で少なくとも5OD/mmの平均吸光度を示し、400nm~700nmの可視光線波長帯域で少なくとも2OD/mmの平均吸光度を示す、実施形態19または20記載の物品。
【0161】
実施形態22
前記物品が、700nm~3000nmでの少なくとも50%の光透過率と、320nm~525nmのシャープなカットオフ波長とを含む、実施形態19または20記載の物品。
【0162】
実施形態23
前記複数の結晶性析出物が、電子顕微鏡で測定された1nm~500nmの最長の長さ寸法を含む、実施形態19から22までのいずれか1つ記載の物品。
【0163】
実施形態24
ガラスセラミックスであって、
シリカ、アルミニウム、ホウ素および酸素を含む非晶質相と、
複数の結晶性析出物を含む結晶相と
を含み、前記複数の結晶性析出物は、前記非晶質相内に均一に分布しており、前記結晶性析出物は、化学形態MWOおよびMMoOのうちの少なくとも一方の酸化物を含み、Mは、Fe2+またはMn2+である、ガラスセラミックス。
【0164】
実施形態25
H、S、Cl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Ga、Se、Br、Zr、Nb、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sb、Te、I、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ta、Os、Ir、Pt、Au、Ti、Pb、BiおよびUからなる群から選択される1つ以上のドーパントをさらに含み、ここで、
前記1つ以上のドーパントは、0.0001モル%~0.5モル%の範囲で存在する、実施形態24記載のガラスセラミックス。
【0165】
実施形態26
前記ガラスセラミックスが、300nm~400nmの紫外線(UV)波長帯域で少なくとも5OD/mmの平均吸光度を示し、400nm~700nmの可視光線波長帯域で少なくとも2OD/mmの平均吸光度を示す、実施形態24または25記載のガラスセラミックス。
【0166】
実施形態27
前記ガラスセラミックスが、700nm~3000nmでの少なくとも50%の光透過率と、320nm~525nmのシャープなカットオフ波長とを含む、実施形態24または25記載のガラスセラミックス。
【0167】
実施形態28
前記複数の結晶性析出物が、電子顕微鏡で測定された1nm~500nmの長さ寸法を有する、実施形態24から27までのいずれか1つ記載の物品。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C