(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】折畳式スキー
(51)【国際特許分類】
A63C 5/02 20060101AFI20240613BHJP
A63C 9/08 20120101ALI20240613BHJP
【FI】
A63C5/02 B
A63C9/08 Z
A63C5/02 A
(21)【出願番号】P 2021575011
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 IB2020054959
(87)【国際公開番号】W WO2020254893
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-02-20
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SI
(73)【特許権者】
【識別番号】521548560
【氏名又は名称】エラン ディー.オー.オー.
【氏名又は名称原語表記】ELAN, D.O.O.
【住所又は居所原語表記】Begunje na Gorenjskem 1, 4275 Begunje na Gorenjskem SLOVENIA
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】オウグスティン,ヴィンコ
(72)【発明者】
【氏名】フロヴァト,アンドレイ
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506936(JP,A)
【文献】特開2000-126353(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02856898(EP,A1)
【文献】国際公開第2019/092513(WO,A1)
【文献】特開平04-026426(JP,A)
【文献】特開2000-051430(JP,A)
【文献】米国特許第04645228(US,A)
【文献】国際公開第2011/064598(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/189472(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/097929(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折畳式スキー(1)であって、
・僅かに上方に曲げられた先端部を有する前端部及び後端部を有する前側スキー部分(2)と、
・前端部及び僅かに上方に曲げられた尾部を有する後端部を有する後側スキー部分(3)と、
・
前記前側スキー部分の後端部を、
前記後側スキー部分の前端部に分離不能に連結する間
節式連結部(4)と、
・スキーが機能状態にある時にスキーの
前記関節式連結部を補強する連結プレート(5)と
を備え、
前記連結プレート(5)が、
・
前記前側スキー部分の後端部に固定される前側ベースプレート(6)と、
・
前記後側スキー部分の前端部に固定される後側ベースプレート(7)と、
・前記前側ベースプレート(6)又は
前記後側ベースプレート(7)にヒンジ結合され、スキー上面に直交する方向に延びるピボット軸線(a)を中心に枢動するブリッジプレート(8)と
を有し、
前記ブリッジプレートが、スキーが機能状態にある時に、
前記ブリッジプレートの横方向中心軸線が、ほぼ
前記関節式連結部の領域にあるように配置され、
円弧状の複数のリブ(9)及び/又は溝が、
前記前側ベースプレート(6)及び
前記後側ベースプレート(7)の上面に形成され、
前記リブ(9)及び/又は溝と対となる複数の溝(10)及び/又はリブが
前記ブリッジプレート(8)の底面に形成され、
各対のリブ(9)及び溝(10)が、スキーの長手方向の剪断力を伝達するポジティブロック連結を形成し、
リブの少なくとも一部に、スキーの長手方向に突出する少なくとも一つのフラップ(11)が形成され、
対応する溝に前記フラップ(11)を受けるノッチ(16)が形成され、長手方向剪断力及び圧縮力に加えて、垂直方向の力を伝達するポジティブロック連結を形成するようにした
ことを特徴とする折畳式スキー。
【請求項2】
前記ピボット軸線(a)に近い溝(10)の側部の円弧は、
前記ピボット軸線(a)からのびる半径又は、それより僅かに小さい半径で形成され、対応するリブ(9)の側部の円弧は、
前記ピボット軸線(a)からのびる半径又はそれより僅かに大きい半径で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の折畳式スキー。
【請求項3】
前記ピボット軸線(a)から離れたリブ(9)の側部の円弧は、
前記ピボット軸線(a)からのびる半径又はそれより僅かに小さい半径で形成され、対応する溝(10)の側部の円弧は、
前記ピボット軸線(a)からのびる半径又はそれより僅かに大きい半径で形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の折畳式スキー。
【請求項4】
各対のリブ及び/又は溝の側部の円弧の半径は、スキーの中心長手方向軸線の領域において、係合するリブ及び溝の隣接する側部間の距離が約0.2mmになり、かつ、スキーの縁部において、係合するリブ及び溝の隣接する側部間の距離が約0.8mmになるように選択される
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の折畳式スキー。
【請求項5】
折畳式スキーが、スキーが機能位置にある時に
前記ブリッジプレート(8)をロックするロック機構(12)をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の折畳式スキー。
【請求項6】
前記ブリッジプレート(8)がアルミニウム製である
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の折畳式スキー。
【請求項7】
前記ブリッジプレート(8)が、繊維、特に、カーボン繊維又はガラス繊維によって強化された射出成形プラスチックで形成される
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の折畳式スキー。
【請求項8】
前記ブリッジプレート(8)が、繊維、特に、カーボン繊維又はガラス繊維から成る層によって補強されている
ことを特徴とする請求項7に記載の折畳式スキー。
【請求項9】
前記ブリッジプレート(8)が、
前記ブリッジプレート(8)の芯部を、カー
ボン繊維強化ポリアミドのような優れた機械的特性を有するプラスチックの射出成形で形成すると共に、前記芯部を、ガラス繊維強化ポリアミドのような機械的特性の劣るプラスチックの射出成形によって覆う、二成分射出成形工程によって、二つの異なるプラスチック材料で形成される
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の折畳式スキー。
【請求項10】
前記ベースプレート(6,7)が、ネジ13によってスキーに固定されるか、又は、接着剤やリベットによってスキーに固定取り付けられる
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の折畳式スキー。
【請求項11】
前記ベースプレート(6,7)における、
前記関節式連結部(4)と面する端部に、
前記関節式連結部(4)のそれぞれの部分
(2、3、6、7)に係合する
4つの歯部(15)を備えたプロファイル(14)を設けた
ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の折畳式スキー。
【請求項12】
前記プロファイル(14)がアルミニウムで形成される
ことを特徴とする請求項11に記載の折畳式スキー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用又は軍事活動用の折畳式スキーに関する。
【背景技術】
【0002】
折畳式スキーは従来から公知である。折畳式スキーは組み立てられると、通常のスキーとして機能し、その利点は、折り畳むことが可能であり、かつ、携帯、運搬及び保管が便利であることにある。折畳式スキーは、スロベニア特許第25117号に開示されている。このスキーは、先端部を備えた前端部及び後端部を有する前側スキー部分と、前端部及び尾部を備えた後端部を有する後側スキー部分とを備え、関節式連結部を用いて、前記前側スキー部分の後端部が、前記後側スキー部分の前端部に分離不能に連結されている。前記関節式連結部は、前側スキー部分及び後側スキー部分に形成された溝に係合する連結プレートによって補強されている。
【0003】
前記関節式連結部は、曲げモーメントが最大になる領域に配置されている。連結プレートの目的は、スキーの伸長位置で連結部をロックすること、前側スキー部分と後側スキー部分とを連結すること、通常のスキー、即ち、折畳式でないスキーが発揮するスキーの必要な曲げ剛性及び他の機械的特性を提供することにある。
【0004】
連結プレートは、様々なサイズのスキーブーツに対応できるように、通常のアルペンスキービンディングを装着することができるように形成されなければならない。アルペンスキービンディングは、アルペンスキービンディングの前側部分が、連結プレートに固定され、アルペンスキービンディングの後側部分が、連結プレートにスライド式に取り付けられるように連結プレートに取り付けられる。これにより、スキーブーツのソール部分でもスキーを自由に曲げることができるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
技術的課題は、通常のスキーとして機能する折畳式スキー構造を構成すること、即ち、折畳式スキーを組み立てた時の構造体が均一な支持体として機能するように構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、前、後、上、下等の相対的な表現は、スキーがその機能的な状態にある時にスキー使用者の視点から定義されるものである。
【0007】
前記技術的課題は、以下の構成を有する折畳式スキーによって解決される。
該折畳式スキーは、
・僅かに上方に曲げられた先端部を有する前端部及び後端部を有する前側スキー部分と、
・前端部及び僅かに上方に曲げられた尾部を有する後端部を有する後側スキー部分と、
・前側スキー部分の後端部を、後側スキー部分の前端部に分離不能に連結する間接式連結部と、
・スキーが機能状態にある時にスキーの関節式連結部を補強する連結プレートと
を備え、
前記連結プレートが、
・前側スキー部分の後端部に固定される前側ベースプレートと、
・後側スキー部分の前端部に固定される後側ベースプレートと、
・前記前側ベースプレート又は後側ベースプレートにヒンジ結合され、スキー上面に直交する方向に延びるピボット軸線を中心に枢動するブリッジプレー8と
を有し、
前記ブリッジプレートが、スキーが機能状態にある時に、ブリッジプレートの横方向中心軸線が、ほぼ関節式連結部の領域にあるように配置され、
円弧状の複数のリブ及び/又は溝が、前側ベースプレート及び後側ベースプレートの上面に形成され、
複数の溝及び/又はリブがブリッジプレートの底面に形成され、
各対のリブ及び溝が、スキーの長手方向の剪断力を伝達するポジティブロック連結を形成し、
リブの少なくとも一部に、スキーの長手方向に突出する少なくとも一つのフラップが形成され、
対応する溝に前記フラップを受けるノッチが形成され、長手方向剪断力及び圧縮力に加えて、垂直方向の力を伝達するポジティブロック連結を形成するようにした
ことを特徴とする。
【0008】
リブの垂直部分が長手方向の力を伝達し、フラップが垂直方向の力を伝達する。
【0009】
公知の折畳式スキーに対する本発明に係る折畳式スキーの利点は、連結プレートが、そのベースプレートとブリッジプレートとの間の垂直方向及び長手方向の動きを許容しないことにある。長手方向の動きを伴わないブリッジプレートとベースプレートとの間の力の効率的な伝達は、関節式連結部の領域においてスキーを強化し、スキーを均一な支持体として作用させ、良好な曲げ剛性を提供する。さらなる利点は、溝及びリブを有するプレートが、公知の折り畳み式スキーのようにスキーに直接取り付けられず、溝及びリブがベースプレートに形成されているため、スキーの製造時に取り付けエラーが発生する可能性を低減することにある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】連結プレート及びビンディングを備えた機能状態にある折畳式スキーを示している。
【
図2】折畳式スキーに固定された前側ベースプレート及び後側ベースプレートを示している。
【
図3】連結プレートを備えた折畳式スキーの側面図である。
【
図4】連結プレートを備えた折畳式スキーであり、ベースプレートに対してブリッジプレートが枢動された状態を示している。
【
図6】関節連結具の領域に連結プレートが設けられたスキーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明していく。技術的課題は、以下の構成を有する折畳式スキーによって解決される。
前記折畳式スキーは、
・僅かに上方に曲げられた先端部を有する前端部及び後端部を有する前側スキー部分2と、
・前端部及び僅かに上方に曲げられた尾部を有する後端部を有する後側スキー部分3と、
・前側スキー部分の後端部を、後側スキー部分の前端部に分離不能に連結する間接式連結部4と、
・スキーが機能状態にある時にスキーの関節式連結部を補強する連結プレート5と
を備え、
前記連結プレート5が、
・前側スキー部分の後端部に固定される前側ベースプレート6と、
・後側スキー部分の前端部に固定される後側ベースプレート7と、
・前記前側ベースプレート6又は後側ベースプレート7にヒンジ結合され、スキー上面に直交する方向に延びるピボット軸線aを中心に枢動するブリッジプレート8と
を有し、
前記ブリッジプレートが、スキーが機能状態にある時に、ブリッジプレートの横方向中心軸線が、ほぼ関節式連結部の領域にあるように配置され、
円弧状の複数のリブ9及び/又は溝が、前側ベースプレート6及び後側ベースプレート7の上面に形成され、
複数の溝10及び/又はリブがブリッジプレート8の底面に形成され、
各対のリブ9及び溝10が、スキーの長手方向の剪断力を伝達するポジティブロック連結を形成し、
リブの少なくとも一部に、スキーの長手方向に突出する少なくとも一つのフラップ11が形成され、
対応する溝に前記フラップ11を受けるノッチ16が形成され、長手方向剪断力及び圧縮力に加えて、垂直方向の力を伝達するポジティブロック連結を形成するようにした
ことを特徴とする。
【0012】
ピボット軸線に近い溝の側部の円弧は、ピボット軸線からのびる半径又は、それより僅かに小さい半径で形成され、対応するリブの側部の円弧は、ピボット軸線からのびる半径又はそれより僅かに大きい半径で形成されている。
【0013】
ピボット軸線から離れたリブの側部の円弧は、ピボット軸線からのびる半径又はそれより僅かに小さい半径で形成され、対応する溝の側部の円弧は、ピボット軸線からのびる半径又はそれより僅かに大きい半径で形成される。
【0014】
円弧の半径は、スキーの中心長手方向軸線の領域において、係合するリブ及び溝の隣接する側部間の距離が最小、例えば、約0.2mmになり、かつ、スキーの縁部において、係合するリブ及び溝の隣接する側部間の距離が、最小よりも大きく、例えば、約0.8mmになるように選択される。
【0015】
溝及びリブの各側部間のクリアランスが大きければ大きい程、ブリッジプレートでスキーを補強する時の、溝へのリブの挿入が簡単になる。
【0016】
さらに、スキーは、スキーが機能位置にある時にブリッジプレートをロックするロック機構12を備えている。
【0017】
ブリッジプレートは、アルミニウム製であり得る。代わりに、ブリッジプレートは、繊維、特に、カーボン繊維又はガラス繊維によって強化された射出成形プラスチックで形成することもできる。また、ブリッジプレートは、繊維繊維、特に、カーボン繊維又はガラス繊維から成る層によって、さらに補強され得る。アルミニウム製のブリッジプレートに対するプラスチック製のブリッジプレートの利点は、ブリッジプレートの重量が半分以下になることにある。さらにまた、ブリッジプレートは、二成分射出成形工程によって、二つの異なるプラスチック材料で形成され得る。従って、ブリッジプレートの芯部を、カーフォン繊維強化ポリアミドのような優れた機械的特性を有するプラスチックの射出成形で形成し、前記芯部を、ガラス繊維強化ポリアミドのような機械的特性の劣るプラスチック(安価な材料)の射出成形によって覆うように形成することができる。
【0018】
ベースプレートは、ネジ13によってスキーに固定される。代わりに、ベースプレートは、接着剤やリベットによってスキーに固定してもよい。
【0019】
ベースプレート6及び7は、それらの関節式連結部4と面する端部に、関節式連結部4のそれぞれの部分に係合する歯部15を備えたプロファイル14が設けられる。前記プロファイル14はアルミニウムで形成される。